(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記スライムコントロール剤がクロロスルファミン酸塩系およびブロモスルファミン酸塩系の少なくともいずれかのスライムコントロール剤であることを特徴とする逆浸透膜処理システムの運転方法。
逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置の濃縮水が導入されるエネルギー回収装置とを備えた逆浸透膜処理システムにおいて、前記逆浸透膜装置の被処理水に結合塩素系および安定化臭素系のすくなくともいずれかのスライムコントロール剤を添加する薬注手段と、前記エネルギー回収装置に導入される濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定する残留ハロゲン濃度測定手段と、該残留ハロゲン濃度測定手段の測定値に基いて、前記薬注手段におけるスライムコントロール剤の添加量を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする逆浸透膜処理システム。
請求項4において、前記スライムコントロール剤がクロロスルファミン酸塩系およびブロモスルファミン酸系の少なくともいずれかのスライムコントロール剤であり、前記残留ハロゲン濃度測定手段で測定される残留ハロゲン濃度が全塩素換算濃度で0.1〜10000mg/Lとなるように、前記制御手段により、前記薬注手段におけるスライムコントロール剤の添加量が制御されることを特徴とする逆浸透膜処理システム。
【背景技術】
【0002】
海水を淡水化するシステムとして、海水を逆浸透膜装置(RO膜装置)に通水して脱塩する海水淡水化システムが知られている。海水淡水化システムでは、取水した海水に殺菌用の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を1〜3mg−Cl
2/L程度添加した後、除塵処理し、次いで鉄系無機凝集剤を添加して凝集、濾過処理する前処理を行った後、前処理水を高圧ポンプで加圧してRO膜装置に圧送し、RO膜透過水を塩分が除去された淡水として取り出す。塩分が濃縮された濃縮水は排出する。高圧ポンプの入口側では、NaClOによるRO膜の劣化を防止するために、残留塩素の還元除去と間欠殺菌処理とを兼ねて重亜硫酸ナトリウム(NaHSO
3)が添加され、また、スケール防止及び間欠殺菌処理用の硫酸が添加される(非特許文献1)。
【0003】
海水淡水化プラントにおける電力費の大半は、高圧ポンプによる加圧に費やされる。従って、海水淡水化プラントにおいては、RO膜装置から排出される高圧の濃縮水からエネルギーを回収するためのエネルギー回収装置が設けられている。エネルギー回収装置には、濃縮水の圧力を電力に変換して回収するものと、濃縮水の圧力で前処理海水を昇圧して圧力として回収するものとがある(非特許文献1,2)。
【0004】
RO膜のバイオファウリングの防止のために一般的に用いられているNaClO等の遊離塩素系酸化剤は、RO膜を酸化劣化させる。このような酸化劣化の問題を防止したものとして、近年、クロロスルファミン酸等の結合塩素系スライムコントロール剤やブロモスルファミン酸等の安定化臭素系スライムコントロール剤が提案されている(特許文献1,2,3)。
【0005】
NaClO等の遊離塩素系酸化剤を用いる場合は、RO膜の酸化劣化を防止するために、添加した遊離塩素系酸化剤のうちの残留分を、RO膜装置の入口側でNaHSO
3等の還元剤で還元除去することが行われている。
【0006】
結合塩素系スライムコントロール剤や安定化臭素系スライムコントロール剤は、RO膜劣化の問題がないため、RO膜装置の入口側で若干の残留塩素が検出されるように添加されている。例えば特許文献1では結合塩素系スライムコントロール剤であるクロロスルファミン酸塩系酸化剤を、RO膜装置に導入される水(以下、RO膜装置に導入されるRO膜装置の被処理水を「RO給水」と称す。)中の濃度が0.1〜1000mg/L、特に1〜200mg/Lとなるように添加することが好ましいとされている。特許文献2では、RO給水の全塩素濃度が1〜5mg/L、好ましくは1〜3mg/L、遊離塩素濃度が0.1mg/L以下、好ましくは0.05mg/L以下となるように結合塩素剤を添加するとされている。特許文献3では、分離膜に接触する有効ハロゲン濃度は有効塩素濃度換算で、0.01〜100mg/Lであることが好ましく、0.01mg/L未満であると、十分なスライム抑制効果を得ることができない場合があり、100mg/Lより多いと、分離膜の劣化、配管等の腐食を引き起こす可能性があると記載されている。
【0007】
RO膜装置の濃縮水からエネルギーを回収するエネルギー回収装置を備えたRO膜処理システムにおいて、NaClO等の遊離塩素系酸化剤を添加した後、RO膜装置の入口側でNaHSO
3等の還元剤で残留塩素を還元除去している場合、このRO膜装置よりも後段では、殺菌に有効な残留塩素が存在しないために、RO膜装置及びエネルギー回収装置でのバイオファウリングが問題となる。
【0008】
結合塩素系スライムコントロール剤や安定化臭素系スライムコントロール剤を用いた場合には、RO膜装置の入口側で残留ハロゲンを除去する必要はなく、結合塩素系スライムコントロール剤や安定化臭素系スライムコントロール剤由来の残留ハロゲンが存在するRO給水がRO膜装置に導入されるため、RO膜装置でのバイオファウリングは防止されるが、RO膜装置の濃縮水が導入されるエネルギー回収装置におけるバイオファウリングが問題となる。
【0009】
即ち、RO給水に添加されたスライムコントロール剤は、理論的には、RO膜装置で濃縮され、RO膜装置の水回収率に応じて濃縮水中濃度が高くなる一方で、添加された結合塩素系スライムコントロール剤や安定化臭素系スライムコントロール剤は、RO膜面に付着した有機物や、給水中の有機物、給水配管及び濃縮水配管内に付着した有機物、給水中に残留したNaHSO
3等の還元剤によって、RO膜装置の原水側から濃縮水配管を経てエネルギー回収装置に導入されるまでの間に分解される。そのため、RO給水中に結合塩素系スライムコントロール剤や安定化臭素系スライムコントロール剤由来の残留ハロゲン濃度が検出されても、エネルギー回収装置に導入される濃縮水には、残留ハロゲン濃度が検出されず、スライムコントロール効果が得られない場合があり、この場合には、エネルギー回収装置でのバイオファウリングが問題となる。
【0010】
エネルギー回収装置でバイオファウリングが起きると、エネルギー回収装置の濃縮水流入部が詰まり、エネルギー回収率が低下し、更には、この詰まりを解消するためのメンテナンスのために、頻繁にエネルギー回収装置の運転を停止する必要が生じる。
【0011】
【特許文献1】特開2010−201313号公報
【特許文献2】国際公開WO2011/125764号公報
【特許文献3】特開2015−62889号公報
【0012】
【非特許文献1】造水技術ハンドブック2004(平成16年11月25日発行、財団法人造水促進センター)第408頁〜第414頁
【非特許文献2】造水技術−水処理のすべて−(昭和58年5月10日発行、財団法人造水促進センター)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
本発明における遊離塩素、結合塩素及び全塩素は、JISK0400−33−10:1999に示されており、N,N−ジエチル−1,4−フェニレンジアミンを用いるDPD法によりCl
2の濃度として測定される。遊離塩素は次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン又は溶存塩素の形で存在する塩素である。結合塩素はクロロアミン及び有機クロロアミンの形で存在する塩素である。全塩素は遊離塩素、結合塩素又は両者の形で存在する塩素である。
【0029】
遊離塩素剤は上記の遊離塩素を生成する薬剤であり、活性遊離塩素剤として元素状塩素、次亜塩素酸、潜在遊離塩素剤として次亜塩素酸塩がある。より具体的には、塩素ガス、次亜塩素酸又はその塩、亜塩素酸又はその塩、塩素酸又はその塩、過塩素酸又はその塩、塩素化イソシアヌール酸又はその塩などが挙げられる。塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、バリウム等のアルカリ土類金属塩、ニッケル等の他の金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0030】
結合塩素剤は上記の結合塩素を生成する薬剤であるが、クロロアミンは、1、2又は3個の水素原子を塩素原子で置換したアンモニアの塩素誘導体(モノクロロアミン(NH
2Cl)、ジクロロアミン(NHCl
2)、三塩化窒素(NCl
3))及び同規格の測定方法で定量されるすべての有機窒素化合物の塩素誘導体とされており、スルファミン酸の塩素誘導体も含まれる。
【0031】
本発明で使用する結合塩素系スライムコントロール剤は、アンモニア又はその化合物、メラミン、尿素、アセトアミド、スルファミド、サイクロラミン酸、スルファミン酸、トルエンスルホンアミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド、イソシアヌル酸、N−クロロトルエンスルホンアミド、尿酸、サッカリン又はこれらの塩などの窒素化合物に、上記の遊離塩素が結合したものである。
【0032】
結合塩素系スライムコントロール剤としては、クロラミン、遊離塩素剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤、クロラミン−T(N−クロロ−4−メチルベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩)、クロラミン−B(N−クロロ−ベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩)、N−クロロ−パラニトロベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩、トリクロロメラミン、モノ−もしくはジ−クロロメラミンのナトリウム塩又はカリウム塩、トリクロロ−イソシアヌレート、モノ−もしくはジ−クロロイソシアヌール酸のナトリウム塩又はカリウム塩、モノ−もしくはジ−クロロスルファミン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、モノクロロヒダントインもしくは1,3−ジクロロヒダントイン又はその5,5−アルキル誘導体等が挙げられる。
【0033】
これらの中では、遊離塩素剤とスルファミン酸化合物との併用、あるいは遊離塩素剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤(以下、このようなものを「クロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤」と称す場合がある。)が好ましい。
【0034】
以下に、このクロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤(スルファミン酸化合物を含む結合塩素系酸化剤)について説明する。
【0035】
本発明において、結合塩素系スライムコントロール剤として好ましく用いられるクロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤とは、遊離塩素剤とスルファミン酸化合物、或いは遊離塩素剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤を含むものである。
【0036】
RO給水に、遊離塩素剤とスルファミン酸化合物を添加することにより、水中に安定な結合塩素剤であるクロロスルファミン酸塩が形成され、この結合塩素剤により、安定した遊離塩素濃度を維持することにより、RO膜の劣化を引き起こすことなく、スライムコントロールを行うことが可能となる。即ち、スルファミン酸化合物を用いることで、クロラミン(モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン、クロラミン−T等)と比較して、pHに対して安定化した酸化剤とすることができる。また、結合塩素が主成分であるため、膜劣化を最小限に抑えることができる。
【0037】
本発明で用いる遊離塩素剤に特に制限はなく、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸又はその塩、亜塩素酸又はその塩、塩素酸又はその塩、過塩素酸又はその塩、塩素化イソシアヌル酸又はその塩などが挙げられる。これらのうち、塩形のものの具体例としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウムなどの次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケルなどの他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウムなどの塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウムなどの塩素酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中で、次亜塩素酸塩は取り扱いが容易であり、好適に用いることができる。
【0038】
本発明で用いるスルファミン酸化合物としては、下記一般式[I]で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0040】
一般式[I]において、R
1及びR
2は、各々独立に、水素又は炭素数1〜8の炭化水素基である。
【0041】
スルファミン酸化合物としては、例えば、R
1とR
2がともに水素原子であるスルファミン酸のほかに、N−メチルスルファミン酸、N,N−ジメチルスルファミン酸、N−フェニルスルファミン酸などが挙げられる。
【0042】
スルファミン酸化合物の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩などの他の金属塩、アンモニウム塩及びグアニジン塩などが挙げられる。具体的には、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ストロンチウム、スルファミン酸バリウム、スルファミン酸鉄、スルファミン酸亜鉛などが挙げられる。
【0043】
スルファミン酸及びこれらのスルファミン酸塩は、1種を単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
次亜塩素酸塩等の遊離塩素剤とスルファミン酸塩等のスルファミン酸化合物を混合すると、これらが結合して、クロロスルファミン酸塩を形成して安定化し、クロラミンのようなpHによる解離性の差、それによる遊離塩素濃度の変動を生じることなく、水中で安定した遊離塩素濃度を保つことが可能となる。
【0045】
本発明において、遊離塩素剤とスルファミン酸化合物との使用割合には特に制限はないが、遊離塩素剤の有効塩素1モルあたりスルファミン酸化合物を0.5〜5.0モルとすることが好ましく、0.5〜2.0モルとすることがより好ましい。
【0046】
クロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤は、遊離塩素剤とスルファミン酸化合物とを含む水溶液として好適に用いられるが、何らこの混合水溶液の形態に限らない。遊離塩素剤とスルファミン酸化合物とは別々に提供されるものであっても良い。
【0047】
クロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤は、その効果を損なうことのない範囲において、遊離塩素剤及びスルファミン酸化合物以外の他の成分を含有していても良い。他の成分としては、アルカリ剤、アゾール類、アニオン性ポリマー、ホスホン酸類等が挙げられる。
【0048】
アルカリ剤は、クロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤中の遊離塩素剤を安定化させるために用いられ、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。
【0049】
アゾール類は、ヘテロ原子を2個以上含む5員環を有する芳香族化合物である。本発明で用いるアゾール類としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの単環式アゾール系化合物、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトメチルベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、インダゾール、プリン、イミダゾチアゾール、ピラゾロオキサゾールなどの縮合多環式アゾール系化合物などが挙げられる。アゾール系化合物の中で塩を形成する化合物にあってはそれらの塩などが挙げられる。これらのアゾール系化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0050】
アニオン性ポリマーとしては、重量平均分子量が500〜50,000のものが好ましく、1,000〜30,000のものがより好ましく、1,500〜20,000のものがさらに好ましい。
【0051】
アニオン性ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びこれらの不飽和カルボン酸の塩、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、さらには無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の無水物などが挙げられる。これらのモノマーは単独で重合することができ、また2種以上を共重合することもできる。あるいは、該モノマー1種以上とその他の共重合可能なモノマー1種以上とを共重合させることもできる。他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、不飽和アルコール、不飽和カルボン酸エステル、アルケン、スルホン酸基を有するモノマーなどが挙げられる。不飽和アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコールなどが挙げられる。不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。アルケンとしては、例えば、イソブチレン、n−ブチレン、ジイソブチレン、ペンテンなどが挙げられる。スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリロキシ−1−プロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0052】
本発明に使用し得るアニオン性ポリマーの例としては、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、アクリル酸と2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロパンスルホン酸との共重合物、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合物、アクリル酸とイソプレンスルホン酸との共重合物、アクリル酸とメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの共重合物、アクリル酸とメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとイソプロピレンスルホン酸の共重合物、マレイン酸とペンテンとの共重合物、前記アニオン性ポリマーのアルカリ金属塩及び前記アニオン性ポリマーのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0053】
ホスホン酸類としては、例えば、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラメチレンホスホン酸又は前記ホスホン酸の塩などが挙げられる。本発明において、ホスホン酸類は遊離の酸として用いても、塩として用いても良い。ホスホン酸の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。ホスホン酸の塩は、酸の特性成分である水素原子が完全に置換された正塩であってもよく、酸成分の水素原子の一部が残っている酸性塩であってもよい。これらのホスホン酸及びその塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0054】
これらの他の成分を含む場合、クロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤の剤型に特に制限はなく、例えば、遊離塩素剤及びスルファミン酸化合物と、アゾール類、アニオン性ポリマー、ホスホン酸類のいずれか1種以上とからなる1液型薬剤であっても良く、各成分を2液に分けた2液型薬剤とすることもできる。2液型薬剤としては、例えば、遊離塩素剤とスルファミン酸化合物を含有するA液と、その他の成分B液からなる2液型薬剤などを挙げることができる。
【0055】
1液型薬剤とする場合は、遊離塩素剤の安定性を保つために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリを添加して、pH12以上に調整することが好ましく、pH13以上、例えばpH13〜14に調整することがより好ましい。2液型薬剤とする場合は、同様に遊離塩素剤を含有する剤をpH12以上に調整することが好ましく、pH13以上、例えばpH13〜14に調整することがより好ましい。
【0056】
本発明で用いるクロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤は例えば、次のような配合とすることができる。
【0057】
(A)有効塩素濃度1〜8重量%、好ましくは3〜6重量%の遊離塩素剤と、1.5〜9重量%、好ましくは4.5〜8重量%のスルファミン酸化合物を含む、pH≧12の水溶液
(B)上記(A)に、更に0.05〜3.0重量%のアゾール類、1.5〜3.0重量%のアニオン性ポリマー、0.5〜4.0重量%のホスホン酸類の1種又は2種以上を含む、pH≧12の水溶液
【0058】
上記(A),(B)において、pHはアルカリ剤の添加により調整される。
【0059】
安定化臭素系スライムコントロール剤について説明する。
【0060】
本発明で使用する安定化臭素系スライムコントロール剤は、アンモニア又はその化合物、メラミン、尿素、アセトアミド、スルファミド、サイクロラミン酸、スルファミン酸、トルエンスルホンアミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド、イソシアヌル酸、N−クロロトルエンスルホンアミド、尿酸、サッカリン又はこれらの塩などの窒素化合物と、臭素系酸化剤との反応によって生成する化合物である。
【0061】
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、次亜臭素酸、臭素酸、臭素酸塩などの化合物や臭素系化合物と遊離塩素剤との反応物が挙げられる。
【0062】
臭素系化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム及び臭化水素酸等を用いることができる。遊離塩素剤としては、結合塩素系スライムコントロール剤の項で使用したものと同じ遊離塩素剤を用いることができる。
【0063】
本発明で使用する安定化臭素系スライムコントロール剤としては、臭素系酸化剤とスルファミン酸又はスルファミン酸塩との反応によって生成するブロモスルファミン酸又はブロモスルファミン酸塩を好適に用いることができる。本発明で使用する安定化臭素系スライムコントロール剤としては、オルガノ(株)製「オルパージョン E266シリーズ」、Nalco社製「スタブレックス」などを用いることができる。
【0064】
本発明で用いる結合塩素系スライムコントロール剤及び安定化臭素系スライムコントロール剤の有効成分(スライムコントロール剤として効果を発揮する成分)は残留ハロゲン換算濃度としてDPD法で全塩素換算濃度として検出・測定することができる。本発明で用いる結合塩素系スライムコントロール剤及び安定化臭素系スライムコントロール剤は、その成分として酸化力の強い成分(遊離塩素や遊離臭素などの遊離ハロゲン)を少量ではあるが含む場合がある。このような酸化力の強い成分は、DPD法で遊離塩素換算濃度として検出・測定することができる。
【0065】
本発明においては、上述のようなクロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤やブロモスルファミン酸塩系スライムコントロール剤等の安定化ハロゲン系スライムコントロール剤を、エネルギー回収装置に導入されるRO膜装置の濃縮水(以下「エネルギー回収装置の入口濃縮水」と称す場合がある。)の残留ハロゲン(ここで、ハロゲンとは、塩素及び/又は臭素である。)濃度が、全塩素換算濃度で0.1〜10000mg/L、好ましくは0.1〜100mg/Lとなるように、RO給水に添加する。
【0066】
エネルギー回収装置の入口濃縮水の残留ハロゲン濃度が上記下限よりも低いと、エネルギー回収装置でのバイオファウリング抑制効果を十分に得ることができない。エネルギー回収装置の入口濃縮水の残留ハロゲン濃度が上記上限よりも高いと、透過水の水質に影響を与える可能性があり、また、薬剤コストも高くつき、好ましくない。
【0067】
安定化ハロゲン系スライムコントロール剤は連続的に添加してもよく、間欠的に添加してもよい。間欠的に添加する場合、間欠添加条件には特に制限はないが、0.5〜14日に1回の頻度で1〜12時間程度添加することが好ましい。
【0068】
安定化ハロゲン系スライムコントロール剤は、前処理される水に添加されてもよく、RO膜装置の入口側で添加されてもよい。好ましくは、RO膜装置の入口側、特に高圧ポンプの入口側で添加される。
【0069】
RO膜装置に導入されるRO給水の遊離ハロゲン濃度は、RO膜の劣化防止の観点から、JIS K0400−33−10:1999等によって定められるDPD法で0.05mg/L未満(遊離塩素換算濃度)であることが好ましい。また、バイオファウリングを防止する点において、エネルギー回収装置の入口濃縮水の残留ハロゲン濃度を前記範囲とした上で、RO膜装置に導入されるRO給水の残留ハロゲン濃度は、全塩素換算濃度で0.1〜5000mg/Lとすることが好ましい。
【0070】
図1は、本発明の実施に好適なRO膜処理システムの一例を概略的に示す系統図であり、
図1中、1は貯水槽、2は濾過器、3はRO膜装置、4はエネルギー回収装置、5は残留ハロゲン濃度計、6は安定化ハロゲンスライムコントロール剤の薬注ポンプ、7は安定化ハロゲン系スライムコントロール剤貯槽、8は薬注制御装置であり、Pは高圧ポンプである。
【0071】
図1のRO膜処理システムでは、貯水槽1においてNaClOが添加された水は、配管11より濾過器2に導入され、濾過器2で濾過された後、配管12を経て高圧ポンプPによりRO膜装置3に圧送される過程で、NaHSO
3が添加されて残留塩素が分解除去され、その後、クロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤やブロモスルファミン酸塩系スライムコントロール剤等の安定化ハロゲンスライムコントロール剤が添加された後、RO膜装置3に導入される。安定化ハロゲンスライムコントロール剤は、安定化ハロゲンスライムコントロール剤貯槽7から薬注ポンプ6により、配管18を経て配管12の高圧ポンプPの入口側に添加される。
【0072】
RO膜装置3の透過水は配管13より処理水として取り出され、濃縮水は、配管14よりエネルギー回収装置4に導入される。エネルギー回収装置4でエネルギーが回収された濃縮水は、配管15より系外へ排出される。
図1に示すエネルギー回収装置は、濃縮水のエネルギーを圧力として回収するものである。エネルギー回収装置4には前処理水の一部が配管16より導入され、濃縮水により昇圧された後、昇圧水が配管17を経て配管12のNaHSO
3添加箇所よりも上昇側に戻される。
【0073】
配管14には、エネルギー回収装置の入口濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定する残量ハロゲン濃度計5が設けられており、この残留ハロゲン濃度度計5の測定値が薬注制御装置8に入力され、薬注制御装置8より、薬注ポンプ6に薬注制御信号が発信され、残留ハロゲン濃度計5の測定値が全塩素換算濃度で0.1〜10000mg/Lとなるように、安定化ハロゲン系スライムコントロール剤が薬注制御される。
【0074】
本発明において、エネルギー回収装置の入口濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定する残留ハロゲン濃度計としては、残留ハロゲンを全塩素に換算して測定できるものが好ましく、DPD法やシリンガルダジン法等を用いることができる。残留ハロゲン濃度計は、エネルギー回収装置に導入される直前の濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定することができるように、エネルギー回収装置の濃縮水導入口の近傍の濃縮水配管に設けられていることが好ましい。残留ハロゲン濃度計は、例えば、配管長さとして、エネルギー回収装置の濃縮水導入口から20m以下、特に10m以下の近傍に設けることが好ましい。即ち、前述のように、RO給水に添加された安定化ハロゲン系スライムコントロール剤は、理論的には、RO膜装置で濃縮され、RO膜装置の水回収率に応じて濃縮水中濃度が高くなる一方で、添加された安定化ハロゲン系スライムコントロール剤は、RO膜面に付着した有機物や、給水中の有機物、給水配管及び濃縮水配管内に付着した有機物、給水中に残留したNaHSO
3等の還元剤によって、RO膜装置の原水側から濃縮水配管を経てエネルギー回収装置に導入されるまでの間に分解される。このため、エネルギー回収装置の濃縮水導入口よりも離れた濃縮水配管で濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定しても、その後、更に濃縮水が濃縮水配管を流れる過程で、濃縮水中の安定化ハロゲン系スライムコントロール剤が分解されて、残留ハロゲン濃度が低下する場合があり、この場合には、実際にエネルギー回収装置に導入される濃縮水の残留ハロゲン濃度を正確に把握できないことになる。このため、残留ハロゲン濃度計は、エネルギー回収装置の濃縮水導入口の近傍に設け、エネルギー回収装置に導入される直前の濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定することが好ましい。
【0075】
図1は、本発明のRO膜処理システムの一例を概略的に示す系統図であり、本発明のRO膜処理システムは、何ら
図1に示すものに限定されるものではない。例えば、RO膜装置の前処理装置として、濾過器の他、凝集処理、その他の各種の処理装置を備えるものであってもよい。エネルギー回収装置は、濃縮水の圧力を電力等のエネルギーに変換して回収するものであってもよい。
【実施例】
【0076】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0077】
以下の実施例及び比較例においては、
図1に示すRO膜処理システム(発電所の海水淡水化逆浸透膜処理装置)において、以下の条件で運転を行った。
【0078】
[運転条件]
<RO膜装置>
RO給水量:250m
3/hr
透過水量:100m
3/hr
水回収率:約40%
<エネルギー回収装置>
圧力回収型エネルギー回収装置
【0079】
以下の実施例及び比較例において、RO膜装置の水回収率を約40%としているため、RO給水の全塩素濃度に対して、濃縮水の全塩素濃度は理論的には1.7倍となる。ただし、添加した結合塩素系スライムコントロール剤は、RO膜面に付着した有機物や、RO中の給水配管及び濃縮水配管内に付着した有機物、RO中に残留したNaHSO
3等によって分解されるために、濃縮水の全塩素濃度は、ROの全塩素濃度の1.7倍よりも低濃度となる場合もある。
【0080】
また、各例毎に海水の水質や系内の配管、RO膜の汚染状況が若干異なるために、ROへの結合塩素系スライムコントロール剤添加量が同一(給水の全塩素濃度が同一)でも、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度は異なるものとなる。
【0081】
従って、以下の実施例及び比較例ではRO給水の全塩素濃度は、RO膜装置のRO給水導入口から2m離れたRO給水配管上に設けた全塩素濃度計で測定した。エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度は、エネルギー回収装置の濃縮水導入口から2m離れた濃縮水配管上に設けた全塩素濃度計により測定した。
【0082】
[比較例1]
貯水槽1において、NaClOを添加して殺菌処理した後、高圧ポンプPの入口側でNaHSO
3を添加して残留NaClOを還元除去した海水をRO膜装置に供給してRO膜処理を1年間行った。その結果、エネルギー回収装置のエネルギー回収率(P
1/P
2×100、P
1=エネルギー回収装置の入口圧力、P
2=エネルギー回収装置によって変換(回収)された圧力の値)は年間平均85%で、エネルギー回収装置のバイオファウリングによる停止回数は1年間に3回であった。
【0083】
以下、エネルギー回収装置の年間平均のエネルギー回収率を単に「エネルギー回収率」と称し、1年間当たりの、エネルギー回収装置のバイオファウリングによる停止回数を「停止頻度」と称す。
【0084】
[実施例1,2、比較例2〜4]
比較例1において、ポンプPの入口側、NaHSO
3の添加箇所よりも後段側で、結合塩素系スライムコントロール剤としてモノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO
3Na)を、RO給水の全塩素濃度が表1に示す濃度となるように連続添加したこと以外は、比較例1と同様に運転を行った。その結果、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度、エネルギー回収装置のエネルギー回収率及び停止頻度は、表1に示す通りとなった。
ここで用いたモノクロロスルファミン酸ナトリウムは、後述の実験例Iにおける供試薬品の製造の項に記載される方法で製造したものである。
【0085】
[実施例3]
モノクロロスルファミン酸ナトリウムをRO給水に対して40mg/L、一日3時間の間欠添加としたこと以外は実施例1と同様に運転を行った。その結果、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度、エネルギー回収装置のエネルギー回収率及び停止頻度は、表1に示す通りとなった。
【0086】
[実施例4]
モノクロロスルファミン酸ナトリウムをRO給水に対して5000mg/L、一日30分の間欠添加としたこと以外は実施例1と同様に運転を行った。その結果、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度、エネルギー回収装置のエネルギー回収率及び停止頻度は、表1に示す通りとなった。
【0087】
[比較例5,6]
比較例1において、ポンプPの入口側、NaHSO
3の添加箇所よりも後段側で、有機系殺菌剤として5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)を、RO給水のCl−MIT濃度が表1に示す濃度となるように連続添加したこと以外は、比較例1と同様に運転を行った。その結果、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度、エネルギー回収装置のエネルギー回収率及び停止頻度は、表1に示す通りとなった。
【0088】
【表1】
【0089】
表1より次のことが明らかである。
【0090】
NaClOを添加後、RO膜装置の入口側でNaHSO
3の添加で残留NaClOを還元除去している比較例1では、エネルギー回収率85%、停止頻度3回/年であった。
【0091】
モノクロロスルファミン酸ナトリウムを添加しても、エネルギー回収装置の入口濃縮水で残留塩素が検出されない比較例2,3では、モノクロロスルファミン酸ナトリウムを添加しない比較例1と同様であり、エネルギー回収率も停止頻度も改善されない。エネルギー回収装置の入口濃縮水に残留塩素が検出されても全塩素濃度が0.08mg/Lと低い比較例3でも、やはり、エネルギー回収率及び停止頻度の改善効果は得られない。
【0092】
結合塩素系スライムコントロール剤であるモノクロロスルファミン酸ナトリウムの代りに有機系殺菌剤を用いた比較例5,6のうち、エネルギー回収装置の入口濃縮水に残留塩素が検出されない比較例5では、エネルギー回収率も停止頻度も比較例1の場合とほぼ同等である。エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度が2mg/Lとなった比較例6では、比較例1よりもエネルギー回収率も停止頻度も改善されたが、十分とは言えない。即ち、有機系殺菌剤では、中性域では不安定で、バイオファウリングに対する剥離効果がないため、結合塩素系スライムコントロール剤のような効果が得られない。
【0093】
これに対して、結合塩素系スライムコントロール剤を用い、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度が本発明で規定される範囲となるように給水に添加した実施例1〜4では、連続添加の場合であっても間欠添加の場合であっても、エネルギー回収装置エネルギー回収率を大幅に高めることができると共に、停止頻度も1回/年と、大幅に改善された。
【0094】
[実験例I]
エネルギー回収装置における結合塩素系スライムコントロール剤と安定化臭素系スライムコントロール剤のスライム付着防止効果を確認する実験を行った。
【0095】
1. 供試薬品の製造
以下の方法でモノクロロスルファミン酸ナトリウムおよびブロモスルファミン酸塩を製造した。
【0096】
1−1. モノクロロスルファミン酸ナトリウムの製造
純水67重量部に48重量%の水酸化ナトリウム水溶液を193重量部添加して溶解させ、さらにスルファミン酸120重量部を添加して溶解させた。その後、有効塩素濃度12重量%asCl
2の次亜塩素酸ナトリウム水溶液600重量部を添加して溶解させて、モノクロロスルファミン酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0097】
1−2. ブロモスルファミン酸塩の製造
窒素雰囲気下、1453重量部の純水に、361重量部の水酸化ナトリウムを加えて混合し、次いで300重量部のスルファミン酸を加えて混合した後、456重量部の液体臭素を加え、さらに48重量%水酸化カリウム水溶液230重量部を添加して溶解させて、ブロモスルファミン酸塩水溶液を調製した。
【0098】
2. 試験方法
2−1. 試験水
試験水としては、栗田工業(株) クリタ開発センター排水の処理水を用いた。
【0099】
2−2. 薬品
上記供試薬品の製造で製造したものを用いた。
薬品−1:結合塩素系スライムコントロール剤(モノクロロスルファミン酸ナトリウム)
薬品−2:安定化臭素系スライムコントロール剤(ブロモスルファミン酸塩)
【0100】
2−3. 試験装置
図2に示す試験装置を用いた。
この試験装置は、配管20からの試験水が配管21,22,23に分岐されて、それぞれ内壁面にテストピース(3cm×5cmのSUS316L製テストピース)31a,32a,33aが固定されたカラム31,32,33に通水されるように構成されたものである。FI
1,FI
2,FI
3は流量計、V
1,V
2,V
3はバルブを示す。
分岐配管22には薬品−1の注入配管22Aが、分岐配管23には薬品−2の注入配管23Aがそれぞれ接続されている。
【0101】
2−4. 測定方法
試験水を1.7L/分の流量で各分岐配管21〜23を経て各カラム31〜33に13日間通水した。この通水期間中、配管22には薬品−1を、HACH社製 DPD法全塩素換算測定値が1.0mg/Lとなるように注入し(試験No.2)、配管23には薬品−2を、同全塩素換算測定値が0.8mg/Lとなるように注入した(試験No.3)。配管21は薬品無添加(無処理)とした(試験No.1)。
13日間の通水後、各テストピース31a〜33aを取り出し、表面に付着した微生物を採取して、付着微生物量をキッコーマンバイオケミファ(株)製「ルミテスターC−110」を用いて測定した。微生物量はATPの量を測定し、pg/cm
2で表記した。
【0102】
2−5. 試験結果
試験結果を下記表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
表2より明らかなように、結合塩素系スライムコントロール剤(モノクロロスルファミン酸ナトリウム)、安定化臭素系スライムコントロール剤(ブロモスルファミン酸塩)とも、無処理と比較して微生物付着抑制効果を示した。
【0105】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2015年3月31日付で出願された日本特許出願2015−72956に基づいており、その全体が引用により援用される。
RO膜装置の濃縮水からエネルギーを回収するエネルギー回収装置を設けたRO膜処理システムにおいて、RO膜装置のバイオファウリングのみならず、エネルギー回収装置におけるバイオファウリングをも抑制して、システム全体のエネルギー効率の向上及び安定運転を図るために、エネルギー回収装置に導入されるRO膜装置の濃縮水の残留ハロゲン濃度が全塩素換算濃度で0.1〜10000mg/Lとなるように、RO給水に結合塩素系および安定化臭素系の少なくともいずれかのスライムコントロール剤を添加する。