【実施例】
【0031】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
本発明に係る馬鈴薯澱粉として市販の片栗粉を、小麦粉として薄力粉(日清製粉社製)を用いた。また、本発明に係る甘藷澱粉として甘藷澱粉(東海澱粉社製)を用いた。また、本発明に係るベーキングパウダーとしてベーキングパウダー(日清フーズ社製)を用いた。さらに、副材料として、精製塩(日本食塩製造社製)を用いた。
【0032】
なお、本発明に係るベーキングパウダーの炭酸水素ナトリウム含有量は25質量%であり、その他、助剤等として加工澱粉30質量%、グルコノデルタラクトン14質量%、リン酸二水素カルシウム12.4質量%、リン酸二水素カルシウム(無水)11質量%、L−酒石酸水素カリウム6質量%、リン酸一水素カルシウム1.6質量%が含まれている。
【0033】
本発明に係る甘藷澱粉の比較例として、コーンスターチ(川光物産社製)、あるいは、タピオカスターチ(ギャバン社製)を用いた。
【0034】
(衣組成物の作製)
馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉、ベーキングパウダー並びに食塩、並びに、甘藷澱粉、コーンスターチ又はタピオカ澱粉を混合し、各実施例1−1〜1−2、比較例1−1〜1−6に係る衣組成物衣組成物を30gずつ作製した。表1に各実施例、比較例の各原材料の配合量を示す。各原材料の値は、衣組成物に含まれるそれぞれの質量(%)を表している。
【0035】
【表1】
【0036】
(油揚げ様食品及び調味液の作製)
絹ごし豆腐(ヨシコシ食品社製)400gをキッチンペーパーで包んで軽く水切りし、12等分にした。水切りを行った絹ごし豆腐に、実施例1−1〜1−2、比較例1−1〜1−6に係る衣組成物をそれぞれ約30gまぶし、表面に薄く付着させた。
【0037】
フライパンに植物油(キャノーラ油;日清オイリオ社製)30mlをひいて加熱し、衣組成物を付着させた豆腐を、約4分間炒めて6面の全ての面をまんべんなく焼き、油揚げ様食品を得た。
【0038】
また、比較例1−1としては、一般の揚げだし豆腐の調理法と同様に、170〜180℃に熱した油の中に衣組成物を付着させた豆腐に浸漬させ、衣に薄く揚げ色がつくまで約1分間揚げた。
【0039】
さらに、希釈用つゆ(キッコーマン社製)20ml、水40mlを鍋に入れて火をかけ、加温して調味液を作成した。
【0040】
(官能評価)
作製した油揚げ様食品をそのままの状態と、調味液をかけた状態で食して官能評価を実施した。官能評価の結果を表1に示す。なお、官能評価で適用した評価項目と評価基準は、表2に示した基準に従い、6名の専門のパネリストにより行った。また、調理時の調理の容易性について、特に焦げやすさの観点から官能評価を行った。
【0041】
【表2】
【0042】
5つの評価項目について、評価基準を設け、それぞれ5段階で点数付けることとした。一般の揚げだし豆腐の調理法により得られた食品にどれだけ近い官能評価を有するか否かを基準とするため、比較例1−1の全ての官能評価の点数を5点とし、各比較例及び実施例について、比較例1−1との相対評価により点数を付けた。なお、点数が3点以上であれば、油で揚げた食品に近い官能を有すると判断される。
【0043】
実施例1−1〜1−2に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食しても、調味液をかけても、(1)〜(5)の評価項目において何れも高評価(3以上)であった。
【0044】
一方、比較例1−2〜1−5に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食した場合や調味液をかけた場合、一部の評価項目で3を超えることがあっても、他の項目で3未満となるなど、全体として、満足できる品質の油揚げ様食品が得られなかった。さらに、比較例1−5に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、調理適性が悪く、調理時に非常に焦げやすいという欠点があった。比較例1−6に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、官能評価の点において優れてはいたが、調理適性が悪く、調理時に非常に焦げやすいという欠点があった。
【0045】
以上に示したように、広く一般に用いられている馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉に、甘藷澱粉及びベーキングパウダーを配合した衣組成物を用いることで、油中に豆腐を浸漬させ加熱する、いわゆる油で揚げる調理工程を経なくても、油で揚げたような食感等を有する油揚げ様食品を得ることができることがわかった。
【0046】
[実施例2]
(衣組成物の作製)
馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、食塩及びベーキングパウダーを混合し、各実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3に係る衣組成物衣組成物を30gずつ作製した。表3に各実施例、比較例の各原材料の配合量を示す。各原材料の値は、衣組成物に含まれるそれぞれの質量(%)を表している。
【0047】
(油揚げ様食品及び調味液の作製)
実施例1記載の方法と同様の方法で、各実施例及び比較例の油揚げ様食品並びに調味液を作成した。
【0048】
(官能評価)
作製した油揚げ様食品をそのままの状態と、調味液をかけた状態で食して官能評価を実施した。官能評価は実施例1記載の方法に準じて行った。また、調理時の調理の容易性について、特に焦げやすさの観点から官能評価を行った。官能評価の結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すとおり、実施例2−1〜2−3に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食しても、調味液をかけても、(1)〜(5)の評価項目において何れも高評価(3以上)であった。特に、実施例2−2に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、油で揚げた食品に近い良好な官能を有していた。
【0051】
一方、比較例2−1〜2−3に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食した場合や調味液をかけた場合、一部の評価項目で3を超えることがあっても、他の項目で3未満となるなど、全体として、満足できる品質の油揚げ様食品が得られなかった。
【0052】
以上に示したとおり、衣組成物中、甘藷澱粉の配合量を25.4質量%以上、あるいは、甘藷澱粉の配合量を63.6質量%以下とすることで、油中に豆腐を浸漬させ加熱する、いわゆる油で揚げる調理工程を経なくても、油で揚げたような食感等を有する油揚げ様食品を得ることができることがわかった。
【0053】
[実施例3]
(衣組成物の作製)
馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、食塩及びベーキングパウダーを混合し、各実施例3−1〜3−7、比較例3−1〜3−4に係る衣組成物衣組成物を30gずつ作製した。表4及び5に各実施例、比較例の各原材料の配合量を示す。各原材料の値は、衣組成物に含まれるそれぞれの質量(%)を表している。
【0054】
(油揚げ様食品及び調味液の作製)
実施例1記載の方法と同様の方法で、各実施例及び比較例の油揚げ様食品並びに調味液を作成した。
【0055】
(官能評価)
作製した油揚げ様食品をそのままの状態と、調味液をかけた状態で食して官能評価を実施した。官能評価は実施例1及び2記載の方法に準じて行った。官能評価の結果を表4及び5に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
表4及び5に示すとおり、実施例3−1〜3−7に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食しても、調味液をかけても、(1)〜(5)の評価項目において何れも高評価(3以上)であった。
【0059】
一方、比較例3−1〜3−3に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食した場合や調味液をかけた場合、一部の評価項目で3を超えることがあっても、他の項目で3未満となるなど、全体として、満足できる品質の油揚げ様食品が得られなかった。なお、比較例3−4に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、官能評価においては、何れの評価項目においても高評価(3以上)であったものの、調理時において焦げやすいという欠点があり、外観が著しく損なわれ、好ましいものでなかった。
【0060】
以上に示したとおり、衣組成物30g中、ベーキングパウダーの配合量を1.0質量%以上13.0質量%以下とすることで、油中に豆腐を浸漬させ加熱する、いわゆる油で揚げる調理工程を経なくても、油で揚げたような食感等を有する油揚げ様食品を得ることができることがわかった。
【0061】
実施例1〜3の結果について、衣組成物における甘藷澱粉及びベーキングパウダーの配合量(質量%)を
図1に示す。図中における「●」は、官能評価が特に優れていたもの、「○」は、官能評価が優れていたもの、「×」は、官能評価が劣るもの、あるいは、調理適性にやや難があるものであることを示す。