特許第5968462号(P5968462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968462酸化物焼結体、酸化物スパッタリングターゲット及び高屈折率の導電性酸化物薄膜並びに酸化物焼結体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968462
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】酸化物焼結体、酸化物スパッタリングターゲット及び高屈折率の導電性酸化物薄膜並びに酸化物焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/453 20060101AFI20160728BHJP
   C04B 35/457 20060101ALI20160728BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20160728BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C04B35/00 P
   C04B35/00 R
   C23C14/34 A
   H01B5/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-548792(P2014-548792)
(86)(22)【出願日】2014年1月8日
(86)【国際出願番号】JP2014050106
(87)【国際公開番号】WO2015059938
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-220805(P2013-220805)
(32)【優先日】2013年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】奈良 淳史
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−083183(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065786(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/153522(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/153507(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/029455(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム(In)、及び、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で2〜15.4mol%含有し、ZnをZnO換算で60mol%以上含有し、Inの原子比をA(at%)、Tiの原子比をB(at%)、Znの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5かつ0<C/(A+B)<10であり、バルク抵抗が8.7mΩ・cm以下であることを特徴とする焼結体。
【請求項2】
インジウム(In)、及び、チタン(Ti)、スズ(Sn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で2〜15.4mol%含有し、SnをSnO換算で80mol%以上含有し、Inの原子比をA(at%)、Tiの原子比をB(at%)、Snの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5かつ0<C/(A+B)<10であり、バルク抵抗が87mΩ・cm以下であることを特徴とする焼結体。
【請求項3】
InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で3〜15.4mol%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の焼結体。
【請求項4】
0<C/(A+B)<5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項5】
相対密度が90%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項6】
インジウム(In)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で2〜15.4mol%含有し、ZnをZnO換算で60mol%以上含有し、Inの原子比をA(at%)、Tiの原子比をB(at%)、Znの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5かつ0<C/(A+B)<10であり、波長550nmにおける屈折率が2.05以上、波長450nmにおける消衰係数が0.05以下であることを特徴とする光学調整用薄膜。
【請求項7】
インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で2〜15.4mol%含有し、SnをSnO換算で80mol%以上含有し、Inの原子比をA(at%)、Tiの原子比をB(at%)、Snの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5かつ0<C/(A+B)<10であり、波長550nmにおける屈折率が2.05以上、波長450nmにおける消衰係数が0.05以下であることを特徴とする光学調整用薄膜。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の焼結体の製造方法であって、原料粉末を不活性ガス又は真空雰囲気の下、900℃以上1500℃以下で加圧焼結するか又は原料粉末をプレス成形した後、この成形体を不活性ガス又は真空雰囲気の下、1000℃以上1500℃以下で常圧焼結することを特徴とする焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物焼結体、酸化物スパッタリングターゲット及び高屈折率の導電性酸化物薄膜並びに酸化物焼結体の製造方法に関し、特にバルク抵抗が低くDCスパッタリングが可能な焼結体スパッタリングターゲット及びそれを用いて作製した高屈折率膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイやタッチパネル等の各種光デバイスにおいて可視光を利用する場合、使用する材料は透明である必要があり、特に、可視光領域の全域において、高い透過率をもつことが望まれる。また、各種光デバイスでは、構成される膜材料や基板との界面での屈折率差による光損失が生じることがあり、これらの光損失を改善する方法として、屈折率や光学膜厚調整のための光学調整膜を導入するという方法がある。光学調整膜に求められる屈折率は、各種デバイスの構造によって異なるため、幅広い範囲の屈折率が必要とされる。また、使用される場所によっては、導電性が必要とされることもある。
【0003】
一般に透明で導電性のある材料としては、ITO(酸化インジウム−酸化錫)、IZO(酸化インジウム−酸化亜鉛)、GZO(酸化ガリウム−酸化亜鉛)、AZO(酸化アルミニウム−酸化亜鉛)などが知られている(特許文献1〜3)。しかし、これらの材料は波長550nmにおける屈折率が1.95〜2.05程度の範囲に収まるものであり、光学調整のための高屈折率材(n>2.05)や低屈折率材(n<1.95)としては使用できない。また、ITOは、透過率を高めるために、成膜時に基板加熱するか、又は、成膜後にアニールが必要となるため、加熱できないプラスチック基板や有機ELデバイス用途などへの使用は難しいという問題がある。また、IZOは、短波長側に吸収をもつため、黄色を帯びた膜となってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−008780号公報
【特許文献2】特開2009−184876号公報
【特許文献3】特開2007−238375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、可視光の高透過率と高屈折率を実現できる導電性薄膜を得ることが可能な焼結体を提供することを課題とする。この薄膜は、透過率が高く、且つ、屈折率が高いため、ディスプレイやタッチパネルなどの光デバイス用の薄膜、特に光学調整用の薄膜として有用である。また、本発明は、相対密度が高く、バルク抵抗が低く、DCスパッタリングが可能なスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。本発明は、光デバイスの特性の向上、設備コストの低減化、成膜の特性を大幅に改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、下記に提示する材料系を採用することで、高透過率かつ高屈折率の導電性薄膜を得ることが可能となり、良好な光学特性を確保することができ、さらには、DCスパッタリングによる安定的な成膜が可能であり、該薄膜を使用する光デバイスの特性改善、生産性向上が可能であるとの知見を得た。
【0007】
本発明はこの知見に基づき、下記の発明を提供する。
1)インジウム(In)、及び、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で2〜15.4mol%含有し、ZnをZnO換算で60mol%以上含有し、Inの原子比をA(at%)、Tiの原子比をB(at%)、Znの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5かつ0<C/(A+B)<10であり、バルク抵抗が8.7mΩ・cm以下であることを特徴とする焼結体、
2)インジウム(In)、及び、チタン(Ti)、スズ(Sn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で2〜15.4mol%含有し、SnをSnO換算で80mol%以上含有し、Inの原子比をA(at%)、Tiの原子比をB(at%)、Snの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5かつ0<C/(A+B)<10であり、バルク抵抗が87mΩ・cm以下であることを特徴とする焼結体、
3)InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で3〜15.4mol%含有することを特徴とする前記1)または2)に記載の焼結体、
4)0<C/(A+B)<5であることを特徴とする前記1)〜3)のいずれか一に記載の焼結体、
5)相対密度が90%以上であることを特徴とする前記1)〜4)のいずれか一に記載の焼結体、
6)インジウム(In)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で2〜15.4mol%含有し、ZnをZnO換算で60mol%以上含有し、Inの原子比をA(at%)、Tiの原子比をB(at%)、Znの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5かつ0<C/(A+B)<10であり、波長550nmにおける屈折率が2.05以上、波長450nmにおける消衰係数が0.05以下であることを特徴とする光学調整用薄膜、
7)インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜20mol%含有し、TiをTiO換算で2〜15.4mol%含有し、SnをSnO換算で80mol%以上含有し、Inの原子比をA(at%)、Tiの原子比をB(at%)、Snの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5かつ0<C/(A+B)<10であり、波長550nmにおける屈折率が2.05以上、波長450nmにおける消衰係数が0.05以下であることを特徴とする光学調整用薄膜、
8)請求項1〜5のいずれか一項に記載の焼結体の製造方法であって、原料粉末を不活性ガス又は真空雰囲気の下、900℃以上1500℃以下で加圧焼結するか又は原料粉末をプレス成形した後、この成形体を不活性ガス又は真空雰囲気の下、1000℃以上1500℃以下で常圧焼結することを特徴とする焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記に示す材料系を採用することにより、高透過率かつ高屈折率の導電性の膜を得ることが可能となり、所望の光学特性を確保することができる。また、本発明は、各種光デバイスの特性の向上、設備コストの低減化、成膜速度の向上による生産性の大幅な改善という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、インジウム(In)、及び、チタン(Ti)又はクロム(Cr)、及び、亜鉛(Zn)又はスズ(Sn)、及び、酸素(O)からなり、InをIn換算で2〜65mol%含有し、Ti又はCrをそれぞれTiO換算又はCr換算で2〜65mol%含有し、Inの原子比をA(at%)、Ti又はCrの原子比をB(at%)、Zn又はSnの原子比をC(at%)としたとき、0.5≦A/B≦5であり、0<C/(A+B)<10であることを特徴とするものである。これにより、高透過率かつ高屈折率を有する導電性の膜を得ることができる。
なお、本発明の材料は、インジウム(In)、及び、チタン(Ti)又はクロム(Cr)、及び、亜鉛(Zn)又はスズ(Sn)、及び、酸素(O)、を構成元素とするが、該材料中には、不可避的不純物も含まれる。
【0010】
本発明の材料系は、式:M(MO)(M:第一成分、M:第二成分、M:第三成分、mは1以上の自然数)で表されるホモロガス化合物を含むものであるが、ホモロガス構造となりうる材料であって、かつ、高屈折率材料として、第一成分にIn又はFe、第二成分にTi、Cr、In、Fe又はSn、第三成分にZn、Sn、Cu、Mn、Fe又はCoが挙げられる。しかし、Fe、Cu、Mn、Coは、バンドギャップが小さくて、可視光領域に吸収を生じてしまうため好ましくない。
したがって、第一成分としてInを採用することが決定される。また、第三成分には、Zn又はSnを採用することが決定される。さらに、高屈折率化させるのに第二成分としてInやSnを使用することができないため、第二成分としては、Ti又はCrを採用することが決定される。
【0011】
本発明において、Inの含有量は、In換算で2〜65mol%とする。さらに好ましくは、2〜30mol%とする。また、Ti又はCrの含有量は、それぞれTiO換算又はCr換算で3〜65mol%とする。さらに好ましくは、3〜30mol%とする。第三成分であるZn又はSnの含有量は、InとTi又はCrの含有量及び上記で規定するC/(A+B)原子比から導き出すことができるが、好ましくは、ZnO又はSnO換算で40mol%以上とする。これにより、所望の高透過率かつ高屈折率を有する導電性の膜を実現することができる。
【0012】
本発明において、A/B原子比は0.5≦A/B≦5とする。この範囲を超えると、所望の光学特性が得られないため好ましくない。特に、A/Bが5以上になると、高屈折率材(Ti又はCr)の含有量が減り、屈折率が低下するという問題がある。また、本発明において、C/(A+B)原子比は0<C/(A+B)<10とし、さらに好ましくは、0<C/(A+B)<5とする。この範囲を超えると、上記と同様に高屈折率材の含有量が減り、所望する高屈折率が得られないという問題がある。
【0013】
本発明の焼結体は、スパッタリングターゲットとして使用する場合、相対密度90%以上とすることが好ましい。密度の向上は、スパッタ膜の均一性を高め、またスパッタ時のパーティクルの発生を抑制することができるという効果を有する。相対密度90%以上は、後述する本発明の焼結体の製造方法により、実現することができる。
また、本発明の焼結体は、スパッタリングターゲットとして使用する場合、バルク抵抗10Ω・cm以下とすることが好ましい。バルク抵抗の低下により、DCスパッタによる成膜が可能となる。DCスパッタはRFスパッタに比べて、成膜速度が速く、スパッタリング効率が優れており、スループットを向上できる。なお、製造条件によっては、RFスパッタを行う場合もあるが、その場合でも、成膜速度の向上がある。
【0014】
本発明のスパッタリングによって作製される薄膜は、波長550nmにおける屈折率2.05以上を達成することができる。また、本発明の薄膜は、波長450nmにおける消衰係数0.05以下を達成することができる。さらに、本発明の薄膜は、比抵抗1MΩ・cm以下を達成することができる。このような高屈折率で透過率の高い導電性の薄膜は、光学調整用の薄膜として、ディスプレイやタッチパネルなどの光デバイス用に有用である。特に、本発明は、波長450nmにおける消衰係数が0.01以下と短波長域において吸収がほとんどない高屈折率の膜を得ることができるため、所望の光学特性を得るために優れた材料系といえる。
【0015】
本発明の薄膜は、上述した組成範囲において、結晶化膜となるものとアモルファス膜となるものが存在する。さらに、両者が共存するような部分的に結晶化膜となっているような状態のものも存在する。本発明において、このような膜の結晶性については特に制限はないが、所望する結晶性に合わせて組成調整することが可能である。なお、膜の結晶性(結晶化膜、アモルファス膜、または部分的な結晶化膜)は、X線回折法による回折ピークの有無で評価することができる。
【0016】
本発明の焼結体は、各構成金属の酸化物粉末からなる原料粉末を、不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気の下、加圧焼結(ホットプレス)するか、又は、原料粉末をプレス成形した後、この成形体を常圧焼結することによって、製造することができる。このとき、焼結温度は、900℃以上1500℃以下とすることが好ましい。900℃未満とすると、高密度の焼結体が得られず、一方、1500℃超とすると、材料の蒸発による組成ズレや密度の低下が生じるため、好ましくない。
【実施例】
【0017】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0018】
実施例、比較例における評価方法等は、以下の通りである。
(成分組成について)
装置:SII社製SPS3500DD
方法:ICP-OES(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)
(相対密度について)
焼結体密度は、焼結体の寸法をノギスで測長し、その体積と測定重量から算出した。
理論密度は、下記に示すように、原料の酸化物の単体密度それぞれに、混合質量比を掛け、得られた値を合計して求めた。また、相対密度は、酸化物焼結体の密度を理論密度で除し、100を掛けて求めた。
理論密度=Σ{(各酸化物の単体密度×混合質量比)+(各酸化物の単体密度×混合重量比)+・・・}
相対密度={(焼結体の密度)/(理論密度)}×100
(バルク抵抗[比抵抗、シート抵抗]について)
装置:NPS社製 抵抗率測定器 Σ−5+
方法:直流4探針法
(屈折率、消衰係数について)
装置:SHIMADZU社製 分光光度計 UV−2450
方法:透過率、表裏面反射率から算出
(成膜方法、条件について)
装置:ANELVA SPL−500
基板:φ4inch
基板温度:室温
【0019】
(実施例1)
In粉、TiO粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1150℃、圧力250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。
次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー500W、酸素を0〜2vol%含有するArガス圧0.5Paとし、膜厚5000Åに成膜した。なお、スパッタ時の基板加熱やスパッタ後のアニールは行わなかった。
結果を表1に示す。表1に示す通り、スパッタリングターゲットは、相対密度が98.9%に達し、バルク抵抗は2.9×10−3Ω・cmとなり、安定したDCスパッタができた。そして、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.10(波長550nm)、消衰係数が0.01(波長450nm)、抵抗値が2.3×10−2Ω・cm以上と、高屈折率かつ高透過率の導電性膜が得られた。なお、抵抗値については、スパッタ時の酸素量によって若干変動し、酸素量を多くすると抵抗値が上がる傾向にある。そのため、その下限値を記載した。
【0020】
【表1】
【0021】
(実施例2)
In粉、TiO粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1150℃、圧力250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタリングターゲットは、相対密度が100.3%に達し、バルク抵抗は8.7×10−3Ω・cmとなり、安定したDCスパッタができた。そして、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.15(波長550nm)、消衰係数が0.01未満(波長450nm)、抵抗値が1.8×10+2Ω・cm以上と、高屈折率かつ高透過率の導電性膜が得られた。
【0022】
参考例3)
In粉、TiO粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1100℃、圧力250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタリングターゲットは、相対密度が99.5%に達し、バルク抵抗は3.5×10−3Ω・cmとなり、安定したDCスパッタができた。そして、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.22(波長550nm)、消衰係数が0.01未満(波長450nm)、抵抗値が1.2×10+2Ω・cm以上と、高屈折率かつ高透過率の導電性膜が得られた。
【0023】
参考例4)
In粉、Cr粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1100℃、圧力350kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタリングターゲットは、相対密度が100.2%に達し、バルク抵抗は8.0×10−4Ω・cmとなり、安定したDCスパッタができた。そして、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.10(波長550nm)、消衰係数が0.02(波長450nm)、抵抗値が2.8×10−2Ω・cm以上と、高屈折率かつ高透過率の導電性膜が得られた。
【0024】
(実施例5)
In粉、TiO粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1150℃、圧力250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタリングターゲットは、相対密度が100.1%に達し、バルク抵抗は9.6×10−4Ω・cmとなり、安定したDCスパッタができた。そして、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.12(波長550nm)、消衰係数が0.01未満(波長450nm)、抵抗値が8.7×10−3Ω・cm以上と、高屈折率かつ高透過率の導電性膜が得られた。
【0025】
(実施例6)
In粉、TiO粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1100℃、圧力250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタリングターゲットは、相対密度が99.8%に達し、バルク抵抗は8.4×10−4Ω・cmとなり、安定したDCスパッタができた。そして、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.05(波長550nm)、消衰係数が0.01未満(波長450nm)、抵抗値が9.3×10−3Ω・cm以上と、高屈折率かつ高透過率の導電性膜が得られた。
【0026】
参考例7)
In粉、Cr粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1150℃、圧力350kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタリングターゲットは、相対密度が98.2%に達し、バルク抵抗は5.2×10−3Ω・cmとなり、安定したDCスパッタができた。そして、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.07(波長550nm)、消衰係数が0.03(波長450nm)、抵抗値が3.6×10−2Ω・cm以上と、高屈折率かつ高透過率の導電性膜が得られた。
【0027】
(実施例8)
In粉、TiO粉、SnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をプレス成形した後、成形体をアルゴン雰囲気下、温度1300℃の条件で常温焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタリングターゲットは、相対密度が97.8%に達し、バルク抵抗は8.7×10−2Ω・cmとなり、安定したDCスパッタができた。そして、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.08(波長550nm)、消衰係数が0.01(波長450nm)、抵抗値が3.1×10Ω・cm以上と、高屈折率かつ高透過率の導電性膜が得られた。
【0028】
(比較例1)
In粉、Fe粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1050℃、圧力350kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタ成膜した薄膜は、消衰係数が0.16(波長450nm)と低波長域において光の吸収が生じ、所望の高透過率膜が得られなかった。
【0029】
(比較例2)
In粉、TiO粉、CuO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1050℃、圧力350kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタ成膜した薄膜は、消衰係数が0.2以上(波長450nm)と低波長域において光の吸収が生じ、所望の高透過率膜が得られなかった。
【0030】
(比較例3)
In粉、TiO粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。このとき、In/Tiの原子比を8.0と大きくした。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1150℃、圧力250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.01(波長550nm)と屈折率が低下し、所望の高屈折率膜が得られなかった。
【0031】
(比較例4)
In粉、TiO粉、ZnO粉を準備し、これらの粉末を表1に記載される配合比で調合し、混合した。このとき、Zn/(In+Ti)の原子比を15と大きくした。次に、この混合粉をアルゴン雰囲気下、温度1050℃、圧力250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してターゲット形状に仕上げた。次に、上記の仕上げ加工した直径6インチのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、スパッタ成膜した薄膜は、屈折率が2.02(波長550nm)と、屈折率が低下し、所望の高屈折率膜が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のスパッタリングによって形成される薄膜は、ディスプレイやタッチパネルにおける光学調整用の薄膜や光ディスクの構造の一部を形成して、透過率、屈折率、導電性において、極めて優れた特性を有するという効果がある。
また、本発明の焼結体からなるスパッタリングターゲットは、バルク抵抗値が低く、高密度であることから、安定したDCスパッタを可能とする。そして、このDCスパッタリングの特徴であるスパッタの制御性を容易にし、成膜速度を上げ、スパッタリング効率を向上させることができるという著しい効果がある。また、成膜の際にスパッタ時に発生するパーティクルを低減し、膜の品質を向上させることができる。