特許第5967663号(P5967663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967663
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】白金錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20160728BHJP
   C07C 251/24 20060101ALI20160728BHJP
   C07D 207/323 20060101ALI20160728BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C07F15/00 FCSP
   C07C251/24
   C07D207/323
   C09K11/06 660
【請求項の数】4
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-532466(P2013-532466)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2012056098
(87)【国際公開番号】WO2013035359
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-196274(P2011-196274)
(32)【優先日】2011年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 発表した刊行物:日本化学会第91春季年会 予稿集 http://www.chemistry.or.jp/nenkai/91haru/index.html 掲載日:平成23年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】直田 健
(72)【発明者】
【氏名】小宮 成義
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−127841(JP,A)
【文献】 柏原隆志 他,日本化学会第91春季年会 講演予稿集,2011年 3月11日,p. 247, 2 A5-31,化合物1
【文献】 KOMIYA et al.,J. Am. Chem. Soc.,2011年 4月 8日,Vol. 133,p. 6493-6496,Figure 2、 complexes 4e, 5c, 6、第6494ページ右カラム下から5行目〜第6495ページ左カラム12行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
C07F
C09K 11/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの二座配位子が白金に配位し、前記2つの二座配位子が、それぞれイミノ部位を有し、前記イミノ部位の窒素原子は互いにトランス位で白金に配位し、前記2つの二座配位子が、互いに構造が異なり、
前記2つの二座配位子が、下記式(a1)と式(b1)、式(a1)と式(c1)、式(a1)と式(d1)、式(b1)と式(c1)、式(b1)と式(d1)および式(c1)と式(d1)の組み合わせから選択される白金錯体。
【化1】
[前記式中、
11、R21、R31およびR41は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
12、R22、R32およびR42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
13、R14、R15、R16、R23、R24、R25、R26、R33、R34、R35、R43およびR44は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から独立して選択される。]
【請求項2】
下記式で表される請求項1に記載の白金錯体。
【化2】
前記式中、R11、R12、R13、R14,R15、R16、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R33、R34およびR35は、式(a1)、式(b1)および式(c1)における定義と同様である。
【請求項3】
四座配位子が白金に配位し、前記四座配位子が、架橋により連結された2つの二座配位子を有し、前記2つの二座配位子が、それぞれイミノ部位を有し、前記イミノ部位の窒素原子は互いにトランス位で白金に配位し、前記2つの二座配位子が、互いに構造が異なり、
以下の式(Ia)、式(IIa)、式(IIIa)、式(IVa)、式(Va)および式(VIa)からなる群から選択される構造で表される白金錯体。
【化3】
[前記式(Ia)、式(IIa)、式(IIIa)、式(IVa)、式(Va)および式(VIa)中、
12、R22、R32およびR42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
13、R14、R15、R16、R23、R24、R25、R26、R33、R34、R35、R43およびR44は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から独立して選択され、
Zは、式−(CH2k−で表される基(式中、は、7〜20の整数である)、式−(CH2L−Y−(CH2M−で表される基(式中、−Y−は、−COO−、−OCO−、−CO−、−NH−、−NR−、−O−であり、前記Rは、アルキル基であり、Lは、2〜6の整数であり、Mは、2〜6の整数である。)、または式−(CH22−(OCH2CH2Q−で表される基(式中、Qは、2〜6の整数である。)である。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の白金錯体を含む発光材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金錯体およびその白金錯体を含む発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
燐光性ELデバイスは、蛍光性のものより理論的に高い量子効率を達成可能なため、有機ELディスプレイや照明などを指向した燐光性発光材料の開発が望まれている。従来の燐光性金属錯体は、希薄溶液あるいは低濃度薄膜で強発光性のものが多く報告されているが、結晶のような高集積状態で強発光性のものは、ほとんど知られていない。
【0003】
近年、有機金属錯体として有機白金錯体が燐光発光材料として着目されてきている。例えば、2個のNN型二座配位子または2個のNO型二座配位子が配位した白金原子を含む有機白金錯体が知られている(例えば、特許文献1)。また、四座配位子が配位した白金原子を含む有機白金錯体も知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
また、従来の白金錯体(ポルフィリン、フェニルピリジン、ビピリジン、タ―ピリジン、サレン等)は、平面性が高く、上下の配位平面があいているため、結晶中では自己集積により、分子間エネルギー移動による失活を起こしやすいパッキングをとることで、発光失活することが知られている。
【0005】
【化1】
【0006】
また、白金に2種類の配位子を有する非対称型錯体として、たとえば、ppy(フェニルピリジン), acac(アセチルアセトナート)が配位した白金錯体A(特許文献3、非特許文献1)が知られている。これらの白金錯体は、溶液や低濃度分散状態で発光することが報告されているが、しかし、これらの白金錯体は、平面性の高い分子であることから、結晶のような高密度状態では発光強度は弱いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−535807号公報
【特許文献2】特開2009−224763号公報
【特許文献3】特開2007−161886号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Thompsonら、Inorg. Chem., 2002, 41, 3055.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、固体であって、発光性が強い発光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、2つの二座配位子が白金に配位し、前記2つの二座配位子が、それぞれイミノ部位を有し、前記イミノ部位の窒素原子は互いにトランス位で白金に配位し、前記2つの二座配位子が、互いに構造が異なる第1の白金錯体、または
四座配位子が白金に配位し、前記四座配位子が、架橋により連結された2つの二座配位子を有し、前記2つの二座配位子が、それぞれイミノ部位を有し、前記イミノ部位の窒素原子は互いにトランス位で白金に配位し、前記2つの二座配位子が、互いに構造が異なる第2の白金錯体のいずれかの白金錯体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の白金錯体を含む発光材料は、固体であって、発光性が強いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、実施例1の化合物(1)のHOMOおよびLUMOを示す。
図1B図1Bは、実施例1の化合物(1)の構造式を示す。
図2図2は、実施例3の化合物(3)のX線結晶構造の図である。
図3図3は、実施例3の化合物(3)の結晶中におけるパッキング図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、イミノ部位を含む二座配位子2種類を白金に対しトランス型に配位させるか、またはこれらの2種類の二座配位子をスペーサーで渡環した4座配位子を白金に対しトランス型に配位させた白金錯体は、結晶のような高密度の固体状態で強い発光性を示すことを見出した。このような知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成した。
【0014】
また、本発明者らは、前記白金錯体に含まれる2種類の二座配位子は、計算化学により、白金錯体のHOMOは、一方の二座配位子と比べて他方の二座配位子の寄与が大きく、白金錯体のLUMOは、一方の二座配位子と比べて他方の二座配位子の寄与が大きい白金錯体は、発光波長を制御可能であることも見出した。すなわち、本発明者らは、このような白金錯体の2種類の二座配位子のいずれか一方の適切な位置に、電子求引基および/または電子供与基の官能基を適宜導入することにより、白金錯体の発光波長を制御可能なことも見出した。なお、2種類の二座配位子をスペーサーで渡環した四座配位子が配位した白金錯体の場合、白金錯体のHOMOは、一方の二座配位子部位比べて他方の二座配位子部位の寄与が大きく、白金錯体のLUMOは、一方の二座配位子部位と比べて他方の二座配位子部位の寄与が大きい白金錯体は、同様に発光波長を制御可能である。
【0015】
具体的には、HOMOに寄与するほうの二座配位子(または四座配位子の二座配位子部分)のHOMOに影響を与える位置に電子供与基を置換させ、HOMOのエネルギーを上昇させると、HOMOとLUMOのエネルギー差が狭まり、白金錯体の発光波長を長波長側にシフトさせることができる。または、LUMOに寄与するほうの二座配位子(または四座配位子の二座配位子部分)のLUMOに影響を与える位置に電子供与基を置換させ、LUMOのエネルギーを上昇させると、HOMOとLUMOのエネルギー差が広がり、白金錯体の発光波長を短波長側にシフトさせることができる。このようにして、本発明の白金錯体は、その発光波長が制御可能である。
【0016】
本発明の白金錯体は、一方の二座配位子の白金と結合するイミノ部位の窒素原子および他方の二座配位子の白金と結合するイミノ部位の窒素原子が、置換基をそれぞれ独立して有するのが好ましい。または、本発明の白金錯体は、一方の二座配位子の白金と結合するイミノ部位の窒素原子および他方の二座配位子の白金と結合するイミノ部位の窒素原子が、架橋されて四座配位子である。このような置換基または架橋は、白金と配位する一方の二座配位子と他方の二座配位子との形成する平面に対して、非同一平面上に配置される。そうすると、このような置換基または架橋により、三次元立体構造において、ある白金錯体と他の白金錯体とが、重なることを妨げることができる。例えば、後記する本発明の化合物(3)の化学構造とX線結晶解析を図2に示す。図2に示すように、左側の配位子のイミノ部位の窒素の置換基(ペンチル基)が、右側の配位子との立体障害を避けるために、四配位の白金配位平面から、垂直方向に延びている。一般に、ある平面性の高い白金錯体と他の平面性の高い白金錯体が平行に重なりあって集積すると、三重項−三重項失活が生じ、その結果、発光が弱められてしまう。しかしながら、本発明のように、この重なりを防止すると、発光は弱められることが無い。従って、このような本発明の白金錯体は、結晶状態において、発光強度が強いという効果を奏する。また、本発明の白金錯体は、結晶状態のみならず、アモルファス状態、ガラス状態、混合物での状態においても、発光強度は強いという優れた効果を奏する。前記置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択される置換基が挙げられる。架橋としては、例えば、式−(CH2k−で表される基(式中、は、7〜20の整数である)、式−(CH2L−Y−(CH2M−で表される基(式中、−Y−は、−COO−、−OCO−、−CO−、−NH−、−NR−、−O−であり、前記Rは、アルキル基であり、Lは、2〜6の整数であり、Mは、2〜6の整数である。)、または式−(CH22−(OCH2CH2Q−で表される基(式中、Qは、2〜6の整数である。)により架橋されることが挙げられる。なお、一般に、溶液状態において量子収率が高いことが知られている材料であっても、結晶状態になると、量子収率が低下する場合が多い。本発明の発光材料は、結晶状態において量子収率が高いため、本発明の発光材料の使用形態が広がり、有用性が高くなる点で有利である。
【0017】
すなわち、本発明は、2つの二座配位子が白金に配位し、前記2つの二座配位子が、それぞれイミノ部位を有し、前記イミノ部位の窒素原子は互いにトランス位で白金に配位し、前記2つの二座配位子が、互いに構造が異なる第1の白金錯体、または
四座配位子が白金に配位し、前記四座配位子が、架橋により連結された2つの二座配位子を有し、前記2つの二座配位子が、それぞれイミノ部位を有し、前記イミノ部位の窒素原子は互いにトランス位で白金に配位し、前記2つの二座配位子が、互いに構造が異なる第2の白金錯体である。
【0018】
また、本発明は、2つの二座配位子が白金に配位し、前記2つの二座配位子が、それぞれイミノ部位を有し、前記イミノ部位の窒素原子は互いにトランス位で白金に配位し、前記2つの二座配位子が、互いに構造が異なる第1の白金錯体、または
四座配位子が白金に配位し、前記四座配位子が、架橋により連結された2つの二座配位子を有し、前記2つの二座配位子が、それぞれイミノ部位を有し、前記イミノ部位の窒素原子は互いにトランス位で白金に配位し、前記2つの二座配位子が、互いに構造が異なる第2の白金錯体を含む発光材料である。
【0019】
本発明の前記第1の白金錯体の2つの二座配位子としては、例えば、下記式(a)と式(b)、式(a)と式(c)、式(a)と式(d)、式(b)と式(c)、式(b)と式(d)および式(c)と式(d)の組み合わせから選択される。
【0020】
【化2】
【0021】
前記式(a)、式(b)、式(c)および式(d)において、
Xは、aおよびbで印を付けた原子と共に、X’は、cおよびdで印をつけた原子と共に、またはX’’は、eおよびfで印をつけた原子と共に、1つのベンゼン環、1つの複素芳香族環、1つ以上のベンゼン環が縮合した芳香族縮合環、1つ以上の複素芳香族環が縮合した複素芳香族縮合環、1つ以上のベンゼン環と1つ以上の複素芳香族環が縮合した混合縮合多環を形成し、前記環は、置換基を1以上有してもよく、
11、R21、R31およびR41は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
12、R22、R32およびR42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
43およびR44は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から独立して選択される。
【0022】
前記第1の白金錯体の2つの二座配位子としては、例えば、下記式(a1)と式(b1)、式(a1)と式(c1)、式(a1)と式(d1)、式(b1)と式(c1)、式(b1)と式(d1)および式(c1)と式(d1)の組み合わせから選択されるのが好ましい。
【0023】
【化3】
【0024】
前記式(a1)、式(b1)、式(c1)および式(d1)において、
11、R21、R31およびR41は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
12、R22、R32およびR42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
13、R14、R15、R16、R23、R24、R25、R26、R33、R34、R35、R43およびR44は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から独立して選択される。
【0025】
本発明の第1の白金錯体において、前記2つの二座配位子が、前記式(a)と式(b)、式(a)と式(c)、式(a)と式(d)、式(b)と式(c)、式(b)と式(d)および式(c)と式(d)の組み合わせから選択される場合、いずれの配位子が白金錯体のHOMOに寄与が大きいのか、またはLUMOに寄与が大きいのかは、分子軌道を密度汎関数法により計算すれば、正確に判断できる。なお、計算の結果、以下のような関係が多くの場合、当てはまる。
【0026】
【数1】
【0027】
前記関係式のうち、左のほうがHOMOに寄与が大きく、右のほうがLUMOに寄与が大きい。例えば、2つの二座配位子が式(c)と式(a)の組み合わせの場合、式(c)はHOMOに寄与が大きく、式(a)はLUMOに寄与が大きい。または、2つの二座配位子が式(c)と式(b)の組み合わせの場合、式(c)はHOMOに寄与が大きく、式(b)はLUMOに寄与が大きい。または、2つの二座配位子が式(d)と式(b)の組み合わせの場合、式(d)はHOMOに寄与が大きく、式(b)はLUMOに寄与が大きい。
【0028】
このような本発明の第1の白金錯体は、例えば、以下の式で表される。
【0029】
【化4】
【0030】
前記式中、R11、R12、R13、R14,R15、R16、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R33、R34およびR35は、式(a1)、式(b1)および式(c1)における定義と同様である。
【0031】
本発明の第1の白金錯体は、以下の式(1)〜(7)、(10)〜(14)で表される化合物がより好ましい。
【0032】
【化5】
【0033】
また、本発明の第2の白金錯体は、例えば、以下の式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)および式(VI)からなる群から選択される式で表される。
【0034】
【化6】
【0035】
前記式式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)および式(VI)中、
Xは、aおよびbで印を付けた原子と共に、X'は、cおよびdで印をつけた原子と共に、またはX''は、eおよびfで印をつけた原子と共に、1つのベンゼン環、1つの複素芳香族環、1つ以上のベンゼン環が縮合した芳香族縮合環、1つ以上の複素芳香族環が縮合した複素芳香族縮合環、1つ以上のベンゼン環と1つ以上の複素芳香族環が縮合した混合縮合多環を形成し、前記環は、置換基を1以上有してもよく、
12、R22、R32およびR42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
43およびR44は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から独立して選択され、
Zは、式−(CH2k−で表される基(式中、は、7〜20の整数である)、式−(CH2L−Y−(CH2M−で表される基(式中、−Y−は、−COO−、−OCO−、−CO−、−NH−、−NR−、−O−であり、前記Rは、アルキル基であり、Lは、2〜6の整数であり、Mは、2〜6の整数である。)、または式−(CH22−(OCH2CH2Q−で表される基(式中、Qは、2〜6の整数である。)である。
【0036】
前記第2の白金錯体としては、以下の式(Ia)、式(IIa)、式(IIIa)、式(IVa)、式(Va)および式(VIa)からなる群から選択される式で表されるのが好ましい。
【0037】
【化7】
【0038】
前記式(Ia)、式(IIa)、式(IIIa)、式(IVa)、式(Va)および式(VIa)中、
12、R22、R32およびR42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から選択され、
13、R14、R15、R16、R23、R24、R25、R26、R33、R34、R35
43およびR44は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、飽和もしくは不飽和な複素環基、および飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基からなる群から独立して選択され、
Zは、式−(CH2k−で表される基(式中、は、7〜20の整数である)、式−(CH2L−Y−(CH2M−で表される基(式中、−Y−は、−COO−、−OCO−、−CO−、−NH−、−NR−、−O−であり、前記Rは、アルキル基であり、Lは、2〜6の整数であり、Mは、2〜6の整数である。)、または式−(CH22−(OCH2CH2Q−で表される基(式中、Qは、2〜6の整数である。)である。
【0039】
本発明の前記第2の白金錯体が、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)および式(VI)、ならびに(Ia)、式(IIa)、式(IIIa)、式(IVa)、式(Va)および式(VIa)からなる群から選択される場合、前記四座配位子に含まれる2つの二座配位子のいずれの部分が、白金錯体のHOMOに寄与が大きいのか、またはLUMOに寄与が大きいのかは、分子軌道を密度汎関数法により計算すれば、正確に判断できる。なお、計算の結果、以下のような関係が多くの場合、当てはまる。
【0040】
【数2】
【0041】
前記関係式のうち、左のほうがHOMOに寄与が大きく、右のほうがLUMOに寄与が大きい。例えば、四座配位子が式(II)や式(IIa)の場合、四座配位子に含まれる二座配位子としては、式(c)と式(a)の組み合わせになる。この場合、式(c)はHOMOに寄与が大きく、式(a)はLUMOに寄与が大きい。または、四座配位子が式(IV)や式(IVa)の場合、四座配位子に含まれる二座配位子としては、式(c)と式(b)の組み合わせになる。この場合、式(c)はHOMOに寄与が大きく、式(b)はLUMOに寄与が大きい。または、四座配位子が式(V)や式(Va)の場合、四座配位子に含まれる二座配位子としては式(d)と式(b)の組み合わせになる。この場合、式(d)はHOMOに寄与が大きく、式(b)はLUMOに寄与が大きい。
【0042】
本発明の第2の白金錯体は、以下の式(8)および(9)で表される化合物がより好ましい。
【0043】
【化8】
【0044】
本発明において、アルキル基とは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。アルキル基としては、直鎖状または分岐状であってもよい。炭素数の上限は限定されないが、アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12、好ましくは炭素数5〜10、より好ましくは炭素数5〜8のアルキル基である。
【0045】
本発明において、アルコキシ基とは、アルキルオキシ基である。このアルキルオキシ基のアルキル部分は、前記アルキル基と同様である。アルコキシル基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ等が挙げられる。炭素数の上限は限定されないが、アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12、好ましくは炭素数5〜10、より好ましくは炭素数5〜8のアルコキシ基である。
【0046】
本発明においてアルコキシルカルボニル基のアルコキシ部分は、前記アルコキシ基と同様である。アルコキシルカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ウンデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等が挙げられる。炭素数の上限は限定されないが、アルコキシカルボニル基としては、例えば、炭素数2〜13、好ましくは炭素数6〜11、より好ましくは炭素数6〜9のアルコキシカルボニル基である。
【0047】
本発明において、アルキルアミノ基とは、モノアルキルアミノ基とジアルキルアミノ基とを含む。ジアルキルアミノ基の場合、アルキル部分は同一であっても異なっていてもよい。アルキルアミンのアルキル部分は、前記アルキル基と同様である。アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ、ウンデシルアミノ、ドデシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジヘプチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジノニルアミノ、ジデシルアミノ、ジウンデシルアミノ、ジドデシルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。炭素数の上限は限定されないが、アルキルアミノ基としては、例えば、炭素数1〜13、好ましくは炭素数5〜11、より好ましくは炭素数5〜9のアルキルアミノ基である。
【0048】
本発明において、アルケニル基とは、ビニル、アリル、イソプロペニル、1もしくは2もしくは3−ブテニル、1もしくは2もしくは3もしくは4−ペンテニル、1もしくは2もしくは3もしくは4もしくは5−へキセニル等の炭素数2個以上を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基が挙げられる。炭素数の上限は限定されないが、アルケニル基としては、例えば、炭素数2〜13、好ましくは炭素数5〜11、より好ましくは炭素数5〜9のアルケニルである。
【0049】
本発明において、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0050】
本発明において、アラルキル基とは、アリールアルキル基を意味し、このアラルキル基のアルキル部分は、前記アルキル基と同様であり、このアラルキル基のアリール部分は、前記アリール基と同様である。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、ナフチルペンチル基、ナフチルヘキシル基等が挙げられる。
【0051】
本発明において、シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロヘプチル基等が挙げられ、炭素数3〜7のシクロアルキル基が好ましい。
【0052】
本発明において、飽和もしくは不飽和な複素環基とは、例えば、1〜4個の窒素原子を含有する不飽和3〜8員複素単環基、例えばピロリル、ピロリニル、イミダゾリル等;1〜4個の窒素原子を含有する飽和3〜8員複素単環基、例えばピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル等;1〜4個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基、例えばインドリル、イソインドリル等;1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子とを含有する不飽和3〜8員複素単環基、例えばオキサゾリル、イソオキサゾリル等;1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子とを含有する飽和3〜8員複素単環基、例えばオキサゾリジニル、モルホリニル等;1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子とを含有する不飽和縮合複素環基、例えばベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル等;1〜2個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子とを含有する不飽和3〜8員複素単環基、例えばチアゾリル、イソチアゾリル等;1〜2個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子とを含有する飽和3〜8員複素単環基、例えばチアゾリジニル等;1〜2個の硫黄原子を含有する不飽和3〜8員複素単環基、例えばチエニル等;1〜2個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子とを含有する不飽和縮合複素環基、例えばベンゾチアゾリル等;1個の酸素原子を含有する不飽和3〜8員複素単環基、例えばフリル等;1個の酸素原子と1〜2個の硫黄原子とを含有する不飽和3〜8員複素単環基、例えばジヒドロオキサチイニル等;1〜2個の硫黄原子を含有する不飽和縮合複素環基、例えばベンゾチエニル等;1個の酸素原子と1〜2個の硫黄原子と含有する不飽和縮合複素環基、例えばベンゾオキサチイニル等;等が挙げられる。
【0053】
本発明において、飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基の飽和もしくは不飽和な複素環部分は、前記飽和もしくは不飽和な複素環基と同様である。また、飽和もしくは不飽和な複素環アルキル基のアルキル部分は、前記アルキル基と同様である。
【0054】
本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子であり、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が好ましい。
【0055】
本発明において、複素芳香族環とは、炭素原子と硫黄、酸素および窒素から選択されるヘテロ原子を1以上含む環であって、芳香族性を有するものである。前記複素芳香族環としては、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン等が挙げられる。
【0056】
本発明において、1つ以上のベンゼン環が縮合した芳香族縮合環とは、例えば、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン等が挙げられる。
【0057】
本発明において、1つ以上の複素芳香族環が縮合した複素芳香族縮合環とは、例えば、プリン、プテリジン等が挙げられる。
【0058】
本発明において、1つ以上のベンゼン環と1つ以上の複素芳香族環が縮合した混合縮合多環とは、例えば、イソベンゾフラン、インドリン、インドール、インダゾール、プリン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン等が挙げられる。
【0059】
本発明において、ベンゼン環、複素芳香族環、芳香族縮合環、複素芳香族縮合環、および混合縮合多環は、置換基を1以上有してもよい。前記置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。
【0060】
本発明の白金錯体は、例えば、以下のようにして製造することができる。例えば、前記二座配位子の白金と結合する原子および前記二座配位子の白金と結合する原子が、置換基を独立して有する場合、まず、第1の二座配位子と白金で中間体錯体を形成させ、その中間体錯体に、第2の二座配位子を反応させる。その結果、前記のような2つの二座配位子を含む第1の白金錯体を得ることができる。
【0061】
本発明の第1の白金錯体の2つの二座配位子が、下記式(a)と式(b)、式(a)と式(c)、式(a)と式(d)、式(b)と式(c)、式(b)と式(d)および式(c)と式(d)の組み合わせから選択される式で表される白金錯体は、本明細書に記載の方法を利用し、製造することができる。例えば、式(a)で表される配位子と式(b)で表される配位子とを有する式(D−11)で表される白金錯体は、以下のようにして製造することができる。
【0062】
【化9】
【0063】
前記式中、X、X’、R11、R12、R21およびR22は、式(a)および式(b)における定義と同様である。
【0064】
まず、式(A−11)の化合物と、白金化合物とを、反応させて式(B−11)の化合物を得る。この白金化合物としては、例えば、KPtClが挙げられる。この反応は、例えば20〜80℃で、1時間〜48時間、行う。この反応の溶媒としては、限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)とメタノールの混合物、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0065】
得られた式(B−11)の化合物を、式(C−11)の化合物と反応させて、式(D−11)の化合物を得る。この反応では、塩基、例えばNaH、トリエチルアミン等を用いてもよい。前記塩基は、式(B−11)の化合物の1〜3当量用いてもよい。この反応は、例えば20〜80℃で、1時間〜48時間、行う。この反応の溶媒としては、限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等が挙げられる。
【0066】
前記製造方法において、前記式(A−11)で表される化合物と式(C−11)で表される化合物は、市販で入手してもよいし、公知文献を参照して自家製造してもよい。
【0067】
また、本発明の第2の白金錯体は、例えば、以下のようにして製造することができる。例えば、前記第1の二座配位子の白金と結合する原子および前記第2の二座配位子の白金と結合する原子が、架橋されて連結された四座配位子である場合、まず、第1の二座配位子と第2の二座配位子とを架橋した中間体を形成し、その中間体と白金とで錯体を形成させる。その結果、前記のような第1の二座配位子と第2の二座配位子とが連結された四座配位子を含む白金錯体を得ることができる。
【0068】
例えば、式(a)で表される配位子と式(c)で表される配位子とが架橋された式(II)で表される白金錯体は、以下のようにして製造することができる。
【0069】
【化10】
【0070】
前記式中、X、X’’、Z、R12、R32は、式(I)〜式(VI)における定義と同様である。
【0071】
式(E−11)の化合物と、白金化合物(例えば、KPtCl、PtCl(CHCN)等)とを反応させ、式(II)の化合物を得る。
【0072】
前記製造方法において、前記式(E−11)で表される化合物は、市販で入手してもよいし、公知文献を参照して自家製造してもよい。
【0073】
また、本発明の白金錯体は、その発光波長を長波長側へシフトさせることが可能である。本発明の白金錯体であって、2つの二座配位子のいずれか一方が、前記白金錯体のHOMOに寄与し、そのHOMOに寄与するほうの二座配位子の、HOMOに影響を与える位置(例えば、式(a1)および式(b1)における5位)に、電子供与基を置換させることにより、前記白金錯体の発光波長を長波長側へシフトさせることができる。このように置換基を導入することにより、白金錯体のHOMOとLUMOのエネルギー差が縮まり、その結果、白金錯体の発光波長を長波長側へシフトさせることができる。
【0074】
また、本発明の白金錯体は、その発光波長を短波長側へシフトさせることが可能である。本発明の白金錯体であって、2つの二座配位子のいずれか一方が、前記白金錯体のLUMOに寄与し、そのLUMOに寄与するほうの二座配位子の、LUMOに影響を与える位置(例えば、式(a1)および式(b1)における4位)に、電子供与基を置換させることにより、前記白金錯体の発光波長を短波長側へシフトさせることができる。このように置換基を導入することにより、白金錯体のHOMOとLUMOのエネルギー差が広がり、その結果、白金錯体の発光波長を短波長側へシフトさせることができる。
【0075】
本発明の発光材料は、本発明の第1の白金錯体または第2の白金錯体を含む。
【0076】
本発明の発光材料は、有機EL素子の発光材料、具体的には発光層の材料として用いることができる。そのような有機EL素子としては、例えば、基板、陽極、正孔輸送層、本発明の発光材料を含む発光層、電子輸送層、および陰極をこの順に積層して構成される。前記基板、陽極、正孔輸送層、電子輸送層、および陰極については、従来公知の材料を用い、従来公知の製造方法により形成されていてもよい。
【0077】
前記発光層は、本発明の発光材料のほかに、ホスト材料を含んでいてもよい。このホスト材料としては、例えば、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの、アリールシラン骨格を有するものが挙げられる。
【0078】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
【0079】
種々のスペクトルは、以下の機器を用いて測定した。
核磁気共鳴(NMR)スペクトルはバリアン社製UNITY−INOVA核磁気共鳴装置(500MHz)を用いて測定し、測定溶媒の残存シグナルを内部基準として使用した。
【0080】
量子収率は、蛍光光度計FP−6500N、燐光測定対応低温中積分球システムINK−533、および、液体試料用セルLPH−120(全て日本分光株式会社製)を用いて測定した。
【0081】
分子軌道の計算は、密度汎関数法(DFT法)により行った。使用ソフトとしてスパルタン10Wを用い、汎関数としてb3lyp、基底関数としてLACVPを用いた。
【0082】
本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
DMF:ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
DMSO:ジメチルスルホキシド
【実施例1】
【0083】
化合物(1)の製造
【0084】
【化11】
【0085】
化合物(1)をスキーム3に従い、合成した。まず、ベンズアルデヒドと1当量のペンチルアミンをエタノール中で加熱還流することで、化合物(A−1)を得た。また、サリチルアルデヒドと1当量のペンチルアミンをエタノール中で加熱還流して化合物(C−1)を得た。
【0086】
化合物(A−1)(0.88g)およびKPtCl(1.04g)を、メタノールとDMFの混合溶媒中(88mL,メタノール:DMF=10:1)で、70℃で24時間反応させた。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をトルエン(80mL)に溶解した。水(40mL×3)で洗浄後、トルエン溶液にアセトン(10mL)を加え、生じた固体を濾取して、中間体化合物(B−1)(オレンジ色、0.250g)を得た。
【0087】
化合物(C−1)(0.046g)を1当量のNaHとエタノール中(3mL)、室温で0.5時間反応させた後、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体にTHF(4mL)および、前記中間体化合物(B−1)(0.081g)を加え、得られた混合物を室温で24時間反応させた。混合物の有機層を濃縮後、得られた粗成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出液;トルエン)にて精製することで、化合物(1)を得た(橙色粉末、27mg)。
【0088】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 0.85 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.91 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.26-1.42 (m, 8H), 1.84-1.93 (m, 4H), 3.82 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 4.27 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 6.52 (ddd, J = 8.0, 6.8, 1.1 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.00 (ddd, J = 7.5, 7.5, 1.1 Hz, 1H), 7.09 (ddd, J = 7.5, 7.5, 1.5 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 8.0, 1.8 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 7.5, 1.5 Hz, 1H), 7.34 (ddd, J = 8.5, 6.8, 1.5 Hz 1H), 7.42 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.90 (s, 1H), 8.13 (s, 1H).
【実施例2】
【0089】
化合物(2)の製造
【0090】
【化12】
【0091】
化合物(2)をスキーム4に従い、合成した。まず、5−フルオロサリチルアルデヒドと1当量のペンチルアミンをエタノール中で加熱還流して化合物(C−2)を得た。化合物(C−1)(0.046g)の代わりに化合物(C−2)(0.17g)を用いた以外は、実施例1と同様にして化合物(2)を得た(赤橙色粉末、57mg)。
【0092】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 0.85 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.91 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.26-1.43 (m, 8H), 1.83-1.94 (m, 4H), 3.79 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 4.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 6.80 (dd, J = 9.3, 4.8 Hz, 2H), 6.87 (dd, J = 9.0, 3.3 Hz, 2H), 7.00 (ddd, J = 7.4, 7.4, 0.9 Hz, 1H), 7.06-7.12 (m, 4H), 7.28 (dd, J = 7.4, 1.5 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.83 (s, 1H), 8.12 (s, 1H).
【実施例3】
【0093】
化合物(3)の製造
【0094】
【化13】
【0095】
化合物(3)をスキーム5に従い、合成した。まず、5−メチルサリチルアルデヒドと1当量のペンチルアミンをエタノール中で加熱還流して化合物(C−3)を得た。化合物(C−1)(0.046g)の代わりに化合物(C−3)(0.14g)を用いた以外は、実施例1と同様にして化合物(3)を得た(橙色粉末、68mg)。
【0096】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 0.84 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.26-1.41 (m, 8H), 1.82-1.92 (m, 4H), 2.24 (s, 3H), 3.81 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.27 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 6.80 (ddd, J = 8.3 Hz, 1H), 6.97 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 7.00 (ddd, J = 7.3, 7.3, 0.9 Hz, 1H), 7.09 (ddd, J = 7.0, 7.0, 1.4 Hz, 1H), 7.17 (dd, J = 8.3, 1.1 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 7.3, 1.4 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.85 (s, 1H), 8.13 (s, 1H).
【実施例4】
【0097】
化合物(4)の製造
【0098】
【化14】
【0099】
化合物(4)をスキーム6に従い、合成した。まず、5−メトキシサリチルアルデヒドと1当量のペンチルアミンをエタノール中で加熱還流して化合物(C−4)を得た。化合物(C−1)(0.046g)の代わりに化合物(C−4)(0.18g)を用いた以外は、実施例1と同様にして化合物(4)を得た(赤色粉末、57mg)。
【0100】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 0.85 (t, J = 6.5 Hz, 3H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.28-1.40 (m, 8H), 1.85-1.92 (m, 4H), 3.75 (s, 3H), 3.81 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 4.28 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 6.66 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 9.5 Hz, 1H), 7.00 (ddd, J = 7.3, 7.3, 1..0 Hz, 1H), 7.05 (dd, J = 7.5, 7.5, 1.5 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 8.0, 1.8 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 9.5, 3.3 Hz, 1H), 7.09 (ddd, 7.3, 7.3, 1.5 Hz, 1H), 7.28 (dd, J = 7.3, 1.5 Hz 1H), 7.42 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.86 (s, 1H), 8.13 (s, 1H).
【実施例5】
【0101】
化合物(5)の製造
【0102】
【化15】
【0103】
化合物(5)をスキーム7に従い、合成した。まず、5−メトキシベンズアルデヒドと1当量のペンチルアミンをエタノール中で加熱還流することで、化合物(A−2)を得た。
【0104】
化合物(A−2)(1.53g)およびKPtCl(1.56g)を、メタノールとDMFの混合溶媒中(88mL,メタノール:DMF=10:1)で、70℃で24時間反応させたた。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をトルエン(80mL)に溶解した。水(40mL×3)で洗浄後、トルエン溶液にアセトン(10mL)を加え、生じた固体を濾取して、中間体化合物(B−2)(赤橙色、0.36g)を得た。
【0105】
化合物(C−1)(0.15g)を1当量のNaHとエタノール中(3mL)、室温で0.5時間反応させた後、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体にTHF(4mL)および、前記中間体化合物(B−2)(0.36g)を加え、得られた混合物を室温で24時間反応させた。混合物の有機層を濃縮後、得られた粗成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出液;トルエン)にて精製することで、化合物(5)を得た(赤橙色粉末、78mg)。
【0106】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ0.85 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.90 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.26-1.41 (m, 8H), 1.83-1.92 (m, 4H), 3.77 (s, 3H), 3.81 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.24 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 6.51 (ddd, J = 7.8, 6.8, 1.0 Hz, 1H), 6.77 (dd, J = 8.5, 2.9 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 7.18 (dd, J = 7.8, 1.9 Hz, 1H), 7.29 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.34 (ddd, J = 8.5, 6.8, 1.9 Hz 1H), 7.88 (s, 1H), 8.11 (s, 1H).
【実施例6】
【0107】
化合物(6)の製造
【0108】
【化16】
【0109】
化合物(6)をスキーム8に従い、合成した。まず、4−メトキシベンズアルデヒドと1当量のペンチルアミンをエタノール中で加熱還流することにより、化合物(A−3)を得た。また、4−メトキシサリチルアルデヒドと1当量のペンチルアミンをエタノール中で加熱還流して化合物(C−5)を得た。
【0110】
化合物(A−3)(1.03g)およびKPtCl(1.04g)を、メタノールとDMFの混合溶媒中(88mL,メタノール:DMF=10:1)で、70℃で24時間反応させた。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をトルエン(80mL)に溶解した。水(40mL×3)で洗浄後、トルエン溶液にアセトン(10mL)を加え、生じた固体を濾取して、中間体化合物(B−3)(黄色、0.359g)を得た。
【0111】
中間体化合物(B−3)(0.13g)を化合物(C−5)(0.083g)、KCO(0.104g)とトルエン中(12mL)、70℃で16時間反応させた後、溶媒を減圧留去した。得られた混合物を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出液;酢酸エチル)にて精製することで、化合物(6)を得た(黄粉末、0.038g)。酢酸エチルから再結晶したものを発光特性の評価に使用した。
【0112】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 0.85 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.91 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.26-1.34 (m, 4H), 1.37-1.42 (m, 4H), 1.82-1.92 (m, 4H), 3.76 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 4.21 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 6.17 (dd, J = 8.8, 2.5 Hz, 1H), 6.34 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.54 (dd, J = 8.3, 2.4 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.77 (s, 3H), 8.03 (s, 3H).
【実施例7】
【0113】
化合物(7)の製造
【0114】
【化17】
【0115】
化合物(7)をスキーム9に従い、合成した。まず、ベンズアルデヒドと1当量のメチルアミンをメタノール中で加熱還流することで、化合物(A−4)を得た。また、サリチルアルデヒドと1当量のメチルアミンをメタノール中で加熱還流して化合物(C−6)を得た。
【0116】
化合物(A−4)(0.596g)およびKPtCl(1.04g)を、メタノールとDMFの混合溶媒中(88mL,メタノール:DMF=10:1)で、70℃で24時間反応させた。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をトルエン(120mL)に溶解した。水(40mL×3)で洗浄後、トルエン溶液にアセトン(20mL)を加え、生じた固体を濾取して、中間体化合物(B−4)(橙色、0.189g)を得た。
【0117】
中間体化合物(B−4)(0.035g)を化合物(C−6)(0.017g)、KCO(0.035g)とトルエン中(4mL)、70℃で16時間反応させた後、溶媒を減圧留去した。得られた混合物を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出液;トルエン)にて精製することで、化合物(7)を得た(橙色粉末、0.016g)。酢酸エチルから再結晶したものを発光特性の評価に使用した。
【0118】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 3.66 (d, J = 1.1 Hz, 3H), 4.20 (d, J = 1.1 Hz, 3H), 6.54 (ddd, J = 7.9, 6.9, 1.5 Hz, 1H), 6.97 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.03 (ddd, J = 7.5, 7.5, 1.1 Hz, 1H), 7.13 (ddd, J = 7.5, 7.5, 1.6 Hz, 1H), 7.22 (dd, J = 7.9, 1.8 Hz, 1H), 7.30 (dd, J = 7.5, 1.6 Hz, 1H), 7.39 (ddd, J = 8.6, 6.9, 1.8 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.98 (br s, 3H), 8.18 (q, J = 1.1 Hz, 1H).
【実施例8】
【0119】
化合物(8)の製造
【0120】
【化18】
【0121】
化合物(8)をスキーム10に従い、合成した。4−メトキシサリチルアルデヒドと1,12−ジアミノドデカン、ピロールアルデヒド(1:1:1)をエタノール中で還流することで化合物(B−5)を得た。
【0122】
化合物(B−5)(0.43g)、PtCl(dmso)(0.35g)、KCO(0.91g)をDMSOとトルエンの混合溶媒中(300mL,DMSO:トルエン=1:4)、140℃で17時間反応させた。トルエンを減圧留去後、水(200mL)を加え、酢酸エチル(200mL)で抽出した。濃縮後、クロマトグラフィ(NHシリカゲル;溶出液ヘキサン:トルエン=3:2)で精製することで化合物(8)(黄色固体、0.083g)を得た。ベンゼンから再結晶したものを発光特性の評価に使用した。
【0123】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 1.02-1.58 (m, 18 H), 2.15-2.36 (m, 2 H), 2.75-2.80 (m, 1 H), 3.53-3.67 (m, 1 H), 3.81 (s, 3 H), 4.28-4.36 (m, 1 H), 4.66-4.74 (m, 1 H), 6.18 (dd, J = 3.9, 2.1 Hz, 1 H), 6.22 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1 H), 6.38 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 6.66 (dd, J = 3.9, 1.0 Hz, 1 H), 6.96 (s, 1 H), 7.10 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.51 (s, 1 H), 7.65 (s, 1 H).
【実施例9】
【0124】
化合物(9)の製造
【0125】
【化19】
【0126】
化合物(9)をスキーム11に従い、合成した。5−メトキシサリチルアルデヒドと1,12−ジアミノドデカン、ピロールアルデヒド(1:1:1)をエタノール中で還流することで化合物(B−6)を得た。
【0127】
化合物(B−6)(0.43g)、PtCl(dmso)(0.35g)、KCO(0.91g)をDMSOとトルエンの混合溶媒中(300mL,DMSO:トルエン=1:4)、140℃で17時間反応させた。トルエンを減圧留去後、水(200mL)を加え、酢酸エチル(200mL)で抽出した。濃縮後、クロマトグラフィ(NHシリカゲル;溶出液ヘキサン:トルエン3:2)で精製することで化合物(9)(黄色固体、0.16g)を得た。ベンゼンから再結晶したものを発光特性の評価に使用した。
【0128】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ1.02-1.58 (m, 18 H), 2.15-2.25 (m, 1 H), 2.27-2.37 (m, 1 H), 2.75-2.81 (m, 1 H), 3.62-3.68 (m, 1 H), 3.75 (s, 3 H), 4.25-4.31 (m, 1 H), 4.71-4.77 (m, 1 H), 6.18 (dd, J = 3.9, 2.1 Hz, 1 H), 6.65 (dd, J = 3.9, 0.9 Hz, 1 H), 6.67 (d, J = 3.0 Hz, 1 H), 6.88 (d, J = 9.2, 1.0 Hz, 1 H), 6.96 (s, 1 H), 7.05 (dd, J = 9.2, 3.0 Hz, 1 H), 7.49 (s, 1 H), 7.76 (s, 1 H).
【実施例10】
【0129】
化合物(10)の製造
【0130】
【化20】
【0131】
化合物(C−5)(0.089g)を1当量のNaHとエタノール中(3mL)、室温で0.5時間反応させた後、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体にTHF(4mL)および、中間体化合物(B−1)(0.081g)を加え、得られた混合物を室温で24時間反応させた。混合物の有機層を濃縮後、得られた粗成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出液;トルエン)にて精製することで、化合物(10)を得た(黄色粉末、46mg)。
【0132】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 0.85 (t, J = 6.5 Hz, 3H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.27-1.43 (m, 8H), 1.81-1.94 (m, 4H), 3.79 (s, 3H), 3.83 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 4.20 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 6.17 (dd, J = 9.0, 2.5 Hz, 1H), 6.35 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.00 (td, J = 7.5, 1.0 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.08 (td, J = 7.5, 1.5 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 7.5, 2.0 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.77 (s, 1H), 8.14 (s, 1H).
【実施例11】
【0133】
化合物(10)の製造
【0134】
【化21】
【0135】
化合物(C−1)(0.15g)を1当量のNaHとエタノール中(4mL)、室温で0.5時間反応させた後、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体にTHF(5mL)および、中間体化合物(B−3)(0.26g)を加え、得られた混合物を室温で24時間反応させた。混合物の有機層を濃縮後、得られた粗成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出液;トルエン)にて精製することで、化合物(11)を得た(黄色粉末、89mg)。
【0136】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ0.86 (t, J = 6.0 Hz, 3H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.27-1.41 (m, 8H), 1.83-1.92 (m, 4H), 3.75 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.82 (s, 3H), 4.26 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 6.51 (ddd, J = 7.0, 7.0, 1.0 Hz, 1H), 6.54 (dd, J = 8.5, 2.5 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 7.6, 1.5 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.33 (ddd, J = 7.0, 7.0, 2.0 Hz, 1H), 7.89 (s, 1H), 8.01 (s, 1H).
【0137】
[固体発光量子収率の測定]
実施例1〜11で得た化合物(1)〜(11)について、296Kおよび77Kにおける固体発光量子収率φ(%)を測定した。具体的には、化合物(1)〜(11)の結晶状態(粉末)における発光量子収率を、絶対法によりそれぞれ求めた。測定方法は以下の通りである。
【0138】
(測定方法)
測定の際、酸素の影響を除くため、全てのサンプルは、石英セル中に結晶(化合物(1)〜(9))をそのまま封入して、アルゴン雰囲気下で測定した。さらに、低温(77K)での測定は、石英製デュワーを用いて、結晶を封入した上記石英セルを液体窒素で冷やしながら測定した。全ての発光スペクトルは、標準光源を利用することにより補正を行った。励起光として420nmまたは450nmの波長の光を用いた。内部量子収率の算出には、固体量子効率計算プログラム(日本分光株式会社製)を用いた。また、各発光性有機白金錯体が発する光の発光極大波長も、併せて測定した。測定結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
前記表1に示すように、実施例1〜11の結果から、本発明の白金錯体は、結晶状態において、室温において高い量子効率で燐光発光を示すことが確認できた。さらに、実施例3〜4の化合物は、HOMOに寄与している配位子(式(a))上に電子供与基を有することにより、そのような電子供与基を有さない実施例1の化合物(1)と比較して燐光吸収波長は長波長へシフトしていることが確認できた。実施例4と実施例5の化合物は、5位に電子供与基を導入することにより、共に長波長シフトしているが、特に、HOMOに寄与する配位子のHOMOに影響を与える位置に電子供与性配位子を置換させた化合物(4)(実施例4)の方が、その長波長シフトが大きい。実施例10と実施例11の化合物は、4位に電子供与基を導入することにより、共に短波長シフトしているが、特に、LUMOに寄与する配位子のLUMOに影響を与える位置に電子供与性配位子を置換させた化合物(11)(実施例11)の方が、その短波長シフトが大きい。
【0141】
[HOMOとLUMOのエネルギー準位]
実施例1の化合物(1)のHOMOとLUMOのエネルギー準位をDFT(密度汎関数理論)法により算出した。得られたHOMOとLUMOのエネルギー準位の分布を、図1Aに示す。図1Aに示すように、化合物(1)のHOMOは、サリチルアルミジン型配位子の寄与が大きく、LUMOは、イミノフェニル型配位子の寄与が大きいことが確認できた。すなわち、本発明の化合物のHOMOは、第2の二座配位子(イミノフェニル型配位子)と比べて第1の二座配位子(サリチルアルミジン型配位子)の寄与が大きく、LUMOは、第1の二座配位子(サリチルアルミジン型配位子)と比べて第2の二座配位子(イミノフェニル型配位子)の寄与が大きいことが確認できた。なお、化合物(1)の構造式を参考のため図1Bに示す。
【0142】
[X線結晶解析]
実施例3の化合物(3)について、株式会社リガク社製イメージングプレート単結晶自動X線構造解析装置PAPID−AUTOを用いてX線結晶解析を行った。X線は、Mo−Ka線(λ=0.71075Å)を用いた。実施例3の化合物(3)は、酢酸エチルにより結晶化した結晶を用いた。結晶解析の結果、得られた結晶中におけるパッキングを図3に示す。
【0143】
図3に示すように、1つの化合物(3)の二座配位子中のベンゼン環と、それと平行な別の化合物(3)の二座配位子中のベンゼン環との距離が9Å以上である。このような配置は、化合物(3)の分子における第1の二座配位子の白金と結合する原子と、第2の二座配位子の白金と結合する原子が、n−ペンチルという立体的に大きな官能基を有することにより、実現していると考えている。なお、このような配置を取ると、化合物(3)の分子が分子間で消光しあわないため、強い強度の燐光発光が実現できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の発光材料は、発光効率に優れるため、実用に足る発光強度を得ることができる。従って、本発明の発光材料は、次世代技術である有機発光素子等の材料として有用である。
図1A
図1B
図2
図3