(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967472
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/06 20060101AFI20160728BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H01F15/02 D
H01F17/06 K
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-96549(P2012-96549)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-225567(P2013-225567A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓喜
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝志
(72)【発明者】
【氏名】小村 恭
(72)【発明者】
【氏名】濱口 康博
【審査官】
久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−272924(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3006873(JP,U)
【文献】
特表2008−544503(JP,A)
【文献】
特表2008−516430(JP,A)
【文献】
実開平03−051810(JP,U)
【文献】
実用新案登録第2535567(JP,Y2)
【文献】
独国特許出願公開第03047603(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−19/08、27/06、27/26
H01F 30/00−38/12、38/16、38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状コアと、前記環状コアを収容する環状のコアケースと、前記コアケースの外面に巻回された導線と、前記導線が巻回された巻回領域を備えた前記コアケースを保持する台座を有するコイル部品であって、
前記台座は、平板状の台座板と、前記台座板から立設され、前記環状のコアケースを環の軸方向から保持するための一対の保持部と、前記台座板に形成され、前記巻回領域の導線を把持するための凹部を有する導線把持部とを備え、
前記巻回領域を備えたコアケースは、前記保持部と前記導線把持部によって、前記台座に対して位置決めされていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記コアケースの導線の巻回領域を複数に分割するためのセパレータを有し、
前記セパレータは、前記環状のコアケースと別体で、かつ前記コアケースの内周側に嵌挿されているとともに、前記軸方向の両側で、前記保持部と嵌合していることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記セパレータは、前記コアケースに嵌挿する方向から見て中心から径方向に延びる複数の仕切板を備え、
前記仕切板のうちの一つは、他の仕切板よりも、前記コアケースに嵌挿する方向に長く構成されており、
前記一つの仕切板が前記保持部と嵌合していることを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記複数の仕切板は前記コアケースに嵌挿する方向から見て、前記中心側が、前記コアケースと嵌合する側よりも薄いことを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記セパレータは、前記コアケースとの嵌合面に、嵌挿の深さ位置を規定するストッパを有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記セパレータは、前記嵌合面上に、前記ストッパよりも中央側に、前記コアケースの内周側を押圧可能に構成された突起部を有することを特徴とする請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記導線が巻回された前記コアケースと前記台座との固定に接着剤が用いられていないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板等に実装可能な台座付のコイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電子機器、通信機器等に用いられるチョークコイル、トランス等として、フェライト、アモルファス、ナノ結晶材料等の磁性材料からなるコアに巻線をしたコイル部品が広く用いられている。このうち、例えば、特定の周波数領域のノイズを除去するために、配線基板に実装されるコイル部品は、配線基板への実装作業を容易にするため、台座付きコイル部品が用いられている。台座付きコイル部品では、コイルは台座部分で配線基板に固定される。
【0003】
かかる台座の構成に関して、例えば、特許文献1には三相のチョークコイルの取り付け台が開示されている。特許文献1では、従来例として、チョークコイルをプリント基板へ固定するため、コアケースの側面突起部がプリント基板と接する部分を接着剤で固着する構成が挙げられている一方(
図4)、取付台に設けたホルダーにチョークコイル位置設定用凹部を付け、コアケースの側面突起部に付けた凸部を前記凹部へ挿入して、ワンタッチでチョークコイルを位置設定できる構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2にも従来の接着材による固定を不要とする構成が開示されている。特許文献2には、主に単相のコイルに関する構成として、環状コアの軸方向側に具備する嵌合部に加え、コアケースの外周側に設けた嵌合部によりコアケースと台座を結合する構成が記載されている。かかる構成によって、より安定した結合を達成することが出来るとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3006873号公報
【特許文献2】特開2003−272924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された構成によれば、チョークコイルの位置設定は容易になる。しかしながら、特許文献1の段落[0015]に記載されているように、ホルダーにセットされたチョークコイルが外れる場合があるため、その場合は接着剤などで仮止めしておくことが必要となってしまう。また、チョークコイルを保持している部分がホルダー部分だけであるため、チョークコイルの固定が不十分であり、外力に弱い。また、特許文献2に開示された上記構成では、コアケースは、環状コアの軸方向と外周側で、台座と結合する。そのため、該構成は外力に対して強く、位置ずれも生じにくい。しかしながら、コアケースの外周側に嵌合部を設け、かかる嵌合部を用いて台座と結合するため、かかる嵌合部はコアケースの外周から突出させる必要あり、コイル部品全体が大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、上記課題に鑑み、本発明は、導線が巻回されたコアケースと台座との強固な固定を実現するとともに、小型化が可能なコイル部品の構成を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコイル部品は、環状コアと、前記環状コアを収容する環状のコアケースと、前記コアケースの外面に巻回された導線と、前記導線が巻回された
巻回領域を備えた前記コアケースを保持する台座を有するコイル部品であって、前記台座は、平板状の台座板と、前記台座板から立設され、前記環状のコアケースを環の軸方向から保持するための一対の保持部と、前記台座板に形成され、前記
巻回領域の導線を把持するための凹部を有する導線把持部とを備え、
前記巻回領域を備えたコアケースは、前記保持部と前記導線把持部によって、前記台座に対して位置決めされていることを特徴とする。かかる構成によれば、導線が巻回されたコアケースと台座との固定が強固なものになるとともに、コイル部品の小型化が可能である。
【0009】
また、前記コイル部品において、前記コアケースの導線の巻回領域を複数に分割するためのセパレータを有し、前記セパレータは、前記環状のコアケースと別体で、かつ前記コアケースの内周側に嵌挿されているとともに、前記軸方向の両側で、前記保持部と嵌合していることが好ましい。かかる構成では、セパレータが別体で構成されているため、コアケース本体の構造が簡易なものとなる。
【0010】
さらに、前記コイル部品において、前記セパレータは、前記コアケースに嵌挿する方向から見て、中心から径方向に延びる複数の仕切板を備え、前記仕切板のうちの一つは、他の仕切板よりも、前記コアケースに嵌挿する方向に長く構成されており、前記一つの仕切板が前記保持部と嵌合していることが好ましい。かかる構成では、一つの仕切板を軸方向に長くするだけで保持部と嵌合するための構造が形成できるため、嵌合のためのセパレータ構造が簡易なものとなる。
【0011】
さらに、前記コイル部品において、前記複数の仕切板は前記コアケースに嵌挿する方向から見て、前記中心側が、前記コアケースと嵌合する側よりも薄いことが好ましい。コアケースと嵌合する側は導線を所定の間隔で離間させる必要があるが、中心側を薄くすることで、導線が配置される空間をより大きく取ることができる。
【0012】
さらに、前記コイル部品において、前記セパレータは、前記コアケースとの嵌合面に、嵌挿の深さ位置を規定するストッパを有することが好ましい。かかる構成によればコアケースとセパレータの位置決めをより正確に行うことができる。
【0013】
さらに、前記コイル部品において、前記セパレータは、前記嵌合面上に、前記ストッパよりも中央側に、前記コアケースの内周側を押圧可能に構成された突起部を有することが好ましい。かかる構成によればコアケースとセパレータとの固定を強固に、かつ簡易に行うことができる。
【0014】
さらに、前記コイル部品において、前記導線が巻回された前記コアケースと前記台座との固定に接着剤が用いられていないことが好ましい。かかる構成によれば、コイル部品の構成が簡易なものになり、生産性の向上に寄与する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導線が巻回されたコアケースと台座との強固な固定を実現するとともに、小型化が可能なコイル部品の構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のコイル部品の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明のコイル部品に用いる台座の例を示す図である。
【
図3】本発明のコイル部品に用いるセパレータの例を示す図である。
【
図4】コイルケースにセパレータが嵌挿された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るコイル部品の実施形態を、図を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
図1に本発明のコイル部品の実施形態を示す。
図1(a)はコイル部品の正面図、(b)は後述するコアケース2と保持部6との間における断面図である。
図1に示すコイル部品1は、環状コアと、前記環状コアを収容する環状のコアケース2と、コアケース2の外面に巻回された導線3と、導線3が巻回されたコアケース2を保持する台座4を有する。コアケース2の中には、例えば、非晶質軟磁性合金やナノ結晶軟磁性合金などの軟磁性合金薄帯の巻回体等、リング形状の磁性体が収容されるが、図示は省略する。かかる台座の構成をさらに
図2を参照しつつ説明する。
図2(a)は台座4の正面図、(b)は台座4の側面図、(c)は(b)のAの位置における断面図、(d)は台座4の平面図である。台座4は、平板状の台座板5と、台座板5から立設され、環状のコアケース2をその環の軸方向から保持するための一対の保持部6と、台座板5に形成され、導線を把持するための凹部11を有する導線把持部7とを備える。
図1および
図2に示す実施形態では、台座板5は長方形であるが、これに限定するものではない。正方形でもよいし、その他の多角形形状でもよい。台座板5には、導線の先端を裏面側に導出するための、開口部12が形成されているが、これは切り欠きで代用することもできる。一対の保持部6は、台座板5の一対の長辺のそれぞれ中央の位置で、台座板5に垂直に立設されている。保持部6は台座板5の板面に垂直な方向に長い板状の部位であり、台座板5と一体で構成されている。保持部6の先端側には、導線が巻回されたコアケースを位置決め、固定するための嵌合部として貫通孔10が形成されている。コアケース側では後述するセパレータ等に嵌合部として凸部を設けておき、かかる貫通孔10と凸部とを嵌合させて、環状のコアケース2を軸方向から保持する。ここで、嵌合は、クリアランスがない場合とクリアランスがある場合の両方を含む。かかる構成によって、導線が巻回されたコアケースが台座4に対して位置決めされる。なお、保持部6の嵌合部は貫通孔に限らず凹部でもよい。また、コアケース側に凹部を設け、保持部側に凸部を設けることも可能である。但し、小型化の観点からは保持部側に貫通孔または凹部を設けることが好ましい。
【0019】
図1、
図2に示す本実施形態では、一対の保持部6との間に台座4と一体で構成された導線把持部7とを備える。導線把持部は、一対の保持部6を結ぶ方向を長手方向とする溝状の凹部11を有し、コアケースに巻回された導線を把持可能に構成されている。
図1、
図2に示す実施形態では、凹部11の底面は台座板5の板面よりも高く、導線把持部7全体が台座板5に対して突出した構造になっているが、凹部11の底面を台座板5の板面と同じ位置にして、凹部の両側だけ突出させてもよい。但し、把持する導線8の両側の導線が径方向に膨らんで巻回されたり、二重に巻回される場合がある。本実施形態のように、凹部11の底面を台座板5の板面よりも高くしておくことで、把持する導線8の両側の導線が台座板5に干渉することを抑制することができる。また、導線把持部は、台座板5に溝を掘る形態で構成することもできるが、導線を把持しにくくなるので、本実施形態のように台座板5に対して突出させて構成することが好ましい。
【0020】
凹部11は導線3を把持して位置決めできるものであれば、その形状等は問わない。断面形状としては、例えば、半円状、底面が平面であるコの字状(矩形)、底面が曲面であるU字状などを用いることができる。但し、導線を確実に把持するためには、底面が平面であるコの字状(矩形)、底面が曲面であるU字状のように、溝状の凹部の幅方向の両壁が、台座板の板面に垂直な平面である断面形状がより好ましい。また、導線を溝の深さ方向に押し付ける力を付与できる場合は、凹部11が浅くても導線の把持は可能である。例えば、導線の直径の40%以上を確保すればよい。但し、導線を確実に把持するためには、凹部11の深さを導線の半径以上とし、凹部の開口幅も導線の直径以上にすることが好ましい。本実施形態では、凹部の開口幅は導線の直径と同じにしてある。また、導線把持部の長手方向の長さをより大きくすることで、位置決め、固定の安定性が向上するため、例えば環状のコアケースの軸方向の寸法(以下コアケースの厚さともいう)の1/2以上を確保するとよい。導線8を最大限の長さで把持できるように、コアケースの厚さ以上にすることがより好ましい。但し、小型化の観点からは、コアケースの厚さと同じにしておくことが好ましい。
図1、2に示す実施形態では、導線把持部7の長手方向の長さはコアケースの厚さと同じにしてあり、導線把持部7の両端と保持部6との間のスペースを利用して、台座板5には導線の導出のための貫通孔12が設けてある。また、過大な外力がかかった場合には導線でもそれを受け止めるため、環状コアを収容し、導線を巻回したコアケース全体の重さW(g)の、導線の断面積S(mm
2)に対する比W/Sは35以下を確保することがより好ましく、26以下がさらに好ましい。また、外力に対する強度および把持する構造の形成のしやすさ等を考慮すると、導線の直径は実用上1.5mm以上が好ましく、1.7mm以上がより好ましい。
【0021】
かかる導線把持部7によって、コアケースに巻回された導線を把持することで、導線を介してコアケースを
図1中のx方向において拘束して位置決めすることができる。導線3が巻回されたコアケース2が、保持部6と導線把持部7によって、台座4に対して位置決めされていることで、位置決め、固定の安定性が向上する。さらに、保持部6の先端側における嵌合と、台座板5側における導線の把持を採用することで、コアケースの中心を挟んだ両側での位置決め、固定が可能であるため、位置決め、固定の安定性が増すとともに、外力に対する位置ずれ抑制の点でも優れる。しかも、導線を用いて位置決め、固定するため、コイル部品の構成が大幅に簡略化されるうえに、位置決めに際して特許文献2に示すような、コアケースの外周側に設けた嵌合部が必要ないため、コイル部品の小型化が可能となる。また、導線が巻回されたコアケースは保持部6と導線把持部7によって固定されるため、接着剤を用いなくても十分な固定が可能である。導線3が巻回されたコアケース2と台座4との固定に接着剤が用いられていない構成を採用することで、コイル部品の製造工程の簡略化にも寄与する。
【0022】
図1および
図2に示す実施形態では、導線把持部7は、一本の導線8を把持することで、位置決め、固定しているが、二本以上の導線を一つの導線把持部で把持したり、二つ以上の導線把持部を設けることも可能である。但し、コイル部品の小型化、簡略化の観点からは一つの導線を把持して、位置決め、固定することがより好ましい。
【0023】
保持部6および導線把持部7は台座板5と別体で形成してから組み立てることも可能であるが、本実施形態のように、一体で形成した方が、工程の簡略化、強度の観点からも好ましい。
【0024】
次に、台座板5の保持部6と嵌合して、位置決め、固定されるコアケース側の構造を、
図3および
図4を参照しながら説明する。
図3(a)は環状のコアケース2の内周側に嵌挿されるセパレータを嵌挿方向(環状コアケースの軸方向)から見た正面図であり、
図3(b)はその側面図である。セパレータ9は、コアケースの導線の巻回領域を複数に分割するためのものであり、
図3に示すセパレータはコアケースとは別体で構成されたものである。
図1、
図2に示した実施形態において、セパレータとして、従来のコイル部品のようにコアケースと一体となっているものを用いることも可能である。しかしながら、セパレータをコアケースと別体で構成することで、コアケース本体を簡易な構造にすることができる。具体的には、汎用性の高い、突起部等がない単純な円環状のコアケースを用いることができる。
【0025】
セパレータ9は、コアケースに嵌挿する方向(図中のB方向)から見て中心16から互いに120度の角度をなして径方向に延びる複数の仕切板13、14を備える。複数の仕切板のうちの一つである仕切板13は、他の二つの仕切板14よりも、コアケースに嵌挿する方向に長く構成されていて、仕切板13だけ、その両端がセパレータ9から突出していて、突出部21を構成している。仕切板13の突出部21が台座4に形成された保持部6の貫通孔10と嵌合する。仕切板13よりも短い仕切板14の端面は、嵌合の際のストッパの役割も果たしている。仕切板13が保持部6の貫通孔10と嵌合することで、セパレータ9を介してコアケース2が位置決め、固定される。かかる構成では、一つの仕切板13をコアケースの軸方向(コアケースに嵌挿する方向(図中のB方向))に長くするだけで保持部と嵌合するための構造が形成できるため、嵌合のためのセパレータ構造が簡易なものとなる。また、セパレータ9はコアケース2の内周側に嵌挿して用いるため、コアケースの巻線領域はコアケースの内側で複数に分割される。したがって、従来のコアケースのような、セパレータがコアケースの外周側に突出している構造に比べて、コイル部品の構成が簡易なものになるとともに、コイル部品の小型化も可能となる。さらに、保持部6の貫通孔10との嵌合には、コアケースの中心(セパレータの中心16)を挟んで、台座板5の反対側(上方)に位置する仕切板13を用いているため、上述の導線把持部7による位置決め、固定位置との距離を大きく取ることができる。そのため、かかる構成は外力による位置ずれ抑制に有効である。
【0026】
図3(a)に示すように、複数の仕切板13、14はコアケース2に嵌挿する方向から見て、中心側部17が、コアケース2と嵌合する嵌合側部18よりも薄くなっている。具体的には、仕切板13、14は嵌合面15から中心に向かうにしたがい徐々に薄くなり、途中からは厚さは一定である。厚さが一定の仕切板を用いることも可能であるが、
図3に示すように、コアケース2と嵌合する嵌合面15側は、導線を離間させるために所定の幅を確保し、中心部側は、導線が配置される空間をより大きく取れるように薄くすることが好ましい。また、厚さ一定の部分を設けずに、コアケース2と嵌合する側から中心側全体に渡って徐々に薄くなるように構成することでもできるが、厚さ一定の部分を設ける方が、導線巻回部分において空間確保のための角度をつけやすい。
図3に示すセパレータでは、嵌合する側から中心側に向かって徐々に薄くなる傾斜面が、セパレータの中心方向に向かうように構成されており、嵌合する側から中心に向かって徐々に薄くなる部分は、厚さ一定の部分よりも長く構成されている。
【0027】
セパレータ9がコアケース2と別体で構成されているため、導線はセパレータ9をコアケース2に嵌挿する前に巻回してもよいし、嵌挿した後に巻回してもよい。セパレータ9をコアケース2に嵌挿する前に導線を巻回する場合は、導線の巻回が容易になる。
【0028】
また、
図3に示すセパレータは、
図3(b)に示すように、コアケース2との嵌合面15に、嵌挿の深さ位置を規定するストッパ19を有する。ストッパ19を設けることで、正確な深さでセパレータを嵌挿することができる。コアケース2がセパレータ9の長手方向の中央に位置するように、
図3(b)に示すストッパ19は、嵌合面15の長手方向片側に片寄った位置に設けられている。ストッパの形状はこれを特に限定するものではないが、コアケース側に、嵌合面15に垂直な面を有することが好ましい。例えば、ストッパ19は四角形の突起でもよいし、直角三角形の突起でもよい。
図3に示すセパレータで9は、直角三角形のストッパを形成してある。嵌合面15からのストッパの高さは、セパレータ9とコアケース2とのクリアランスが設けられている場合やコアケースの角にアールが形成されている場合は、少なくともそれらよりも大きく設定する。また、
図3に示すセパレータでは、すべての仕切板にストッパが設けられているが、少なくとも一つの仕切板に設けておけばよい。なお、
図3(a)では便宜上ストッパ19は図示していない。
【0029】
さらに、セパレータ9は
図3(b)に示すように、嵌合面15上、ストッパ19よりも中央側に、コアケース2の内周側を押圧可能に構成された突起部20を有する。
図3(b)に示すセパレータ9では、嵌合面の幅(嵌挿方向に垂直な方向の幅)よりも細い帯状の突起部20が、かかる幅方向の中央に配置されている。突起部20は、ストッパ19よりも嵌合面15からの高さが低く、セパレータ9がコアケースに嵌挿可能な高さに形成される。一方、コアケース2の内周側を押圧して、コアケースとセパレータとを固定するに十分な押圧力が得られる高さとする。コアケースとセパレータとの間にクリアランスがある場合は、少なくともそのクリアランスよりも大きくする。突起部20はコアケースと嵌合する部分の少なくとも一部に形成すればよいが、突起部20が嵌挿方向に長くなると嵌挿がしにくくなる。嵌挿工程の終期に押圧力が高まるように、突起部20はコアケースの厚さよりも短くして、かつストッパ19に隣接して配置することがより好ましい。突起部20は、長手方向において高さが一定の形態でもよいし、
図3(b)に示すようにストッパ19に向かって高くなるスロープ状の形態でもよい。
図3(b)のセパレータのようにスロープ状の突起部を用いると、嵌挿をスムーズに行うことができる。但し、スロープの傾斜が大きすぎるとコアケースが外れやすくなるため、十分な固定が得られるよう設定する。なお、セパレータ9とコアケース2の寸法を調整して、セパレータ9とコアケース2の嵌合面での互いの押圧力を大きくすれば突起部20がなくても強固な固定が可能である。しかしながら、その場合は、セパレータ9の嵌挿自体が困難になる。それに対して、
図3(b)に示すような突起部20を設けることで、コアケースとセパレータとの固定を強固にかつ簡易に行うことができる。
【0030】
図4にはセパレータ9がコアケース2に嵌挿された状態を示す。
図3に示すセパレータ9は、
図3のBの矢印の方向から環状のコアケース2の内周側に嵌挿され、突起部20によって押圧力が高められながらコアケース2の端部がストッパ19に接触してコアケース2とセパレータ9とが正確に、かつ強固に結合される。セパレータ9が嵌挿されたコアケース2は、さらにその軸方向の両側で、台座4の保持部6と嵌合して、コイル部品が構成される。ここで、保持部6の貫通孔10は仕切板13の突出部21の端面形状に倣った開口形状にしてもよいが、本実施形態では、突出部21の端面のうち、仕切板の厚さが変化している部分を収容可能な長方形と、仕切板の厚さが一定の部分を収容可能な長方形とを組み合わせた凸形状の貫通孔を用いている。かかる構成でも、コアケースの軸方向の動きを拘束することが可能である。かかる構成によれば、貫通孔の構成が簡易なものとなり、セパレータ9が嵌挿されたコアケース2と保持部6との嵌合も容易である。なお、上記のセパレータの構造は、導線把持部7等の有無やその構成によらず、台座付のコイル部品に広く適用できるものである。
【0031】
セパレータ9と保持部6とは、それらの弾性変形により互いに嵌め合うことが好ましい。適度な弾性率と強度を有する材料としては、例えばガラス強化した熱可塑性樹脂(例 PBT樹脂 PET樹脂)等がある。本実施形態では、セパレータ9と台座4は同じPBT樹脂を用いているが、これらを異なるものにしてもよい。
【0032】
線径1.6mmの導線を外径28.2mm、内径15.8mmのコアケースに巻回したものを用いて、上記実施形態によって台座付のコイル部品を構成したところ、横44mm、縦32mm、高さ39mmを実現し、外周側に嵌合部を設けた従来の構成に比べて高さ方向において3%程度の小型化を実現した。
【0033】
また、
図1〜
図3に示す実施形態は、三相のコモンモードチョークを適用例として想定している。そのため、
図3に示すセパレータ9は導線の巻回領域を三つに分割すべく、仕切板を三つ備えているが、仕切板の数は用途に応じて変更することができる。例えば、単相のコモンモードチョーク用に巻回領域を二つに分割すべく、二つの仕切板を設けてもよい。この場合は、仕切板のなす角を180度にして、二つの仕切板を直線状に配置した構成にすればよい。但し、仕切板に対応する部分には導線が巻回されないため、導線を把持して位置決め、固定するためには、台座板5側の仕切板の両側の導線を把持する構成か、仕切板と台座板とが平行なるように配置するなど、仕切板と台座板とがなす角度を90度以外にした構成を採用する。
【0034】
また、上記の実施形態はコモンモードチョーク用のコイル部品を例として示したが、それに限らずコイル部品に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0035】
1:コイル部品
2:コアケース
3:導線
4:台座
5:台座面
6:保持部
7:導線把持部
8:導線
9:セパレータ
10:貫通孔
11:凹部
12:貫通孔
13:仕切板
14:仕切板
15嵌合面
16:中心
17:中心側部
18:嵌合側部
19:ストッパ
20:凸部
21:突出部