特許第5968230号(P5968230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968230
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ナノ粒子懸濁液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20160728BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20160728BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20160728BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20160728BHJP
   B01F 17/36 20060101ALI20160728BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20160728BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B01J13/00 B
   C01F11/46 A
   C01G9/02 B
   C01B33/18 C
   B01F17/36
   B82Y40/00
   C01B33/12 A
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-556628(P2012-556628)
(86)(22)【出願日】2011年3月7日
(65)【公表番号】特表2013-527792(P2013-527792A)
(43)【公表日】2013年7月4日
(86)【国際出願番号】IB2011050942
(87)【国際公開番号】WO2011110990
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年3月5日
(31)【優先権主張番号】61/311,433
(32)【優先日】2010年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10002361.3
(32)【優先日】2010年3月8日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト エンゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ゲアリンガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ブレーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ ムレ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ ベレンキ
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ シューフマン
(72)【発明者】
【氏名】マリオン ゲートラート
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−209543(JP,A)
【文献】 特開2007−203288(JP,A)
【文献】 特表2008−501509(JP,A)
【文献】 特開昭51−105986(JP,A)
【文献】 特開昭53−070435(JP,A)
【文献】 特開平09−054384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
B01F 17/00−17/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程
(i) 極性の分散相が無極性の連続相中にあるエマルションを、該エマルションを安定化する乳化剤の存在下で調製する工程、ここで、該分散相は、ナノ粒子を形成する1つまたはそれより多くの前駆体物質を含む、
(ii) 極性の分散相中で、1つまたはそれより多くの前駆体物質をナノ粒子に変換する工程、
(iii) エマルションを破壊し、且つ相分離する工程、ここで、少なくとも1つのナノ粒子懸濁液が少なくとも1つの相として得られる、
(iv) ナノ粒子懸濁液を分離する工程、
(v) 随意に、ナノ粒子懸濁液からナノ粒子を単離する工程
を有するナノ粒子懸濁液の製造方法であって、前記乳化剤が一般式(I)
【化1】
[式中、
Xは、O、NH、NR2である、
Yは、C(O)、NH、NR3である、
Rは、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、6〜30個の炭素原子を有する炭化水素基である、且つ
1は、水素である、且つ、
2は、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、1〜30個の炭素原子、好ましくは6〜30個の炭素原子を有する炭化水素基である、
3は、C1〜C4−アルキルである、
nは、0または1である]
の化合物から選択され、且つエマルションの破壊が乳化剤を分解することによって行われる、前記製造方法。
【請求項2】
乳化剤が、一般式(Ia)のシュウ酸エステル、一般式(Ib)のオキサメート、一般式(Ic)のヒドロキシカルバメート、および一般式(Id)のマロン酸エステル
【化2】
[式中、RおよびR1は上記の意味を有する]
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乳化剤の分解を、エマルションに塩基を添加することによって行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
乳化剤が、一般式(Ia)
【化3】
のシュウ酸エステルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記分解を、エマルションを50〜200℃の温度に加熱することによって行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
無極性相が、n−アルカン、芳香族炭化水素、エーテル、パラフィン、ワックス、鉱油および植物油から選択される溶剤である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
以下の工程:
(i) 極性の分散相が無極性の連続相中にあるエマルション(サスポエマルション)を、該エマルションを安定化する乳化剤の存在下で調製する工程、ここで該分散相は、懸濁された形態でナノ粒子を含み、該分散相および/または該連続相は1つまたはそれより多くの機能化試薬を溶解された形態で含む、
(ii) ナノ粒子と機能化試薬とを分散相中で反応させる工程、
(iii) エマルションを破壊し且つ相分離する工程、ここで、少なくとも1つのナノ粒子懸濁液が少なくとも1つの相として得られる、
(iv) ナノ粒子懸濁液を分離する工程、
(v) 随意に、機能化されたナノ粒子を単離する工程
を有する、ナノ粒子を機能化する方法であって、前記乳化剤が一般式(I)
【化4】
[式中、
Xは、O、NH、NR2である、
Yは、C(O)、NH、NR3である、
Rは、飽和、または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、6〜30個の炭素原子を有する炭化水素基である、且つ、
1は、水素である、且つ
2は、飽和、または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、1〜30個の炭素原子、好ましくは6〜30個の炭素原子を有する、炭化水素基である、
3は、C1〜C4−アルキルである、
nは、0または1である]
の化合物から選択され、且つエマルションの破壊が乳化剤を分解することによって行われる、前記方法。
【請求項8】
乳化剤が、一般式(Ia)のシュウ酸エステル、一般式(Ib)のオキサメート、一般式(Ic)のヒドロキシカルバメート、および一般式(Id)のマロン酸エステル
【化5】
[式中、RおよびR1は上記の意味を有する]
から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
乳化剤の分解を、エマルションに塩基を添加することによって行う、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
乳化剤が、一般式(Ia)
【化6】
のシュウ酸エステルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一般式(Ib)のオキサメート、及び一般式(Ic)のヒドロキシカルバメート
【化7】
[式中、
Rは、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、6〜30個の炭素原子を有する炭化水素基である、且つ、
1は、水素である]
から選択される乳化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明はナノ粒子懸濁液の製造方法および/または機能化方法に関する。
【0002】
ナノ粒子の物質移動制御合成のためのミニエマルション法は、水溶性の反応物質が初期装入物として分散相の水に導入される、油中水型ミニエマルション(W/Oミニエマルション)の調製を含む。乳化段階の後、ミニエマルションが第二の油溶性且つ部分的に水溶性の反応物質と混合され、それがその後、連続相を通じて、乳化剤によって占められた界面を介して、ミニエマルション液滴中へ拡散し、且つ、それによって析出反応が開始される(物質移動制御法)。析出反応に続き、精製および/またはミニサスポエマルションを懸濁液に変換することが必要とされる。1つの変法においては、第一の反応物質を含む油中水型のエマルションを、第二の反応物質を含む油中水型エマルションと混合することがあり、その場合、2つの分散相の液滴が融合する結果として、そこに存在する反応物質が反応する(融合制御法)。水相の代わりに、各々の場合において、無極性の連続的な油相と不混和性の極性の有機相が分散相としてはたらくことも可能である。
【0003】
W08/058958号は、サブミクロンのコア/シェル粒子のミニサスポエマルションの製造方法であって、
・ 第一の液体分散相Iが第二の液体連続相II中にあるサスポエマルションが出発点であり、下記
・ 第一の液体分散相I中に、コアを形成する固体のナノ粒子K、および
・ 分子状に分散し溶解された、シェル用の前駆体物質、および随意に反応物質
を含み、
・ サスポエマルションの第一の液体分散相I中で、サブミクロンのコア/シェルナノ粒子が、シェルの用の前駆体物質の化学的または物理的変換によって製造される、
前記方法について記載している。
【0004】
サスポエマルションを分離するための公知の方法は、(a)共沸蒸留、(b)溶解促進剤の添加、および(c)ろ過である。
【0005】
共沸蒸留は、より容易に揮発する相の除去を引き起こし、且つ、他の相の部分的な除去によってナノ懸濁液の濃縮も引き起こす。しかしながら、水相の除去は残留している前駆体物質の晶出をみちびくことがあり、それがその後、懸濁液中に粒子として存在し、従って懸濁液の汚染をみちびく。さらには、それはエネルギーおよび費用のかかる方法である。さらに、該方法は、ナノ粒子を含むべき相が、従って例えば水相が、より高い沸点を有する場合にのみ行なわれ得る。
【0006】
油相および水相への(より一般的には、非極性相および無極性相への)エマルションの分離を、さらに、水相および油相の両方において可溶性である溶解促進剤の添加によって起こすことができる。例えば、イソプロパノール、アセトンまたは解乳化剤が溶解促進剤としてはたらくことができる。欠点は、溶解促進剤によって最終生成物が希釈されることである。さらには、ナノ粒子は水相中および油相中の両方に存在し得る。
【0007】
ナノ粒子を装填されたエマルションをろ過によって分離することはしばしば困難であることが判明しており、なぜなら、汚損の結果、フィルターメンブレンが詰まってくる傾向があり、そのことによりろ過時間が長くなるからである。ろ過の間、圧力降下を低く保つためには、大きなフィルター面積が維持される必要がある。
【0008】
エマルションの用語は、2つの不混和性の液相からなる液体分散系を示すために使用され、その1つの相は分散相または内相として示され、分散された形態で、連続相または均質相として示される第二の相中に、微細な液滴の形態で存在する。相の極性に依存して、エマルションは水中油型(O/W)または油中水型(W/O)エマルションとして示され、その際、第一のケースでは、無極性媒体からなる疎水性の油相が、微細に分散された液滴の形態で、水溶液、または無極性相と不混和性の他の極性成分からなる極性相中に存在する。W/Oエマルションのケースでは、逆に、極性相が微細に分散された液滴の形態で無極性の油相中に存在する。
【0009】
用語「ミニエマルション」は、ステアリン(stearic)作用および/または静電気作用によって、および/または1つまたはそれより多くの乳化剤によって、および/またはさらなる助剤によって力学的に安定化された、熱力学的には不安定な液体分散系(エマルション)について使用され、その分散相は平均液滴直径<5000nm(<5μm)を有する。
【0010】
サスポエマルションの用語は、エマルション中に分布した固体粒子を有する系について使用され、従って、ミニサスポエマルションの用語は、そこに分布した固体粒子を有するミニエマルションについて使用される。
【0011】
ミニエマルションまたはサスポエマルション中で液滴が充分に安定であることが、乳化の前提条件である。物質系に依存して、これは、界面電荷、即ち、液滴自体の静電推進力(electrostatic propulsion)の結果として提供され得る。乳化剤による液滴相の外部的な安定化が必要とされる場合、これを静電作用および/またはステアリンの作用を介して起こすことができ、その作用は、連続相中に存在する、適切な安定助剤によってもたらされる。粒子および/またはエマルションの安定化のための助剤は、分散相中に存在してもよい。ミニエマルションまたはサブミクロンの懸濁液を安定化するための助剤は、液滴または分散相の粒子の融合、クリーミングまたは析出を防ぐか、または減速するように、連続相の流動特性を変化させる物質も含む。
【0012】
本発明の課題は、油中水型エマルション中でのナノ粒子または機能性ナノ粒子の製造方法であって、油相からナノ粒子を含む相を分離することが特に単純になる方法を提供することである。
【0013】
前記課題は、以下の工程
(i) 極性の分散相が無極性の連続相中にあるエマルションを、該エマルションを安定化する乳化剤の存在下で調製する工程、ここで、該極性相は、ナノ粒子を形成する1つまたはそれより多くの前駆体物質を含む、
(ii) 1つまたはそれより多くの前駆体物質を、極性の分散相中でナノ粒子に変換する工程、
(iii) エマルションを破壊し且つ相分離する工程、ここで少なくとも1つのナノ粒子懸濁液が少なくとも1つの相として得られる、
(iv) ナノ粒子懸濁液を分離する工程、
(v) 随意にナノ粒子を該ナノ粒子懸濁液から単離する工程、
を有するナノ粒子懸濁液の製造方法であって、乳化剤が一般式(I)
【化1】
[式中、
Xは、O、NH、NR2である、
Yは、C(O)、NH、NR3である、
Rは、6〜30個の炭素原子を有する、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の炭化水素基である、且つ、
1は、水素またはC1〜C4−アルキルである、且つ、
2は、1〜30個の炭素原子、好ましくは6〜30個の炭素原子を有する、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の炭化水素基である、
3は、C1〜C4−アルキルである、
nは0または1である]
の化合物から選択され、且つ、エマルションの破壊は、乳化剤を分断することによって作用される、前記方法によって解決される。
【0014】
式(I)においてRは、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、6〜30、好ましくは8〜24、および特に好ましくは10〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である。分枝とは、炭化水素基中に存在し得る脂環式構造、例えばシクロヘキサン環の意味としても理解される。直鎖の炭化水素基が好ましく、且つ、飽和の直鎖炭化水素基(直鎖アルキル基)が特に好ましい。直鎖アルキル基の例は、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、およびオクタデシル基である。
【0015】
1は水素またはC1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピルおよびn−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルである。R3は、C1〜C4−アルキル、例えば上記で特定された基である。
【0016】
2は、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、1〜30、好ましくは6〜30、特に好ましくは8〜24、および特に10〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である。直鎖の炭化水素基が好ましく、且つ、飽和の直鎖炭化水素基(直鎖アルキル基)が特に好ましい。直鎖アルキル基の例は、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、およびオクタデシル基である。
【0017】
本発明は乳化剤それ自体、並びにその使用、特に、ナノ粒子の合成または機能化の間、エマルション、好ましくは油中水型エマルションを安定化させるために用いる使用も提供する。
【0018】
無極性の連続相は、好ましくは炭化水素または炭化水素の混合物、例えば芳香族炭化水素または芳香族炭化水素の混合物、アルカンまたはアルカンの混合物、植物油または植物油の混合物、シリコーンオイルまたはシリコーンオイルの混合物である。
【0019】
好ましくは、連続相は低粘度を有し、従って高い拡散係数を有する。無極性の連続相として使用するために特に好ましい有機溶剤は、n−アルカンまたはシクロアルカン、例えばn−デカン、特に好ましくはn−デカン、n−ヘキサン、シクロヘキサンまたはn−ドデカン、芳香族炭化水素、例えばトルエンまたはキシレン、およびエーテル、例えばテトラヒドロフラン、またはパラフィン、ワックス、鉱油または植物油である。特に好ましくは、n−デカン、ホワイト油またはSolvesso(商標)である。
【0020】
極性の分散相は、水相または極性の有機溶剤の相であってもよい。それらは本質的に無極性の有機相と不混和性でなければならない。適した極性溶剤は、水と完全に混和性の溶剤、例えばアルコールまたはポリオールである。例は、メタノール、エタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールまたはより一般にポリエーテルオール(polyetherol)である。極性溶剤の混合物、または極性溶剤と水との混合物も、極性の有機相として適している。
【0021】
上述の本発明による方法の全ての変法の、1つの好ましい実施態様において、極性の分散相は水相である。
【0022】
ミニエマルションの調製を、例えば、機械的エネルギーを、例えば攪拌エネルギー、乱流の力学的エネルギー、超音波、ホモジナイザーバルブを介した引き続くデコンプレッションを用いた圧力の形態で、固定ミキサー、マイクロミキサーまたはメンブレンによって、または一般に層流剪断または乱流剪断および/または拡張流およびキャビテーションを印加することによって導入して行うことができる。
【0023】
狭い液滴サイズ分布および目標液滴サイズ<1μmを有するエマルションを製造するためには、高いエネルギー入力が必要とされ、前記エネルギーはローター・ステーター系によって導入され得るが、しかし好ましくは高圧を通じて導入され得る。使用されるローター・ステーター系は、例えば毎秒1000〜20000回転の範囲の回転速度を有する歯車分散機またはコロイドミルである。高圧ホモジナイズの間、粗く分散したプレエマルションをまず所望のホモジナイズ圧力(20bar〜2000bar)で密にし、ホモジナイズノズルを通じて圧縮し、その後、放圧する。ここで言及できるホモジナイズノズルの例は、放射状のノズル、対流ノズル(例えばMicrofluidizer(登録商標))、および単純な開孔板である。適したノズルの形状の例は、Microfluidizer(登録商標)からの対流ノズルである。本発明の1つの実施態様において、まず、極性相および無極性相および乳化剤の、粗く分散したプレエマルションを、例えば、プロペラ式攪拌機を使用して攪拌することによって調製し、その後、Microfluidizer(登録商標)を使用して圧力ΔP 200barから1000barでホモジナイズする。
【0024】
エネルギー入力の程度によって、分散相の液滴サイズを調節することが可能であり、従って、狙い通りにナノ粒子の粒径を調節することが可能である。
【0025】
一般式(I)の好ましい乳化剤は、一般式(Ia)のシュウ酸エステル、一般式(Ib)のオキサメート、一般式(Ic)のヒドロキシカルバメート、および一般式(Id)のマロン酸エステルである。
【0026】
【化2】
【0027】
ここで、Rは、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、6〜30、好ましくは8〜24、および特に好ましくは10〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である。直鎖の炭化水素基が好ましく、且つ、飽和の直鎖炭化水素基(直鎖アルキル基)が特に好ましい。直鎖アルキル基の例は、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、およびオクタデシル基である。
【0028】
ここで、R1はさらに、水素またはC1〜C4−アルキルであり、好ましくは水素、メチル、エチルであり、特に水素である。
【0029】
特に好ましい乳化剤は、C10〜C14−アルカノール、特にn−デカノール、n−ドデカノールおよびn−テトラデカノールとの、シュウ酸の半エステルまたはマロン酸の半エステルである。
【0030】
水相の液滴は、1つまたはそれより多くの分子状に分散し溶解された前駆体物質を含み、前記前駆体物質から、随意にさらなる反応物質による析出を伴い、液滴中での反応の結果として、ナノ粒子が形成される。ここで、水性の分散相の液滴は、それらの小さな寸法ゆえにミニ反応物質として作用する。
【0031】
これについて、出発点は、第一の極性の分散相Iが、第二の無極性の連続相II中にあるエマルションであって、極性の分散相I中に形態で分子状に分散し溶解された形態でのナノ粒子を形成する前駆体物質を含む前記エマルションである。
【0032】
1つの実施態様において、上記のエマルションは追加的に1つの反応物質を含む。これは、無極性の連続相II中に溶解された形態、または無極性の連続相IIの形態で存在してよい。
【0033】
第一の極性分散相中に存在できるナノ粒子を形成する固体の、分子状に分散し溶解された前駆体物質は、析出剤を用いた析出によって相応の金属酸化物または混合酸化物へと変換され得る有機または無機の金属塩であってよい。例は、スズ、亜鉛、セリウム、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、ハフニウム、モリブデン、ビスマス、銅、鉛または銅の無機または有機塩、または指定された塩の混合物である。
【0034】
ナノ粒子を形成する固体の、分子状に分散し溶解された前駆体物質はさらに、還元剤を用いた還元によって相応する金属に変換され得る有機または無機の金属塩であってよい。例は、Au、Ag、Ni、Pd、Fe、Sn、Co、Cu、BiおよびCeの塩であって、それらは、相応のコロイド金属または指定された金属の2つまたはそれより多くの合金に還元され得る。
【0035】
ナノ粒子を形成する固体は、層状シリケート、TiO2、ZnO、SiO2、Bi23、Fe23、CeOx、MFexy(前記Mは遷移金属または典型金属である)、ZrO2、SnO、SnO2、Alxy、CuO、Cu2O、CaCO3、または硫化物およびセレン化物から選択される1つまたはそれより多くの半導体、またはケイ素化合物であってもよい。適した前駆体物質は、相応の金属塩、例えば硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物(例えば塩化物)、酢酸塩、およびさらに有機酸の塩、例えば乳酸塩、カルボン酸塩、カルボン酸およびヒドロキシ酸である。
【0036】
さらには、ナノ粒子を形成する固体は、ポリマー、例えばPET、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリケトン、ポリカーボネート、PMMA、PUまたはポリブタジエンテレフタレート、または本発明による方法による重合によって製造されるポリマー混合物であってよい。
【0037】
単数または複数の反応物質は、例えば、溶解された金属塩をそれらの不溶性の酸化物に変換する塩基性の析出剤であってよい。それらは有機溶剤中で可溶性の塩基、特にアミンであってよい。無極性の有機溶剤中で可溶性の適したアミンは、オレイルアミンおよびトリエチルアミンである。塩基性析出剤は、水溶性の塩基、例えば水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液であってもよい。ポリマーを調製する場合、反応物質は、無極性溶剤中で可溶性の重合開始剤であってよい。
【0038】
第一の実施態様においては、上述のエマルションを、
・ ナノ粒子を形成する単数または複数の前駆体物質の、極性相I中の溶液から出発し、
・ 第二の油相IIを添加し、且つ、エネルギーを導入しながら、第一の液相Iと共に乳化し、その後、
・ 随意にさらなる反応物質を添加し、且つ、分子状に分散した形態で溶解するか、または温度を変え、分散相の液滴中で化学的および/または物理的な変換を開始させること
によって調製できる。
【0039】
さらなる実施態様においては、上記のエマルションを、
・ ナノ粒子を形成する前駆体物質を溶解された形態で含む分散相としての第一の極性相Iが、連続相としての第二の無極性相II中にあるエマルションから出発し、
・ 第三の極性相IIIに単数または複数の反応物質を導入し、前記第三の極性相IIIは、第一の極性の分散層Iと混和性であるが第二の無極性の連続相IIとは不混和性であり、
・ 単数または複数の反応物質を含む第三の極性相IIIから、第四の無極性相IVと共に、エマルションをエネルギーの導入により形成し、前記第四の無極性相IVは、第二の無極性相IIと混和性であるが第一および第三の極性相IおよびIIIとは混和性ではなく、且つ、
・ 第一の極性相Iの液滴と第三の極性相IIIの液滴とを、エネルギーの導入により融合させる
ことによって調製できる。
【0040】
例えば、第一の極性相Iは、この相中で可溶性の金属塩を含むのに対して、第三の極性相IIIは析出試薬を含み、前記析出試薬はこの相中で可溶性であり、且つ可溶性の金属塩を不溶性の金属化合物に変換する。
【0041】
上述の変法の1つの例示的な実施態様においては、塩化バリウムを、極性相Iとして水中に溶解された前駆体物質として、初期装入物として導入する。本発明による乳化剤は、無極性相IIとしてのn−デカン中に溶解され、且つ、攪拌によって得られる粗エマルションがその後、2つの開孔板を用いて、約100〜1000barの圧力降下でホモジナイズされてミニエマルションが生じる。水溶性の硫酸塩、例えば硫酸ナトリウムまたは硫酸アンモニウムを反応物質として、同様に極性相IIIとしての水中に溶解させ、且つ、無極性相IVとしての本発明による乳化剤を含むn−デカンを用いて予備乳化する。その後、ミニエマルションを高圧ホモジナイズによって上述の通りに調製する。両方のエマルションを混合し、且つ、分散相の液滴を、例えば機械的なエネルギーの導入によって融合させる。融合された液滴中で、塩化バリウムと硫酸塩とが反応して、不溶性の硫酸バリウムが生じ、それは微細に分散した形態で析出する。
【0042】
さらなる例示的な実施態様において、上述の2つのミニエマルションを調製し且つ混合し、極性の分散相Iは亜鉛酸化物前駆体化合物を含み、且つ、極性の分散相IIIは塩基性の析出試薬として水酸化ナトリウムを含む。分散相IおよびIIIの液滴を融合させることによって、亜鉛酸化物が微細に分散した形態で析出する。
【0043】
さらなる実施態様において、ナノ粒子のための、分子状に分散し溶解された前駆体物質に加えて、1つまたはそれより多くの反応物質を分散相の液滴中に含む上記のエマルションは、
・ 第二の無極性の連続相II中に溶解された単数または複数の反応物質を添加し、且つ、それらが第一の極性の分散相Iの液滴中に拡散するか、または、単数または複数の反応物質が第二の無極性の連続相を形成する、または
・ 前記反応物質を、第二の無極性の連続相IIと混和性であるが第一の極性の分散相Iとは混和性ではないさらなる無極性相V中に溶解させて添加し、ここで単数または複数の反応物質が第一の極性の分散相Iの液滴中に拡散するか、または単数または複数の反応物質が無極性相Vを形成する、または
・ それらを第一の極性の分散相と混和性であるが第二の無極性の連続相IIとは混和性ではないさらなる極性相V中に添加する
ことによって提供される。
【0044】
例えば、第一の極性相Iは、この相中で可溶性の金属塩を含み、且つ、無極性の連続相II中で可溶性の析出試薬を、第一の相Iと第二の相IIとのエマルションに直接的に添加する。その後、析出試薬が極性の連続相から分散相中に拡散し、析出反応を引き起こす。
【0045】
上述の変法の例示的な実施態様においては、塩化バリウムの水溶液を極性相Iとして導入する。本発明による乳化剤を、無極性相IIとしてのn−デカン中に溶解し、且つ、2つの相を予備乳化させる。その予備エマルションが、2つの開孔板を用いた高圧ホモジナイズによって、圧力降下100〜1000barでホモジナイズされ、微細に分散したミニエマルションが生じる。その後、無極性相II中で可溶性の硫酸塩を、攪拌により、および/または添加により、乳化装置の乳化ゾーンに添加する。該硫酸塩が連続相から分散相の液滴中に拡散し、その際、硫酸バリウムのナノ粒子が析出する。
【0046】
さらなる例示的な実施態様においては、例えば亜鉛酸化物および鉄酸化物の前駆体塩を、初めに極性相Iに導入してよい。本発明による乳化剤を含む無極性相IIと混合し、且つ高圧ホモジナイズによってエマルションを生成した後、無極性相II中で可溶性のアミン、例えばトリエチルアミンをさらなる反応物質として添加し、且つ混入する。該アミンが極性相Iの液滴中に拡散し、従って亜鉛酸化物のナノ粒子および鉄酸化物のナノ粒子が析出する。従って、一般には、異なる速度で析出する金属酸化物前駆体を使用する場合、より早く析出する金属酸化物のコアがよりゆっくりと析出する金属酸化物の粒子またはシェルによって取り囲まれた、機能性粒子を生成させることが可能である。金属酸化物がほぼ同じ速度で析出する場合は、混合酸化物粒子または互いに並んで存在する粒子構造物が生成される。
【0047】
反応物質は、有機溶剤または水性溶剤中で可溶性の還元剤であってもよい。それらの例は、NaBH4、LiAlH4または有機の還元剤、例えばテトラリンまたはアルコールである。
【0048】
反応物質は、気体の還元剤、例えば水素であってもよい。
【0049】
極性の分散相は、例えば、水の除去によるpH低下の結果として凝固して二酸化ケイ素ナノ粒子を生じる水ガラス溶液であってよい。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、以下の工程:
(i) 極性の分散相が無極性の連続相中にあるエマルション(サスポエマルション)を、該エマルションを安定化する乳化剤の存在下で調製する工程、ここで、極性相は、懸濁された形態でナノ粒子を含み、該極性相および/または無極性相は1つまたはそれより多くの機能化試薬を溶解された形態で含む、
(ii) ナノ粒子と機能化試薬とを極性の分散相中で反応させる工程、
(iii) エマルションを破壊し且つ相分離する工程、ここで、少なくとも1つのナノ粒子懸濁液が少なくとも1つの相として得られる、
(iv) ナノ粒子懸濁液を分離する工程、
(v) 随意に、機能化されたナノ粒子を単離する工程
を有する、ナノ粒子を機能化するための方法であって、乳化剤が一般式(I)
【化3】
[式中、
Xは、O、NHである、
Yは、C(O)、NHである、
Rは、飽和、または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、6〜30個の炭素原子を有する炭化水素基である、
1は、水素またはC1〜C4−アルキルである、且つ
2は、飽和、または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖または分枝鎖の、1〜30個の炭素原子、好ましくは6〜30個の炭素原子を有する炭化水素基である、
3は、C1〜C4−アルキルである、且つ、
nは、0または1である]
の化合物から選択され、エマルションの破壊が乳化剤を分断することによって行われる、前記方法に関する。
【0051】
第一の極性の分散相Iの液滴は、ナノ粒子と、1つまたはそれより多くの分子状に分散し溶解された機能化試薬との両方を含むことができる。該機能化試薬は、連続相中に溶解された形態で存在し、且つ、拡散によって分散相の液滴に移行できる。ここで、水性の分散相の液滴は、ミニ反応物質として作用する。ここで、ナノ粒子の出発懸濁液の所定の多分散性が本質的に保持されることも確実になる。
【0052】
これについての出発点は、第二の無極性の連続相II中に第一の極性の分散相Iがあるサスポエマルションであって、第一の極性の分散相I中に、機能化されるべきナノ粒子と1つまたはそれより多くの分散し溶解された機能化試薬とを含む前記サスポエマルションであってよい。
【0053】
ナノ粒子の機能化のさらなる例は、ナノ粒子の周りの閉じていないシェルの生成、またはナノ粒子上の点状の構造物の生成であり、そのことは、試薬の性質によって、例えば機能性粒子上の表面上で直接的に起きる反応によって、または工程の手順によって達成され得る。
【0054】
1つの実施態様において、上記のサスポエマルションは追加的に1つの反応物質を含む。
【0055】
ナノ粒子の機能化の一例は、コアが第一の金属酸化物からなり、且つシェルが第二の金属酸化物からなるコアシェル粒子の製造である。
【0056】
このために、第一の極性の分散相Iが第二の無極性の連続相II中にあるサスポエマルションであって、第一の極性の分散相I中に、機能化されるべきナノ粒子として、コアシェル粒子のコアと、1つまたはそれより多くの分子状に分散し溶解された機能化試薬として、シェルを形成する前駆体物質とを含む前記サスポエマルションから出発することが可能である。
【0057】
適した反応物質Rは、上述の塩基性析出剤であり、前記は有機溶剤中で可溶性の析出剤(アミン)または水性溶剤中で可溶性の塩基(アルカリ金属水酸化物)であってよい。
【0058】
上述のサスポエマルションを、第一の実施態様において、
・ 第一の極性相I中のナノ粒子懸濁液から出発し、
・ これに機能化試薬を添加し、且つ、それを溶解して分子状に分散した溶液をもたらし、その後、
・ 第二の無極性相IIを添加し、且つ、エネルギーを導入して第一の極性相Iと共に乳化する
ことによって製造できる。
【0059】
さらなる実施態様において、上記のサスポエマルションは、
・ ナノ粒子が分散相としての第一の極性相I中にあり、前記第一の極性相Iが連続相としての第二の無極性相中にある、サスポエマルションから出発し、
・ 第三の極性相III中に機能化試薬を導入し、前記第三の極性相IIIは、第一の極性相Iと混和性であるがしかし第二の無極性相IIとは混和性ではなく、
・ 機能化試薬を含む第三の極性相IIIから第四の無極性相IVと共に、エネルギーの導入によりエマルションを形成し、前記第四の無極性相IVは、第二の無極性相IIと混和性であるが第一および第三の極性相IまたはIIIとは混和性ではなく、且つ、
・ 第一の極性相の液滴と第三の極性相IIIの液滴とを、エネルギーの導入により融合させる
ことによって製造される。
【0060】
従って、この実施態様において、第一のサスポエマルション(分散相の液滴中に機能化されるべきナノ粒子を含む)の分散相は、第二のエマルション(分散相の液滴中に機能化試薬を含む)の分散相と融合させられる。
【0061】
上述の変法の1つの例示的な実施態様において、二酸化チタン粒子を、極性の分散相Iと無極性の連続層IIとを含むミニサスポエマルションに初めに導入する。二酸化チタン粒子を、上記で指定した方法の1つに従って、二酸化チタン前駆体から製造することもできる。第三の極性相IIIとしての水中の硝酸パラジウム溶液を、第四の無極性相IVとしてのn−デカンと、本発明による乳化剤との混合物を用いて乳化し、この乳化剤をサスポミニエマルションと混合し、且つ、該混合物を水素と共に供給する。2つのエマルションの分散相の液滴が融合した結果、硝酸パラジウムがナノ粒子を有する液滴に移行する。パラジウム塩の還元により、金属パラジウムが形成され、該金属パラジウムが二酸化チタンナノ粒子上に微細に分布して沈降する。
【0062】
さらなる実施態様において、ナノ粒子および分子状に分散し溶解された機能化試薬に加えて、分散相の液滴中に反応物質Rを含む上記のサスポエマルションが使用可能になる。このために、
・ 出発点は、ナノ粒子および1つまたはそれより多くの分子状に分散し溶解された機能化試薬が分散相としての第一の極性層中にあり、前記第一の極性層が連続相としての第二の無極性層II中にあるサスポエマルションであり、
・ 反応物質Rを、第二の無極性の連続相IIに添加し、且つ第一の極性の分散相Iの液滴中に拡散させるか、または、
・ 該反応物質Rを、第一の極性の分散相Iと混和性であるが第二の無極性の連続相IIとは混和性ではない、さらなる極性相Vに添加し、ここで、
・ 反応物質Rを含むさらなる極性相Vから、追加的な無極性相IVと共に、エネルギーの導入によってエマルションを形成し、且つ、その液滴自体が、
・ ナノ粒子およびさらに機能化試薬を含む第一の極性の分散相Iの液滴と融合させられる。
【0063】
特定の実施態様において、例えば、亜鉛酸化物粒子を、硝酸パラジウムの存在中でナノ粒子を製造するための上述の方法の1つによって調製できる。選択的に、例えば市販の亜鉛酸化物粒子を硝酸パラジウム溶液中に分散させることができる。その際、上述のとおり、ミニエマルションが調製され、且つ、水素または他の還元剤と共に供給される。還元剤は、連続相を介して液滴中に拡散する。硝酸パラジウムの還元によって、パラジウムで機能化された亜鉛酸化物粒子が形成される。
【0064】
さらなる実施態様において、ナノ粒子に加えて1つまたはそれより多くの分子状に分散し溶解された機能化試薬を含む上記のサスポエマルションは、ナノ粒子と反応物質とを含むサスポエマルションの液滴と、分散相の液滴中に単数または複数の機能化試薬を含むさらなるエマルションの液滴とを融合させることによって製造される。
【0065】
第一の極性の分散相I中のナノ粒子と、連続相としての第二の無極性相IIとを含むサスポエマルションの調製物を、第一の実施態様においては、
・ 第一の極性の分散相I中にナノ粒子のための前駆体物質を含み、第二の無極性相IIが連続相であるミニエマルションから出発し、且つ、そこから、ナノ粒子の形成物を有する前駆体物質の物理的または化学的な変換によって、ナノ粒子を含む第一の極性の分散相Iが連続相としての第二の無極性相中にあるミニエマルションを形成すること
によって製造できる。
【0066】
さらなる実施態様においては、このために、
・ 第一の極性の分散相I中にナノ粒子のための前駆体物質を含み、第二の無極性層IIが連続相であるミニエマルションが出発点であり、
・ この後、反応物質が、第二の無極性の連続相IIに添加され、そして第一の極性相Iの液滴中に拡散するか、または、
・ 該反応物質が、第一の極性相Iと混和性であるが第二の無極性相IIとは不混和性である第三の極性相IIIに添加され、そこで、
・ 第二の無極性相IIと混和性であるが第一および第三の極性相IおよびIIIとは混和性ではない第四の無極性相IVを用いて、反応物質を含む第三の極性相IIIから、エネルギーの導入によってエマルションが形成され、且つ、ナノ粒子のための前駆体物質を含む第一の極性の分散相Iの液滴と融合させられ、その後、
・ ナノ粒子のための前駆体物質が反応物質Rと化学的に反応する。
【0067】
エマルションの破壊は乳化剤を分断することによって行われる。乳化剤の分断を、塩基をエマルションに添加すること、エマルションを加熱すること、またはエマルションをUV光で照射することによって起こすことができる。分断の結果、乳化剤分子はその両親媒特性を失う。分断は、例えば、エステル基またはアミド基(それを介して疎水性炭化水素基がオキサレート基、オキサルアミド基、カルバメート基、またはマロネート基に結合している)のところで生じ得る。
【0068】
本発明の1つの実施態様において、乳化剤は一般式(Ia)のシュウ酸エステルであり、且つ、乳化剤の分断は、塩基をエマルションに添加することによってもたらされる。適した塩基は、無機の塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムであって、それらは、例えば濃度0.1〜2モルの水溶液として添加されてよい。ここで、穏やかな攪拌による混合で充分であり得る。分離は、数分以内に起こり、且つ、2つの明らかに分離した相の形成をみちびく。
【0069】
一般に、極性相がナノ粒子を含む。しかしながら、両方の相がナノ粒子を含むことも可能である。
【0070】
本発明のさらなる実施態様において、乳化剤の分断は、エマルションの加熱によってもたらされる。一般に、ここでエマルションは50〜200℃、好ましくは80〜120℃の温度に加熱される。
【0071】
本発明のさらなる実施態様において、乳化剤の分断は、エマルションをUV光で照射することによってもたらされる。
【0072】
極性相と無極性相とへの相分離は、破壊されたエマルションを単においておくことによって起こすことができる。
【0073】
水が極性の分散相として使用される場合、ナノ粒子を含む水相が、一般には下の方の相として得られ、且つ、本質的にナノ粒子を含まない無極性の相が、上の方の相として得られる。
【0074】
ナノ粒子懸濁液は、固体を、ナノ粒子懸濁液の総質量に対して、好ましくはフラクション中に共に0.01〜40質量%、特にフラクション中に5〜30質量%含む。
【0075】
粒径分布を、自体公知の方法において、例えば静的光散乱法、動的光散乱法、または分析用超遠心器を使用して測定できるが(例えば、W. Maechtle, Makromolekulare Chemie 185 (1984)、1025〜1039ページ参照)、電子顕微鏡写真を使用しても測定できる。
【0076】
ナノ粒子懸濁液を、例えば印刷工程において顔料として、または担体材料の触媒被覆のために使用できる。ナノ粒子を、懸濁液中の溶剤を蒸発することによって単離できる。しかしながら、粒子を、遠心分離、繰り返しの洗浄、および遠心分離および随意に次に残留溶剤を蒸発させることによっても単離できる。
【0077】
実施例
乳化剤の調製
1つの選択肢は、アルコールと酸塩化物とを反応させてエステルをもたらすことである。特に、ショッテン-バウマン法を挙げることができ、そこでは、アルコールまたはアミンと、塩化カルボニルとを、化学量論組成量のアルカリ金属水酸化物溶液の存在中で反応させて相応のエステルまたはアミドをもたらす。反応条件、精製については、当業者は難なく見出すことができる。過剰な塩化オキサリルによって、シュウ酸のジエステルの形成が打ち消される。
【0078】
【化4】
【0079】
3当量のみの塩化オキサリルを使用する場合、中程度の収率の63%のシュウ酸ドデシルが形成されることが判明し、これは二次的な反応においてシュウ酸のジエステルが形成されることに起因し得る。5当量および10当量の塩化オキサリルを用いた反応の結果、それぞれシュウ酸ドデシルの収率が85%および86%で、事実上、違いがないので、以降の反応には5当量が使用された。酸塩化物の過剰量の他に、出発材料を反応混合物に添加する順番も、所望の生成物の純度にとって決定的である。熱力学的により安定なシュウ酸ジエステルが二次反応の際に形成されるのを回避するために、ジエチルエーテル中に溶解されたアルコールを塩化オキサリルにゆっくりと滴下することによって、アルコールの量に比して非常に高い過剰量の塩化オキサリルが達成されるはずである。さらには、塩化オキサリルの反応性は、反応混合物を0℃に冷却することによって減少される。アンモニア水溶液を用いた油相の抽出は省略され、なぜなら、オキサレートは、親油性の炭化水素鎖のために、水相中に溶解しないからである。ドデカノールを使用して、合成のプロトコルを最適化した後、さらなる脂肪族アルコールを記載された反応条件下で反応させて、シュウ酸モノエステルをもたらした。
【0080】
より短い鎖(C−8〜C−10)を有するシュウ酸モノエステルは、室温で粘性のオイルであり、他の全てのオキサレートは白色の固体である。合成の間、アルコールの反応性は、炭素主鎖の鎖長の増加と共に減少することが判明した。この理由のために、短鎖アルコールが特に二次反応(例えば相応のシュウ酸ジエステルの形成)に関与した。さらには、合成されたオキサレートは、長期的な安定性を有さないことが示された。
【0081】
時間とともに、シュウ酸モノエステルは不均化を起こし、以下の式に従ってシュウ酸、および相応のシュウ酸ジエステルが生じる:
【化5】
【0082】
モノエステルの安定性は、炭素鎖の長さの増加に伴って向上する。12個までの炭素原子の炭素鎖長を有するモノエステルは、ここで、各々のジエステルの形成に対する特に高い傾向を示す。これとは対照的に、オクタデシルオキサレートは非常に安定であり、なぜなら、数ヶ月後でも、少量のビスオクタデシルオキサレートしか形成されないからである。
【0083】
全てのオキサレートが、良好ないしは非常に良好な収率で合成された。唯一の例外は、ノニルオキサレートであり、それは収率26%でしか得ることができなかった。この場合、ビスノニルオキサレートの形成が支配的であり、且つ、ノニルオキサレートのほぼ2倍のビスノニルオキサレートが形成された。12個の炭素原子の鎖長より上では、収率は、より短い鎖の場合よりもいくぶん高い。デシルオキサレートは例外であり、なぜなら、87%の収率で得ることができるからである。これは、長い炭素鎖を有するアルコールの反応性が比較的低いからであり、その結果、選択性が向上し且つ相応のジエステルの形成が抑制される。オクタデシルオキサレートの場合、収率は89%であり、それはヘキサデシルオキサレートについての収率よりも低く、そのことは、今までの考察によって説明できない。ここでのより低い収率についての理由は、オクタデシルオキサレートのジエチルエーテル中での溶解性が乏しいことであり、そのことはワークアップを非常に妨げる。概して、単離収率は、出発材料の反応性および生成物の安定性に依存した。さらには、個々の場合において、収率を、反応条件をわずかに変化させることおよび最適化することによって増加することができた。
【0084】
GPP1: オキサレートの合成のための一般的な調製手順
1.00当量のアルコールをジエチルエーテル中で溶解し(アルコール1mmolあたり8ml)、且つ、0℃に冷却された、5.00当量の塩化オキサリルにゆっくりと滴下した。反応混合物をまず室温に加熱し、その後、還流しながら終夜加熱した。溶剤および過剰な塩化オキサリルをその後、減圧下で除去した。生じるオイルをジエチルエーテル中に溶解し、且つ、水で洗浄した(6×3ml(アルコール1mmolあたり))。油相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、且つ、溶剤を減圧下で除去した。
【0085】
実施例1
オクチルオキサレートの調製
GPP1に従い、0.630mlのオクタノール(0.521g、4.00mmol)を、1.72mlの塩化オキサリル(2.54g、20.0mmol)と反応させた。0.724gのオクチルオキサレート(3.58mmol)が、黄色がかったオイルとして得られた。これは、分離できない不純物として、約15%のビスオクチルオキサレートを含有する。収率: 76%。
【0086】
実施例2
ドデシルオキサレートの調製
【化6】
【0087】
GPP1に従い、3.61gのドデカノール(19.4mmol)を、8.30mlの塩化オキサリル(12.3g、96.7mmol)と反応させた。4.38gのドデシルオキサレート(17.0mmol)が白色の固体として得られた。収率: 88%。
【0088】
【0089】
実施例3
テトラデシルN−ヒドロキシカルバメートの調製
【化7】
【0090】
9.73gのカルボニルジイミダゾール(26)(60.0mmol、3.00当量)を、500mlの丸底フラスコ内のTHF250ml中に溶解した。4.29gのテトラデカノール(6g)(20.0mmol、1.00当量)をこの溶液に添加し、そして該混合物を20時間、室温で攪拌した。その後、反応溶液を、それぞれ100mlの塩化アンモニウム溶液および塩化ナトリウム溶液を用いて洗浄した。油相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、且つ、溶剤を減圧下で除去した。中間生成物のテトラデシル1H−イミダゾール−1−カルボキシレート(31b)を、さらなる精製をせずに反応させた。
【0091】
このために、残留物を150mlのピリジン中に溶解させ、4.17gの塩酸ヒドロキシルアミン(60.0mmol、3.00当量)と混合し、且つ、6時間、室温で攪拌した。溶剤の大半をその後、減圧下で除去し、且つ、その残留物を250mlのジクロロメタン中に溶解させた。該溶液を、塩化アンモニウム溶液(3×80ml)、および塩化ナトリウム溶液(80ml)を用いて洗浄した。油相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、且つ、溶剤を減圧下で除去した。カラムクロマトグラフィーによる精製に続いて(Cy−Hex/EtOAc 3/1)、2.76g(10.1mmol)のテトラデシルN−ヒドロキシカルバメート(33b)が、白色の固体の形態で得られた。収率: 51%。− 融点64〜66℃。− Rf=(Cy−Hex/EtOAc 3/1)
【0092】
実施例4
エチルN−ヘキサデシルオキサメートの調製
【化8】
【0093】
アルゴン雰囲気下で、3.69mlのエチルオキサリルクロリド(4.51g、33.0mmol、1.10当量)を、7.24gのヘキサデシルアミン(30.0mmol、1.00当量)と4.57mlのトリエチルアミン(3.34g、33.0mmol、1.10当量)との、100mlの無水ジクロロメタン中の0℃の溶液に滴下した。該溶液を室温にし、そして3時間攪拌した。その後、該反応を水(25ml)を用いて停止させた。油相を1MのHCl(50ml)を用いて、NaHCO3溶液(50ml)を用いて、その後、水(50ml)を用いて洗浄した。その後、油相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、且つ、溶剤を減圧下で除去した。8.53g(25.0mmol)のエチルN−ヘキサデシルオキサメートが白色の固体として得られた。収率: 83%。− 融点 59〜60。− Rf=0.73 (Cy−Hex/EtOAc 1/1)
【0094】
実施例5
N−ヘキサデシルオキサメートの調製
【化9】
【0095】
150mlのTHF中の2.65gのエチルN−ヘキサデシルオキサメート(7.75mmol、1.00当量)の溶液を、150mlの水中の0.557gのLiOH(23.3mmol、3.00当量)の溶液と混合し、室温で終夜攪拌した。その後、該反応混合物を100mlのジエチルエーテルと混合し、且つ、1MのHClを用いて酸性化した。油相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、且つ、溶剤を減圧下で除去した。2.30g(7.34mmol)のN−ヘキサデシルオキサメートが、白色の固体の形態で得られた。収率: 95%。− 融点 103℃。
【0096】
【0097】
実施例6
テトラデシルマロネートの調製
【化10】
【0098】
3.43gのテトラデカノール(16.0mmol、1.00当量)および2.31gのメルドラム酸(16.0mmol、1.00当量)を、初期装入物として200mlの丸底フラスコ内に導入し、且つ、120℃で3時間攪拌した。室温に冷却した後、該固体を20mlの冷たいペンタンを用いて洗浄した。3.32g(11.1mmol)のテトラデシルマロネートが、白色の固体として得られた。収率: 69%。
【0099】
【0100】
亜鉛酸化物ナノ粒子の製造
使用された亜鉛酸化物前駆体は、硫酸亜鉛七水和物(Merck、Darmstadt)であり、使用された塩基性析出剤は油溶性塩基のトリエチルアミン(Merck Schuchardt OHG、Hohenbrunn)およびオレイルアミンoleylamine (Sigma−Aldrich、Steinheim)であった。硫酸亜鉛七水和物を、初期装入物として水中に導入した。水相の硫酸亜鉛濃度は、0.01〜0.1mol/l、好ましくは0.1mol/lであった。
【0101】
出発エマルションは、分散相としての20〜40w/w%、好ましくは40w/w%の硫酸亜鉛水溶液、2w/w%の乳化剤およびn−デカンからなった。
【0102】
狭い液滴サイズ分布および目標液滴サイズ<1μmを有するエマルションを製造するためには、高いエネルギー入力が必要とされ、前記エネルギーはローター・ステーター系を用いて導入され得るが、しかし好ましくは高圧を用いて導入する。高圧ホモジナイズの間、粗く分散したプレエマルションをまず所望のホモジナイズ圧力(20bar〜2000bar)で密にし、ホモジナイズノズルを通じて圧縮し、その後、放圧する。ここで言及できるホモジナイズノズルの例は、放射状のノズル、対流ノズル(例えばMicrofluidizer(登録商標))、および単純な開孔板である。この作業のために適切なノズル形状は、Microfluidizer(登録商標)からの対流ノズルである。まず、n−デカン、硫酸亜鉛水溶液および乳化剤からなる予備混合物を、2分間、400rpmで、プロペラ式攪拌機を使用して攪拌し、その後、Microfluidizer(登録商標)を用い、Δp200bar〜1000bar、好ましくは1000barの圧力でホモジナイズした。
【0103】
油溶性塩基(トリエチルアミンまたはオレイルアミン)を、攪拌しながら安定なエマルションに添加した。その後、該エマルションを70℃で1時間攪拌して、水酸化亜鉛の酸化亜鉛への変換を確実にする。
【0104】
比較例
市販の乳化剤を使用したエマルションの製造
エマルションの組成:
分散相: 40w/w%の0.05Mの硫酸亜鉛溶液
連続相: 58w/w%のn−デカン
乳化剤: 2w/w%のGlissopal(登録商標) EM−23。
【0105】
析出剤: オレイルアミン。
【0106】
まず、分散相、連続相および乳化剤を2分間、プロペラ式攪拌機を使用して攪拌することによってプレエマルションを調製した。生じるプレエマルションを、Microfluidizer(登録商標)を使用して、Δp=1000barでホモジナイズした。このエマルション30mlを、硫酸亜鉛に対して等モル量のオレイルアミンと、磁気攪拌機を使用して(200rpm)攪拌しながら混合し、そして2分間攪拌した。その後、該混合物をさらに60分間、70℃で攪拌した。生じるサスポエマルションをその後、(a)共沸蒸留によって、または(b)溶解促進剤を添加することによって、または(c)ろ過によって分離した。
【0107】
(a) 共沸蒸留による分離:
ここで、共沸蒸留は、分散相の水の除去をもたらし、且つ、連続相n−デカンの部分的な除去によってナノ懸濁液の濃縮ももたらす。水とn−デカンとの共沸混合物の沸点は、大気圧で97.2℃である。
【0108】
水相およびさらにn−デカン相のいくらかを、40℃且つ25mbarで回転蒸発器にて除去した。そのようにして、エマルションの水滴中に存在する亜鉛酸化物粒子をn−デカン相に移す。水相の除去は同様に、析出の間に残っている残留塩の晶出をもたらし、それがその後、懸濁塩基中に粒子として存在する。これはさらなる汚染をもたらす。懸濁液中に残っている乳化剤がナノ粒子を安定化し、且つ、目標としている分離が困難であることが判明している。エマルションを精製するためのこの方法は、油溶性の反応物質が非常に低い界面活性を有する場合にのみ使用できる。従って、該分離は、塩基性の析出剤としてトリエチルアミンを使用する場合にのみ実現され得る。非常に界面活性な試薬であるオレイルアミンを使用する場合、n−デカンでの後希釈にもかかわらず、水相の分離を実施することはできない。さらには、これは追加的に、非常にエネルギーを要し、且つコストがかかる方法である。
【0109】
(b) 溶解促進剤を添加することによる分離:
析出反応に続いて、試料を、エマルションの容積に対して1/3のイソプロパノールと混合し、エマルションを油相と水相とに分離させた。イソプロパノールと混合された試料を、30分間立てておき、2つの相の完全な分離を確実にする。エマルションを2つの出発相に分離させるためのこの方法の利点は、明らかな相分離を有する2つの液体が得られることである。残留塩は溶液中に残っている。しかしながら、欠点は、最終生成物の希釈である。さらには、n−デカン相と水相との両方の中でナノ粒子が確認された。従って、この方法はミニサスポエマルションを分離させるために限定的に適しているだけである。
【0110】
(c) ろ過による分離
水/n−デカンのエマルションをろ過によって分離する場合、該エマルションを、3〜5barの圧力で親水性のフィルターメンブレンを押し通す。親水性のメンブレンの場合、エマルションの水滴が広がり且つ融合する。液滴サイズ0.1μm〜10μmを有するニトロセルロース、ポリカーボネート、およびナイロン製の種々のフィルターメンブレンを使用した。種々の孔径を有する種々のメンブレンを、Glissopal(登録商標) EM−23、PGPRおよびER 190を用いて安定化させたエマルションを用いて試験し、その際、初めに、ナノ粒子を有さないエマルションを用いた実験のみ実施した。しかしながら、孔径0.2μm〜0.8μmのナイロンメンブレンを使用し、ER 190を用いて安定化されたエマルションについてのみ分離を行うことが可能であった。ナノ粒子を装填されたエマルションの分離が遙かにより困難であることが判明した。該メンブレンは、汚損の結果として、閉塞傾向が増加し、そのことにより粒子のないエマルションと比較して5倍、ろ過時間が増加する。達成されるべき体積流量の観点においては、この方法はミニ懸濁液を精製するための大規模化可能な(scalable)方法として適していない。
【0111】
実施例7
本発明による乳化剤を使用したエマルションの調製
エマルションの組成:
分散相: 40w/w% 0.05Mの硫酸亜鉛溶液;
連続相: 58w/w%のn−デカン
乳化剤: 2w/wのn−テトラデシルオキサレート半エステル。
【0112】
析出剤: トリエチルアミン。
【0113】
まず、分散相、連続相および乳化剤を2分間、プロペラ式攪拌機を使用して攪拌することによってプレエマルションを調製した。
【0114】
生じるプレエマルションを、Microfluidizer(登録商標)を使用して、Δp=1000barでホモジナイズした。液滴のザウター直径x3,2は350nmであった。
【0115】
このエマルション30mlを、磁気攪拌機(200rpm)を使用して攪拌しながらトリエチルアミンと混合し、そして2分間攪拌した。該混合物をさらに60分間、70℃で攪拌した。
【0116】
その後、1Mの水酸化ナトリウム溶液10mlを、生じるサスポエマルションに添加し、且つ、大ざっぱに混入した。約2分後、2つの明らかに分離した相が得られ、それらは単純なデカンテーションによって互いに分離された。
【0117】
この方法で、亜鉛酸化物粒子の水性懸濁液を調製することが可能であった。粒子のザウター直径は、動的光散乱法によって測定して36nmであった。
【0118】
実施例8
パラジウムナノ粒子の製造
第一の液相は、120gの水からなり、且つ攪拌により溶解された1mmol/lの硝酸パラジウムを含んだ。第二の連続相は、3.3質量パーセントのn−テトラデシルオキサレート半エステルを175gのn−デカン中で攪拌することにより調製された溶液からなった。2つの相を15分間、Ultra−Turraxを使用して予備乳化した。
【0119】
生じるプレエマルションを、Microfluidizer(登録商標)を使用して、Δp=1000barでホモジナイズした。液滴のザウター直径x3,2は400nmであった。
【0120】
ミニエマルションを、5barの水素と共に、3時間の間、攪拌しながら供給した。
【0121】
硝酸パラジウムを水素によってパラジウムへと還元した。その後、生じるサスポエマルションを、1モルの水酸化ナトリウム溶液100ml中に添加し且つ手短に攪拌することによって破壊した。数分以内に相分離が生じた。
【0122】
これから、パラジウム粒子の水性懸濁液が得られた。TEM写真によって測定された、パラジウム粒子の直径は4〜8nmであった。
【0123】
実施例9
機能化されたブラックベリー状構造の粒子の製造
懸濁液の組成:
第一の液体分散相を、0.75gの界面活性剤Quadrol L(登録商標)と、2.25gの塩化スズ(II)とを、100gの水中で攪拌することによって溶解させることにより調製した。その後、界面改質された二酸化ケイ素粒子0.75gを添加した。第二の液体連続相を、2質量%のn−テトラデシルオキサレート半エステルを200gのn−デカン中で攪拌しながら溶解させることにより調製した。第一の液体分散相および第二の液体連続相を、IKA(登録商標)−Werke GmbH & Co. KG (シュタウフェン、ドイツ)製のUltra−Turrax(登録商標)混合器具内で予備乳化した。この方法で調製された粗サスポエマルションを、真空を適用することによって脱気した。
【0124】
この粗サスポエマルションを、高圧ホモジナイザ内で、530nmのザウター直径x3,2を有する液滴サイズ分布になるように乳化した。その後、この微細エマルションを、真空の適用によって脱気した。
【0125】
ピリジンを添加し、且つ90℃に加熱することによって析出が開始された。その温度をさらに5時間、攪拌しながら保持した。
【0126】
その後、生じるサスポエマルションを、1Mの水酸化ナトリウム溶液100ml中に添加し且つ手短に攪拌することによって破壊した。数分以内に相分離が生じた。
【0127】
この方法で、ブラックベリー状構造の粒子の懸濁液を調製することが可能であった。二酸化亜鉛が5nmの粒子として二酸化ケイ素コア粒子の表面上に沈降した。このように得られたサブミクロンのコア/シェル粒子のミニサスポエマルションから液体を分離し、高角度散乱暗視野法の走査透過型電子顕微鏡法記録(HAADF−STEM記録)を可能にした。
【0128】
実施例10
融合制御法によるナノ粒子の製造
第一の液体分散相を6.5gの塩化バリウムを190gの水中で攪拌しながら溶解させることによって製造した。第二の液体連続相を、2質量%のn−テトラデシルオキサレート半エステルを400gのn−デカン中で攪拌しながら溶解させることによって製造した。第一の液体分散相および第二の液体連続相を、IKA(登録商標)−Werke GmbH & Co. KG(シュタウフェン、ドイツ)製のUltra−Turrax(登録商標)混合器具内で予備乳化し、歯車分散機を使用して毎分15000回転の回転速度で微細に分散させた。
【0129】
第三の液体分散相を4.4gの硫酸ナトリウムを190gの水中で攪拌しながら溶解させることによって製造した。第四の液体連続相を、2質量%のn−テトラデシルオキサレート半エステルを400gのn−デカン中で攪拌しながら溶解させることによって製造した。第三の液体分散相および第四の液体連続相を、IKA(登録商標)−Werke GmbH & Co. KG(シュタウフェン、ドイツ)製のUltra−Turrax(登録商標)混合器具内で予備乳化し、歯車分散機を使用して毎分15000回転の回転速度で微細に分散させた。
【0130】
2つのミニエマルションを混合した。歯車分散機を使用して、液滴を融合させて硫酸バリウムの析出を開始させた。
【0131】
その後、生じるサスポエマルションを、1Mの水酸化ナトリウム溶液100ml中に添加し且つ手短に攪拌することによって破壊した。数分以内に相分離が生じた。
【0132】
このように、硫酸バリウム粒子の水性懸濁液を調製することが可能であった。電子顕微鏡を使用して粒径を測定し、それは5〜40nmの範囲の粒径であった。