(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、孔壁や表層からの土の崩落を防ぎ、特別な動力を必要とすることなく所定の深度まで繰り返し地質試料を採取することができる軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置及び地質
試料採取装置セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の態様は、内部にピストンが設けられ、先端側が開口した筒状の試料採取管と、前記試料採取管が内部に収容される筒状の外管とを備え、前記試料採取管は、前記ピストンが地盤に接触した状態で前記先端側から地盤内に進入し、前記外管は、地盤に進入した前記試料採取管を内部に収容しながら地盤に進入し、前記試料採取管は、地盤に進入した前記外管の先端よりも深く突出して地盤に進入
し、前記試料採取管は、先端側とは反対側に挿通孔が設けられ、前記ピストンは、前記試料採取管の内部に接触しながら移動可能な円盤体と、前記円盤体に接続され、かつ前記挿通孔に気密に挿通した軸部とを備え、前記軸部に着脱可能に連結される円筒状の延長ロッドを備えることを特徴とする軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置にある。
【0009】
かかる第1の態様は、試料採取管を押し込むことで地盤に挿入させる。これにより試料採取管に土壌などの軟弱な地質試料が収納される。挿入は水圧での押し込みや採取管を回転させることが無く、水を使用しない。これにより土壌のような軟弱な地質試料を乱すことなく採取できる。また、外管を地盤に挿入することで、
試料採取管が地盤を採取したことにより形成された掘削孔の内壁面を保護することができ、地圧により押し出てくる軟質な地盤による孔壁の崩落、孔の閉塞が防止できる。これにより意図しない異なる深度の試料の混入を最小限に防止することができ、採取しようとする深度の性状、物質のみで構成される試料が採取できる。つまり、得られた試料は、その深度の土をそのまま反映したものとなり、これを解析することで、汚染物質がどの程度の深部に達しているかを正確に求めることができる。また、試料に含まれる物質を明らかにすることで積層した土の形成過程を正確に解明することができる。
【0010】
さらに、外管をガイドとして利用するため、試料採取管を試料の採取深度まで正確、かつ容易に挿入でき、地盤内に繰り返し試料採取管を進入させることで連続した試料の採取ができる。
また、試料採取管を、より深い深度の地盤まで挿入させることができる。試料採取管に地質試料を取り込んだ後は、延長ロッドを引き上げることで試料採取管を引き抜くことができる。
【0013】
本発明の第
2の態様は、第
1の態様に記載する軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置において、筒状の打ち込みロッドと、前記打ち込みロッドの前記試料採取管とは反対側の開口に装着される蓋状の第1打ち込みアダプタとを備え、前記打ち込みロッドがその内側に前記延長ロッドを収容し、かつ前記試料採取管の先端側とは反対側に載置した状態で、前記第1打ち込みアダプタが押圧されることにより、前記試料採取管が地盤に進入することを特徴とする軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置にある。
【0014】
かかる第
2の態様では、試料採取管から露出したピストンの一部が打ち込みロッドの内部に収納された状態で、打ち込みロッドは試料採取管の先端側とは反対側の肩に載置される。そして、その打ち込みロッドを打ち込むことで地盤に試料採取管を挿入することができる。打ち込みロッドは、試料採取管に固定されないため、打ち込み後は容易に地盤から引き上げることができる。
【0015】
本発明の第
3の態様は、第
2の態様に記載する軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置において、前記打ち込みロッドは、その長さを延長可能に構成されていることを特徴とする軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置にある。
【0016】
かかる第
3の態様では、打ち込みロッドは長さが延長可能であるので、試料採取管を地盤の奥深くまでに打ち込むことが可能である。
【0017】
本発明の第
4の態様は、第
1〜第
3の何れか一つの態様に記載する軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置において、前記外管は、その長さを延長可能に構成されていることを特徴とする軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置にある。
【0018】
かかる第
4の態様では、外管は長さが延長可能であるので、外管を地盤の奥深くまでに打ち込むことが可能である。
【0019】
本発明の第
5の態様は、第
2〜第
4の何れか一つの態様に記載する軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置において、前記外管の先端側とは反対側の開口に装着される蓋状の第2打ち込みアダプタを備え、前記第2打ち込みアダプタには、前記外管の内部に連通する空気孔が設けられ、前記打ち込みロッドが前記試料採取管から取り外され、かつ、前記外管がその内側に前記延長ロッドを収容した状態で、前記第2打ち込みアダプタが押圧されることにより、前記外管が先端側から地盤に進入することを特徴とする軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置にある。
【0020】
かかる第
5の態様では、外管を打ち込むために、外管には第2打ち込みアダプタが取り付けられている。第2打ち込みアダプタは、打ち込みにより外管の接合部のネジ山などが変形することを防止することができる。また、外管の打ち込み時に、掘削孔内部の空気は外管内部及び連通路を介して外部に排気されるようになっている。
【0021】
本発明の第
6の態様は、第
1〜第
5の何れか一つの態様に記載する軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置において、前記軸部には、前記試料採取管の内部空間のうち前記円盤体よりも前記軸部側の空間部に連通する連通路が設けられ、前記軸部に着脱自在に接続されると共に、前記軸部の連通路を介して前記空間部に流体を供給する流体流路を有するアタッチメントを備え、前記アタッチメントには、前記連通路から前記流体流路への逆流を防止する逆止弁が設けられていることを特徴とする軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置にある。
【0022】
かかる第
6の態様では、試料採取管を引き抜き時には、より確実に地質試料の脱落を防止することができる。また、アタッチメントを介して流体を注入してピストンを押し出すことで容易に試料採取管に取り込まれた地質試料を取り出すことができる。
【0023】
本発明の第
7の態様は、第
6の態様に記載する軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置において、前記円盤体の地盤側表面には、凹部が設けられ、前記凹部に嵌合するセパレータ部材が設けられていることを特徴とする軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置にある。
【0024】
かかる第
7の態様では、予めセパレータを掘削孔の底部に配置しておき、さらに深部の地質試料を採取するために、掘削孔内に挿入された外管内に試料採取管を挿入する。このとき、外管の内面に地質試料が付着しており、試料採取管がその地質試料をこそぎ落としたとしても、当該地質試料はセパレータ上に堆積する。そして堆積した地質試料はセパレータと円盤体の凹部との間に保持される。すなわち、浅い深度にあった地質試料は、セパレータと凹部との間に収容され、試料採取管に保持される地質試料と隔てることができる。このようにセパレータを用いることで、試料採取管に保持された深い深度の地質試料に、それよりも浅い深度の地質試料が混ざることをより確実に防止することができる。
【0025】
本発明の第
8の態様は、第1〜第
7の何れか一つの態様に記載する軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置と、地盤表面に載置される基台と、前記基台に立設された柱状部材と、前記柱状部材に設けられ、前記二重管式地質試料採取装置の上方に配置された環状部材と、前記基台に設置された引張手段とを備え、前記引張手段は、前記環状部材に挿通されると共に、前記試料採取管又は前記外管に取り付けられたワイヤーを引っ張ることで前記試料採取管又は前記外管を地盤から引き上げることを特徴とする軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置セットにある。
【0026】
かかる第
8の態様では、地盤に進入させた二重管式地質試料採取装置を地上に引き上げることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、孔壁の崩落を防ぎ、特別な動力を要することなく大深度まで軟弱な地質試料の採取ができる軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置及び地質
試料採取装置セットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〈実施形態1〉
図1は、本実施形態に係る軟弱地盤における二重管式地質試料採取装置(以下、「地質試料採取装置」と称する。)の断面図である。図示するように、地質試料採取装置10は、内部に地質試料(以下、単に「試料」ともいう)を採取することができる試料採取管20と、試料採取管20を内部に収容する外管40とを備えている。ここでいう、地質試料とは、例えば、軟弱な地盤における土壌、腐植土、泥などである。
【0030】
また、地質試料採取装置10は、試料採取管20を地盤に進入させる際に用いられる打ち込みロッド50と、打ち込みロッド50に取り付けられる第1打ち込みアダプタ61と、外管40を地盤に進入させる際に用いられる第2打ち込みアダプタ62とを有している。これらについての詳細は後述する。
【0031】
図2及び
図3を用いて、試料採取管20について説明する。
図2は、試料採取管及び打ち込みロッドの分解斜視図であり、
図3は、試料採取管及び打ち込みロッドの断面図である。
【0032】
試料採取管20は、先端側(図の下側)に開口部21を有する円筒状に形成されたものである。また、試料採取管20には、その内部にピストン30が設けられている。
【0033】
ピストン30は、軸部32と、試料採取管20の内周面22に接触する円盤体31とを有する。
【0034】
軸部32は、試料採取管20の開口部21とは反対側(以降、基端側とする)に設けられ挿通孔23内に挿通されている。軸部32の一端側には、円盤体31が取り付けられている。
【0035】
円盤体31は、試料採取管20の内周面22に環状のシール部材33を介して接触する。軸部32及び円盤体31は、軸部32の軸方向(図中の上下方向)に沿って移動可能になっている。また、円盤体31には、その底面31aに円錐状の凹部38が形成され、この凹部38には、セパレータ80がはめ込まれるようになっている。セパレータ80の用途については後述する。セパレータ80は、上述した凹部38とほぼ同形状の円錐状に形成された部材であり、セパレータ80の頂部には、半円状のリング81が設けられている。特に図示しないが、凹部38にはリング81が収納される程度の溝が形成されており、当該溝にリング81が収納された状態で凹部38にセパレータ80全体をはめ込むことが可能となっている。
【0036】
円盤体31の環状のシール部材33により試料採取管20の内部空間が2つに仕切られている。その内部空間のうち開口部21側を採取空間A、基端側を空間部Bとする。
【0037】
採取空間Aは、採取した試料が収納される空間である。空間部Bは、試料採取管20、円盤体31、環状のシール部材33により区画された空間である。なお、軸部32と挿通孔23との間にはシール部材34が設けられており、軸部32が移動しても空間部Bに空気が出入りすることはない。
【0038】
また、円盤体31及び軸部32には、空間部Bに連通する連通路35が設けられている。連通路35は、軸部32の端部と、円盤体31の空間部Bに面した表面のそれぞれに開口しており、空間部Bは連通路35を介して大気開放されている。
【0039】
打ち込みロッド50は、1つの円筒状部材51、又は2以上の円筒状部材51が着脱自在に連結されたものである。円筒状部材51を連結することで、全体の長さが自由に調整可能な1本の打ち込みロッド50が構成される。
【0040】
打ち込みロッド50は、その内側に試料採取管20の軸部32を収容した状態で、一端が試料採取管20の基端側に当接される。
【0041】
また、打ち込みロッド50の他端側の開口53には、第1打ち込みアダプタ61が装着される。第1打ち込みアダプタ61は、開口53を塞ぐ蓋状部材である。詳細は後述するが、第1打ち込みアダプタ61は、電動ハンマー等で押圧される部位であり、第1打ち込みアダプタ61に加えられた力が試料採取管20に作用し、試料採取管20が地盤に進入する。
【0042】
なお、打ち込みロッド50と、試料採取管20から露出した軸部32との間には隙間が設けられている。これにより試料採取管20を地盤に打ち込むときには、軸部32が打ち込みロッド50と一緒に打ち込まれることを防止している。すなわち、打ち込み時は、試料採取管20のみが打ち込みロッド50により地盤に打ち込まれ、軸部32の位置は変わらない構造となる。
【0043】
また、試料採取管20の先端側の外表面には、先端側に向かって径が狭くなるようにテーパー28が形成されている。このようにテーパー28が形成されることで、先端側が地盤に進入しやすくなっている。
【0044】
さらに、試料採取管20の軸部32には、円筒状の延長ロッド36が装着可能になっている。延長ロッド36が軸部32に連結された状態では、延長ロッド36内部の空間部37と、軸部32の連通路35とが連通する。このように、軸部32に延長ロッド36を装着することで、軸部32(試料採取管20全体)の長さを調整することが可能となっている。
【0045】
図4及び
図5を用いて、外管40について説明する。
図4は、外管の分解斜視図であり、
図5は、外管の断面図である。
【0046】
図4(a)及び
図5(a)に示すように、外管40は、試料採取管20の直径よりも若干大きな直径を有する円筒状の部材である。このような形状により、外管40は、その内部に試料採取管20を収容することが可能となっている。また、外管40の先端側(図の下側)には開口部41が設けられ、先端側とは反対側(以下、基端側とする)には開口部42が設けられている。
【0047】
詳細は後述するが、外管40は、試料採取管20が地盤から試料を採取することで形成された掘削孔に挿入され、その掘削孔の崩落を防ぐものである。
【0048】
図4(b)及び
図5(b)に示すように、外管40には、延長管47を連結することが可能となっている。具体的には、外管40の基端側には開口部42の周縁に突部44が設けられ、突部44にネジ山44aが設けられている。一方、円筒状の延長管47は、このネジ山47aに螺合することが可能に形成されている。このように外管40に延長管47がネジ山47aを介して連結されることで、外管40が延長される。
【0049】
なお、延長管47の開口部には、ネジ山47aが設けられており、このネジ山47aを介して別の延長管47を連結することが可能となっている。
図5(b)には1つの延長管47を連結したものを示してあるが、個数に特に制限はない。このように複数の延長管47を連結することによって、外管40の長さを自由に設定することができる。
【0050】
また、外管40及び延長管47は、第2打ち込みアダプタ62が装着可能となっている。すなわち、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、外管40の基端側には地盤に外管40を打ち込むための第2打ち込みアダプタ62が装着される。また、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、延長管47の基端側には地盤に外管40を打ち込むための第2打ち込みアダプタ62が装着される。
【0051】
第2打ち込みアダプタ62は、外管40のネジ山44a又は延長管47のネジ山47aに螺合し、それらの開口を塞ぐように装着される蓋状の部材である。詳細は後述するが、第2打ち込みアダプタ62は、電動ハンマー等で押圧される部位であり、第2打ち込みアダプタ62に加えられた力が外管40及び延長管47に作用して外管40が地盤に進入する。
【0052】
外管40及び延長管47は肉薄なために深部までの打ち込み時に最浅(地表側)の延長管47の継ぎ目などが変形する虞がある。このような変形を防止するために、基端部に第2打ち込みアダプタ62を装着することで、延長管47の変形を防止する。
【0053】
第2打ち込みアダプタ62は、打ち込み時の力に耐えうる形状、材料であればよい。また、第2打ち込みアダプタ62には、空気孔63が設けられている。この空気孔63により、外管40の内部の空気が排出されるようになっている。
【0054】
外管40の開口部41側の外表面には、先端側に向かって径が狭くなるようにテーパー43が形成されている。このようにテーパー43が形成されることで、先端側が地盤に進入しやすくなっている。
【0055】
図4(c)及び
図5(c)に示すように、外管40の基端側には、ネジ山44aを介して外管アタッチメント45が取り付けられる。外管アタッチメント45は、外管40に着脱自在な環状部材である。外管アタッチメント45は、特に図示しないが、延長管47のネジ山47aを介して延長管47にも着脱自在になっている。
【0056】
外管アタッチメント45には、ワイヤーなどが取り付けられる開口であるワイヤー取付部46が設けられている。ワイヤーは試料採取管20を打ち込むときに、外管40が一緒に地盤に挿入することを防止するほか、ワイヤー取付部46に取り付けられたワイヤーを上方に引っ張ることで、外管40を外管アタッチメント45と共に上方に引き上げることができる。
【0057】
図6は、本実施形態に係る地質試料採取装置を備える採取装置セットの概略構成図である。図示するように、採取装置セット1は、地盤表面に載置される基台2と、基台2上に立設された枠体3(柱状部材)と、基台2上に設置された手動ジャッキ4(引張手段)とを備えている。
【0058】
これらの基台2、枠体3、手動ジャッキ4は、土壌を採取する現場に配置されるものである。基台2には、厚さ方向に貫通して地盤表面が露出する開口部5が設けられている。試料を採取する際には、この開口部5から地質試料採取装置10を深部に向かって進入させる。なお、地質試料採取装置10を進入させる方法は特に限定されないが、例えば、手動、又は電動ハンマー等を用いて地質試料採取装置10を地盤内に進入させる。
【0059】
枠体3は、基台2に取り付けられた2本の支柱3aと、支柱3aの上部同士を連結する上辺部3bとから構成されている。上辺部3bは、支柱3aに着脱自在である。上辺部3bは、開口部5に進入する地質試料採取装置10の上方に位置しており、リング6(環状部材)が設けられている。また、手動ジャッキ4は、レバー9を操作することで、手動ジャッキ本体7がガイドレール8に沿って上下動可能になっている。
【0060】
手動ジャッキ本体7には、ワイヤー100が取り付けられている。さらにワイヤー100は、基台2に設けられたリング6及び、枠体3の上辺部3bに設けられたリング6を挿通して、外管アタッチメント45のワイヤー取付部46に取り付けられている。
【0061】
このような構成の採取装置セットでは、手動ジャッキ4のレバー9を操作して手動ジャッキ本体7を上方に移動させれば、ワイヤー100が試料採取管20や外管40を上方に引き上げることができる。
【0062】
また、後述するように、試料採取管20や外管40は、上方から電動ハンマーを用いて地盤に打ち付けられる。その際に、上辺部3bは支柱3aから取り外すことが可能であるので、試料採取管20や外管40の上方に電動ハンマーを用いた作業のための空間を確保することができる。
【0063】
図7〜
図11を用いて、地質試料採取装置10を備える採取装置セット1により土壌を採取する動作を説明する。
【0064】
まず、
図7に示すように、円盤体31を試料採取管20の開口部21まで移動させる。このような状態で開口部21及び円盤体31を開口部5内に露出した地盤に接触させ、試料採取管20を立てた状態にする。
【0065】
そして、2つの円筒状部材51を連結して打ち込みロッド50を構成する。その打ち込みロッド50の内部にピストン30の軸部32を収納し、試料採取管20の基端側に載置する。また、打ち込みロッド50の開口53には、第1打ち込みアダプタ61を装着する。
【0066】
図8に示すように、そのような状態で、例えば、電動ハンマーで第1打ち込みアダプタ61を打ち込むことで、試料採取管20を地盤内に進入させる。試料採取管20の先端側の外表面には、テーパー28が設けられているので、地盤を外側に押しのけながら試料採取管20内側の採取空間Aには地盤(地質試料)が収納される。
【0067】
このように試料採取管20を軟弱な地盤に進入させる際、円盤体31の底面31aは、地盤表面に接触した状態のままである。つまり、円盤体31の底面31aの地盤表面に対する相対位置は変化せず(
図7と同じ状態)、試料採取管20の管だけが地盤内に進行する状態となる。
【0068】
一方、円盤体31の試料採取管20に対する相対位置は変化する。すなわち、円盤体31は、試料採取管20の開口部21側から基端側に移動する。このように
図7の状態において存在していた空間部Bは、円盤体31の移動にともない縮小し、採取空間A内に地盤が進入する。なお、空間部Bの縮小に伴い、その内部の空気は連通路35を介して外部に放出されている。
【0069】
次に、
図9に示すように、打ち込みロッド50及び第1打ち込みアダプタ61を取り外す。そして、延長管47及び第2打ち込みアダプタ62が連結された外管40を開口部5内に露出した地盤の上に設置する。このとき、試料採取管20をその内部に収容させる。
【0070】
そして、
図10に示すように、電動ハンマーで第2打ち込みアダプタ62を打ち込むことで、外管40を地盤内に進入させる。外管40は、外管40の先端が少なくとも試料採取管20の先端側の開口部21に達するまで地盤中に進入させる。
【0071】
次に、
図11に示すように、試料採取管20を引き上げる。引き上げに際しては、外管40及び延長管47の開口を蓋している第2打ち込みアダプタ62を取り外し、軸部32の基端側に開口した連通路35を塞ぐキャップ60を軸部32に取り付ける。これにより、空間部Bは閉空間となる。このキャップ60には、ワイヤー100を取り付ける開口60aが設けられている。このキャップ60の開口60aにワイヤー100を取り付け、そのワイヤー100をリング6に挿通する。そして、ワイヤー100を手動ジャッキ本体7(
図6参照)に取り付け、手動ジャッキ本体7をガイドレール8に沿って上方に移動させる。
【0072】
手動ジャッキ本体7の移動により、ワイヤー100が試料採取管20の軸部32を上方に引っ張るので、試料採取管20を地盤中から引き上げることができる。
【0073】
ここで、試料採取管20を上方に引き上げる際、試料採取管20が円盤体31から離間しようとするので、空間部Bは負圧になる。したがって、当該負圧により円盤体31は試料採取管20内の基端側に固定された状態となる。
【0074】
これにより、試料採取管20は内部の採取空間A内に試料が保持されたままで引き上げられることになる。つまり、円盤体31が試料採取管20の先端側に移動してしまい、採取空間A内の試料が排出されることはない。
【0075】
なお、外管40を引き上げる際には、外管40に外管アタッチメント45(
図4及び
図5参照)を装着し、ワイヤー取付部46にワイヤー100を装着する。そして、手動ジャッキ本体7を移動させることでワイヤー100を引っ張り、外管40及び外管アタッチメント45を上方に引き上げる。
【0076】
図12を用いて、引き上げた試料採取管20から採取した試料(土壌)の取り出しについて説明する。
【0077】
図示するように、試料採取管20には、採取空間Aに試料が保持されている。試料はピストン30を開口部21側に押し出すことで外部に排出させる。具体的には、軸部32に取り付けてあったキャップ60(
図11参照)を取り外し、代わりに、アタッチメント70を取り付ける。
【0078】
アタッチメント70は、軸部32の基端側に形成されたネジ山に螺合することで着脱自在な部材であり、内部に流体流路71が設けられている。流体流路71は、水(流体)の流路となる。流体流路71は、軸部32に設けられた連通路35に連通している。
【0079】
また、流体流路71には、逆止弁72が設けられている。逆止弁72は、連通路35から流体流路71側に水が逆流することを防止するように設けられている。
【0080】
このようなアタッチメント70の流体流路71に手動ポンプで、連通路35を介して空間部Bに水を圧送する。空間部Bに水が圧送されることで、その水の圧力により円盤体31が開口部21側に移動する。これにより、採取空間A内に保持されていた試料が外部に放出される。アタッチメント70と試料採取管20の間の軸部32にはリング(図示せず)が設けられており、圧送により試料が飛び出すことを防止している。
【0081】
取り出された試料は、円筒状になっており、地層表面からの深さが反映したものとなっている。この試料を分析することで、汚染物質などが地盤表面から深部までどの程度侵入しているかが解明することができる。また、土壌に含まれる物質を明らかにすることで土壌形成過程などの解明に資することができる。
【0082】
図13に、試料採取管20を引き上げたあとの外管40を示す。図示するように、土壌には、外管40が挿入された状態となっており、外管40の内側は、試料採取管20によって土壌が抜き取られた状態となっている。つまり、試料採取管20によって土壌が抜き取られて掘削孔90が形成され、外管40は、その掘削孔90の内面を保護している。
【0083】
このように外管40が掘削孔90の内面を保護するので、掘削孔90の一部が崩落して土壌の一部が掘削孔90の底部に溜まることを防止することができる。
【0084】
仮に、外管40による保護がないと掘削孔90の一部が崩落する場合がある。例えば、土壌の表面近くの一部が掘削孔90の底部に崩落して溜まる。この場合、掘削孔90の底部からさらに深く試料採取管20で土壌を採取すると、表面近くの土壌と、掘削孔90の底部の土壌とが混在してしまう。
【0085】
なお、
図10等に示したように、試料採取管20と外管40との間には若干の隙間があるので、試料採取管20を引き抜いた後にも、外管40の内面には、若干の土壌91が付着している。さらに掘削孔90から地質試料を採取する際に、この土壌91が混ざらないように、掘削孔90の底部にセパレータ80を配置する。具体的には、フック(図示せず)をリング81に取り付け、地表から掘削孔90の底部にセパレータ80を配置する。そして、リング81からフックを取り外して、掘削孔90からフックを引き上げる。
【0086】
次に、
図14〜
図17を用いて、掘削孔90からさらに深くの地質試料を採取する動作を説明する。
【0087】
図14に示すように、円盤体31を試料採取管20の開口部21まで移動させる。その状態で、外管40の内部に試料採取管20を挿入し、開口部21及び円盤体31を掘削孔90の底部に接触させる。
【0088】
このとき、試料採取管20が外管40の内面に付着した土壌91を掘削孔90の底部にこそぎ落とす場合がある。しかしながら、その土壌91は、セパレータ80の上面に堆積する。そして、セパレータ80は、掘削孔90の底部に移動してきた円盤体31の凹部38にはめ込まれる。すなわち、土壌91は、外管40の内面からこそぎ落とされたとしても、セパレータ80と凹部38との間に挟み込まれた状態となる。
【0089】
ここで、セパレータ80は円錐状としたため、仮に凹部38と中心がずれていたとしても、セパレータ80は凹部38の中心に合うように移動するので、凹部38とセパレータ80とを確実にはめ込むことができる。
【0090】
次に、掘削孔90の深さに応じて長さを調整した打ち込みロッド50を構成する。ここでは、3つの円筒状部材51を連結して一本の打ち込みロッド50としてある。その打ち込みロッド50の内部にピストン30の軸部32を収納し、試料採取管20の基端側に載置する。また、打ち込みロッド50の開口53には、第1打ち込みアダプタ61を装着する。
【0091】
なお、試料採取管20の軸部32には、掘削孔90の深さに応じて延長ロッド36を装着する。すなわち、掘削孔90の深さに応じて軸部32を延長しておく。これにより、試料採取管20が地盤深く進入している場合であっても、延長ロッド36を地表近くに位置させることができる。これにより、延長ロッド36にキャップ60(
図11参照)を装着することが可能となる。以後は、キャップ60にワイヤー100を装着し、ワイヤー100を手動ジャッキ本体7の移動により引っ張ることで、試料採取管20を地盤から引き抜くことができる。
【0092】
次に、
図15に示すように、例えば、電動ハンマーで第1打ち込みアダプタ61を打ち込むことで、試料採取管20を地盤内に進入させる。最初に試料採取管20を地盤に進入させたときと同様に(
図7,8参照)、試料採取管20のピストン30はそのままの位置(
図14に示した位置)に留まったまま、試料採取管20だけが地盤内に進入する(
図15参照)。
【0093】
打ち込みロッド50は、その長さが延長可能であるので、試料採取管20をより深度の深い地盤まで打ち込み、進入させることができる。なお、打ち込みロッド50を打ち込んで試料採取管20をある程度地盤に進入させた後、さらにその長さを延長し、試料採取管20をより深く地盤に進入させてもよい。地上で十分な長さの円筒状部材51を一度に組み立てられない場合などに有効である。
【0094】
このようにして、掘削孔90の底部からさらに深く地盤内に進入させた試料採取管20には、
図8で説明した場合と同様に、採取空間A内に地盤が進入し、これを試料として保持することができる。上述したように、外管40の内面に付着していた土壌91(
図13参照)、すなわち、今採取する深度よりも浅い深度にあった土壌91は、セパレータ80と凹部38との間に収容され、採取空間Aに保持された地質試料とは隔てられている。このようにセパレータ80を用いたことで、採取空間Aに保持された深い深度の地質試料に、それよりも浅い深度の土壌91が混ざることをより確実に防止することができる。
【0095】
次に、
図16に示すように、打ち込みロッド50及び第1打ち込みアダプタ61を取り外す。そして、外管40に延長管47及び第2打ち込みアダプタ62を取り付ける。外管40の長さは、掘削孔90の深さに応じて適宜調整する。
【0096】
そして、
図17に示すように、電動ハンマー等で第2打ち込みアダプタ62を打ち込むことで、外管40を地盤内に進入させる。外管40は、外管40の先端が少なくとも試料採取管20の先端側の開口部21に達するまで地盤中に進入させる。
【0097】
上述したように、外管40は、延長管47により長さが延長されているので、より深い深度にまで外管40を到達させることができる。すなわち、試料採取管20による土壌の採取により深くなった掘削孔90についても、その内面を外管40により保護することができる。
【0098】
以後、特に図示はしないが、
図11で説明したように、試料採取管20をワイヤー100により引き上げ、
図12で説明したように、その採取空間A内に保持された試料を外部に取り出すことで、最初に得た試料よりも深い深度の試料を得ることができる。
【0099】
また、さらに深い深度の試料を得る場合には、
図14〜
図17で説明したことを繰り返す。すなわち、(1)掘削孔90の深さに合わせて適宜打ち込みロッド50の長さを調整する。(2)試料採取管20を掘削孔90内に配置し、打ち込みロッド50に装着された第1打ち込みアダプタ61を打ち込むことにより、試料採取管20をさらに地盤中に進入させる。(3)掘削孔90の深さに合わせて適宜延長管47を外管40に取り付け、試料採取管20の先端まで地盤中に進入させる。
【0100】
以上に説明した地質試料採取装置10を備える採取装置セット1によれば、任意の深さまで、連続的に試料を採取することができる。また、試料採取管20による試料の採取の際には、掘削孔90の内面が外管40により保護されているので、掘削孔90の一部が崩落して底部に溜まることを防止することができる。これにより、得られた試料に、深度が異なる他の部分の土壌が含まれることを防止することができる。
【0101】
したがって、得られた試料は、その深度の土壌をそのまま反映したものとなり、これを解析することで、汚染物質が地盤表面から深部までどの程度侵入しているかを正確に得ることができる。また、試料(土壌や腐植土)に含まれる物質を分析することで土壌や腐植土の形成メカニズムを解明することができる。
【0102】
なお、試料採取管20及び外管40を地盤中に進入させる手段として手動や電動ハンマーにより行うとしたが、このような態様に限定されない。
【0103】
また、セパレータ80は、円錐状の部材としたが、このような態様に限定されない。セパレータ80は、掘削孔90の底部に配置することが可能であり、円盤体31の底面に嵌合できる形状のものであればよい。また、セパレータ80は、水による溶解のおそれがなければ紙などの薄膜状のものを用いてもよい。このような薄膜状のセパレータ80を掘削孔90の底部に配置して用いることで、外管40の内面に付着した土壌を当該セパレータ80上に落着させることができる。これにより、当該土壌がそれよりも深度の深い位置にある土壌と混合してしまうことを防止することができる。