【文献】
T.T.Bui、外5名,HIGH-PRECISION HETEROGENEOUS INTEGRATION BASED ON FLIB-CHIP BONDING USING MISALIGNMENT SELF-CORRECTION ELEMENTS,Optical MEMS and Nanophotonic(OMN), 2012 International Conference on [ONLINE],IEEE,2012年 8月 9日,p.93−94,[検索日:2016/6/10],[検索源:IEEE Xplore]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一電極の中心軸に対して前記第一電極の側面が成す第一角度は、前記第二電極の前記凹部の中心軸に対して前記凹部の内側面が成す第二角度よりも大きい、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、一実施形態として、一方の半導体チップ又は基板に、略円錐形状に突出した第一電極を形成するバンプ形成工程と、他方の半導体チップ又は基板に、内側面が略角錐形状又は角柱形状の凹部を有する第二電極を形成するパッド形成工程と、前記第一電極を前記凹部に挿入した状態で、前記第一電極と前記第二電極とを互いに近づける方向に加圧し、前記第一電極の中心軸と前記凹部の中心軸とを一致させた状態とする加圧工程と、前記第一電極及び前記第二電極の少なくとも一方を超音波により振動させ、前記第一電極と前記第二電極とを接合させる超音波接合工程と、を備える。
【0015】
上記バンプ形成工程により形成される、一方の半導体チップ又は基板に略円錐形状に突出した形状を持つ第一電極は、所謂バンプ電極(又は突出電極)を構成する。また、パッド形成工程により形成される、他方の半導体チップ又は基板にて内側面が略角錐形状又は角柱形状の凹部を有する形状の第二電極は、バンプ電極と接合される所謂パッド電極を構成する。
【0016】
これら第一電極及び第二電極は、続く加圧工程にて、第一電極が第二電極の凹部に挿入された状態(又は第二電極の凹部が第一電極に被された状態とも言える)で、互いに近づく方向に加圧される。第一電極と第二電極とが接近する過程において、第一電極が第二電極の凹部の内側面を摺動しながら案内される結果、第一電極の中心軸と凹部の中心軸つまり第二電極の中心軸とが一致した状態となる。このとき、第一電極の側面つまり円錐形状の側面と、第二電極の凹部の内側面つまり略角錐形状又は角柱形状の内側面とは互いに形状が異なるため、両者は全面で接触した状態とはならず、複数個所において線又は点で接触した状態となる。
【0017】
第一及び第二電極は、加圧工程により互いの中心軸が一致するとともに、互いの側面が少なくとも一部にて接触した状態となっている。この状態にある第一及び第二電極は、さらに、続く超音波接合工程にて、第一電極及び第二電極の少なくとも一方が超音波により振動されて、互いに接合される。このとき、第一電極と第二電極の接触部分には超音波振動によって比較的大きな力が加わる。当該接触部分における両電極の表面層はこの力によって僅かに崩れ、活性な表面が新たに露出する。
【0018】
その結果、第一電極と第二電極とは、活性な表面同士において再び接触し、強固に金属結合する。その後、当該部分を起点として金属結合した部分が拡がって行き、最終的には、第一電極と第二電極とがその接触面のほぼ全面において金属結合した状態となる。
【0019】
本発明では、上述したように、第一電極と第二電極との当初における接触部分が線又は点のような非常に狭い状態となる。このため、超音波振動のエネルギーが低くても当該部分に集中して作用し、超音波工程の初期において当該部分が強固な金属結合の起点となる。その結果、第一電極が第二電極の凹部から飛び出てしまわない程度に超音波振動のエネルギーを低くしながらも、第一電極と第二電極とを強固に結合させることができる。
【0020】
また、一実施形態では、例えば、前記第一電極の先端に第一平坦面が形成されており、前記第一電極の中心軸に対して前記第一電極の側面が成す第一角度は、前記第二電極の前記凹部の中心軸に対して前記凹部の内側面が成す第二角度よりも小さい。
【0021】
言い換えると、略円錐形状の先端部に第一平坦面が形成された第一電極について、その中心軸に対して側面が成す第一角度が、対向する第二電極の凹部の中心軸に対して内側面が成す第二角度よりも小さくなるように形成する。
【0022】
これにより、まず加圧工程にて、第一電極は、その先端部に形成された第一平坦面の外縁部分が第二電極の凹部と接触した状態となる。このため、続く超音波接合工程においては、第一電極と第二電極との金属結合は、第一電極の先端から根元に向かって、換言すれば、第二電極の凹部の底部側から開口端部側に向かって進行することとなる。その結果、第一電極と第二電極との間に閉じ込められた気泡が金属結合面の形成を妨げてしまうことが防止され、両者を接触面の全範囲で金属結合させることができる。
【0023】
また、一実施形態では、例えば、前記第二電極の底部に第二平坦面が形成されている。
【0024】
このため、第一電極を低めの高さに形成した場合においても、第一電極の先端の第一平坦面と第二電極の凹部底部の第二平坦面との間に隙間が広く形成されてしまうことを防止することができる。
【0025】
また、一実施形態では、例えば、前記第二平坦面の周縁部に内接する円の直径は、前記第一平坦面の周縁部の直径よりも小さい。
【0026】
加圧工程において、第一電極の先端である第一平坦面の全体が第二平坦面上に当接してしまうと、第一電極の中心軸と第二電極の凹部の中心軸との位置関係は完全には規制されない。その結果、超音波接合工程が完了した時点において、当該位置関係が僅かにずれてしまう可能性がある。
【0027】
そこで、第二平坦面の周縁部に内接する円の直径を第一平坦面の周縁部の直径よりも小さくすることにより、加圧工程において第一電極と第二電極とを近づけて行った際、第一電極の先端の第一平坦面の全体が第二電極の凹部の第二平坦面に当接する前に、第一平坦面の周縁部つまり頂点が第二電極の凹部の内側面に点接触することとなる。このため、第一電極の中心軸と第二電極の中心軸との位置関係が完全に規制された状態で、超音波接合工程に移行することができる。その結果、電極同士の位置合わせ精度を更に向上させることができる。
【0028】
また、一実施形態では、例えば、前記第一電極及び前記第二電極は、少なくともその表面が金である。
【0029】
金は比較的軟質の金属であるため、超音波工程では第一電極と第二電極との接触部分において崩れやすく、活性な表面が新たに露出しやすい。このため、第一電極と第二電極とをより一層確実に接合することができる。尚、少なくとも第一及び第二電極の互いに接触する部分を金とすることがより好ましい。
【0030】
さらにまた、一実施形態では、例えば、前記第一電極には、その先端部の周縁に面取りが施されている。
【0031】
例えば第一電極の先端に第一平坦面が形成されており、当該第一平坦面の周縁部において面取りが施されていない場合には、加圧工程及び超音波接合工程において上記周縁部が比較的大きく潰れてしまう。その結果、潰れた第一電極の一部が第二電極の凹部から周囲にはみ出してしまい、半導体チップ上で隣り合う他の第一電極(又は第二電極)に対して接触してしまう恐れがある。すなわち、隣り合う電極間が導通してしまい、半導体チップの損傷や動作不良の原因となってしまう恐れがある。このような接触は、電極間の距離が短いファインピッチの半導体チップにおいて特に生じやすい。
【0032】
そこで、この態様では、第一電極には、その先端部の周縁に面取りが施されている。このような構成とすることにより、加圧工程及び超音波接合工程において、第一電極の先端部が大きく潰れてしまうことが抑制される。その結果、潰れた第一電極が第二電極の凹部から周囲にはみ出してしまうことが抑制される。ファインピッチの半導体チップであっても、隣り合う電極間が導通してしまうことを確実に防止しながら、半導体チップの接合を行うことができる。
【0033】
また、一実施形態では、例えば、前記パッド形成工程において形成された前記第二電極は、半導体チップ又は基板のうち平坦な表面から、その全体が突出するように形成されている。
【0034】
第二電極を形成するための具体的な方法としては、例えば、基板の表面に対してエッチングを施して凹部を形成し、その表面に絶縁層や導体層を形成することが考えられる。このような方法は、基板等の材質がシリコンであれば容易に行うことができる。しかしながら、基板等の材質がシリコン以外である場合には、当該基板等の表面に直接凹部を形成することは一般的に容易ではない。
【0035】
そこで、この態様では、第二電極は、半導体チップ又は基板のうち平坦な表面から、その全体が突出するように形成されている。
【0036】
このような構成により、基板や半導体チップ自体には凹部を形成することなく、換言すれば、基板や半導体チップの表面の形状を平坦としたままで、当該表面に対して第二電極を形成することができる。従って、基板等の材質がシリコン以外である場合にも、本発明に係る方法を用いて、半導体チップの電極と基板等の電極とを強固に接合することが可能となる。
【0037】
以上のとおりの本発明によれば、位置合わせを高精度で行いながら、比較的に低温で半導体チップの電極と基板等の電極とを強固に接合することが可能な半導体装置の製造方法、及び半導体製造装置を提供することができる。
【0038】
以下、添付図面を参照しながら本発明のさらに具体的な実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0039】
以下では、本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態として、それぞれに電極が形成された半導体チップと基板とを接続する例を説明する。尚、本発明は、以下に説明するような半導体チップと基板とを接続してなる半導体装置の製造方法に限られるものではなく、半導体チップ同士を接続してなる半導体装置の製造方法にも適用することができる。
【0040】
図1は、本発明の第一実施形態に係るバンプ形成工程により、複数のバンプ電極100が形成された半導体チップ1の一例を示す断面図である。
図1に示したように、半導体チップ1はシリコンからなる板状体であって、その一面側に複数のバンプ電極100が形成されている。半導体チップ1は、半導体デバイスが形成されたウエハから切り出された状態の個片チップ、所謂「ベアチップ」と称されるものであって、後に説明するように、基板10に対して互いの電極同士を接合した状態で搭載されるものである。
【0042】
バンプ電極100を形成する工程について簡単に説明する。まず、半導体チップ1の一面(
図1では上面)に、SiOからなる絶縁層2を形成する。絶縁層2はPVD又はCVDにより形成することができる。絶縁層2は、フォトレジスト膜を用いることにより、半導体チップ1に形成されるメタル層3の配置に合わせてパターニングされる。
【0043】
メタル層3は、絶縁層2を覆うように形成された層であって、金を主とする金属を蒸着することにより形成されている。メタル層3は、絶縁層2を形成した後、フォトレジスト膜を除去する前の段階で絶縁層2の上部に成膜される。その後、フォトレジスト膜を除去することで、絶縁層2とメタル層3とが同時にパターニングされる。
【0044】
絶縁層2及びメタル層3が形成された後、メタル層3の一部から突出するように複数のバンプ電極100が形成される。バンプ電極100は、
図3に示したようにメタル層3から略円錐形状に突出した形状となっており、その先端には平坦面101が形成されている。平坦面101はメタル層3と略平行であって、その直径D1は、バンプ電極100の他方の端部つまりメタル層3と接している部分の直径D2よりも小さくなっている。
【0045】
図1及び
図3に示したような形状のバンプ電極100を形成するには、まず、半導体チップ1のうちメタル層3が形成されている面上にフォトレジスト膜を形成する。フォトレジスト膜の厚さは、(これから形成する)バンプ電極100の高さと略同一の厚さとしておく。その後、フォトレジスト膜のうちバンプ電極100に対応する複数個所に、エッチングにより直径D2の孔を形成する。
【0046】
続いて、PVDによりフォトレジスト膜上に金を成膜する。当該成膜の過程において、フォトレジスト膜に形成された孔の内部では、先端が平坦な略円錐形状のバンプ電極100が成長していく。金の膜厚がフォトレジスト膜の膜厚と略同一となった時点で成膜を終了し、フォトレジスト膜を除去すれば、
図1及び
図3に示したような形状のバンプ電極100が形成される。
【0047】
尚、本実施形態においてはバンプ電極100の全体を金により形成した。このような態様に替えて、略円錐形状のバンプ電極100を金ではなく銅により形成した後、その表面全体に金のコーティングを施してもよい。本発明は、バンプ電極100のうち少なくとも表面層が、金のように比較的軟質の金属で構成されていれば、特に効果を発揮するものである。
【0048】
図2は、本発明のパッド形成工程により、複数のパッド電極200が形成された基板10の一例を示す断面図である。
図2に示したように、基板10はシリコンからなる板状体であって、その一面側に複数の複数のパッド電極200が形成されている。これらパッド電極200は、基板10に半導体チップ1が接続された際においてバンプ電極100と対応する位置、に形成されている。
【0050】
パッド電極200を形成する工程について簡単に説明する。まず、基板10の一面(
図2では上面)にマスキングを施した後、当該マスキングのうちパッド電極200を形成する位置に矩形の孔を形成する。すなわち、基板10の表面のうちパッド電極200を形成する部分のみを露出させる。
【0051】
その状態で、当該露出部分に対してエッチングを施す。エッチングにより、当該露出部分には凹部が形成されていく。ここで、基板10を構成するシリコン結晶の異方性により、凹部の内側面は基板10の表面、つまり被マスキング面に対して垂直とはならず、凹部の中心に向かって下るように傾斜した面となる。具体的には、この凹部の内面は、底部が平坦な略四角錐形状となる。
【0052】
凹部は、エッチング時間が経過するに伴って、底部の平坦面を次第に小さくしながらより深く成長していく。その後、凹部の深さがバンプ電極100の高さよりも小さい所定の深さとなった時点で、エッチングを終了し、マスキングを除去する。この時点でも、凹部の底部には平坦面が形成されている。
【0053】
続いて、凹部の内面全体、及び基板10の表面のうち凹部の近傍の部分を覆うように、絶縁層12及びパッド電極200を形成する。絶縁層12は、半導体チップ1に形成された絶縁層2と同様に、SiOからなる層である。また、パッド電極200は、絶縁層2を覆うように形成された層であって、金をPVD成膜することにより形成されている。絶縁層12及びパッド電極200の形成方法は、既に説明した絶縁層2及びメタル層3の形成方法とそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
尚、本実施形態においてはパッド電極200の全体を金により形成した。このような態様に替えて、パッド電極200を金ではなく銅により形成した後、その表面全体に金のコーティングを施してもよい。本発明は、パッド電極200のうち少なくとも表面層が、金のように比較的軟質の金属で構成されていれば、特に効果を発揮するものである。
【0055】
以上の工程を経て基板10に形成されたパッド電極200は、
図4に示したように、その全体形状として底部(頂部とも呼べる)が平坦な略四角錐形状を有し、その内側に略同一形状の凹部210が形成されている。すなわち、凹部210は、その4つの内側面211が中心に向かって下るように傾斜した面となっており、その底部には平坦面212が形成されている。平坦面212は正方形状の平面であって、その一辺の長さは、バンプ電極100の先端の直径D1よりも小さい。その結果、平坦面212の周縁部に内接する円の直径は、平坦面101の周縁部の直径D1よりも小さくなっている。
【0056】
続いて、
図5乃至
図7を参照しながら、半導体チップ1のバンプ電極100と基板10のパッド電極200とを接合する方法について説明する。当該接合は、ステージ500とピックアップ装置600とを備えた半導体製造装置(接合装置BE)によって行われる。
図5においては、接合装置BEは模式的に描いてある。
【0057】
図5に示したように、まず基板10をステージ500上に搭載する。このとき、基板10は、パッド電極200が形成された面を上方に向けた状態となっており、その下面がステージ500に対して真空吸着により固定されている。
【0058】
続いて、半導体チップ1をピックアップ装置600により保持する。ピックアップ装置600は、平坦な保持面601を有している。ピックアップ装置600は、半導体チップ1のうちバンプ電極100が形成されている面とは反対側の面を保持面601に当接させ、真空吸着によって半導体チップ1を保持し固定する。保持面601の略中央には吸着穴602が形成されており、当該吸着穴602を通じて保持面601と半導体チップ1との間に介在する空気を排気し、半導体チップ1を真空吸着することが可能となっている。
図5に示したように、ピックアップ装置600は半導体チップ1をステージ500の上方に移動させ、半導体チップ1と基板10とを互いに平行な状態で対向させる。
【0059】
ピックアップ装置600は更にその位置を調整し、半導体チップ1に形成された全てのバンプ電極100の位置が、基板10に形成された(対応する)パッド電極200の直上となるように調整する。
【0060】
尚、半導体チップ1及び基板10には、それぞれアラインメントマーク4、14が形成されている。ステージ500には、基板10のアラインメントマーク14の下方に窓510が形成されており、窓510を通じて赤外線を照射することにより、アラインメントマーク4とアラインメントマーク14との位置関係を不図示のカメラで確認できるようになっている。尚、ステージ500が赤外線に対して透明な素材(例えばガラス)で形成されている場合には、窓510の形成は不要である。
【0061】
ピックアップ装置600は、カメラから得られたアラインメントマーク4、14の位置関係に関する情報に基づいて、保持している半導体チップ1の位置を微調整する。このときの調整は、バンプ電極100の中心軸と凹部210の中心軸とが完全に一致するまで必ずしも行う必要はなく、中心軸同士の位置ずれが2μm程度に収まった時点で終了すればよい。
【0062】
中心軸同士の位置ずれは、保持面601と垂直な方向に沿ってピックアップ装置600を下降させたときに、バンプ電極100の先端の平坦面101が凹部210の内部に確実に挿入される程度であればよい。換言すれば、バンプ電極100とパッド電極200との最初の接触が、平坦面101の外縁と内側面211との間で確実に生じる程度であればよい。
【0063】
位置合わせが完了した後、半導体チップ1と基板10とが互いに平行な状態を維持しながら、保持面601と垂直な方向に沿ってピックアップ装置600を下降させる。バンプ電極100の先端が凹部210の内部に挿入された後、平坦面101の外縁が凹部210の内側面211に接触する。その際、仮にバンプ電極100の中心軸と凹部210の中心軸とが完全に一致した状態であれば、円形である平坦面101の外縁は、4つの内側面211に対して4か所同時に接触することとなる。しかし、中止軸の位置ずれが生じている場合、平坦面101の外縁は一つの内側面211に対して先に接触する。
【0065】
その後、更にピックアップ装置600を下降させるように圧力が加えられる。平坦面101の外縁は、接触している内側面211から反力(つまり内側面211の法線方向に沿った力)を受ける。当該反力によって、半導体チップ1は、バンプ電極100の中心軸と凹部210の中心軸とが一致する方向に平行移動する。当該平行移動を伴いながら半導体チップ1は更に下降していき、最終的には、平坦面101の外縁が、4つの内側面211に対して点接触(バンプ電極100の歪等を考慮すれば、線接触、又は微小面積における面接触といってもよい。以下同様である。)した状態となる(
図6)。この時点では、バンプ電極100の中心軸と凹部210の中心軸とが完全に一致している。
【0066】
ピックアップ装置600及び半導体チップ1が下降した
図6の状態においても、ピックアップ装置は、引き続き所定の大きさの力で半導体チップ1を下方に向けて加圧している。
【0068】
バンプ電極100とパッド電極200とを互いに近づける方向に加圧した状態のまま、ピックアップ装置600には外部から超音波振動が加えられる。これにより、ピックアップ装置600は、保持面601と平行な方向(水平方向)に沿って振動する。
【0069】
このとき、上記のようにバンプ電極100とパッド電極200とは4か所において点接触した状態となっているため、超音波振動によって当該接触部分には比較的大きな力が加わることとなる。接触部分における表面層、つまりバンプ電極100の表面層及びパッド電極200の表面層はこの力によって僅かに崩れ、活性な表面が新たに露出する。
【0070】
その結果、バンプ電極100とパッド電極200とは、活性な表面同士において再び接触し、強固に金属結合する。その後、これら4か所の点接触部分を起点として金属結合した部分が拡がって行き、最終的には、バンプ電極100とパッド電極200の接触面がほぼ全面において金属結合した状態となる(
図7)。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、加圧工程を示す
図6の時点において、バンプ電極100とパッド電極200との当初における(つまり超音波振動を開始する前における)接触部分が非常に狭い。このため、超音波振動工程においては、超音波振動のエネルギーが低くても接触部分にエネルギーが集中して作用し、接触部分が強固な金属結合の起点となる。
【0072】
その結果、バンプ電極100がパッド電極200の凹部210から飛び出てしまわない程度に超音波振動のエネルギーを低くしながらも、バンプ電極100とパッド電極200とを強固に結合させることが可能となっている。すなわち、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、バンプ電極100を凹部210に挿入し位置合わせを高精度で行った状態を維持しながら、バンプ電極100とパッド電極200とを強固に接合することができる。
【0073】
ところで、超音波接合する際には被接合物の加熱を行うのが一般的であるが、本実施形態においては特段の加熱を行わずとも例えば室温にて強固な接合を行うことができた。これは、バンプ電極100及びパッド電極200をいずれも金により構成したことで、活性な表面の露出及び当該表面における強固な金属結合という本願発明の効果が顕著となったためと推定される。
【0074】
尚、本発明の別の実施形態として、バンプ電極100等の材料として、金に替えて銅を用いることもできる。例えば、バンプ電極100等の全体を銅により形成してもよく、バンプ電極100等の表面のみを銅により形成してもよい。この場合、バンプ電極100とパッド電極200とを強固に接合するためには、超音波工程において両者を加熱することが必要となるが、それでも超音波工程がない場合の通常400℃への加熱と比べ、極めて低い例えば120〜150℃での強固な接合を実現することができる。
【0075】
本実施形態におけるバンプ電極100及びパッド電極200の形状について、
図8を参照しながら更に説明する。
図8は、
図6の一部を拡大して示した断面図であって、加圧工程にて少なくとも一部が互いに接触した状態を示している。
【0076】
図8に示したように、バンプ電極100の中心軸AX1に対してバンプ電極100の側面102が成す角度を傾斜角θ1とし、凹部210の中心軸(
図8においてはAX1と一致している)に対して凹部210の内側面211が成す角度を傾斜角θ2としたときにおいて、θ1はθ2よりも小さくなっている。尚、
図8に描かれた点線LN1、LN2は、いずれも中心軸AX1と平行な直線である。
【0077】
バンプ電極100をこのような形状とすることにより、加圧工程において、バンプ電極100はその先端の平坦面101の外縁部分が凹部210の内側面211と接触した状態となっている。このため、続く超音波接合工程においては、バンプ電極100とパッド電極200との金属結合は、バンプ電極100の先端から根元、つまりメタル層3と接している部分に向かって、換言すれば、パッド電極200の凹部210の底部の平坦面212側から開口端部側に向かって進行することとなる。その結果、バンプ電極100とパッド電極200との間に閉じ込められた気泡が金属結合を妨げてしまうことが防止され、両者を広範囲で金属結合させることが可能となっている。
【0078】
また、本実施形態においては
図8に示したように、パッド電極200の凹部210の底部には平坦面212が形成されている。このため、バンプ電極100を高く形成しなくても、バンプ電極100の先端の平坦面101と凹部210の底部の平坦面212との間に空間が広く形成されてしまうことが防止されている。また、凹部210の内面を、平坦面212を有さない完全な四角錐形状とする場合と比較して、パッド形成工程に要する時間が短くなっている。
【0079】
尚、本発明の実施態様は上記のようなものに限られない。例えば、バンプ電極100及びパッド電極200の形状を
図9に示したようなものとした場合であっても、本発明の実施の範囲に含まれる。すなわち、バンプ電極100の先端に平坦面101が形成されない円錐形状や、パッド電極の凹部210の底部に平坦面212が形成されない角錐形状としてもよい。
【0080】
より具体的には、例えば、
図9は、本発明の第二実施形態を説明するための図であって、加圧工程が行われて超音波接合工程が開始される前の時点における状態を示している。
図9に示したように、本実施形態に係るバンプ電極100は、その先端に平坦面101がない完全な円錐形状となっている。また、パッド電極の凹部210は、その底部に平坦面212がない完全な角錐形状となっている。
【0081】
また、バンプ電極100の中心軸AX1に対してバンプ電極100の側面102が成す角度を傾斜角θ1とし、凹部210の中心軸(
図9においてはAX1と一致している)に対して凹部210の内側面211が成す角度を傾斜角θ2としたときにおいて、θ1がθ2よりも大きくなっている。
【0082】
図9に示した状態から超音波接合工程が行われ、バンプ電極100とパッド電極200との接合が完了した状態を
図10に示した。超音波接合工程が行われる前には、凹部210の内部においてバンプ電極100とパッド電極200との間には隙間が形成されていたが、超音波接合工程が行われた後においては、当該隙間がなくなっている。バンプ電極100とパッド電極200の接触面は、ほぼ全面において金属結合した状態となっている。
【0083】
本実施形態においては、バンプ電極100を半導体チップ1に形成し、パッド電極200を基板10に形成する例を説明したが、バンプ電極100を基板10に形成し、パッド電極200を半導体チップ1に形成してもよい。
【0084】
また、パッド電極200の凹部210の内面を略五角錐形状等、任意の多角錐形状としてもよい。これらの態様の場合にも、前述した実施態様と同様に、位置合わせを高精度で行いながら、半導体チップの電極と基板等の電極とを強固に接合することが可能な半導体装置を実現することができる。
【0085】
更に、パッド電極200の凹部210の内面を例えば四角柱形状等、任意の角柱形状としてもよい。すなわち、凹部210の内側面211を基板10の表面に対して垂直に形成してもよい。
【0086】
より具体的には、例えば、
図11は、本発明の第三実施形態を説明するための図であって、加圧工程が行われて超音波接合工程が開始される前の時点における状態を示している。
図11に示したように、本実施形態に係るバンプ電極100は、その先端に平坦面101が形成されない完全な円錐形状となっている。また、パッド電極200の凹部210は、その内側面211が基板10の表面に対して垂直となっている。換言すれば、内側面211が角錐形状ではなく、四角柱形状となっている。
【0087】
図11に示した状態から超音波接合工程が行われ、バンプ電極100とパッド電極200との接合が完了した状態を
図12に示した。超音波接合工程が行われる前には、凹部210の内部においてバンプ電極100とパッド電極200との間には隙間が形成されていたが、超音波接合工程が行われた後においては、当該隙間がなくなっている。バンプ電極100とパッド電極200の接触面は、ほぼ全面において金属結合した状態となっている。
【0088】
図13は、本発明の第四実施形態を説明するための図であって、加圧工程が行われて超音波接合工程が開始される前の時点における状態を示している。
図13に示したように、本実施形態に係るバンプ電極100の形状は、
図8等に示した第一実施形態に係るバンプ電極100と同様の形状となっている。すなわち円錐形状であって、その先端に平坦面101が形成されている。また、パッド電極の凹部210は、その内側面211が基板10の表面に対して垂直となっている。換言すれば、内側面211が角錐形状ではなく、四角柱形状となっている。
【0089】
図13に示した状態から超音波接合工程が行われ、バンプ電極100とパッド電極200との接合が完了した状態を
図14に示した。超音波接合工程が行われる前には、凹部210の内部においてバンプ電極100とパッド電極200との間には隙間が形成されていたが、超音波接合工程が行われた後においては、当該隙間がなくなっている。バンプ電極100とパッド電極200の接触面は、ほぼ全面において金属結合した状態となっている。
【0090】
以上、
図11乃至14を参照しながら説明したように、
図8や
図9における傾斜角θ2を0度に形成した場合であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0091】
ところで、第一実施形態に係るバンプ電極100は、
図3等に示したように、平坦面101の周縁部に角が形成された形状となっている。
図6を見れば明らかなように、加圧工程においては、先ず当該角が凹部210の内側面211に当たる。バンプ電極100は、平坦面101の周縁部が比較的大きく潰れてしまうこととなる。その結果、加圧工程及び超音波工程において、潰れて変形したバンプ電極100の一部が、凹部210から周囲にはみ出してしまうことがある。
【0092】
図15は、超音波工程が完了した時点の状態を示しており、上記のように、潰れたバンプ電極100の一部が凹部210からはみ出した状態を模式的に示している。
図15に示したように、バンプ電極100が上記のように潰れて変形した結果、凹部210から外側にはみ出す突出部110が形成されている。突出部110は、隣り合うバンプ電極(符合100a)及びパッド電極(符合200a)に向かって伸びている。
【0093】
その結果、半導体チップ1がファインピッチである場合(隣り合うバンプ電極100間の距離が短い場合)には、突出部110がバンプ電極100a又はパッド電極200aに対して接触してしまう恐れがある。すなわち、隣り合う電極間が導通してしまい、半導体チップ1の損傷や動作不良の原因となってしまう恐れがある。
【0094】
このような現象を防止するためには、バンプ電極100の先端(平坦面101)の周縁に沿って面取りを施すことが好ましい。
図16は、本発明の第五実施形態に係るバンプ電極100を示している。
図16に示したように、本実施形態に係るバンプ電極100は、平坦面101の周縁に沿って面取りが施されており、これによりC面120が形成されている。尚、本実施形態においては、パッド電極200の形状は第一実施形態の場合(
図2等を参照)と同様である。
【0095】
図17は、
図16に示したバンプ電極100とパッド電極200とを接合する工程を示しており、加圧工程から超音波接合工程に移行する直前の状態を模式的に示している。バンプ電極100のうち、パッド電極200の内側面211に最初に当たる部分にはC面120が形成されている。このため、加圧工程及び超音波接合工程において、バンプ電極100が大きく潰れてしまうことが抑制される。その結果、潰れたバンプ電極100が凹部210から周囲にはみ出してしまうことが抑制される。すなわち、
図15に示した突出部110が形成されてしまうことが抑制される。従って、半導体チップ1がファインピッチであっても、隣り合う電極間が導通してしまうことを確実に防止することができる。
【0096】
以上に示したそれぞれの実施形態においては、パッド電極200は、シリコンからなる基板10の表面の一部にエッチングを施すことによって形成されていた。すなわち、基板10自体の表面に直接凹部が形成されていた。しかしながら、基板10の材質がシリコンであればそのような形成方法を採ることができるが、基板10の材質がシリコン以外である場合には、当該基板10の表面に直接凹部を形成することは容易ではない。
【0097】
このような場合には、凹部210を有するパッド電極200を、基板10の平坦な表面からその全体乃至略全体が突出するように形成すればよい。以下では、このように形成されたパッド電極200の例として、本発明の第六実施形態について説明する。
【0098】
図18は、本発明の第六実施形態に係るパッド電極200の形状を示す断面図である。
図19は、当該パッド電極200の外観を示す斜視図である。
図18及び
図19に示したように、本実施形態においては、
図2等に示した第一実施形態の場合と異なり、基板10の上面には凹部が形成されておらず、上面全体が平坦面となっている。パッド電極200は、基板10の平坦な表面から、その全体が突出するように形成されている。
【0099】
具体的には、パッド電極200は矩形に沿った周縁部のみが基板10の表面から突出しており、その結果、その中央部に凹部210が形成されている。
図4に示した第一実施形態に係るパッド電極200の場合と同様に、凹部210は、その4つの内側面211が中心に向かって下るように傾斜した面となっており、その底部には平坦面212が形成されている。尚、本実施形態における平坦面212は、基板10の表面に形成された絶縁層12となっている。
【0100】
図18及び
図19に示したパッド電極200を形成する方法について、
図20を参照しながら説明する。
【0101】
まず、
図20(A)に示したように、基板10の上面のうちパッド電極200の下方となる位置に、SiOからなる絶縁層12を形成する。その後、絶縁層12の上面全体にマスキング250を施した後、当該マスキング250のうちパッド電極200を形成する位置に矩形の孔HLを形成する。すなわち、絶縁層12の表面のうちパッド電極200を形成する部分のみを露出させる。尚、凹部210を形成する部分においては、マスキング250を除去せずに残しておく。
【0102】
その状態で、基板10の上面全体に、NPD法(Nano-Particles-Deposition)を用いて金属層260を形成する。
図20(B)に示したように、金属層260は、マスキング250の上面に形成されるほか、孔HLの内部においても形成される。
【0103】
金属層260のうち、孔HLの内部(すなわち、絶縁層12の上面)に形成された部分は、絶縁層12から略台形状に突出するような断面を有している。金属層260の当該部分は、パッド電極200となる部分である。
【0104】
その後、
図20(C)に示したように、基板10の上面からマスキング250を除去する。金属層260は、孔HLの内部に形成されていた部分だけが残る。その結果、
図18及び
図19に示した形状のパッド電極200が形成される。
【0105】
尚、本実施形態においてはパッド電極200(金属層260)の全体を金により形成した。このような態様に替えて、パッド電極200を金ではなく銅により形成した後、その表面全体に金のコーティングを施してもよい。本発明は、パッド電極200のうち少なくとも表面層が、金のように比較的軟質の金属で構成されていれば、特に効果を発揮するものである。
【0106】
以上の工程を経て基板10に形成されたパッド電極200は、
図19に示したように、中央に凹部210が形成されている。凹部210は、その4つの内側面211が中心に向かって下るように傾斜した面となっており、その底部には平坦面212が形成されている。
図21は、以上に説明した方法によって実際にパッド電極200を形成し、それを撮影した写真である。
図21(A)はパッド電極200を斜め上方から見て撮影した写真であり、
図21(B)はパッド電極200を上方(直上)から見て撮影した写真である。
【0107】
以上のような方法により、基板10自体には凹部を形成することなく、換言すれば、基板10の表面の形状を平坦としたままで、当該表面に対してパッド電極200を形成することができる。従って、基板10の材質がシリコン以外である場合にも、凹部210を有するパッド電極200を基板10上に形成することができる。
【0108】
尚、以上のような方法によって形成されるパッド電極200の形状は、
図19に示したような略矩形のものに限られない。例えば、
図22に示したようなリング状に形成することも可能である。
【0109】
続いて、
図5等を参照しながら既に説明した半導体製造装置(接合装置BE)の具体的な構成について、
図23を参照しながら更に詳しく説明する。
【0110】
ピックアップ装置600の上面側、すなわち、半導体チップ1を吸着する保持面601の反対側には、超音波装置USEが配置されている。超音波装置USEは、超音波接合工程においてピックアップ装置600に超音波振動を加えるための装置である。
【0111】
超音波装置USEの形状は略平板状であり、ピックアップ装置600の上面全体に当接した状態で、ピックアップ装置600に対して固定されている。超音波装置USEとピックアップ装置600との間には、シート状の断熱材701が介在している。断熱材701は、後に説明するヒーターHT1の熱が、ピックアップ装置600から超音波装置USEに伝達されることを防止するものである。超音波装置USEの側面には、超音波振動の発信源である超音波ホーンUSHが配置されている。
【0112】
超音波装置USEの上面側には、シリンダー装置800の可動部810が配置されている。シリンダー装置800は、加圧工程においてピックアップ装置600を下方に移動させて、半導体チップ1と基板10との間を加圧する装置である。超音波装置USEの上面は、可動部810の下端に対して固定されている。
【0113】
超音波装置USEと可動部810との間には、ロードセルLCが配置されている。加圧工程及び超音波接合工程において、半導体チップ1と基板10との間に加えられる荷重の大きさを、ロードセルLCにより検出することが可能となっている。加圧工程及び超音波接合工程においては、ロードセルLCによって検出された荷重の大きさに基づきながら、シリンダー装置800の動作が制御される。
【0114】
既に説明したように、加圧工程においては、半導体チップ1は、バンプ電極100の中心軸と凹部210の中心軸とが一致する方向(水平方向)に平行移動する。このような移動を可能とするための構成としては、可動部810が水平方向に沿って容易に移動し得るように、機械的な遊び(ガタ)を持たせておくことが考えられる。この場合には、加圧工程において、可動部810、超音波装置USE、ピックアップ装置600、半導体チップ1の全てが、一体となって水平方向に移動することとなる。
【0115】
しかし、シリンダー装置800の機械的な遊びによって半導体チップ1を移動させるような構成においては、バンプ電極100の中心軸とパッド電極200の中心軸とを一致させることができない場合が生じ得る。一般に、機械的な遊びの範囲を正確に管理することは容易ではなく、加圧工程の開始時におけるバンプ電極100とパッド電極200とのずれ具合によっては、機械的な遊びによってそのずれを吸収できない場合があるからである。
【0116】
そこで、接合装置BEにおいては、シリンダー装置800の機械的な遊びによることなく、半導体チップ1が水平方向に移動し得る構成となっている。具体的には、半導体チップ1とピックアップ装置600との間に働く真空吸着力の大きさが(弱めに)調整されており、ピックアップ装置600の保持面601に沿って、半導体チップ1がスライドし得る構成となっている。
【0117】
このため、バンプ電極100とパッド電極200との位置ずれがどのように生じた場合であっても、機械的な遊びによることなく半導体チップ1がスライドし、バンプ電極100の中心軸とパッド電極200の中心軸とを一致させることが可能となっている。
【0118】
尚、半導体チップ1とピックアップ装置600との間に働く真空吸着力の大きさを弱くしすぎると、超音波装置USEの超音波振動が半導体チップ1に対して十分に伝わらなくなってしまうことも考えられる。このため、真空吸着力の大きさを調整するに当たっては、半導体チップ1が容易に移動し得ることと、半導体チップに十分な超音波振動が伝達されることとが、両立するように留意する必要がある。
【0119】
ステージ500の上面、すなわち、基板10が載置される方の面には、複数の吸着穴502が形成されている。それぞれの吸着穴502は、ステージ500の内部に形成された真空排気路503に連通している。吸着穴502及び真空排気路503を通じて、ステージ500と基板10との間に介在する空気を排気し、基板10を真空吸着することが可能となっている。
【0120】
ステージ500の上面のうち、基板10の周囲には、保持板901、902が配置されている。保持板901は、ステージ500の上面に対して固定された板である。また、保持板902は、ステージ500の上面に対して真空吸着された板である。ステージ500のうち保持板902の下方には、真空排気路503に連通する吸着穴504が形成されている。
【0121】
これら二つの保持板901、902が、基板10の側面に対して当接している。このため、基板10は、ステージ500に対して真空吸着されていることに加えて、保持板901、902によって側面から保持された状態となっている。その結果、基板10がステージ500の上面に沿ってスライドしてしまうことが抑制されている。
【0122】
既に説明したように、接合装置BEによれば、半導体チップ1や基板10の加熱を行わなくても、両者を接合することが可能である。しかしながら、両者を加熱しながら接合してもよいことは言うまでもない。接合装置BEでは、ピックアップ装置600の内部にヒーターHT1及び温度センサTS1が埋め込まれている。また、ステージ500の内部にも、ヒーターHT2及び温度センサTS2が埋め込まれている。
【0123】
半導体チップ1の大きさ、バンプ電極100の材質や数等によっては、ヒーターHT1、HT2による温度制御を行うことで、補助的に半導体チップ1や基板10を加熱することが望ましい。これにより、半導体チップ1と基板10との接続をより確実に行うことができる。
【0124】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。