特許第5968775号(P5968775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968775磁気ディスク検査装置及び磁気ヘッド検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968775
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】磁気ディスク検査装置及び磁気ヘッド検査装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/14 20060101AFI20160728BHJP
   G11B 25/04 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   G11B33/14 501D
   G11B25/04 101K
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-278485(P2012-278485)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-123411(P2014-123411A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸生
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敏教
(72)【発明者】
【氏名】桜井 善弘
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−182201(JP,A)
【文献】 特開2002−208133(JP,A)
【文献】 特開平07−147307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/14
G11B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の磁気ディスクを着脱自在に装着するスピンドルと、
前記スピンドルを回転させる回転駆動機構と、
前記磁気ディスクに対して信号の記録及び再生を行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記磁気ディスクの少なくとも半径方向に移動可能なアクチュエータと、
前記磁気ヘッドによって再生された前記磁気ディスクのサーボパターンの再生信号から前記磁気ディスクに対する前記磁気ヘッドの相対位置を検出するサーボ復調部と、
前記サーボ復調部からの位置信号によって前記アクチュエータを位置決め制御するサーボ駆動信号を生成するサーボ駆動部と、
発熱部位ごとに限定された範囲の冷却を行う1個以上の冷却機構と、
前記1個以上の冷却機構の動作を個別に制御可能な冷却機構制御部と、
装置各部の動作を制御する装置制御部とを備え、
前記装置制御部は、前記装置各部の動作状況に応じて前記冷却機構の動作状態を個別に決定し、前記冷却機構制御部を介して前記冷却機構の動作を個別に制御することを特徴とする磁気ディスク検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気ディスク検査装置おいて、
前記冷却機構は、圧縮空気を利用して前記限定された範囲の冷却を行うことを特徴とする磁気ディスク検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気ディスク検査装置において、
前記冷却機構が冷却する前記発熱部位に、前記磁気ディスク、前記磁気ヘッド、前記磁気ヘッドの支持部材、前記磁気ヘッドの信号を増幅するアンプ及び前記アクチュエータのうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする磁気ディスク検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気ディスク検査装置において、
前記装置制御部は、前記磁気ヘッドの位置決め状態や位置決め要求精度に応じて前記冷却機構の動作の可否を個別に決定することを特徴とする磁気ディスク検査装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気ディスク検査装置において、
前記装置制御部は、前記発熱部位の予測される発熱状況によって前記冷却機構の動作状態を個別に決定することを特徴とする磁気ディスク検査装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気ディスク検査装置において、
前記装置制御部は、前記磁気ヘッドの位置決め状態や位置決め要求精度に応じて前記冷却機構の動作の可否を個別に判断し、更に前記発熱部位の発熱状況によって前記冷却機構の動作状態を個別に決定することを特徴とする磁気ディスク検査装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の磁気ディスク検査装置において、
前記装置制御部は、前記サーボ駆動信号の時間変化から前記発熱部位の発熱状況を予測して前記冷却機構の動作状態を個別に決定することを特徴とする磁気ディスク検査装置。
【請求項8】
磁気ディスクを装着したスピンドルと、
前記スピンドルを回転させる回転駆動機構と、
前記磁気ディスクに対して信号の記録及び再生を行う磁気ヘッドを着脱可能に支持するサスペンションと、
前記サスペンションに支持された磁気ヘッドを前記磁気ディスクの少なくとも半径方向に移動可能なアクチュエータと、
前記磁気ヘッドによって再生された前記磁気ディスクのサーボパターンの再生信号から前記磁気ディスクに対する前記磁気ヘッドの相対位置を検出するサーボ復調部と、
前記サーボ復調部からの位置信号によって前記アクチュエータを位置決め制御するサーボ駆動信号を生成するサーボ駆動部と、
発熱部位ごとに限定された範囲の冷却を行う1個以上の冷却機構と、
前記1個以上の冷却機構の動作を個別に制御可能な冷却機構制御部と、
装置各部の動作を制御する装置制御部とを備え、
前記装置制御部は、前記装置各部の動作状況に応じて前記冷却機構の動作状態を個別に決定し、前記冷却機構制御部を介して前記冷却機構の動作を個別に制御することを特徴とする磁気ヘッド検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気ヘッド検査装置おいて、
前記冷却機構は、圧縮空気を利用して前記限定された範囲の冷却を行うことを特徴とする磁気ヘッド検査装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の磁気ヘッド検査装置において、
前記冷却機構が冷却する前記発熱部位に、前記磁気ディスク、前記磁気ヘッド、前記サスペンション、前記磁気ヘッドの信号を増幅するアンプ及び前記アクチュエータのうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする磁気ヘッド検査装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の磁気ヘッド検査装置において、
前記装置制御部は、前記磁気ヘッドの位置決め状態や位置決め要求精度に応じて前記冷却機構の動作の可否を個別に決定することを特徴とする磁気ヘッド検査装置。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の磁気ヘッド検査装置において、
前記装置制御部は、前記発熱部位の予測される発熱状況によって前記冷却機構の動作状態を個別に決定することを特徴とする磁気ヘッド検査装置。
【請求項13】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の磁気ヘッド検査装置において、
前記装置制御部は、前記磁気ヘッドの位置決め状態や位置決め要求精度に応じて前記冷却機構の動作の可否を個別に判断し、更に前記発熱部位の発熱状況によって前記冷却機構の動作状態を個別に決定することを特徴とする磁気ヘッド検査装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の磁気ヘッド検査装置において、
前記装置制御部は、前記サーボ駆動信号の時間変化から前記発熱部位の発熱状況を予測して前記冷却機構の動作状態を個別に決定することを特徴とする磁気ヘッド検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクの検査を行う磁気ディスク検査装置及び磁気ヘッドの検査を行う磁気ヘッド検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の開発時の性能評価や量産時の部品検査に使用されるリードライトテスタ(以下、RWテスタ)は、実際に磁気ディスクと磁気ヘッドを用いて磁気記録特性のテストを行うものであり、磁気ディスクの検査装置あるいは磁気ヘッドの検査装置として使用されている。なお、前者では一定の磁気ヘッドに対して磁気ディスクを取替えてテストを実行し、後者では逆に一定の磁気ディスクに対して磁気ヘッドを取替えてテストを行うようになっている。
【0003】
磁気ディスク装置の高記録密度化に伴う記録周波数やトラック密度の向上により、RWテスタにおいても、磁気ヘッドの位置決め精度やRW回路の周波数帯域等の性能向上が求められている。一方、記録周波数の向上は、磁気ヘッドのリードライト信号を増幅するリードライトアンプ(以下、RWアンプという)の過熱や、サスペンション上のリード線の発熱によるサスペンション変形等を発生させ、テスト結果に悪影響を及ぼすようになっている。例えば、RWアンプの過熱は、RWアンプの強制休止状態を引き起こしてテストが中断され、最悪の場合にはRWアンプが破損する可能性がある。また、サスペンション変形による急激かつ大幅な磁気ヘッドの変位は、磁気ヘッドの位置決め精度を低下させ、テスト結果の信頼性に影響を及ぼす可能性が高い。
【0004】
また、高記録密度化の新技術として開発されているビットパターンドメディア等では、あらかじめ磁気ヘッド位置決め用のサーボ情報が磁気ディスク上に形成されているため、RWテスタでのテスト時には、スピンドル中心に対してサーボ情報の中心がずれる偏心が避けられない。RWテスタの磁気ヘッドを駆動するためのアクチュエータは、高精度に位置決めを行うためにピエゾ素子を使用しているものが多い。偏心成分を常時補正するために、ピエゾ素子を大振幅で連続駆動すると、ピエゾ素子の発熱が増大してピエゾ特性変動を引き起こしたり、最悪の場合にはピエゾ素子の消極を発生させたりする可能性がある。
【0005】
さらに、高記録密度化のもう一つの新技術であるエネルギーアシスト記録では、書込み電流を抑えながら安定した磁気記録を可能にするために、ライト時に磁気ヘッドから磁気ディスクへレーザやマイクロ波によってエネルギーを送り込むようになっている。従って、エネルギーアシスト時には、磁気ディスクや磁気ヘッドでの発熱が増大するため、磁気ヘッドの位置決め精度低下によるテスト結果への悪影響が予測される。
【0006】
このような発熱の問題に対して、従来は、装置上部にファンを設けて機構部全体を常時冷却する構造になっている。さらに、例えば特許文献1に開示されているように、外部から冷却用空気を導入し、多孔質材料を介してディスクに流すことでディスク回転による温度上昇を抑えつつ、ディスク面内振動の抑制を図るような方法等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−132655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
装置上部にファンを設けて機構部全体を常時冷却する従来の方法は、冷却ファンの風が磁気ヘッドの位置決め外乱となるため、高記録密度化による磁気ヘッドの位置決め精度向上を図る上で、テスト中の冷却ファンの動作は困難となっている。また、テスト中の発熱の影響を低減する方法としては、テスト中に一定の冷却期間を設けることも可能であるが、テスト時間が大幅に増大するため望ましくない。特許文献1ではサスペンションやRWアンプ等の他の部位の冷却に関しては考慮されておらず、また、ディスクに加わる空気の流れが磁気ヘッド側に回ることによって、磁気ヘッドの位置決め精度が悪化する恐れがある。
【0009】
本発明は、テスト時間の増大や、テスト中の磁気ヘッドの位置決め精度の低下を抑えつつ、発熱部位の冷却を行うことが可能な磁気ディスク検査装置及び磁気ヘッド検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁気ディスク検査装置あるいは磁気ヘッド検査装置は、発熱部位の冷却を行う1個以上の冷却機構と、その冷却機構の動作を個別に制御可能な冷却機構制御部と、装置各部の動作を制御する装置制御部とを備える。装置制御部は、装置各部の動作状況に応じて冷却機構の動作状態を個別に決定し、冷却機構制御部を介して冷却機構の動作を個別に制御する。
【0011】
すなわち、本発明の磁気ディスク検査装置は、検査対象の磁気ディスクを着脱自在に装着するスピンドルと、スピンドルを回転させる回転駆動機構と、磁気ディスクに対して信号の記録及び再生を行う磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気ディスクの少なくとも半径方向に移動可能なアクチュエータと、磁気ヘッドによって再生された磁気ディスクのサーボパターンの再生信号から磁気ディスクに対する磁気ヘッドの相対位置を検出するサーボ復調部と、サーボ復調部からの位置信号によってアクチュエータを位置決め制御するサーボ駆動信号を生成するサーボ駆動部と、発熱部位の冷却を行う1個以上の冷却機構と、1個以上の冷却機構の動作を個別に制御可能な冷却機構制御部と、装置各部の動作を制御する装置制御部とを備え、装置制御部は、装置各部の動作状況に応じて冷却機構の動作状態を個別に決定し、冷却機構制御部を介して前記冷却機構の動作を個別に制御する。
【0012】
また、本発明の磁気ヘッド検査装置は、磁気ディスクを装着したスピンドルと、スピンドルを回転させる回転駆動機構と、磁気ディスクに対して信号の記録及び再生を行う磁気ヘッドを着脱可能に支持するサスペンションと、サスペンションに支持された磁気ヘッドを磁気ディスクの少なくとも半径方向に移動可能なアクチュエータと、磁気ヘッドによって再生された磁気ディスクのサーボパターンの再生信号から磁気ディスクに対する磁気ヘッドの相対位置を検出するサーボ復調部と、サーボ復調部からの位置信号によってアクチュエータを位置決め制御するサーボ駆動信号を生成するサーボ駆動部と、発熱部位の冷却を行う1個以上の冷却機構と、1個以上の冷却機構の動作を個別に制御可能な冷却機構制御部と、装置各部の動作を制御する装置制御部とを備え、装置制御部は、装置各部の動作状況に応じて冷却機構の動作状態を個別に決定し、冷却機構制御部を介して冷却機構の動作を個別に制御する。
【0013】
冷却機構が冷却する発熱部位には、磁気ディスク、磁気ヘッド、磁気ヘッドの支持部材(サスペンション)、磁気ヘッドの信号を増幅するアンプ及びアクチュエータの少なくとも1つが含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検査装置の状況に応じて発熱部位ごとに個別に冷却動作を制御できるため、磁気ヘッドの位置決め精度への影響を抑えつつ効果的な冷却が可能になる。
【0015】
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるRWテスタの実施例を示す概略の構成図である。
図2】サスペンションに対応した冷却機構の一例の側面図である。
図3】サスペンションに対応した冷却機構の一例の上面図である。
図4】サスペンションに対応した冷却機構の別の例の側面図である。
図5】磁気ヘッドの位置決め精度と冷却機構の動作可否の関係を規定したテーブルの例を示す図である。
図6】エネルギーアシストの動作の状況と磁気ディスクの冷却タイミングの関係の一例を示す図である。
図7】ライトもしくはイレーズ動作の状況とサスペンションの冷却タイミングの関係の一例を示す図である。
図8】サーボ信号の時間変化の一例を示す図である。
図9】偏心補正時のサーボ信号の時間変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明によるRWテスタの実施例を示す概略構成図である。なお、磁気ディスク検査装置は検査対象である磁気ディスクがスピンドルに対して着脱可能になっているのに対し、磁気ヘッド検査装置は検査対象である磁気ヘッドが磁気ヘッドサスペンションに対して着脱可能になっているという違いはあるが、その他の点では両者に格別な相違がない。以下では、磁気ディスク検査装置と磁気ヘッド検査装置の両者を総称してRWテスタと呼ぶ。
【0018】
図1において、RWテスタの機構系は、磁気ディスク1、スピンドル(回転駆動機構)2、磁気ヘッド3、サスペンション4、微動アクチュエータ6、粗動ステージ7、定盤8、冷却機構13−1〜13−5、冷却機構制御部14を備える。また、RWテスタの回路系は、RWアンプ5、サーボ復調部9、サーボ駆動部10、制御部11、評価部12を備えている。
【0019】
磁気ディスク1は、スピンドル2に保持されており、スピンドル2は、データのリードライト時に一定回転数で回転するようになっている。磁気ディスク1に対してデータのリードライトを行う磁気ヘッド3は、サスペンション4を介して微動アクチュエータ6に保持されている。粗動ステージ7は、磁気ヘッド3を磁気ディスク1上の任意の半径位置へ移動させ、あるいは磁気ディスク1上から退避させるために、微動アクチュエータ6を移動させて磁気ヘッド3の大まかな位置決めを行う。微動アクチュエータ6は、サーボ駆動部10から出力されるサーボ信号に従って駆動され、磁気ヘッド3を磁気ディスク1上の任意のトラック上に位置決めする。なお、スピンドル2、微動アクチュエータ6及び粗動ステージ7は、外部からの振動の影響を受けにくいように、定盤8上に固定されている。
【0020】
サーボ復調部9は、磁気ヘッド3でリードしたサーボ情報を復調して、磁気ディスク1に対する磁気ヘッド3の位置を表すPOSに変換する。サーボ駆動部10は、制御部11から出力される目標位置とサーボ復調部9で復調されたPOSとの差から、その差を低減させて磁気ヘッド3を目標トラック上に位置決めさせるように微動アクチュエータ6を駆動するためのサーボ信号を算出して出力する。
【0021】
制御部11は、スピンドル2、粗動ステージ7、サーボ駆動部10、冷却機構制御部14の動作を制御する。評価部12は、サーボ信号によって磁気ヘッド3の位置制御が行われている状態であることを制御部11からの信号で確認した後、磁気ヘッド3によってテスト用パターン(特定パターン)を磁気ディスク1にライトし、そのリード信号から磁気記録特性のテストを実施する。
【0022】
冷却機構13−1〜13−5は、チューブの先端に取付けたノズルから圧縮空気を噴き出すようになっていて、発熱部位である磁気ヘッド3、サスペンション4、磁気ディスク1、微動アクチュエータ6、RWアンプ5をそれぞれ個別に冷却する。冷却機構制御部14は、制御部11からの指令によって、エア供給源から冷却機構13−1〜13−5への圧縮空気の供給状態を個々に切替えることで、冷却動作の制御を個別に行うようになっている。
【0023】
以上のような構成のもとに、各時点での要求される磁気ヘッド3の位置決め精度と、冷却する各発熱部位の位置決め精度に対する影響度から、冷却機構13−1〜13−5の動作の可否を個別に決定することで、テスト結果への影響を抑制しつつ、発熱部位の冷却を行うことができる。
【0024】
さらには、これまでのRWテスタの動作状況及びサーボ駆動部10から出力されるサーボ信号を基に、各発熱部位の発熱状況を予測して冷却する部位を決定し、該当する冷却機構13−1〜13−5を動作させることにより、効果的な冷却が可能になる。
【0025】
図2及び図3に、サスペンション4に対応した冷却機構13−2の一例の側面図及び上面図を示す。冷却機構13−2は支持アーム15によって粗動ステージ7に固定されているため、冷却機構13−2とサスペンション4の相対位置をほぼ一定に保ち、安定して冷却を行うことができる。冷却機構13−1〜13−5は、粗動ステージ7等が移動した際に、各発熱部位との相対位置が保たれる位置に固定することが望ましい。また、エア供給源から冷却機構13−2に送られる圧縮空気を、電磁弁16によって通過・遮断を高速に切替えることで、冷却動作の制御を迅速に行うようになっている。本実施例においては、冷却機構制御部14は、冷却機能13−1〜13−5のそれぞれに対応した複数の電磁弁16から構成されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、冷却機構13−2は、サスペンション4の側面から、磁気ヘッド3から離れる方向に空気を流すように取り付けられている。これは、サスペンション4の上面に強い力が加わらないようにするためと、磁気ヘッド3に直接空気が当たらないようにするためである。磁気ヘッド3やサスペンション4に加わる力や空気の流れは位置決め外乱となるだけではなく、磁気ヘッド3の浮上量変動の原因となり、最悪の場合には磁気ヘッド3と磁気ディスク1が衝突するクラッシュが発生する。これを避けるために、上記のような構成にしており、磁気ヘッド3の冷却機構13−1以外の冷却機構13−2〜13−5では、基本的に磁気ヘッド3から離れる方向に空気を流すようにすることが望ましい。
【0027】
また、サスペンション4上には、磁気ヘッド3とRWアンプ5を電気的に接続するリード線が固定されており、このリード線に高周波信号が流れることで発生した熱がサスペンション4に伝達して変形を発生させている。一般にリード線は、生産性等の関係から、サスペンションの端部の一方を通るように固定されているため、冷却機構13−2をリード線が通る側に配置することで、効果的な冷却が可能となる。
【0028】
冷却機構13−1に関しては、磁気ヘッド3を冷却するために直接空気の流れを加える必要があるため、上記のような磁気ヘッド3を避ける配置にすることはできない。そこで、磁気ヘッド3を冷却する場合には、磁気ディスク1のテストエリアから離れた場所に磁気ヘッド3を移動させるか、磁気ヘッド3を機械的に持ち上げ、磁気ディスク1から離して固定するアンロード状態にすることで、クラッシュ等のリスクの低減を図ることができる。
【0029】
また、微動アクチュエータ6では、中に組み込まれたピエゾ素子が、偏心補正時の連続大振幅駆動時に発熱するため、ピエゾ素子部分に冷却用の空気が直接当たるようにすることが望ましい。
【0030】
図4は、サスペンション4に対応した冷却機構13−2の別の例を示す側面図である。電磁弁16と冷却機構13−2の間に、ボルテックスチューブ17が配置されている以外は、図2と同じ構成になっている。ボルテックスチューブ17では、圧縮空気が供給されることで、片側から冷気を、また反対側からは暖気を吐出するようになっている。そこで、ボルテックスチューブ17から吐出される冷気を冷却機構13−2に供給して、冷気による冷却を行うことで、冷却性能の向上を図ることができる。なお、ボルテックスチューブ17から吐出される暖気については、外部に排出して、熱の影響を受けないようにしておく。
【0031】
図5に、磁気ヘッド3の位置決め精度と、冷却機構13−1〜13−5の動作可否の関係を規定したテーブルの例を示す。例えばここで、ヘッド位置決め状態の高精度は、テスト用パターンのリードライト等の実際にテストを実行中の状態、中精度は、テストエリアのイレーズ時等のテスト実行中以外の位置決め状態、低精度は、磁気ヘッド3を別の位置に移動中させているシーク状態である。また、ホールドは、微動アクチュエータ6の位置を固定し、粗動ステージ7で移動している状態となる。磁気ヘッドから離れていて冷却動作による影響の少ない発熱部位ほど、冷却可の範囲が広くなるように設定されており、例えばテスト実行中で位置決め状態が高精度の場合には、すべての部位で冷却不可であり、また、磁気ヘッド3は、アンロード時のみ冷却可となっている。
【0032】
実際の冷却動作に関しては、図5で冷却可となっている全期間に亘って冷却を実行することも可能であるが、各発熱部位の発熱状態に応じて、必要な期間のみ冷却を行う方が効率的であり、磁気ヘッド3の位置決め外乱の低減という面からも望ましい。そこで、RWテスタの動作履歴から、各発熱部位の発熱状況の予測を行い、発熱状況と図5での冷却可の期間との組合せで、実際の冷却動作を決定する。
【0033】
図6に、エネルギーアシストの動作の状況と、磁気ディスク1の冷却タイミングの関係の一例を示す。この場合、エネルギーアシスト期間中は蓄熱、それ以外の期間は放熱としてシミュレート演算して、磁気ディスク1の発熱状況を予測する。図6において、上部の実線が磁気ディスク1の発熱予測値になり、この値が所定のスライス値を超えた場合に、所定時間磁気ディスク1の冷却機構13−3を動作させる。ただし、エネルギーアシスト動作中は、ヘッド位置決め状態が中精度以上となるため、実際の冷却は、各エネルギーアシスト動作と動作の間及びエネルギーアシスト動作終了後の磁気ヘッド3の移動中に行う。冷却時間は、例えば一定時間あるいは冷却した状態での磁気ディスク1の発熱状況の予測値が所定値を下回るまでとする。図6中上部の点線は、冷却機構を動作させた場合の磁気ディスク1の発熱状況予測値を示している。磁気ヘッド3やRWアンプ5、微動アクチュエータ6内のピエゾ素子についても、同様の方式で冷却期間の決定が可能である。
【0034】
図7に、ライトもしくはイレーズ動作の状況と、サスペンション4の冷却タイミングの関係の一例を示す。サスペンション4は、過熱・冷却の応答が速いため、上記のような発熱状態のシミュレートは行わず、一定時間以上連続してライトもしくはイレーズ動作が行われた後に、所定時間サスペンション4の冷却機構13−2を動作させるようにしている。この場合も、ライトもしくはイレーズ動作中は、ヘッド位置決め状態が中精度以上となるため、実際の冷却は、各ライトもしくはイレーズ動作と動作の間及びライトもしくはイレーズ動作終了後の磁気ヘッド3の移動中に行う。冷却時間は、例えば一定時間あるいは直前のライト又はイレーズ時間に比例させるようにする。
【0035】
ところで、サーボ駆動部10から出力されるサーボ信号等から、各発熱部位の発熱状況の予測を行うことも可能であり、その場合により精度よく発熱を予測することが可能になる。
【0036】
図8に、サーボ信号の時間変化の一例を示す。図8において、実線は冷却動作を行わない場合のサーボ信号の時間変化であり、緩やかな増大傾向の変化に、円で囲んだ急激な変化が重畳したものになっている。サーボ信号の急激な増大は、ライトもしくはイレーズ動作によるサスペンション4の変形によるものであり、サーボ信号にこのような変化が現れた場合には、サスペンション4の冷却機構13−2を動作させるようにする。ただし、ライトもしくはイレーズ動作中は、ヘッド位置決め状態が中精度以上となるため、実際の冷却は、各ライトもしくはイレーズ動作と動作の間及びライトもしくはイレーズ動作終了後の磁気ヘッド3の移動中に行う。図8には、ライトもしくはイレーズ動作と動作の間に断続的にサスペンションの冷却を行った場合の例を示した。
【0037】
また、緩やかな変化は、主にRWアンプ5による発熱が原因と予測されるため、一定のスライス値以上にサーボ信号が変化しないようにRWアンプ5の冷却機構13−5を動作させる。この場合も、実際の冷却動作は、ヘッド位置決め状態が高精度以外の時間に行うことになる。冷却機構を動作させた場合のサーボ信号の変化の例を、図8中の点線で示す。なお、RWアンプ5に関しては、内蔵した温度センサによって温度検出が可能な場合があり、そのような場合には検出温度に基づいて、冷却機構13−5の動作を決定することも可能である。
【0038】
図9に、偏心補正時のサーボ信号の時間変化の一例を示す。偏心補正に対応するサーボ信号成分は、主に回転1次成分となるため、その成分のみを取出して、微動アクチュエータ6内のピエゾ素子の発熱状態を予測する。図9において、実線は偏心補正開始直後、点線は偏心補正開始から一定時間経過後の偏心補正のサーボ信号である。ピエゾ素子の大振幅連続駆動の発熱によるピエゾ特性変動に対応して、偏心補正のサーボ信号の振幅及び位相が変化している。この振幅や位相の変化量が所定値以上になった場合に、ピエゾ素子の発熱量が大だと判断して冷却を実行するようにすることで、ピエゾ素子の発熱状態を予測して微動アクチュエータ6の冷却機構13−4の動作を決定することができる。
【0039】
磁気ディスク1及び磁気ヘッド3の発熱は、エネルギーアシスト記録時に発生する。この場合のサーボ信号への影響は、サスペンション4と同様に急激な変化となると予測されるが、サスペンション4ほどには明確に現れない可能性がある。その場合には、上記のようにエネルギーアシスト記録の履歴から発熱状態を予測することで、磁気ディスク1の冷却機構13−3及び磁気ヘッド3の冷却機構13−1の動作を決定する。また、磁気ヘッド3に温度センサが内蔵されている場合には、その出力信号を利用することも可能である。
【0040】
なお、上記実施例において、冷却機構制御部14は、複数の電磁弁16もしくは電磁弁16とボルテックスチューブ17との組合せによって構成されているが、これは例えば、さらに流量制御弁等と組合せて冷却量を制御することも可能である。また、真空発生器等と組合せて負圧を発生させ、吸込による冷却を行うことで、冷却する部位にかかる力や、発塵の影響を低減することもできる。
【0041】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 磁気ディスク
2 スピンドル
3 磁気ヘッド
4 サスペンション
5 RWアンプ
6 微動アクチュエータ
7 粗動ステージ
8 定盤
9 サーボ復調部
10 サーボ駆動部
11 制御部
12 評価部
13−1〜13−5 冷却機構
14 冷却機構制御部
15 支持アーム
16 電磁弁
17 ボルテックスチューブ
図1
図2
図3
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図8
図9