(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
横置きの円筒または角筒の形状の反応器(1)であって、炭化水素含有のガス流(2)と酸素を含んでいるガス流(3)との自熱式の気相脱水素化を、反応混合ガスの取得下に、モノリス(4)として形成されている不均一系触媒で実施するための前記反応器において、
・該反応器(1)の内部空間が、取り外し可能に、該反応器(1)の長手方向に配置された円筒または角筒の、気密のケーシングGにより、
・1つ以上の触媒活性域(5)を有し、該域内に上下、並行および前後に積み重ねられたモノリス(4)からのパッケージそれぞれ1つと、それぞれ触媒活性域(5)の前に、固定された内部構造体を有するそれぞれ1つの混合域(6)とが設けられている内部領域Aと、
・該内部領域Aと同軸に配置された外部領域Bとに分割されていて、
・前記反応器の一端に、前記ケーシングGに接続して熱交換器(12)が設けられており、
・1つ以上の、前記脱水素化される炭化水素含有のガス流(2)のための供給導管(7)を有していて、
・前記混合域(6)の各域に酸素を含んでいるガス流(3)を供給するための、1つ以上の互いに独立して調節可能な供給導管(9)を有し、それぞれの供給導管(9)は、1つ以上の分配チャンバー(10)に供給しており、ならびに
・前記自熱式の気相脱水素化の反応混合ガスのための排出導管(11)を有している、
前記反応器において、
・前記外部領域Bは、前記自熱式の気相脱水素化の反応条件下に不活性のガスが供給されていること、および、
・前記脱水素化される炭化水素含有のガス流(2)が、供給導管(7)を介して前記熱交換器(12)に導通され、該熱交換器(12)内で反応混合ガスによって向流で間接的熱交換により加熱され、そしてさらに前記反応器の熱交換器(12)とは反対の一端に通され、該端部で変向され、気流整流装置(8)を介して内部領域Aに導通され、そして混合域(6)において酸素を含んでいるガス流(3)と混合されて、前記反応器(1)の内部領域Aにて前記自熱式の気相脱水素化が行われること、および前記内部領域Aにおいて、2つ以上の触媒活性域(5)に、上下、並行および前後に積み重ねられたモノリス(4)からのパッケージがそれぞれ1つ設けられていること
を特徴とする前記反応器。
前記熱交換器(12)に加えて、1つ以上の、前記脱水素化される炭化水素含有ガス流(2)のための補助ヒーターが設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の反応器(1)。
前記炭化水素含有ガス流(2)のための補助ヒーターとして、前記脱水素化される炭化水素含有ガス流(2)のための供給導管(7)への導管(23)を介する水素の供給部が、それぞれ触媒活性域(5)の前に配置されている前記混合域(6)への流入部のできる限り近くに設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の反応器(1)。
同じ触媒活性域(5)内の複数のモノリス(4)が、それぞれ異なる触媒活性で形成されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器(1)。
前記並行、上下および前後に積み重ねられてパッケージにされたモノリス(4)が、膨張マットまたは鉱物繊維不織布に包まれていて、かつ把持装置を有するハウジングに組み込まれていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の反応器(1)。
前記ケーシングGが、角筒として形成されていること、およびパッケージ一式またはパッケージの個々のモノリス(4)を触媒活性域(5)から交換できるように、角筒として形成されたケーシングGの側壁が、個別に取り外せるように形成されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の反応器(1)。
それぞれの混合域(6)が、それぞれ1つの管型分配器と多数の互いに均等に間隔を空けた混合ボディ(16)とを含んでいて、該管型分配器が、多数の互いに平行に、前記反応器(1)の長手方向に垂直の平面に配置された差込管(14)から形成され、該差込管が、1つ以上の分配チャンバー(10)と接合されていて、および該差込管(14)からの酸素を含んでいるガス流(3)のための、多数の互いに均等に間隔を空けている排出開口部(15)を有していることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の反応器(1)。
前記再生化が、酸素含有ガス流の総質量に対して、酸素0.1〜1.5質量%を含んでいる酸素含有ガス流によって実施されることを特徴とする、請求項18また19に記載の方法。
前記自熱式の気相脱水素化が、プロパンの脱水素化、ブタンの脱水素化、イソブタンの脱水素化、ブテンからブタジエンへの脱水素化、またはエチルベンゼンからスチレンへの脱水素化であることを特徴とする、請求項15から20までのいずれか1項に記載の方法。
前記自熱式の気相脱水素化が、ブタンの脱水素化であること、および2つの反応器(1)が使用され、1つの反応器(1)が前記自熱式の気相脱水素化に利用され、かつ同時に別の反応器(1)が再生されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自熱式の気相脱水素化を、モノリスとして形成されている不均一系触媒の使用下に実施するための反応器、ならびにこの反応器の使用下での方法に関する。
【0002】
セラミックモノリスまたは金属モノリスは、貴金属触媒のための触媒担体として移動式および固定式の排気浄化において確立している。通路は、流れにわずかな流れ抵抗を与えると同時に、ガス状の反応媒質のために、外側の触媒表面に均等な接近性を提供する。これは、無数の変向により、粒子の回りの流れにおいて大きな圧力損失が生じ、触媒表面が、場合により均等に利用されない不規則に積まれた床と比べて有利である。モノリスの使用は、一般に、高い体積流量および高温での断熱的反応操作を有する触媒プロセスに関心がもたれている。これらの特徴は、化学的な製造技術において、特に、400℃〜700℃までの温度範囲で進行する脱水素化反応に当てはまる。
【0003】
触媒技術における進歩は、例えばUS7,034,195に記載の通り、炭化水素の存在下で、脱水素化対象水素の選択的な燃焼を可能にする。このような運転方式は、自熱式の脱水素化と呼ばれ、脱水素化反応器を直接加熱することができるため、反応混合物を間接的に予備乾燥および中間加熱するための費用のかかる装置を省くことができる。このような方法は、例えばUS2008/0119673に記載されている。しかし、前記方法は、脱水素化が、ペレット形状の不均一系触媒で実施されるという重大な欠点がある:ペレット床の高い流れ抵抗には、触媒活性層での圧力低下を制限するために、大きい反応器横断面および相応の低い貫流速度が必要である。この欠点は、酸素を計量供給および分配するための非常に費用のかかる装置により調整されるが、これは自熱式の脱水素化の利点を損ねるものである。
【0004】
先行公開されていない欧州特許出願EP(08/1021EPに相応)から、モノリスとして形成された不均一系触媒の使用下での、炭化水素の自熱式の気相脱水素化のための反応器ならびに方法が公知であり、この方法は、高い反応温度(多くの場合、約400〜700℃の範囲)での可燃性の反応媒質の制御、ならびにモノリスの容易な接近性および操作性を、特に前記反応器の装着ならびに触媒交換の場合に保証するものである。
【0005】
前記EP(08/1021EPに相応)は、炭化水素含有ガス流と酸素を含んでいるガス流との自熱式の気相脱水素化を、反応混合ガスの取得下に、モノリスとして形成されている不均一系触媒で実施するための、横置きの円筒状の反応器を提供しており、
・前記反応器の内部空間は、取り外し可能に、前記反応器の長手方向に配置された円筒または角筒の、周方向に気密の、前記反応器の両端部で開放しているケーシングGにより、
・1つ以上の触媒活性域を有し、この域内に上下、並行および前後に積み重ねられたモノリスからのパッケージ(Packung)それぞれ1つと、それぞれ触媒活性域の前に、固定された内部構造体を有するそれぞれ1つの混合域とが設けられている内部領域Aと、
・内部領域Aと同軸に配置された外部領域Bとに分割されていて、
・1つ以上の、脱水素化される炭化水素含有ガス流を外部領域Bに供給するための、前記脱水素化される炭化水素流を前記反応器の一端で変向するための、および気流整流装置を介して内部領域Aに供給するための供給導管を有していて、
・前記混合域の各域へ酸素を含んでいるガス流を供給するための、1つ以上の互いに独立して調節可能な供給導管を有していて、ここでそれぞれの供給導管は1つ以上の分配チャンバーに供給しており、ならびに
・前記脱水素化される炭化水素流のための供給導管と同じく、前記反応器の一端での前記自熱式の気相脱水素化の反応混合物のための1つの排出導管を有している。
【0006】
前記自熱式の気相脱水素化の反応混合ガスのための排出導管が配置されている前記反応器の一端には、有利には管束熱交換器が設けられていて、この交換器は、反応混合ガスを自熱式の気相脱水素化のために通す管の束を有し、ならびに自熱式の気相脱水素化の反応混合ガスに対して向流に、脱水素化される炭化水素含有ガス流を通す管の間に間隙を有するものである。
【0007】
しかし、上述の反応器は、安全技術的観点から欠点を有している、なぜなら酸素を運ぶ導管が、炭化水素含有流が循環している空間を通るからである。したがって、管の亀裂による漏出の場合、発火/爆発に至ることがある。さらに、反応器ジャケットから突き出た管束熱交換器を使用する実施態様では、この反応器ジャケットのシーリングは、不十分にしか達成されていない。
【0008】
したがって、本発明の課題は、上述の欠点を克服する、改良された反応器を提供することであった。
【0009】
前記課題は、炭化水素含有ガス流と酸素を含んでいるガス流との自熱式の気相脱水素化を、反応混合ガスの取得下に、モノリスとして形成されている不均一系触媒で実施するための、横置きの円筒または角筒の形状の反応器であって、
・前記反応器の内部空間は、取り外し可能に、前記反応器の長手方向に配置された円筒または角筒の、気密のケーシングGにより、
・1つ以上の触媒活性域を有し、この域内に上下、並行および前後に積み重ねられたモノリスからのパッケージそれぞれ1つと、それぞれ触媒活性域の前に、固定された内部構造体を有するそれぞれ1つの混合域とが設けられている内部領域Aと、
・内部領域Aと同軸に配置された外部領域Bとに分割されていて、
・前記反応器の一端に、前記ケーシングGに接続して熱交換器が設けられており、
・1つ以上の、脱水素化される炭化水素含有ガス流のための供給導管を有していて、
・前記混合域の各域に酸素を含んでいるガス流を供給するための、1つ以上の互いに独立して調節可能な供給導管を有し、それぞれの供給導管が、1つ以上の分配チャンバーに供給しており、ならびに
・前記自熱式の気相脱水素化の反応混合ガスのための排出導管を有している、
前記反応器において、外部領域Bは、自熱式の気相脱水素化の反応条件下に不活性のガスが供給されていること、および脱水素化される炭化水素含有ガス流が、供給導管を介して前記熱交換器に導通され、反応混合ガスによって向流で間接的熱交換により加熱され、さらに前記反応器の熱交換器とは反対の一端に通され、そこで変向され、気流整流装置を介して内部領域Aに導通され、そして混合域において酸素を含んでいるガス流と混合されて、前記反応器の内部領域Aで前記自熱式の気相脱水素化が行われることを特徴とする前記反応器によって解決される。
【0010】
したがって、本発明によれば、反応器ジャケット、つまり、炭化水素含有流にも酸素含有流にも媒質に接触しない圧力を保持する覆いを有する反応器が提案される。
【0011】
前記反応器の長手方向には、円筒または角筒のケーシングGが配置されていて、このケーシングは、前記反応器の内部空間を、内部領域Aと、この内部領域と同心に配置された外部領域Bとに分割するものである。
【0012】
外部領域Bは、前記自熱式の気相脱水素化の反応条件下に不活性のガスが供給されている、つまり、前記自熱式の気相脱水素化の反応に直接関与しておらず、特に水、二酸化炭素、窒素および希ガスまたはそれらの混合物から選択されるガスまたは混合ガスが供給されている。前記自熱式の気相脱水素化の反応条件下に不活性のガスとして水蒸気が使用されるのが好ましい、それというのは、この水蒸気が、容易な方法で凝縮により反応混合ガスから再び分離できるからである。
【0013】
前記自熱式の気相脱水素化の反応条件下に不活性のガスは、パージガス流として、炭化水素含有ガス流の質量流量と比べてわずかな質量流量、つまり、炭化水素含有ガス流の質量流量に対して1/5〜1/100の質量流量、好ましくは1/10〜1/50の質量流量で、内部領域A内の圧力に対して2〜50mbar、好ましくは25〜30mbarのわずかな超過圧力下に、前記外部領域を通される。
【0014】
前記パージガス流は、前記反応器の一端にて1つ以上の供給導管を介してこの反応器の外部領域Bに導通され、および前記反応器の反対の一端にて前記反応器の内部領域Aに、好ましくは1つもしくは複数の、脱水素化される炭化水素含有ガス流に対して有利には90°と異なる角度で供給導管に配置された、1つもしくは複数の接続導管を介して前記反応器の内部領域Aにさらに通されることによって、有利には外部領域Bに通すことができる。
【0015】
前記1つもしくは複数の、パージガス流を外部領域Bから内部領域Aに通す接続導管は、例えば、この接続導管のらせん状の形状により還流なしに形成されているのが好ましい。前記パージガス流のための外部領域Bから接続導管への引き込み部(Einlass)は、前記反応器の外部領域Bにおいて可能な限り高い位置に配置されているのが好ましい。
【0016】
前記パージガス流は、持続的に前記反応器の外部領域Bを洗浄し、この領域に前記反応混合ガスの成分がないようにする。
【0017】
ケーシングGの一端には、熱交換器が接続されていて、この熱交換器は、特に管束熱交換器またはプレート熱交換器であってよい。管束熱交換器の場合、この熱交換器とケーシングGとの接続は、内部領域Aが前記管束熱交換器の管の内部空間と連通するように形成されている。プレート熱交換器の場合、前記反応器の内部領域Aは、このプレート熱交換器のプレートのすき間に連通している。
【0018】
前記管束熱交換器の管の間の間隙、もしくは前記プレート熱交換器の、1つの熱交換プレートに溶接によってつなぎ合わされたそれぞれ2つの金属板の間の間隙は、前記反応器の熱交換器とは反対の一端に通じ、そこで変向している導管を介して、ケーシングGの熱交換器と反対の一端、およびそれにしたがい外部領域Bに気密に前記反応器の内部領域と接合している。
【0019】
炭化水素含有流は、前記管束熱交換器の管の間の間隙を通されるか、もしくはプレート熱交換器の場合、それぞれ1つの熱交換プレートを形成している金属板の間の間隙を通され、向流で前記管もしくはプレート熱交換器のプレートのすき間を循環する生成物ガス流によって加熱され、前記反応器の反対の一端に通され、そこで変向され、そして前記ケーシングの内部領域Aに導通される。
【0020】
前記自熱式の気相脱水素化は、モノリスの形状で存在する不均一系触媒で行われる。
【0021】
モノリスとは、本発明では、約0.5〜4mmの範囲の小さい横断面を有する、多数の互いに平行に配置された貫通した通路を備える、1体の平行六面体のブロックと解釈される。
【0022】
前記モノリスは、好ましくは担体材料としてセラミック材料から作られていて、この担体材料に触媒活性層が、好ましくはいわゆるウォッシュコート法により塗布されている。
【0023】
モノリス構造に最も慣用の材料は、コーディエライト(2:5:2の比率の酸化マグネシウム、酸化ケイ素および酸化アルミニウムからなるセラミック材料)である。別の材料であって、そのモノリス構造が市販されているのは、金属、ムライト(2:3の比率の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの酸化混合物)および炭化ケイ素である。これらの材料は、コーディエライトと同じように低いBET比表面積(BET=Brunauer、EmmetおよびTeller)(例えば、コーディエライトの場合、典型的に0.7m
2/g)を有している。
【0024】
モノリスのセラミック部材は、25〜1600cpsiのセル密度(平方インチあたりのセル数、セルサイズ5〜0.6mmに相応)を有するものが入手可能である。比較的高いセル密度を使用することにより幾何学的表面積が増加するため、触媒をより効果的に使用することができる。比較的高いセル密度の欠点は、製造法が多少比較的困難であること、ウォッシュコートコーティングが比較的難しいこと、および前記反応器にわたり圧力損失が比較的高いことである。しかし、圧力損失は、高いセル密度を有するモノリスの場合、不規則充填物反応器と比べて非常に少なく(一般に10分の1少ない)、これは一直線のモノリス通路によるものと考えられる。
【0025】
モノリスのセラミック部材を製造するために、タルク、粘土(Ton)および酸化アルミニウム供給成分ならびに酸化ケイ素の混合物を製造することができ、この混合物を混合して成形材料を形成し、成形し、原材料を乾燥し、そして1200〜1500℃の温度にて加熱して、主にコーディエライトを含み、低い熱膨張率を有しているセラミックが得られる。一般的に言えば、相応のレオロジー特性および相応のレオロジー組成物を有するペーストを押し出してモノリス担体にすることができる。前記ペーストは、一般に好適な粒径のセラミック粉末、無機添加剤および/または有機添加剤、溶剤(水)、pH値を調整するための解膠剤(酸)、および持続性の結合剤(コロイド溶液またはゾル)の混合物からなる。前記添加剤は、可塑剤または前記ペーストの粘度を調整するための界面活性剤、または後々に燃焼させることができる一時的な結合剤であってよい。場合により、前記モノリスの機械的強度を高めるためにガラス繊維または炭素繊維を添加する。前記持続性の結合剤は、モノリスの内的な強度を改善するのが望ましい。
【0026】
コーディエライトモノリスは、タルク、カオリン、か焼カオリンおよび酸化アルミニウムからなり、一緒にSiO
2 45〜55質量%、Al
2O
3 32〜40質量%、およびMgO 12〜15質量%からの化学化合物を提供するバッチから製造することができる。タルクは、主にマグネシウムシリケート水和物Mg
3Si
4O
10(OH)
2からなる材料である。タルクは、産地および純度に応じて、別の鉱物、例えばトレモライト(CaMg
3(SiO
3)
4)、サーペンティン(3MgO2SiO
2、2H
2O)、アントフィライト(Mg
7(OH)
2(Si
4O
11)
2)、マグネサイト(MgCO
3)、雲母およびクロライトと共存していてもよい。
【0027】
押出により、モノリスは、別の材料、例えばSiC、B
4C、Si
3N
4、BN、AIN、Al
2O
3、ZrO
2、ムライト、チタン酸アルミニウム、ZrB
2、サイアロン、ペロフスカイト、炭素およびTiO
2から製造することもできる。
【0028】
前記モノリス生成物の特性に関して、押出の場合、ノズルの品質、成形可能な混合物の製造のために使用される材料の種類および特性の他に、添加される添加剤、pH値、含水量および押出で使用される力も重要である。押出で使用される添加剤は、例えば、セルロース、CaCl
2、エチレングリコール、ジエチレングリコール、アルコール、ワックス、パラフィン、酸および耐熱性無機繊維である。水の他に、別な溶剤、例えばケトン、アルコールおよびエーテルを使用してもよい。添加剤の添加は、前記モノリスの改良されるべき特性、例えば、耐温度変化性を改善する微少クラックの形成、より優れた多孔性およびより優れた吸収能力、および高められた機械的強度またはより少ない熱膨張性をもたらす。
【0029】
裸のモノリス構造は、1つ以上のセラミック酸化物を含んでいる触媒担体層でコーティングされているか、またはすでにセラミックの酸化物担体材料に担持されて、触媒作用のある金属および任意のさらなる(プロモータ)要素を含んでいる触媒層でコーティングされていて、このコーティングはウォッシュコートコーティング法により製造される。
【0030】
セラミックスモノリスのマクロ多孔性構造は、ウォッシュコート層の定着を容易にする。ウォッシュコートコーティングの方法は、2つの方法に分けることができる:マクロ多孔性の担体(部分的)に、大きい表面積を有しているウォッシュコート材料を充填するか、またはウォッシュコートを層としてセラミック担体の孔内に析出することができる。孔充填は、モノリスとウォッシュコートとの最も強い相互作用をもたらす、それというのは、ウォッシュコート層の大部分が、事実上前記担体の孔内に固着していて、モノリス通路の外側表面だけで接合しているわけではないからである。このコーティング方法は、析出する材料の溶液(もしくはゾル)または非常に小さいコロイド状の粒子を含んでいる溶液で実施される。孔充填を用いるこの被覆の欠点は、析出可能なコーティング量が制限されていることである、それというのは孔がいつか完全に充填され、ウォッシュコートが到達しにくくなるからである。
【0031】
モノリスは、炭化水素の自熱式の脱水素化を実施するための好都合な前提条件をもたらす:特に、不規則に充填された固定床と比べて、比較的小さい反応器横断面および比較的高い気流速度が実現可能であるため、炭化水素を含んでいる主流に酸素を効率的、段階的に計量供給することが可能である。反応器を通る主流方向は、不規則に充填された固定床の場合と同じく、下流に限定されていない。
【0032】
比較的長い持続時間後に、本願で推奨する触媒は、通常、簡単な方法で再生することができ、例えばまず、第一の再生段階で(好ましくは)窒素および/または水蒸気で希釈されている空気を、300〜600℃(極端な場合でも750℃まで)、多くの場合500〜600℃の流入温度で前記触媒固定床に通す。再生ガスによる触媒負荷は、(再生される触媒の総量に対して)例えば50〜10000h
-1であってよく、再生ガスの酸素含有量は、0.5〜20体積%であってよい。
【0033】
その後、一般に、さらに同一の条件下に、純粋な分子状水素または不活性ガス(好ましくは水蒸気および/または窒素)で希釈されている分子状水素を使用して再生することも推奨される(水素含有量は1体積%以上であるのが望ましい)。
【0034】
前記並行、上下および前後に積み重ねられてパッケージにされたモノリスは、好ましくは膨張マットまたは鉱物繊維不織布に包まれていて、把持装置(Verspanneinrichtung)を有するハウジング(Einhausung)に組み込まれている。鉱物繊維不織布として、排ガス触媒の使用の場合に公知である通り、不織布、例えば3M(登録商標)社からの貯蔵マット(Lagermatten)Interam(登録商標)が使用されるのが好ましい。
【0035】
膨張マットは、触媒作用による排気浄化から公知であり、例えばDE−A4026566に記載されている:これらの膨張マットは、実質的に雲母沈着(Glimmereinlagerung)を有するセラミック繊維からなっている。雲母沈着の結果、前記膨張マットは、上昇する温度では膨張する傾向があり、それによりその中に包まれた充填物(Koerper)の特に安定した保持が、比較的高い温度でも達成される。
【0036】
前記鉱物不織布または膨張マットは、熱作用下に膨張し、一般にセラミックスのモノリスをケーシングに対して気密になるよう、特にケーシングでのモノリスの摩擦ならびに前記ケーシングの内壁での反応混合ガスのバイパス流を防ぐようなものが選択される。
【0037】
モノリスが包まれている膨張マットは、前記モノリスの安定した位置をもたらす、それというのは、前記モノリスが、熱膨張下に張力を生ずるからである。しかし、不適当な条件の間、この張力が緩むことがある。したがって、把持装置を設けることは有利でありうる:そのためには、前記膨張マットを、反応混合ガスの排出部に相応する一端で、耐高温性の織布、例えば金属性でありうる前記織布から作られたU型異形材で囲む。前記膨張マットの延長上には、この膨張マットの横断面に相応する横断面で前記膨張マットに取り付けられていて、反応混合ガスの気流方向に幅広くなっている金属異形材が配置される。それにより、前記金属異形材は、前記膨張マットの反応混合ガスの気流方向へのずれに対して支柱として機能する。
【0038】
膨張マットに包まれたモノリスは、ケーシング内に配置されている。
【0039】
前記ケーシングは、多くの場合約400〜700℃の範囲の反応温度による高い負荷にて機械的および化学的に安定していて、かつ自熱式の気相脱水素化のための触媒活性も有していない材料から作られているのが有利である。
【0040】
前記ケーシングは、耐熱性の材料から、特に材料番号1.4541、1.4910または1.4841のステンレス鋼から作られているのが好ましい。
【0041】
前記ケーシングは、できる限り少ない熱容量を有するために、およびそれにより外部領域Bと内部領域Aとの間の熱損失を制限するために、できる限り薄いことが求められる。
【0042】
前記ケーシングは、好ましくは断熱されていてよい。
【0043】
前記ケーシングは、好ましくは固定されずに前記反応器内に置かれていてよい。
【0044】
前記ケーシングは、好ましくは直方体として形成されている。
【0045】
直方体として形成されたケーシングの側壁は、パッケージ一式またはパッケージの個々のモノリスを触媒活性域から交換できるように、個別に取り外せるように形成されているのが好ましい。
【0046】
本発明によれば、前記個々のモノリスは、並行、上下および前後に、触媒活性域を充填するために必要な数で、パッケージの形成下に積み重ねられる。
【0047】
それぞれのパッケージの前には、触媒活性ではない、固定された内部構造体を有するそれぞれ1つの混合域が設けられている。この混合域において、炭化水素含有ガス流と酸素を含んでいる流との混合が行われ、気流方向に最初に流入された混合域では、酸素を含んでいるガス流と炭化水素含有の導入流との混合が行われ、その次に流入された混合域では、それぞれ、酸素を含んでいるガス流が、なおも脱水素化される炭化水素を含んでいる反応混合物に中間供給される。
【0048】
前記脱水素化される炭化水素含有ガス流は、好ましくは2つ以上の箇所で前記熱交換器に導通されてよく、特に比較的高い質量流量を有する主流として、およびこの主流と比べて比較的低い質量流量を有する1つ以上の副流として導通される。
【0049】
前記脱水素化される炭化水素含有ガス流を加熱するために、前記熱交換器に加えて、1つ以上の補助ヒーターが設けられていてよい。補助ヒーターとして好ましくは、脱水素化される炭化水素含有ガス流のための供給導管を介する水素の供給部が、それぞれ触媒活性域の前に配置されている混合域への流入部のできる限り近くに設けられていてよい。
【0050】
それとは別に、または追加的に、補助ヒーターとして、電気ヒーターが設けられていてよく、このヒーターは、好ましくは取り外し可能に、差込システムとして、前記反応器の外部領域Bの内部で、前記熱交換器からの前記ガス流の排出部の後ろで、炭化水素含有ガス流のための供給導管に導入される。それとは別に、または追加的に補助ヒーターとしてマッフルバーナー(Muffelbrenner)が設けられていてよい。
【0051】
前記反応器を横置きの円筒として形成することにより、モノリスパッケージを含んでいる内部空間Aは、大きな面で支えられていて、それにより機械的負担が軽減される。さらに、この反応器配置の場合、個々のモノリスパッケージへの接近がより容易である。
【0052】
前記反応器のジャケットは、圧力タンク用に認められた合金鋼から、特に未処理鋼(Schwarzstahl)、好ましくはボイラープレート(Kesselblech) HII、または材料番号1.4541または1.4910の合金鋼から作られるのが好ましい。前記反応器のジャケットは、耐火粘土の内壁貼りで内張りをしてもよい。
【0053】
それぞれの混合域は、それぞれ1つの管型分配器と多数の互いに均等に間隔を空けた混合ボディとを含んでいて、前記管型分配器は、多数の互いに平行に、前記反応器の長手方向に垂直の平面に配置された差込管から形成され、1つ以上の分配チャンバーと接合されていて、およびその差込管からの酸素を含んでいるガス流のための、多数の互いに均等に間隔を空けている排出開口部を有している。
【0054】
前記混合ボディは、有利には混合プレート(Mischplatten)として形成されていてよい。
【0055】
前記熱交換器は、管束熱交換器であるのが好ましい。
【0056】
前記管束熱交換器は、有利には高耐熱性のステンレス鋼、特に材料番号1.4541または1.4910のステンレス鋼から作られている。前記管束熱交換器の管は、この熱交換器の両端部で有利には裏当て溶接により管板に隙間なく挿入されていて、前記管束熱交換器の管板は、この管板の高温ガス側で耐熱性ステンレス鋼、特に材料番号1.4841のステンレス鋼によってメッキされている。
【0057】
炭化水素含有ガス流が内部領域Aに導通されるケーシングGの端面に、気流整流装置が配置されているのが好ましい。
【0058】
本発明の対象は、前述の反応器の使用下に、自熱式の脱水素化を実施するための方法でもある。
【0059】
好ましい、完全に連続的な運転方式では、2つ以上の反応器を使用してよく、少なくとも1つの反応器が自熱式の脱水素化に利用され、同時に少なくとも1つのさらなる反応器が再生される。
【0060】
前記再生化が、550〜700℃の温度範囲で実施されるのが好ましい。
【0061】
前記再生化が、酸素を含んでいる流の総質量に対して、酸素0.1〜1.5質量%の酸素含有量を有する、酸素を含んでいるガス流によって実施されるのがさらに好ましい。
【0062】
ラフィネートIIプロセスを効率よく稼働させるために、コークス化した触媒を定期的に再生することは有利である。予備研究の範囲では、定期的な稼働は、ミニプラントで先行運転され(vorfahren)、サイクル安定した生産性を可能にする再生手順が開発された。脱水素化段階および再生段階は、それぞれ12時間継続する。それにより、交互に稼働する2つの反応器を用いた、準連続的な生産が可能である。
【0063】
再生工程の開始時に、触媒は、脱水素化の作動が止まったときの運転温度および運転圧力にある。ガス空間中には、なおも脱水混合ガスが含まれている。洗浄段階において、前記反応混合物が、窒素流により放出される。
【0064】
引き続き、コークスを燃焼させる。そのために、窒素で希釈された希薄空気(Magerluft)を触媒に通す。コークス堆積物の燃焼には、厳しい温度管理が必要である、それというのは、この燃焼工程が、550〜700℃の温度範囲内で進行しなければならないからである:低い温度では、残留負荷(Restbeladung)が触媒に残る。高すぎる温度は、不可逆的な熱による触媒の失活を加速する。前記燃焼工程は、ゆっくりと気流方向に移動する温度前線(Temperaturfront)の形成、およびCO
2の形成をもとに認識できる。燃焼の終わりに、酸素が発生し、酸素濃度が上昇する。それにより、再分散段階へのなめらかな移行が行われる。
【0065】
触媒の再分散は、触媒結晶子の凝集により引き起こされる失活を修復する。そのために、約550℃の温度の空気を触媒に通す。それにより活性成分(Pt/Sn合金)が酸化され、液体の酸化物被膜として前記担体を湿潤させることが推測される。再分散化の継続時間は、再生サイクル全体の継続時間にしたがう。
【0066】
前記再分散化の後、触媒は還元により再び活性化されなければならない。同時に前記反応器を、後続の生産段階のために条件調整させる。この工程には、以下の段階が含まれている:
a.酸素を前記反応器から放出する。そのために、前記反応器を窒素またはH
2O蒸気で、約500℃にて洗浄する。
b.15:85の体積比にある水蒸気と水素との混合物により、約500℃にて触媒還元を行う。
c.脱水素化が開始される。
【0067】
自熱式の気相脱水素化は、好ましくは、プロパンの脱水素化、ブテンの脱水素化、イソブテンの脱水素化、ブテンからブタジエンへの脱水素化、またはエチルベンゼンからスチレンへの脱水素化である。
【0068】
本発明による反応器および本発明による方法は、機械的負荷、取扱ならびに周辺機器との連結に関して最適な反応器配置、温度ピークおよび相応の材料負荷の回避下での可燃性の反応媒質の確実な制御、ならびに個々のモノリスの容易な接近性および取扱が保証されるという利点を特に有している。さらに、本発明による反応器配置は、酸素の最適な主供給および中間供給を可能にする。
【0069】
自熱式の気相脱水素化が、ブタンの脱水素化であるのが特に好ましく、前述の通り2つの反応器が使用され、1つの反応器は自熱式の気相脱水素化に利用され、同時に別の反応器は再生される。
【0070】
ブタン脱水素化により、一般にブテン70質量%およびn−ブタン30質量%を含んでいるラフィネートIIが製造される。
【0071】
主反応は、以下の化学量論的方程式により表される:
【0072】
触媒として、Pt/Sn系が使用される。
【0073】
工業的に関連する条件下にて、主反応(1)は、部分転化に達する。未反応のブタンおよび脱水素化対象水素の一部は、生成物流から分離され、前記反応器に返送されなければならない。したがって、前記反応段階は、一連の後処理段階と結びついている。
【0074】
前記反応器は、3つの触媒活性層を有する棚段式反応器(Hordenreaktor)として設計されている。炭化水素含有ガス流(供給流)には、新たなブタン、水蒸気、ならびに後処理からのブタンに富む還流および水素に富む還流が含まれている。触媒活性域それぞれの前には、側方供給部があり、これにより水蒸気で希釈された酸素が主流に混合される。触媒活性層の流入部にある幅狭の域内では、前記反応混合物は、脱水素化対象水素の選択的な部分燃焼により加熱される。さらなる過程において、脱水素化反応の熱が使用され、前記反応混合物は冷却される。それにより、前記反応器を通して、500〜650℃の鋸歯状の温度プロフィールが生じる。
【0075】
最適な運転圧力は、1.5〜2bar(絶対圧力)である。
【0076】
前記条件下に、目標反応(1)は、転化率約40%および選択性95%超に達する。最も重要な副反応は:
【0077】
吸着された炭化水素の脱水素化は、さらにコークス化まで進むことがある。式は以下の通りである:
【0078】
生成物選択性への直接的な影響を含まない、さらなる副反応は、以下の通りである:
【0079】
前述の運転条件下では、触媒は、数時間以内にコークス堆積物で覆われ、その初期活性を失う。コークス化は、温度レベルの上昇により顕著になる。
【0080】
したがって、前記方法を効率的に運転するために、コークス化された触媒の定期的な再生が必要である。
【0081】
前記反応器は、通常の反応器運転が触媒のコークス化のために不可能になるまで、自熱式の気相脱水素化の生産モードで運転され、そこで前記反応器は再生モードに切り換えられる。同時に、同種の別の反応器は、再生モードから自熱式の気相脱水素化の生産モードに切り換えられる。
【0082】
特に、生産モードならびに再生モードは、それぞれ12時間超運転される。それにより、交互に運転される2つの反応器を用いて、いわゆる連続的な運転方式が可能である。
【0083】
前記再生化は、以下の方法工程を含んでいる:
1.前記反応器の不活性化(洗浄)
再生モードの開始時には、触媒は、自熱式の気相脱水素化が停止したときの、運転温度および運転圧力にある。ガス空間内には、なおも脱水素化対象混合ガスが含まれている。第一の再生工程(不活性化もしくは洗浄)では、前記反応混合ガスは、特に窒素流により放出される。
【0084】
2.燃焼
次の再生工程、つまり、不均一系触媒の表面でのコークス堆積物の燃焼では、窒素で希釈された希薄空気を触媒に通す。コークス堆積物の燃焼には、厳しい温度管理が必要である、それというのは、この燃焼工程が、550〜700℃の温度範囲内で進行しなければならないからである:低い温度では、残留負荷が触媒に残る。高すぎる温度は、不可逆的な熱による触媒失活を加速する。この燃焼工程は、ゆっくりと気流方向に移動する温度前線の形成、およびCO
2の形成をもとに認識される。この燃焼の終わりに、酸素が生じ、酸素濃度が上昇する。それにより、再分散段階へのなめらかな移行が行われる。
【0085】
3.再分散
不均一系触媒の再分散(方法工程3)は、触媒結晶子の凝集により引き起こされた失活を逆行させることである。そのためには、約550℃の温度の空気を触媒に通す。これにより前記活性成分(Pt/Sn合金)が酸化され、液体の酸化物被膜として前記担体を湿潤することが推測される。担体表面上の触媒の分布は、分散度により示される。この分散度は、表面への直接的接触を有する活性物質の原子の割合として定義されている。したがって、単分子層の分散度は、100%である。分散度は、直接測定できるものではなく、脱水素化サイクル中の触媒の性能によってしか評価することができない。
【0086】
4.洗浄
再分散に続いて、次の方法工程では、前記不均一系触媒の洗浄が続き、最終的に、さらなる方法工程、
5.前記不均一系触媒を再び活性化するために、この触媒を還元する、
という工程が行われる。
【0087】
同時に、前記反応器を、以下の生産段階に適合させる。この工程には以下の段階が含まれる:
a.酸素を前記反応器から放出する。そのために、前記反応器を窒素またはH
2O蒸気を使って約500℃で洗浄する。
b.15:85の体積比にある水蒸気および水素からの混合物により、約500℃で触媒還元を行う。
c.脱水素化が開始される。
【0088】
以下において、ブタンの自熱式の気相脱水素化のための反応器に関連する運転状態を詳細に記載する:
1. 前記反応器の試運転
2. 停止後の前記反応器の慣らし運転
3. 以下の操作モードでの、規定通りの循環運転
3.1 生産モード
3.2 再生モード
a. 洗浄
b. 燃焼
c. 酸化/再分散
d. 洗浄
e. 還元
4. 前記反応器の停止
5. 規定通りでない運転の場合の緊急停止。
【0089】
1.試運転、もしくは2.停止後の前記反応器の慣らし運転
慣らし運転の手順は、定期的な運転のための開始状態を確立する。この手順は、前記反応器、供給導管、および排出導管が予熱され、水蒸気が流される場合に開始する。そのためには、主に、反応区間、つまり触媒活性域での好適な温度レベルの調整が必要である。
【0090】
そのために、前記熱交換器において、供給流は200℃から約500℃に加熱される。前記反応区間の温度は、550℃である。
【0091】
特に、前記反応区間を予熱するために2つの方策が企図されている:
・水素の触媒燃焼による反応性の加熱:
水素は、燃焼ガスとして使用される、それというのは、水素の燃焼が、予熱温度以上で自発的にPt/Sn触媒で発火するからである。前記反応器は、循環モードで運転される。空気は、主流を介して循環に導通される。水素は、側方流を介して導通され、水素の完全な使用を保証する、酸素の水素に対する化学量論的比で主流と混合される。この加熱手順は、約12時間かかる。前記段階の終わりに、前記反応区間は550℃の温度レベルに達した。
・主流中の補助ヒーター:
反応区間への流入部への導管内に、補助ヒーター用の接続が設けられている。必要に応じて、この導管区間に電気ヒーター、マッフルバーナーまたは復熱式バーナーを取り付けることができる。主導管を介して、わずかな窒素流が循環流に導通される。
【0092】
前記反応性の加熱は、熱が直接触媒で放出されるという利点がある。それにより、熱損失は最低限に抑えられる。さらに、前記手順は、追加的な設備費用を必要としない。水素の使用は、その触媒による燃焼が、200℃から自発的に、および補助ヒーターなしで開始するため有利である。欠点は、燃料の計量供給ミスが、触媒の過熱をもたらすことであり、最悪の場合には、発火性混合物の形成ももたらしうることである。さらに、この反応性の加熱は、充分に活性のある触媒を前提条件とする。しかし、この前提条件は、例えば、触媒が強くコークス化している場合には保証されない。
【0093】
外部補助ヒーター(電気ヒーターまたはバーナー)の使用は、前記手順の確実性を高める。特に、電気による予熱は、触媒を、不活性のおだやかな雰囲気内で反応温度まで予熱することができるという利点を提供する。制御技術および安全技術の費用は、これにより著しく低減する。外部補助ヒーターの欠点は、追加的に必要な設備費用ならびに運転費用(電気ヒーターの場合に当てはまる)である。プロセス工学の欠点は、熱源と触媒との距離から生じる。この間にある導管区間での熱損失は、目的とする触媒温度に達するために補正されなければならない。
【0094】
加熱段階に続いて、条件調整が行われる。この条件調整は、反応区間が550℃に加熱され、熱交換器において、定常でほぼ線形の温度プロフィールが供給温度と反応温度の間に確立し、反応器容積に不活性ガス(窒素または水蒸気)が流されている場合に開始する。
【0095】
前記条件調整手順は、触媒を、規定通りの運転の開始前に、定義された活性状態に変換する。この適合には、還元−酸化−還元シークエンス(ROR手順とも呼ばれる)が含まれる。最初の還元工程は、主に、揮発性の白金塩を還元するために用いられる。前記塩、特に塩化白金(IV)は、触媒の前処理からの残留物であってよい。前記酸化工程では、考えられる有機の沈着物が触媒表面から焼失し、触媒結晶子が再分散される。
【0096】
前記に引き続く還元工程において、触媒が活性化される。
【0097】
3.1生産モード
開始状態では、反応区間内の温度は約550℃であり、前記熱交換器内では、ほぼ線形の温度プロフィールが供給温度と反応温度の間で調整されている。触媒は、その還元された活性の状態にあり、コークス堆積物を含んでいない。反応容積は、水素/水蒸気で満たされている。圧力は、1.5bar(絶対圧力)である(反応器排出部で測定)。
【0098】
前記反応器は、シングルパス方式で運転される。主流4001では、脱水素化の出発材料が供給される。
【0099】
前記成分の他に、任意に微量成分を添加してよい。以下の表は、微量成分の濃度が変化する範囲を示している。
【0100】
【表1】
【0101】
前記混加に相応して、主成分の含分は減少する。自熱式の脱水素化の熱供給に必要な、酸素含有流は、側方供給により導通される。酸素含分は、水蒸気からの担体流中で15体積%である。
【0102】
前記反応区間の排出部での圧力の設定値は、1.5bar(絶対圧力)に設定される。定格負荷では、前記反応区間にわたって以下の圧力推移である(それぞれ触媒活性域の流入部にて):
第1触媒活性域:2.0bar
第2触媒活性域:1.87bar
第3触媒活性域:1.70bar。
【0103】
前記熱交換器内では、管側(生成物側)の圧力低下は15mbar未満である、つまり前記反応区間での圧力低下に比べてごくわずかである。
【0104】
前記触媒活性域内の温度プロフィールは、酸素の中間供給により制限されて、典型的な鋸歯状の推移を示している。前記熱交換器内では、熱容量流量が供給側に比べて生成物側で比較的高いため、わずかに中高の温度推移が生じる。温度レベルは、脱水素化段階の間、連続的に上昇する。この原因は、触媒に炭素沈着物が蓄積することである。この炭素沈着物は、触媒の失活をもたらし、それにより脱水素化反応の熱消費量は傾向的に低下する。したがって、触媒活性域からの排出温度が上昇し、およびそれに伴い前記熱交換器内で大きくなる温度差も増大する。これは、予熱温度を上昇させる。温度レベルの上昇により、活性損失は、広範囲に補整される。したがって、前記失活は、最終転化率にわずかな影響しか及ぼさない。この熱統合システムの自己適応挙動は、プロセスの実施を実質的に簡素化する、それというのは、生成率を維持するために酸素量を再供給する必要がないからである。
【0105】
負荷のバリエーションでは、以下の基準を顧慮しなければならない:
・流体力学的上限:
・前記反応区間での圧力低下: Δp
1001→1010<700mbar
・最小横断面での速度: V
max<60m/s
・流体力学的下限:
・混合域での滞留時間: τ
mix<100ms
・混合域でのRe数: Re>6000
・混合域での温度制限: T
mix<550℃
・熱損失による制限: ΔT
loss<20K
ΔT
lossは、この場合、断熱による測定区間と比べた、反応区間の排出部での温度の低下を示す。
【0106】
流体力学的制限は、反応器設計から明らかである。混合域での温度制限は、選択性損失を均一な燃焼の点火により回避するために定められている。熱損失の制限は、運転状態の悪化(Verfaelschungen)を制限する。
【0107】
供給流の与えられた組成では、上述の制限は、前記反応器の場合、以下の許可された負荷範囲となる:
【表2】
【0108】
3.2再生モード
触媒の定期的な再生は、いくつもの段階を含んでいる複雑な手順である。再生工程の時間的順序を、以下の表に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
a.洗浄(不活性化)
不活性化では、反応器容積は、少なくとも5回窒素により交換される。それにより、脱水素化の反応混合ガスの残留物が放出される。
【0111】
b.燃焼
触媒表面上のコークスの燃焼は、触媒活性を回復するために重要な再生工程である。この工程には、特別なプロセス制御が要求される。制御工学上の課題は、以下の通りにまとめることができる:炭素負荷は、最小の時間および最低の温度レベルで除去される。前記課題の根本的な問題は、触媒の炭素負荷も燃焼速度も直接計測できないことである。これについてのモデル概念(Modellvorstellung)は、主にミニプラントの実験への適応に基づいている。コークス化された触媒の試料(Ausbauprobe)の熱重量(TGA)分析は、さらなる指示をしている。これは、コークスの形態学上または物質的に異なる2つの種類を指し示している。TGAグラフでは、第一フラクションの燃焼は約550℃で始まり、この温度を超えて典型的で急激な加速を有している。この信号は、580℃で突然低下し、約630℃まではるかに平らな推移を継続している。この観察は、モデル触媒でのプロパン脱水素化のための分光分析の結果と一致している。
【0112】
前記入手可能な情報は、知識に基づく制御装置設計(Reglerentwurf)には十分ではない。むしろ、発見的手法による方法が追求され、温度プロフィールおよび酸素消費量を代替制御変数として用いる。制御変数および動作変数の割り当てを、以下の表にまとめる。
【0113】
【表4】
【0114】
シミュレーション研究は、前記制御変数が複雑な方法であらゆる動作変数により影響されることを示している。さらに、最大温度は、局部的な分布のゆえに、直接制御することはできない。したがって、制御コンセプトは、さらに拡大されなければならない:燃焼工程は、状態ではなく時間に制御されて行われる。
【0115】
唯一の制御可能の値は、ガス流の反応域への流入温度であり、設定値
である。そのための動作変数として、設定値を下回るとアシストガス(Stuetzgas)の計量供給が用いられ、設定値を超過すると前記熱交換器の周囲のバイパス流が用いられる。酸素量および酸素濃度は、経験的に固定値で調整される。ガス返送が促進される。
【0116】
前記選択された調整により、5時間以内に炭素沈着物を完全に除去することは可能である。第一域および第2域が同時に再生される一方、第3域内の負荷は、まず広範囲に引き続き保たれる。沈着物は、均等にそれぞれの域の長さにわたって分解する。再生段階の終わりごろにのみ、第3域内の堆積物は波状に分解される。
【0117】
統合された熱再交換による好適なフィードバックは、前記反応区間の活発な挙動をもたらす。最大温度は、任意の設定値に調節されえない。他方で、最大温度の設定値の維持は必須ではない。再生は、酸素制限して、安定した酸素供給により実施することができる。温度プロフィールは、この場合、波状に変化するため、温度ピークは、局部的に一時的にしか有効ではない。触媒の過熱は、有効的には温度上限を超過する場合に切替により防ぐことができる。これは、酸素供給を一時的に遮断することである。温度ピークは、この場合、前記反応域からの不活性のキャリアガス流により引き延ばされなければならない。
【0118】
再生ガスの循環方式は、燃焼工程を制御する場合、いくつかの利点がある。明らかな利点は、酸素を必要な希釈に達成させるため、不活性ガス消費量を最小化することである。さらなる利点は、循環における酸素濃度の自動適応である。観察された構成では、酸素濃度は、0.52質量%(完全な酸素消費の場合)〜6.97質量%(酸素の完全な取得の場合)の間を変化する。酸素濃度の上昇は、再生の開始に、コークス堆積物の発火を促進する。前記段階の終わりに、酸素濃度はランプ状に上昇し、完全な空気(Vollluft)による引き続きの再分散への連続的な遷移をもたらす。
【0119】
c.不均一系触媒の酸化(再分散)
前記触媒の再分散化は、空気により行われる。そのためには、反応域内の温度を調節するため、アシストガスを計量供給する。この場合、場合により存在する残留沈着物を、触媒表面から除去することができる。前記段階の時間は、生産モードと再生モードとの間の同期調整を達成するために合わせられる。この段階は、前記反応器の待機運転にも好適である。
【0120】
d.洗浄
洗浄段階の間、前記反応器は、再生化段階からの酸素含有ガスと、後続の還元段階からの水素含有ガスとの混合物を排除するために不活性化される。
【0121】
e.還元
還元段階の主要な役目は、酸化された触媒成分を、金属質の触媒活性状態に転換することである。同時に、結晶子は、再分散化後に前記形状で固着する。その他に、温度プロフィールは生産の開始のために調整されなければならない。この場合、触媒活性域内では約500℃の温度レベルが目指される。統合された熱返送により、冷却がゆっくりのため、最終状態では触媒活性域内の温度レベルは、なおも明らかに設定値の上方にある。この状態は、温度調節により修正することができる:設定値を超過した場合、熱交換器にあるバイパスを開放してよい。設定値を下回った場合、側方供給を介して、酸素を不足当量で計量供給してよく、それにより水素の一部が燃焼する。
【0122】
循環ガス冷却器の電源が切られた場合、熱交換器の冷たい端部の温度は約350℃に上昇する。この値は、再循環ループでの温度に相応する。それにより、循環ガス送風装置の過熱の恐れがある。それに比べて、循環ガス冷却器の電源が入れられた場合、温度はねらい通りに約200℃に制御される。したがって、前記装置および計器類の熱負荷は循環において低減する、もしくは前記構成要素の仕様を緩和することができる。
【0123】
本発明は、自熱式の気相脱水素化をより低い投資費用および運転費用で実施できるようにし、ならびに比較的高い負荷および自熱式の気相脱水素化のためのより改善された選択性を有するモノリス触媒を利用できるようにするものである。
【0124】
本発明を、以下において実施例ならびに図をもとにより詳しく説明する。