特許第5968140号(P5968140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968140油揚げ様食品用の衣組成物及び惣菜用材料セット
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  • 特許5968140-油揚げ様食品用の衣組成物及び惣菜用材料セット 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968140
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】油揚げ様食品用の衣組成物及び惣菜用材料セット
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20160101AFI20160728BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20160728BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20160728BHJP
【FI】
   A23L11/00 108Z
   A23L5/10 E
   A23L35/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-167948(P2012-167948)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-23499(P2014-23499A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井ノ本 尚美
(72)【発明者】
【氏名】川島 沙由梨
(72)【発明者】
【氏名】栗原 待子
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−175644(JP,A)
【文献】 特開2002−142700(JP,A)
【文献】 特開平05−336912(JP,A)
【文献】 特開平04−112765(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3010136(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/016673(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0141647(US,A1)
【文献】 特開平10−75732(JP,A)
【文献】 特開2011−193852(JP,A)
【文献】 特開昭58−67155(JP,A)
【文献】 特開2007−14328(JP,A)
【文献】 フライパンで揚げだし豆腐★つゆが旨い!,楽天レシピ[online],2011年 3月 7日,[2016年6月24日検索]インターネット<URL:http://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1820001380/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/
A23L 7/
A23L 9/
A23L 11/
A23L 29/
A23L 35/
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐の表面に付着させ、少量の油で炒めることで油揚げ様食品を形成する衣組成物であって、馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉と、甘藷澱粉と、ベーキングパウダーとを含むことを特徴とする油揚げ様食品用の衣組成物。
【請求項2】
請求項1記載の油揚げ様食品用の衣組成物において、前記甘藷澱粉の含有量は、25質量%以上64質量%以下であり、前記ベーキングパウダーの含有量は、1質量%以上13質量%以下であることを特徴とする油揚げ様食品用の衣組成物。
【請求項3】
豆腐の表面に付着させ、少量の油で炒めることで油揚げ様食品を形成する衣組成物であって、馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉と、甘藷澱粉と、炭酸水素ナトリウムとを含み、前記甘藷澱粉の含有量は、25質量%以上64質量%以下であり、前記炭酸水素ナトリウムの含有量は、0.25質量%以上3.25質量%以下であることを特徴とする油揚げ様食品用の衣組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する油揚げ様食品用の衣組成物において、当該油揚げ様食品用の衣組成物を収容する包装には、当該油揚げ様食品用の衣組成物を豆腐の表面に付着させ、少量の油で炒める旨が表示されていることを特徴とする油揚げ様食品用の衣組成物。
【請求項5】
第1容器に収容された請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する油揚げ様食品用の衣組成物と、第2容器に収容され、前記油揚げ様食品に組み合わされる調味料とを含むことを特徴とする惣菜用材料セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油揚げ様食品用の衣組成物及び惣菜用材料セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭内での調理の簡便化に対する需要が高まっている。特に油中において食品を揚げる、いわゆる揚げ物を調理する際には、調理中の温度調整が難しいことや、調理後の油の廃棄の手間を省く等の観点から、油で揚げずに揚げ物様の食品を得たいという需要が高まっている。
【0003】
そこで、油で揚げることなく、天ぷら様食品を得ることができるベーキング用天ぷら衣組成物(例えば、特許文献1参照)や、パン粉類似品が提案されている(例えば、特許文献2参照)が提案されている。このような衣組成物等を食品の表面に付着させ、オーブントースター等を用いて加熱調理することで、油で揚げたような衣をまとった揚げ物様の食品を得ることができる。
【0004】
ところで、上述したような衣組成物は、油中において揚げるという調理工程を経なくても、衣の食感が硬く形成されるものであるが、その衣の食感の特徴から、いわゆるフライ食品や天ぷらといった食品の代替として優れてはいるものの、全ての食品に応用できるものではない。
【0005】
様々な食品において揚げ物を調理する際の工程を簡便化することができる衣組成物及び衣組成物を含む材料セットが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−067155号公報
【特許文献2】特開2007−014328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、豆腐の表面に付着させ少量の油で炒めることで、油で揚げたような食感を有する油揚げ様食品、具体的には揚げだし豆腐様の食品を得ることができる衣組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該衣組成物で形成される油揚げ様食品に調味料を組み合わせることで惣菜を得ることができる惣菜用材料セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉に甘藷澱粉とベーキングパウダーとを配合することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下に関する。
1)豆腐の表面に付着させ、少量の油で炒めることで油揚げ様食品を形成する衣組成物であって、馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉と、甘藷澱粉と、ベーキングパウダーとを含むことを特徴とする油揚げ様食品用の衣組成物。
2)前記1)1記載の油揚げ様食品用の衣組成物において、前記甘藷澱粉の含有量は、25質量%以上64質量%以下であり、前記ベーキングパウダーの含有量は、1質量%以上13質量%以下であることを特徴とする油揚げ様食品用の衣組成物。
3)前記1)〜2)記載の何れか一項に記載する油揚げ様食品用の衣組成物において、当該油揚げ様食品用の衣組成物を収容する包装には、当該油揚げ様食品用の衣組成物を豆腐の表面に付着させ、少量の油で炒める旨が表示されていることを特徴とする油揚げ様食品用の衣組成物。
4)第1容器に収容された前記1)〜3)の何れか一に記載する油揚げ様食品用の衣組成物と、第2容器に収容され、前記油揚げ様食品に組み合わされる調味料とを含むことを特徴とする惣菜用材料セット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油中に食品を浸漬させ加熱する、いわゆる油で揚げる調理工程を経なくても、油で揚げたような食感等を有する油揚げ様食品を得ることができる衣組成物を提供される。また、本発明によれば、油揚げ様食品用の衣組成物で形成される油揚げ様食品に具材及び調味液を組み合わせることで惣菜を得ることができる惣菜用材料セットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1〜3に係る衣組成物の甘藷澱粉及びベーキングパウダーの含有量(質量%)をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る油揚げ様食品用の衣組成物(以下、単に衣組成物ともいう)は、馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉と甘藷澱粉及びベーキングパウダーを含む。
【0013】
本発明に係る衣組成物は、豆腐の表面に付着させ、少量の油で炒めることで油揚げ様食品、具体的には揚げだし豆腐様食品を形成する。得られる揚げだし豆腐様食品に任意の液体調味料をかけても、衣の食感や形状は維持される。
【0014】
本発明でいう豆腐とは、水に浸して柔らかくした大豆をすりつぶした豆汁を熱し、布漉しして豆乳とおからに分け、豆乳に苦汁又は凝固剤を加えて凝固させた食品をいう。一般に豆腐と呼ばれているものであればよく、その種類によって特に限定されることはない。調理時及び調理後の保形性の観点から、型箱での圧搾や晒しの工程を経ない、寄せ豆腐あるいはおぼろ豆腐よりも、広く一般に食されている木綿豆腐、絹ごし豆腐等を用いるのが好ましい。
【0015】
本発明に係る衣組成物は、原材料として馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉と、甘藷澱粉と、ベーキングパウダーとを含むものである。
【0016】
本発明で用いられる馬鈴薯澱粉は、ジャガイモを原材料とする澱粉であって、その種類は特に限定されない。一般に、馬鈴薯澱粉として市販されているものや、リン酸架橋処理等を施した加工澱粉も含まれる。未処理の馬鈴薯澱粉に比べて、リン酸架橋処理等を施した加工澱粉は、調理後に得られる衣が硬くなるため、後述する甘藷澱粉の配合量を少なくする等、適宜調整することが好ましい。
【0017】
本発明で用いられる小麦粉は、小麦を挽いて得られる粉であって、その種類は特に制限されず、一般に市販されている強力粉、中力粉、薄力粉等を、その食感の好みによって適宜選択して用いることができる。タンパク質の含有量が多い強力粉は、グルテンを形成して粘弾性を有する。タンパク質の含有量が少ない薄力粉は、衣がサクサクとした食感を有する。
【0018】
馬鈴薯澱粉と小麦粉は、それぞれを1種のみ用いてもよいし、2種を任意の割合で混合して用いてもよい。衣組成物における馬鈴薯澱粉の配合量が多いと、衣がカラリと揚がってサクサクとした食感となり、また、調味液を添加した場合は、衣がもっちりとした食感になる。
【0019】
衣組成物における小麦粉の配合量が多いと、衣がふんわりとして柔らかめに仕上がり、また、調味液を添加した場合は、衣があっさりとした仕上がりになる。そのため、馬鈴薯澱粉及び小麦粉の配合量の割合は、好みの食感に応じて適宜調整することが好ましい。
【0020】
本発明で用いられる甘藷澱粉は、サツマイモを原材料とする澱粉であって、その種類は特に限定されない。甘藷澱粉は、調理後の衣の強度及び保形性を高める役割を担う。
【0021】
甘藷澱粉の衣組成物に対する含有量は特に制限されないが、調理後の衣の強度及び保形性を担保するために、25質量%以上64質量%以下となるよう配合することが好ましい。
【0022】
本発明で用いられるベーキングパウダーは、炭酸塩類又は重炭酸塩類を基剤として含有する膨張剤であって、加水及び加熱処理によって炭酸ガスを発生するものであり、その種類は特に限定されない。
【0023】
ベーキングパウダーは、調理後の衣の外観及び食感を良くする役割を担う。
【0024】
ベーキングパウダーの衣組成物に対する含有量は特に制限されないが、調理後の衣の外観及び食感を担保するために、1質量%以上13質量%以下となるよう配合することが好ましい。また、ベーキングパウダーの含有量を増やすと、衣の油で揚げたような食感が維持できなくなるとともに、調理時に焦げやすいという欠点を有する。
【0025】
衣の外観及び食感は、ベーキングパウダーの加水及び加熱処理によって発生する炭酸ガスの量に影響を受けるため、基剤の含有量や、炭酸ガスの発生を促進するために添加されている酸性の助剤の含有量によって適宜調整することが好ましい。助剤の種類や含有量にもよるが、炭酸水素ナトリウムを基剤として含有するベーキングパウダーを用いる場合、衣組成物中における炭酸水素ナトリウムの含有量が、概ね0.25質量%以上、3.25質量%以下となるよう調整するのが好ましい。
【0026】
通常、揚げだし豆腐は、豆腐の表面に馬鈴薯澱粉若しくは小麦粉又はこれらを任意の割合で配合したものを付着させ、油中に浸漬させ揚げる調理工程を経ることにより得られる。しかしながら、一般に用いられる衣組成物を用いて、少量の油により炒めた場合、油で揚げた際に得られる衣の花咲きや、カリカリとした食感が得られない。そこで、衣の強度及び保形性を強化する観点から甘藷澱粉を、衣の外観及び食感を強化する観点からベーキングパウダーを従来の衣組成物に配合することにより、油で揚げたような食感等を有する食品を得ることができる。
【0027】
本発明に係る衣組成物には、風味付けなどを目的として、必要に応じて、植物性蛋白、粉乳、卵粉、食塩、調味料、香辛料、色素、油脂などの副原料を配合することができる。
【0028】
油揚げ様食品は、そのまま食することもできるし、他の調味料を組み合わせて惣菜とすることもできる。揚げだし豆腐様の惣菜として食する場合は、醤油、味醂、出汁及び水を混合したものを鍋に入れて火にかけ、煮立たせた後、さらに食塩を加えて火をとめ、得られた調味液をかけることで、一般的な揚げだし豆腐と同等の風味をもつ食品として食することができる。
【0029】
平袋など(第1容器)に、本発明に係る衣組成物を封入し、それとは別の平袋など(第2容器)に、上述のような調味液を封入したものをセットにして、惣菜用材料セットとしてもよい。
【0030】
消費者は、豆腐を用意し、惣菜用材料セットの衣組成物を用いて油揚げ様食品を作り、その後、惣菜用材料セットの調味料と組み合わせるだけで、手軽に揚げだし豆腐様の惣菜を作ることができる。これにより、油で揚げる作業や後始末も不要となり、消費者のニーズに合う惣菜用材料セットを提供することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
本発明に係る馬鈴薯澱粉として市販の片栗粉を、小麦粉として薄力粉(日清製粉社製)を用いた。また、本発明に係る甘藷澱粉として甘藷澱粉(東海澱粉社製)を用いた。また、本発明に係るベーキングパウダーとしてベーキングパウダー(日清フーズ社製)を用いた。さらに、副材料として、精製塩(日本食塩製造社製)を用いた。
【0032】
なお、本発明に係るベーキングパウダーの炭酸水素ナトリウム含有量は25質量%であり、その他、助剤等として加工澱粉30質量%、グルコノデルタラクトン14質量%、リン酸二水素カルシウム12.4質量%、リン酸二水素カルシウム(無水)11質量%、L−酒石酸水素カリウム6質量%、リン酸一水素カルシウム1.6質量%が含まれている。
【0033】
本発明に係る甘藷澱粉の比較例として、コーンスターチ(川光物産社製)、あるいは、タピオカスターチ(ギャバン社製)を用いた。
【0034】
(衣組成物の作製)
馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉、ベーキングパウダー並びに食塩、並びに、甘藷澱粉、コーンスターチ又はタピオカ澱粉を混合し、各実施例1−1〜1−2、比較例1−1〜1−6に係る衣組成物衣組成物を30gずつ作製した。表1に各実施例、比較例の各原材料の配合量を示す。各原材料の値は、衣組成物に含まれるそれぞれの質量(%)を表している。
【0035】
【表1】
【0036】
(油揚げ様食品及び調味液の作製)
絹ごし豆腐(ヨシコシ食品社製)400gをキッチンペーパーで包んで軽く水切りし、12等分にした。水切りを行った絹ごし豆腐に、実施例1−1〜1−2、比較例1−1〜1−6に係る衣組成物をそれぞれ約30gまぶし、表面に薄く付着させた。
【0037】
フライパンに植物油(キャノーラ油;日清オイリオ社製)30mlをひいて加熱し、衣組成物を付着させた豆腐を、約4分間炒めて6面の全ての面をまんべんなく焼き、油揚げ様食品を得た。
【0038】
また、比較例1−1としては、一般の揚げだし豆腐の調理法と同様に、170〜180℃に熱した油の中に衣組成物を付着させた豆腐に浸漬させ、衣に薄く揚げ色がつくまで約1分間揚げた。
【0039】
さらに、希釈用つゆ(キッコーマン社製)20ml、水40mlを鍋に入れて火をかけ、加温して調味液を作成した。
【0040】
(官能評価)
作製した油揚げ様食品をそのままの状態と、調味液をかけた状態で食して官能評価を実施した。官能評価の結果を表1に示す。なお、官能評価で適用した評価項目と評価基準は、表2に示した基準に従い、6名の専門のパネリストにより行った。また、調理時の調理の容易性について、特に焦げやすさの観点から官能評価を行った。
【0041】
【表2】
【0042】
5つの評価項目について、評価基準を設け、それぞれ5段階で点数付けることとした。一般の揚げだし豆腐の調理法により得られた食品にどれだけ近い官能評価を有するか否かを基準とするため、比較例1−1の全ての官能評価の点数を5点とし、各比較例及び実施例について、比較例1−1との相対評価により点数を付けた。なお、点数が3点以上であれば、油で揚げた食品に近い官能を有すると判断される。
【0043】
実施例1−1〜1−2に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食しても、調味液をかけても、(1)〜(5)の評価項目において何れも高評価(3以上)であった。
【0044】
一方、比較例1−2〜1−5に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食した場合や調味液をかけた場合、一部の評価項目で3を超えることがあっても、他の項目で3未満となるなど、全体として、満足できる品質の油揚げ様食品が得られなかった。さらに、比較例1−5に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、調理適性が悪く、調理時に非常に焦げやすいという欠点があった。比較例1−6に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、官能評価の点において優れてはいたが、調理適性が悪く、調理時に非常に焦げやすいという欠点があった。
【0045】
以上に示したように、広く一般に用いられている馬鈴薯澱粉及び/又は小麦粉に、甘藷澱粉及びベーキングパウダーを配合した衣組成物を用いることで、油中に豆腐を浸漬させ加熱する、いわゆる油で揚げる調理工程を経なくても、油で揚げたような食感等を有する油揚げ様食品を得ることができることがわかった。
【0046】
[実施例2]
(衣組成物の作製)
馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、食塩及びベーキングパウダーを混合し、各実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3に係る衣組成物衣組成物を30gずつ作製した。表3に各実施例、比較例の各原材料の配合量を示す。各原材料の値は、衣組成物に含まれるそれぞれの質量(%)を表している。
【0047】
(油揚げ様食品及び調味液の作製)
実施例1記載の方法と同様の方法で、各実施例及び比較例の油揚げ様食品並びに調味液を作成した。
【0048】
(官能評価)
作製した油揚げ様食品をそのままの状態と、調味液をかけた状態で食して官能評価を実施した。官能評価は実施例1記載の方法に準じて行った。また、調理時の調理の容易性について、特に焦げやすさの観点から官能評価を行った。官能評価の結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すとおり、実施例2−1〜2−3に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食しても、調味液をかけても、(1)〜(5)の評価項目において何れも高評価(3以上)であった。特に、実施例2−2に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、油で揚げた食品に近い良好な官能を有していた。
【0051】
一方、比較例2−1〜2−3に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食した場合や調味液をかけた場合、一部の評価項目で3を超えることがあっても、他の項目で3未満となるなど、全体として、満足できる品質の油揚げ様食品が得られなかった。
【0052】
以上に示したとおり、衣組成物中、甘藷澱粉の配合量を25.4質量%以上、あるいは、甘藷澱粉の配合量を63.6質量%以下とすることで、油中に豆腐を浸漬させ加熱する、いわゆる油で揚げる調理工程を経なくても、油で揚げたような食感等を有する油揚げ様食品を得ることができることがわかった。
【0053】
[実施例3]
(衣組成物の作製)
馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、食塩及びベーキングパウダーを混合し、各実施例3−1〜3−7、比較例3−1〜3−4に係る衣組成物衣組成物を30gずつ作製した。表4及び5に各実施例、比較例の各原材料の配合量を示す。各原材料の値は、衣組成物に含まれるそれぞれの質量(%)を表している。
【0054】
(油揚げ様食品及び調味液の作製)
実施例1記載の方法と同様の方法で、各実施例及び比較例の油揚げ様食品並びに調味液を作成した。
【0055】
(官能評価)
作製した油揚げ様食品をそのままの状態と、調味液をかけた状態で食して官能評価を実施した。官能評価は実施例1及び2記載の方法に準じて行った。官能評価の結果を表4及び5に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
表4及び5に示すとおり、実施例3−1〜3−7に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食しても、調味液をかけても、(1)〜(5)の評価項目において何れも高評価(3以上)であった。
【0059】
一方、比較例3−1〜3−3に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、そのまま食した場合や調味液をかけた場合、一部の評価項目で3を超えることがあっても、他の項目で3未満となるなど、全体として、満足できる品質の油揚げ様食品が得られなかった。なお、比較例3−4に係る衣組成物により作製された油揚げ様食品は、官能評価においては、何れの評価項目においても高評価(3以上)であったものの、調理時において焦げやすいという欠点があり、外観が著しく損なわれ、好ましいものでなかった。
【0060】
以上に示したとおり、衣組成物30g中、ベーキングパウダーの配合量を1.0質量%以上13.0質量%以下とすることで、油中に豆腐を浸漬させ加熱する、いわゆる油で揚げる調理工程を経なくても、油で揚げたような食感等を有する油揚げ様食品を得ることができることがわかった。
【0061】
実施例1〜3の結果について、衣組成物における甘藷澱粉及びベーキングパウダーの配合量(質量%)を図1に示す。図中における「●」は、官能評価が特に優れていたもの、「○」は、官能評価が優れていたもの、「×」は、官能評価が劣るもの、あるいは、調理適性にやや難があるものであることを示す。
図1