特許第5969238号(P5969238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969238
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】板状ワークの有無判断方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   B25J13/08 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-71150(P2012-71150)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-202699(P2013-202699A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 晋一
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−270674(JP,A)
【文献】 特開2004−363262(JP,A)
【文献】 特開2001−168600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを収納するカセットと、加工前の板状ワークが仮置きされる仮置きテーブルと、加工後の板状ワークを洗浄する洗浄テーブルと、板状ワークを吸引保持する吸引面を有するロボットハンドを備える搬送ロボットと、を含む加工装置に備えた搬送ユニットにおいて、
該搬送ユニットには、該ロボットハンドを撮像する撮像手段と、
該撮像手段によって撮像され該吸引面に何も保持されない時の該ロボットハンドの撮像画が記憶される記憶部と、
該記憶部に記憶される撮像画と該搬送ロボットが搬送開始または搬送終了の時に該撮像手段が取得した該吸引面の撮像画とを比較して違いを判断する判断部と、を備え、
板状ワークを加工する前に、該吸引面に何も載置されていない状態の該ロボットハンドを撮像して撮像画を該記憶部に記憶させる第一の撮像工程と、
板状ワークを加工する加工工程と、
該第一の撮像工程及び該加工工程を実施した後、加工後の板状ワークをカセットに搬送した後であって次の加工対象の板状ワークをカセットから取り出す前に、該ロボットハンドを撮像する第二の撮像工程と、
該判断部によって、該第二の撮像工程において撮像された撮像画と予め記憶部に記憶されている撮像画とを比較し、ロボットハンドの該吸引面において板状ワークが保持されているか否かを判断する板状ワーク有無判断工程と、
を備える板状ワークの有無判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークを搬送する搬送ユニットにおける板状ワークの有無判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板状ワークを搬送する搬送ロボットは、板状ワークを吸引保持するロボットハンドを備えており、該ロボットハンドによって板状ワークを吸引保持して搬送することができる。搬送ロボットとしては、例えば、基板を支持するロボットハンドを先端に有するロボットアーム及びロボットアームを駆動する駆動手段を有し、搬送ロボットの搬送経路上に光学センサーなどの検知手段を設けているものがある(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
また、他の搬送ロボットの例としては、円形の板状ワークを吸引保持できる吸引面を有するロボットハンドを備え、吸引源に連通した吸着穴が当該吸引面に複数形成され、さらに、板状ワークの有無を判断するための認識センサー(例えば、静電センサー)を内蔵しているものがある。
【0004】
上記のように構成されている搬送ロボットによって板状ワークを搬送し、その板状ワークを加工する際は、ロボットハンドの吸引面に接続される吸引源を遮断し、板状ワークの吸引保持を解除するとともに当該吸引面にエアーを供給しつつ、当該吸引面からエアーを吹き出して板状ワークを離間させ、加工先に板状ワークを搬送させている。加工先に搬入された板状ワークが加工されると、加工済みの板状ワークは、洗浄工程に搬送される。そして、板状ワークに洗浄処理及び乾燥処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2009−084630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、板状ワークに対して上記の乾燥処理が施されたにもかかわらず、板状ワークに水分が付着していることがある。そのため、搬送ロボットのロボットハンドの吸引面に板状ワークを載せた後に、当該吸引面と板状ワークとの間に介在する水分の表面張力によって当該吸引面から板状ワークを離間できない場合がある。
【0007】
上記のロボットハンドのように、板状ワークの有無を認識する認識センサーを内蔵していたとしても、例えば板状ワークがロボットハンドの吸引面からずれて載置された場合、認識センサーがロボットハンドの吸引面に板状ワークが有るか無いかを認識できないことがある。
【0008】
したがって、実際には、板状ワークがロボットハンドの吸引面に保持されているのにもかかわらず、認識センサーが、ロボットハンドの吸引面に板状ワークが無いと誤認識してしまい、板状ワークが収容されているカセットから新たな板状ワークを取り出そうとして、板状ワークを破損してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、ロボットハンドの吸引面の全面において板状ワークの有無の判断を可能とすることに発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、板状ワークを収納するカセットと、加工前の板状ワークが仮置きされる仮置きテーブルと、加工後の板状ワークを洗浄する洗浄テーブルと、板状ワークを吸引保持する吸引面を有するロボットハンドを備える搬送ロボットと、を含む加工装置に備えた搬送ユニットにおいて、該搬送ユニットには、該ロボットハンドを撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像され該吸引面に何も保持されない時の該ロボットハンドの撮像画が記憶される記憶部と、該記憶部に記憶される撮像画と該搬送ロボットが搬送開始または搬送終了の時に該撮像手段が取得した該吸引面の撮像画とを比較して違いを判断する判断部と、を備え、板状ワークを加工する前に、該吸引面に何も載置されていない状態の該ロボットハンドを撮像して撮像画を該記憶部に記憶させる第一の撮像工程と、板状ワークを加工する加工工程と、該第一の撮像工程及び該加工工程を実施した後、加工後の板状ワークをカセットに搬送した後であって次の加工対象の板状ワークをカセットから取り出す前に、該ロボットハンドを撮像する第二の撮像工程と、該判断部によって、該第二の撮像工程において撮像された撮像画と予め記憶部に記憶されている撮像画とを比較し、ロボットハンドの該吸引面において板状ワークが保持されているか否かを判断する板状ワーク有無判断工程と、を備える
【発明の効果】
【0011】
本発明は、搬送ユニットに、ロボットハンドを撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像されロボットハンドの吸引面に何も保持されていない時の該ロボットハンドの撮像画が記憶される記憶部と、該記憶部に記憶される撮像画と該搬送ロボットが搬送開始または搬送終了の時に撮像した該吸引面の撮像画とを比較し違いを判断する判断部とを備えているため、板状ワークが有るか否かをロボットハンドの吸引面に何も保持されていない画像との比較において確認することができ、当該吸引面に板状ワークが保持されているか否かを確実に認識することができる。したがって、ロボットハンドの吸引面に板状ワークが保持された状態のまま、板状ワークが収容されているカセットから新たな板状ワークを取り出すことはなく、板状ワークが破損してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】搬送ロボットが搭載された加工装置の一部の構成を示す斜視図である。
図2】搬送ロボットの第一例の構成を示す平面図である。
図3】ロボットハンドの吸引面の全面に板状ワークが吸引保持された状態を示す平面図である。
図4】ロボットハンドの吸引面に板状ワークがずれて吸引保持された状態を示す平面図である。
図5】搬送ロボットの第二例の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す加工装置1は、図示していない板状ワークを搬送する搬送ユニットの第一例が搭載された加工装置の一部分の構成を示している。まず、加工装置1の説明をする。
【0014】
加工装置1は、Y軸方向に延設された装置ベース10を有している。装置ベース10のY軸方向前部には、ステージ2a及びステージ2bがX軸方向に並列に取り付けられている。ステージ2aには、加工前の被加工物を収容するための供給カセット3aが配設され、ステージ2bには、加工後の被加工物を収容するための回収カセット3bが配設されている。
【0015】
供給カセット3a及び回収カセット3bの近傍には、供給カセット3aからの被加工物の搬出及び回収カセット3bへの被加工物の搬入を行うための搬送ユニット4が配設されている。搬送ユニット4は、板状ワークを吸引保持するロボットハンド50を有する搬送ロボット5を備えている。
【0016】
図2に示すように、搬送ロボット5は、アーム53の先端に二股に分岐されたロボットハンド50を備えており、ロボットハンド50の表面が、板状ワークを吸引保持する吸引面51となっている。吸引面51には、図示しない吸引源に連通された吸着穴52が少なくとも4箇所に形成されている。そして、吸引源を作動させると、図3に示すように、吸着穴52を介して板状ワークを吸引面52に吸引保持させることができる。
【0017】
また、図1に示すように、搬送ユニット4には、ロボットハンド50の形状を撮像する撮像手段6と、撮像手段6によって撮像されロボットハンド50の吸引面51に何も載置されていない時のロボットハンド50の撮像画が記憶される記憶部7と、記憶部7に記憶された撮像画と搬送ロボット5が搬送開始または搬送終了の時に撮像したロボットハンド50の吸引面51の撮像画とを比較して両画像の違いを判断する判断部8と、を備えている。
【0018】
図1に示す撮像手段6は、ロボットハンド50の吸引面51の全面を撮るために、搬送ロボット5の上方の位置に配設されている。具体的には、装置ベース10の上面において、搬送ロボット5を跨ぐようにしてフレーム9が配設され、このフレーム9の略中央部側方に撮像手段6が配設されている。そして、撮像手段6は、例えばCMOSイメージセンサを備え、ロボットハンド50の吸引面51の全面を撮像することができる。
【0019】
図1に示す記憶部7は、撮像手段6に接続されており、撮像手段6が撮像した撮像画を記憶しておくことができる。判断部8は記憶部7に接続され、記憶部7に記憶されたロボットハンド50の外形の撮像画と、搬送ロボット5が搬送開始もしくは搬送終了の時に撮像したロボットハンド50の吸引面51の撮像画とを比較し、吸引面51に板状ワークが有る否かを判断することができる。
【0020】
図1に示すように、上記のように構成される搬送ユニット4の近傍、かつ、搬送ロボット5のロボットハンド50が届く範囲には、加工前の板状ワークが仮置きされる仮置きテーブル11と、加工後の板状ワークを洗浄する洗浄装置12が配設されている。仮置きテーブル11に載置された板状ワークは、図1におけるY軸方向後部側において加工された後、洗浄装置12に搬送される。
【0021】
以下に、搬送ユニット4による板状ワーク有無判断の一連の工程について、図1乃至図4を参照しながら説明する。なお、図2に示す円形の板状ワークWは、図1に示した加工装置1によって加工される被加工物である。
【0022】
(1)第一の撮像工程
まず、板状ワークWを加工装置1によって加工する前に、図2に示す吸引面51に何も載置されていない状態におけるロボットハンド50の吸引面51の全面を、図1に示した撮像手段6によって撮像し、この撮像画を予め記憶部7に記憶させる。なお、図2に示すようにロボットハンド50の吸引面51に何も載置されていない状態の撮像画を撮像画F1とする。
【0023】
(2)加工工程
次に、図1に示した加工装置1において、搬送ロボット5のロボットハンド50が供給カセット3aに進入し、板状ワークWを保持して仮置き11テーブルに搬送する。そして、板状ワークが加工された後、板状ワークWが洗浄テーブル12に移動され洗浄処理及び乾燥処理が施される。次いで、図3に示す搬送ロボット5によって板状ワークWは回収カセット3bに収容される。このとき、図3に示すように、板状ワークWがロボットハンド50の吸引面51上にずれないで取り出された場合には、ロボットハンド50の吸引面51の全面を覆うようにして板状ワークWが保持されている。なお、図3に示すようにロボットハンド50の吸引面51の全面に板状ワークWが保持されている状態を撮像して取得した画像を、撮像画F2とする。
【0024】
一方、図4に示すように、板状ワークWがロボットハンド50の吸引面51上においてずれた状態で取り出された場合には、ロボットハンド50の吸引面51の一部分を覆うようにして板状ワークWが保持されている。なお、図4に示すようにロボットハンド50の吸引面51の一部分に板状ワークWが保持されている状態を撮像して取得した画像を、撮像画F3とする。
【0025】
(3)第二の撮像工程
図1に示す搬送ロボット5は、第一の撮像工程及び加工工程を実施した後、加工後の板状ワークWを回収カセット3bに搬送した後、次の加工対象の板状ワークWを供給カセット3aから取り出そうとする。ここで、加工及び洗浄の処理を経た板状ワークWに水分が付着していると、ロボットハンド50の吸引面51にその板状ワークWを保持した後に、板状ワークWと吸引面51との間に介在する水分の表面張力によって、吸引面51から板状ワークWを離間できないことがあり、回収カセット3bに収容したつもりの板状ワークWが、吸引面51に残っていることがある。したがって、板状ワークWがロボットハンド50の吸引面51に保持されたまま、搬送ロボット5の搬送動作を継続してしまうことを防止するべく、吸引面51に板状ワークWが有るか否かを確認する。
【0026】
図1に示す搬送ロボット5は、板状ワークWの搬送終了時または供給カセット3aから新たな板状ワークを取り出す前に、撮像手段6の下方に移動し、撮像手段6によって、少なくともロボットハンド50の吸引面51の全面を撮像する。この撮像時は、第一の撮像工程における撮像時と同じ撮像範囲に設定するとともに、焦点も同じ位置に合わせる。撮像された撮像画は判断部8に送信される。
【0027】
(4)板状ワークの有無判断工程
図1に示す判断部8は、第二の撮像工程において撮像された撮像画と予め記憶部7に記憶されている撮像画F1とを比較し、ロボットハンド50の吸引面51に板状ワークWが有るかどうかを判断する。
【0028】
具体的には、判断部8は、撮像手段6によって撮像された画像が、図2に示す撮像画F1と一致していると認識したときは、ロボットハンド50の吸引面51に板状ワークWが無いと判断する。この場合、搬送ロボット5は、供給カセット3aから新たな板状ワークを取り出し、継続して稼働することができる。
【0029】
一方、撮像手段6によって撮像された画像が、上記撮像画F2または撮像画F3のように板状ワークWが含まれるものであった場合は、撮像画F1との間に違いがあるため、ロボットハンド50の吸引面51に板状ワークWが有ると判断する。この場合、図1に示す加工装置1は、搬送ロボット5を回収カセット3bに移動させ、板状ワークWを回収カセット3bの内部に収容する。以上の工程により、ロボットハンド50の吸引面51上において板状ワークWの有無が判断される。
【0030】
図5に示す搬送ロボット5Aは、板状ワークの搬送ロボットの第二例である。搬送ロボット5Aは、搬送ロボット5と同様にアーム53の先端に二股に分岐したロボットハンド50を備えており、ロボットハンド50の表面が板状ワークを吸引保持する吸引面51となっている。吸引面51には、図示しない吸引源に連通された吸着穴52が少なくとも4箇所に形成されている。ここで、板状ワークの色とロボットハンドの色とが似ている場合には、図1に示した判断部8が誤認識して、板状ワークがロボットハンドに保持されているのにもかかわらず、保持されていないと判断することが想定される。そのため、搬送ロボット5Aにおいては、その吸引面51の外縁54を特殊な色で縁取りしてコントラストを明確化し、吸引面51上において板状ワークの検知を容易にしている。なお、搬送ロボット5Aは、搬送ロボット5と同様の動作が可能となっている。
【0031】
実施形態に示した搬送ユニット4及び搬送ユニット4Aでは、板状ワークが有るかどうかの判断を、ロボットハンド50の吸引面51の全面を含む画像との比較において行うことができ、吸引面51に板状ワークがあるか否かを確実に認識することができる。したがって、ロボットハンド50の吸引面51に板状ワークが保持された状態で、板状ワークが収容されている供給カセット3aから新たな板状ワークを取り出そうとして、板状ワークを破損してしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:加工装置
2a,2b:ステージ
3a:供給カセット 3b:回収カセット
4,4A:搬送ユニット
5,5A:搬送ロボット
50:ロボットハンド 51:吸引面 52:吸着穴 53:アーム
54:外縁
6:撮像手段
7:記憶部
8:判断部
9:フレーム
10:装置ベース
11:仮置きテーブル
12:洗浄テーブル
図1
図2
図3
図4
図5