特許第5968550号(P5968550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968550ラジカル発生剤としてのイミノキシトリアジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968550
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ラジカル発生剤としてのイミノキシトリアジン
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/32 20060101AFI20160728BHJP
   C08F 8/50 20060101ALI20160728BHJP
   C09D 157/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C08F4/32
   C08F8/50
   C09D157/00
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-538399(P2015-538399)
(86)(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公表番号】特表2016-502569(P2016-502569A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】EP2013072006
(87)【国際公開番号】WO2014064064
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】61/717,127
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12189566.8
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ネスファドバ
(72)【発明者】
【氏名】リュシエンヌ ビュニョン フォルジェ
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ カロワ
(72)【発明者】
【氏名】マルク ファレ
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−185005(JP,A)
【文献】 特開2009−271502(JP,A)
【文献】 特表2012−526167(JP,A)
【文献】 Journal of the american chemical society,2005年 7月23日,vol. 127,pp. 11240-11241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00−4/58
C08F 4/72−4/82
C08F6/00−246/00
C08F301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(a)エチレン性不飽和重合性モノマー又はオリゴマー、及び
(b)ラジカルを発生する化合物として、式I
【化1】
のイミノキシトリアジン化合物
を含有する組成物であって、ここで、
nは、1又は2であり;
1及びR2は、相互に独立して、水素、NH2、NHR5、NR56、COR5、COOR5、CONH2、CONHR5、CONR56、CN、SR5、OR5、C1〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールであり、ここで、該C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールは、非置換であるか、又はC1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、フェニル、ハロゲン及びC1〜C12アルコキシからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているか、又は、
1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって、4員〜12員の炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和の環を形成し、ここで、該環は、非置換であるか、又はC1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、フェニル、ハロゲン及びC1〜C12アルコキシからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているものとし;
3は、F、Cl、OH、OR5、SH、SR5、NH2、NHR5、NR56又はR12C=N−O−であり;
ここで、式Iの化合物中の全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっており;
nが1である場合、R4は、F、Cl、OH、OR5、SH、SR5、NH2、NHR5、NR56又はR12C=N−O−であり;
ここで、式Iの化合物における全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっており;
nが2である場合、R4は、ジオール、ジアミン、アミノアルコール又はメルカプトアルコールから誘導された二官能性基であり;
5及びR6は、相互に独立して、C1〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールである、前記組成物。
【請求項2】
式Iの化合物において、
1及びR2は、相互に独立して、水素、NH2、COR5、C1〜C12アルキル又はフェニルであるか、又は、
1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって、6員〜12員の飽和炭素環又は5員の飽和複素環を形成し、ここで、該環は、C1〜C12アルキル及びC3〜C12シクロアルキルからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているものとし;
3及びR4は、R12C=N−O−であり;
ここで、式Iの化合物における全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっており;かつ、
5は、C1〜C12アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(b)における式Iの化合物中の官能基R12C=N−O−の量が、重合性モノマー又はオリゴマー(a)のエチレン性不飽和官能基C=C 100当たり、0.01〜30、好ましくは0.05〜10、特に好ましくは0.1〜5.0である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ラジカルの存在により誘発される反応においてラジカルを発生させるための、請求項に定義した通りの式Iのイミノキシトリアジン化合物の使用。
【請求項5】
好ましくはコーティングの形態のポリマー物質をラジカル重合により製造するための、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項6】
好ましくはコーティングの形態のオリゴマー、コオリゴマー、ポリマー又はコポリマー物質の製造方法において、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物を、対流熱又はUV線、IR線、NIR線、マイクロ波、放射線、超音波で処理するか、又は熱と放射線の双方で処理することを特徴とする、前記方法。
【請求項7】
ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレン、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンブレンドの制御分解のための方法において、請求項に記載の式Iのイミノキシトリアジン化合物を、該ポリオレフィンの分子量を低下させるために使用し、かつ、式Iの該イミノキシトリアジン化合物を、該ポリオレフィンに0.001〜5.0質量%の濃度で配合する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル源としての(特に重合開始剤としての)イミノキシトリアジン化合物の使用、該イミノキシトリアジンを含有する重合性組成物、並びに新規イミノキシトリアジン化合物に関する。
【0002】
ラジカル重合は極めて重要な重合方法に属する。これは、多くの商業的に重要なポリマー、例えばポリスチレン、PVC、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、PAN及びその他のポリマーの製造に使用される。技術的な詳細については、標準的研究論文G. Odian, Principles of Polymerization, McGraw-Hill New York 1991を参照することができる。
【0003】
ラジカル重合は開始剤を用いて開始される。ポリマー技術において確立されている開始剤の例は、アゾ化合物、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、熱不安定性C−C二量体、レドックス系及び光重合開始剤である。“Handbook of Free Radical Initiators”, (ET. Denisov, T.G. Denisova, T.S. Pokidova, J. Wiley & Sons, Inc. Hoboken, New Jersey, 2003)が参照される。
【0004】
公知の重合開始剤は、その広範な使用にもかかわらず様々な欠点を有している。例えば、ペルオキシドは極めて引火しやすく、燃焼を持続し、従って爆発事故の可能性を示すため、その製造、貯蔵、輸送及び使用は、コストがかかる安全対策を伴わなければならない。さらに、一部の開始剤は例えばAIBN等の毒性生成物を発生する。
【0005】
従って、十分な安全性プロファイルを有するラジカル重合方法のための新規の開始剤が広く求められている。
【0006】
WO2001/90113及びWO2004/081100/A1には、新規クラスの重合開始剤としての立体障害N−アシルオキシアミンが記載されている。さらなる新規の重合開始剤は、WO2006/051047に記載されているようなN−置換イミド、WO2010/079102に報告されているO−ジアルキルアミノ−イソ尿素、WO2010/128062に報告されているO−イミノ−イソ尿素及びWO2010/112410に報告されているアリールトリアゼンである。
【0007】
ここで、イミノキシトリアジンが、ラジカル重合の、又はラジカルにより誘発されるその他のプロセス、例えばポリオレフィンの制御分解の、極めて有効な開始剤であることが見出された。
【0008】
従って本発明の対象は、以下:
(a)エチレン性不飽和重合性モノマー又はオリゴマー、及び
(b)ラジカルを発生する化合物として、式I
【化1】
のイミノキシトリアジン化合物
を含有する組成物であって、ここで、
nは、1又は2であり;
1及びR2は、相互に独立して、水素、NH2、NHR5、NR56、COR5、COOR5、CONH2、CONHR5、CONR56、CN、SR5、OR5、C1〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールであり、ここで、該C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールは、非置換であるか、又はC1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、フェニル、ハロゲン及びC1〜C12アルコキシからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているか、又は、
1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって、4員〜12員の炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和の環を形成し、ここで、該環は、非置換であるか、又はC1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、フェニル、ハロゲン及びC1〜C12アルコキシからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているものとし;
3は、F、Cl、OH、OR5、SH、SR5、NH2、NHR5、NR56又はR12C=N−O−であり;
ここで、式Iの化合物中の全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっており;
nが1である場合、R4は、F、Cl、OH、OR5、SH、SR5、NH2、NHR5、NR56又はR12C=N−O−であり;
ここで、式Iの化合物における全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっており;
nが2である場合、R4は、ジオール、ジアミン、アミノアルコール又はメルカプトアルコールから誘導された二官能性基であり;
5及びR6は、相互に独立して、C1〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールである、前記組成物である。
【0009】
式Iの化合物は、ラジカル重合又はラジカル硬化の極めて有効な開始剤である。これは該化合物の好ましい用途である。しかしながら、本発明の化合物の使用は重合又は硬化プロセスに限定されない。本発明のイミノキシトリアジンは、ラジカルにより誘発されるその他のプロセス、例えばポリオレフィンの制御分解において、ポリマー、例えばポリエチレン又は不飽和ゴムの架橋に、又はラジカル機構により進行する化学反応のための開始剤として使用可能である。そのような反応は化学において十分に知られており、標準的研究論文(例えばRadicals in Organic Synthesis, P. Renaud & M. P. Sibi(編), Wiley-VCH, 2001、又はEncyclopedia of Radicals in Chemistry, Biology and Materials, John Wiley & Sons, Ltd., 2012)に広範に記載されている。イミノキシトリアジンからのラジカルの発生及び該ラジカルにより誘発されるプロセスは、種々の刺激により、好ましくは熱により、また電磁線、例えばX線、紫外線、可視光又は赤外光により、又は化学線、例えばγ線(電子線)により実施可能である。
【0010】
さらに、前記イミノキシトリアジンの大部分は新規化合物である。
【0011】
従って、上に示した通りの式Iのイミノキシトリアジン化合物であって、
1及びR2は、相互に独立して、水素、NH2、NHR5、NR56、COR5、COOR5、CONH2、CONHR5、CONR56、CN、SR5、OR5、C1〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールであり、
ここで、該C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールは、非置換であるか、又はC1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、フェニル、ハロゲン及びC1〜C12アルコキシからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているか、又は、
1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって、4員〜12員の炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和の環を形成し、ここで、該環は、非置換であるか、又はC1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、フェニル、ハロゲン及びC1〜C12アルコキシからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているものとし;
3は、R12C=N−O−であり;
nが1である場合、R4は、F、Cl、OH、OR5、SH、SR5、NH2、NHR5、NR56又はR12C=N−O−であり;
ここで、式Iの化合物における全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっており;
nが2である場合、R4は、ジオール、ジアミン、アミノアルコール又はメルカプトアルコールから誘導された二官能性基であり;
5及びR6は、相互に独立して、C1〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールであるが;
但し、
(i)R4がR12C=N−O−である場合、R1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって非置換シクロヘキシルを形成することも非置換シクロドデシルを形成することもなく;
(ii)R4がR12C=N−O−である場合、R1及びR2の双方がメチルとなることはなく;
(iii)R4がR12C=N−O−であってかつR1がメチルである場合、R2はフェニルではなく;
(iv)R1及びR2の双方がメチルである場合、又は、R1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって非置換シクロヘキシル又は非置換シクロドデシルを形成する場合、R4はClではなく;
(v)R1及びR2の双方がメチルであってかつR4がOR5である場合、R5は4−メチル−クマリン−7−イルではないものとする前記イミノキシトリアジン化合物も、本発明の対象である。
【0012】
1〜C18アルキルは直鎖状若しくは分岐鎖状であり、例えばC1〜C14アルキル、C1〜C12アルキル、C1〜C8アルキル、C1〜C6アルキル又はC1〜C4アルキルである。例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル及びオクタデシルである。
【0013】
3〜C12シクロアルキルは単環式又は多環式の脂肪族環であり、例えば単環式、二環式又は三環式脂肪族環、例えばC5〜C12シクロアルキル、C5〜C10シクロアルキル、C3〜C10シクロアルキルである。単環式環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル、特にシクロペンチル及びシクロヘキシルである。多環式環の例は、ペルヒドロナフチル、アダマンチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[4.2.2]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[4.3.2]ウンデシル、ビシクロ[4.3.3]ドデシル、ビシクロ[3.3.3]ウンデシル、ビシクロ[4.3.1]デシル、ビシクロ[4.2.1]ノニル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、
【化2】
などである。「スピロ」シクロアルキル化合物、例えばスピロ[5.2]オクチル、スピロ[5.4]デシル、スピロ[5.5]ウンデシルも、本明細書中のC3〜C12シクロアルキルの定義に含まれる。
【0014】
6〜C14アリールは、例えばフェニル、ナフチル、アントリル又はフェナントリルであり、特にフェニル又はナフチルであり、好ましくはフェニルである。
【0015】
2〜C14ヘテロアリールは、単環系又は多環系、例えば縮合環系のいずれかを含むことを意味する。ヘテロ原子は、例えばO、S、Nである。C2〜C14ヘテロアリールの例は、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアントレニル、フリル、ジベンゾフリル、クロメニル、キサンテニル、チオキサンチル、フェノキサチイニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニル、フェノキサジニル又はフェナントリルである。
【0016】
特にC3〜C20ヘテロアリールは、チエニル、フリル、イミダゾリル、ベンゾ[b]チエニル、チアントレニル、チオキサンチル、1−メチル−2−インドリル又は1−メチル−3−インドリルである。
【0017】
置換されたC3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールは、1つ以上の置換基、例えば1−6、1−5、1−4、1−3で、又は1つ若しくは2つの置換基で置換されている。フェニル環上の置換基は、好ましくは、フェニル環上で2位、又は2、6位又は2、4、6位の配置である。
【0018】
1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって形成する4員〜12員の炭素環又は複素環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、例えばピロリジン−2−イル、ピペリジニル、ピペラジニル、1,3−ジアゾリジン−2−イル;特にシクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジン−2−イル、1,3−ジアゾリジン−2−イル、特にピロリジン−2−イル、1,3−ジアゾリジン−2−イルである。
【0019】
nが2である場合のR4についての、ジオール、ジアミン、アミノアルコール又はメルカプトアルコールから誘導された二官能性基の例は、−O−(CH22-12O−、−NH−(CH22-12NH−、−O−(CH22-12NH−、−S−(CH22−O−、−O−C64O−、−O−C64NH−、−NH−C64NH−などである。
【0020】
当然のことながら、上に挙げた例は非限定的なものを表すことを意図しており、単に定義を説明するためのものにすぎない。
【0021】
本明細書における「及び/又は」若しくは「又は/及び」という用語は、定義された選択肢(置換基)のうち1つのみではなく、定義された選択肢(置換基)のうち複数が一緒になって、つまり様々な選択肢(置換基)の混合物が存在していてもよいことを表すことを意図している。
【0022】
「少なくとも」という用語は、1つ又は1つを上回る、例えば1つ又は2つ又は3つ、好ましくは1つ又は2つを定義することを意図している。
【0023】
本明細書及び本明細書に続く特許請求の範囲の全体を通じて、文脈が特に必要としている場合を除いて、「含む」という文言は、記載されている整数、工程又は整数や工程の群の包含を意味するものと解釈されるが、他のあらゆる整数、工程又は整数や工程の群を排除するものではない。
【0024】
本願明細書における「(メタ)アクリレート」との文言は、アクリレート並びに相応するメタクリレートを指すことを意図している。
【0025】
本発明の明細書において本発明による化合物について上に示した好ましいものは、特許請求の範囲の全てのカテゴリー、すなわち、組成物の請求項、使用の請求項、そして方法の請求項に向けたものであることを意図している。
【0026】
本発明は、本明細書に開示されている通りの特定の化合物、構成、方法工程、基材及び材料に限定されるものではなく、化合物、構成、方法工程、基材及び材料は若干変更されてもよいものと解釈されるべきである。また、本明細書で用いられている用語は、単に特別な実施形態を説明する目的で用いられているに過ぎず、限定を意図したものではないものと解釈されるべきである。何故ならば、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されるためである。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合に、文脈上別段の明確な規定がない限り、単数形は複数の指示物を包含することに留意すべきである。他に定義されていない限り、本明細書中で用いられている全ての用語及び学術用語は、本発明に関連する当業者により一般に解釈される意味を有することを意図している。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて数値に関連して用いられる場合の「約」という用語は、当業者にとってなじみがありかつ許容可能である精度の区間を表す。該区間は±10%である。
【0027】
上記の通りの組成物であって、式Iの化合物において、
1及びR2は、相互に独立して、水素、NH2、COR5、C1〜C12アルキル又はフェニルであるか、又は、
1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって、6員〜12員の飽和炭素環又は5員の飽和複素環を形成し、ここで、該環は、C1〜C12アルキル及びC3〜C12シクロアルキルからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているものとし;
3及びR4は、R12C=N−O−であり;
ここで、式Iの化合物における全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっており;かつ、
5は、C1〜C12アルキルである前記組成物が好ましい。
【0028】
上記の通りの式Iのイミノキシトリアジン化合物であって、
4は、R12C=N−O−であり;
ここで、式IAの化合物における全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっているが;
但し、
(i)R4がR12C=N−O−である場合、R1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって非置換シクロヘキシルを形成することも非置換シクロドデシルを形成することもなく;
(ii)R4がR12C=N−O−である場合、R1及びR2の双方がメチルとなることはなく;
(iii)R4がR12C=N−O−であってかつR1がメチルである場合、R2はフェニルではないものとする前記化合物が重視されるべきである。
【0029】
特に重要であるものは、式Iの化合物であって、R3及びR4の双方がR12C=N−O−であり、かつ、式Iの化合物における全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2が同じか又は異なっている式Iの化合物である。
【0030】
本発明による化合物は、オキシム誘導体と1,3,5−トリアジンのハロゲン誘導体との反応により容易に製造される。3つのイミノキシ基を有する該化合物は、例えば2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(塩化シアヌル)と相応するオキシムとの反応により容易に製造される。塩化シアヌルに代えてより反応性の高いフッ化シアヌルを使用することができ、また一方で、該反応を臭化シアヌル又はヨウ化シアヌルを用いて行うこともできる。塩化シアヌルの塩素原子を、段階的に、次第に強制的となる条件下に、典型的には漸進的に上昇する温度で、異なる求核試薬で置換できることはよく知られている[Blotny, Grzegorz, Tetrahedron (2006), 62(41), 9507-9522参照]。その結果、3種の異なるオキシムが使用される場合、すなわち、まずR12C=NOH、次いでR'1R'2C=NOH、次いでR''1R''2C=NOHが使用される場合、3つの異なるイミノキシ基を有するイミノキシトリアジンを製造することができる。一方で、全てのハロゲン原子を同一のオキシムR12C=NOHで置換すると、対称的なイミノキシトリアジンが得られる。
【0031】
【化3】
【0032】
1及びR2は、上に記載した通りの定義を有し、R'1、R'2、R''1及びR''2はR1及びR2と同様に定義されるが、但し、式Iの化合物中の全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2が異なる場合を示すためには、独立して異なる意味を示す。
【0033】
nが2である場合、上記反応において使用される中間体は、化合物
【化4】
である。このような中間体を製造するためには、塩化シアヌルと、0.5当量の相応するビス求核剤(ジアミン、アミノアルコール、ジオールなど)とを、0〜10℃で反応させる。このような低温では、塩化シアヌル中のCl原子が1つだけ置換されることはよく知られている。
【0034】
該反応の間に遊離する塩化水素は、好ましくは、適した無機又は有機塩基の添加により捕捉される。非限定例は、NaOHNa2CO3、K2CO3、Ca(OH)2、トリエチルアミン又はピリジンである。プロセスの観点からは、HClと共に液体の塩、いわゆるイオン液体を形成する塩基を使用することが好ましい場合がある。そのような塩基の非限定例は、例えば1−メチルイミダゾールである。
【0035】
前記反応は、溶剤なしでも、適当な溶剤又は溶剤混合物中でも実施可能である。過剰のアミン塩基を溶剤又は溶剤混合物として使用することができ、また若干の例を挙げると、例えばトルエン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、t−ブチル−メチルエーテルを使用することができる。前記反応は、水中でも、水と非水混和性の溶剤とからなる二相系中でも進行しうる。相間移動触媒、例えばアンモニウム塩やホスホニウム塩の添加が有利でありうる。
【0036】
反応温度は、使用されるハロトリアジン、オキシム、溶剤及び塩基の反応性により決定され、広範囲で、例えば−50〜150℃、典型的には0〜100℃で変動しうる。
【0037】
塩化シアヌルとオキシムとの反応の若干の例が刊行物において報告されており、例えばアセトフェノンオキシムとの反応[Furuya, Yoshiro; Ishihara, Kazuaki; Yamamoto, Hisashi, Journal of the American Chemical Society (2005), 127(32), 11240-11241参照]又はアセトンオキシムとの反応[Chwalinski, Stefan, (1964), PL 48331, 優先権: PL 19621128. CAN 62:43973参照]が開示されている。
【0038】
塩化シアヌルとオキシムからのイミノキシトリアジンの合成は、好ましい方法ではあるが唯一の方法ではない。例えばGrigat, Ernst; Puetter, Rolf, Chemische Berichte (1966), 99(7), 2361-70に記載されているように、オキシムとシアヌル酸のエステルから対称的なイミノキシトリアジンを得ることができる。
【0039】
1つ又は2つのイミノキシ基を有するイミノキシトリアジンの合成は、類似の方法で達成可能である。この場合、塩化シアヌルのCl原子が1つ又は2つだけ、オキシム誘導体で置換される。その後、残りのCl原子が所望の求核試薬、例えばアミン、アルコール、フェノール、シアニド又はチオレートで置換される。最初に塩化シアヌルの1つ又は2つのCl原子を所望の求核試薬で置換し、次いで残りのCl原子をオキシム誘導体で置換することも可能である。
【0040】
塩化シアヌルとオキシムとの反応の間に遊離HClを捕捉するための塩基として有機トリアルキルアミンが使用される場合、該アミンの断片を1つ又は2つのCl原子で置換することができる[実施例13以降の化合物の製造、及びBeata Kolesinska, Zbigniew J. Kaminski, Tetrahedron 65 (2009) 3573-3576参照]。
【0041】
上記の反応において出発材料として使用されるオキシム誘導体R12C=NOHは、十分に知られた化合物であり、商業的に入手されるか、又は当業者に公知の標準的な方法により容易に製造される[例えばChiba, S.; Narasaka, K, Science of Synthesis, Knowledge Updates (2011), (4), 445-499. Georg Thieme Verlag, CAN 156:637350参照]。
【0042】
従って、式Iの化合物の製造方法であって、
1及びR2は、相互に独立して、水素、NH2、NHR5、NR56、COR5、COOR5、CONH2、CONHR5、CONR56、CN、SR5、OR5、C1〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールであり、
ここで、該C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールは、非置換であるか、又はC1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、フェニル、ハロゲン及びC1〜C12アルコキシからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているか、又は、
1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって、4員〜12員の炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和の環を形成し、ここで、該環は、非置換であるか、又はC1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、フェニル、ハロゲン及びC1〜C12アルコキシからなる群から選択された1つ以上の基で置換されているものとし;
3は、R12C=N−O−であり;
nが1である場合、R4は、F、Cl、OH、OR5、SH、SR5、NH2、NHR5、NR56又はR12C=N−O−であり;
ここで、式Iの化合物における全ての基R12C=N−O−中のR1及びR2は、同じか又は異なっており;
nが2である場合、R4は、ジオール、ジアミン、アミノアルコール又はメルカプトアルコールから誘導された二官能性基であり;
5及びR6は、相互に独立して、C1〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール又はC2〜C14ヘテロアリールであるが;
但し、
(i)R4がR12C=N−O−である場合、R1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって非置換シクロヘキシルを形成することも非置換シクロドデシルを形成することもなく;
(ii)R4がR12C=N−O−である場合、R1及びR2の双方がメチルとなることはなく;
(iii)R4がR12C=N−O−であってかつR1がメチルである場合、R2はフェニルではなく;
(iv)R1及びR2の双方がメチルである場合、又は、R1とR2とこれらR1及びR2が結合しているC原子とが一緒になって非置換シクロヘキシル又は非置換シクロドデシルを形成する場合、R4はClではなく;
(v)R1及びR2の双方がメチルであってかつR4がOR5である場合、R5は4−メチル−クマリン−7−イルではないものとする、前記式Iの化合物の製造方法において、トリクロロ−1,3,5−トリアジン、トリブロモ−1,3,5−トリアジン又はトリヨード−1,3,5−トリアジンと、式(II)
【化5】
[式中、
1及びR2は、上に定義した通りである]
の3つのオキシム化合物とを反応させることによる前記方法も、本発明の対象である。
【0043】
式(I)の化合物は、少なくとも1種のエチレン性不飽和重合性モノマー又はオリゴマーを含有する重合性組成物における、好ましくはコーティング製造に使用される重合性組成物における、重合開始剤、重合助剤又は分子量調節剤として使用される。
【0044】
従って本発明は、(a)エチレン性不飽和重合性モノマー又はオリゴマー、及び(b)熱的又は化学線によりラジカルを発生させる有効な量での、式(I)の少なくとも1種の化合物を含有する組成物を提供する。
【0045】
本発明による組成物において、成分(b)における式Iの化合物中の官能基R12C=N−O−の量は、重合性モノマー又はオリゴマー(a)のエチレン性不飽和官能基C=C 100当たり、0.01〜30、好ましくは0.05〜10、特に好ましくは0.1〜5.0である。成分(a)及び(b)がそれぞれ1つ存在していれば該重合にとって十分である。しかしながら一般には、1を上回る成分(a)、例えば2〜100の成分(a)の混合物を使用することが有効である。特に、オリゴマーは一般に種々の分子量を有する成分の混合物である。1を上回る成分(b)、例えば2〜100の成分(b)も好ましく使用することができる。1を上回る成分(b)が使用される場合、これらは類似した反応性を有していても異なる反応性を有していてもよく、後者の場合には段階的な重合が可能となる。重合開始後の任意の段階でさらなる成分(a)及び/又は(b)を添加することも可能である。
【0046】
本発明の意味でのオリゴマーとは、2〜約50、好ましくは3〜20個のエチレン性不飽和単位が一緒になって結合することにより得られる化合物であり、該化合物は、なおも少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を含んでおり、かつ通常は150〜5000Daの分子量を有している。
【0047】
エチレン性不飽和重合性モノマー又はオリゴマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する広く知られた重合性化合物であり、これら全てのモノマー、プレポリマー、オリゴマー及びコポリマーを含む。そのようなモノマーの非限定例には、以下のものが含まれる:
・以下のものからなる群から選択される、エチレン性不飽和重合性モノマー:アルケン、共役ジエン、スチレン、アクロレイン、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸誘導体、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン、例えばエチレン、イソプレン、1,3−ブタジエン及びα−C5〜C18アルケン、スチレン、並びにヒドロキシ、C1〜C4アルコキシ、例えばメトキシ又はエトキシ、ハロゲン、例えば塩素、アミノ及びC1〜C4アルキル、例えばメチル又はエチルからなる群から選択される1〜3個の置換基でフェニル基上で置換されたスチレン、例えばメチルスチレン、クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン;
・不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸及びその塩、エステル及びアミド、並びに不飽和脂肪酸、例えばリノレン酸及びオレイン酸であって、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましく;そのような不飽和カルボン酸は、場合により、飽和ジ−又はポリ−カルボン酸、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン散、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ヘプタンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸又はヘキサヒドロフタル酸と混合して使用される;
・上記の不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸の混合物から誘導される不飽和カルボン酸エステル、ここで、該エステルは、例えばアルキルエステル、例えばメチルエステル、エチルエステル、2−クロロエチルエステル、N−ジメチルアミノエチルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル、イソボルニルエステル又は[2−エキソボルニル]エステル;ベンジルエステル;フェニルエステル、ベンジルエステル又はo−、m−及びp−ヒドロキシフェニルエステル;ヒドロキシアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチルエステル、2−ヒドロキシプロピルエステル、4−ヒドロキシブチルエステル、3,4−ジヒドロキシブチルエステル又はグリセロール[1,2,3−プロパントリオール]エステル;エポキシアルキルエステル、例えばグリシジルエステル、2,3−エポキシブチルエステル、3,4−エポキシブチルエステル、2,3−エポキシシクロヘキシルエステル又は10,11−エポキシウンデシルエステル;アミノアルキルエステル又はメルカプトアルキルエステル;又は後述の通りの多官能エステルである;
・上記の不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸の混合物から誘導される不飽和カルボン酸アミド、ここで該アミド群は、上記のエステルと同様に、例えば(メタ)アクリルアミド又はN−置換(メタ)アクリルアミド、例えばN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド及びN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド又はIBMAA(N−イソブトキシメチルアクリルアミド)、又は脂肪族多価アミンとのアミドであってよい;
・(メタ)アクリロニトリル;
・不飽和酸無水物、例えば無水イタコン酸、無水マレイン酸、2,3−ジメチルマレイン酸無水物又は2−クロロマレイン酸無水物;
・ビニルエーテル、例えばイソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル又はフェニルビニルエーテル;
・ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、酪酸ビニル及び安息香酸ビニル;
・塩化ビニル又は塩化ビニリデン;
・N−ビニル複素環式化合物、例えばN−ビニルピロリドン又は好適に置換されたビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール又は4−ビニルピリジン;
・ジアクリレートエステル、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジアクリレート;
・ジビニルベンゼン、ジビニルスクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート又はトリス(2−アクリロイルエチル)イソシアヌレート;
・多官能アルコールのエステル、例えば芳香族ポリオール、例えばヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ノボラック又はレゾール、又は特に例えば有利には2〜12個の炭素原子を有するアルキレンジオールを含む脂肪族及び脂環式ポリオール、例えばエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、好ましくは分子量200〜1500を有するポリエチレングリコール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(β−ヒドロキシエチル)アミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール及びソルビトールのエステル、ここで、該ポリオールは、場合により1種又は種々の不飽和カルボン酸によって部分的又は完全にエステル化されており、部分エステル中の遊離ヒドロキシ基は他のカルボン酸によって変性、例えばエーテル化又はエステル化されてよく;又は該ポリオールをベースとするポリエポキシドの、特に芳香族ポリオール及びエピクロロヒドリンからのエステル、並びにポリマー鎖に又は側基にヒドロキシル基を含むポリマー及びコポリマー、例えばポリビニルアルコール及びそのコポリマー、ポリメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル又はそのコポリマー、又はヒドロキシル末端基を有するオリゴエステル;例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリトリトールオクタアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、トリペンタエリトリトールオクタメタクリレート、ペンタエリトリトールジイタコネート、ジペンタエリトリトールトリスイタコネート、ジペンタエリトリトールペンタイタコネート、ジペンタエリトリトールヘキサイタコネート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトール変性トリアクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、オリゴエステルアクリレート又はオリゴエステルメタクリレート、グリセロールジ−又はトリ−アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、分子量200〜1500Daを有するポリエチレングリコールのビスアクリレート又はビスメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールエトキシレートトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート、ペンタエリトリトールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリトリトールプロポキシレートテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート又はネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート;
・(プレポリマーとしても公知である)高分子量(オリゴマーの)多不飽和化合物の非限定例は、以下のものである:
・上記のエチレン性不飽和の単官能又は多官能カルボン酸とポリオール又はポリエポキシドとのエステル;鎖に又は側基にエチレン性不飽和基を有するポリマー、例えば不飽和ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタン及びそのコポリマー;アルキド樹脂;ポリブタジエン又はブタジエンコポリマー、ポリイソプレン又はイソプレンコポリマー、側鎖に(メタ)アクリル基を有するポリマー又はコポリマー、例えばメタクリル化ウレタン、またさらには1種以上のそのようなポリマーの混合物;又は
・アミノアクリレート;又は、あらゆる割合でのあらゆるそれらのあらゆる数の、それらの官能性とは無関係の混合物であって、場合によりさらに反応性成分、例えばいわゆるアミノアクリレートと組み合わせた混合物、すなわち、例えばGaskeによりUS3844916に、WeissらによりEP0280222に、MeixnerらによりUS5482649に、又はReichらによりUS5734002に記載されているような、第一級又は第二級アミンとの反応によって変性されているアクリレートをベースとするオリゴマー。市販のアミノアクリレートは、例えばEbecryl(R) 80、Ebecryl(R) 81、Ebecryl(R) 83、Ebecryl(R) P115、Ebecryl(R) 7100(UCB Chemicals)、Laromer(R) PO 83F、Laromer(R) PO 84F、Laromer(R) PO 94F(BASF)、Photomer(R) 4775 F、Photomer(R) 4967 F(BASF Cognis)、CN501(R)、CN503(R)又はCN550(R)(Cray Valley)である。
【0048】
ポリマー、好ましくはコーティングは、有利には当該組成物から製造されてよい。ポリマー、好ましくはコーティングを製造するためには、前記配合物の前記成分(a)及び(b)及び場合により着色剤及び/又は添加剤が、公知の被覆技術によって、例えばスピンコーティング、浸漬、ナイフ塗装、カーテン状流下、ハケ塗り又は吹付塗装によって、特に静電吹付塗装及びリバースローラー塗装によって、さらには電気泳動電着法によって、基材に均一に施与される。施与量(コーティング厚)及び基材(支持層)の性質は、所望の適用分野に依存する。コーティング厚は一般に0.1μm〜300μm超の範囲内であるが、コーティングは、所望の場合にはより厚くてもよく、例えば1〜5mmであってもよい。
【0049】
その後、湿ったコーティングを後述の通りの重合によって硬化させる。
【0050】
当該コーティングには、印刷インキ(湿っている間)及び印刷物(硬化後に乾燥させたもの)も含まれるものと解されるべきである。
【0051】
それらの特定の組成に依存して、前記コーティングを、あらゆる所望の基材上に、印刷インキ、液体塗料、粉体塗料、ゲルコート、接着剤、フォトレジストとして塗布することができる。例えば木材、テキスタイル、紙、セラミックス、ガラス、ガラス繊維、プラスチック、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン又は酢酸セルロース、特にフィルム形態のもの、さらには金属、例えばAl、Cu、Ni、Fe、Zn、Mg、Co、GaAs、Si又はSiO2といったあらゆる種類の基材が適しており、該基材に、保護層又は装飾層を、所望の場合には画像様露光によって及び/又は例えばプライマーのような既存のコーティング上に、施与することができる。
【0052】
前記組成物はさらに、成形法において使用可能である。
【0053】
前記組成物はさらに慣用の添加剤を含んでよく、変法として、該添加剤は重合後に添加されてもよい。このような添加剤は通常の少量で添加されてよく、例えばUV吸収剤又は光安定剤、例えばヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、オキサラミド及びヒドロキシフェニル−s−トリアジンからなる群から選択される化合物を添加することができる。特に適した光安定剤は、立体障害アミン(HALS)、例えば2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン又は2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾールタイプからなる群から選択されるものである。2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンタイプの光安定剤の例は、例えばUS4619956、EP0434608、US5198498、US5322868、US5369140、US5298067、W094/18278、EP0704437、GB2297091又はW096/28431から公知である。
【0054】
着色剤の例は、顔料又は染料、特に顔料、殊に有機顔料、例えばカラーインデックスに挙げられているものである。
【0055】
従って前記組成物は、少なくとも1種の顔料、少なくとも1種の染料、又は少なくとも1種の顔料と少なくとも1種の染料との混合物を含むことができる。
【0056】
前記組成物はさらに、その他の慣用の添加剤、例えば充填剤、例えば炭酸カルシウム、シリケート、ガラス又はガラス繊維材料、滑石、カオリン、雲母、硫酸バリウム、金属酸化物及び金属水酸化物、カーボンブラック、グラファイト、粉末化木材及び他の天然生成物からの粉末化又は繊維状材料、合成繊維、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、流動化剤、触媒、蛍光増白剤、難燃剤、静電防止剤又は発泡剤を含んでよい。
【0057】
本発明は、ラジカルの存在により誘発される反応においてラジカルを発生させるための式(I)の当該化合物の使用、並びに、式(I)の化合物を含有する組成物を用いることにより好ましくはコーティングの形態のポリマー物質を製造するための方法にも関する。
【0058】
本発明はさらに、式(I)の前記化合物を用いたフリーラジカル重合により前記オリゴマー、コオリゴマー、ポリマー又はコポリマーを製造するための方法を提供する。
【0059】
式(I)の化合物は、重合開始剤として、特にフリーラジカル重合により硬化するコーティングのための硬化剤における熱ラジカル開始剤(TRI)として使用可能である。
【0060】
前記コーティングは、熱硬化組成物、デュアル硬化性組成物(熱放射及びUV照射、又は熱放射及び電子線照射)又はハイブリッド硬化性組成物(ラジカル硬化性でかつカチオン硬化性の組成物)であることができる。
【0061】
デュアルキュア組成物は、最初に熱により、次いでUV又は電子線照射によって、又はその逆で硬化する。該組成物は、式(I)の化合物の存在下にUV光照射時に反応しうる上記の通りのエチレン性二重結合を有する成分を含有する。
【0062】
ハイブリッド系は、カチオン重合性であってかつラジカル重合性であってかつ光重合性である原材料を含む。カチオン重合性の系の例には、環状エーテル、特にエポキシド及びオキセタン、またさらにはビニルエーテル及びヒドロキシ含有化合物が含まれる。ラクトン化合物及び環状チオエーテル並びにビニルチオエーテルも使用可能である。さらなる例には、アミノプラスチック又はフェノール性レゾール樹脂が含まれる。これらは特に、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びアルキド樹脂であり、特にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂とメラミン樹脂との混合物である。照射硬化性樹脂は、エチレン性不飽和化合物、特に(メタ)アクリレート樹脂を含有する。例は上でも挙げられている。
【0063】
さらに重要であるものは、第一段階で光重合され、次いで第二段階で熱での後処理によって架橋されるか、又はその逆であるハイブリッド系である。そのようなハイブリッド系は、不飽和化合物を、非光重合性の皮膜形成性成分と混合して含有する。該皮膜形成性成分は、例えば、物理的に乾燥しているポリマー又は有機溶剤中の該ポリマーの溶液、例えばニトロセルロース又はセルロースアセトブチレートであってよい。しかしながら、該皮膜形成性成分は、化学硬化性又は熱硬化性の樹脂、例えばポリイソシアネート、ポリエポキシド又はメラミン樹脂であってもよい。
【0064】
フリーラジカル重合には、熱硬化、IR硬化及びNIR硬化を含む熱重合及び/又はUV重合が含まれる。熱硬化とは、前記混合物を基材に施与した後の、対流熱又はIR線又はNIR線の適用又はマイクロ波照射又は超音波曝露を指す。粉体塗料の場合には、付着した粉体塗料が最初に溶解されて、表面層が好ましくは対流熱によって形成される。フリーラジカル重合を開始及び完了させるのに適した温度は、例えば50℃〜250℃、特に60℃〜180℃の温度である。
【0065】
本発明による方法において使用されるNIR線は、約750nm〜約1500nm、好ましくは750nm〜1200nmの波長範囲における短波赤外線である。NIR線のための線源には、例えば市販(例えばAdphos社製)の通常のNIR線エミッタが含まれる。
【0066】
本発明による方法において使用されるIR線は、約1500nm〜約3000nmの波長範囲における中波長線、及び/又は、より長波長の3000nm超の波長範囲における赤外線である。このようなIR線エミッタも、(例えばHeraeus社より)市販されている。
【0067】
硬化プロセスに使用されるマイクロ波線は、約1mm〜30cmの波長の電磁放射線である。
【0068】
超音波硬化は、約20kHzの周波数で行われる。
【0069】
UV硬化工程は、通常は、約150nm〜IR領域、例えば約200nm〜約650nm、特に200nm〜450nmの波長の光を用いて行われる。光源として、多数の極めて様々な種類のものが使用される。点光源と扁平な照射器(ランプアレイ)のいずれも適している。例は次のものである:カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、中圧、高圧及び低圧水銀照射器(適切な場合、金属ハロゲン化物でドープされている)(メタルハライドランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、スーパーアクティニック蛍光管、蛍光灯、アルゴン白熱ランプ、エレクトロニックフラッシュランプ、例えば高エネルギーフラッシュランプ、写真用フラッドライトランプ、シンクロトロン又はレーザープラズマにより発生される電子線及びX線。また、化学線は、発光ダイオード(LED)又は有機発光ダイオード(OLED)、例えばUV線発光ダイオード(UV−LED)により提供される。これらのLEDは、線源の即時のオン・オフの切換えが可能である。さらに、UV−LEDは一般に狭い波長分布を有しており、ピーク波長のカスタマイズを可能にし、また電気エネルギーからUV線への効率的な変換も提供する。
【0070】
本発明はさらに、ポリオレフィンの制御分解のための一般に適用可能な方法において、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレン、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンブレンドの分子量を低下させるために式(I)の化合物を使用する方法を提供する。
【0071】
当該分解プロセスにおいて、式(I)の化合物は、分解すべきポリオレフィンへ、該分解すべきポリオレフィンの総質量に対して約0.001〜5.0質量%、好ましくは0.01〜2.0質量%、特に好ましくは0.02〜1.0質量%の濃度で十分に配合される。このような量は、分子量を望ましいように低下させるのに有効である。式(I)の化合物は、分解すべきポリオレフィンへ、個々の化合物として、又は混合物として添加されてよい。
【0072】
分解すべきポリオレフィンタイプのポリマーには、特にプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー及びポリプロピレンブレンドが含まれる。プロピレンコポリマーは、プロピレンと種々の割合のコモノマーとを含むオレフィン混合物から構成されていてよく、該コモノマーは、該オレフィン混合物に対して一般には90質量%まで、好ましくは50質量%までである。コモノマーの例は、オレフィン、例えば1−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテン;シクロオレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン又はエチリデンノルボルネン;ジエン、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン又はノルボルナジエン;アクリル酸誘導体;又は不飽和カルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸である。
【0073】
使用可能なポリプロピレンブレンドは、ポリプロピレンとポリオレフィンとの混合物である。例は、ポリプロピレンとポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、高分子量高密度ポリエチレン(HMW HDPE)、超高分子量高密度ポリエチレン(UHMW HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、分岐状低密度ポリエチレン(BLDPE)又は低割合のジエンを含むエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)とのブレンドである。
【0074】
ポリマーへの配合は、例えば、式(I)の化合物又はその混合物と、所望であればさらなる添加剤とを、該ポリマーへ、プロセス技術において慣例的な方法を用いて混合することにより行うことができる。
【0075】
また、配合を、ポリマーの分解をまだ生じない温度で行うこともできる(潜在的な化合物)。このようにして準備されたポリマーに、引き続き二度目の加熱を行い、かつ、所望のポリマー分解が生じるのに十分な期間にわたって高められた温度にさらすことができる。
【0076】
以下の実施例により本発明についてさらに詳説するが、これらの実施例のみに範囲が限定されるものではない。部及びパーセンテージは、本明細書の以降の記載及び特許請求の範囲において、特段指定されない限り質量によるものである。これらの実施例において、3つ以上の炭素原子を有するアルキル基について何ら特定の異性体を挙げることなく言及している場合、いずれの場合にもn−異性体を意味するものとする。
【実施例】
【0077】
実施例1:N−[[4,6−ビス[(イソプロピリデンアミノ)オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]プロパン−2−イミン
【化6】
【0078】
無水ピリジン(15ml)中のアセトンオキシム(2.92g、0.04モル)の冷(0℃)溶液に、塩化シアヌル(1.84g、0.01モル)を添加する。発熱反応が生じ、温度が35℃に上昇する。その後、この溶液を室温で5時間撹拌し、その後、氷冷水100ml中に注ぐ。生じるエマルションを、ジクロロメタン(20ml×5)で抽出し、この抽出物をMgSO4上で乾燥させ、溶剤を蒸発させる。残留物をクロマトグラフィーにかけ(シリカゲル、CH2Cl2−C25O(CO)CH3 7:3)、純粋なフラクションをジクロロメタン−ヘキサンから再結晶させると、標題化合物2.79gが白色の固形物として得られる。mp.156〜158℃。
【0079】
【化7】
【0080】
実施例2:N−[[4−[(E)−1−メチルプロピリデンアミノ]オキシ−6−[(Z)−1−メチルプロピリデンアミノ]オキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]ブタン−2−イミン
【化8】
【0081】
無水ピリジン(16ml)中のエチルメチルケトキシム(4.18g、0.048モル)の冷(0℃)溶液に、塩化シアヌル(2.21g、0.012モル)を添加する。発熱反応が生じ、温度が16℃に上昇する。その後、この溶液を室温で12時間撹拌し、その後、氷冷水150ml中に注ぐ。生じるエマルションを、ジクロロメタン(30ml×3)で抽出し、この抽出物をMgSO4上で乾燥させ、溶剤を蒸発させる。残留物をクロマトグラフィーにかける(シリカゲル、CH2Cl2−C25O(CO)CH3 8:3)と、標題化合物3.72gが、静置時にゆっくりと凝固する無色の油状物として得られる。mp.51〜56℃。
【0082】
【化9】
【0083】
実施例3:N−[[4,6−ビス[(シクロヘキシリデンアミノ)オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]シクロヘキサンイミン
【化10】
【0084】
無水ピリジン(20ml)中のシクロヘキサノンオキシム(4.53g、0.04モル)の冷(0℃)溶液に、塩化シアヌル(1.84g、0.01モル)を添加する。発熱反応が生じ、温度が22℃に上昇する。その後、この溶液を室温で15時間撹拌し、その後、氷冷水200ml中に注ぐ。沈殿した固形物をろ別し、乾燥させ、ジクロロメタン−ヘキサンから再結晶させると、標題化合物3.57gが白色の固形物として得られる。この化合物は、120℃超で溶融せずに分解する(DSCデータ)。
【0085】
【化11】
【0086】
実施例4:1−フェニル−N−[[4−[(Z)−1−フェニルエチリデンアミノ]オキシ−6−[(E)−1−フェニルエチリデンアミノ]オキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]エタンイミン
【化12】
【0087】
標題化合物が、実施例3と同様に、ピリジン20ml中のアセトフェノンオキシム(6.8g、0.05モル)及び塩化シアヌル(2.76g、0.015モル)から、白色の固形物として得られる。5.71g、mp.153〜156℃。
【0088】
【化13】
【0089】
実施例5:N−[[4,6−ビス[(シクロドデシリデンアミノ)オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]シクロドデカンイミン
【化14】
【0090】
無水ピリジン(30ml)中のシクロドデカノンオキシム(7.89g、0.04モル)の冷(0℃)溶液に、塩化シアヌル(1.84g、0.01モル)を添加する。発熱反応が生じ、温度が20℃に上昇する。その後、この溶液を室温で20時間撹拌し、その後、氷冷水300ml中に注ぐ。沈殿した固形物をろ別し、クロマトグラフィーにかける(シリカゲル、CH2Cl2−C25O(CO)CH3 95:5)。純粋なフラクションを酢酸エチル−ヘキサンから再結晶させると、標題化合物2.36gが白色の固形物として得られる。mp.104〜107℃。
【0091】
【化15】
【0092】
実施例6:N−[[4,6−ビス[[(Z)−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)アミノ]オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンイミン
【化16】
【0093】
標題化合物が、実施例5と同様に、ピリジン60ml中の3,5,5−トリメチルシクロヘキサノンオキシム(15.5g、0.1モル)及び塩化シアヌル(4.8g、0.026モル)から、白色の固形物として得られる。4.7g、mp.164〜200℃。
【0094】
【化17】
【0095】
実施例7:N'−[[4,6−ビス[[(Z)−ベンジリデンアミノ]オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]ベンズアミジン
【化18】
【0096】
無水テトラヒドロフラン(THF)(25ml)中のベンズアルデヒドオキシム(7.45g、0.0615モル)の溶液に、トリエチルアミン(6.27g、0.062モル)を添加し、その後、室温(RT)で15分以内で、THF 15ml中の塩化シアヌル(3.50g、0.019モル)の溶液を添加する。この濃厚な懸濁液をさらなるTHF 15mlで希釈し、その後、RTで15時間撹拌する。その後、氷冷水400mlを添加し、沈殿した固形物をろ別し、乾燥させ、その後、ジクロロメタン−酢酸エチルから2回再結晶させると、標題化合物4.29gが、300℃未満では溶融しない白色の粉末として得られる。
【0097】
【化19】
【0098】
実施例8:N'−[[4,6−ビス[[(E)−[アミノ(フェニル)メチレン]アミノ]オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]ベンズアミジン
【化20】
【0099】
無水THF(40ml)中のベンズアミドオキシム(5.45g、0.040モル)の溶液に、トリエチルアミン(4.05g、0.040モル)を添加し、その後、RTで15分以内で、THF 25ml中の塩化シアヌル(1.84g、0.010モル)の溶液を添加する。その後、この濃厚な懸濁液をRTで3時間撹拌する。その後、氷冷水400mlを添加し、沈殿した固形物をろ別し、乾燥させ、その後、酢酸エチル(50ml)及びアセトニトリル(25ml)で室温で完全に洗浄すると、標題化合物3.2gが白色の粉末として得られる。mp.204〜206℃。
【0100】
【化21】
【0101】
実施例9:1−メチル−N−[[4−[(E)−(1−メチルピロリジン−2−イリデン)アミノ]オキシ−6−[(Z)−(1−メチルピロリジン−2−イリデン)アミノ]オキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]ピロリジン−2−イミン
【化22】
【0102】
無水ピリジン(45ml)中のN−メチルピロリジンオキシム(Eilingsfeld, Heinz; Seefelder, Matthias; Weidinger, Hans, Chemische Berichte (1963), 96(10), 2671-90に記載の通りに製造)の冷(0℃)溶液に、塩化シアヌル(3.87g、0.021モル)を添加する。発熱反応が生じ、温度が16℃に上昇する。この溶液を室温で2時間撹拌し、その後、44℃で2時間加熱し、その後、減圧下に蒸発乾固させる。固体の残留物を水10mlで洗浄し、乾燥させ、C25OC−ヘキサンから2回再結晶させると、標題化合物6.9gが白色の粉末として得られる。mp.173〜176℃。
【0103】
【化23】
【0104】
実施例10:1−シクロヘキシル−N−[[4−[(E)−(1−シクロヘキシルピロリジン−2−イリデン)アミノ]オキシ−6−[(Z)(1−シクロヘキシルピロリジン−2−イリデン)アミノ]オキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]ピロリジン2−イミン
【化24】
【0105】
N−シクロヘキシルピロリドン−オキシム:クロロホルム(281ml)と、トルエン中のホスゲンの20質量%溶液(262.1g、0.53モル)とからなる混合物に、3〜10℃で、N−シクロヘキシル−ピロリドン(88.6g、0.53モル)を添加する。その後、生じる混合物を、室温で32時間撹拌し、次の工程で直接使用する。
【0106】
別個のフラスコ中に、水性50%ヒドロキシルアミン(38.51g、0.583モル)及び水(74ml)を入れる。この溶液中に、同時に強力に撹拌しながら、予め調製しておいたホスゲン添加溶液と、水160ml中のNaOH溶液(46.20g、1.155モル)を添加する。この添加の間の温度を、10〜20℃に保持する。この混合物を室温でさらに15時間撹拌し、その後、有機層を分離し、MgSO4上で乾燥させ、蒸発させる。固体の残留物を酢酸エチル−ヘキサンから再結晶させると、N−シクロヘキシルピロリドン−オキシム38.4gがオフホワイト色の固形物として得られる。mp.142〜145℃。
【0107】
【化25】
【0108】
無水ピリジン(40ml)中のN−シクロヘキシルピロリドン−オキシム(7.3g、0.04モル)の冷(0℃)溶液に、塩化シアヌル(2.2g、0.012モル)を添加する。その後、この混合物を室温で20時間撹拌し、その後、氷冷水400ml中に注ぐ。固体の沈殿物をろ別し、ジクロロメタン−酢酸エチル−ヘキサンから再結晶させると、標題化合物6.05gがオフホワイト色の結晶体として得られる。mp.156〜160℃。
【0109】
【化26】
【0110】
実施例11:N−[[4,6−ビス[[(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン)アミノ]オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシ]−1,3−ジメチル−イミダゾリジン−2−イミン
【化27】
【0111】
無水ピリジン(25ml)中の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンオキシム(Kitamura, Mitsuru; Chiba, Shunsuke; Narasaka, Koichi, Bulletin of the Chemical Society of Japan (2003), 76(5), 1063-1070に従って製造)(5.3g、0.041モル)の冷(0℃)溶液に、15分以内で、フッ化シアヌル(1.49g、0.011モル)を滴加する。その後、この混合物を42℃で2時間加熱し、その後、室温で15時間撹拌する。ピリジンを減圧下に蒸発させ、残留物をクロマトグラフィーにかけ(シリカゲル、CH2Cl2−CH3OH 20:1〜10:1)、純粋なフラクションを酢酸エチル−ヘキサンから結晶化させると、標題化合物2.4gが白色の結晶体として得られる。mp.143〜145℃(分解)。
【0112】
【化28】
【0113】
実施例12:(3Z)−3−[[4,6−ビス[[(Z)−(1−メチル−2−オキソ−プロピリデン)アミノ]オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]オキシイミノ]ブタン−2−オン
【化29】
【0114】
無水ピリジン(35ml)中の2,3−ブタンジオン−モノキシム(12.13g、0.012モル)の冷(0℃)溶液に、テトラヒドロフラン15ml中の塩化シアヌル(5.53g、0.03モル)の溶液を滴加する。この添加の終わりの時点で、反応混合物の温度は55℃にまで上昇する。その後、この濃厚な混合物を室温で15時間撹拌し、その後、氷冷水1000ml中に注ぐ。沈殿した固形物をろ別し、CH2Cl2−酢酸エチルから再結晶させ、その後CH2Cl2−ヘキサンから再結晶させると、標題化合物4.68gがオフホワイト色の粉末として得られる。mp.173〜174℃。
【0115】
【化30】
【0116】
実施例13:N,N−ジエチル−4,6−ビス[(イソプロピリデンアミノ)オキシ]−1,3,5−トリアジン−2−アミン
【化31】
【0117】
無水アセトニトリル(40ml)中のアセトンオキシム(4.68g、0.063モル)及び塩化シアヌル(3.69g、0.020モル)の溶液に、室温で、トリエチルアミン(6.38g、0.063モル)を添加する。この添加の終わりの時点で、反応混合物の温度は44℃にまで上昇する。その後、この混合物を45℃で21時間撹拌し、8℃に冷却し、沈殿した固形物をろ別し、ろ液を減圧下に蒸発させる。残留物を水で完全に洗浄して乾燥させると、標題化合物2.96gが白色の固形物として得られる。mp.111〜113℃。
【0118】
【化32】
【0119】
実施例A1:コーティング組成物の重合
以下の不飽和重合性組成物を使用する(質量%):
【表1】
【0120】
試験すべき化合物1質量%をこの組成物中に溶解させ、生じる混合物を示差走査熱量測定法(DSC)にかける。試験化合物の活性を、オンセット温度、ピーク温度及びエンドセット温度並びに放熱量(発熱反応)により特性決定される発熱硬化反応により明らかにする。
【0121】
以下のDSCパラメータを使用する:
装置:DSC 30(Mettler)
温度勾配:5℃/分
温度範囲:30〜300℃
窒素下での測定、流量5ml/分
試料量:アルミニウムるつぼ中で化合物約10mg。
【0122】
試験化合物と試験結果を第2表に列挙する。
【0123】
【表2】
【0124】
第2表にまとめた結果は、ブランク配合物を用いた場合には硬化が生じないが、本発明の化合物を配合した場合には明らかな発熱性の硬化が認められることを示している。