特許第5969120号(P5969120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JX日鉱日石金属株式会社の特許一覧

特許5969120磁性薄膜形成用スパッタリングターゲット
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969120
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】磁性薄膜形成用スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20160804BHJP
   C22C 5/04 20060101ALI20160804BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20160804BHJP
   C22C 1/04 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C22C5/04
   C22C30/00
   !C22C1/04 F
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-517022(P2015-517022)
(86)(22)【出願日】2014年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2014061947
(87)【国際公開番号】WO2014185266
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2015年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-101513(P2013-101513)
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦
【審査官】 國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/105201(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/105205(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/132939(WO,A1)
【文献】 特開2012−252768(JP,A)
【文献】 特開2013−033581(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133166(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/046882(WO,A1)
【文献】 特開2008−059733(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094605(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C22C 5/04、30/00,1/04
B22F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe−Pt合金と非磁性材料を主成分とする焼結体スパッタリングターゲットであって、酸素1モルに対する酸化物の標準生成自由エネルギーがCO(一酸化炭素)よりも低い酸化物を形成する金属元素であるAl、Mg、Ti、Y、Zrを、50質量ppm以上5000質量ppm以下含有し、非磁性材料として、炭素、炭化物、窒化物のいずれか一種以上を含有することを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
Fe、Pt以外に、Ag、Au、B、Co、Cr、Cu、Ga、Ge、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Pd、Re、Rh、Ru、Si、Sn、Ta、W、V、Znから選択されるいずれか一種以上の元素を、金属成分として含有することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
非磁性材料として、さらに酸化物を含有することを特徴とする請求項1又はに記載のスパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体における磁性薄膜の形成に使用される焼結体スパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブに代表される磁気記録の分野では、磁気記録媒体の磁性薄膜の材料として、強磁性金属であるCo、Fe、あるいはNiをベースとした材料が用いられている。例えば、面内磁気記録方式を採用するハードディスクの磁性薄膜にはCoを主成分とするCo−Cr系やCo−Cr−Pt系の強磁性合金が用いられてきた。
また、近年実用化された垂直磁気記録方式を採用するハードディスクの磁性薄膜には、Coを主成分とするCo−Cr−Pt系の強磁性合金と酸化物からなる複合材料が多く用いられている。そして上記の磁性薄膜は、生産性の高さから、上記材料を成分とするスパッタリングターゲットをマグネトロンスパッタ装置でスパッタして作製されることが多い。
【0003】
一方、ハードディスクの記録密度は年々急速に増大しており、1 Tbit/inを超えつつある。1Tbit/inに記録密度が達すると記録bitのサイズが10nmを下回るようになり、その場合、熱揺らぎによる超常磁性化が問題となってくると予想される。現在、使用されている磁気記録媒体の材料、例えばCo基合金にPtを添加して結晶磁気異方性を高めた材料では十分ではないことが予想される。10nm以下のサイズで安定的に強磁性として振る舞う磁性粒子は、より高い結晶磁気異方性を持っている必要があるからである。
【0004】
上記のような理由から、L1構造を有するFe−Pt合金が超高密度記録媒体用材料として注目されている。L1構造を有するFe−Pt合金は高い結晶磁気異方性とともに、耐食性、耐酸化性に優れているため、磁気記録媒体としての応用に適した材料として期待されているものである。
そしてL1構造を有するFe−Pt合金を超高密度記録媒体用材料として使用する場合には、L1構造へ規則化したFe−Pt磁性粒子を磁気的に孤立させた状態で出来るだけ高密度に方位をそろえて分散させるという技術の開発が求められている。
【0005】
このようなことから、L1構造を有するFe−Pt磁性粒子をC(炭素)や酸化物といった非磁性材料で孤立させたグラニュラー構造磁性薄膜が、熱アシスト磁気記録方式を採用した次世代ハードディスクの磁気記録媒体用として提案されている。このグラニュラー構造磁性薄膜は、非磁性材料が磁性粒子を取り囲むことにより磁性粒子間の磁気的相互作用を遮断する構造を有している。
グラニュラー構造の磁性薄膜を有する磁気記録媒体及びこれに関連する公知文献としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を挙げることができる。
【0006】
上記L1構造を有するFe−Pt磁性粒子を有するグラニュラー構造磁性薄膜としては、非磁性材料としてCを含有する磁性薄膜が、特にその磁気特性の高さから注目されている。ところが、Fe−Pt合金とCからなるスパッタリングターゲットをスパッタしようとすると、スパッタ時にCの不用意な脱離が生じパーティクル(基板上に付着したゴミ)が大量に発生するという問題がある。この問題を解決するには、Fe−Pt合金とCの密着性を高めたスパッタリングターゲットを提供する必要がある。また、Cのかわりに炭化物や窒化物を含有するターゲットを用いても、優れた磁性薄膜が得ることができるが、この場合もスパッタ時にパーティクルが多く発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−306228号公報
【特許文献2】特開2000−311329号公報
【特許文献3】特開2008−59733号公報
【特許文献4】特開2008−169464号公報
【特許文献5】特開2004−152471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、スパッタ時に発生するパーティクル量を大幅に低減させたFe−Pt合金と非磁性材料とからなる焼結体スパッタリングターゲットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、酸素1モルに対する酸化物の標準生成自由エネルギーがCO(一酸化炭素)のよりも低い酸化物を形成する元素を微量添加することで、スパッタ時に発生するパーティクル量を大幅に低減したスパッタリングターゲットを得ることができることを見出した。
【0010】
このような知見に基づき、本発明は、
1)Fe−Pt合金と非磁性材料を主成分とする焼結体スパッタリングターゲットであって、酸素1モルに対する酸化物の標準生成自由エネルギーがCO(一酸化炭素)よりも低い酸化物を形成する元素を、50質量ppm以上5000質量ppm以下含有し、非磁性材料として、炭素、炭化物、窒化物のいずれか一種以上を含有することを特徴とするスパッタリングターゲット、
2)前記酸素1モルに対する酸化物の標準生成自由エネルギーがCO(一酸化炭素)よりも低い酸化物を形成する元素が、Al、Mg、Ti、Y、Zrであることを特徴とする上記1)記載のスパッタリングターゲット、
3)Fe、Pt以外に、Ag、Au、B、Co、Cr、Cu、Ga、Ge、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Pd、Re、Rh、Ru、Si、Sn、Ta、W、V、Znから選択されるいずれか一種以上の元素を、金属成分として含有することを特徴とする上記1)又は2)記載のスパッタリングターゲット、
4)非磁性材料として、さらに酸化物を含有することを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スパッタリングの際に、発生するパーティクル量を大幅に低減したスパッタリングターゲットを提供することができる。これにより、成膜時における歩留まりを著しく向上することができるという、優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスパッタリングターゲットは、Fe−Pt合金と、C(炭素)、炭化物、窒化物のいずれか一種以上からなる非磁性材料とを主成分とするものである。これらの成分は、磁気記録媒体として必要とされる成分であり、配合割合は有効な磁気記録媒体としての特性を維持できる範囲内であれば、特に制限はない。
Fe−Pt合金の組成として一般には、分子量比率においてPtが35%以上55%以下、残部がFeの割合で配合したものが用いることができる。
【0013】
本願発明において特に重要なことは、CO(一酸化炭素)の酸素1モルに対する酸化物の標準生成自由エネルギーよりも、低い標準生成自由エネルギーを有する酸化物を形成する元素を、微量含有することである。
酸素親和力が大きいこれらの元素は、焼結時にFe粉やFe系の合金粉に含まれる酸素と反応し、安定な酸化物を形成する。その結果、炭素、炭化物、窒化物が上記の酸素と反応して生じるガス成分(CO、CO、NO、NO)が減少して、Fe−Pt合金と非磁性材料の密着性が向上する。この密着性の向上により、非磁性材料の脱落によるパーティクルの発生を抑制することができる。
なお、上記の微量含有する元素の酸化物の標準生成自由エネルギーは、焼結時の温度領域でCO(一酸化炭素)の標準生成自由エネルギーよりも低ければ良い。すなわち、本発明のスパッタリングターゲット(焼結体)の焼結温度は、高くても約1500℃であるので、これらの酸化物の標準生成自由エネルギーは、約1500℃以下の温度領域でCO(一酸化炭素)の標準生成自由エネルギーよりも低ければ十分である。
【0014】
前記の酸化物の標準生成自由エネルギーがCO(一酸化炭素)よりも低い酸化物を形成する元素の含有量は、50質量ppm以上5000質量ppm以下とする。含有量が50質量ppm未満であると、焼結時にこれらの元素の酸化物が形成されても、なお相当量の酸素が非磁性材料と反応するため、Fe−Pt合金と非磁性材料の密着性の向上が期待できず、一方、含有量が5000質量ppmを超えると、所望の磁気特性が得られないだけでなく、焼結時にこれらの元素の酸化物が粒成長して、パーティクルの原因となる粗大な酸化物が形成される場合があるからである。
酸素1モルに対する酸化物の標準生成自由エネルギーがCO(一酸化炭素)よりも低い酸化物を形成する元素を、磁気記録媒体として必要とされる成分として用いる場合を除き、これらの元素の含有量を5000質量ppm以下に抑える必要がある。なお、本発明において、これらの元素は金属粉として添加させることができるが、最終的にターゲットにおいて必要量含まれていればよく、その添加手段は特に問わない。
【0015】
本発明において、前記の酸化物の標準生成自由エネルギーがCO(一酸化炭素)よりも低い酸化物を形成する元素として、Al、Mg、Ti、Y、Zr、Pr等の公知の材料を用いることができる。中でも、Al、Mg、Ti、Y、Zrの酸化物は、非常に安定であるため、パーティクルの発生源となり難く、好ましい。また、これらの元素を二種以上含んでもよく、その場合にはターゲットにおけるこれらの元素の合計含有量を50質量ppm以上5000質量ppm以下とする必要がある。
【0016】
さらに、本発明のスパッタリングターゲットは、Fe、Pt以外にAg、Au、B、Co、Cr、Cu、Ga、Ge、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Pd、Re、Rh、Ru、Si、Sn、Ta、W、V、Znから選択した一種以上の元素を、金属成分としてさらに含有することができる。これらの元素は、主にL1構造を発現するための熱処理の温度を下げるために添加するものである。その配合割合は、有効な磁気記録媒体としての特性を維持できる範囲内であれば、特に制限はない。
【0017】
また、本発明のスパッタリングターゲットは、非磁性材料として、上記の炭素、炭化物、窒化物に加えて、酸化物を含有することができる。このようなスパッタリングターゲットから作製された磁性膜は、酸化物が炭素、炭化物、窒化物と同様に磁性粒子同士の磁気的な相互作用を絶縁する構造をとるため、良好な磁気特性が期待される。
【0018】
本発明のスパッタリングターゲットは、粉末焼結法を用いて、例えば、以下の方法によって作製することができる。
まず、金属粉としてFe粉、Pt粉、Al粉などを用意する。金属粉としては、単元素の金属粉だけでなく、合金粉を用いることもできる。これらの金属粉は粒径が1〜10μmの範囲のものを用いることが望ましい。粒径が1〜10μmであるとより均一な混合が可能であり、偏析と粗大結晶化を防止できる。金属粉末の粒径が10μmより大きい場合には、非磁性材料が均一に分散しないことがあり、また、1μmより小さい場合には、金属粉の酸化の影響でターゲットの組成が所望の組成から外れてくるという問題が生じることがある。なお、この粒径範囲はあくまで好ましい範囲であり、これを逸脱することが本願発明を否定する条件でないことは当然理解されるべきである。
【0019】
また、非磁性材料の粉末として、C粉、炭化物粉、窒化物粉などを用意する。非磁性材料粉末は粒径が1〜30μmの範囲のものを用いることが望ましい。粒径が1〜30μmであると前述の金属粉と混合した際に、非磁性材料粉同士が凝集しにくくなり、均一に分散させることが可能になる。非磁性材料のうちC粉に関しては、グラファイト(黒鉛)やナノチューブのように結晶構造を有するものと、カーボンブラックに代表される非晶質のものがあるが、いずれのC粉を使用することができる。
【0020】
次に、上記の原料粉を所望の組成になるように秤量し、ボールミル等の公知の手法を用いて粉砕を兼ねて混合する。このとき、粉砕容器内に不活性ガスを封入して原料粉の酸化をできるかぎり抑制することが望ましい。
【0021】
このようにして得られた混合粉末をホットプレス法で真空雰囲気、あるいは、不活性ガス雰囲気において成型・焼結させる。また、前記ホットプレス以外にも、プラズマ放電焼結法など様々な加圧焼結方法を使用することができる。特に熱間静水圧焼結法は焼結体の密度向上に有効である。焼結時の保持温度は、ターゲットの構成成分にもよるが、多くの場合、800〜1500°Cの温度範囲とする。
そして、得られた焼結体を旋盤で所望の形状に加工することにより、本発明のスパッタリングターゲットを作製することができる。
【0022】
以上により本発明のスパッタリングターゲットを製造することができる。このようにして製造したスパッタリングターゲットは、スパッタ時に発生するパーティクル量を低減することができ、成膜時における歩留まりを向上することができるという優れた効果を有する。
【実施例】
【0023】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0024】
(実施例1)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2600gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):30Fe−30Pt−40C
さらに、実施例1では、平均粒径10μmのAl粉を上記重量の0.1%に相当する量である2.6g秤量した。
【0025】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0026】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Alの含有量は1030質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。
このターゲットをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、投入電力1kW、Arガス圧1.7Paとし、2kWhrのプレスパッタリングを実施した後、4インチ径のシリコン基板上に20秒間成膜した。基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は321個であった。
【0027】
(比較例1)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2600gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):30Fe−30Pt−40C
また、比較例1ではAl粉は添加しなかった。
【0028】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0029】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Alの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は871個で、実施例1より増加した。
【0030】
(比較例2)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2600gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):30Fe−30Pt−40C
さらに、比較例2では、平均粒径10μmのAl粉を上記重量の1%に相当する量である26.0g秤量した。
【0031】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0032】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Alの含有量は9960質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は538個で、実施例1より増加した。これはAlの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0033】
(実施例2)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3000gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):40Fe−40Pt−20C
さらに、実施例2では平均粒径100μmのFeZr粉を上記重量の0.05%に相当する量である1.5g秤量した。
【0034】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1400°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0035】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてZrの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Zrの含有量は170質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は166個であった。
【0036】
(比較例3)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3000gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):40Fe−40Pt−20C
また、比較例3ではFeZr粉は添加しなかった。
【0037】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1400°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0038】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてZrの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Zrの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は410個で、実施例2より増加した。
【0039】
(比較例4)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3000gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):40Fe−40Pt−20C
さらに、比較例4では平均粒径100μmのFeZr粉を上記重量の2%に相当する量である60.0g秤量した。
【0040】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1400°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0041】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてZrの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Zrの含有量は7100質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は489個で、実施例2より増加した。これはZrの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0042】
(実施例3)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3000gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):37.5Fe−37.5Pt−25C
さらに、実施例3では、平均粒径40μmのTi粉を上記重量の0.1%に相当する量である3.0g秤量した。
【0043】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1400°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0044】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてTiの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Tiの含有量は1010質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は281個であった。
【0045】
(比較例5)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3000gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):37.5Fe−37.5Pt−25C
また、比較例5ではTi粉は添加しなかった。
【0046】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1400°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0047】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてTiの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Tiの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は491個で、実施例3より増加した。
【0048】
(比較例6)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3000gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):37.5Fe−37.5Pt−25C
さらに、比較例6では、平均粒径40μmのTi粉を上記重量の0.6%に相当する量である18.0g秤量した。
【0049】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1400°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0050】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてTiの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Tiの含有量は5960質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は454個で、実施例3より増加した。これはTiの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0051】
(実施例4)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2800gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−30C
さらに、実施例4では、平均粒径50μmのFe17Pr粉を上記重量の0.1%に相当する量である2.8g秤量した。
【0052】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0053】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてPrの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Prの含有量は230質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は378個であった。
【0054】
(比較例7)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2800gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−30C
また、比較例7ではFe17Pr粉は添加しなかった。
【0055】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0056】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてPrの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Prの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は566個で、実施例4より増加した。
【0057】
(比較例8)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2800gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−30C
さらに、比較例8では、平均粒径50μmのFe17Pr粉を上記重量の4.0%に相当する量である112g秤量した。
【0058】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0059】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてPrの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Prの含有量は9870質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は411個で、実施例4より増加した。これはPrの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0060】
(実施例5)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2700gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):32.5Fe−32.5Pt−35C
さらに、実施例5では、平均粒径100μmのMg粉を上記重量の0.1%に相当する量である2.7g、平均粒径40μmのFeZr粉を上記重量の0.2%に相当する量である5.4g、それぞれ秤量した。
【0061】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0062】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMgとZrの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Mgの含有量は1000質量ppm、Zrの含有量は700質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は275個であった。
【0063】
(比較例9)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2700gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):32.5Fe−32.5Pt−35C
また、比較例9ではMg粉もFeZr粉も添加しなかった。
【0064】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0065】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMgとZrの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Mgは8質量ppm、Zrは17質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は720個で、実施例5より増加した。
【0066】
(比較例10)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2700gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):32.5Fe−32.5Pt−35C
さらに、比較例10では、平均粒径100μmのMg粉を上記重量の1.0%に相当する量である27g、平均粒径40μmのFeZr粉を上記重量の0.4%に相当する量である10.8g、それぞれ秤量した。
【0067】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0068】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMgとZrの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Mgの含有量は9900質量ppm、Zrの含有量は1400質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は988個で、実施例5より増加した。これはMgとZrの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0069】
(実施例6)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2400gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):27.5Fe−27.5Pt−45C
さらに、実施例6では、平均粒径10μmのAl粉を上記重量の0.2%に相当する量である4.8g、平均粒径40μmのTi粉を上記重量の0.2%に相当する量である4.8g、平均粒径100μmのFeZr粉を上記重量の0.2%に相当する量である4.8g、それぞれ秤量した。
【0070】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0071】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlとTiとZrの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Alの含有量は2000質量ppm、Tiの含有量は1900質量ppm、Zrの含有量は700質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は385個であった。
【0072】
(比較例11)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2400gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):27.5Fe−27.5Pt−45C
また、比較例11ではAl粉もTi粉もFeZr粉も添加しなかった。
【0073】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0074】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlとTiとZrの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Alは0.5質量ppm、Tiは0.4質量ppm、Zrは13質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は804個で、実施例6より増加した。
【0075】
(比較例12)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2400gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):27.5Fe−27.5Pt−45C
さらに、比較例12では、平均粒径10μmのAl粉を上記重量の0.3%に相当する量である7.2g、平均粒径40μmのTi粉を上記重量の0.3%に相当する量である7.2g、平均粒径100μmのFeZr粉を上記重量の0.4%に相当する量である9.6g、それぞれ秤量した。
【0076】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1500°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0077】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlとTiとZrの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Alの含有量は3100質量ppm、Tiの含有量は3000質量ppm、Zrの含有量は1400質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は485個で、実施例6より増加した。これはAlとTiとZrの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0078】
(実施例8)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径5μmのTaC粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3200gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):46.20Fe−30.80Pt−23TaC
さらに、実施例8では、平均粒径100μmのMg粉を上記重量の0.2%に相当する量である6.4g秤量した。
【0079】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0080】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMgの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Mgの含有量は2070質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は138個であった。
【0081】
(比較例15)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径5μmのTaC粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3200gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):46.20Fe−30.80Pt−23TaC
また、比較例15ではMg粉は添加しなかった。
【0082】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0083】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMgの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Mgの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いてマグネトロンスパッタ装置に取り付け、実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は408個で、実施例8より増加した。
【0084】
(比較例16)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径5μmのTaC粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が3200gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):46.20Fe−30.80Pt−23TaC
さらに、比較例16では、平均粒径100μmのMg粉を上記重量の1%に相当する量である32.0g秤量した。
【0085】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0086】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMgの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Mgの含有量は10100質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は227個で、実施例8より増加した。これはMgの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0087】
(実施例9)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのBN粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2400gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−30BN
さらに、実施例9では平均粒径40μmのTi粉を上記重量の0.02%に相当する量である0.48g秤量した。
【0088】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0089】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてTiの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Tiの含有量は190質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は178個であった。
【0090】
(比較例17)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのBN粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2400gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−30BN
また、比較例17ではTi粉は添加しなかった。
【0091】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0092】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてTi量の分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Tiの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いてマグネトロンスパッタ装置に取り付け、実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は370個で、実施例9より増加した。
【0093】
(比較例18)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのBN粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2400gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−30BN
さらに、比較例18では、平均粒径40μmのTi粉を上記重量の1%に相当する量である24.0g秤量した。
【0094】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0095】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてTiの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Tiの含有量は10000質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は328個で、実施例9より増加した。
これはTiの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0096】
(実施例10)
原料粉として平均粒径10μmのFe−Pt粉(分子量比率で50Fe−50Ptの組成)、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)、平均粒径1μmのSiO粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−25C−5SiO
さらに、実施例10では、平均粒径50μmのFeY粉を上記重量の0.1%に相当する量である2.5g秤量した。
【0097】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1150°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0098】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてYの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Yの含有量は350質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は113個であった。
【0099】
(比較例19)
原料粉として平均粒径10μmのFe−Pt粉(分子量比率で50Fe−50Ptの組成)、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)、平均粒径1μmのSiO粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−25C−5SiO
また、比較例19ではFeY粉は添加しなかった。
【0100】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1150°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0101】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてY量の分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Yの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いてマグネトロンスパッタ装置に取り付け、実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は221個で、実施例10より増加した。
【0102】
(比較例20)
原料粉として平均粒径10μmのFe−Pt粉(分子量比率で50Fe−50Ptの組成)、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)、平均粒径1μmのSiO粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):35Fe−35Pt−25C−5SiO
さらに、比較例20では平均粒径50μmのFeY粉を上記重量の2%に相当する量である50g秤量した。
【0103】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1150°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0104】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてYの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Yの含有量は6910質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は351個で、実施例10より増加した。これはYの添加量が多かったため、粗大なY酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0105】
(実施例11)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉、平均粒径1μmのSi粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2600gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):38Fe−38Pt−20C−4Si
さらに、実施例11では平均粒径10μmのAl粉を上記重量の0.05%に相当する量である1.3g、平均粒径40μmのTi粉を上記重量の0.05%に相当する量である1.3g、それぞれ秤量した。
【0106】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、窒素雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1100°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0107】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlとTiの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Alの含有量は520質量ppm、Tiの含有量は510質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は169個であった。
【0108】
(比較例21)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉、平均粒径1μmのSi粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2600gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):38Fe−38Pt−20C−4Si
また、比較例21ではAl粉もTi粉も添加しなかった。
【0109】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、窒素雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1100°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0110】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlとTiの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Alは0.4質量ppm、Tiは0.3質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は401個で、実施例11より増加した。
【0111】
(比較例22)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのC粉、平均粒径1μmのSi粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2600gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):38Fe−38Pt−20C−4Si
さらに、比較例22では、平均粒径10μmのAl粉を上記重量の1%に相当する量である26.0g、平均粒径40μmのTi粉を上記重量の1%に相当する量である26.0g、それぞれ秤量した。
【0112】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、窒素雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1100°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0113】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてAlとTiの分析を実施した。グロー放電質量分析装置を用いて分析した結果、Alの含有量は10000質量ppm、Tiの含有量は10000質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は456個で、実施例11より増加した。これはAlとTiの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0114】
(実施例12)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径5μmのCu粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):27Fe−27Pt−6Cu−40C
さらに、実施例12では平均粒径200μmのFeZr粉を上記重量の0.02%に相当する量である0.5g秤量した。
【0115】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0116】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてZrの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Zrの含有量は70質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は255個であった。
【0117】
(比較例23)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径5μmのCu粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):27Fe−27Pt−6Cu−40C
また、比較例23ではFeZr粉は添加しなかった。
【0118】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0119】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてZr量の分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Zrの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は438個で、実施例12より増加した。
【0120】
(比較例24)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径5μmのCu粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):27Fe−27Pt−6Cu−40C
さらに、比較例24では平均粒径200μmのFeZr粉を上記重量の2%に相当する量である50.0g秤量した。
【0121】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1200°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0122】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてZrの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Zrの含有量は7210質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は464個で、実施例12より増加した。これはZrの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0123】
(実施例13)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのBN粉、平均粒径2μmのCr粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):38Fe−38Pt−20BN−4Cr
さらに、実施例7では平均粒径100μmのMg粉を上記重量の0.5%に相当する量である12.5g秤量した。
【0124】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1150°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0125】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMgの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Mgの含有量は4890質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は129個であった。
【0126】
(比較例25)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのBN粉、平均粒径2μmのCr粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):38Fe−38Pt−20BN−4Cr
また、比較例25ではMg粉は添加しなかった。
【0127】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1150°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0128】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMg量の分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Mgの含有量は50質量ppm(検出下限)未満であった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は546個で、実施例13より増加した。
【0129】
(比較例26)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径10μmのBN粉、平均粒径2μmのCr粉を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(分子量比率):38Fe−38Pt−20BN−4Cr
さらに、比較例26では平均粒径100μmのMg粉を上記重量の0.6%に相当する量である15.0g秤量した。
【0130】
次に秤量した全ての粉末を、粉砕媒体のSUSボールと共に容量10リットルのボールミルポットに投入し、Ar雰囲気中で16時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度1150°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0131】
次に作製した焼結体の一部を切り出し、切り出した小片を用いてMgの分析を実施した。ICP−AES装置を用いて分析した結果、Mgの含有量は5990質量ppmであった。さらに旋盤を用いて、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ切削加工し、円盤状のターゲットを得た。このターゲットを用いて実施例1と同一条件でスパッタリングを行い、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は177個で、実施例13より増加した。これはMgの添加量が多かったため、粗大な酸化物が形成されパーティクル源となったためと考えられる。
【0132】
以上の通り、いずれの実施例においても、酸素1モルに対する酸化物の標準生成自由エネルギーがCO(一酸化炭素)のよりも低い元素を微量添加することで、スパッタリング時に発生するパーティクル量を低減することができ、成膜時の歩留まりを向上することができた。このように、CO(一酸化炭素)のよりも酸化物の標準生成自由エネルギーが低い酸化物を形成する元素を含有させることが、パーティクル発生の抑制に非常に重要な役割を有することが分かった。
【0133】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のスパッタリングターゲットは、スパッタ時に発生するパーティクル量を低減することができ、成膜時における歩留まりを向上することができるという優れた効果を有する。したがって、グラニュラー構造型の磁性薄膜を形成するためのスパッタリングターゲットとして有用である。