【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電子情報通信学会、電子情報通信学会技術研究報告、vol.112、No.192、2012年8月23日発行 電子情報通信学会、電子情報通信学会技術研究報告、vol.112、No.11、2012年4月12日発行 電子情報通信学会、電子情報通信学会技術研究報告、vol.111、No.403、2012年1月19日発行
【文献】
花田 光平 Kohei HANADA,無線LANシステムにおける基地局連携受付制御・チャネル選択のゲーム理論的解析 Game-theoretic Analysis for Admission Control and Channel Selection by Coordinated APs in Wireless LAN Systems,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.112 No.122 IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2012年 7月13日,第112巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基地局装置は、前記パラメータ設定部が前記パラメータを設定した後に前記端末装置との間の無線通信におけるスループットを前記集中制御局に通知するスループット通知部を更に備え、
前記集中制御局は、前記基地局装置から通知された前記スループットを集計し、システムスループットが低下したか否か判断する判断部を更に備え、
前記パラメータ決定部は、前記判断部が前記システムスループットが低下したと判断した場合、前回決定した通信パラメータとは異なるように、前記基地局装置毎の通信パラメータを決定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における無線通信システムのシステム構成を示す図である。本発明の無線通信システムは、集中制御局(AC)10、複数の基地局装置(AP−c)20、複数の端末装置30を備える。無線通信システムの近傍には単数もしくは複数の干渉AP40およびその干渉AP40に従属する単数もしくは複数の端末装置50が存在する。
以下の説明では、説明の簡略のため、基地局装置20の台数を2台、端末装置30の台数を10台、干渉AP40の台数を1台、干渉端末装置50の台数を5台とする。
【0018】
集中制御局10は、情報処理装置を用いて構成され、複数の基地局装置20と通信可能に接続される。集中制御局10は、各基地局装置20の動作を制御する。
基地局装置20は、無線LANのアクセスポイントであり、自装置に接続された端末装置30と無線通信を行う。基地局装置20は、集中制御局10による制御にしたがって各端末装置30と無線通信する。
【0019】
端末装置30は、例えばスマートフォン、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯ゲーム装置、タブレット装置、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成される。端末装置30は、基地局装置20と無線通信を行う。
干渉AP40および干渉端末装置50は、基地局装置20と端末装置30とが送受信する無線信号に干渉する信号を出力する装置である。干渉AP40は、集中制御局10による制御を受けない。
【0020】
図2は、本発明で使用するチャネル及び帯域幅の一例である。各基地局装置20は、予め定められた複数のモードのいずれか一つで動作する。基地局装置20は、例えば40MHzモード、80MHzモード、160NHzモードの3つのいずれかのモードで動作する。基地局装置20が使用可能な帯域は、5.17GHzから5.33GHzまでの160MHz帯域(8つの20MHzチャネル)である。使用可能なチャネルを左から順に40MHzずつに分け、順に1、2、3、4とし、80MHzのチャネルを5、6とし、160MHzのチャネルを7とする。なお、使用しているチャネルを“1”、使用していないチャネルを“0”で表す。例えば、(0,0,1,1)は、帯域3及び帯域4を用いて80MHzモードで動作していることを表している。
【0021】
各基地局装置20は、通信を行うために1から7のいずれかのチャネルを用いる。各基地局装置20が用いるチャネルの集合Ciは、Ci={(0,0,0,1),(0,0,1,0),(0,1,0,0),(1,0,0,0),(0,0,1,1),(1,1,0,0),(1,1,1,1)}である。
【0022】
2台の基地局装置20は集中制御局10に接続されている。そのため、集中制御局10の制御に応じて連携して動作することが可能である。チャネルと端末数を通信パラメータとして選択可能な場合には、2台の基地局装置20間で、計10台の端末装置30をどちらの基地局装置20にも割り当てることができる。1台目の基地局装置20に接続される端末装置30の数に関する集合M12は、M12={1,2,3,4,5,6,7,8,9}となる。たとえば、M12=3の場合、1台目の基地局装置20と無線通信する端末装置30の台数は3台であり、2台目の基地局装置20と無線通信する端末装置30の台数は7台である。
【0023】
基地局装置20及び干渉AP40をまとめて通信装置iとして表現する。通信装置iが形成するセルをセルiとし、セルiのトータルスループットをu(ai,a−i)とする。
3台の通信装置が使用するチャネルの一部又は全てがオーバーラップする場合、上記3台の全ての装置のチャネルがオーバーラップしているチャネルをプライマリチャネルとして設定する。また、上記3台のうち2台の装置の使用するチャネルの一部又は全てがオーバーラップする場合、オーバーラップしているチャネルをプライマリとして設定する。
【0024】
また、通信装置iの帯域内に2つの直交するチャネルを使用する通信装置j及び通信装置kが存在する場合、通信装置iは通信装置j又は通信装置kのプライマリチャネルと自身のプライマリチャネルとを揃える必要がある。しかし、本発明においては、通信装置1(1台目の基地局装置20)と通信装置2(2台目の基地局装置20)とは連携動作する。そのため、通信装置1と通信装置2が使用するチャネルがオーバーラップしており、プライマリチャネルを揃えることが可能な場合は、優先してプライマリチャネルを揃えて動作する。
なお、スループットの計算方法の具体例は以下の文献に記載されている。
花田, 山本, 工藤, 石原, 守倉, “無線LAN システムにおける基地局連携チャネル選択のゲーム理論的解析,” 信学技報RCS2011-304, pp.211-216, Jan 2012.
【0025】
図3は、集中制御局10及び基地局装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。まず、集中制御局10の機能構成を説明する。集中制御局10は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、制御プログラムを実行する。制御プログラムの実行によって、集中制御局10は、受信部101、通信品質情報記憶部102、計算部103、パラメータ決定部104、スループット記憶部105、判断部106、通知部107を備える装置として機能する。なお、集中制御局10の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。また、制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、制御プログラムは、電気通信回線を介して送受信されても良い。
【0026】
受信部101は、基地局装置20から通知された情報(例えば干渉AP40の通信品質情報、基地局装置20のスループット)を受信する。受信部101は、基地局装置20との間で無線通信を行っても良いし有線通信を行っても良い。
通信品質情報記憶部102は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。通信品質情報記憶部102は、基地局装置20から通知された干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方の通信品質情報を記憶する。通信品質情報とは、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方が行っている無線通信に関する情報である。通信品質情報は、例えば使用チャネルや、帯域幅、通信頻度、トラヒック量、信号強度、位置情報、QoS(Quality of Service)などを表す。また、干渉AP40に接続している端末数を表しても良い。
【0027】
計算部103は、各基地局装置20に対してある通信パラメータを設定した場合のシステムスループットの推定値(以下、「スループット指標」という。)を算出する。システムスループットとは、個々の基地局装置20におけるスループットではなく、複数の基地局装置20を備える無線通信システム全体のスループットである。
【0028】
以下、計算部103の処理の具体例について説明する。計算部103は、通信品質情報記憶部102が記憶している通信品質情報に基づいて、各基地局装置20に対して割り当てるべき通信パラメータの候補(以下、「通信パラメータ候補」という。)を複数決定する。通信パラメータとは、基地局装置20と端末装置30との間で行われる無線通信に関するパラメータである。通信パラメータは、例えば、使用されるチャネルと、基地局装置20に従属する端末数とを表す。計算部103は、例えば干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方において利用されていないチャネル、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方のトラヒック量の少ないチャネル、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方による無線信号の信号強度が弱いチャネルなどを、その干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方の近傍に位置する基地局装置20に割り当てる通信パラメータ候補のチャネルとして選択する。また、計算部103は、選択されたチャネルに応じて、各基地局装置20に割り当てられる端末装置30の数を、通信パラメータ候補の端末数として選択する。計算部103は、パラメータ候補毎に、そのパラメータ候補で各基地局装置20が無線通信を行った場合のスループット指標を計算する。
【0029】
パラメータ決定部104は、スループット指標に基づいて、通信パラメータ候補の中から一つの通信パラメータを決定する。例えば、パラメータ決定部104は、計算部103が計算したスル−プット指標に基づいて、無線通信システムのシステムスループットが最大となるように通信パラメータを決定する。
【0030】
スループット記憶部105は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。スループット記憶部105は、受信部101が受信した各基地局装置20のスループットの実測値を記憶する。
判断部106は、スループット記憶部105が記憶している基地局装置20毎のスループットの実測値に基づいて、無線通信システムのシステムスループットの実測値を算出する。例えば、判断部106は、基地局装置20毎のスループットの実測値の和をシステムスループットの実測値として算出しても良い。判断部106は、算出したシステムスループットの実測値に基づいて、通信パラメータの再設定が必要か否かを判断する。
通知部107は、パラメータ決定部104が決定したパラメータを各基地局装置20に通知する。
【0031】
次に、基地局装置20の機能構成を説明する。基地局装置20は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、基地局プログラムを実行する。基地局プログラムの実行によって、基地局装置20は、情報収集部201、検出部202、スループット算出部203、受信部204、パラメータ設定部205、パラメータ記憶部206、通信部207、通知部208を備える装置として機能する。なお、基地局装置20の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。また、基地局プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、基地局プログラムは、電気通信回線を介して送受信されても良い。
【0032】
情報収集部201は、自装置(基地局装置20)の近傍に位置する干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方の通信品質情報を収集する。近傍に位置する干渉AP40もしくは干渉端末装置50とは、すなわち自装置(基地局装置20)においてその干渉AP40もしくは干渉端末装置50から送出された無線信号を受信可能な干渉AP40もしくは干渉端末装置50である。
検出部202は、情報収集部201が収集した通信品質情報の変化を検出する。
【0033】
スループット算出部203は、自装置(基地局装置20)と端末装置30との間の無線通信におけるスループットを算出する。例えば、スループット算出部203は、パラメータ設定直後と、一定時間経過後(例えば、5秒後、30秒後、1分後、5分後など)とで、端末装置30との間で行われる無線通信におけるスループット実測値を算出する。
受信部204は、集中制御局10から通知される情報(例えば、通信パラメータ)を受信する。
【0034】
パラメータ設定部205は、受信部204が受信した通信パラメータを、自装置(基地局装置20)が行う無線通信の通信パラメータとして設定する。具体的には、パラメータ設定部205は、受信部204が受信した通信パラメータを用いて、パラメータ記憶部206に記憶されている通信パラメータを上書きする。
【0035】
パラメータ記憶部206は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。パラメータ記憶部206は、パラメータ設定部205によって設定された通信パラメータを記憶する。
通信部207は、パラメータ設定部205が設定した通信パラメータで、端末装置30との間で無線通信を行う。
通知部208は、通信品質情報やスループット実測値を集中制御局10に通知する。
【0036】
[第一動作例]
図4は、本発明の第一動作例におけるパラメータ決定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、基地局装置20の情報収集部201は、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方の通信品質情報を収集する。通知部208は、収集した通信品質情報を集中制御局10に通知する。集中制御局10の受信部101は、各基地局装置20から通信品質情報を収集する(ステップS101)。受信部101は、各基地局装置20から受信した通信品質情報を通信品質情報記憶部102に記録する。次に、計算部103は、通信品質情報に基づいてスループット指標を計算する。パラメータ決定部104は、スループット指標に基づいて、各基地局装置20が使用する通信パラメータを決定する。通知部107は、決定した通信パラメータを各基地局装置20に通知する(ステップS102)。
【0037】
基地局装置20の受信部204は、集中制御局10から通知された通信パラメータを受信する。パラメータ設定部205は、受信された通信パラメータを、自装置が行う無線通信の通信パラメータとして設定する(ステップS103)。通信部207は、設定された通信パラメータで端末装置30と無線通信を行う(ステップS104)。スループット算出部203は、パラメータ設定直後及び一定時間経過後に端末装置30との間の無線通信におけるスループットを算出する。通知部208は、算出されたスループットを集中制御局10に通知する(ステップS105)。
【0038】
集中制御局10の受信部101は、各基地局装置20から通知されたスループットを収集し、スループット記憶部105に記録する。判断部106は、パラメータ設定直後のシステムスループットの実測値と、一定時間経過後のシステムスループットの実測値とに基づいて、通信パラメータの再設定の要否を判定する(ステップS106)。判断部106は、システムスループットの実測値が既定値以上減少している場合に、通信パラメータの再設定が必要であると判定する(ステップS106−YES)。この場合、無線通信システムはステップS101から処理を繰り返し実行する。そして、ステップS102の処理において、パラメータ決定部104は、前回のステップS102の処理で決定された通信パラメータとは異なる通信パラメータを決定し通知する。
【0039】
一方、判断部106は、システムスループットの実測値が既定値以上減少していない場合に、通信パラメータの再設定が不要であると判定する(ステップS106−NO)。この場合、処理は終了する。
基地局装置20の検出部202は、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方の通信状態の変化を検出した場合、集中制御局10に通知する(ステップS108)。また、集中制御局10に新しく基地局装置20が接続された場合、接続された基地局装置20の通知部208は、新たに接続されたことを集中制御局10に通知する(ステップS109)。ステップS108又はステップS109における通知がなされた場合、無線通信システムはステップS101以降の処理を実行する。
【0040】
[第二動作例]
図5は、本発明の第二動作例におけるパラメータ決定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、基地局装置20の情報収集部201は、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方の通信品質情報を収集する。通知部208は、収集した通信品質情報を集中制御局10に通知する。集中制御局10の受信部101は、各基地局装置20から通信品質情報を収集する(ステップS201)。受信部101は、各基地局装置20から受信した通信品質情報を通信品質情報記憶部102に記録する。次に、計算部103は、通信品質情報に基づいてスループット指標を計算する。パラメータ決定部104は、スループット指標に基づいて、各基地局装置20が使用する第一の通信パラメータ(例えばチャネル)を決定する。通知部107は、決定した第一の通信パラメータを各基地局装置20に通知する(ステップS202)。
【0041】
基地局装置20の受信部204は、集中制御局10から通知された第一の通信パラメータを受信する。パラメータ設定部205は、受信された第一の通信パラメータを、自装置が行う無線通信の通信パラメータとして設定する(ステップS203)。通信部207は、設定された第一の通信パラメータで端末装置30と無線通信を行う(ステップS204)。スループット算出部203は、第一のパラメータ設定直後及び一定時間経過後に端末装置30との間の無線通信におけるスループットを算出する。通知部208は、算出されたスループットを集中制御局10に通知する(ステップS205)。
【0042】
集中制御局10の受信部101は、各基地局装置20が通知したスループットを収集し、スループット記憶部105に記録する。判断部106は、第一の通信パラメータ設定直後のシステムスループットの実測値と、一定時間経過後のシステムスループットの実測値とに基づいて、第一の通信パラメータの再設定の要否を判定する(ステップS206)。判断部106は、システムスループットの実測値が既定値以上減少している場合に、第一の通信パラメータの再設定が必要であると判定する(ステップS206−YES)。この場合、無線通信システムはステップS201から処理を繰り返し実行する。そして、ステップS202の処理において、パラメータ決定部104は、前回のステップS202の処理で決定された第一の通信パラメータとは異なる第一の通信パラメータを決定し通知する。
【0043】
一方、判断部106は、システムスループットの実測値が既定値以上減少していない場合に、第一の通信パラメータの再設定が不要であると判定する(ステップS206−NO)。この場合、基地局装置20の情報収集部201は、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方の通信品質情報を再び収集する。通知部208は、収集した通信品質情報を集中制御局10に通知する。集中制御局10の受信部101は、各基地局装置20から通信品質情報を収集する(ステップS207)。受信部101は、各基地局装置20から受信した通信品質情報を通信品質情報記憶部102に記録する。次に、計算部103は、通信品質情報に基づいてスループット指標を計算する。パラメータ決定部104は、スループット指標に基づいて、各基地局装置20が使用する第二の通信パラメータ(例えば接続する端末装置の台数)を決定する。通知部107は、決定した第二の通信パラメータを各基地局装置20に通知する(ステップS208)。
【0044】
基地局装置20の受信部204は、集中制御局10から通知された第二の通信パラメータを受信する。パラメータ設定部205は、受信された第二の通信パラメータを、自装置が行う無線通信の通信パラメータとして設定する(ステップS209)。通信部207は、設定された第二の通信パラメータで端末装置30と無線通信を行う(ステップS210)。スループット算出部203は、第二のパラメータ設定直後及び一定時間経過後に端末装置30との間の無線通信におけるスループットを算出する。通知部208は、算出されたスループットを集中制御局10に通知する(ステップS211)。
【0045】
集中制御局10の受信部101は、各基地局装置20が通知したスループットを収集し、スループット記憶部105に記録する。判断部106は、第二の通信パラメータ設定直後のシステムスループットの実測値と、一定時間経過後のシステムスループットの実測値とに基づいて、第二の通信パラメータの再設定の要否を判定する(ステップS212)。判断部106は、システムスループットの実測値が既定値以上減少している場合に、第二の通信パラメータの再設定が必要であると判定する(ステップS212−YES)。この場合、無線通信システムはステップS207から処理を繰り返し実行する。そして、ステップS208の処理において、パラメータ決定部104は、前回のステップS208の処理で決定された第二の通信パラメータとは異なる第二の通信パラメータを決定し通知する。
【0046】
一方、判断部106は、システムスループットの実測値が既定値以上減少していない場合に、第二の通信パラメータの再設定が不要であると判定する(ステップS212−NO)。この場合、処理は終了する。
基地局装置20の検出部202は、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方の通信状態の変化を検出した場合、集中制御局10に通知する(ステップS214)。また、集中制御局10に新しく基地局装置20が接続された場合、接続された基地局装置20の通知部208は、新たに接続されたことを集中制御局10に通知する(ステップS215)。ステップS214又はステップS215における通知がなされた場合、無線通信システムはステップS201以降の処理を実行する。
【0047】
以上のように構成された無線通信システムによれば、干渉AP40もしくは干渉端末装置50の影響に応じてシステムスループットが最大となるように各基地局装置20の通信パラメータが設定される。そのため、干渉AP40と干渉端末装置50の少なくとも一方が近隣に存在し干渉信号が生じている無線通信システムにおいて、無線通信の効率を向上させることが可能となる。
また、通信パラメータを設定した後にシステムスループットが低下した場合には、他の通信パラメータが改めて設定される。そのため、より確実に無線通信の効率の向上を図ることが可能となる。
【0048】
図6は、無線通信システムにおける効果の具体例を示す図である。干渉AP40が5.25〜5.33MHzの80MHzを使用して5台の端末と通信している場合を想定する。1台目の基地局装置20が5.17〜5.25MHzの80MHzを使用して1台の端末装置30と無線通信し、2台目の基地局装置20が5.25〜5.33MHzの80MHzを使用して9台の端末装置30と無線通信すると、5.17〜5.25MHzのチャネルの方がトラヒック量(通信頻度)が少なくなる。そのため、干渉AP40は、5.17〜5.25MHzのチャネルの方がよりスループットが高く通信できると認識し、そちらのチャネルに遷移する。以上のように、集中制御局10は、各基地局装置20のパラメータを設定することによって、干渉AP40が用いるチャネルを間接的に制御することができる。そのため、干渉AP40のチャネルも含めて、無線通信システム全体のスループット(システムスループット)を向上させることが可能となる。
【0049】
図7は、チャネルのみが選択可能な場合のスループットの計算結果を表す図である。
図8は、チャネル及び端末数が選択可能な場合のスループットの計算結果を表す図である。いずれの図でも、縦軸はシステムスループットを表し、横軸は干渉AP40のスループットを表す。なお、
図7及び
図8におけるシミュレーション諸元は、上述した文献に示す通りである。
図7の(i)と
図8の(ii)とからわかるように、チャネルのみ変えられる場合と比べて、端末数も変えることで、システムスループットがより大きく改善されている。
図8の(ii)は、1台目の基地局装置20が「1,1,0,0」で端末数が9、2台目の基地局装置20が「0,0,1,1」で端末数が1、干渉AP40が「1,1,1,1」で端末数が5である場合の値である。1台目の基地局装置20の方により多くの端末装置30を従属させることで、システムスループットが向上している。
【0050】
<変形例>
基地局装置20は、自身に接続する複数の端末装置30と無線通信可能な装置であればどのような装置であっても良く、無線LANのアクセスポイントに限定される必要は無い。基地局装置20は、例えば携帯電話通信網の基地局装置であっても良い。なお、無線LANシステムの具体例には、IEEE802.11a/b/g/n/acといったCSMA/CAによるシステムがある。
【0051】
上記第一動作例のステップS106の処理、第二動作例のステップS206の処理及びS212の処理において、システムスループットの実測値が既定値以上減少しているか否かに基づいて分岐の判断を行うのではなく、所定回数S101〜S105等の処理を繰り返してから処理を終了又は次の処理に移行するように構成されても良い。また、上記各処理において、システムスループットの実測値が閾値を超えた場合に、処理を終了又は次の処理に移行するように構成されても良い。
【0052】
通信品質情報を収集する装置は、基地局装置20に限定される必要は無く、端末装置30であっても良いし、他の装置であっても良い。このように構成されることにより、隠れ端末問題に対する特性劣化を低減することができる。
集中制御局10は、LUT記憶部を更に備えるように構成されても良い。LUT記憶部は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。LUT記憶部は、シミュレーションなどにより予め求められたLUT(Look Up Table)のデータを記憶している。
【0053】
図9及び
図10は、LUT記憶部が記憶しているLUTの具体例の一部を示す図である。
図9は、チャネルのみが選択可能な場合のLUTであり、
図10は、チャネル及び端末数が選択可能な場合のLUTである。LUT記憶部が記憶しているLUTは、各基地局装置20に割り当てられるパラメータの組み合わせ毎に、そのパラメータの元で各基地局装置20が動作した場合の各装置のスループットの予測値を定義したLUTである。この場合、計算部103は、LUT記憶部に記憶されているLUTを参照することによって、スループット指標を取得しても良い。
【0054】
図9及び
図10のLUTについてより詳細に説明する。縦に基地局装置20のチャネル使用情報を示し、横に干渉源40のチャネル使用情報を並べ、各組み合わせにおける各通信装置のスループットを表している。例えば、「1,1,0,0」の場合は、
図2における「5」のようなチャネルの使用を行った場合に相当する。なお、カッコ内の数字は、各通信装置に従属されている端末数を示し、LUT内の数値は左から順に1台目の基地局装置20、2台目の基地局装置20、干渉源40のスループットをそれぞれ表す。※は、ゲーム理論におけるナッシュ均衡点を表している。
【0055】
上述した本実施形態では、集中制御局10は、システムスループットが最大となるように制御を行う。即ち、集中制御局10は、基地局装置20毎のスループットの実測値の和が最大となるように制御を行う。これに対し、集中制御局10は、基地局装置20毎のスループットの実測値の積が最大となるように制御を行ってもよい。
その際、例えば、以下のような処理が行われる。具体例として、
図4のフローチャートを用いて説明する。また、ステップS101からステップS105までの処理は、
図4と同様のため説明を省略する。
【0056】
集中制御局10の判断部106は、パラメータ設定直後の各基地局装置20から収集したスループットの実測値の積と、一定時間経過後の各基地局装置20から収集したスループットの実測値の積とに基づいて、通信パラメータの再設定の要否を判定する(ステップS106)。一定時間経過後の各基地局装置20から収集したスループットの実測値の積が既定値以上減少している場合(ステップS106−YES)、無線通信システムはステップS101以降の処理を繰り返し実行する。そして、ステップS102の処理において、パラメータ決定部104は、前回のステップS102の処理で決定された通信パラメータとは異なる通信パラメータを決定し通知する。
一方、一定時間経過後の各基地局装置20から収集したスループットの実測値の積が既定値以上減少していない場合(ステップS106−NO)、無線通信システムは処理を終了する。
【0057】
図11は、チャネル及び端末数が選択可能な場合において、各基地局装置20のスループットの実測値の積が最大となるように動作させた場合の計算結果を表す図である。
図11の縦軸はシステムスループットを表し、横軸は干渉AP40のスループットを表す。なお、シミュレーション諸元は、上述した文献(花田, 山本, 工藤, 石原, 守倉, “無線LAN システムにおける基地局連携チャネル選択のゲーム理論的解析,” 信学技報RCS2011-304, pp.211-216, Jan 2012.)に示す通りである。また、
図11のチャネル及び端末数が選択可能な場合において各基地局装置20のスループットの実測値の積が最大となるように動作させた場合の計算結果と、
図8のチャネル及び端末数が選択可能な場合のスループットの計算結果とを比較すると、
図11にはナッシュ均衡点が存在している。
【0058】
図12は、スループットの実測値の積が最大となるように動作させた場合の公平性を示す指標を表す図である。
図12の縦軸は公平性を示す指標(Jain’s fairness index)を表し、横軸はナッシュ均衡点を表す。
図12に示すように、ナッシュ均衡点A,B,C,D,G,K,Mの全点において、端末数を集中制御局10が制御するパラメータに加えることで、Jain’s fairness indexの値が改善され、公平なリソースの配分が可能となっていることが推定できる。
【0059】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。