特許第5968672号(P5968672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968672
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】中華麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20160728BHJP
【FI】
   A23L7/109 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-100916(P2012-100916)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-226080(P2013-226080A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(72)【発明者】
【氏名】利光 菜由
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝雄
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−061467(JP,A)
【文献】 特開2011−109930(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0142984(US,A1)
【文献】 特開2008−178373(JP,A)
【文献】 特表2005−516601(JP,A)
【文献】 特表2011−515077(JP,A)
【文献】 特表2007−514443(JP,A)
【文献】 特開2004−147549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺原料として、麺原料中の穀粉100質量%のうち、デュラム小麦粉を20〜40質量%およびライ麦全粒粉を3〜40質量%含有する麺原料を含むことを特徴とする中華麺。
【請求項2】
麺原料として、麺原料中の穀粉100質量%のうち、デュラム小麦粉を20〜40質量%およびライ麦ふすまを3〜15質量%含有する麺原料を含むことを特徴とする中華麺。
【請求項3】
即席麺である請求項1または2に記載の中華麺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュラム小麦粉と穀粉の全粒粉または穀粉のふすまとを含有する麺原料を用いて製麺された麺類に関する。本発明の麺類は、麺のほぐれがよく、食感も良好であり、即席麺とした場合、復元性にも優れるものである。
【背景技術】
【0002】
麺のほぐれの改善については、従来より種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、麺線に100℃以上で1〜5分間、麺線の水分が15〜30重量%となるように加熱乾燥処理を施す工程を有する加圧加熱殺菌処理麺の製造方法が記載され、この製造方法によれば、加圧加熱殺菌処理に起因するほぐれおよび食感の低下を有効に防止できることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、麺用穀粉中、ライ麦粉を少量(0.3〜1.5質量%)含有する麺原料を用いて製麺された麺類が記載されている。特許文献2で用いられるライ麦粉は、特許文献2の段落〔0007〕の記載から明らかなように、皮部を極力含まないように製粉したものであり、全粒粉(皮部も含めて粉砕したもの)でもふすまでもない。
特許文献2には、上記のように麺原料にライ麦粉を少量含有させることにより、麺のほぐれを改善できることが記載されている。
しかし、このような従来の技術では、麺のほぐれの改善効果が十分とはいえず、また得られる麺の食感も改善の余地があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−169713号公報
【特許文献2】特開2009−183200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、麺のほぐれがよく、食感も良好であり、また即席麺とした場合、復元性にも優れる麺類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々検討した結果、麺原料に配合する穀粉中に、デュラム小麦粉と、穀粉の全粒粉または穀粉のふすまとを、それぞれ特定の割合で配合することにより、前記目的を達成する麺類が得られることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、「麺原料中の穀粉100質量%のうち、デュラム小麦粉を10〜60質量%および穀粉の全粒粉を3〜40質量%含有する麺原料を製麺してなることを特徴とする麺類(以下、本発明の第1の麺類ということもある)」および「麺原料中の穀粉100質量%のうち、デュラム小麦粉を10〜60質量%および穀粉のふすまを1〜30質量%含有する麺原料を製麺してなることを特徴とする麺類(以下、本発明の第2の麺類ということもある)」を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の麺類及び第2の麺類は、いずれも、麺のほぐれがよく、食感も良好であり、また即席麺とした場合、復元性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の第1の麺類について説明する。
本発明の第1の麺類で用いられるデュラム小麦粉としては、特に制限されるものではなく、デュラム小麦粉の粒度にも特に制限はない。
【0010】
上記デュラム小麦粉は、麺原料中の穀粉100質量%のうち、10〜60質量%配合する必要があり、20〜40質量%配合することが好ましい。デュラム小麦粉の配合量が10質量%より少ないと、ほぐれ改善への効果が低く、また60質量%より多いと、食感が硬くなり、復元性が劣る。
【0011】
また、本発明の第1の麺類で用いられる穀粉の全粒粉としては、小麦、ライ麦、大麦、そば、コーンフラワーなどの全粒粉が挙げられ、これら中でも、ライ麦全粒粉、小麦全粒粉が好ましく、特にライ麦全粒粉が好ましい。
【0012】
上記穀粉の全粒粉は、麺原料中の穀粉100質量%のうち、3〜40質量%配合する必要があり、5〜20質量%配合することが好ましい。穀粉の全粒粉の配合量が3質量%より少ないと、ほぐれ改善への効果が低く、また40質量%より多いと、食感が硬くなり、復元性が劣る。
【0013】
麺原料には、上記のデュラム小麦粉および穀粉の全粒粉の他に、目的とする麺の種類に応じて適宜、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉などの小麦粉、そば粉、コーンフラワー、米粉、ライ麦粉、大麦粉、オーツ粉などの穀粉を配合することができ、またタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシースターチ、小麦澱粉、甘藷澱粉などの澱粉類、およびそれらに架橋、エステル化、エーテル化、酸化、α化などの処理を施した加工澱粉類を配合することができる。
【0014】
また、麺原料には、上記の穀粉および澱粉の他に、副原料として、小麦蛋白質、大豆蛋白質、カゼイン、乳蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳などの蛋白質素材;キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸およびその塩、寒天、ゼラチン、ペクチンなどの増粘剤;動植物油脂、乳化油脂、ショートニング、粉末油脂などの油脂類;レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤;炭酸塩、リン酸塩などの無機塩類;かんすい、焼成カルシウム、食物繊維、膨張剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、デキストリン、ソルビット、エチルアルコール、酵素剤などの従来より麺原料に配合されている添加物を、目的とする麺の種類に応じて適宜選択して配合することができる。
【0015】
本発明の第1の麺類は、上記の麺原料を用いる以外は、目的とする麺の種類に応じた常法に従って製造することができる。例えば以下の3通りの製麺方法により、麺類を製造することができる。
(1) 麺原料に加水し混捏して麺生地を作製し、該麺生地を圧延し、圧延した麺帯を麺線に切り出す方法
(2) 麺原料に加水し混捏して麺生地を作製し、該麺生地を麺線に押し出す方法
(3) 麺原料に加水し混捏して麺生地を作製し、該麺生地を押し出し、押し出した麺生地を束ねて圧延し、圧延した麺帯を麺線に切り出す方法
【0016】
次に、本発明の第2の麺類について説明する。
本発明の第2の麺類は、本発明の第1の麺類において、穀粉の全粒粉の代わりにまたは穀粉の全粒粉とともに、穀粉のふすまを配合した以外は、本発明の第1の麺類と同じである。
本発明の第2の麺類で用いられる穀粉のふすまとしては、小麦、ライ麦、大麦、そば、コーンフラワーなどのふすまが挙げられ、これら中でも、ライ麦ふすま、小麦ふすまが好ましく、特にライ麦ふすまが好ましい。
【0017】
上記穀粉のふすまは、麺原料中の穀粉100質量%のうち、1〜30質量%配合する必要があり、3〜15質量%配合することが好ましい。穀粉のふすまの配合量が1質量%より少ないと、ほぐれ改善の効果が低く、また30質量%より多いと、食感が硬くなり、復元性が劣る。
【0018】
本発明の第2の麺類で用いられるデュラム小麦粉およびその配合量は、本発明の第1の麺類で用いられるデュラム小麦粉およびその配合量と同じである。
また、本発明の第1の麺類と同様に、麺原料には、上記のデュラム小麦粉および穀粉のふすまの他に、その他の穀粉、澱粉、副原料などを、目的とする麺の種類に応じて適宜配合することができる。
また、本発明の第2の麺類も、上記の麺原料を用いる以外は、本発明の第1の麺類と同様に、目的とする麺の種類に応じた常法に従って製造することができる。
【0019】
本発明の麺類としては、中華麺、うどん、焼きそば、パスタなどが挙げられ、中華麺が特に好ましい。
本発明の麺類の形態は、生麺、乾麺、即席麺(ノンフライ即席麺、フライ即席麺)のいずれでもよく、特に即席麺であることが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例1〜6、13及び14は参考例である。
【0021】
実施例1〜3(本発明の第1の麺類の実施例)および比較例1〜3
下記の(麺の作製方法)により、ノンフライ即席中華麺をそれぞれ製造した。
(麺の作製方法)
(1)表1に示す配合の麺用穀粉組成物をそれぞれ調製した。
(2)食塩1質量部、かんすい(オリエンタル酵母社製「赤かんすい」)0.4質量部を共に水35質量部に溶かした水溶液を調製し、上記(1)の麺用穀粉組成物100質量部に添加して常法によって10分間混捏して生地を作製した。
(3)上記(2)の生地を製麺ロールを用いて複合、圧延して、厚さ1.5mmの麺帯にした後、18番(麺線幅:約1.2mm)の角の切刃を用いて麺線に切り出した。
(4)上記(3)の麺線を温度100℃の蒸気で2分30秒蒸熱処理した後、110℃の熱風で18分間乾燥してノンフライ即席中華麺をそれぞれ得た。
【0022】
評価試験例1
実施例1〜3および比較例1〜3で得られた各ノンフライ即席中華麺200gを入れた容器に、450mlの沸騰水を注ぎ、蓋をして4分間かけてそれぞれ復元した後、それぞれに濃縮スープを入れた。これらの麺について、下記の評価基準にて、麺のほぐれ、復元性および食感をパネラー10名に評価させた。その結果(パネラー10名の平均点)を表1に示す。
【0023】
(ほぐれの評価基準)
5点:麺線の結着がなく、極めて良好。
4点:ほぼ麺線の結着がなく、良好。
3点:大部分はほぐれているが、一部に麺線の結着が残る。
2点:麺線の結着が多く、不良。
1点:麺線の大部分結着し、極めて不良。
【0024】
(復元性の評価基準)
5点:十分可食状態で、極めて良好。
4点:ほぼ可食状態になっており、良好。
3点:大部分は可食状態であるが、一部に芯が残る。
2点:麺の表面は可食状態であるが、中心部には芯が残り、不良。
1点:麺の表面および中心部はまだ硬く、極めて不良。
【0025】
(食感の評価基準)
5点:滑らかさ、弾力感のバランスが、極めて良好。
4点:滑らかさ、弾力があり、良好。
3点:滑らかさはあるが、若干硬い。
2点:やや滑らかさに欠け、やや硬い。
1点:滑らかさに欠け、硬く、ボキボキとした食感。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例4〜6(本発明の第2の麺類の実施例)および比較例4
表2に示す配合の麺用穀粉組成物をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、ノンフライ即席中華麺をそれぞれ製造した。
【0028】
評価試験例2
実施例4〜6および比較例4で得られた各ノンフライ即席中華麺について、評価試験例1と同様にして、麺のほぐれ、復元性および食感をパネラー10名に評価させた。その結果(パネラー10名の平均点)を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例7〜9(本発明の第1の麺類の実施例)および比較例5
表3に示す配合の麺用穀粉組成物をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、ノンフライ即席中華麺をそれぞれ製造した。
【0031】
評価試験例3
実施例7〜9および比較例5で得られた各ノンフライ即席中華麺について、評価試験例1と同様にして、麺のほぐれ、復元性および食感をパネラー10名に評価させた。その結果(パネラー10名の平均点)を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
実施例10〜12(本発明の第2の麺類の実施例)および比較例6
表4に示す配合の麺用穀粉組成物をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、ノンフライ即席中華麺をそれぞれ製造した。
【0034】
評価試験例4
実施例10〜12および比較例6で得られた各ノンフライ即席中華麺について、評価試験例1と同様にして、麺のほぐれ、復元性および食感をパネラー10名に評価させた。その結果(パネラー10名の平均点)を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
実施例13〜16および比較例7
下記の(麺の作製方法)により、生中華麺をそれぞれ製造した。実施例13および15は本発明の第1の麺類の実施例であり、実施例14および16は本発明の第2の麺類の実施例である。
(麺の作製方法)
(1)表5に示す配合の麺用穀粉組成物をそれぞれ調製した。
(2)食塩1質量部、かんすい(オリエンタル酵母社製「赤かんすい」)1.0質量部を共に水43質量部に溶かした水溶液を調製し、上記(1)の麺用穀粉組成物100質量部に添加して常法によって10分間混捏して生地を作製した。
(3)上記(2)の生地を製麺ロールを用いて複合、圧延して、厚さ1.6mmの麺帯にした後、18番(麺線幅:約1.2mm)の角の切刃を用いて麺線に切り出し、生中華麺をそれぞれ得た。
【0037】
評価試験例5
実施例13〜16および比較例7で得られた各生中華麺を茹でた後、冷蔵庫で一晩保管した。これらの茹で中華麺200gに対して、濃縮スープ70mlを入れた。これらの麺について、評価試験例1と同様にして、麺のほぐれおよび食感をパネラー10名に評価させた。その結果(パネラー10名の平均点)を表5に示す。
【0038】
【表5】