(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969233
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】断面加工観察方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20160804BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20160804BHJP
G01N 23/225 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
H01J37/317 D
G01N1/28 G
G01N1/28 F
G01N23/225
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-65974(P2012-65974)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-197044(P2013-197044A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100119552
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 公秀
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】満 欣
【審査官】
植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−139379(JP,A)
【文献】
特開平10−050246(JP,A)
【文献】
特開2008−270073(JP,A)
【文献】
特開2009−204480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/305
H01J 37/317
G01N 1/28
G01N 23/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームの照射により試料をスライス加工し断面を形成する工程と当該断面に電子ビームを照射し断面像を取得する工程とを繰り返し施す断面加工観察方法において、
前記試料の表面に前記イオンビームを走査照射し表面像を取得する工程と、
前記表面像に前記スライス加工をするための第一のスライス領域と、前記第一のスライス領域に隣接し、前記第一のスライス領域の長手方向の長さから前記第二のスライス領域のスライス幅(D2)を差し引いた長手方向の長さを有する第二のスライス領域とを設定する工程と、
前記第一のスライス領域と前記第二のスライス領域に前記イオンビームを照射し、前記断面を形成する工程と、
前記断面に前記電子ビームを照射し、前記断面像を取得する工程と、を有する断面加工観察方法。
【請求項2】
前記第一のスライス領域と前記第二のスライス領域をエッチング加工して形成された段差構造を含む前記断面像を取得し、エッチング加工された前記第二のスライス領域のスライス幅を測長する工程を有する請求項1に記載の断面加工観察方法。
【請求項3】
前記断面像と前記スライス幅とから前記試料の三次元像を構築する請求項2に記載の断面加工観察方法。
【請求項4】
試料に断面を形成するために前記試料の表面にイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒と、
前記断面の観察像を取得するために前記断面に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、
前記試料から発生する荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器の検出信号から前記試料の観察像を形成する像形成部と、
前記試料をスライス加工するための第一のスライス領域と、前記第一のスライス領域に隣接し、前記第一のスライス領域の長手方向の長さから前記第二のスライス領域のスライス幅(D2)を差し引いた長手方向の長さを有する第二のスライス領域とを前記表面の観察像上に設定するスライス領域設定部と、を有する断面加工観察装置。
【請求項5】
前記スライス加工により形成された複数の前記断面の観察像と前記スライス幅の長さから前記スライス加工を施された領域の三次元像を形成する三次元像形成部と、を有する請求項4に記載の断面加工観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビームで断面を形成し、電子ビームで断面を観察する断面加工観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの内部構造や欠陥の解析手法として、集束イオンビームにより試料の断面加工によりスライスし、所望の構造や欠陥を含む断面を露出させ、その断面を走査電子顕微鏡で観察する断面加工観察方法が知られている。この手法によれば、試料内部にある観察対象をピンポイントで露出させることができるので、迅速に構造や欠陥を観察することができる。
【0003】
さらに、断面加工と断面観察とを繰り返し実施し、取得した複数の断面観察像を組み合わせることにより断面加工した領域の三次元画像を構築する方法が開示されている(特許文献1参照)。この方法によれば、観察対象の三次元画像を構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−270073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の半導体デバイスの高密度化や寸法の縮小によりデバイスパターンが微細になったため、微小な観察対象の断面加工観察が求められている。この場合、断面と当該断面をスライス加工して形成された断面との間隔を極めて小さくすることにより、つまり、集束イオンビームのスライス幅を小さくすることにより、微小な観察対象を断面に露出させ観察することができる。
【0006】
しかしながら、スライス幅が極めて小さいとその幅を測定することができないため、取得したデータの信頼性に課題があった。例えば、スライス幅を1nmとし実施した断面加工観察で得た観察像が、実際にスライス幅が1nmで撮影された観察像であるか確認することができないため、観察像から実際の形状を測長することができないという課題があった。
【0007】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、微小なスライス幅であっても、スライス幅を測定し、信頼性の高い観察データを取得することができる断面加工観察方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る断面加工観察方法は、イオンビームの照射により試料をスライス加工し断面を形成する工程と当該断面に電子ビームを照射し断面像を取得する工程とを繰り返し施す断面加工観察方法において、試料の表面にイオンビームを走査照射し表面像を取得する工程と、表面像にスライス加工をするための第一のスライス領域と、第一のスライス領域に隣接し、第一のスライス領域の長手方向の長さよりスライス幅の長さを差し引いた長手方向の長さを有する第二のスライス領域とを設定する工程と、第一のスライス領域と第二のスライス領域にイオンビームを照射し、断面を形成する工程と、断面に電子ビームを照射し、断面像を取得する工程と、を有する。
【0009】
本発明に係る断面加工観察装置は、試料に断面を形成するために試料の表面にイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒と、断面の観察像を取得するために断面に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、試料から発生する荷電粒子を検出する検出器と、検出器の検出信号から試料の観察像を形成する像形成部と、試料をスライス加工するための第一のスライス領域と、第一のスライス領域に隣接し、第一のスライス領域の長手方向の長さよりスライス幅の長さを差し引いた長手方向の長さを有する第二のスライス領域と、を表面の観察像上に設定するスライス領域設定部と、を有する。
【0010】
これにより、実際にスライス加工されたスライス幅を断面像から測長することができる。従って、スライス幅を精度良く測長することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る断面加工観察方法及び装置によれば、微小なスライス幅であっても、スライス幅を測定し、信頼性の高い観察データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る実施形態の断面加工観察装置の構成図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の断面加工観察方法の説明図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の断面加工観察方法の説明図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の断面加工観察方法の説明図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の断面加工観察方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る断面加工観察方法及び装置の実施形態について説明する。
本実施形態の断面加工観察装置は、
図1に示すように、EB鏡筒1と、FIB鏡筒2と、試料室3を備えている。試料室3内に収容された試料7にEB鏡筒1から電子ビーム8を、FIB鏡筒2からイオンビーム9を照射する。
【0014】
さらに、試料加工装置は荷電粒子検出器として二次電子検出器4と反射電子検出器5を備えている。二次電子検出器4は、電子ビーム8又はイオンビーム9の照射により試料7から発生した二次電子を検出することができる。反射電子検出器5はEB鏡筒1内部に備えられている。反射電子検出器5は、電子ビーム8を試料7に照射した結果、試料7により反射された反射電子を検出することができる。
【0015】
さらに、断面加工観察装置は試料7を載置する試料台6を備える。試料台6を傾斜させることにより試料7へのイオンビーム9の入射角度を変更することができる。試料台6の傾斜は試料台制御部16により制御される。
【0016】
断面加工観察装置は、さらに、EB制御部12と、FIB制御部13と、像形成部14と、表示部17を備える。EB制御部12はEB鏡筒1に照射信号を送信し、EB鏡筒1から電子ビーム8を照射させる。FIB制御部13はFIB鏡筒2に照射信号を送信し、FIB鏡筒2からイオンビーム9を照射させる。像形成部14は、EB制御部12の電子ビーム8を走査させる信号と、反射電子検出器5で検出した反射電子の信号とから反射電子像を形成する。表示部17は反射電子像を表示することができる。また、像形成部14は、EB制御部12の電子ビーム8を走査させる信号と、二次電子検出器4で検出した二次電子の信号とからSEM像のデータを形成する。表示部17はSEM像を表示することができる。また、像形成部14は、FIB制御部13のイオンビーム9を走査させる信号と、二次電子検出器4で検出した二次電子の信号とからSIM像のデータを形成する。表示部17はSIM像を表示することができる。
【0017】
断面加工観察装置は、さらに、入力部10と、制御部11を備える。オペレータは装置制御に関する条件、例えばビーム照射条件、を入力部10に入力する。入力部10は、入力された情報を制御部11に送信する。制御部11は、EB制御部12、FIB制御部13、像形成部14、試料台制御部16または表示部17に制御信号を送信し、断面加工観察装置の動作を制御する。
【0018】
装置の制御について、例えば、オペレータは表示部17に表示された反射電子像、SEM像やSIM像などの観察像に基づいて、イオンビーム9の照射領域を設定する。オペレータは表示部17に表示された観察像上に照射領域を設定する加工枠を入力部10により入力する。ここで、加工枠とは、イオンビーム9を照射する領域と照射しない領域との境界を示す枠である。さらに、オペレータは加工開始の指示を入力部10に入力すると、制御部11からFIB制御部13に照射領域と加工開始の信号が送信され、FIB制御部13からイオンビーム9が試料7の指定された照射領域に照射される。これによりオペレータが入力した照射領域にイオンビーム9を照射することができる。
【0019】
また、断面加工観察装置は、SIM像上にスライス加工するためのスライス領域を設定するスライス領域設定部15を備える。
また、断面加工観察装置は、取得したSEM像と、スライス幅から試料の三次元像を構築する三次元像形成部18を備える。
【0020】
次に、本実施形態の断面加工観察方法について説明する。
図2(a)に示すように、断面を観察するための電子ビーム8を断面に照射できるように試料7に加工溝21を形成する。試料7の表面7aにイオンビーム9を走査照射しエッチング加工により加工溝21を形成する。
図2(b)は、
図2(a)のA−A断面図であり、電子ビーム8で断面7bを走査照射できるようにスロープ形状の加工溝21を形成する。スロープ形状にすることにより、凹型の溝を形成する場合に比べてエッチング量が少なく、加工時間を短縮することができる。
【0021】
そして、スライス加工と、それにより露出した断面の観察とを繰り返し行う。すなわち、スライス領域22にイオンビーム9aを走査照射し、エッチング加工を施し、この加工により露出された断面に電子ビーム8を走査照射しSEM像を取得する。次にスライス領域23にイオンビーム9bを走査照射し、エッチング加工を施し、次の断面を露出させSEM像を取得する。これによりスライス領域の幅D1の間隔で、複数の断面のSEM像を取得することができる。これらのSEM像から試料7内部の構造を分析することができる。
【0022】
ところで、スライス領域はイオンビーム9によりエッチング加工されるので、スライス領域の幅D1内の試料部分はSEM像に現れない。従って、微小な観察対象を観察する為には、スライス領域の幅D1を当該対象よりも小さく設定することが必要となる。しかし、設定したスライス領域の幅と実際にエッチングされたスライス幅は同一になるとは限らない。なぜなら、エッチングされる試料の材質や構造によってエッチングレートが異なるからである。
【0023】
そこで、実際にエッチングされるスライス幅を測定することが必要となる。イオンビーム9を試料7の表面7aに垂直な方向からスライスされた領域に走査照射し、SIM像観察し、スライス幅を測長する。しかし、スライス幅が微小な場合、特にイオンビーム9のビーム径以下であると、例えば5nm以下であると、SIM像ではスライス幅を測定することが困難である。
【0024】
そこで、本実施形態の試料加工方法では、次に説明するスライス幅測長方法を用いる。スライス幅測定方法は、
図3に示すように、スライス領域の長さをスライス領域の幅の分だけ短くなるように設定し加工する。そして、加工により形成された断面をSEM観察する。SEM観察は断面の微小な凹凸を観察することができるので、断面に形成された微小なスライス幅と同じ長さの段差を観察することである。これにより断面のSEM像でスライス幅を測長することができる。
【0025】
図3(a)は、試料7の表面7aのSIM像30である。加工溝31が形成されている。ここに、スライス領域設定部15によりスライス領域32、33、34、35を設定する。スライス領域33、34、35のスライス領域の長手方向の長さは、加工溝31側に隣接するスライス領域の長手方向の長さからスライス領域の幅を差し引いた長さになるように設定される。例えばスライス領域33は、スライス領域32の長さからスライス領域33の幅D2を差し引いた長さを有する。そして、設定したスライス領域32、33、34、35にイオンビーム9を走査照射し、断面加工観察を施す。
【0026】
図3(b)は、エッチング加工後のSIM像31である。異なる長さのスライス領域を用いることにより加工溝37は段差形状38を有する。
【0027】
図4は、電子ビーム8を走査照射し取得した断面37aのSEM像40である。SEM像40には、段差形状38に起因する形状48が現れている。形状48の幅からスライス幅を測長することができる。例えば、SEM像40で幅D3を測長した値を実際にエッチングされたスライス幅とみなすことができる。これによりイオンビーム9により実際に試料7がエッチング加工されるスライス幅を測長することができる。
【0028】
次に断面加工観察により得られた複数の断面のSEM像と、スライス幅測長方法により得られた実際にエッチング加工されたスライス幅を用いて、断面加工した領域の三次元画像を構築する方法について説明する。
【0029】
図5に示すように取得した複数のSEM像を実際にエッチング加工されたスライス幅に基づく間隔で配置する。SEM像51とSEM像52を、上記のスライス幅測長方法で取得したスライス幅D4にSEM像の表示倍率をかけた長さの間隔で配置する。他のSEM像も同様に配置する。これにより断面加工した領域の三次元画像を構築することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…EB鏡筒
2…FIB鏡筒
3…試料室
4…二次電子検出器
5…反射電子検出器
6…試料台
7…試料
7a…表面
7b…断面
8…電子ビーム
9、9a、9b…イオンビーム
10…入力部
11…制御部
12…EB制御部
13…FIB制御部
14…像形成部
15…スライス領域設定部
16…試料台制御部
17…表示部
18…三次元像形成部
21…加工溝
22…スライス領域
23…スライス領域
24…スライス領域
30、36…SIM像
31、37… 加工溝
32、33、34、35…スライス領域
37b…断面
38…段差形状
40…SEM像
48…形状
51、52…SEM像
D1、D2、D3、D4…スライス幅