(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体部品を製造するための装置では、相互に可動である特定部品の空間位置を、適切な位置測定装置を使って精密に特定することが必要である。それにより、求めた位置情報によって、この装置ではコンピュータ制御による動作制御が可能である。このために従来は必要な位置測定を圧倒的に、多数のレーザ干渉計を使って行っていた。今後は種々の部品の動作速度が速くなると同時に、位置測定での精度要求が更に増大することが前提となる。そこで生じる高精度要求では、最早レーザ干渉計を位置測定装置として使用することができない。最適な空調がされている時でも位置測定では、周囲の空気中における屈折率変動が許容できない測定値変動を招き、それは数ナノメータ(nm)の大きさレベルにある。
【0003】
以上の理由から既に当該種類の装置用に、代替となる位置測定装置が提案されている。例えばEP 1 019 669 B1号公報で、二次元基準尺として所謂十字格子を有する光学的位置測定装置を使用することが公知である。以下において当該種類の位置測定装置を、格子ベースの位置測定装置とも呼ぶことにする。このシステムは、場合による空気の屈折率変動に殆ど影響されず、よって良好に再現できる位置測定を可能にする。
【0004】
ナノメータ範囲にある必要分解能を生み出す基準尺として格子を有する光学的位置測定装置は、一般的に干渉による走査原理に基づいている。この場合に通常、適切な光源の光線が少なくとも二つの干渉用分光光束に分割され、それが後にそれぞれの分光光路にある多数の格子に当たり、そして再び集束して干渉する。最終的に目的の位置情報は、干渉する両分光光束の(変位に従う)位相状態により得られる。両分光光束に対して結果として生じる分光と再集束間における光路長の差異は、この種のシステムの対称的な分光光路では一般的に殆どゼロである。よって、希望する干渉を検知側で保証するためには、使用する光の僅かな干渉長さで充分である。
【0005】
DE 10 2005 043 569 A1号公報では、二つの分光光束用に主として非対称の分光光路を有する別の干渉式位置測定装置が提案されている。即ち、この非対称性により経路長の差異が、干渉に至る分光光束にとって最大数ミリメータ(mm)の大きさレベルになる。使用する光で必要な干渉長さに関してこれが意味することは、干渉長さが数ミリメータ(mm)から数センチメータ(cm)までの範囲になければならず、そうでない場合には重なり合うことになる分光光束の干渉が不可能であるということである。高精密の位置測定装置において上記で論議した要求を基本的に満たす光源は、本出願人によるDE 10 2006 041 357 A1号公報で公知である。これは、1mm〜1cm範囲の大きな干渉長さを有する半導体レーザとして構成されており、それがパルス的にシングルモード駆動で作動する。適切な半導体レーザとしては、例えば所謂DFB半導体レーザ、またはDBR半導体レーザも検討対象になる。この文献で提案されている光源は、干渉長さに関する要求を基本的に満たしているが、特に高い光学的性能を必要とする時には一定の技術的工数を必要とする。
【0006】
光源に対する基本的に類似の要求は一般的に、位置測定装置がパルス的に駆動する干渉計として構成されている時にも生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明の課題は、高精密な位置測定をする位置測定装置を示すことであり、その時にパルス駆動を可能にする、出来るだけ簡単な光源を使用するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によればこの課題を、請求項1に記載の位置測定装置により解決する。
本発明による位置測定装置で利点がある構成の可能性は、従属請求項に記載の特徴により得られる。
【0009】
少なくとも一つの測定方向で互いに可動自在で配置されている二つの対象物の、位置を検出するための本発明による位置測定装置には、光源および、光源から送られた光線を二つ以上の分光光束に分割する分光手段を含んでいる。分光光束は、少なくとも二つの分光光路を通過する。分光光路からの干渉分光光束が多数の光電式検知要素に当たるので、検知要素を介して変位に従う位置信号を検出することができる。光源は、ファイバ格子
帰還型半導体レーザとして構成されている。
【0010】
可能性のある実施形態では半導体レーザが、ファブリ・ペロー型レーザとして構成されている。
ファイバ格子
帰還手段には、次の部品を含んでいることがある:
−半導体レーザの出力側前部ファセットの前に配置された集束光学系
−集束光学系の後に配置された光ファイバ
−光ファイバに内蔵された反射ブラッグ格子
ファイバ格子
帰還手段が、その波長的な反射特性に関して半導体レーザのモード間隔に一致していると利点がある。
【0011】
そこで、隣接する半導体レーザモードの間隔より小さく選ばれている波長範囲にある光線が、ファイバ格子
帰還手段により半導体レーザに逆反射されると好ましい。
半導体レーザおよび/又はファイバ格子
帰還手段が、少なくとも部分的に温度調節手段と繋がっているようにしていることがあり、それを介してファイバ格子
帰還手段の反射特性を半導体レーザのモード状態に一致させる。
【0012】
半導体レーザおよびファイバ格子
帰還手段が、少なくとも部分的に温度調節手段と繋がっていると利点があり、それを介して半導体レーザとファイバ格子
帰還手段を、変位に従う位置信号の位相ズレが最小である温度で駆動できる。
【0013】
温度調節手段には例えば、温度調整要素および温度制御装置を含んでいる。
光ファイバは、シングルモード光ファイバとして構成されていると好ましい。
半導体レーザは、〜12mm範囲にある干渉長さを有していることがある。
【0014】
そこで半導体レーザは、20ns〜200nsの範囲にあるパルス時間を有する光パルスを発振することができる。
分光光束が重なり合って干渉する前に分光光束の通過する分光光路が、異なった光学的経路長さを有して非対称で構成されているものとすることができる。
【0015】
そこで基準尺に相対的に可動自在である走査ユニットを設けていることがあり、その時に光源が走査ユニットから離れて配置されており、そして光源が光ファイバを使って走査ユニットと接続されている。
【0016】
しかし代替として、位置測定装置が干渉計として構成されている場合もある。
本発明による位置測定装置には、ここで設けている光源により一連の利点が得られる。
そこでは光源の大きな出力時にも同時に、1センチメータを超えるまでの特に大きな干渉長さ使用できる。このことは、干渉することになる分光光束に対して明らかに大きな経路差が可能であるので、本発明による位置測定装置の干渉式走査原理にとって利点のある成果が得られる。そして許容される経路差が、数ミリメータ〜1センチメータにあることがある。このことにより特に、著しく非対称な分光光路を有する位置測定装置の構成が可能になり、その装置では色々な分光光路にある光が、明らかに異なった光学的経路長を進む。分光光路において許容できる経路差が大きいことは、傾斜許容度に関しても利点を有して作用する。よって本発明により構成された位置測定装置に対して、従来のケースと較べて明らかに大きな傾斜許容度を許容できる。
【0017】
別の利点として、温度安定化のための僅かな工数のみで、光源の高い波長安定性が結果として得られることが挙げられる。それにより、著しく波長に関係する走査原理を使った位置測定装置も、長期間に亘って安定して運転することができる。本発明による位置測定装置が干渉計として構成されている時に特に、位置特定時に高い測定精度が得られる。
【0018】
更に光源のパルス駆動により、例えば所謂メモリジッタにより起きることのある測定誤差を回避できることが、高出力時でも同時に保証される。ここで云う誤差は、測定と本来の位置測定値出力間の時間に基づいて生じる誤差と解釈する。本発明による位置測定装置のパルスによる駆動との関連で詳しくは、本出願人による特許文献4を参照されたい。
【0019】
本発明の別の利点および詳細は、実施例について添付の図面を使った以下の説明から得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による位置測定装置の第一実施例の概略図を
図1で示しており、そこで装置が、格子として構成された基準尺を有している。従って図示の第一実施例は、格子ベースの位置測定装置として構成されている。
【0022】
図示の位置測定装置には基準尺10の他に、少なくとも相対的に測定方向xで可動の走査ユニット20、および走査ユニット20から離れて配置された光源21を含んでいる。基準尺10と走査ユニット20は、二つの−図示していない−対象物と繋がっており、その互いの位置を測定することになる。最初に述べたように、ここでは例えば半導体構成要素を製造する装置で互いに相対的に可動する構成部品が対象になる。
【0023】
提示の例では基準尺10が直線の反射基準尺として構成されており、異なった反射率を測定方向xで交互に配置した範囲でできている。
変位に従う位置信号を発生する走査側要素を、以下において走査手段とも呼ぶことにする。これには光源21の他に、更に種々の別の光学的および/または光電的構成要素を含んでいる。これらの構成部品は、例えば走査ユニット20の中に配置されている、および/または例えば適切な光ファイバ等を介してそれと適切な有効接続状態としていることもある。走査手段の機能を説明するために以下において、
図1で示す実施例の走査光路を追跡することにする。ここでまず代替の走査光路も勿論、本発明の範疇で実現できることを示唆しておきたい。
図1の例において、光パルスの形態で光源21から発光された光束が、光ファイバ2を介して走査ユニット20に送られる。特に適切な光源の詳細に関しては、後の説明を参照されたい。集束レンズ22を介して光パルスないし光束が方向転換ミラー23に到達して、これを方向転換ミラーが基準尺10の方向に方向転換する。そして光束は、走査ユニット20の下側にある走査プレート24の透明範囲を通過して、基準尺10の方向に伝播する。そこで光束は最初の衝突で、+1と−1次の二つの分光光束に曲げられる又は分光され、そして走査ユニット20の方向に逆反射される。以上により提示の実施例では基準尺10が、光源21から送られた光線を二つ以上の分光光束に分割する分光手段として機能する。そして分割された分光光束は、その分光光路でそれぞれ走査プレート24にある走査格子25.1,25.2を通過し、後に配置された反転反射要素26.1,26.2を介して、再び基準尺10の方向に逆方向転換される;その方向転換された分光光束を図では破線で図示している。反転反射要素26.1,26.2として機能するのは、例えば適切なプリズム、方向転換ミラーの組み合わせ、または同等品である。分光光束は、走査プレート24にある−図示していない−第二走査格子を改めて通過してそこで方向を変えた後に、基準尺10に再度衝突する;尚、
図1で逆向きになった分光光束の図示は概略的にのみ示している、即ち、特に基準尺10への再度の衝突は、完全に正しくは図示されていないことを示唆しておきたい。基準尺10上で分光光束が改めて曲げられて、平行な分光光束のペアが走査ユニット20方向に伝播する。走査ユニット20の中で分光光束が、走査プレート24にある別の走査格子25.3に当たり、そこで三つの空間方向への三ペアの干渉分光光束の分割が行われる。走査ユニット20内で該当する空間方向には、分光光路からの干渉分光光束が当たる三つの検知要素27.1,27.2,27.3が配置されているので、検知要素27.1,27.2,27.3を介して変位に従う位置信号を検知することができる。検知要素27.1,27.2,27.3には、位相のずれた位置信号がかかっている;このとき位相のズレは一般的に120°である。
【0024】
走査ユニット20Hの中で図示している検知要素27.1〜27.3の代替配置として、光源21のように検知要素を空間的にそれから分離して配置し、検知する分光光束を検知要素に光ファイバを介して送ることも可能である。同様に、説明した変形例に対する代替として別の数の位相がずれた位置信号、例えば二つまたは四つのそれぞれ90°位相がずれた位置信号をつくり出すようにすることもできる。
【0025】
本発明による位置測定装置の提示している実施例では、それぞれの分光光路において基準尺10上での第一および第二反射間の分光光束が、明らかに異なった光学的経路長L1とL2、即ちL1≠L2を通過する;これを
図1では大まかにのみ示している。以上により、干渉することになる分光光束にとって明らかに異なった光学的経路長を有する非対称の分光光路が現れる。この非対称が理由となって、位置特定するための干渉信号を検知側で評価する時に、使用する光源21の干渉長さが大きいことに関して先に論議した要求が出てくる。
【0026】
本発明による位置測定装置の光源を
図3と4を使って細かく述べる前に、
図2を使って本発明による第二実施形態を説明することにする。
図2も同じく、当該位置測定装置を著しく概略化した図を示している。
図2で図示の実施例も、基準尺を有する格子ベースの位置測定装置として構成されている。
【0027】
図2でも同じく、基準尺100に対して少なくとも一つの測定方向Xで可動自在で配置されている走査ユニット200を示している;光源201から発光された光パルスは、同じく光ファイバ20を介して走査ユニット200に送られる。
【0028】
図示している位置測定装置の第二実施形態は、
図1による例との違いとして、規定された測定方向xにおける相対移動を検知するだけでなく、加えてこれに直角な方向zにおける位置を同時に特定することができる。それにより更に、基準尺100と走査ユニット200間の間隔も特定できる。
【0029】
その目的のために走査ユニット200には、
図2で概略的に示すように、
図1による例で説明したような当該走査光路を二つ含んでいる。
図2において二つの走査光路には、エンコーダAとエンコーダBの表示が設けられている。従って二つの走査光路のいずれもが原理的に、
図1の例における走査光路ように構成されている。分割された分光光路にできる光学的経路長L1,L2に関して特に、これがそれぞれ明らかに異なっていること、即ち、又もやL1<L2であることが当て嵌まる。
【0030】
走査ユニット200から分離して配置された光源201から入力側に送られた光パルスは、光ファイバ20を介して走査ユニット200に送られ、そして分光光学系202を介して二つの走査光路に分割される;理解し易くするために、二つの走査光路の詳細を図示することは行っていない。走査手段に数えられる光学的部品は、
図2において走査ユニット200の中で概略化してブロック210として示している。同様に概略的なブロックとしてのみ示しているのは、同じく走査手段に数えられる光電式検知要素207A,207Bである。そしてこの検知要素207A,207Bを介して検出された位置信号は、更に処理するために−図示していない−評価ユニットに送られる。
【0031】
走査光路の詳細に関しての詳しくは、ここでも本出願人による特許文献2を参照されたい。
本発明による位置測定装置の第二実施形態においても、高精密測定に対して特別な利点を提供する特別に選んだ光源が使用され、それを以下において
図3と4を使って詳細に説明する。
【0032】
本発明による位置測定装置で今まで説明した二つの実施例には、実体的に構成された基準尺としてそれぞれ格子を含んでおり、それが走査光路に配置されている。変位に従う位置信号をつくり出すことは、それぞれ干渉による走査原理に基づいている。その場合に光源から送られた光線が、分光手段を介して少なくとも二つの分光光束に分割され、その分光光路において引き続いて一つまたは複数の格子に当たり、その後に再び集束して干渉する。関心のある位置情報は、干渉分光光束の変位に従う位相状態により得られる。
【0033】
本発明による位置測定装置の第三実施形態として、実体的に構成された基準尺としての格子を含まない公知のレーザ干渉計として、これを構成しているようにすることもある。このケースでは、同じく分光手段を介して適切に分割された分光光束が、公知の形式と方法で測定光路と参照光路の形態にある分光光路を通過する。通常は可動の対象物が測定光路にあるリフレクタ要素と繋がっており、他方で参照光路には静止したリフレクタ要素が配設されている。分光光束は、それぞれ測定光路と参照光路の分光光路を通過後に干渉して、光電式の検知要素を介して変位に従う位置信号を発生する。前記で詳細に説明した実体的に構成された基準尺を備えた実施例と同様に、レーザ干渉計のケースでも基準となる位置情報は、再び干渉のために重ね合わされた分光光束の変位に従う位相状態から得られる。このような本発明による位置測定装置の実施形態でも、以下において
図3と4を使って詳細に説明するような光源を使用することができる。
【0034】
本発明による位置測定装置では、光源21としてファイバ格子
帰還型半導体レーザを使用するようにしている。その光源21は、パルス的にシングルモード運
転で作動し、干渉長さの大きな光線を送り出す。300mW以上のパルス出力と12mm以上の干渉長さで20ナノ秒〜200ナノ秒のパルス時間を達成できる。光源21の干渉長さに対する代表的な値は、約500mWのパルス出力時で10mm近辺にある;半導体レーザが8−12mm範囲の干渉長さを有していると好ましい。パルス出力を更に下げて同時にパルス時間を増加すると、干渉長さを更に大きくすることができる。
【0035】
よって著しく非対称の分光走査光路の場合にも、上記で説明した二つの例におけるように、基準尺で第二の曲げが行われ集束した後に、検知要素の方向に平行に伝播する二つの分光光束の干渉が保証される。
【0036】
更に当該測定課題は、例えば基本的に文献4で公知であるように、パルスによる走査方法の使用を必要とすることがある。このような形式と方法により、走査時点が光パルスによってのみで特定されている、即ち、既に上記で言及したメモリジッタおよび位置特定時にそれから発生する測定誤差を、パルスによる走査方法では回避できる、又は少なくとも減少できる。
【0037】
光源21用に設けている半導体レーザ21.2は、−
図3で概略的に図示しているように−適切なレーザケース21.1の中に配置されているファブリ・ペロー型レーザで構成されていると好ましい。ファブリ・ペロー型レーザ21.2は、適切な半導体材料の形態にある本来のレーザ媒体および、高反射性で構成の後部ファセット21.3(R≒99%)と非反射性の前部ファセット21.4(R≒<0.1%)で出来ている;よって、ファブリ・ペロー型レーザ21.2の二つの端面ないしファセットが、ファブリ・ペロー共振器を構成しており、可能性ある多数のレーザモードを励起する。ファブリ・ペロー型レーザ21.2から発光されたレーザ光線は、出力側の前部ファセット21.4の前に配置された集束光学系21.5を介して、光ファイバ21.に集束される。光ファイバ21.の中には反射ブラッグ格子21.9が内蔵されており、それが特定の波長領域でのみ光線をファブリ・ペロー型レーザ21.2の方向に逆反射する。従って、光源21の側で上記のファイバ格子
帰還手段に属するのは、集束光学系21.5、光ファイバ21.、および反射ブラッグ格子21.9である。光源21によりつくり出された光線が、既に
図1で明示したように光ファイバ2を介して、本発明による位置測定装置の走査ユニットに送られる。
【0038】
光源21には結合された二つのレーザ共振器、即ち一つは内部の、そして一つの外部のレーザ共振器を含んでいる。内部レーザ共振器ないしファブリ・ペロー共振器は、後部ファセット21.3と前部ファセット21.4により構成され、外部レーザ共振器は、後部ファセット21.3と反射ブラッグ格子21.9により構成されている。
【0039】
反射ブラッグ格子21.9は、狭い波長領域でのみ光線をファブリ・ペロー型レーザ21.2に逆反射するように構成されている。ここで反射ブラッグ格子21.9それによりファイバ格子
帰還手段の波長に関係する反射特性は、ファブリ・ペロー型レーザ21.2のモード間隔に一致している。そしてファブリ・ペロー型レーザ21.2の隣接するモード間隔より小さい波長領域にある光線のみが、ファイバ格子
帰還手段によりファブリ・ペロー型レーザ21.2へ確実に逆反射される。この関係を、
図4を使って説明することにする。そこでは一定の波長領域に亘って、使用するファブリ・ペロー型レーザ21.2で得られるモードスペクトルおよび反射ブラッグ格子21.9の反射特性ないし反射バンド幅を著しく概略化して図示している。
【0040】
ここでファブリ・ペロー型レーザ21.2のモード間隔に反射ブラッグ格子21.9の反射特性が一致していることにより、本発明による位置測定装置の光源をパルス的に駆動することができ、それにより僅かな位相ズレのみで位置測定が可能となる。
【0041】
反射ブラッグ格子21.9を介して内部レーザ共振器は、数ナノ秒以内で安定する固定レーザモードでの運転に常に強制される。そこで光源はシングルモード駆動で作動する。数ピコメータ範囲で反射ブラッグ格子21.9の反射特性ないし反射帯域幅を選んでいることにより、本発明による位置測定装置の光源21は、非常に狭いスペクトル範囲(発光波長1μmおよび干渉長さ10mmの時にスペクトル幅100pm)で発光する、即ち、それに従って光源21の干渉長さが−提示の応用で望まれるように−比較的大きい。このような形式と方法により−既に上述したように10mm以上の干渉長さを達成できる。
【0042】
同じく先に述べたように、ナノメータ範囲にある測定精度での高精密の位置測定に対しては、示される位相ズレの少ないことが必要である。そうでなければ、存在する位相ズレが位置ズレに変換されるであろうし、それにより位置測定の精度が影響を受けて望ましくない。反射ブラッグ格子21.9とその反射特性を介して、反射ブラッグ格子21.9なしで自由駆動する半導体レーザの固有モードに相当しない半導体レーザの駆動状態を狙って選択できる。この固有モードでは大きな位相ズレを示すであろう;
図4では、その種の−準最適の−範囲2をハッチングでマーキングしている。しかしながら、自由駆動する半導体レーザの固有モードを反射ブラッグ格子21.9を使うことにより狙って抽出できる時には、位相ズレを狙って少なくすることができ、それを
図4においてハッチングでマーキングした範囲1で明示している。以上により半導体レーザは、反射ブラッグ格子21.9を介してシングルモード駆動で強制される。従って本発明による位置測定装置において使用するために重要なことは、使用する半導体レーザのレーザモードの波長に関係する状態が、反射ブラッグ格子21.9の反射最大値に狙って一致されることである。この一致させることは、レーザモードの波長に関係する状態や反射ブラッグ格子21.9の反射特性が温度に関係することにより、半導体レーザ21.2および/またはファイバ格子
帰還手段が結合されているないし接続状態にある温度調節手段21.6,21.7を使って行う。
図3では、この温度調節手段21.6,21.7を非常に簡略化してのみ示しており、図示している例では半導体レーザ21.2にもファイバ格子
帰還手段にも、温度調節手段21.6,21.7を有効な接続状態で関連配置している。ファイバ格子
帰還手段の側では、特にその反射特性を適切に合わせるために、設けた温度調節手段21.6,21.7を少なくとも反射ブラッグ格子21.9に作用させねばならない。
【0043】
提示の例において温度調節手段21.6,21.7には、ペルチェ素子として構成する温度調整要素21.6a,21.7aおよび、ソフトウエアおよび/またはハードウエアにより公知の形式と方法で構成していることのある温度制御装置21.6b,21.7bを含んでいる。
【0044】
温度調整要素21.6,21.7は、その代替として例えば加熱フィルムの形態をした加熱要素として、あるいは制御自在の水冷または温水加熱として構成することもできる。更に、両方の温度調整要素21.6a,21.7aを、単一の温度制御装置を使って適切に狙って調整する、あるいは共通利用する単一の温度調整要素を設けて、それを温度制御装置を介して適切に調整するようにもできるであろう。
【0045】
可能性のある実施形態では例えば半導体レーザの温度を、適切な温度調整要素を介して25mKの安定性で20℃〜40℃の範囲に調整するが、そのためには通常、半導体レーザの加熱が必要である。反射ブラッグ格子21.9の温度は約22℃に調整するが、それを例えば適切な水冷形態をした温度調整要素を介して行う。
【0046】
本発明による位置測定装置で本来の測定駆動をする前に、位相ズレが最小化されている最適作動ポイントに光源21ないし半導体レーザを設定することが必要である。そのためには種々の対処方法がある。
【0047】
第一の例では温度調節手段21.7を介して、ファイバ格子
帰還手段の温度を規定の安定性で保持するようにしている。温度調節手段21.6を介して半導体レーザの温度を変えると共に、そこで発生する位相ズレを同時に測定する。そして測定値から、位相ズレ最小値および半導体レーザに対して必要で適切な温度を求める。波長に関して半導体レーザとファイバ格子
帰還手段で温度係数が10倍異なることにより、この処置で最適の作動ポイントを設定するために調査せねばならないのは、数ケルビンの小さい温度範囲(1〜2K)のみである。
【0048】
それに対して第二例では、温度調節手段21.6を介して特定の安定性で半導体レーザの温度を一定に保持し、温度調節手段21.7を介してファイバ格子
帰還手段の温度を変える。同時に同じくそこで発生する位相ズレを測定し、その最小値ないしファイバ格子
帰還手段の適切な温度を特定する。この場合には前と較べて明らかに大きな温度範囲、一般的には6〜10Kを調査せねばならない。
【0049】
両方の方法でそれぞれ調査する温度範囲は特に、内部レーザ共振器の長さによって決まる。これが長ければ長いほどレーザモードが近接して位置し、そして調査すべき温度範囲が小さい。
【0050】
位相ズレ最小値の測定後、半導体レーザをファイバ格子
帰還手段と一緒に、測定において最適として識別した温度ペアに制御する。ここで記載の温度測定は、本発明による位置測定装置の製造時、機械の初期化時および/または定期的な較正サイクルで行うことができる。
【0051】
一つの機械で位相ズレ最小値を測定するためには、そこで使用の位置測定装置を信号発生および評価のために使用せねばならない。非対称の光路を有する位置測定装置では正に位相ズレが重要であるので、このようにすることで位相ズレ最小値を比較的簡単な手段で洗練された形でも求めることができる。その場合に、非対称の光路を有する位置測定装置を、分光光路間の非対称性が最大である許容範囲の端部に動かす。そしてこの位置において位置ズレを、ファイバ格子
帰還手段または半導体レーザの温度の関数として求める。即ち、先に説明したように一つの温度を変え、そして別の温度を特定の精度で一定に保持する。そして求めたデータから、半導体レーザまたはファイバ格子
帰還手段用の最適な運転温度を特定し、そして温度制御装置に伝達する。
【0052】
従って、本発明による位置測定装置の光源側における種々の対応により特に、既に上記で論議した利点が高精密な位置測定のために結果として得られる。
そしてパルスで駆動する位置測定装置を開発する時に、充分に対称的な走査光路に最早制限されず、非対称の走査光路も今や可能である。
【0053】
更に、位置測定装置の基準尺と走査ユニットが場合により傾斜したときに、両方の干渉分光光束が同じく異なった光学的経路長を通過するので、干渉分光光束に対して許容経路長の差が大きいことを許容度範囲を拡大するために利用することもできる。上記の光源を使用する時には、干渉式位置測定装置の使用時に例えば従来と較べて大きな傾斜許容度が許されるという可能性が得られる。
【0054】
本発明の範疇では説明した例の他に勿論、実施するうえで別の一連の可能性がある。それで例えば格子ベースの位置測定装置の場合において、異なった分光光路からの分光光束を重ね合わせて干渉させる前に、代替の走査光路を設けることもできる。
【0055】
光源から送られる光線を少なくとも二つの分光光束に分割するための分光手段として、ここでは格子および光路にある他の光学要素も機能を果たすことができる。
本発明による位置測定装置は勿論、実体的に構成された基準尺なしでも、即ち干渉計として実現できることを既に何度も言及した。