(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも第1正極材と第2正極材が混合された混合正極材であって、前記第1正極材の動作電圧範囲が前記第2正極材の動作電圧範囲より高い混合正極材を含む正極、負極及び分離膜を含む二次電池の放電電流を測定するセンサーと、
前記二次電池の充電状態を推定し、前記放電電流の大きさが臨界電流の大きさより小さい第1条件では前記充電状態に対応する「予め定義された値としての第1抵抗」を、前記放電電流の大きさが臨界電流の大きさより大きい第2条件では前記充電状態に対応する「予め定義された値としての第2抵抗」を用いて二次電池の放電電圧を決定し、前記決定された放電電圧と前記測定された放電電流から二次電池の出力を決定する制御部と、
を含むことを特徴とする二次電池の出力推定装置。
前記制御部が、前記第1条件において、前記第1抵抗と前記放電電流の大きさから計算される第1電圧変化量を用いて前記二次電池の放電電圧を決定することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
前記制御部が、前記推定された充電状態に対応する「予め定義された値としての二次電池の第1電圧」から前記第1電圧変化量を引いて前記二次電池の放電電圧を決定することを特徴とする、請求項2に記載の二次電池の出力推定装置。
前記制御部が、前記第2条件において、前記第2抵抗と前記放電電流の大きさから計算される第2電圧変化量を用いて前記二次電池の放電電圧を決定することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
前記制御部が、前記推定された充電状態に対応する「予め定義された値としての二次電池の第2電圧」から前記第2電圧変化量を引いて前記二次電池の放電電圧を決定することを特徴とする、請求項5に記載の二次電池の出力推定装置。
前記第2電圧が、前記二次電池が放電するとき、前記第2正極材が電気化学的反応に関与し始める電圧であることを特徴とする、請求項6に記載の二次電池の出力推定装置。
(a)少なくとも第1正極材と第2正極材が混合された混合正極材であって、前記第1正極材の動作電圧範囲が前記第2正極材の動作電圧範囲より高い混合正極材を含む正極、負極及び分離膜を含む二次電池の放電電流を測定する段階と、
(b)前記二次電池の充電状態を推定する段階と、
(c)前記放電電流の大きさが臨界電流の大きさより小さい第1条件では前記充電状態に対応する「予め定義された値としての第1抵抗」を、前記放電電流の大きさが前記臨界電流の大きさより大きい第2条件では前記充電状態に対応する「予め定義された値としての第2抵抗」を用いて二次電池の放電電圧を決定する段階と、
(d)前記決定された放電電圧と前記測定された放電電流から二次電池の出力を決定する段階と、
を含むことを特徴とする二次電池の出力推定方法。
前記(c)段階で、前記第1条件において、前記第1抵抗と前記放電電流の大きさから計算される第1電圧変化量を用いて前記二次電池の放電電圧を決定することを特徴とする、請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
前記推定された充電状態に対応する「予め定義された値としての二次電池の第1電圧」から前記第1電圧変化量を引いて前記二次電池の放電電圧を決定することを特徴とする、請求項16に記載の二次電池の出力推定方法。
前記(c)段階で、前記第2条件において、前記第2抵抗と前記放電電流の大きさから計算される第2電圧変化量を用いて前記二次電池の放電電圧を決定することを特徴とする、請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
前記推定された充電状態に対応する「予め定義された値としての二次電池の第2電圧」から前記第2電圧変化量を引いて前記二次電池の放電電圧を決定することを特徴とする、請求項19に記載の二次電池の出力推定方法。
前記第2電圧が、二次電池が放電するとき、前記第2正極材が電気化学的反応に関与し始める電圧であることを特徴とする、請求項20に記載の二次電池の出力推定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
二次電池の出力は、正極材の電気化学的物性によって影響を受ける。したがって、二次電池に含まれた正極材の種類によって二次電池が特異な電気化学的挙動を示すことがある。このような場合は、二次電池の出力を正確に推定することが困難である。
【0012】
本発明は、市場が求める二次電池の性能を考慮して、2つ以上の正極材を混合した混合正極材を含み、前記混合正極材によって特異な電気化学的挙動を示す二次電池の出力を正確に推定する装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するため、本発明による二次電池の出力推定装置は、少なくとも第1正極材と第2正極材が混合されたであって、前記第1正極材の動作電圧範囲が前記第2正極材の動作電圧範囲より高い混合正極材を含む正極、負極及び分離膜を含む二次電池の放電電流を測定するセンサー;及び前記二次電池の充電状態を推定し、前記放電電流の大きさが臨界電流の大きさより小さい第1条件では前記充電状態に対応する「予め定義された値としての第1抵抗」を、前記放電電流の大きさが前記臨界電流の大きさより大きい第2条件では前記充電状態に対応する「予め定義された値としての第2抵抗」を用いて二次電池の放電電圧を推定して、前記推定された放電電圧と前記測定された放電電流から二次電池の出力を推定する制御部;を含む。
【0014】
ここで、動作電圧範囲とは、二次電池が放電する過程で電気化学的反応が起きる電圧範囲のことを言う。一例として、リチウム二次電池の放電過程ではリチウムイオンが正極材に挿入される電気化学的反応が起きるため、動作電圧範囲はリチウムイオンが正極材に挿入される電圧範囲を意味する。
【0015】
前記第1正極材の動作電圧範囲が前記第2正極材の動作電圧範囲より相対的に高いため、二次電池が連続的に放電すれば、前記第1正極材が先に電気化学的反応に参加する。また、前記第1正極材の電気化学的反応が殆ど完了すれば、前記第2正極材が電気化学的反応に参加する。前記第2正極材が電気化学的反応に参加し始める電圧は、前記第1正極材と前記第2正極材の種類及び混合比率によって固有に決定され得る。本発明では、前記第2正極材が電気化学的反応に参加し始める電圧を転移電圧と称する。
【0016】
前記充電状態は、二次電池に残っている充電残量を意味するパラメーターであって、本発明が属する技術分野ではSOC(State Of Charge)またはzとのパラメーターとして表す。前記パラメーターSOCは充電状態を%スケールで表すときに使用され、パラメーターzは充電状態を0〜1の正規化した範囲で表すときに使用される。
【0017】
前記充電状態は、二次電池が有する動作電圧範囲の上限から下限まで二次電池を放電させたときに放電する全体容量を基準に、現在残っている放電可能な容量の相対的比率として決定することができる。
【0018】
前記充電状態の推定方式としては、二次電池の充電及び放電電流を積算して計算する方式、二次電池の開放電圧から推定する方式、カルマンフィルターまたは拡張カルマンフィルターを用いて推定する方式などが当業界に知られている。
【0019】
したがって、前記充電状態は、本発明が属する技術分野で公知の様々な方式を選択的に適用して容易に推定することができる。
【0020】
前記二次電池の放電電圧は、所定時間前記放電電流が二次電池から流れ出たときの二次電池の電圧を意味する。前記二次電池の放電電圧は、放電電流の大きさが大きいほど減少する。
【0021】
1種の正極材を含む二次電池の放電電圧は、前記二次電池から流れ出る放電電流の大きさが大きいほど線形的に減少する。また、前記放電電圧の減少する傾きは二次電池の抵抗に該当し、前記減少する傾きは放電電流の大きさと関係なく一定値を有する傾向がある。
【0022】
動作電圧範囲が相異なる第1及び第2正極材を含む二次電池は、電圧範囲によって電気化学的反応に関与する正極材が変わり、正極材が変われば二次電池の抵抗も変化する。
【0023】
したがって、二次電池の放電中に第2正極材が電気化学的反応に参加し始めれば、放電電圧の減少する傾き、すなわち二次電池の抵抗が変わる現象が現れる。
【0024】
このような抵抗変化現象は、二次電池の充電状態が適切な範囲に属し、放電電流の大きさがある程度増加して、第2正極材が電気化学的反応に参加可能な転移電圧まで二次電池の電圧が低くなったときに発生する。
【0025】
換言すれば、二次電池の充電状態が高過ぎれば、放電電流の大きさが増加しても二次電池の電圧が転移電圧まで低くならない。また、二次電池の充電状態が低過ぎれば、第1正極材の電気化学的反応が事実上完了し、第2正極材のみが電気化学的反応に関与するため、正極材の変更による抵抗変化が生じない。
【0026】
本発明では、二次電池の放電中に二次電池の抵抗変化が観察可能な所定の充電状態区間を抵抗変化区間と称する。
【0027】
また、本発明は、二次電池の抵抗変化が実質的に観察され始めるときの放電電流を臨界電流と称する。
【0028】
また、本発明は、抵抗変化が生じる前の二次電池の抵抗を第1抵抗、抵抗変化が生じた後の二次電池の抵抗を第2抵抗と称する。
【0029】
前記臨界電流の大きさは、抵抗変化区間内で二次電池の充電状態が高いほど大きくなる。充電状態が増加すれば、放電電流の大きさが増加しなければ二次電池の電圧が転移電圧まで低くならないためである。
【0030】
前記第1抵抗と前記第2抵抗は、実験を通じて、二次電池の充電状態毎に予め定義することができる。前記第1抵抗は、前記抵抗変化区間内で二次電池の充電状態が低いほど増加する。また前記第2抵抗は、前記抵抗変化区間内で二次電池の充電状態が変化しても有意な変化を示さない。
【0031】
望ましくは、前記制御部は、前記第1抵抗及び/または前記第2抵抗を得るため、充電状態毎に予め定義されている第1抵抗及び/または第2抵抗に関するデータを参照することができる。
【0032】
望ましくは、前記制御部は、充電状態毎に予め定義されている臨界電流の大きさに関するデータを参照して、前記推定された充電状態に対応する臨界電流の大きさを得て前記第1条件及び第2条件を決定することができる。
【0033】
一態様によれば、前記制御部は、前記第1条件において、前記第1抵抗と前記測定された放電電流から計算される第1電圧変化量を用いて前記二次電池の放電電圧を推定することができる。ここで、前記第1電圧変化量はオームの法則によって計算することができる。
【0034】
望ましくは、前記制御部は、前記推定された充電状態に対応する「予め定義された値としての二次電池の第1電圧」から前記第1電圧変化量を引いて前記二次電池の放電電圧を推定することができる。
【0035】
ここで、前記第1電圧は、前記推定された充電状態に対応する二次電池の開放電圧である。前記制御部は、前記第1電圧を得るため、二次電池の充電状態毎に予め定義されている開放電圧に関するデータを参照し得る。
【0036】
前記開放電圧に関するデータは、充電状態毎に二次電池の開放電圧を正確に測定可能な条件で二次電池の放電実験を行うことで得ることができる。
【0037】
他の態様によれば、前記制御部は、前記第2条件において、前記第2抵抗と前記測定された放電電流から計算される第2電圧変化量を用いて二次電池の放電電圧を推定することができる。ここで、前記第2電圧変化量はオームの法則によって計算することができる。
【0038】
望ましくは、前記制御部は、前記推定された充電状態に対応する「予め定義された値としての二次電池の第2電圧」から前記第2電圧変化量を引いて前記二次電池の放電電圧を推定することができる。
【0039】
前記第2電圧は、第1正極材及び第2正極材の種類と混合比率によって固有に決定することができる。前記第2電圧は、任意の充電状態にある二次電池が放電するとき、放電電流の大きさによって二次電池の放電電圧が如何に変化するかを実験的に観察することで求めることができる。前記第2電圧は二次電池の充電状態毎に固定された値または変化する値(例えば、転移電圧)に予め定義され得る。また、二次電池が退化するほど低い電圧範囲で第2正極材が動作する。したがって、前記第2電圧は、二次電池の退化に伴ってその値が低くなるように予め定義され得る。
【0040】
さらに他の態様によれば、本発明による二次電池の出力推定装置は、前記制御部と組み合わせられた保存部をさらに含み、前記制御部は前記推定された二次電池の出力を前記保存部に保存することができる。
【0041】
さらに他の態様によれば、本発明による二次電池の出力推定装置は、前記制御部と組み合わせられた通信インターフェースをさらに含み、前記制御部は前記推定された二次電池の出力を前記通信インターフェースを通じて外部デバイスに出力することができる。
【0042】
さらに他の態様によれば、本発明による二次電池の出力推定装置は、前記制御部と組み合わせられた表示部をさらに含み、前記制御部は前記表示部を通じて前記推定された二次電池の出力をグラフィックインターフェースで表示することができる。
【0043】
本発明において、前記保存部は、充電状態毎に定義された、前記第1抵抗、前記第2抵抗、前記臨界電流の大きさ、前記第1電圧及び前記第2電圧からなる群より選択された少なくとも1つのデータを保存して更新することができる。
【0044】
さらに他の態様によれば、本発明による二次電池の出力推定装置は、二次電池をエネルギー源として使用する多様な電気駆動装置に含まれ得る。
【0045】
上記の課題を達成するため、本発明による二次電池の出力推定方法は、少なくとも第1正極材と第2正極材が混合された混合正極材であって、前記第1正極材の動作電圧範囲が前記第2正極材の動作電圧範囲より高い混合正極材を含む正極、負極及び分離膜を含む二次電池の放電電流を測定する段階;前記二次電池の充電状態を推定する段階;前記放電電流の大きさが臨界電流の大きさより小さい第1条件では前記充電状態に対応する「予め定義された値としての第1抵抗」を、前記放電電流の大きさが臨界電流の大きさより大きい第2条件では前記充電状態に対応する「予め定義された値としての第2抵抗」を用いて二次電池の放電電圧を推定する段階;及び前記推定された放電電圧と前記測定された放電電流から二次電池の出力を推定する段階;を含むことができる。
【0046】
選択的に、本発明による二次電池の出力推定方法は、前記推定された二次電池の出力を保存する段階、及び/または、前記推定された二次電池の出力を外部デバイスに出力する段階、及び/または、前記推定された二次電池の出力をグラフィックインターフェースで表示する段階をさらに含み得る。
【0047】
本発明の技術的課題は、上述した二次電池の出力推定方法をプログラム化して書き込んだコンピューター可読の記録媒体によっても達成することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、二次電池の抵抗が変化する充電状態区間において、混合正極材を含む二次電池の出力を容易且つ簡単に推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のさらにも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0051】
後述される実施例は、本発明の技術的思想がリチウム二次電池に適用された場合に関する。ここで、リチウム二次電池とは、充電と放電が行われる間に、リチウムイオンが作動イオンとして働いて正極と負極で電気化学的反応を引き起こす二次電池のことを総称する。前記作動イオンは、二次電池が充電または放電する過程で電気化学的な酸化及び還元反応に参加するイオンを意味し、例えばリチウムイオンが該当する。したがって、リチウム二次電池に使用された電解質や分離膜の種類、二次電池の包装に使用された包装材の種類、リチウム二次電池の内部または外部の構造などによって二次電池の名称が変更しても、リチウムイオンが作動イオンとして使用される二次電池であれば、何れも前記リチウム二次電池の範疇に含まれると解釈できる。
【0052】
また、本発明は、リチウム二次電池以外の他の二次電池にも適用することができる。したがって、作動イオンがリチウムイオンではなくても、本発明の技術的思想が適用可能な二次電池であればその種類に関係なく全て本発明の範疇に含まれると解釈せねばならない。
【0053】
また、二次電池は、それを構成する要素の数によって限定されない。したがって、二次電池は負極、電解質及び正極を基本単位にする単一セルを始めとして、単一セルのアセンブリ、多数のアセンブリが直列及び/または並列で連結されたモジュール、多数のモジュールが直列及び/または並列で連結されたパック、多数のパックが直列及び/または並列で連結された電池システムなども含むと解釈されねばならない。
【0054】
本発明の実施例において、二次電池は第1正極材及び第2正極材としてLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(NMC正極材)及びLiFePO
4(LFP正極材)を含む。前記NMC正極材と前記LFP正極材との混合比率は7:3(重量比)である。二次電池に含まれた負極材はグラファイトであり、電解質はEC(エチレンカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)が3:4:3(重量比)の比率で混合された溶媒に、リチウム塩LiPF
6が添加された電解液である。分離膜としては、多孔性ポリオレフィン基材の表面に無機物粒子をコーティングしたものを使用した。二次電池はパウチ型二次電池で製作され、43.05Ahの容量を有する。二次電池は開放電圧を基準に2.6Vないし4.2V範囲で充電及び放電可能に製作された。
【0055】
図1及び
図2は、二次電池を5Cの放電率でパルス放電させながら、充電状態の変化に従って二次電池の抵抗及び開放電圧を測定した結果を示したグラフである。
【0056】
図1を参照すれば、特定の充電状態区間(約20ないし40%の区間)で二次電池の抵抗が局所的に増加してから減少するコンベックス(convex)パターンが現れ、コンベックスパターンの頂点を前後にして2つの変曲点(点線の円を参照)が生じることが観察できる。
【0057】
図2を参照すれば、特定の充電状態区間で変曲点が含まれた電圧平坦区間(点線の四角形を参照)が観察できる。ここで、電圧平坦区間とは、変曲点を基準にして電圧の変化が小さいプロファイル部分を意味する。
【0058】
このように、二次電池の抵抗及び開放電圧プロファイルでコンベックスパターンと電圧平坦区間が観察される理由は、二次電池が特定の充電状態区間で放電するとき、リチウムイオンが挿入される正極材の種類がNMC正極材からLFP正極材に変わるためである。
【0059】
すなわち、正極材が変わる充電状態区間より大きい充電状態区間で二次電池が放電すれば、主にNMC正極材にリチウムイオンが挿入され、NMC正極材に挿入されたリチウムイオンの量が増加するほど、二次電池の開放電圧は低くなる。一方、正極材が変わる充電状態区間より低い充電状態区間で二次電池が放電すれば、主にLFP正極材にリチウムイオンが挿入され、LFP正極材に挿入されたリチウムイオンの量が増加するほど、二次電池の開放電圧は低くなる。また、正極材が変わる充電状態区間で二次電池が放電するときは、リチウムイオンが挿入可能なNMC正極材の容量が相当消尽しながら、LFP正極材にリチウムイオンが挿入され始める。LFP正極材にリチウムイオンが挿入される間にもNMC正極材にリチウムイオンが挿入され続け、NMC正極材がリチウムイオンを収容可能な容量をすべて消尽すれば、そのときからLFP正極材のみにリチウムイオンが挿入される。
【0060】
このような正極材種類の変更は、
図2に示した開放電圧プロファイルにおいて、変曲点が生じる3.2Vに対応する充電状態範囲で二次電池が放電するときに生じる。
【0061】
図1に示した内部抵抗のコンベックスパターンをより具体的に観察すれば、二次電池の抵抗が急に増加する充電状態区間(頂点の右側)と、逆に二次電池の抵抗が再び低くなる充電状態区間(頂点の左側)が確認できる。
【0062】
ここで、二次電池の抵抗が急に増加する理由は、NMC正極材がリチウムイオンを収容可能な容量の殆どを消尽しながらNMC正極材の抵抗が急に増加するためである。
【0063】
また、二次電池の抵抗が再び低くなる理由は、LFP正極材にリチウムイオンが挿入され始めながら、LFP正極材の低い抵抗特性が二次電池の抵抗として発現されるためである。
【0064】
さらに、正極材の変更が生じる充電状態区間より低い充電状態区間で二次電池が放電する場合、充電状態が低くなるほど二次電池の抵抗が再び増加することが確認できる。このような抵抗の増加は、負極材(グラファイト)として使用された物質の抵抗が増加することからその原因を探ることができる。
【0065】
図3は、二次電池の充電状態を変化させながら二次電池を相異なる大きさの放電電流でパルス放電させたとき、放電電圧(V
dis)の変化パターンを測定して記録したI−Vプロファイルを示したグラフである。
【0066】
図3に示されたグラフの横軸は放電電流の大きさを放電率(C−rate)に換算して示したものであり、縦軸は二次電池の放電電圧(V
dis)を示す。縦軸には、二次電池の使用電圧範囲が2.60〜4.20Vである点を勘案し、全体の使用電圧範囲を示した。勿論、二次電池の使用電圧範囲は第1正極材及び第2正極材の種類と混合比率によって変わり得る。
【0067】
ここで、放電電圧(V
dis)は、10秒間二次電池をパルス放電させた直後に測定した二次電池の電圧を意味する。また、二次電池を異なる大きさの多数の放電電流によってパルス放電させるとき、パルス放電が始まる前の二次電池の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)は同一に設定した。したがって、同じプロファイル上にある複数の点は、同じ充電状態条件で相異なる大きさの放電電流で二次電池がパルス放電したときの放電電圧(V
dis)の測定結果を示す。
【0068】
図3において、それぞれのプロファイルがY軸と交差する点はパルス放電が始まる前の二次電池の電圧であって、実質的に開放電圧に該当する。
【0069】
例えば、充電状態100%に該当するI−Vプロファイル(1)は、開放電圧が4.20Vの二次電池をそれぞれ5C及び10Cの放電率条件で10秒間放電したとき、放電電圧(V
dis)がどのように変化するのかを示す。
【0070】
図3の縦軸に示した使用電圧範囲は、大きく第1電圧区間(△V
1)、転移電圧区間(△V
t)及び第2電圧区間(△V
2)に分けられる。
【0071】
Y切片(すなわち、開放電圧)が第1電圧区間(△V
1)と第2電圧区間(△V
2)に属するI−Vプロファイルは、一定の傾きで放電電圧(V
dis)が減少するパターンを有する。一方、Y切片(すなわち、開放電圧)が転移電圧区間(△V
t)に属するプロファイルは、放電電圧(V
dis)の減少する傾きが変化するパターンを有する。
【0072】
まず、二次電池の開放電圧が第1電圧区間(△V
1)に属するとき、二次電池がパルス放電すれば、作動イオンがNMC正極材に主に挿入される。したがって、二次電池の放電率に関係なく、放電電圧(V
dis)がNMC正極材の抵抗特性に依存性を見せながら減少する。
【0073】
二次電池の開放電圧が第1電圧区間(△V
1)に属するI−Vプロファイル(1〜5)の減少する傾きはほぼ一定であり、第1電圧区間(△V
1)内で放電が始まる前の開放電圧が低くなるほどI−Vプロファイルが下方に平行に移動することが分かる。
【0074】
前記I−Vプロファイル(1〜5)の減少する傾きは放電率の変化に対する放電電圧の変化の比率であるため、実質的に二次電池の抵抗に該当する。そこで、前記I−Vプロファイル(1〜5)の減少する傾きが一定であることから、開放電圧が第1電圧区間(△V
1)に属する二次電池は放電電流の大きさが変化しても抵抗が一定に維持されることが確認できる。
【0075】
次いで、二次電池の開放電圧が転移電圧区間(△V
t)に属するときのI−Vプロファイル(6〜9)は、約3.2V付近で減少する傾きが変化する特性を有する。
【0076】
前記3.2Vは、リチウムイオンが挿入される正極材の種類がNMC正極材からLFP正極材に変更され始める転移電圧(
図2の点線の四角形を参照)に該当する。したがって、二次電池の電圧が3.2V付近まで減少する程度に放電電流の大きさが増加すれば、LFP正極材にリチウムイオンが挿入され始める。また、LFP正極材が電気化学的反応に関与し始め、二次電池の抵抗変化が起きる。
図3を参照すれば、3.2V付近で二次電池の抵抗が変化する現象はI−Vプロファイル(6〜9)の減少する傾きが変化することから明らかに観察され、前記減少する傾きの変化は転移電圧区間(△V
t)に対応する充電状態区間のみで発生することが分かる。
【0077】
本発明では、二次電池の放電中の抵抗変化がI−Vプロファイルの傾きの変化で観察できる所定の充電状態区間を抵抗変化区間と定義する。
【0078】
また、本発明では、二次電池の抵抗変化が起きる放電電流の大きさを臨界電流の大きさと定義する。
図3のグラフにおいて、臨界電流の大きさは大体直線AとI−Vプロファイル(6〜9)とが交差する点の放電率から算出可能である。また、抵抗変化区間内で前記臨界電流の大きさは二次電池の充電状態が高いほど大きくなることが分かる。充電状態が増加すれば、放電電流の大きさが増加しなければ第2正極材が電気化学的反応に関与する程度に二次電池の電圧が低くならないためである。
【0079】
また、本発明では、抵抗変化が生じる前の二次電池の抵抗を第1抵抗、抵抗変化が生じた後の二次電池の抵抗を第2抵抗と定義する。
【0080】
前記第1抵抗は、I−Vプロファイルが直線Aと交差する点の左側に位置した直線区間の減少する傾きである。また、前記第2抵抗は、I−Vプロファイルが直線Aと交差する点の右側に位置した直線区間の減少する傾きである。
【0081】
前記I−Vプロファイル(6〜9)の直線区間を観察すれば、交差点左側の直線区間は相異なる減少する傾きを有し、放電が始まる前の充電状態が低いほど減少する傾きが増加する。これは、交差点左側の直線区間はNMC正極材が電気化学的反応に関与する区間に該当し、充電状態が低いほどNMC正極材にリチウムイオンが挿入され難くなって、二次電池の抵抗がその分増加するためである。
【0082】
また、交差点右側の直線区間は放電が始まる前の充電状態が異なっても減少する傾きの差異がほとんどない。これは、交差点右側の直線区間はLFP正極材が電気化学的反応に関与する区間に該当し、放電前の充電状態が異なってもLFP正極材の抵抗変化が大きくないためである。
【0083】
このようなことを考慮すれば、前記第1抵抗は前記抵抗変化区間内で二次電池の充電状態が低いほど増加し、前記第2抵抗は前記抵抗変化区間内で二次電池の充電状態が変化しても有意な変化を示さないと見なせる。
【0084】
次いで、放電が始まる前の開放電圧が第2電圧区間(△V
2)に属するとき二次電池がパルス放電すれば、放電電流の大きさと関係なくリチウムイオンがLFP正極材に主に挿入される。したがって、全体の放電率区間に亘ってI−Vプロファイル(10及び11)は一定の傾きを有して線形的に減少するパターンを有し、I−Vプロファイル(10及び11)の傾きは前記第2電圧区間(△V
2)内で放電が始まる前の開放電圧が低くなるほど急になる。開放電圧が低くなるほど負極材として使用された物質の抵抗が増加し、二次電池の抵抗が増加するためである。
【0085】
I−Vプロファイル1〜5及び10〜11は傾きが一定であるため、二次電池の放電率が変化しても二次電池の抵抗は一定であると見なせる。一方、I−Vプロファイル6〜9は、放電率が増加するほど二次電池の抵抗が徐々に減少していき、一定値に収束すると見なせる。
【0086】
本発明は、上記のような実験的知見に基づいて創案されたものであって、抵抗変化が生じる充電状態区間で充電状態毎に第1抵抗及び第2抵抗を予め定義し、二次電池の放電電圧を推定するときに用いる抵抗値を放電電流の大きさに基づいて前記第1抵抗及び前記第2抵抗から選択し、選択された抵抗値を用いて二次電池の放電電圧を推定し、推定された放電電圧と放電電流の大きさを用いて二次電池の出力を推定できる装置及び方法を提供する。
【0087】
図4は、本発明の実施例による二次電池の出力推定装置100の構成を概略的に示したブロック図である。
【0088】
図4を参照すれば、本発明による二次電池の出力推定装置100はセンサー110及び制御部120を含む。
【0089】
前記装置100は、混合正極材を正極に含む二次電池130の出力を推定するために二次電池130と負荷135との間に連結され得る。
【0090】
前記混合正極材は、少なくとも第1正極材及び第2正極材を含み、前記第1正極材の動作電圧範囲が第2正極材の動作電圧範囲より高い。したがって、二次電池が連続的に放電するとき、高い電圧範囲では第1正極材が主に電気化学的反応に参加し、低い電圧範囲では第2正極材が主に電気化学的反応に参加する。
【0091】
一例として、前記第1正極材及び前記第2正極材は、それぞれNMC正極材及びLFP正極材であり得る。
【0092】
前記二次電池130はリチウム二次電池であり得るが、本発明が電池の種類によって限定されることはない。
【0093】
前記二次電池130は、電気エネルギーで動作可能な多様な種類の電気駆動装置に搭載され得、前記電気駆動装置はその種類に特に制限がない。
【0094】
一実施例として、前記電気駆動装置は、携帯電話、ラップトップパソコン、タブレットパソコンなどのモバイルコンピューター装置、またはデジタルカメラ、ビデオカメラ、オーディオ/ビデオ再生装置などを含む手持ち式のマルチメディア装置であり得る。
【0095】
他の実施例として、前記電気駆動装置は、電気自動車、ハイブリッド自動車、電気自転車、電気バイク、電気列車、電気船、電気飛行機などのように電気によって移動可能な電気動力装置、または電気ドリル、電気グラインダーなどのようにモーターを備えるパワーツールであり得る。
【0096】
さらに他の実施例として、前記電気駆動装置は、電力グリッドに設けられて新再生エネルギーや余剰発電電力を貯蔵する大容量電力貯蔵装置、または停電などの非常状況でサーバーコンピューターや移動通信装備などを含む各種の情報通信装置の電源を供給する無停電電源供給装置であり得る。
【0097】
前記負荷135は、各種の電気駆動装置に含まれたものであって、前記二次電池130が放電するときに供給される電気エネルギーによって作動される前記電気駆動装置内に含まれたエネルギー消耗装置を意味する。
【0098】
前記負荷135の非制限的な例としては、モーターのような回転動力装置、インバーターのような電力変換装置などが挙げられるが、本発明が負荷の種類によって限定されることはない。
【0099】
前記センサー110は、前記制御部120の制御下で、二次電池の放電電流を測定し、前記放電電流の測定値を前記制御部120に出力することができる。
【0100】
前記センサー110は、放電電流を測定するためのコントロール信号を前記制御部120から受信することができる。前記コントロール信号を受信すれば、前記センサー110は放電電流の測定値を制御部120に出力する。
【0101】
前記センサー110は、前記制御部120の制御下で、二次電池130の充電電流をさらに測定し、前記充電電流の測定値を前記制御部120に出力することができる。
【0102】
また、前記センサー110は、前記制御部120の制御下で、二次電池130の電圧をさらに測定し、前記電圧の測定値を前記制御部120に出力することができる。
【0103】
また、前記センサー110は、前記制御部120の制御下で、二次電池130の温度をさらに測定し、前記温度の測定値を前記制御部120に出力することができる。
【0104】
前記センサー110が二次電池130に対する電流、電圧及び温度からなる群より複数の特性値を測定するとき、前記センサー110はそれぞれの特性値を測定可能な構成要素を個別に含んでも良く、それぞれの特性値を測定可能な構成要素が分割されても良いことは自明である。
【0105】
前記制御部120は、前記センサー110を通じて、二次電池130の動作中に充電電流測定値と放電電流測定値の入力を受け、電流積算法によって二次電池130の充電状態を推定することができる。
【0106】
すなわち、前記制御部120は予め定義された二次電池130の満充電容量と二次電池130から流れた電流積算量との比率を計算して充電状態を推定することができる。例えば、満充電容量対比流出した電流積算量の比率が20%であれば、充電状態は80%になる。
【0107】
前記制御部120は、二次電池130の充電状態を推定するとき、前記電流積算法の外にも、二次電池の開放電圧から求める方式、カルマンフィルターまたは拡張カルマンフィルターを用いて求める方式など当業界で知られた他の方法を使用し得る。
【0108】
前記制御部120は、二次電池130の出力に対する推定が必要なときにセンサー110を制御することで放電電流の測定値を得て、前記放電電流の大きさが臨界電流の大きさより小さければ第1条件によって二次電池130の出力を推定し、逆に前記放電電流の大きさが臨界電流より大きければ第2条件によって二次電池130の出力を推定することができる。
【0109】
一態様によれば、前記臨界電流の大きさは、二次電池130の充電状態毎に予め定義することができる。この場合、前記制御部120は二次電池130の現在充電状態に対応する「予め定義された臨界電流の大きさ」を決定し、決定された臨界電流の大きさと前記放電電流の大きさとを比べて二次電池130の出力を推定するときに使用する条件を決定することができる。
【0110】
前記臨界電流の大きさは、放電実験を通じて
図3に示されたようなI−Vプロファイルを取得すれば容易に定義することができる。前記臨界電流の大きさは、上述したように、抵抗変化区間に対応するそれぞれのI−Vプロファイルが転移電圧(例えば、3.2V)を通過する点に対応する放電電流の大きさで定義することができる
【0111】
他の態様によれば、前記臨界電流の大きさは、二次電池130の現在充電状態に対応する「予め定義されたI−Vプロファイル」を用いてリアルタイムで計算することができる。
【0112】
図5は、二次電池130の所定の充電状態に対して予め定義されたI−Vプロファイルを示したグラフである。
【0113】
図5に示されたように、二次電池130の充電状態が抵抗変化区間に属すれば、放電電流の大きさによって放電電圧の変化を示すI−Vプロファイルの傾きが変化する。
【0114】
しかし、I−Vプロファイルの左側と右側はほぼ直線の区間を有するため、I−Vプロファイルは左側直線区間200と右側直線区間300との組合せに近似することができる。
【0115】
したがって、前記I−Vプロファイルに対する臨界電流の大きさは、近似的に、左側直線区間200と右側直線区間300と交差する点に対応する放電電流の大きさ(I
*)で定義することができる。
【0116】
前記左側直線区間200及び前記右側直線区間300に該当する線形方程式と前記臨界電流の大きさは、下記数式1のように定義することができる。
V
dis=V
1−I
dis*R
1
V
dis=V
2−I
dis*R
2
I
*=(V
1−V
2)/(R
1−R
2)
【0117】
ここで、V
1は左側直線区間200の線形方程式に対するY切片に該当する電圧であって、二次電池130が放電する前の開放電圧に該当する。V
1は二次電池130の充電状態毎に予め定義され得る。
【0118】
V
2は右側直線区間300に該当する線形方程式のY切片に該当する電圧であって、二次電池130の放電中に放電電流の大きさと関係なく二次電池130の抵抗が右側直線区間300の傾きに該当する抵抗値を有すると仮定するとき、二次電池130が放電する前の開放電圧に該当する。V
2は二次電池130の充電状態毎に予め定義され得る。代案的に、V
2は固定された値、例えば二次電池130の転移電圧(
図3の3.2Vを参照)に決定され得る。前記転移電圧は、近似的に第2正極材が電気化学的反応に関与し始める電圧に該当する。前記転移電圧は二次電池130の退化程度が増加すれば、その値が低くなるように予め定義され得る。
【0119】
I
disは、二次電池130が放電するときに測定した放電電流の大きさを示す。
【0120】
R
1は左側直線区間200の傾きに該当し、二次電池130の放電中、第1正極材が主に電気化学的反応に関与するときに二次電池130が有する抵抗であって、本発明の第1抵抗に該当する。R
1は二次電池130の充電状態毎に予め定義され得るが、一例として臨界電流の左側で観察されるI−Vプロファイルの平均傾きをもって定義され得る。
【0121】
R
2は右側直線区間300の傾きに該当し、二次電池130の放電中、第2正極材が主に電気化学的反応に関与するときに二次電池130が有する抵抗であって、本発明の第2抵抗に該当する。R
2は二次電池130の充電状態毎に予め定義され得るが、一例として臨界電流の右側で観察されるI−Vプロファイルの平均傾きをもって定義され得る。
【0122】
V
disは、二次電池130が放電電流I
disで放電するときの放電電圧を示す。
【0123】
前記I−Vプロファイルが、上記数式1に示した2つの線形方程式で定義されれば、前記I−Vプロファイルに対応する臨界電流の大きさは前記線形方程式の交差点に対応する放電電流の大きさに該当する。
【0124】
前記線形方程式のパラメーターであるV
1、V
2、R
1及びR
2に関するデータは、実験を通じて得た複数のI−Vプロファイルに基づいて充電状態毎に予め定義され得る。このような場合、前記制御部120は予め定義された前記パラメーターを参照して二次電池130の現在充電状態に対応するV
1、V
2、R
1及びR
2を決定し、決定されたパラメーターと上記数式1を用いて臨界電流の大きさを算出することができる。
【0125】
前記制御部120は、二次電池130の充電状態に対応する臨界電流の大きさを決定した後、臨界電流の大きさと二次電池130から流れ出る放電電流の大きさとを比べる。
【0126】
前記制御部120は、臨界電流の大きさが放電電流の大きさより小さい第1条件が成り立てば、二次電池130の充電状態に対応する予め定義された第1抵抗(R
1)と二次電池130の測定された放電電流を用いて二次電池130の放電による第1電圧変化量(△V
dis1)を求め、二次電池130の放電電圧(V
dis1)を決定する。また、前記制御部120は、前記測定された放電電流と前記決定された放電電圧(V
dis1)から二次電池130の出力(P
dis1)を決定する。
【0127】
前記制御部120は、臨界電流の大きさが放電電流の大きさより大きい第2条件が成り立てば、二次電池130の充電状態に対応する予め定義された第2抵抗(R
2)と二次電池130の測定された放電電流を用いて二次電池130の放電による第2電圧変化量(△V
dis2)を求め、二次電池130の放電電圧(V
dis2)を決定する。また、前記制御部120は、前記測定された放電電流と前記決定された放電電圧(V
dis2)から二次電池130の出力(P
dis2)を決定する。
【0128】
望ましくは、前記制御部120は、下記数式2を用いて二次電池130の放電電圧(V
dis1、V
dis2)を決定することができる。V
1とV
2は二次電池の充電状態によって予め定義される値である。
V
dis1=V
1−I
dis*R
1
V
dis2=V
2−I
dis*R
2
【0129】
一態様によれば、前記制御部120は保存部140と電気的に結合され得る。また、前記制御部120は、前記保存部140に予め定義されるすべてのパラメーター、例えば第1電圧、第2電圧、臨界電流、第1抵抗及び第2抵抗に関するデータを保存及び更新でき、前記第1及び第2条件で決定した二次電池130の出力(P
dis1、P
dis2)を保存することができる。
【0130】
前記保存部140は、情報を記録し消去できる保存媒体であれば、その種類に特に制限がない。一例として、前記保存部140は、RAM、ROM、レジスタ、ハードディスク、光記録媒体または磁気記録媒体であり得る。また、前記保存部140は前記制御部120によってアクセスできるように、例えばデータバスなどを通じて前記制御部120と連結することができる。また、前記保存部140は前記制御部120が実行する各種制御ロジックを含むプログラム及び/または前記制御ロジックが実行されるときに発生するデータ、例えばV
dis1、V
dis2、I
dis、P
dis1及びP
dis2を保存及び/または更新及び/または消去及び/または伝送することができる。前記保存部140は論理的に2つ以上に分割でき、前記制御部120内に含まれることを制限しない。
【0131】
他の態様によれば、前記制御部120は外部のデバイスとデータを交換できるように通信インターフェース150と電気的に結合され得る。また、前記制御部120は前記通信インターフェース150を通じて外部のデバイスに決定された二次電池130の出力を伝送することができる。
【0132】
前記外部のデバイスは、負荷135が備えられた装置の制御手段であり得る。一例として、二次電池130が電気自動車に搭載されている場合、前記制御部120は二次電池130の出力に関するデータを、電気自動車の駆動メカニズムを統合的に制御するコントロールユニットに伝送することができる。すると、前記コントロールユニットは受信した前記出力情報を用いて二次電池130の放電を効率的に制御することができる。
【0133】
さらに他の態様によれば、前記制御部120は表示部160と電気的に結合され得る。また、前記制御部120は前記表示部160を通じて前記決定された二次電池130の出力をグラフィックインターフェースで表示することができる。前記グラフィックインターフェースは、数字、文字、グラフ、絵、またはこれらの組合せを含み得る。
【0134】
前記表示部160は、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、E−INKディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどであり得る。前記表示部160は前記制御部120と直接または間接的に連結され得る。後者の方式が採択される場合、前記表示部160は前記制御部120が位置する領域と物理的に分離した領域に位置することができる。また、前記表示部160と前記制御部120との間に第3制御手段(図示せず)が介在し、前記第3制御手段が前記制御部120から表示部160に表示する情報の提供を受けて前記表示部160に表示することができる。そのために、前記第3制御手段と前記制御部120とを通信線路によって連結することができる。
【0135】
前記表示部160は必ずしも本発明による装置の内部に含まれる必要はなく、本発明による装置と連結された他の装置に含まれてもよい。このような場合、前記表示部160と前記制御部120とは直接連結されず、前記他の装置に含まれた制御手段を媒介で前記表示部160と間接的に連結される。したがって、前記表示部160と前記制御部120との電気的連結は、このような間接連結方式も含むと理解せねばならない。
【0136】
前記制御部120は、多様な制御ロジック及び/または計算ロジックを実行するために当業界に周知されたプロセッサ、ASIC(Application−Specific Integrated Circuit)、他のチップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含むことができる。また、前記制御ロジックがソフトウェアとして具現されるとき、前記制御部120はプログラムモジュールの集合として具現され得る。このとき、プログラムモジュールはメモリに保存され、プロセッサによって実行され得る。前記メモリは、プロセッサの内部または外部にあり得、周知された多様な手段でプロセッサと連結され得る。また、前記メモリは、保存部140に含まれ得る。また、前記メモリは、デバイスの種類に関係なく情報が保存されるデバイスを総称し、特定メモリ装置を称しない。
【0137】
本発明の多様な実施様態の説明において、「〜部」と称した構成要素は物理的に区分される要素ではなく、機能的に区分される要素であると理解せねばならない。したがって、それぞれの構成要素は他の構成要素と選択的に統合されるか、又は、それぞれの構成要素が制御ロジックの効率的な実行のためにサブ構成要素に分割され得る。しかし、構成要素が統合または分割されても機能の同一性が認められれば、統合または分割された構成要素も本発明の範囲内に属すると解釈されねばならないことは当業者にとって自明である。
【0138】
前記制御部120の多様な制御ロジック及び/または計算ロジックは、少なくとも1つが選択的に組み合わせられることで、それ自体として本発明による二次電池の出力推定方法の一実施様態になり得る。以下の二次電池の出力推定方法の説明においては、繰り返される説明は省略する。
【0139】
図6は、本発明の実施例による二次電池の出力推定方法を順次示したフロー図である。
【0140】
まず、段階S10において、前記制御部120は前記保存部140から二次電池の出力を推定するのに必要な制御ロジックを読み込んで実行する。
【0141】
次いで、段階S20において、前記制御部120は出力を推定可能な条件が満たされたのか否かを判断する。
【0142】
ここで、前記出力推定条件は、通信インターフェース150を通じて外部デバイスから出力推定要請信号が受信されるときに成立され得る。そのために、前記制御部120は通信インターフェース150を通じて前記出力推定要請信号の受信如何をモニタリングすることができる。代案的に、前記出力推定条件は、一定時間が経過する度に成立するように設定され得る。そのために、前記制御部120は時間を計数し、計数時間が予め設定した基準時間に到達すれば前記出力推定条件が成立したと判断することができる。
【0143】
段階S20において、出力推定条件が満たされたと判断すれば、制御部120はプロセスを段階S30に移行する。一方、S20で、出力推定条件が満たされていないと判断すれば、プロセスの進行を保留する。
【0144】
段階S30において、制御部120はセンサー110を制御して二次電池130の放電電流(I
dis)を測定する。その後、段階S40において、制御部120は二次電池130の充電状態を推定する。一例として、前記充電状態は電流積算法によって推定され得るが、本発明がこれに限定されることはない。
【0145】
段階S50において、制御部120は前記推定された充電状態に対応する臨界電流(I
*)の大きさを決定する。前記臨界電流(I
*)の大きさは、充電状態毎に予め定義され保存部140に保存されたデータを参照して決定できる。代案的に、前記臨界電流(I
*)の大きさは、数式1によってリアルタイムで決定し得る。
【0146】
段階S60において、制御部120は前記推定された充電状態に対応する第1抵抗(R
1)と第2抵抗(R
2)を決定する。前記第1抵抗(R
1)と第2抵抗(R
2)は、充電状態毎に予め定義され保存部140に保存されたデータを参照して決定できる。
【0147】
段階S70において、制御部120は測定された放電電流(I
dis)の大きさと臨界電流(I
*)の大きさとを比較する。もし、前記測定された放電電流(I
dis)の大きさが前記臨界電流(I
*)の大きさより小さければ、制御部120は第1条件が成立したと見てプロセスを段階S80に移行する。一方、前記測定された放電電流(I
dis)の大きさが前記臨界電流(I
*)の大きさより小さくなければ、制御部120は第2条件が成立したと見てプロセスを段階S120に移行する。
【0148】
第1条件で行われる段階S80において、制御部120は第1抵抗(R
1)を用いて放電電流(I
dis)が流れるときの第1電圧変化量(△V
dis1)を求める。また、段階S90において、制御部120は第1電圧変化量(△V
dis1)を用いて放電電圧(V
dis1)を決定する。望ましくは、前記放電電圧(V
dis1)は上述した数式2によって決定でき、数式2のパラメーターV
1は充電状態毎に予め定義され保存部140に保存された開放電圧データを参照して決定できる。また、段階S100において、制御部120は決定された放電電圧(V
dis1)と測定された放電電流(I
dis)の大きさから二次電池130の出力(P
dis1)を決定する。また、段階S110において、制御部120は前記決定された出力(P
dis1)を保存部140に保存するか、及び/または、表示部160を通じてグラフィックインターフェースで表示するか、及び/または、通信インターフェース150を通じて外部のデバイスに伝送することができる。
【0149】
第2条件が成立したときに行われる段階S120において、制御部120は第2抵抗(R
2)を用いて放電電流(I
dis)が流れるときの第2電圧変化量(△V
dis2)を求める。また、段階S130において、制御部120は第2電圧変化量(△V
dis2)を用いて放電電圧(V
dis2)を決定する。望ましくは、前記放電電圧(V
dis2)は上述した数式2によって決定でき、数式2のパラメーターV
2は充電状態毎に予め定義され保存部140に保存された電圧データを参照して決定できる。また、段階S140において、制御部120は決定された放電電圧(V
dis2)と測定された放電電流(I
dis)の大きさから二次電池130の出力(P
dis2)を決定する。また、段階S150において、制御部120は前記決定された出力(P
dis2)を保存部140に保存するか、及び/または、表示部160を通じてグラフィックインターフェースで表示するか、及び/または、通信インターフェース150を通じて外部のデバイスに伝送することができる。
【0150】
本発明において、前記制御部120の多様な制御ロジック及び/または計算ロジックは少なくとも1つが組み合わせられ、組み合わせられた制御ロジックはコンピューター可読のコード体系に作成されてコンピューター可読の記録媒体に書き込まれ得る。
【0151】
前記記録媒体はコンピューターに含まれたプロセッサによってアクセスが可能なものであれば、その種類に特に制限がない。一例として、前記記録媒体は、ROM、RAM、レジスタ、CD−ROM、磁気テープ、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク及び光データ記録装置を含む群から選択された少なくとも1つを含む。
【0152】
また、前記コード体系はキャリア信号に変調されて特定時点に通信キャリアに含まれ得、ネットワークで連結されたコンピューターに分散して保存されて実行され得る。また、前記組み合わせられた制御ロジックを具現するための機能的なプログラム、コード及びコードセグメントは本発明が属する技術分野のプログラマーによって容易に推論できる。
【0153】
本発明において、前記第1及び第2正極材として使用可能な物質は、動作電圧範囲が異なる物質であれば特に制限がない。
【0154】
一態様によれば、前記第1正極材は、一般化学式A[A
xM
y]O
2+z(AはLi、Na及びKのうち少なくとも1つを含む;MはNi、Co、Mn、Ca、Mg、Al、Ti、Si、Fe、Mo、V、Zr、Zn、Cu、Al、Mo、Sc、Zr、Ru及びCrから選択された少なくとも1つの元素を含む;x≧0、1≦x+y≦2、−0.1≦z≦2;x、y、z及びMに含まれた成分の化学量論係数は化合物が電気的中性を維持するように選択される)で表されるアルカリ金属化合物、又は、US6,677,082、US6,680,143などに開示されたアルカリ金属化合物xLiM
1O
2‐(1‐x)Li
2M
2O
3(M
1は平均酸化状態3を有する少なくとも1つの元素を含む;M
2は平均酸化状態4を有する少なくとも1つの元素を含む;0≦x≦1)であり得る。
【0155】
他方、前記第2正極材は、一般化学式Li
aM
1xFe
1‐xM
2yP
1‐yM
3zO
4‐z(M
1はTi、Si、Mn、Co、Fe、V、Cr、Mo、Ni、Nd、Mg及びAlから選択された少なくとも1つの元素を含む;M
2はTi、Mn、Co、Fe、Cr、Mo、Ni、Nd、Al、Mg、As、Sb、Si、Ge、V及びSから選択された少なくとも1つの元素を含む;M
3はFを含むハロゲン族元素から選択された少なくとも1つの元素を含む;0<a≦2、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1;a、x、y、z、M
1、M
2及びM
3に含まれた成分の化学量論係数は化合物が電気的中性を維持するように選択される)、または、Li
3M
2(PO
4)
3(MはTi、Si、Mn、Fe、Co、V、Cr、Mo、Ni、Mg及びAlから選択された少なくとも1つの元素を含む)で表されるリチウム金属フォスフェートであり得る。
【0156】
他の態様によれば、前記第1正極材はLi[Li
aNi
bCo
cMn
dO
2+z](a≧0;a+b+c+d=1;b、c及びdのうち少なくとも1つは0でない;−0.1≦z≦2)、前記第2正極材はLiFePO
4、LiMn
xFe
yPO
4(0<x+y≦1)またはLi
3Fe
2(PO
4)
3であり得る。
【0157】
さらに他の態様によれば、前記第1正極材及び/または前記第2正極材は、コーティング層を含むことができる。前記コーティング層は炭素層を含むか、若しくは、Ti、Mn、Co、Fe、Cr、Mo、Ni、Nd、Mg、Al、As、Sb、Si、Ge、V及びSからなる群より選択された少なくとも1つの元素を含む酸化物層またはフッ化物層を含み得る。
【0158】
本発明において、前記第1正極材と第2正極材との混合比率は、製造しようとする二次電池の用途と性能を考慮し、放電抵抗プロファイルでコンベックスパターンが現れるか又は電圧プロファイルで少なくとも1つの電圧平坦領域が現れるように選択する。
【0159】
一実施例として、放電出力に優れた二次電池を所望する場合、Li[Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3]O
2とLiFePO
4をそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を5:5に設定することができる。
【0160】
他の実施例として、高温安全性に優れた二次電池を所望する場合、Li[Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3]O
2とLiFePO
4をそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を2:8に設定することができる。
【0161】
さらに他の実施例として、製造コストが安い二次電池を所望する場合、Li[Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3]O
2とLiFePO
4をそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を1:9に設定することができる。
【0162】
さらに他の実施例として、放電出力が良く高温安全性に優れた二次電池を所望する場合、[Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3]O
2とLiFePO
4をそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を4:6に設定することができる。
【0163】
さらに他の実施例として、重量当りの容量が大きい二次電池を所望する場合、Li[Ni
0.5Mn
0.3Co
0.2]O
2とLiFePO
4をそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を9:1に設定することができる。
【0164】
上述した前記第1及び第2正極材の選択と混合比率の調節方式は、一例に過ぎない。したがって、混合正極材に与えようとする電気化学的物性の相対的加重値とバランスを考慮して前記第1及び第2正極材を適切に選択し、それぞれの正極材の混合比率を適切に設定できることは当業者にとって自明である。
【0165】
本発明において、前記混合正極材に含まれ得る正極材の数は2種に限定されない。一実施例として、前記混合正極材は3種の相異なる正極材を含むことができ、その例としてはLiMn
2O
4、Li[Li
aNi
xCo
yMn
zO
2](a≧0;x+y+z=1;x、y及びzのうち少なくとも1つは0でない)及びLiFePO
4が含まれた混合正極材が挙げられる。さらに他の実施例として、前記混合正極材は4種の相異なる正極材を含むことができ、その例としてはLiNiO
2、LiMn
2O
4、Li[Li
aNi
xCo
yMn
zO
2](a≧0;x+y+z=1;x、y及びzのうち少なくとも1つは0でない)及びLiFePO
4が含まれた混合正極材が挙げられる。
【0166】
また、混合正極材の物性を改善するために他の添加物、例えば導電材、バインダーなどを混合正極材に添加することは特に制限されない。したがって、少なくとも2つの正極材が含まれた混合正極材であれば、正極材の数と他の添加物の存在如何と関係なく、本発明の範疇に含まれると解釈することができる。
【0167】
以上のように、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるもためはなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。