【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明に係る太陽電池の光吸収層を形成するCI(G)Sナノ粒子の製造方法は、
(i)硫黄(S)、またはセレニウム(Se)、または硫黄(S)及びセレニウム(Se)を含む化合物からなる群から選択される1種以上のVI族ソースとインジウム(In)塩を溶媒に溶解させて、第1溶液を準備する過程と、
(ii)第1溶液を反応させて、1次前駆体粒子を形成させる過程と、
(iii)銅(Cu)塩を溶媒に溶解させて、第2溶液を準備する過程と、
(iv)前記1次前駆体が形成された第1溶液に第2溶液を混合して、混合物を製造する過程と、
(v)前記混合物の反応によりCI(G)Sナノ粒子を合成した後、精製する過程と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
本出願の発明者らは、従来、金属カルコゲニド化合物として、Cu−Se化合物及びIn−Se化合物を混合して使用する場合、これらが均一に混合されないため、組成の調節が難しいだけでなく、バルク(bulk)形態で存在するため、所定の粒径を有する球状粒子が形成されにくいことを認識した。
【0014】
そこで、鋭意研究を重ねた結果、In−Se(S)化合物にCu−Se(S)化合物の代わりに銅(Cu)塩を添加してCI(G)Sナノ粒子を製造する場合、CuイオンがIn−Se(S)化合物のチャネルに移動することによって、In−Se(S)化合物の構造を維持しながら、CuイオンをIn−Se(S)化合物粒子全体内に均一に分散させることができ、したがって、組成の調節が容易であるだけでなく、所定の粒径を有する球状粒子を容易に製造できることを確認した。
【0015】
したがって、一具体例において、前記合成されたCI(G)Sナノ粒子は、無定形の1次前駆体粒子のチャネルに銅(Cu)イオンがマイグレーション(migration)された形態の、30nm〜200nmの平均粒径を有する球状粒子であってもよく、より詳細には、50nm〜150nmの平均粒径を有する球状粒子であってもよい。
【0016】
前記範囲を外れて、平均粒径が30nm未満であるCI(G)Sナノ粒子は、粒子の成長に長時間が必要であるため好ましくなく、平均粒径が200nmを超える場合には、コーティング膜が緻密でなく、熱処理後にクラック(crack)や空隙(void)が生じる場合が多いため、優れた膜特性を得ることが難しいため好ましくない。
【0017】
このとき、前記1次前駆体粒子は無定形であり、銅(Cu)イオンがマイグレーション(migration)されたCI(G)Sナノ粒子は、無定形であるか、または無定形の1次前駆体粒子に銅イオンがマイグレーションされることによって結晶形が一部形成された形態であってもよい。
【0018】
以下、本発明に係る製造方法を具体的に説明すると、上記で言及したように、本発明は、優先的に1次前駆体粒子を形成し、このとき、過程(i)の第1溶液にはインジウム1モルに対してVI族ソースが0.5〜2モル含まれるように製造することができる。
【0019】
前記範囲を外れて、VI族ソースが0.5モル未満含まれる場合、VI族元素の十分な提供が不可能であるので、部分的にVI族元素が足りない膜が形成されることがあり、2モルを超えて含まれる場合には、一部が金属塩と反応せずに残存することでS又はSeとして析出され、このように析出されたS又はSeがCuイオンと反応してCu−Se(S)化合物を形成し、結果的に、組成の不均一を招き、太陽電池セルの効率を減少させるため好ましくない。
【0020】
前記1次前駆体粒子を形成するための過程(ii)の反応は、所望の粒子サイズによって、第1溶液を摂氏130度〜170度下で1時間〜4時間維持することによって可能である。
【0021】
前記範囲の温度よりも高い温度で反応させる場合、1次前駆体粒子であるIn−Se(S)粒子を構成するSe又はSの析出が激しくなり、In−Se(S)粒子においてSe又はSの比率が減少するため好ましくない。
【0022】
このとき、前記1次前駆体粒子はポリオール反応により合成することができ、一具体例において、前記第1溶液及び第2溶液の溶媒はポリオール溶媒であってもよい。
【0023】
前記ポリオール溶媒は、例えば、エチレングリコール(ethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ジエチレングリコールエチルエーテル(diethylene glycol ethyl ether)、ジエチレングリコールブチルエーテル(diethylene glycol butyl ether)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、テトラエチレングリコール(tetraethylene glycol)、ポリエチレングリコール(poly(ethylene glycol)、分子量;200〜100,000)、ポリエチレングリコールジアクリレート(poly(ethylene glycol)diacrylate)、ポリエチレングリコールジベンゾエート(poly(ethylene glycol)dibenzoate)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、トリプロピレングリコール(tripropylene glycol)、グリセロール(glycerol)からなる群から選択される1種以上であってもよく、詳細には、エチレングリコール(ethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、またはテトラエチレングリコール(tetraethylene glycol)であってもよい。
【0024】
このように製造された前記1次前駆体粒子は、In−Se、In−S、またはIn−Se−S化合物であってもよく、一具体例において、前記第1溶液にはガリウム(Ga)塩がさらに含まれていてもよく、この場合、1次前駆体粒子はIn−Ga−Se、In−Ga−S、またはIn−Ga−Se−S化合物であり得る。
【0025】
一方、上記のように、本発明に係るCI(G)Sナノ粒子は、銅(Cu)を含まない1次前駆体粒子を製造した後、別途に銅(Cu)塩を含んでいる第2溶液を混合して製造するので、インジウム(In)とVI族元素の組成比だけでなく、銅(Cu)の組成もまた容易に調節することができる。
【0026】
具体的に、CI(G)S光吸収層に使用されるための金属の好ましい組成比は、モル比で銅(Cu)、及びインジウム(In)又はインジウム(In)及びガリウム(Ga)が0.2〜1:1で含まれている場合であるので、一具体例において、本発明の過程(iv)の混合物には、インジウム(In)又はインジウム(In)及びガリウム(Ga)1モルに対して銅(Cu)が0.2〜1モル含まれるように製造することができる。
【0027】
前記範囲を外れる組成として、In+Ga1モルに対して銅(Cu)が1モル以上含まれると、CI(G)Sナノ粒子の他に、Cu
2Se(S)のような相(phase)が膜の内部に残ってしまい、太陽電池の2つの電極の間でシャンティングサイト(shunting site)として作用することによって、薄膜太陽電池の特性低下を招くことがあるため好ましくない。
【0028】
前記CI(G)Sナノ粒子を形成するための過程(v)の反応は、銅(Cu)イオンが1次前駆体粒子のチャネルを介して均一に浸透できる最小の時間及び所望の粒子サイズを考慮して、2時間〜5時間の間、第1溶液と第2溶液との混合物を摂氏150度〜190度下で維持することによって達成することができる。
【0029】
一方、本発明の製造方法に使用される具体的な物質である金属塩及びVI族ソースは、これら元素を含んでいるものであれば限定されないが、例えば、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)のソースとなる前記塩は、塩化物(chloride)、硝酸塩(nitrate)、亜硝酸塩(nitrite)、硫酸塩(sulfate)、酢酸塩(acetate)、亜硫酸塩(sulfite)、アセチルアセトネート塩(acetylacetonate)及び水酸化物(hydroxide)からなる群から選択される1つ以上の形態であってもよく、VI族ソースは、Na
2Se、K
2Se、Ca
2Se、(CH
3)
2Se、SeO
2、SeCl
4、H
2SeO
3、Na
2S、K
2S、Ca
2S、(CH
3)
2S、H
2SO
4、NH
2SO
3H、(NH
2)
2SO
2、Na
2S
2O
3及びこれらの水和物からなる群から選択される1つ以上であるか、または有機物として、チオ尿素(thiourea)、チオアセトアミド(thioacetamide)、セレノ尿素(selenourea)、及び亜セレン酸(selenous acid)からなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0030】
本発明はまた、前記製造方法により製造されたCI(G)Sナノ粒子を提供し、これをベースとした光吸収層を含む薄膜を提供する。
【0031】
前記光吸収層を含む薄膜は、本発明に係るCI(G)Sナノ粒子を溶媒に分散させてインクを製造し、これを、電極が形成された基材上にコーティングした後、乾燥及び熱処理して製造される。
【0032】
このとき、前記光吸収層を形成するコーティング層は、0.5μm〜3μmの厚さを有することができ、より詳細には、2μm〜3μmの厚さを有することができる。
【0033】
薄膜の厚さが0.5μm未満の場合には、光吸収層の密度と量が十分でないため、所望の光電効率を得ることができず、薄膜が3μmを超える場合には、電荷運搬者(carrier)が移動する距離が増加することによって再結合(recombination)が起こる確率が高くなるため、これによる効率の低下が発生する。
【0034】
一方、前記インクの製造のための溶媒は、一般的な有機溶媒であれば特に制限なしに使用することができ、アルカン系(alkanes)、アルケン系(alkenes)、アルキン系(alkynes)、芳香族化合物系(aromatics)、ケトン系(ketons)、ニトリル系(nitriles)、エーテル系(ethers)、エステル系(esters)、有機ハロゲン化物系(organic halides)、アルコール系(alcohols)、アミン系(amines)、チオール系(thiols)、カルボン酸系(carboxylic acids)、水素化リン系(phosphines)、亜リン酸系(phosphites)、リン酸塩系(phosphates)、スルホキシド系(sulfoxides)、及びアミド系(amides)から選択された有機溶媒を単独で使用するか、またはこれらから選択された1つ以上の有機溶媒が混合された形態で使用することができる。
【0035】
具体的に、前記アルコール系溶媒は、エタノール、1−プロパノール(1−propanol)、2−プロパノール(2−propanol)、1−ペンタノール(1−pentanol)、2−ペンタノール(2−pentanol)、1−ヘキサノール(1−hexanol)、2−ヘキサノール(2−hexanol)、3−ヘキサノール(3−hexanol)、ヘプタノール(heptanol)、オクタノール(octanol)、EG(ethylene glycol)、DEGMEE(diethylene glycol monoethyl ether)、EGMME(ethylene glycol monomethyl ether)、EGMEE(ethylene glycol monoethyl ether)、EGDME(ethylene glycol dimethyl ether)、EGDEE(ethylene glycol diethyl ether)、EGMPE(ethylene glycol monopropyl ether)、EGMBE(ethylene glycol monobutyl ether)、2−メチル−1−プロパノール(2−methyl−1−propanol)、シクロペンタノール(cyclopentanol)、シクロヘキサノール(cyclohexanol)、PGPE(propylene glycol propyl ether)、DEGDME(diethylene glycol dimethyl ether)、1,2−PD(1,2−propanediol)、1,3−PD(1,3−propanediol)、1,4−BD(1,4−butanediol)、1,3−BD(1,3−butanediol)、α−テルピネオール(α−terpineol)、DEG(diethylene glycol)、グリセロール(glycerol)、2−(エチルアミノ)エタノール(2−(ethylamino)ethanol)、2−(メチルアミノ)エタノール(2−(methylamino)ethanol)、及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(2−amino−2−methyl−1−propanol)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0036】
前記アミン系溶媒は、トリエチルアミン(triethyl amine)、ジブチルアミン(dibutyl amine)、ジプロピルアミン(dipropyl amine)、ブチルアミン(butyl amine)、エタノールアミン(ethanol amine)、DETA(Diethylenetriamine)、TETA(Triethylenetetraine)、トリエタノールアミン(Triethanolamine)、2−アミノエチルピペラジン(2−aminoethyl piperazine)、2−ヒドロキシエチルピペラジン(2−hydroxyethyl piperazine)、ジブチルアミン(dibutylamine)、及びトリス(2−アミノエチル)アミン(tris(2−aminoethyl)amine)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0037】
前記チオール系溶媒は、1,2−エタンジチオール(1,2−ethanedithiol)、ペンタンチオール(pentanethiol)、ヘキサンチオール(hexanethiol)、及びメルカプトエタノール(mercaptoethanol)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0038】
前記アルカン系(alkane)溶媒は、ヘキサン(hexane)、ヘプタン(heptane)、オクタン(octane)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0039】
前記芳香族化合物系(aromatics)溶媒は、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、ニトロベンゼン(nitrobenzene)、ピリジン(pyridine)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0040】
前記有機ハロゲン化物系(organic halides)溶媒は、クロロホルム(chloroform)、メチレンクロライド(methylene chloride)、テトラクロロメタン(tetrachloromethane)、ジクロロエタン(dichloroethane)、及びクロロベンゼン(chlorobenzene)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0041】
前記ニトリル系(nitrile)溶媒は、アセトニトリル(acetonitrile)であってもよい。
【0042】
前記ケトン系(ketone)溶媒は、アセトン(acetone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、シクロペンタノン(cyclopentanone)、及びアセチルアセトン(acetyl acetone)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0043】
前記エーテル系(ethers)溶媒は、エチルエーテル(ethyl ether)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、及び1,4−ジオキサン(1,4−dioxane)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0044】
前記スルホキシド系(sulfoxides)溶媒は、DMSO(dimethyl sulfoxide)及びスルホラン(sulfolane)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0045】
前記アミド系(amide)溶媒は、DMF(dimethyl formamide)、及びNMP(n−methyl−2−pyrrolidone)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0046】
前記エステル系(ester)溶媒は、乳酸エチル(ethyl lactate)、r−ブチロラクトン(r−butyrolactone)、及びエチルアセトアセテート(ethyl acetoacetate)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0047】
前記カルボン酸系(carboxylic acid)溶媒は、プロピオン酸(propionic acid)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸(meso−2,3−dimercaptosuccinic acid)、チオ乳酸(thiolactic acid)、及びチオグリコール酸(thioglycolic acid)から選択される1つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0048】
しかし、前記溶媒は一つの例示であり、これに限定されない。
【0049】
場合によっては、前記インクに添加剤をさらに添加して製造することができる。
【0050】
前記添加剤は、例えば、分散剤、界面活性剤、重合体、結合剤、架橋結合剤、乳化剤、消泡剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、増粘化剤、フィルム条件剤、抗酸化剤、流動化剤、平滑性添加剤、及び腐食抑制剤からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよく、詳細には、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone:PVP)、ポリビニルアルコール(Polyvinylalcohol)、アンチテラ204(Anti−terra 204)、アンチテラ205(Anti−terra 205)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、及びディスパーベイク110(DisperBYK110)からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0051】
前記コーティングは、例えば、湿式コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、ドクターブレード(doctor blade)コーティング、接触プリンティング、トップフィードリバース(feed reverse)プリンティング、ボトムフィードリバース(feed reverse)プリンティング、ノズルフィードリバース(nozzle feed reverse)プリンティング、グラビア(gravure)プリンティング、マイクログラビア(micro gravure)プリンティング、リバースマイクログラビア(reverse micro gravure)プリンティング、ローラーコーティング、スロットダイ(slot die)コーティング、毛細管コーティング、インクジェットプリンティング、ジェット(jet)沈着、噴霧沈着からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0052】
前記熱処理は、摂氏400〜900度の範囲の温度で行うことができる。
【0053】
本発明に係るCI(G)Sナノ粒子を使用する場合には、VI族元素が含まれているので、同一のVI族反応性を得るための前記熱処理時間を5分〜10分に短縮できるという効果がある。
【0054】
さらに、本発明は、前記薄膜を用いて製造される薄膜太陽電池を提供する。
【0055】
薄膜の太陽電池を製造する方法は、当業界で公知となっているので、本明細書ではそれについての説明を省略する。