【実施例】
【0019】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に限定されない。
【0020】
1.GPR119アゴニスト活性の測定
(1)試薬
5-HEPEはCayman社製の試薬(Item Number 32200)を用いた。コントロールとしてGPR119アゴニスト活性が知られているリゾフォスファチジルコリン(LPC)を使用した。
【0021】
(2)GPCRアッセイ
インビトロでGPR119アゴニスト活性を評価した。活性評価は、[
35S]GTP−γSのバインディングアッセイにより行った。詳細な方法は、生物物理43(1)37−39(2003)に示されるとおりである。
【0022】
その結果、5-HEPEに強いGPR119アゴニスト活性が検出された。そこで、さらに5-HEPEをヘペス緩衝液を用いて希釈し、ドーズリスポンスを確認した。
図1に示すように、5-HEPEのEC
50は52nMであり、LPCと同オーダーのアゴニスト活性を示した。
【0023】
2.cAMP産生促進作用の測定
5-HEPEについてcAMP産生促進作用を測定した。
具体的な方法は、以下のとおりである。
GPR119を安定的に発現するCHO細胞を作製し、この細胞に各濃度の5-HEPE(DMSO溶液)を添加してcAMP濃度を測定した。
具体的には、まず、5-HEPEのDMSO溶液2μlをKRB(Krebs-Ringer bicarbonate、組成は下記参照) (グルコース20mM)198μlに溶解し、活性測定用のサンプルとした。
活性測定2日前に96wellプレートに1.0×10
4[cells/well]になるようCHO(GPR119)細胞を播種した。2日後、培地をアスピレーターで吸い、KRB (グルコース 0mM)で細胞をウォッシュした。続いて、ウェルにKRB(グルコース2.5mM)100μlを加えて、30分CO
2インキュベーター内でインキュベートした。その後、KRB(グルコース 0mM)で細胞をウォッシュした。各wellのKRBを除去した後に、上記作製したサンプルを、各wellに100μlずつ添加し、37℃ CO
2インキュベーターで2時間インキュベートした。また、コントロールとしてLPCを添加した。
その後、キット(Amersham cAMP Biotrak Enzymeimmunoassay System RPN 225)を用いてcAMP活性の測定を行った(下記の参考文献参照)。
【0024】
<KRBの組成>
NaCl 119mM
KCl 4.74mM
CaCl
2 2.54mM
MgCl
2 1.19mM
KH
2PO
4 1.19mM
NaHCO
3 25mM
HEPES(pH 7.4) 10mM NaOHでpHを調整
BSA 0.05%
<参考文献>
A role for intestinal endocrine cell-expressed g protein-coupled receptor 119 inglycemic control by enhancing glucagon-like Peptide-1 and glucose-dependent insulinotropic Peptide release.
Chu ZL, Carroll C, Alfonso J, Gutierrez V, He H, Lucman A, Pedraza M, Mondala H,Gao H, Bagnol D, Chen R, Jones RM, Behan DP, Leonard J.
Endocrinology. 2008 May;149(5):2038-47.
【0025】
その結果、
図2に示すように、5-HEPEを培地に添加した場合には、LPCよりも高いcAMP産生が検出された。これより、5-HEPEは、細胞のcAMP産生促進作用を有することが判った。
【0026】
3.インスリン分泌促進作用の測定
5-HEPEについてインスリン分泌促進作用を測定した。具体的な方法は、以下のとおりである。
測定を行う2日前に、マウスすい島細胞由来MIN6細胞を96wellプレートに1.0×10
4cell/wellとなるように、播種した。細胞をKRB (グルコース 0mM)でウォッシュし、KRB (グルコース 2.5mM) 100μl加え、37℃ CO
2インキュベーターで30分インキュベートした。続いて、KRB(グルコース 0mM)で細胞を2回ウォッシュした。
各wellのKRBを除去した後に、各濃度の5-HEPEを含むKRB溶液(グルコース濃度は2.8mM(lowGlc)または16.7mM(highGlc))を各wellに200μlずつ添加し、37℃、CO
2インキュベーターで2時間インキュベートした。また、コントロールとしてLPCを添加し、同様にインキュベートした。
続いて、シバヤギ レビス インスリン-マウス(Hタイプ)のキットを使用し、分泌されたInsulin量を測定した。測定は、キットのプロトコールに従った(下記参照)。
【0027】
<プロトコール>
ビオチン結合抗インスリン抗体を付属の緩衝液で100倍に希釈・・・(1)
ペルオキシダーゼ・アビジン結合物を付属の緩衝液で100倍に希釈・・・(2)
付属の洗浄液をmillQで10倍に希釈・・・(3)
抗体固相化プレートを(3)で4回ウォッシュ
(1)を100μlずつ加える
サンプル希釈液又はコントロールを10μlずつ分注してよく混ぜる
室温で2時間インキュベート
抗体固相化プレートを(3)で4回ウォッシュ
(2)を100μlずつ分注して、よく混ぜる
室温で30分インキュベート
抗体固相化プレートを(3)で4回ウォッシュ
発色液を100μlずつ分注して、よく混ぜる
室温で30分インキュベート
反応停止液を100μlずつ分注して、よく混ぜる
マイクロプレートリーダー(450nm)で吸光度測定
【0028】
その結果、
図3に示すように、5-HEPEを培地に添加した場合にはグルコース濃度依存的なインスリン分泌量が認められ、その値(15nM)もLPCと同程度であった。これより、5-HEPEは、すい島細胞のインスリン分泌促進作用を有することが判った。
【0029】
4.SDTラット(糖尿病モデルラット)を用いた糖負荷試験
糖尿病モデルラット(系統名:SDT/Jcl 9週齢 ♂、数量:5匹×3群 計15匹、微生物学的グレード:SPF)を用いて、糖負荷試験(GTT)を行った。ラットの飼育は以下の条件で行った。
【0030】
<条件>
温度:20〜26℃
湿度:45〜70%
換気回数:10〜15回/時間
照明時間:明 7:00〜19:00、暗 19:00〜7:00
微生物学的グレード:SPF
飼育ラック:オープンラック1台(MAX30ケージ)
飼育ケージ:クリーンケージ(282×451×157mm)
収容匹数:2匹×5ケージ 計10匹
飲水:給水ボトル(250cc)に充填後、高圧蒸気滅菌(121℃、30分)
給水:給水ボトル1本を週2回
床敷き:プレナーチップ(121℃、30分 高圧蒸気滅菌)
ケージ交換:1回/週
【0031】
糖負荷試験は、以下の方法で行った。
まず、5-HEPEの0.25mg/ml溶液を1%アラビノース含有リン酸緩衝液を用いて調製し、これを糖投与24時間前および2時間前(計2回)に、1群(5匹)に経口投与(事前投与)した。投与量は、1.5ml/回/匹であった。また、コントロールとして他の1群(5匹)に1%アラビノース含有リン酸緩衝液を同様に投与し、他の一群(5匹)にはエイコサペンタエン酸(EPA)の0.25mg/ml溶液(1%アラビノース含有リン酸緩衝液)を投与した。
糖投与前日より1晩(17h)絶食した。糖投与は、「大塚糖液50%」(ブドウ糖液)を、2.0g/kg(体重)腹腔内投与(IP)した。また、絶食前、絶食後の2回、体重を測定した。
各群のラットの尾から、絶食前、絶食後、糖投与後15分、30分、60分、120分の計6回採血し、ロッシュ・ダイアグノスティック製「アキュチェック・アビバ」を用いて血糖値を測定し、各群ごとに各回の平均血糖値を算出した。
【0032】
その結果、
図4に示すとおり、コントロール群では糖投与後15〜30分の間に血糖値が急激に上昇したが、5-HEPEを事前投与した群では糖投与後の血糖値の上昇が抑制された。一方で、糖投与前、及び糖投与120分経過後には、5-HEPEを事前投与した群でも、コントロール群と同程度の血糖値であった。以上より、5-HEPEは、高血糖時にのみ血糖値の上昇を抑え、低血糖時には血糖値を下げないことが判った。なお、絶食前、絶食後で体重の変化は見られなかった。