特許第5969138号(P5969138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969138
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】タンタルスパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20160804BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20160804BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   H01L21/28 301R
   H01L21/285 S
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-540465(P2015-540465)
(86)(22)【出願日】2014年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2014075548
(87)【国際公開番号】WO2015050041
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2015年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-206580(P2013-206580)
(32)【優先日】2013年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】小田 国博
【審査官】 國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/020662(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/018971(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/018970(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/134417(WO,A1)
【文献】 特開2001−020065(JP,A)
【文献】 特開2000−212678(JP,A)
【文献】 特開平11−080942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/28,21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ及びタングステンを必須成分として、合計で1massppm以上、10massppm未満含有し、ニオブ、タングステン及びガス成分を除く純度が99.9999%以上である直径450mmφの円盤状タンタルスパッタリングターゲットであって、平均結晶粒径が50μm以上150μm以下、結晶粒径のばらつきが20%以下、成膜速度が8〜10Å/sec、シート内抵抗分布が1.0〜2.0%であることを特徴とするタンタルスパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、均一な組織を備え、安定して高い成膜速度で均質なスパッタリングが可能な高純度タンタルスパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野、耐食性材料や装飾の分野、触媒分野、切削・研磨材や耐摩耗性材料の製作等、多くの分野に金属やセラミックス材料等の被膜を形成するスパッタリングが使用されている。
スパッタリング法自体は上記の分野で、よく知られた方法であるが、最近では、特にエレクトロニクスの分野において、複雑な形状の被膜の形成や回路の形成、あるいはバリア膜の形成等に適合するタンタルスパッタリングターゲットが要求されている。
【0003】
一般に、このタンタルターゲットは、タンタル原料を電子ビーム溶解・鋳造したインゴット又はビレットの鍛造、焼鈍(熱処理)を繰り返し、さらに圧延及び仕上げ加工(機械加工、研磨等)してターゲットに加工されている。
このような製造工程において、インゴット又はビレットの鍛造は、鋳造組織を破壊し、気孔や偏析を拡散、消失させ、さらにこれを焼鈍することにより再結晶化し、組織の緻密化と強度を高めることによって製造されている。
通常、溶解鋳造されたインゴット又はビレットは、50mm以上の1次結晶粒径を有している。そして、インゴット又はビレットの鍛造と再結晶焼鈍により、鋳造組織が破壊され、おおむね均一かつ微細(100μm以下の)結晶粒が得られる。
【0004】
一方、このようにして製造されたターゲットを用いて、スパッタリングを実施する場合、ターゲットの再結晶組織がより細かくかつ均一であり、また結晶方位が特定の方向に揃っているものほど均一な成膜が可能であり、アーキングやパーティクルの発生が少なく、安定した特性を持つ膜を得ることができると言われている。そのため、ターゲットの製造工程において、再結晶組織の微細化と均一化、さらには特定の結晶方位に揃えようとする方策が採られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
また、Cu配線に対するバリア層として用いるTaN膜を形成するための高純度Taターゲットとして、自己維持放電特性を有する元素であるとして、Ag、Au及びCuから選択した元素を0.001〜20ppm含有させ、また、不純物元素としてFe、Ni、Cr、Si、Al、Na、Kの合計量を100ppm以下として、これらを差引いた値が99.99〜99.999%の範囲とする高純度Taを用いることが開示されている(特許文献3参照)。
しかしながら、これらの特許文献を見る限り、特定の元素の含有が、組織を微細化させ、これによってプラズマを安定化させるということは行われていない。
【0006】
また、最先端の半導体デバイスにおいて、その配線幅は極めて狭くなるため、Cu配線に対するバリア層として使用されるTaあるいはTaN膜は、従来と同等又はそれ以上のバリア特性を維持しつつ、さらに膜厚を薄くすること(極薄膜)が要求されている。
このような要求に対して、膜の密着性を阻害する不純物を極力減らした高純度の材料を用いることが望まれるが、純度6NのようなTa材料では、結晶粒径を微細化するための鍛造や、圧延工程で導入された塑性変形歪みを熱処理によって再結晶させた場合に、容易に結晶粒が粗大化してしまい、微細で均一な組織を得ることが難しかった。そして、このような粗大な結晶組織を持つターゲットを用いてスパッタリングを行った場合には、成膜された膜の均一性が劣化するという問題があった。
【0007】
このようなことから、本出願人は以前、膜特性に影響の少ない成分を微量添加することにより、高純度を維持しつつ、結晶粒径の微細均質化が可能となることを見出し、タングステンなどを必須成分として1massppm以上、100massppm以下含有し、純度が99.9985%以上のタンタルスパッタリングターゲットについて出願を行った(特許文献4〜6参照)。
しかしながら、このようなターゲットを用いた場合、過度の微細化による極微細結晶組織を持つターゲットをスパッタリングすると、成膜速度が遅くなり、安定的に均質かつ高速なスパッタリングが行われず、生産性を著しく低下させるという大きな問題が指摘されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2002−518593号公報
【特許文献2】米国特許第6,331,233号
【特許文献3】特開2002−60934号公報
【特許文献4】国際公開第2011/018971号
【特許文献5】国際公開第2010/134417号
【特許文献6】国際公開第2011/018970号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、タンタルの純度を高純度に維持すると共に、特定の元素を添加することによって、均一かつ最適な範囲に調整された微細組織を備え、安定的に高い成膜速度で、均質なスパッタリングが可能な高純度タンタルスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するため鋭意研究を行った結果、特定の元素を極めて微量添加することで、結晶組織構造を最適な範囲に調整することを可能とし、均一な組織を備え、安定して高い成膜速度で均質なスパッタリングが可能な高純度タンタルスパッタリングターゲットを得ることができるとの知見を得た。
本発明は、この知見に基づいて、
1)ニオブ及びタングステンを必須成分として、合計で1massppm以上、10massppm未満含有し、ニオブ、タングステン及びガス成分を除く純度が99.9999%以上であることを特徴とするタンタルスパッタリングターゲット、
2)平均結晶粒径が50μm以上、150μm以下であることを特徴とする上記1)記載のタンタルスパッタリングターゲット、
3)結晶粒径のばらつきが20%以下であることを特徴とする上記2)記載のタンタルスパッタリングターゲット、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、タンタルの純度を高純度に維持すると共に、ニオブ及びタングステンを必須成分として極めて微量添加することにより、均一で最適な範囲に調整された微細組織を備え、安定して高い成膜速度で均質なスパッタリングが可能な、高純度タンタルスパッタリングターゲットを提供することができるという優れた効果を有する。高速スパッタリングは、成膜時間を短縮できるので、生産性の観点から極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(タンタル原料の精製)
本願発明で使用するタンタル(Ta)は、例えば、以下のようにして精製することができる。まず、タンタル原料鉱石を粉砕し、この粉砕粉をフッ化水素酸で溶解し、溶媒抽出して、タンタル溶液を得る。次に、このタンタル溶液にフッ化カリウム及び塩化カリウムを添加して、フルオロタンタル酸カリウムを沈殿・分離する。その後、金属ナトリウムにて溶融還元して、高純度のタンタル粉末を得る。また、このタンタル粉末は必要に応じてマグネシウムによる脱酸素処理を行うことが好ましい。
このようにして得られる高純度タンタルは、ガス成分を除き全ての不純物は1massppm未満であり、純度99.9999mass%以上となっている。もっとも、次工程の電子ビーム溶解によっても不純物を除去することができるので、例えば、4Nレベル(99.99%)以上のタンタルを使用することもできる。また、当然ながら他の方法を用いて精製した高純度のタンタルを使用することもできる。
【0013】
(タンタルインゴットの作製)
本発明で使用するタンタルインゴットは、例えば、次の工程によって製造することができる。まず、上記で得られたタンタル粉末に、ニオブ(Nb)粉末及びタングステン(W)粉末を微量添加、混合し、この混合粉末を金型プレスで圧粉体に成形する。
具体的には、例えば、タンタル粉末600kgに対し、ニオブ粉末及びタングステン粉末を0.6g添加することができる。このとき、添加粉末を均一に分散させるために、混合機において長時間かけて混合を行うか、又は、後述する溶解・精製工程において、溶湯内を攪拌することが有効である。
また、別の添加の方法として、ニオブやタングステンを含有するタンタル合金を細線とし、これを溶湯原料内部に挟み込むことで、連続的かつ均一にニオブやタングステンを供給することができる。この場合、すでに合金化しているため、粉末より活量が低く、電子ビーム溶解中に飛散減少することを抑えることが可能となる。原料のタンタル合金は、EBボタンメルト等の小規模溶解で簡単に得ることができるので、これを延伸して細線化して用いればよい。
【0014】
また、別の添加の方法として、例えば、ニオブ及びタングステンを100ppm含むタンタル合金を切削した切子を粉砕し、この粉砕粉をタンタル粉末に添加混合することもできる。このとき、タンタル粉末600kgに対して、切子として必要な量は60gとなり、この切子を粉砕したものを投入することで、均質化を高めることができる。
さらには、EBによりボタン溶解したニオブ及びタングステン含有タンタル小塊を、プレス成型のブリケットに等間隔で埋めていくことにより、EB溶解の原料導入時に等しい割合で添加していくことも、均質化のために有効である。その際、EBの溶湯形成範囲を推測して、溶湯堆積中に等間隔、等量ずつ、前記小塊を供給することが望ましい。溶湯体積よりも大きな体積の添加物を添加したり、添加の間隔があいたりすると、添加されずに冷却固化してしまう部分ができてしまうため、小さな体積の添加物を、断続的かつ連続的に供給することが望ましい。
【0015】
次に、得られた圧粉体を電子ビーム溶解炉中の原料導入部に導入充填し、原料導入部を真空排気した後、原料を電子ビーム溶解炉本体へ移行して、電子ビーム(EB)にて溶解・精製する。溶解温度は、タンタルの融点である3020℃付近(3020〜3500℃)とするのが好ましい。ニオブ(融点:2469℃、沸点:4927℃)やタングステン(融点:3420℃、沸点:5555℃)は溶解時に揮発することはないが、揮発性不純物については、このとき除去することができる。このようにして得られる高純度タンタルインゴットは、ガス成分を除き全ての不純物は1massppm未満となっている。
その後、この液化したタンタル溶湯を室温まで冷却することで、高純度タンタルのインゴットを作製することができる。なお、上記の電子ビーム溶解は、溶解・精製手段の一例であって、本発明の目的を達成できるものであれば、他の溶解・精製手段を用いることに何ら支障ない。
【0016】
(スパッタリングターゲットの作製)
本発明のタンタルスパッタリングターゲットは、その一例を示すと、次のような方法を用いて作製することができる。まず、上記で得られたタンタルインゴットを、焼鈍−鍛造、圧延、焼鈍(熱処理)、仕上げ加工等の一連の加工を行う。
具体的には、例えばインゴット−鍛伸−1373K〜1673Kの温度での焼鈍(1回目)−冷間鍛造(1回目)−再結晶開始温度〜1373Kの温度での再結晶焼鈍(2回目)−冷間鍛造(2回目)−再結晶開始温度〜1373Kの間での再結晶焼鈍(3回目)−冷間(熱間)圧延(1回目)−再結晶開始温度〜1373Kの間での再結晶焼鈍(4回目)−冷間(熱間)圧延(必要に応じて、2回目)−再結晶開始温度〜1373Kの間での再結晶焼鈍(必要に応じて、5回目)−仕上げ加工を行うことで、スパッタリングターゲット材とすることができる。
【0017】
上記の鍛造あるいは圧延によって鋳造組織を破壊し、気孔や偏析を拡散あるいは消失させることができ、さらにこれを焼鈍することにより再結晶化させ、冷間鍛造又は冷間圧延と再結晶焼鈍の繰返しにより、組織の緻密化、微細化と強度を高めることができる。上記の加工プロセスにおいて、再結晶焼鈍は1回でも良いが、2回繰返すことによって組織上の欠陥を極力減少させることができる。また、冷間(熱間)圧延と再結晶開始温度〜1373Kの間での再結晶焼鈍は、繰返しても良いが1サイクルでも良い。この後、機械加工、研磨加工等の仕上げ加工によって、最終的なターゲット形状に仕上げる。
なお、本発明は、上記の製造工程によってタンタルターゲットを製造することができるが、この製造工程は一例を示すもので、本願発明は、この製造工程を発明とするものではないので、他の工程によって製造することは、当然可能であり、本願発明はそれらを全て包含するものである。
【0018】
ところで、従来、均一な膜が得られるスパッタリングターゲットとして、純度の劣る4N5〜4Nレベルのタンタル材料が用いられることもあったが、タンタル材料の特性を活かすために6Nレベルの純度の材料を使用することが行われ、このような高純度の原料は、銅配線のバリア層として優秀な密着力を示し、かつ、不具合を誘発するおそれのある不純物成分をほとんど内包しないため非常に高い信頼性を示し、そのような材料を用いたタンタルターゲットは、市場において支持を得ていた。
また、このような材料に使用されるインゴットは、鍛造と再結晶焼鈍により、鋳造組織が破壊され、均一かつ微細(500μm以下の)であって、結晶方位が特定の方向に揃った結晶組織を備え、そのインゴットから得られるターゲットを用いてスパッタリングを実施した場合、高速成膜が可能であり、アーキングやパーティクルの発生が少なく、安定した特性を備えた膜を得ることができるとされていた。
【0019】
以上のようなことから、従来では良好な成膜特性を得るためには、ターゲットの製造工程において再結晶組織の微細化と均一化、さらには特定の結晶方位に揃えようとする方策が採用されていた。
ところが、上述のような高純度(6Nレベルの)材料を使用した場合、鍛造や圧延の塑性加工によって一次結晶粒の破壊や塑性加工歪みの導入を行うことで、均一かつ微細な結晶粒を得ようとしても、再結晶温度付近で極めて容易に結晶粒成長をしてしまい、微細結晶を得ることが困難であった。
【0020】
近年の先端半導体デバイスにおいては、配線幅がさらに狭くなるため、銅配線のバリア層として使用されるタンタルはさらに極薄膜で、かつ、従来と同等又はそれ以上の優秀なバリア特性が要求される。そのような要求下では、膜の密着性を阻害する不純物成分を極力低減した高純度材料が望まれるが、純度6Nのような高純度タンタル材料は、先述の通り、微細かつ均一な組織を得ることが難しいという欠点があった。
このようなことから、本願発明者は、さらなる研究開発を行った結果、膜特性に影響の少ないニオブ(Nb)及びタングステン(W)を少なくとも純度5Nを維持する範囲で添加することで、高純度である優位性を維持しつつ、結晶粒径の微細均質化が可能となることを見出し、本願発明につながる契機となった。
なお、電子ビーム溶解にて精製されるタンタル原料粉末における不純物を極力減らす試みは長い年月を経て達成されており、純度が6Nレベルの高純度タンタルは得られるようになっているが、所望の純度のインゴットが得られるように原料粉末の純度を制御するまでには至っていない。
【0021】
すなわち、本発明のタンタルスパッタリングターゲットにおいて、重要なことは、ニオブ、タングステン及びガス成分を除く純度が99.9999%以上であるタンタルにおいて、合計で1massppm以上、10massppm以下のニオブ及びタングステンを必須成分として含有させることである。
ニオブ及びタングステン含有量の下限値1massppmは、効果を発揮させるための数値であり、ニオブ及びタングステン含有量の上限値10massppmは、本発明の効果を持続させるための上限値である。この下限値を下回る場合は再結晶粒径のコントロールが困難であり、粗大化した結晶粒はスパッタリング膜の均一性を低下させる要因となる。この上限値を超える場合には、過度の結晶組織微細化が起こり、一部未再結晶部が発生し、結果としてスパッタ速度の極端な低下を引き起こすので、ニオブ及びタングステン含有量10massppmを上限値とする。
【0022】
このニオブ及びタングステンの含有が、最適なターゲットの均一微細組織を形成することに寄与し、それによってプラズマを安定化させ、成膜速度を高めることができるとともに、スパッタリング膜の均一性(ユニフォーミティ)を向上させることが可能となる。また、このスパッタリング時のプラズマ安定化は、初期の段階でも安定化するので、バーンイン時間を短縮できる。
この場合、タンタルの純度は高純度すなわち99.9999%以上とする必要がある。この場合、酸素、水素、炭素、窒素、硫黄のガス成分は除外することができる。一般にガス成分は特殊な方法でなければ除去は困難であり、通常の生産工程で精製の際に除去することは難しいので、ガス成分は本願発明のタンタルの純度からは除外する。
【0023】
上記の通り、ニオブ及びタングステンがタンタルの均一微細な組織をもたらすのであるが、他の金属成分、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミックスの混入は有害であり、許容することはできない。これらの不純物はニオブやタングステンの作用を抑制する作用をすると考えられるからである。また、これらの不純物は、ニオブやタングステンとは明らかに異なり、タンタルターゲットの結晶粒径を均一に仕上げることが難しく、スパッタリング特性の安定化には寄与しない。
本願発明のタンタルスパッタリングターゲットは、より好ましい範囲として、ニオブ及びタングステンをそれぞれ1massppm以上、5massppm以下の必須成分として含有し、ニオブ、タングステン及びガス成分を除く純度が99.9999%以上であることである。
【0024】
本発明のタンタルスパッタリングターゲットは、さらにターゲット中のニオブ及びタングステン含有量のばらつきを30%以下とすることが望ましい。
適度なニオブ及びタングステンの含有がタンタルスパッタリングターゲットの均一微細な組織を形成する機能(性質)を有する以上、ニオブはより均一に分散していることは、ターゲット組織の均一微細な組織に、より強く貢献させることができる。当然ながら、通常の製造工程において、これらは容易に達成できるのであるが、ターゲットのニオブ及びタングステン含有量のばらつきを20%以下とする点に留意し、その意図を明確に持つことが必要である。
【0025】
このターゲットのニオブ及びタングステンの含有量のばらつきについては、円盤状のターゲットにおいては、直行する2本の直径線上に、それぞれ5点(中心点、半径の1/2点、外周又はその近傍点)を採り、合計9点{10点−中心点(中心点は共通しているので1点)}のニオブ及びタングステンの含有量を分析する。そして、各点において、{(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100の式に基づいて、ばらつきを計算することができる。
【0026】
また、本発明のタンタルスパッタリングターゲットは、平均結晶粒径が50μm以上、150μm以下であることが望ましい。
従来、ターゲット材の結晶粒径は、平均粒径の上限値を規定し、それ以下であれば均一な成膜が可能であるという認識であったが、タンタルターゲットの組織と成膜特性について詳細な研究を続けた結果、高速かつ安定な成膜を実現するためには、平均結晶粒径が50μm以上であることが望ましく、一方、均一な膜特性を得るためには、平均結晶粒径が150μm以下であることが望ましい、との知見を得た。
ニオブ及びタングステンの適度な添加と通常の製造工程において、結晶粒径の微細化が達成できるのであるが、平均結晶粒径が50μm以上、150μm以下とする点に留意し、その意図を明確に持つことが必要である。
【0027】
また、この結晶粒径のばらつきが20%以下とすることがより望ましい。
このようなターゲット組織は、プラズマが安定であり、成膜速度の高速化が可能となり、膜の均一性(ユニフォーミティ)に優れる。また、スパッタリング時のプラズマ安定化は、初期の段階でも安定化するので、バーンイン時間を短縮できるという効果を有する。
タンタルターゲットの平均結晶粒径のばらつきについては、円盤状のターゲットにおいては、直行する2本の直径線上に、それぞれ5点(中心点、半径の1/2点、外周又はその近傍点)を採り、合計9点{10点−中心点(中心点は共通しているので1点)}のタンタルの結晶粒径を測定する。そして、各点において、{(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100の式に基づいて、結晶粒径のばらつきを計算することができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例について説明する。なお、本実施例は発明の一例を示すためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に含まれる他の態様及び変形を含むものである。
【0029】
(実施例1)
純度99.9999%以上のタンタルに、ニオブを5massppm、タングステンを4masspppm添加した原料を電子ビーム溶解し、これを鋳造して長さ1000mm、直径200mmφのインゴットとした。
次に、このインゴットを室温で鍛伸した後に切断し、1500Kの温度で再結晶焼鈍した。これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料が得られた。
次に、これを再度室温で鍛伸及び据え込み鍛造し、再び1480K温度で再結晶焼鈍を実施した。鍛造、熱処理を再度繰り返し、これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料を得た。なお、再結晶焼鈍温度は、1400〜1500K温度の範囲で調整可能であり、同様の効果が得られる。
次に、これを冷間で圧延及び1173Kの再結晶焼鈍を行い、仕上げ加工を行って厚さ10mm、直径450mmφのターゲット材とした。
ターゲットの平均結晶粒径は50μmであり、結晶粒径のばらつきは20%であった。また、ニオブ及びタングステン含有量のばらつきは20%であった。この結果を表1に示す。
なお、途中及び最後の冷間加工並びに再結晶焼鈍は、上記平均結晶粒径及び結晶粒径のばらつきとなるように調節した。なお、この平均結晶粒径とばらつきは、ニオブやタングステンの添加量によっても変化するが、加工条件によっても調節が可能である。
【0030】
このようにして得られたターゲットをスパッタ装置に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、投入電力15kw、Arガス流量を8sccmとし、75kWhrのプレスパッタリングを実施した後、12インチ径のシリコンウエハ上に15秒間成膜した。シート抵抗は膜厚に依存するので、ウエハ内のシート抵抗の分布を測定し、それによって膜厚の分布状況を調べた。具体的には、ウエハ上の49点のシート抵抗を測定し、その標準偏差(σ)を算出した。
その結果を、同様に表1に示す。表1から明らかなように、本実施例においては、シート内抵抗分布が小さい(1.0%)、すなわち膜厚分布が小さいことを示している。また、スパッタリングの成膜速度を測定したところ、8Å/secであった。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例2)
純度99.9999%以上のタンタルに、ニオブを1massppm、タングステンを5massppm添加した原料を電子ビーム溶解し、これを鋳造して長さ1000mm、直径200mmφのインゴットとした。
次に、このインゴットを室温で鍛伸した後に切断し、1500Kの温度で再結晶焼鈍した。これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料が得られた。
次に、これを再度室温で鍛伸及び据え込み鍛造し、再び1480K温度で再結晶焼鈍を実施した。鍛造、熱処理を再度繰り返し、これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料を得た。
次に、これを冷間で圧延及び再結晶焼鈍を行い、仕上げ加工を行って厚さ10mm、直径450mmφのターゲット材とした。
ターゲットの平均結晶粒径は120μmであり、結晶粒径のばらつきは10%であった。また、ニオブ及びタングステン含有量のばらつきは30%であった。この結果を、同様に表1に示す。
なお、途中及び最後の冷間加工並びに再結晶焼鈍は、上記平均結晶粒径及び結晶粒径のばらつきとなるように調節した。なお、この平均結晶粒径とばらつきは、ニオブやタングステンの添加量によっても変化するが、加工条件によっても調節が可能である。
【0033】
このようにして得られたターゲットをスパッタ装置に取り付け、スパッタリングを行った。なお、スパッタリングの条件は実施例1と同一とした。次に、ウエハ内のシート抵抗の分布を測定し、それによって膜厚の分布状況を調べた。なお、シート抵抗の測定方法等は実施例1と同様とした。その結果を、同様に表1に示す。表1から明らかなように、本実施例においては、シート内抵抗分布が小さい(1.3%)、すなわち膜厚分布が小さいことを示している。また、スパッタリングの成膜速度を測定したところ、9.5Å/secであった。
【0034】
(実施例3)
純度99.9999%以上のタンタルに、ニオブを5massppm、タングステンを1massppm添加した原料を電子ビーム溶解し、これを鋳造して長さ1000mm、直径200mmφのインゴットとした。
次に、このインゴットを室温で鍛伸した後に切断し、1500Kの温度で再結晶焼鈍した。これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料が得られた。
次に、これを再度室温で鍛伸及び据え込み鍛造し、再び1480K温度で再結晶焼鈍を実施した。鍛造、熱処理を再度繰り返し、これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料を得た。
次に、これを冷間で圧延及び再結晶焼鈍を行い、仕上げ加工を行って厚さ10mm、直径450mmφのターゲット材とした。
ターゲットの平均結晶粒径は100μmであり、結晶粒径のばらつきは10%であった。また、ニオブ及びタングステン含有量のばらつきは30%であった。この結果を、同様に表1に示す。
なお、途中及び最後の冷間加工並びに再結晶焼鈍は、上記平均結晶粒径及び結晶粒径のばらつきとなるように調節した。なお、この平均結晶粒径とばらつきは、ニオブやタングステンの添加量によっても変化するが、加工条件によっても調節が可能である。
【0035】
このようにして得られたターゲットをスパッタ装置の取り付け、スパッタリングを行った。なお、スパッタリングの条件は実施例1と同一とした。次に、ウエハ内のシート抵抗の分布を測定し、それによって膜厚の分布状況を調べた。なお、シート抵抗の測定方法等は実施例1と同様とした。その結果を、同様に表1に示す。表1から明らかなように、本実施例においては、シート内抵抗分布が小さい(1.5%)、すなわち膜厚分布が小さいことを示している。また、スパッタリングの成膜速度を測定したところ、9Å/secであった。
【0036】
(実施例4)
純度99.9999%以上のタンタルに、ニオブを1massppm、タングステンを1massppm添加した原料を電子ビーム溶解し、これを鋳造して長さ1000mm、直径200mmφのインゴットとした。
次に、このインゴットを室温で鍛伸した後に切断し、1500Kの温度で再結晶焼鈍した。これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料が得られた。
次に、これを再度室温で鍛伸及び据え込み鍛造し、再び1480K温度で再結晶焼鈍を実施した。鍛造、熱処理を再度繰り返し、これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料を得た。
次に、これを冷間で圧延及び再結晶焼鈍を行い、仕上げ加工を行って厚さ10mm、直径450mmφのターゲット材とした。ターゲットの平均結晶粒径は140μmであり、結晶粒径のばらつきは8%であった。また、ニオブ含有量のばらつきは50%であった。この結果を、同様に表1に示す。
なお、途中及び最後の冷間加工並びに再結晶焼鈍は、上記平均結晶粒径及び結晶粒径のばらつきとなるように調節した。なお、この平均結晶粒径とばらつきは、ニオブやタングステンの添加量によっても変化するが、加工条件によっても調節が可能である。
【0037】
このようにして得られたターゲットをスパッタ装置の取り付け、スパッタリングを行った。なお、スパッタリングの条件は実施例1と同一とした。次に、ウエハ内のシート抵抗の分布を測定し、それによって膜厚の分布状況を調べた。なお、シート抵抗の測定方法等は実施例1と同様とした。その結果を、同様に表1に示す。表1から明らかなように、本実施例においては、シート内抵抗分布が小さい(2.0%)、すなわち膜厚分布が小さいことを示している。また、スパッタリングの成膜速度を測定したところ、10Å/secであった。
【0038】
(比較例1)
純度99.999%のタンタルに、ニオブを10massppm、タングステンを10massppm添加した原料を電子ビーム溶解し、これを鋳造して長さ1000mm、直径200mmφのインゴットとした。
次に、このインゴットを室温で鍛伸した後に切断し、1500Kの温度で再結晶焼鈍した。これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料が得られた。
次に、これを再度室温で鍛伸及び据え込み鍛造し、再び1480K温度で再結晶焼鈍を実施した。鍛造、熱処理を再度繰り返し、これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料を得た。
次に、これを冷間で圧延及び再結晶焼鈍を行い、仕上げ加工を行って厚さ10mm、直径450mmφのターゲット材とした。ターゲットの平均結晶粒径は30μmであり、結晶粒径のばらつきは30%であった。また、ニオブ及びタングステン含有量のばらつきは10%であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0039】
このようにして得られたターゲットをスパッタ装置の取り付け、スパッタリングを行った。なお、スパッタリングの条件は実施例1と同一とした。次に、ウエハ内のシート抵抗の分布を測定し、それによって膜厚の分布状況を調べた。なお、シート抵抗の測定方法等は実施例1と同様とした。その結果を、同様に表1に示す。表1から明らかなように、本比較例においては、シート内抵抗分布は小さい(1.0%)、すなわち膜厚分布が小さかったが、スパッタリングの成膜速度を測定したところ、6Å/secと、本実施例に比べて成膜速度が遅かった。
【0040】
(比較例2)
純度99.999%のタンタルに、ニオブを15massppm、タングステンを5massppm添加した原料を電子ビーム溶解し、これを鋳造して長さ1000mm、直径200mmφのインゴットとした。
次に、このインゴットを室温で鍛伸した後に切断し、1500Kの温度で再結晶焼鈍した。これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料が得られた。
次に、これを再度室温で鍛伸及び据え込み鍛造し、再び1480K温度で再結晶焼鈍を実施した。鍛造、熱処理を再度繰り返し、これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料を得た。
次に、これを冷間で圧延及び再結晶焼鈍を行い、仕上げ加工を行って厚さ10mm、直径450mmφのターゲット材とした。ターゲットの平均結晶粒径は25μmであり、結晶粒径のばらつきは30%であった。また、ニオブ及びタングステン含有量のばらつきは10%であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0041】
このようにして得られたターゲットをスパッタ装置の取り付け、スパッタリングを行った。なお、スパッタリングの条件は実施例1と同一とした。次に、ウエハ内のシート抵抗の分布を測定し、それによって膜厚の分布状況を調べた。なお、シート抵抗の測定方法等は実施例1と同様とした。その結果を、同様に表1に示す。表1から明らかなように、本比較例においては、シート内抵抗分布は小さい(1.0%)、すなわち膜厚分布が小さかったが、スパッタリングの成膜速度を測定したところ、5.5Å/secと、本実施例に比べて成膜速度が遅かった。
【0042】
(比較例3)
純度99.999%のタンタルに、ニオブを5massppm、タングステンを15massppm添加した原料を電子ビーム溶解し、これを鋳造して長さ1000mm、直径200mmφのインゴットとした。
次に、このインゴットを室温で鍛伸した後に切断し、1500Kの温度で再結晶焼鈍した。これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料が得られた。
次に、これを再度室温で鍛伸及び据え込み鍛造し、再び1480K温度で再結晶焼鈍を実施した。鍛造、熱処理を再度繰り返し、これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料を得た。
次に、これを冷間で圧延及び再結晶焼鈍を行い、仕上げ加工を行って厚さ10mm、直径450mmφのターゲット材とした。ターゲットの平均結晶粒径は35μmであり、結晶粒径のばらつきは30%であった。また、ニオブ及びタングステン含有量のばらつきは10%であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0043】
このようにして得られたターゲットをスパッタ装置の取り付け、スパッタリングを行った。なお、スパッタリングの条件は実施例1と同一とした。次に、ウエハ内のシート抵抗の分布を測定し、それによって膜厚の分布状況を調べた。なお、シート抵抗の測定方法等は実施例1と同様とした。その結果を、同様に表1に示す。表1から明らかなように、本比較例においては、シート内抵抗分布は小さい(1.0%)、すなわち膜厚分布が小さかったが、スパッタリングの成膜速度を測定したところ、6Å/secと、本実施例に比べて成膜速度が遅かった。
【0044】
(比較例4)
純度99.9999%以上のタンタルに、ニオブを0.5massppm、タングステンを0.05massppmを添加した原料を電子ビーム溶解し、これを鋳造して長さ1000mm、直径200mmφのインゴットとした。
次に、このインゴットを室温で鍛伸した後に切断し、1500Kの温度で再結晶焼鈍した。これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料が得られた。
次に、これを再度室温で鍛伸及び据え込み鍛造し、再び1480K温度で再結晶焼鈍を実施した。鍛造、熱処理を再度繰り返し、これによって、厚さ120mm、直径130mmφの材料を得た。
次に、これを冷間で圧延及び再結晶焼鈍を行い、仕上げ加工を行って厚さ10mm、直径450mmφのターゲット材とした。ターゲットの平均結晶粒径は200μmであり、結晶粒径のばらつきは15%であった。また、ニオブ及びタングステン含有量のばらつきは50%であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0045】
このようにして得られたターゲットをスパッタ装置の取り付け、スパッタリングを行った。なお、スパッタリングの条件は実施例1と同一とした。次に、ウエハ内のシート抵抗の分布を測定し、それによって膜厚の分布状況を調べた。なお、シート抵抗の測定方法等は実施例1と同様とした。その結果を、同様に表1に示す。表1から明らかなように、本比較例においては、シート内抵抗分布が大きい(5.0%)、すなわち膜厚分布が大きいことを示している。なお、スパッタリングの成膜速度を測定したところ、10Å/secであった。
【0046】
以上について、純度99.9999%以上のタンタルに、ニオブ及びタングステンを合計で10massppmを超える添加量とすると、成膜速度は遅くなり、過剰な添加は好ましくないことが分かった、また、ニオブ及びタングステンを合計で1massppm未満の添加量とすると、急速に結晶粒径の粗大化とばらつきが大きくなって、好ましくないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、タンタルスパッタリングターゲットにおいて、ニオブ及びタングステンを必須成分として合計で1massppm以上、10massppm未満含有させ、ニオブ、タングステン及びガス成分を除く純度を99.9999%以上とすることにより、均一で最適な範囲に調整された微細な組織を備え、安定して高い成膜速度を実現し、均一な膜を成膜することができる高純度タンタルスパッタリングターゲットを提供することができるという優れた効果を有する。
また、成膜速度の高速化は、成膜時間を短縮できるという効果を有するので、生産性の観点から、エレクトロニクスの分野、特に複雑な形状の被膜の形成や回路の形成あるいはバリア膜の形成等に適合するターゲットとして有用である。