特許第5968527号(P5968527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968527
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】高電圧用正極活物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20160728BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20160728BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160728BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/36 C
   C01G53/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-515957(P2015-515957)
(86)(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公表番号】特表2015-525449(P2015-525449A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】KR2013005793
(87)【国際公開番号】WO2014010856
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0074297
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ビュン・チュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ソン・フン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ミンスク・カン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モー・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホ・スク・シン
(72)【発明者】
【氏名】サン・ミン・パク
(72)【発明者】
【氏名】グンギ・ミン
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−062089(JP,A)
【文献】 特開2013−214355(JP,A)
【文献】 Tongyong Yang et al.,Enhanced rate performance of carbon-coated LiNi0.5Mn1.5O4 cathode material for lithium ion batteries,Electrochimica Acta,2011年,Vol.56,pp.4058-4064
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される組成を有するスピネル型化合物粒子と、
前記スピネル型化合物粒子の表面に存在するカーボン系物質とを含み、
前記カーボン系物質が、化学式1のスピネル型化合物の全表面の50%以上、80%以下の表面を覆っていることを特徴とする、正極活物質:
Li1+aMn2−x4−z (1)
上記式中、
Mは、Ni、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び第2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aは、−1価または−2価のアニオンであり、
−0.1≦a≦0.1、0.3≦x≦0.8、0≦z≦0.1である。
【請求項2】
前記スピネル型化合物は、下記化学式(2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質:
Li1+aNiMn2−(b+c)4−z (2)
上記式中、
Mは、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び第2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aは、−1価または−2価のアニオンであり、
−0.1≦a≦0.1、0.3≦b≦0.6、0≦c≦0.2、0≦z≦0.1である。
【請求項3】
前記カーボン系物質は、化学式1のスピネル型化合物粒子の表面に物理的結合及び/又は化学的結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記カーボン系物質の平均粒径(D50)は2nm以上〜500nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
下記化学式1で表される組成を有するスピネル型化合物をカーボン前駆体と混合する過程と、前記混合物を不活性雰囲気または酸素の濃度が35体積%以下である酸素欠乏雰囲気下で熱処理する過程とを含み、
前記熱処理過程は400〜800℃の温度で行われ、
前記カーボン前駆体とスピネル型化合物との混合方法は乾式混合であることを特徴とする、製造方法:
Li1+aMn2−x4−z (1)
上記式中、
Mは、Ni、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び第2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aは、−1価または−2価のアニオンであり、
−0.1≦a≦0.1、0.3≦x≦0.8、0≦z≦0.1である。
【請求項6】
前記スピネル型化合物は、下記化学式2で表される化合物であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法:
Li1+aNiMn2−(b+c)4−z (2)
上記式中、
Mは、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び第2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aは、−1価または−2価のアニオンであり、
−0.1≦a≦0.1、0.3≦b≦0.6、0≦c≦0.2、0≦z≦0.1である。
【請求項7】
前記カーボン前駆体は、石油系ピッチ、タール、フェノール樹脂、フラン樹脂及び炭水化物からなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記不活性雰囲気は窒素(N)またはアルゴン(Ar)雰囲気であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の正極活物質を含むことを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項10】
請求項に記載のリチウム二次電池を含むことを特徴とする、電池パック。
【請求項11】
請求項10に記載の電池パックを含むことを特徴とする、電気車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧用正極活物質及びその製造方法に係り、より詳細には、下記化学式1で表される組成を有するスピネル型化合物粒子と、
上記スピネル型化合物粒子の表面に存在するカーボン系物質とを含むことを特徴とする正極活物質及びその製造方法に関する。
【0002】
Li1+aMn2−x4−z (1)
(a、x、z値は、明細書で定義した通りである。)
【背景技術】
【0003】
IT(Information Technology)技術の目覚ましい発達に伴い、様々な携帯型情報通信機器の拡散により、21世紀は、時間と場所にとらわれずに高品質の情報サービスが可能な‘ユビキタス社会’に発展している。
【0004】
このようなユビキタス社会への発展のベースには、リチウム二次電池が重要な位置を占めている。
【0005】
リチウム二次電池は、他の二次電池に比べて作動電圧及びエネルギー密度が高いだけでなく、長時間使用することができることで、機器の多様化と複合化による複雑な要求条件を満たすことができるという特性がある。
【0006】
最近、既存のリチウム二次電池の技術をより発展させて電気自動車などの環境に優しい輸送システムだけでなく、電力貯蔵などに応用分野を拡大するための努力が全世界的に活発に進まれている。
【0007】
電気自動車または電力貯蔵用(ESS)のような中大型電源用として使用される二次電池は、高出力、高エネルギー密度、高エネルギー効率を必要とする。LiMnは、安い価格及び高出力などの長所を有しているが、エネルギー密度がリチウムコバルト酸化物に比べて低いという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願の発明者らは、4V領域(約3.7V〜4.3V)の作動電位を有するLiMnの低いエネルギー密度特性を改善するために、LiMnのマンガン(Mn)の一部をニッケル(Ni)などの金属で置換した化合物を開発する過程において、マンガンの一部をニッケルなどの金属で置換した化合物は、4.6V以上の高い作動電位を有するため、電池の正常作動範囲でも電解液が分解され、電解液との副反応により電池の性能が低下するという問題があることを確認した。また、Mnイオンの溶出が発生することを確認した。このような問題は、4V領域の作動電圧を有するLiMnでは発見できなかった問題であった。
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決し、5V級の高電圧用正極材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る正極活物質は、
下記化学式1で表される組成を有するスピネル型化合物粒子と、
前記スピネル型化合物粒子の表面に存在するカーボン系物質とを含むことを特徴とする。
【0011】
Li1+aMn2−x4−z (1)
【0012】
上記式中、
Mは、Ni、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び第2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aは、−1価または−2価のアニオンであり、
−0.1≦a≦0.1、0.3≦x≦0.8、0≦z≦0.1である。
【0013】
前記化学式1のスピネル型化合物は、4.6V以上〜4.9V以下の作動電位を有する点で、4V領域(約3.7V〜4.3V)のLiMnと異なる。前記化学式1のスピネル型化合物は、4.6V以上〜4.9V以下の作動電位を有するので、LiMnに比べて高エネルギー密度特性を発揮することができる。
【0014】
前記カーボン系物質は、上記のスピネル型化合物粒子の表面の全部または一部を覆っていてもよい。具体的に、前記スピネル型化合物粒子の全表面の20%以上〜100%以下の表面を覆っていてもよい。非制限的な例において、前記スピネル型化合物粒子の全表面の50%以上〜80%以下の表面を覆っていてもよい。カーボン系物質で覆われた部分の表面エネルギーの変化によってマンガンの溶出を抑制することができる。
【0015】
前記カーボン系物質は、電解液との反応を抑制する保護層として作用することができる。前記保護層は、高電圧充放電時に電解液と前記化学式1の化合物との直接接触を遮断することで、電解液の副反応を抑制することができる。その結果、本発明に係る正極活物質は、安定した充放電サイクル特性を示すことができるので、充放電可逆容量を増加させることができる。
【0016】
また、前記カーボン系物質は電子伝導性に優れているので、前記化学式1で表されるスピネル型化合物の界面抵抗を減少させることによって、出力特性を向上させることができる。
【0017】
本発明の非制限的な例において、前記化学式1の化合物は、下記化学式2の化合物であってもよい。
【0018】
Li1+aNiMn2−(b+c)4−z (2)
【0019】
上記式中、
Mは、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び第2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aは、−1価または−2価のアニオンであり、独立にF、Cl、Br、Iのようなハロゲン、S及びNからなる群から選択される1つ以上であり、
−0.1≦a≦0.1、0.3≦b≦0.6、0≦c≦0.2、0≦z≦0.1である。
【0020】
前記カーボン系物質は、スピネル型化合物粒子の表面に物理的に結合されているか、または化学的に結合されているか、または物理化学的に結合されていてもよい。
【0021】
前記カーボン系物質の平均粒径(D50)は2nm以上〜500nm以下であってもよい。平均粒径(D50)が2nm未満の場合には、マンガンの溶出及び電解液との副反応を効果的に抑制することができず、500nmを超える場合には、カーボン系物質がリチウムイオンの拡散経路を塞いで高率特性が低下することがあるため好ましくない。
【0022】
上記の正極活物質は、液状のコーティング液を製造して正極材と混合する液状法、ボールミリングの高い機械的エネルギーを用いる機械化学的方法、流動層コーティング法、噴霧乾燥法、水溶液状態でコーティング物質を活物質の表面に沈殿させる沈殿法、気相のコーティング物質と正極材との反応を活用する方法、スパッタリング法、静電気を用いるメカノフュージョン法などで製造することができる。
【0023】
一つの具体的な実施例において、上記の正極活物質は、下記の製造方法により製造することができ、具体的に、下記の製造方法は、
前記化学式1で表される組成を有するスピネル型化合物をカーボン前駆体と混合する過程と、不活性雰囲気または酸素の濃度が35体積%以下である酸素欠乏雰囲気下で前記混合物を熱処理する過程とを含むことを特徴とする。
【0024】
一つの具体的な実施例において、前記スピネル型化合物とカーボン前駆体との混合は乾式混合であってもよい。
【0025】
一つの具体的な実施例において、前記熱処理過程は、400〜800℃の温度で行うことができ、カーボン前駆体は、石油系ピッチ、タール、フェノール樹脂、フラン樹脂及び炭水化物からなる群から選択された1つ以上を使用することができ、不活性雰囲気は、窒素(N)雰囲気またはアルゴン(Ar)雰囲気であってもよい。
【0026】
本発明に係る正極活物質は、上記の正極活物質以外に、その他のリチウム含有遷移金属酸化物と混合可能である。
【0027】
前記その他のリチウム含有遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+yMn2−y(ここで、yは0〜0.33である。)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−y(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、y=0.01〜0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−y(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、y=0.01〜0.1である。)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
正極は、上記の正極活物質を含む正極合剤をNMPなどの溶媒に混合して製造されたスラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延して製造することができる。
【0029】
前記正極合剤は、前記正極活物質以外に、選択的に導電材、バインダー、充填剤などが含まれてもよい。
【0030】
前記正極集電体は、一般に3〜500μmの厚さで製造される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを使用することができる。正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0031】
前記導電材は、通常、正極活物質を含んだ混合物全体の重量を基準として1〜30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。
【0032】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準として1〜30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルローズ、再生セルローズ、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などを挙げることができる。
【0033】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0034】
前記分散液としては、代表的にイソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトンなどを使用することができる。
【0035】
電極材料のペーストを金属材料に均一に塗布する方法は、材料の特性などを勘案して公知の方法から選択するか、または新しい適切な方法で行うことができる。例えば、ペーストを集電体上に分配させた後、ドクターブレード(doctor blade)などを用いて均一に分散させることができる。場合によっては、分配と分散過程を一つの工程として実行する方法を用いてもよい。その他にも、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリント(screen printing)などの方法を選択してもよく、または別途の基材(substrate)上に成形した後、プレシングまたはラミネーション方法により集電体と接合させてもよい。
【0036】
金属板上に塗布されたペーストの乾燥は、50〜200℃の真空オーブンで1日以内に乾燥させることが好ましい。
【0037】
前記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥して作製され、必要に応じて、上述したような導電材、バインダー及び充填剤などの成分が選択的にさらに含まれてもよい。
【0038】
前記負極集電体は、一般に3〜500μmの厚さに製造される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0039】
前記負極活物質は、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1−xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料などをさらに含むことができる。
【0040】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在し、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。一般に、分離膜の気孔径は0.01〜10μmで、厚さは5〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布;クラフト紙などが使用される。現在市販中の代表的な例としては、セルガード系列(Celgard(登録商標) 2400、2300(Hoechest Celanese Corp.製品)、ポリプロピレン分離膜(Ube Industries Ltd.製品またはPall RAI社製)、ポリエチレン系列(TonenまたはEntek)などがある。
【0041】
場合によって、前記分離膜上には、電池の安定性を高めるためにゲルポリマー電解質がコーティングされてもよい。このようなゲルポリマーの代表的な例としては、ポリエチレンオキシド、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0042】
電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0043】
前記リチウム塩含有非水系電解質は非水電解質とリチウムからなっている。非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが用いられる。
【0044】
前記非水電解液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、4−メチルー1,3−ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0045】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを用いることができる。
【0046】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを用いることができる。
【0047】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解しやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、LiSCN、LiC(CFSO、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを用いることができる。
【0048】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善の目的で、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもでき、FEC(fluoro−ethylene carbonate)、PRS(propene sultone)、FPC(fluoro−propylene carbonate)などをさらに含ませることができる。
【0049】
本発明に係る二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用できるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用することができる。
【0050】
また、本発明は、前記電池モジュールを中大型デバイスの電源として含む電池パックを提供し、前記中大型デバイスは、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車及び電力貯蔵装置などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳述するが、下記の実施例は、本発明を例示するためのもので、本発明の範疇がこれらに限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
LiNi0.5Mn1.5:石油系ピッチを重量比で100:5の割合でコーン型撹拌機内に投入し、400rpmの回転数で1時間混合した後、窒素雰囲気で500℃の温度で20時間混合物を熱処理して、カーボン系物質で表面改質されたLiNi0.5Mn1.5を製造した。
【0053】
カーボン系物質で表面改質されたLiNi0.5Mn1.5:導電材:バインダーの量が97:2.5:2.5となるように計量した後、NMPに入れてミキシング(mixing)して、正極合剤を製造し、20μmの厚さのアルミニウムホイルに上記正極合剤をコーティングした後、圧延及び乾燥して、正極を製造した。
【0054】
上記で製造されたリチウム二次電池用正極、対向電極(負極)としてリチウムメタル箔、分離膜としてポリエチレン膜(Celgard、厚さ:20μm)、及びエチレンカーボネート、ジメチレンカーボネート、ジエチルカーボネートが1:2:1に混合された溶媒にLiPFが1M溶解している液体電解液を用いて、2016コイン電池を製造した。
【0055】
<比較例1>
正極活物質として、カーボン系物質で表面処理していないLiNi0.5Mn1.5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でコイン型電池を作製した。
【0056】
<実験例1>
初期充放電特性
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造されたコイン電池に対して、0.1Cの電流で3.5〜4.9Vの電圧範囲で1回充放電して、充放電特性を評価した。その結果を下記表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
<実験例2>
高速充電特性
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造されたコイン電池に対して、0.1Cの電流で充放電した後、5.0Cの電流で充電する条件で高速充電特性を評価した。その結果を下記表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
<実験例3>
寿命特性
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造されたコイン電池に対して、1.0Cの電流で100回充放電して寿命特性を評価した。その結果を下記表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
<実験例4>
マンガン溶出量測定
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造されたコイン電池に対して、0.1C電流で3.5〜4.9Vの電圧範囲で1回充放電を行った後、0.1Cの電流で4.9Vまで充電してコイン電池を分解した。分解したコイン電池から得られた正極を電解液15mLが入っている容器に浸した後、80℃の恒温槽で2週間保管した後、電解液に溶出されたマンガンの含量をICP(PerkinElmer社の7100モデル)で分析した。
【0063】
【表4】
【0064】
<実験例5>
高温保存特性評価
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造されたコイン電池に対して、0.1Cの電流で3.5〜4.9Vの電圧範囲で1回充放電を行った後、0.1Cの電流で4.9Vまで充電して60度の恒温槽で1週間保管した後、自己放電量及び容量回復率を測定した。満充電状態で高温保存時に正極活物質の表面での電解液分解反応が加速化して自己放電量が高くなり、これによって、正極活物質の構造が崩壊する現象があり、これを観察しようとした。
【0065】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、上記化学式1のスピネル型化合物粒子の表面の一部または全部をカーボン系物質でコーティングすることによって、高電圧での電解液の副反応及びマンガンの溶出を抑制することによって高電圧用リチウム二次電池を提供できるという利点がある。