【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電極表面上に吸熱性無機物粒子及びバインダー高分子を含む有機/無機複合多孔性コーティング層が形成された電極であって、前記吸熱性無機物粒子は、アンチモン含有化合物、金属水酸化物、グアニジノ(guanidine)系化合物、ホウ素含有化合物及び
スズ酸亜鉛からなる群より選ばれた1種以上であることを特徴とする電極、前記電極を含む電気化学素子、好ましくはリチウム二次電池を提供する。
【0013】
また、本発明は、素子の正常作動温度以上の温度(T)で発生する熱エネルギーを吸収して熱分解されたり消費する吸熱性無機物粒子が、分離膜のコーティング成分又は構成成分として用いられることを特徴とする分離膜、前記分離膜を含む電気化学素子、好ましくはリチウム二次電池を提供する。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、正極及び負極の直接接触を防止し、リチウムイオンの通過経路を提供する分離膜の構成成分又はコーティング成分として、吸熱性無機物粒子を導入することを特徴とする。
【0015】
このとき、本発明の分離膜は、独立型又は基材表面上にコーティング層として存在でき、多様な実施例で具現できる。例えば、無機物粒子及びバインダー高分子を含み、無機物粒子間の空いた空間により気孔構造が形成される独立型分離膜、多孔性基材上に無機物及びバインダー高分子を含む有機/無機複合多孔性コーティング層が形成された分離膜、或いは、電極基材上に分離膜の役割を果す有機/無機複合多孔性コーティング層が形成された新概念の分離膜及び電極の一体型複合電極などが適用可能である。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0016】
吸熱性無機物粒子は、電気化学素子、好ましくは電池内で熱が発生すると即時吸収又は消費できる無機物粒子であって、吸収された熱エネルギーを用いて自発的に熱分解したり、新しい物質を生成する物質を称する。
【0017】
分離膜に導入される吸熱性無機物粒子は、正極及び負極の直接接触を防止することで、内部短絡の発生を抑制すると共に、外部又は内部の要因による熱暴走や内部短絡が発生しても、従来の非吸熱性無機物粒子とは異なり、急激な発熱自体を抑制することで、電池の発火や爆発を根本的に防止できる。このとき、無機物粒子の耐熱性により、従来のポリオレフィン系分離膜(融点:120〜140℃)とは異なり、高温熱収縮が発生しない。
【0018】
また、吸熱性無機物粒子は、電池反応が起こる電極の構成成分でない、分離膜の構成成分及び/又はコーティング成分として用いられることで、電極物質への使用による電池の容量減少が全く発生しない。
【0019】
<吸熱性無機物粒子>
本発明において、分離膜の構成成分及び/又はコーティング成分として用いられる吸熱性無機物粒子は、電気化学素子内で非正常的に発生する熱の吸収又は消費が可能であれば、その成分、形態、含有量などは別に制限されない。
【0020】
吸熱性無機物粒子は、吸熱分解されても、初期の吸熱性無機物粒子の見かけ物性(例えば、粒径、形態等)と類似している一つ以上の物質に分解されることが好ましい。
【0021】
吸熱性無機物粒子が熱エネルギーを吸収する温度は、素子の定常作動温度以上の温度(T)であることが好ましい。このとき、素子の正常作動温度範囲は最大90℃程度である。例えば、内部短絡の発生時、電池内部は局部的に激しい400〜500℃以上の発熱が発生して分離膜を収縮させるが、吸熱性無機物粒子が導入された分離膜は、前述した局部的に激しい発熱の発生が抑制されて安全性を向上できる。実際に、本発明では、電池内の短絡が発生しても、分離膜に導入された吸熱性無機物粒子により、電池最大温度が100℃以上に上昇しないことで、優れた熱的安全性が確保されることを、本願の実験例を通して確認できた(
図8参照)。
【0022】
吸熱性無機物粒子の非制限的な例としては、アンチモン含有化合物、金属水酸化物、グアニジノ(guanidine)系化合物、ホウ素含有化合物、
スズ酸亜鉛又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0023】
アンチモン含有化合物の非制限的な例としては、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)、四酸化アンチモン(Sb
2O
4)、五酸化アンチモン(Sb
2O
5)又はこれらの混合物などが挙げられる。金属水酸化物の非制限的な例としては、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)又はこれらの混合物などが挙げられる。グアニジノ系化合物の非制限的な例としては、窒酸 グアニジン(guanidine nitrate)、スルファミン酸グアニジノ(guanidine sulfaminate)、燐酸グアニジン(guanidine phosphate)、燐酸グアニル尿素(guanyl urea phosphate)又はこれらの混合物などが挙げられる。ホウ素含有化合物の非制限的な例としては、H
3BO
3、HBO
2又はこれらの混合物などが挙げられる。
スズ酸亜鉛化合物の非制限的な例としては、Zn
2SnO
4 ZnSnO
3(zinc stannate、ZS)、ZnSn(OH)
6(zinc hydroxyl stannate、ZHS)又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0024】
前述した
スズ酸亜鉛系化合物は、約200℃付近で吸熱反応により分解される。
スズ酸亜鉛化合物が吸熱反応を進行する場合、電池内部の非正常的な熱を吸収するため、電池の連鎖的な発熱反応を抑制できる。また、
スズ酸亜鉛系化合物により生成される生成物は、難燃特性に優れるため、素子内部で発生する熱暴走がこれ以上発火や爆発に進行できないように燃焼反応を抑制できる。
【0025】
また、金属水酸化物の一種である水酸化アルミニウムは、200℃以上の温度で熱吸収によりAl
2O
3及び水(H
2O)に分解される。このとき、1000J/g程度の熱エネルギーを吸収する(反応式1及び
図1参照)。また、水酸化マグネシウムも、1300J/g程度の吸熱性を示す(反応式2参照)。よって、無機物粒子自体の蓄積された熱エネルギーが前記熱エネルギーに該当したり、前記熱エネルギーに該当する熱が発生すると即時吸熱反応により前述した安全性の向上が図れる。
〔反応式1〕
【0026】
2Al(OH)
3→Al
2O
3+3H
2O(200℃以上)△H=−1051J/g
〔反応式2〕
【0027】
Mg(OH)
2→MgO+H
2O(340℃以上)△H=−1316J/g
また、ホウ素化合物は、下記の反応式3及び反応式4に示すように、130℃以上の温度で熱分解された後、H
2Oに含浸され、難燃効果を示す溶融物状態で存在することになる。
〔反応式3〕
【0028】
2H
3BO
3→2HBO
2+2H
2O(130〜200℃)
〔反応式4〕
【0029】
2HBO
2→B
2O
3+H
2O(260〜270℃)
アンチモン含有化合物も、熱分解の後、電気化学素子内で発生する熱を吸収することで、前述した安全性の向上が図れる。
【0030】
前述した無機物粒子の以外に、素子内の熱を吸収して熱分解したり、他の化合物を生成する化合物も、本発明の範囲に属する。さらに、公知の無機系難燃物質、有機系難燃物質を混合して使用でき、ハロゲン化物のような有機系難燃物質と共に使用する場合、安全性の効果を上昇し得る。
【0031】
本発明の吸熱性無機物粒子は、互いに連結している無機物粒子間の空いた空間により気孔を形成する役割と、分離膜の物理的形態を維持できるようにする一種のスペーサーの役割とを兼ねている。
【0032】
本発明では、前述した吸熱性を持つ無機物粒子と共に、高誘電率及び/又は低密度の無機物粒子を選択的に混用できる。無機物粒子が高誘電率の特性を持つ場合、電解液内のリチウムイオン解離度を向上できるという長所がある。よって、使用可能な誘電率の定数が5以上である無機物粒子の非制限的な例としては、 SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、MgO、NiO、ZnO、Y
2O
3、ZrO
2、Al
2O
3、TiO
2、BaTiO
3又はこれらの混合体などが挙げられる。
【0033】
吸熱性無機物粒子の大きさは、特別に制限はないが、均一な厚さの分離膜の形成及び適切な多孔率のために、できるだけ0.001〜10μmであることが好ましい。0.001未満であれば、分散性の低下により有機/無機複合多孔性分離膜の構造及び物性を調節し難く、10μmを超過すれば、同一の固形分含量で製造される有機/無機複合多孔性分離膜の厚さが増加して機械的物性が低下し、また、大きすぎる気孔サイズにより電池の充放電時に内部短絡が発生する確率が高くなる。
【0034】
<バインダー高分子>
本発明による分離膜の構成成分又はコーティング成分の一つは、当業界において通常的に用いられるバインダー高分子である。
【0035】
本発明では、最終有機/無機複合多孔性分離膜の柔軟性及び弾性のような機械的物性を向上させるために、ガラス転移温度(Tg)ができるだけ低いバインダー高分子を使用でき、好ましくは−200〜200℃範囲である。
【0036】
また、イオン伝達能を持つバインダー高分子を使用する場合、電気化学素子の性能を一層向上できるので、できるだけ誘電率が高いことが好ましい。実際に、電解液における塩の解離度は、電解液溶媒の誘電率に依存するため、高分子の誘電率が高いほど本発明の電解質における塩の解離度を向上できる。高分子の誘電率の定数は1.0〜100(測定周波数=1kHz)が使用可能であり、特に10以上であることが好ましい。
【0037】
さらに、電解液の含浸度に優れるバインダー高分子を使用する場合、電解液の吸収により有機/無機複合多孔性分離膜に電解質イオン伝達能を付与又は向上できる。すなわち、従来の無機物の表面は、リチウムイオンの移動に妨害になる抵抗層であったのに対し、無機物粒子の表面;及び/又は無機物粒子間の空いた空間上に形成された気孔内に電解液を含浸するバインダー高分子が存在する場合、無機物粒子及び電解液間で発生する界面抵抗の減少により、溶媒化したリチウムイオンを気孔部の内部方向に引張して移動させるので、このようなイオン伝導の上昇効果により電池反応が活性化して性能の向上が図れる。また、電解液の含浸時、ゲル化可能な高分子は、以後に注入された電解液と高分子との反応により、高いイオン伝導度及び電解液の含浸率を有するゲル型有機/無機複合電解質を形成できるから、好ましい。よって、本発明のバインダー高分子は、溶解度指数が、15〜45MPa
1/2であるものが好ましく、15〜25 MPa
1/2及び30〜45MPa
1/2の範囲がより好ましい。溶解度指数が15MPa
1/2未満及び45MPa
1/2を超過する場合、通常の電池用液体電解液により含浸され難いことがある。
【0038】
使用可能なバインダー高分子の非制限的な例としては、フッ化ポリビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、フッ化ポリビニリデン−コ−トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethyl pullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethyl polyvinyl alcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethyl cellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethyl sucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシメチルセルロース(carboxymetyl cellulose)、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(acrylonitrile-styrene-butadiene copolymer)、ポリイミド(polyimide)、ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体(polyacarylonitrile-co-styrene)、ゼラチン(gelatine)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(polyethylene glycol dimethyl ether)、グリム(glyme)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)又はこれらの混合体などが挙げられる。その他、前述の特性を含む物質であれば、いずれの材料でも単独又は混合して使用可能である。
【0039】
<有機/無機複合多孔性分離膜>
本発明により吸熱性無機物粒子が導入される有機/無機複合多孔性分離膜は、独立型分離膜、又は、基材上に形成される分離膜の役割を果すコーティング層として存在し得る。
【0040】
有機/無機複合多孔性分離膜は、下記のように、大きく3つの実施例が適用可能であるが、これに制限されるものではない。
【0041】
1)第一は、吸熱性無機物粒子及びバインダー高分子の混合物を用いて、単独に独立型有機/無機複合多孔性分離膜を形成する。
独立型有機/無機複合多孔性分離膜は、支持体及びスペーサーの役割を兼ねている吸熱性無機物粒子間の空いた空間により、均一なサイズ及び気孔率を有する気孔構造が形成される。より好ましくは、吸熱性無機物粒子及び無機物粒子表面の一部又は全部に形成されたバインダー高分子コーティング層を含み、バインダー高分子により吸熱性無機物粒子間が連結及び固定され、吸熱性無機物粒子間の空いた空間により気孔構造が形成された構造であり得る。
2)第二は、前記混合物が気孔を有する多孔性分離膜基材上にコートされることで、多孔性基材の表面及び/又は基材の気孔部の一部に分離膜の役割を果す有機/無機複合多孔性コーティング層を形成する(
図4参照)。
気孔部を有する多孔性基材は、気孔部を有する多孔性分離膜基材であれば、特別な制限はない。例えば、当業界において通常的に用いられるポリオレフィン系分離膜、溶融温度200℃以上の耐熱性多孔性基材などが用いられる。特に、耐熱性多孔性基材である場合は、外部及び/又は内部の熱刺激による分離膜の収縮が根本的に解決できるため、有機/無機複合多孔性分離膜の熱的安全性を確保できる。
使用可能な多孔性分離膜基材の非制限的な例としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレン又はこれらの混合体などが挙げられ、その他、耐熱性エンジニアリングプラスチックを制限なく使用可能である。
多孔性分離膜基材の厚さは、特別に制限はないが、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜50μmである。1μm未満であれば、機械的な物性を維持し難く、100μmを超過すれば、抵抗層として作用してしまう。
多孔性分離膜基材の気孔サイズ及び気孔率は、特別に制限がなく、気孔率は5〜95%が好ましい。気孔サイズ(直径)は、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましい。気孔サイズ及び気孔率が、それぞれ0.01μm及び5%未満であれば、抵抗層として作用してしまい、50μm及び95%を超過すれば、機械的な物性を維持し難い。
本発明の有機/無機複合多孔性分離膜は、気孔を有する多孔性基材、前記基材の表面又は気孔部の一部に吸熱性無機物粒子及びバインダー高分子の混合物でコートした有機/無機複合多孔性コーティング層を含み、有機/無機複合多孔性コーティング層は、バインダー高分子により吸熱性無機物粒子間が連結及び固定され、吸熱性無機物粒子間の空いた空間により気孔構造が形成された構造であり得る。
3)第三は、前記混合物を既製造された正極及び/又は負極にコートすることで、有機/無機複合多孔性分離膜を直接電極上に形成する。このとき、製造された有機/無機複合多孔性分離膜は、可逆的にリチウムのインターカレーション及びデインターカレーションを行う電極と一体型になる。
本発明により有機/無機複合多孔性分離膜が形成された複合電極は、集電体上に電極活物質粒子が気孔構造を形成しながら結着された電極の表面上に、吸熱性無機物粒子とバインダー高分子との混合物をコートして形成されたコーティング層であって、バインダー高分子により吸熱性無機物粒子間が連結及び固定され、吸熱性無機物粒子間の空いた空間により気孔構造が形成された構造であり得る。
また、集電体上に電極活物質粒子が気孔構造を形成しながら結着された電極基材上に、有機/無機複合多孔性分離膜を直接コートして形成させたものであるから、電極活物質層と有機/無機複合多孔性分離膜とが互いに固着している形態で物理的且つ有機的に固く結合される(
図2参照)。よって、電極基材及び有機/無機複合多孔性分離膜間の界面接着力に優れるため、脆性等のような機械的物性の問題点が改善され得る。
【0042】
前述したように、多様な実施例で適用可能な本発明の有機/無機複合多孔性分離膜は、全部均一な気孔サイズ及び気孔率を有する気孔構造を含むことを特徴とする。
【0043】
まず、独立型有機/無機複合多孔性分離膜は、支持体及びスペーサーの役割を兼ねている無機物粒子間の空いた空間により、気孔構造が形成される。また、多孔性基材上に前記混合物をコートして形成された本発明の有機/無機複合多孔性分離膜も、多孔性基材自体内に気孔部が含まれているだけでなく、基材上に形成される無機物粒子間の空いた空間により、基材とコーティング層ともに気孔構造を形成することになる。さらに、電極基材上に前記混合物をコートする場合も、電極内の電極活物質粒子が気孔構造を形成するものと同様に、吸熱性無機物粒子間の空いた空間により、均一な気孔サイズ及び気孔率を有する気孔構造が形成される。よって、電解液の含浸時、界面抵抗が有意に減少すると共に、形成された均一なサイズの気孔構造により電解液の流入空間が増加してリチウムイオンの伝達が容易になることで、固有な気孔構造により電池の性能低下が最小化できる(
図2、
図3及び表1参照)。
【0044】
前述した多様な実施例による有機/無機複合多孔性分離膜において、吸熱性無機物粒子:バインダー高分子は、10〜99:1〜90(重量)が好ましく、特に50〜95:5〜50(重量)がより好ましい。吸熱性無機物粒子の含量が少なすぎる場合、高分子の含量が多くなって無機物粒子間に形成される空いた空間の減少による気孔サイズ及び気孔率が減少して、最終電池性能低下を招く。吸熱性無機物粒子の含量が多すぎる場合、高分子の含量があまり少ないため、無機物間の接着力の弱化により最終有機/無機複合多孔性分離膜の機械的物性を低下させる。
【0045】
有機/無機複合多孔性分離膜の厚さは、特別な制限がない。このとき、有機/無機複合多孔性分離膜を電極表面上に一体型で形成する場合、正極及び負極から各々独立的に厚さの調節が可能である。本発明では、電池の内部抵抗を低減するために、分離膜の厚さを1〜100μm内で調節することが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。
【0046】
また、有機/無機複合多孔性分離膜の気孔サイズ及び気孔率は、それぞれ0.001〜10μm、5〜95%であることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0047】
本発明に係る有無機複合多孔性分離膜は、公知の常法で製造可能である。その一実施例としては、吸熱性無機物粒子をバインダー高分子が溶解された高分子溶液に添加及び混合した後、この混合物を基材上にコートし、乾燥することで製造できる。
【0048】
このとき、気孔部を有する多孔性基材又は既製造された電極を各々基材として使用すれば、前述した第二又は第三の実施例の有機/無機複合多孔性分離膜が製造でき、基材上にコートした後に脱着する場合、独立型有機/無機複合多孔性分離膜が製造できる。
【0049】
バインダー高分子を溶解させる溶媒としては、公知の通常の溶媒を制限なく使用でき、可能であれば使用したい高分子と溶解度指数が類似しており、沸点が低いものが好ましい。
【0050】
吸熱性無機物粒子を既製造された高分子溶液に添加した後、無機物粒子を破砕することが好ましい。このとき、破砕方法は、ボールミル法のような通常の方法を使用できる。
【0051】
本発明では、最終有機/無機複合多孔性分離膜の気孔サイズ、気孔率及び厚さを調節するために、分離膜の気孔を調節するための因子、例えば、吸熱性無機物粒子の大きさ(粒径)、含量及び吸熱性無機物粒子とバインダー高分子との組成比を適切に調整することができる。
【0052】
例えば、高分子(P)に対する吸熱性無機物粒子(I)の比(I/P)を増加させる場合、無機物粒子間の空いた空間による気孔形成可能性が大きくなって最終有機/無機複合多孔性分離膜の気孔サイズ及び気孔率は増加するものの、同じ固形分含量(無機物粒子重量+高分子重量)において有機/無機複合多孔性分離膜の厚さが増加するようになる。また、無機物粒子の大きさ(粒径)が大きくなるほど無機物間の距離が大きくなるため、気孔サイズが増大する。
【0053】
製造された吸熱性無機物粒子と高分子との混合物を、用意された基材上にディップコート、ダイコート、ロールコート、コンマコート又はこれらの混合方式などのような通常の方法によりコートした後、乾燥することで、本発明の有機/無機複合多孔性分離膜が得られる。
【0054】
このように製造された本発明の有機/無機複合多孔性分離膜は、電気化学素子、好ましくは、リチウム二次電池の分離膜として使用できる。このとき、自体内に含まれたり、表面にコートされている吸熱性無機物粒子により、高温時に発生し得る分離膜の収縮又は溶融が根本的に抑制できる。
【0055】
<電気化学素子>
本発明は、正極、負極、分離膜及び電解液を含む電気化学素子において、電気化学素子は、有機/無機複合多孔性分離膜が形成された電極、吸熱性無機物粒子が導入された分離膜、又は、これらの全部を含む電気化学素子を提供する。
【0056】
電気化学素子は、電気化学反応を行う全ての素子を含み、具体例としては、全ての種類の一次・二次電池、燃料電池、太陽電池又はキャパシターなどがある。特に、二次電池の中でリチウム二次電池が好ましく、この具体例としては、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などが挙げられる。
【0057】
電気化学素子は、公知の常法で製造可能であり、その一実施例としては、前記両電極を組み立てた後、その組立体に電解液を注入する方法が挙げられる。このとき、両電極間に前述した有機/無機複合多孔性分離膜を介在させて電気化学素子を組立てることができるし、または分離膜の代りに有機/無機複合多孔性分離膜が形成された電極を用いる場合、電気化学素子の組立工程を単純化できる。
【0058】
本発明の有機/無機複合多孔性分離膜と共に適用される負極、正極、電解液は、特別な制限はなく、従来の電気化学素子に使用可能な通常のものが用いられる。
【0059】
また、本発明の電気化学素子は、本発明の有機/無機複合多孔性分離膜に加えて、微細気孔分離膜、例えばポリオレフィン系分離膜などを共に組立てることもできる。