特許第5969225号(P5969225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969225
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】骨強化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20160804BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160804BHJP
   A23L 33/19 20160101ALI20160804BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20160804BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20160804BHJP
   A23K 10/14 20160101ALI20160804BHJP
【FI】
   A61K37/02
   A61K37/18
   A61P19/08
   A61P19/10
   A61P43/00 121
   A23L33/19
   A23L2/00 F
   A23L2/00 J
   A23K10/14
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-53825(P2012-53825)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2013-184960(P2013-184960A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松山 博昭
(72)【発明者】
【氏名】森田 如一
(72)【発明者】
【氏名】石田 祐子
(72)【発明者】
【氏名】大町 愛子
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏也
(72)【発明者】
【氏名】高野 義彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−139084(JP,A)
【文献】 特開2003−137804(JP,A)
【文献】 特開平05−176715(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/057287(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/057282(WO,A1)
【文献】 特開平09−191858(JP,A)
【文献】 Int. J. Dairy Technology, 2009, Vol.62, No.2, pp.170-173
【文献】 中島一郎 他,牛乳カルシウムの生体利用性および骨代謝に及ぼす影響,Japanease J. Daily and Food Science,1996年,Vol.45, No.1,pp.A9-16,文献全体
【文献】 青木孝良,牛乳タンパク質の機能性,乳業技術,2009年,Vol.59,pp.15-28,第23頁−第24頁左欄
【文献】 宿野部幸孝 他,ホエータンパク加水分解物の調製とその性質,日本食品工業学会 第40回大会講演集,1993年,p.97,3Bp9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−45/08
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物と、ホエイタンパク質加水分解物を有効成分とし、
前記乳由来塩基性タンパク質が、前記乳由来塩基性タンパク質画分の全重量基準で、95重量%以上のタンパク質と、脂肪と、灰分とを含み、
前記タンパク質が、ソジウムドデシルサルフェート−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)換算分子量が3,000〜80,000の範囲の数種のタンパク質よりなり、
前記タンパク質のアミノ酸組成が、塩基性アミノ酸を、前記タンパク質の全重量基準で15重量%以上含有し、
前記ホエイタンパク質加水分解物が、
分子量が10kDa以下、メインピークが200Da〜3kDaであり、
APL(平均ペプチド鎖長)は2〜8であり、
遊離アミノ酸含量が20%以下であり、
抗原性がβ−ラクトグロブリンの抗原性の1/10,000以下であり、
前記乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物と、前記ホエイタンパク質加水分解物の比率が1:2であることを特徴とする骨強化剤。
【請求項2】
前記ホエイタンパク質加水分解物が分解率25%以上であることを特徴とする請求項1に記載の骨強化剤。
【請求項3】
前記乳由来塩基性タンパク質画分が、乳または乳由来の原料を陽イオン交換樹脂に接触させて塩基性タンパク質を吸着させ、この樹脂に吸着した画分を塩濃度0.1M〜1.0Mの溶出液で溶出して得られる画分である請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の骨強化剤製造する方法。
【請求項4】
前記乳由来塩基性タンパク質画分分解物が、乳由来塩基性タンパク質画分を、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン及びパンクレアチンよりなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質分解酵素を用いて分解したものである請求項1又は請求項のいずれか1項に記載の骨強化剤製造する方法。
【請求項5】
前記ホエイタンパク質加水分解物が、ホエイタンパク質をpH6〜10、50〜70℃において耐熱性のタンパク質加水分解酵素を用いて熱変性させながら酵素分解し、加熱して酵素を失活させて得られるものであることを特徴とする請求項1又は請求項のいずれか1項に記載の骨強化剤製造する方法。
【請求項6】
前記ホエイタンパク質加水分解物が、ホエイタンパク質をpH6〜10、20〜55℃においてタンパク質加水分解酵素を用いて酵素分解し、これを50〜70℃に昇温させ、pH6〜10、50〜70℃において耐熱性のタンパク質加水分解酵素を用いて未分解のホエイタンパク質を熱変性させながら酵素分解し、加熱して酵素を失活させて得られるものであることを特徴とする請求項1又は請求項のいずれか1項に記載の骨強化剤製造する方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の骨強化剤を含むことを特徴とする骨強化用飲食品、骨強化用栄養組成物、骨強化用飼料又は骨強化用医薬品

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性タンパク質画分及び/又は塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を有効成分とする、骨強化作用に優れ、骨芽細胞を増殖させ、また、破骨細胞の分化や該細胞による骨吸収を抑制する作用を有し、骨粗鬆症や骨折治療、リウマチ、関節炎などの種々の骨疾患の予防や治療に有効で、安定性及び安全性に優れた骨強化剤に関する。本発明は、さらに該骨強化剤を含有する、骨強化用飲食品、骨強化用栄養組成物、骨強化用飼料又は骨強化用医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的規模で、高齢化等に伴い、骨粗鬆症や骨折あるいは腰痛などの種々の骨に関連する疾患が増加しており、大きな社会問題となっている。これは、カルシウムの摂取不足やカルシウム吸収能力の低下、閉経後のホルモンのアンバラスなどが原因であるとされている。骨粗鬆症や骨折、腰痛などの種々の骨疾患を予防するためには、若齢期から骨芽細胞による骨形成を促進して体内の骨量をできるだけ増加させ、最大骨量や骨強度(骨密度+骨質)を高めることが有効であるとされている。なお、骨質とは、骨の微細構造や代謝回転、微小骨折、石灰化を指すものである。また、骨粗鬆症や骨折、腰痛などの種々の骨疾患を予防する方法としては、破骨細胞による骨吸収を抑制することも考えられる。骨はバランスのとれた吸収と形成を絶えず繰り返している(リモデリング)が、閉経後のホルモンのバランス変化等により、骨吸収が骨形成を上回り、これが骨粗鬆症や骨折、腰痛などの種々の骨疾患の原因となる。したがって、破骨細胞による骨吸収を抑制して骨強度を一定に保つことにより、結果的に骨を強化することが可能である。
【0003】
このような現状から、骨を強化する目的で、炭酸カルシウムやリン酸カルシウム、乳酸カルシウムなどのカルシウム塩ならびに乳清カルシウムや牛骨粉、卵殻などの天然カルシウム剤を、それぞれ単独で医薬品や飲食品、飼料などに添加して摂取する、あるいは、これらのカルシウム剤をカゼインホスホペプチドやオリゴ糖などのカルシウム吸収促進効果を有する物質と共に医薬品や飲食品、飼料などに添加して摂取している。しかしながら、これらのカルシウム塩や天然カルシウム剤を飲食品に添加して摂取した場合、カルシウムの吸収率は50%以下であり、半分以上のカルシウムが吸収されず体外に排出されてしまうといわれている。また、体内に吸収されたカルシウムも、その形態や同時に摂取される他の栄養成分の種類によって骨への親和性が異なるので、必ずしも骨代謝の改善や骨強化作用を示さないこともある。
【0004】
その他、骨粗鬆症治療や骨強化のための医薬として、女性ホルモン製剤や活性型ビタミンD3製剤 やビタミンK2製剤、ビスフォスフォネート製剤、カルシトニン製剤などが知られており、抗RANKL抗体などの新薬開発が進められている。しかし、これらの医薬品を用いた場合、耳鳴り、頭痛、食欲不振などの副作用を伴うことがある。さらに、これらの物質は安全性及びコストなどの面から、現在のところ飲食品に添加することができない状況にある。したがって、骨粗鬆症や骨折、腰痛などの種々の骨疾患の疾病の性質から、長期的に経口摂取することができ、骨形成促進的及び/又は骨吸収抑制的に作用して骨強度を高め、その予防または治療効果が期待できるような骨強化剤や該骨強化剤を含有する飲食品、飼料の開発が望まれている。
【0005】
上記のような骨強化剤としては、例えば特許文献1に記載されているような乳由来の塩基性タンパク質画分(以下、「乳由来塩基性タンパク質画分」という。)や、乳由来塩基性タンパク質画分をタンパク質分解酵素で分解して得られる塩基性タンパク質画分分解物(以下、「乳由来塩基性タンパク質画分分解物」という。)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−151331
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全性が高く、骨を強化することができ、骨粗鬆症や骨折、リウマチ、関節炎などの種々の骨疾患の予防や治療に有用である骨強化剤を提供することを課題とする。また、骨強化剤を配合した骨強化用飲食品、骨強化用栄養組成物、骨強化用飼料又は骨強化用医薬品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を進めたところ、従来骨強化作用を有することが報告されている乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物と、ホエイタンパク質加水分解物を同時に摂取することにより、より高い骨強化作用を示すことを見出した。
すなわち本発明は、以下の様態を含むものである。
(1)乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物と、ホエイタンパク質加水分解物を有効成分とする骨強化剤。
(2)前記乳由来塩基性タンパク質画分分解物が、乳由来塩基性タンパク質画分を、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン及びパンクレアチンよりなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質分解酵素を用いて分解したものである(1)に記載の骨強化剤。
(3)前記乳由来塩基性タンパク質画分が、そのアミノ酸組成中に塩基性アミノ酸を15重量%以上含有している画分である(1)又は(2)に記載の骨強化剤。
(4)前記乳由来塩基性タンパク質画分が、乳または乳由来の原料を陽イオン交換樹脂に接触させて塩基性タンパク質を吸着させ、この樹脂に吸着した画分を塩濃度0.1M〜1.0Mの溶出液で溶出して得られる画分である(1)又は(2)に記載の骨強化剤。
(5)前記ホエイタンパク質加水分解物が分解率25%以上であることを特徴とする(1)に記載の骨強化剤。
(6)前記ホエイタンパク質加水分解物が、以下の特徴を有するものである(1)に記載の骨強化剤。
(A)分子量が10kDa以下、メインピークが200Da〜3kDaである。
(B)APL(平均ペプチド鎖長)は2〜8である。
(C)遊離アミノ酸含量が20%以下である。
(D)抗原性がβ−ラクトグロブリンの抗原性の1/10,000以下である。
(7)前記ホエイタンパク質加水分解物が、ホエイタンパク質をpH6〜10、50〜70℃において耐熱性のタンパク質加水分解酵素を用いて熱変性させながら酵素分解し、加熱して酵素を失活させて得られるものであることを特徴とする(1)に記載の骨強化剤。
(8)前記ホエイタンパク質加水分解物が、ホエイタンパク質をpH6〜10、20〜55℃においてタンパク質加水分解酵素を用いて酵素分解し、これを50〜70℃に昇温させ、pH6〜10、50〜70℃において耐熱性のタンパク質加水分解酵素を用いて未分解のホエイタンパク質を熱変性させながら酵素分解し、加熱して酵素を失活させて得られるものであることを特徴とする(1)に記載の骨強化剤。
(9)(1)乃至(8)のいずれかに記載の骨強化剤を含むことを特徴とする骨強化用飲食品、骨強化用栄養組成物、骨強化用飼料又は骨強化用医薬品。
(10)乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物と、ホエイタンパク質加水分解物を同時に摂取することによる骨強化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の骨強化剤は、骨粗鬆症や骨折、リウマチ、関節炎などの種々の骨疾患の予防や治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴は、乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を有効成分とすることにある。本発明で用いる乳由来塩基性タンパク質画分は、牛乳、人乳、山羊乳、羊乳など哺乳類の乳から得られるものであり、また、本発明で用いる乳由来塩基性タンパク質画分分解物は、乳由来塩基性タンパク質画分にタンパク質分解酵素を作用させて得ることができるものである。
【0011】
この乳由来塩基性タンパク質画分は、次の性質を有している。
1) ソジウムドデシルサルフェート−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によると分子量 3,000〜80,000の範囲の数種のタンパク質よりなる。
2) 95重量%以上がタンパク質であって、その他少量の脂肪、灰分を含む。
3) タンパク質は主としてラクトフェリン及びラクトパーオキシダーゼよりなる。
4) タンパク質のアミノ酸組成は、リジン、ヒスチジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸を15重量%以上含有する。
【0012】
このような乳由来塩基性タンパク質画分は、例えば、脱脂乳や乳清などの乳原料を陽イオン交換樹脂と接触させて塩基性タンパク質を吸着させ、この樹脂に吸着した塩基性タンパク質画分を0.1M〜1Mの塩濃度の溶出液で溶出し、この溶出画分を回収して、逆浸透(RO)膜や電気透析(ED)法などにより脱塩及び濃縮し、必要に応じて乾燥することにより得ることができる。
また、本発明の乳由来塩基性タンパク質画分を得る方法としては、乳または乳由来の原料を陽イオン交換体に接触させて塩基性タンパク質を吸着させた後、この陽イオン交換体に吸着した塩基性タンパク質画分を、pH5を越え、イオン強度0.5を越える溶出液で溶出して得る方法(特開平5−202098号公報)、アルギン酸ゲルを用いて得る方法(特開昭61−246198号公報)、無機の多孔性粒子を用いて乳清から得る方法(特開平1−86839号公報)、硫酸化エステル化合物を用いて乳から得る方法(特開昭 63−255300号公報)などが知られており、本発明では、このような方法で得られた乳由来塩基性タンパク質画分を用いることができる。
さらに、乳由来塩基性タンパク質画分分解物は、乳由来塩基性タンパク質画分と同様のアミノ酸組成を有しており、例えば、上記の方法で得られた乳由来塩基性タンパク質画分にペプシン、トリプシン、キモトリプシンなどのタンパク質分解酵素を作用させ、さらに必要に応じ、パンクレアチンなどのタンパク質分解酵素を作用させることにより、平均分子量 4,000以下のペプチド組成物として得ることができる。
【0013】
本発明で用いるホエイタンパク質加水分解物は、例えば特開平4−112753に記載の方法によって得ることができる。この方法では、ホエイタンパク質をpH6〜10、50〜70℃とし、これに耐熱性のタンパク質加水分解酵素を加えて熱変性させながら酵素分解し、これを加熱して酵素を失活させることによって得られる。なお、上記酵素分解を行う前に、ホエイタンパク質をpH6〜10、20〜55℃においてタンパク質加水分解酵素を用いて酵素分解し、これを冷却することなく直ちに上記条件で酵素分解すると収率を一層高めることができる。
また、上記のように調製したホエイタンパク質加水分解物を、分画分子量1kDa〜20kDa、好ましくは、2kDa〜10kDaの限外濾過(UF)膜及び/又は分画分子量100Da〜500Da、好ましくは150Da〜300Daの精密濾過(MF)膜から選ばれる方法で濃縮することも可能である。このような膜処理により、ホエイタンパク質加水分解物の平均分子量を300〜500Daとすることによって、さらに苦味を軽減し、透明性を向上させることが可能である。
【0014】
特開平4−112753に記載の方法によってホエイタンパク質加水分解物を調製する場合、前述の溶液をpH6〜10に調整するが、通常ホエイタンパク質はこの範囲のpHになっているので格別pHの調整を行う必要はないが、必要な場合は、塩酸、クエン酸及び乳酸等の酸溶液あるいは苛性ソーダ、水酸化カルシウム及び燐酸ソーダ等のアルカリ溶液を用いてpH6〜10とする。加熱は50〜70℃で行うが、耐熱性のタンパク質加水分解酵素は、この温度で添加するよりも、むしろ加熱前から加え酵素分解を行った方が収率の面から好ましい。
【0015】
また、一般的なプロテアーゼの至適温度は40℃以下であるが、耐熱性のタンパク質加水分解酵素の至適温度は45℃以上であり、耐熱性のタンパク質加水分解酵素としては、従来このような至適温度を有する耐熱性のタンパク質加水分解酵素として知られているものであれば特に制限なく使用できる。このような耐熱性のタンパク質加水分解酵素としては、パパイン、プロテアーゼS(商品名)、プロレザー(商品名)、サモアーゼ(商品名)、アルカラーゼ(商品名)、プロチンA(商品名)等を例示することができる。耐熱性のタンパク質加水分解酵素は、80℃で30分加熱して残存活性が約10%あるいはそれ以上になるものが望ましい。また、単独よりも複数の酵素を併用する方が効果的である。反応は、30分〜10時間程度行うことが好ましい。
最後に、反応液を加熱して酵素を失活させる。酵素の失活は、反応液を100℃以上で10秒間以上加熱することにより行うことができる。
【0016】
そして反応液を遠心分離して上清を回収し、上清を乾燥して粉末製品とする。なお、遠心分離した時に生ずる沈殿物は上清に比べ低アレルゲン化の程度が小さいので、これを除去した方が好ましいが、勿論反応液をそのまま乾燥して使用しても差し支えない。得られたホエイタンパク質加水分解物のAPL(平均ペプチド鎖長)は、TNBS(2, 4, 6−トリニトロベンゼンスルホン酸)法等の方法によって測定することができる。また、ホエイタンパク質加水分解物の分子量分布は、High performance size exclusion chromatography(HPSEC)法等の方法で測定することができ、その遊離アミノ酸含量は、75%エタノール等で遊離アミノ酸を抽出して、アミノ酸分析装置等で測定することができる。さらに、ホエイタンパク質加水分解物の分解率は、遊離のアミノ基を修飾して測定するオルトフタルアルデヒド(OPA)法等で測定することができる。
【0017】
なお、本発明におけるホエイタンパク質は、牛乳、人乳、山羊乳、羊乳など哺乳類の乳から調製したホエイ、その凝集物、粉末、あるいは精製タンパク質をいい、これを酵素反応させる時は水溶液の状態で使用する。
【0018】
本発明の乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物は、併せて摂取することによりそのまま骨強化剤として使用してもよいが、必要に応じて、常法に従い、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等に製剤化して用いることも出来る。
【0019】
本発明では、乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を配合する方法に特に制限はないが、例えば、溶液中で添加、配合するには、乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を脱イオン水に懸濁あるいは溶解し、撹拌混合した後、医薬品、飲食品や飼料の形態に調製して使用する。撹拌混合の条件としては、乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物が均一に混合されればよく、ウルトラディスパーサーやTKホモミクサー等を使用して撹拌混合することも可能である。また、当該組成物の溶液は、医薬品、飲食品や飼料に使用しやすいように、必要に応じて、RO膜等での濃縮や、凍結乾燥して使用することができる。本発明では、医薬品、飲食品や飼料の製造に通常使用される殺菌処理が可能であり、粉末状であっては乾熱殺菌も可能である。従って、本発明の乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を含有する液状、ゲル状、粉末状、顆粒状等様々な形態の医薬品、飲食品や飼料を製造することができる
さらに、これらを製剤化した後に、これを栄養剤やヨーグルト、乳飲料、ウエハース等の飲食品、栄養組成物、飼料及び医薬品に配合することも可能である。
【0020】
本発明の骨強化用飲食品、骨強化用栄養組成物、骨強化用飼料及び骨強化用医薬品とは、この乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物のみを含む場合の他に、安定剤や糖類、脂質、フレーバー、ビタミン、ミネラル、フラボノイド、ポリフェノール等、他の飲食品、飼料及び医薬に通常含まれる原材料等を含有することができる。また、乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物に加えて、他の骨強化作用を示す成分、例えば、ビタミンDやビタミンK、大豆イソフラボン等とともに使用することも可能である。また、そのような骨強化用飲食品、骨強化用栄養組成物、骨強化用飼料又は骨強化用医薬品を原材料として、他の飲食品等に通常含まれる原材料等を配合して調製することも可能である。
【0021】
骨強化用飲食品、骨強化用栄養組成物、骨強化用飼料及び骨強化用医薬品における乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物の配合量に特に制限はないが、成人一人一日あたり、乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物を1mg以上、ホエイタンパク質加水分解物を2mg以上摂取させることが好ましく、このため、飲食品、飼料及び医薬の形態にもよるが、100gあたり乳由来塩基性タンパク質画分及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物を0.05〜200mg、ホエイタンパク質加水分解物を全質量に対して0.001〜10%(重量/重量)、好ましくは0.1〜5%(重量/重量)含有していることが好ましい。
【0022】
本発明の骨強化剤は、上記の有効成分に適当な助剤を添加して任意の形態に製剤化して、経口投与が可能な骨強化組成物とすることができる。製剤化に際して、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の希釈剤又は賦形剤を用いることができる。賦形剤としては、例えばショ糖、乳糖、デンプン、結晶性セルロース、マンニット、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシルメチルセルロースカルシウム等の1種又は2種以上を組み合わせて加えることができる。
【0023】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明について詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
陽イオン交換樹脂のスルホン化キトパール(富士紡績株式会社製)400gを充填したカラム(直径5cm×高さ30cm)を脱イオン水で十分洗浄した後、このカラムに未殺菌脱脂乳40リットル(pH 6.7)を流速25ml/minで通液した。通液後、このカラムを脱イオン水で十分洗浄し、 0.98M塩化ナトリウムを含む0.02M炭酸緩衝液(pH7.0)で樹脂に吸着した塩基性タンパク質画分を溶出した。そして、この溶出液を逆浸透(RO)膜により脱塩して、濃縮した後、凍結乾燥して粉末状の乳由来塩基性タンパク質画分21gを得た(実施例品1)。得られた乳由来塩基性タンパク質画分について、ソジウムドデシルサルフェート−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により測定したところ、分子量は3,000〜80,000の範囲に分布しており、成分組成は表1に示すとおりであった。また、6N塩酸で110℃、24時間加水分解した後、アミノ酸分析装置(L−8500型、日立製作所製) でそのアミノ酸組成を分析した結果を表2に示した。さらに、ELISA法により、そのタンパク質組成を分析したところ、表3に示すように、40%以上のラクトフェリン及びラクトパーオキシダーゼが含まれていた。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【実施例2】
【0028】
陽イオン交換樹脂のSPトーヨーパール(東ソー株式会社製)30kgを充填したカラム(直径100cm×高さ10cm)を脱イオン水で十分洗浄した後、このカラムに121℃で30秒間加熱殺菌したチーズホエー3t(pH6.2)を流速10リットル/minで通液した。通液後、このカラムを脱イオン水で十分洗浄し、0.9M塩化ナトリウムを含む0.1Mクエン酸緩衝液(pH 5.7)で樹脂に吸着した塩基性タンパク質画分を溶出した。そして、この溶出液を電気透析(ED)法により脱塩し、濃縮した後、凍結乾燥して粉末状の乳由来塩基性タンパク質画分183gを得た(実施例品2)。
【実施例3】
【0029】
実施例1で得られた乳由来塩基性タンパク質画分50gを蒸留水10リットルに溶解した後、1%パンクレアチン(シグマ社製)を添加し、37℃で2時間反応させた。反応後、80℃で10分間加熱処理して酵素を失活させた後、乳由来塩基性タンパク質画分分解物48.3gを得た(実施例品3)。
【実施例4】
【0030】
ホエイタンパク質10%水溶液1Lに、パパイン50U/g・ホエイタンパク質及びプロレザー(天野エンザイム社製)150U/g・ホエイタンパク質を加え、pH8に調整し、55℃において6時間ホエイタンパク質を変性させながら酵素分解を行った。反応液を100℃で15秒間以上加熱して酵素を失活させ、遠心分離して上清を回収し、これを乾燥してホエイタンパク質加水分解物(実施例品4)を得た。得られたホエイタンパク質加水分解物の分子量分布は10kDa以下、メインピークは1.3kDa、APLは7.2、すべての構成成分に対する遊離アミノ酸含量は18.9%であった。Inhibition ELISA法によってβ−ラクトグロブリンに対する抗原性の低下を測定したところ1/10,000以下で、分解率は28%、収率(酵素反応液を遠心分離し、仕込み量の乾燥重量に対する上清の乾燥重量の比率(%))は80.3%、苦味度は2であった。
【実施例5】
【0031】
ホエイタンパク質10%水溶液1Lに、パパイン50U/g・ホエイタンパク質及びプロレザー(天野エンザイム社製)150U/g・ホエイタンパク質を加え、pH8、50℃で3時間酵素分解を行った。これを55℃に昇温させ、この温度で3時間維持し、タンパク質を変性させるとともに、タンパク質の酵素分解を行い、100℃で15秒間以上加熱して酵素を失活させた。この反応液を分画分子量10kDaのUF膜(STC社製)及び分画分子量300DaのMF膜(STC社製)で処理を行い、濃縮液画分を回収し、これを乾燥してホエイタンパク質加水分解物(実施例品5)を得た。得られたホエイタンパク質加水分解物の分子量分布は10kDa以下、メインピークは500Da、APLは3.0、すべての構成成分に対する遊離アミノ酸含量は15.2%であった。Inhibition ELISA法によってβ−ラクトグロブリンに対する抗原性の低下を測定したところ1/10,000以下で、分解率は32%、収率65.4%、苦味度は2であった。
【実施例6】
【0032】
特開平4−69315号公報で報告されている方法により、ホエイタンパク質の加水分解物を調製した。ホエイタンパク質120gを精製水1,800mlに溶解し、1Mカセイソーダ溶液でpHを7.0に調整した。次いで、60℃で10分間加熱して殺菌し、45℃に保持してアマノA(天野エンザイム社製)20gを添加し、2時間反応させた。80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、凍結乾燥し、ホエイタンパク質加水分解物(実施例品6)を得た。得られたホエイタンパク質加水分解物の分子量分布は14kDa以下、メインピークは3.1kDa、APLは17.2、すべての構成成分に対する遊離アミノ酸含量は13.2%であった。Inhibition ELISA法によってβ−ラクトグロブリンに対する抗原性の低下を測定したところ1/5,000以下で、分解率は18%、収率は80.6%、苦味度は2であった。
【実施例7】
【0033】
特開平4−69315号公報で報告されている方法により、ホエイタンパク質の加水分解物を調製した。ホエイタンパク質120gを精製水1,800mlに溶解し、1Mカセイソーダ溶液でpHを7.0に調整した。次いで、60℃で10分間加熱して殺菌し、45℃に保持してアマノA(天野エンザイム社製)20gを添加し、8時間反応させた。80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、凍結乾燥し、ホエイタンパク質加水分解物(実施例品7)を得た。得られたホエイタンパク質加水分解物の分子量分布は10kDa以下、メインピークは1.8kDa、APLは10.0、すべての構成成分に対する遊離アミノ酸含量は19.3%であった。Inhibition ELISA法によってβ−ラクトグロブリンに対する抗原性の低下を測定したところ1/10,000以下で、分解率は25%、収率は80.6%、苦味度は2であった。
【0034】
[試験例1]
(動物実験)
実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分と実施例品4のホエイタンパク質加水分解物を使用して、骨強化作用について評価した。実験には6週齢のC3H/HeJマウスを使用した。マウスを、生理食塩水を投与する群(A群)、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分をマウス体重1kgあたり1mg投与する群(B群)、実施例品4のホエイタンパク質加水分解物をマウス体重1kgあたり2mg投与する群(C群)、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分をマウス体重1kgあたり3mg投与する群(D群)、実施例品4のホエイタンパク質加水分解物をマウス体重1kgあたり3mg投与する群(E群)、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分と実施例品4のホエイタンパク質加水分解物を、それぞれマウス体重1kgあたり1mgと2mg同時に投与する群(F群)の6試験群(各群10匹ずつ)にわけた。それぞれを毎日1回ゾンデで経口投与して2週間飼育した。実施例品1、4および実施例品1と4の混合物は、それぞれ生理食塩水に懸濁して、それぞれB〜F群に経口投与した。試験終了時に、マウスの右足の脛骨の骨密度を3DマイクロX線CT((株)リガク)を用いて測定した。その結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
この結果、2週間投与後の脛骨の骨密度は、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分をマウス体重1kgあたり1mgまたは3mg投与した群、実施例品4のホエイタンパク質加水分解物をマウス体重1kgあたり2mgまたは3mg投与した群、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分と実施例品4のホエイタンパク質加水分解物を、それぞれマウス体重1kgあたり1mgと2mg同時に摂取した群では、対照群に比べ、有意に骨密度が上昇した。また、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分と実施例品4のホエイタンパク質加水分解物を同時に摂取することによって、それぞれ単独で摂取した群より、有意に骨密度が上昇した。この結果から、本発明の乳由来塩基性タンパク質画分とホエイタンパク質加水分解物を同時に摂取させた場合には、それぞれ単独で摂取させた場合より、相乗的に骨密度を高める効果があることがわかった。また、この骨強化作用は、乳由来塩基性タンパク質画分とホエイタンパク質加水分解物を、マウス体重1kgあたり、それぞれ最低1mgと最低2mg同時に投与した場合に認められることが明らかとなった。
【0037】
[試験例2]
(動物実験)
実施例品3の乳由来塩基性タンパク質画分分解物と実施例品5のホエイタンパク質加水分解物を使用して、骨強化作用について評価した。実験には51週齢のSD系雌ラットを用いた。ラットを6匹ずつ5群に分け、4群は卵巣摘出手術を施し、残りの1群は疑似手術を施した。4週間の回復期間を設け、卵巣摘出手術を施したラットに実施例品3をラット体重1kgあたり1mg(A群)、実施例品5をラット体重1kgあたり2mg(B群)、実施例品3と実施例品5を同時にラット体重1kgあたり、それぞれ1mgと2mg(C群)になるよう1日1回ゾンデで経口投与する、あるは、いずれの実施例品も含まない溶媒である生理食塩水のみを1日1回ゾンデで経口投与(対照群)して16週間飼育した。また、4週間の回復期間の後、疑似手術を施したラットには、対照群と同様に、生理食塩水のみを1日1回ゾンデで経口投与(疑似手術群)した。投与終了後(16週目)に、ラットの右大腿骨の骨強度を骨強度測定装置(RX−1600、アイテクノ)により測定した。その結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
この結果、実施例品3の乳由来塩基性タンパク質画分分解物または実施例品5のホエイタンパク質加水分解物をラット体重1kgあたり、それぞれ1mg、2mg経口投与した群、実施例品3の乳由来塩基性タンパク質画分分解物と実施例品5のホエイタンパク質加水分解物を、それぞれラット体重1kgあたり1mgと2mg同時に摂取した群では、対照群に比べ、有意に骨破断強度が上昇した。また、実施例品3の乳由来塩基性タンパク質画分分解物と実施例品5のホエイタンパク質加水分解物を同時に摂取した群では、それぞれ単独で摂取した群に比べ、骨破断強度が有意に高く、その値は疑似手術群と同レベルであった。この結果から、本発明の乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を同時に投与した場合には、それぞれ単独で摂取した場合に比べ、相乗的に骨破断強度を高める効果があることがわかった。また、この骨強化作用は、乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を、ラット体重1kgあたり、それぞれ最低1mgと最低2mg同時に投与した場合に認められることが明らかとなった。
【0040】
[試験例3]
実施例品2、3の乳由来塩基性タンパク質画または乳由来塩基性タンパク質画分分解物と実施例品6、7のホエイタンパク質加水分解物について、骨芽細胞増殖効果を調べた。株化骨芽細胞(MC3T3−E1)を96穴の平板細胞培養プレートに播種し、10%ウシ胎児血清を含むα−MEM培地で24時間培養した。培地を全て除いた後、ウシ胎児血清を含まないα−MEM培地を90μlずつ添加し、実施例品2、3、6、7及び実施例品2と6の混合物、実施例品3と7の混合物を10μlずつ添加して、さらに24時間培養を続けた。Cell Proliferation kit(GEヘルスケア社製)付属のブロモデオキリウリジン(BrdU)を添加し2時間培養後、ペルオキシダーゼ標識抗BrdU抗体と反応させ、基質である3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンを添加し、450nmにおける吸光度を測定することで、細胞内に取り込まれたBrdU量を測定することにより骨芽細胞増殖活性を求めた。その結果を表6に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
この結果、培地に実施例品2、3の乳由来塩基性タンパク質画または乳由来塩基性タンパク質画分分解物、実施例品6、7のホエイタンパク質加水分解物、実施例品2と実施例品6の混合物、実施例品3と実施例品7の混合物を添加した場合、生理食塩水を培地に添加した場合に比べ、有意に骨芽細胞の増殖が促進した。また、乳由来塩基性タンパク質画及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を同時に培地に添加した場合には、それぞれ単独で添加した場合より、有意に高い骨芽細胞増殖活性を示した。この結果から、本発明の乳由来塩基性タンパク質画及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物の混合物には、それぞれ単独に比較して、相乗的な骨芽細胞の増殖促進作用があることがわかった。
【0043】
[試験例4]
実施例品1、3の乳由来塩基性タンパク質画または乳由来塩基性タンパク質画分分解物と実施例品4、5のホエイタンパク質加水分解物ついて、破骨細胞による骨吸収を抑制する効果を調べた。5日齡のウサギの脛骨及び大腿骨を摘出し、軟組織を除去した後、5%FBSを含むDMEM/F12培地中で機械的に細切した破骨細胞を含む全骨髄細胞を1000,000cells/wellになるように結晶性リン酸カルシウムプレート(Cornig社製)のウェル上に撒き込み、培養した。培養2時間後に、新しい培地へと交換した後、実施例品1、3及び実施例品4、5、実施例品1と5の混合物、実施例品3と4の混合物を溶解した溶液を10%濃度となるように添加して72時間培養した。そして、5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加することで細胞を取り除いた後、リン酸カルシウムプレートのウェル上にできた骨吸収窩(ピット)を実体顕微鏡下で撮影し、画像解析によってその面積を測定することにより破骨細胞による骨吸収を抑制する効果を調べた(瀬野悍二ら,研究テーマ別動物培養細胞マニュアル,pp.199−200, 1993) 。その結果を表7に示す。
【0044】
【表7】
【0045】
この結果、培地に実施例品1、3の乳由来塩基性タンパク質画または乳由来塩基性タンパク質画分分解物、実施例品4、5ホエイタンパク質加水分解物、実施例品1と実施例品5の混合物、実施例品3と実施例品4の混合物を添加した場合、生理食塩水を培地に添加した場合に比べ、有意にピットの面積が減少した。また、乳由来塩基性タンパク質画及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物を同時に培地に添加した場合には、それぞれ単独で添加した場合より、有意にピット面積が減少した。この結果から、本発明の乳由来塩基性タンパク質画及び/又は乳由来塩基性タンパク質画分分解物とホエイタンパク質加水分解物の混合物には、それぞれ単独に比較して、相乗的な破骨細胞による骨吸収を抑制する作用があることがわかった。
【実施例8】
【0046】
(骨強化用錠剤の調製)
表8に示す配合で原材料を混合後、常法により1gに成型、打錠して本発明の骨強化用錠剤を製造した。なお、この錠剤1g中には、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分が25mg、実施例品4のホエイタンパク質加水分解物が50mg含まれていた。
【0047】
【表8】
【実施例9】
【0048】
(骨強化液状栄養組成物の調製)
実施例品3の乳由来塩基性タンパク質画分分解物25gと実施例品5のホエイタンパク質加水分解物50gを4,925gの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、TKホモミクサー(TK ROBO MICS;特殊機化工業社製)にて、6,000rpmで30分間撹拌混合して、実施例品3の乳由来塩基性タンパク質画分分解物を25g/5kgと実施例品5のホエイタンパク質加水分解物含量を50g/5kgを含有する溶液を得た。この溶液5.0kgに、カゼイン5.0kg、大豆タンパク質5.0kg、魚油1.0kg、シソ油3.0kg、デキストリン17.0kg、ミネラル混合物6.0kg、ビタミン混合物1.95kg、乳化剤2.0kg、安定剤4.0kg、香料0.05kgを配合し、200mlのレトルトパウチに充填し、レトルト殺菌機 (第1種圧力容器、TYPE: RCS−4CRTGN、日阪製作所製)で121℃、20分間殺菌して、本発明の骨強化用液状栄養組成物50kgを製造した。なお、この骨強化用液状栄養組成物には、100gあたり、実施例品3の乳由来塩基性タンパク質画分分解物が50mg、実施例品5のホエイタンパク質加水分解物が100mg含まれていた。
【実施例10】
【0049】
(骨強化用飲料の調製)
脱脂粉乳300gを408.5gの脱イオン水に溶解した後、実施例品2の乳由来塩基性タンパク質画分0.5gと実施例品5のホエイタンパク質加水分解物1gを溶解し、50℃まで加熱後、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、9,500rpmで30分間撹拌混合した。マルチトール100g、酸味料2g、還元水飴20g、香料2g、脱イオン水166gを添加した後、100mlのガラス瓶に充填し、95℃、15秒間殺菌後、密栓し、本発明の骨強化用飲料10本(100ml入り)を調製した。なお、この骨強化用飲料には、100mlあたり実施例品2の乳由来塩基性タンパク質画分が50mgと実施例品5のホエイタンパク質加水分解物が100mg含まれていた。
【実施例11】
【0050】
(イヌ用骨強化飼料の調製)
実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分1kgと実施例品7のホエイタンパク質加水分解物2kgを97kgの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、TKホモミクサー(MARK II 160型;特殊機化工業社製)にて、3,600rpmで40分間撹拌混合して、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分を1g/100gと実施例品7のホエイタンパク質加水分解物を2g/100g含有する溶液を得た。このホエイタンパク質加水分解物溶液10kgに大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、本発明のイヌ用骨強化飼料100kgを製造した。なお、このイヌ用骨強化飼料には、100gあたり、実施例品1の乳由来塩基性タンパク質画分が100mgと実施例品7のホエイタンパク質加水分解物が200mg含まれていた。