(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メタルキャップを形成する工程は、PVDまたはCVDもしくはALDにより酸化マンガン膜を成膜し、その酸化マンガン膜をメタルキャップとすることを特徴とする請求項1に記載のCu配線の形成方法。
前記メタルキャップを形成する工程は、PVDまたはCVDもしくはALDによりMn膜を形成した後、Mn膜に酸化処理を施して酸化マンガン膜とし、その酸化マンガン膜をメタルキャップとすることを特徴とする請求項1に記載のCu配線の形成方法。
前記Cu膜の形成は、基板が収容された処理容器内にプラズマ生成ガスによりプラズマを生成し、Cuからなるターゲットから粒子を飛翔させて、粒子を前記プラズマ中でイオン化させ、前記基板にバイアス電力を印加してイオンを基板上に引きこむ装置により行われることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のCu配線の形成方法。
前記バリア膜は、Ti膜、TiN膜、Ta膜、TaN膜、Ta/TaNの2層膜、TaCN膜、W膜、WN膜、WCN膜、Zr膜、ZrN膜、V膜、VN膜、Nb膜、NbN膜からなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のCu配線の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0023】
<Cu配線の形成方法の一実施形態>
まず、Cu配線の形成方法の一実施形態について
図1のフローチャートおよび
図2の工程断面図を参照して説明する。
【0024】
本実施形態では、まず、下部構造201(詳細は省略)の上にSiO
2膜、Low−k膜(SiCO、SiCOH等)等の層間絶縁膜202を有し、そこにトレンチ203および下層配線への接続のためのビア(図示せず)が所定パターンで形成された半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを準備する(ステップ1、
図2(a))。このようなウエハWとしては、DegasプロセスやPre−Cleanプロセスによって、絶縁膜表面の水分やエッチング/アッシング時の残渣を除去したものであることが好ましい。
【0025】
次に、トレンチ203およびビアの表面を含む全面にCuを遮蔽(バリア)してCuの拡散を抑制するバリア膜204を成膜する(ステップ2、
図2(b))。
【0026】
バリア膜204としては、Cuに対して高いバリア性を有し、低抵抗を有するものが好ましく、Ti膜、TiN膜、Ta膜、TaN膜、Ta/TaNの2層膜を好適に用いることができる。また、TaCN膜、W膜、WN膜、WCN膜、Zr膜、ZrN膜、V膜、VN膜、Nb膜、NbN膜等を用いることもできる。Cu配線はトレンチまたはホール内に埋め込むCuの体積が大きくなるほど低抵抗になるので、バリア膜は非常に薄く形成することが好ましく、そのような観点からその厚さは1〜20nmが好ましい。より好ましくは1〜10nmである。バリア膜は、イオン化PVD(Ionized physical vapor deposition;iPVD)、例えばプラズマスパッタにより成膜することができる。また、通常のスパッタ、イオンプレーティング等の他のPVDで成膜することもでき、CVDやALD、プラズマを用いたCVDやALDで成膜することもできる。
【0027】
次いで、バリア膜204の上にRuライナー膜205を成膜する(ステップ3、
図2(c))。Ruライナー膜は、埋め込むCuの体積を大きくして配線を低抵抗にする観点から、例えば1〜5nmと薄く形成することが好ましい。
【0028】
RuはCuに対する濡れ性が高いため、Cuの下地にRuライナー膜を形成することにより、次のiPVDによるCu膜形成の際に、良好なCuの移動性を確保することができ、トレンチやホールの間口を塞ぐオーバーハングを生じ難くすることができる。このため、微細なトレンチまたはホールにもボイドを発生させずに確実にCuを埋め込むことができる。
【0029】
Ruライナー膜は、ルテニウムカルボニル(Ru
3(CO)
12)を成膜原料として用いて熱CVDにより好適に形成することができる。これにより、高純度で薄いRu膜を高ステップカバレッジで成膜することができる。このときの成膜条件は、例えば処理容器内の圧力が1.3〜66.5Paの範囲であり、成膜温度(ウエハ温度)が150〜250℃の範囲である。Ruライナー膜205は、ルテニウムカルボニル以外の他の成膜原料、例えば(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチルペンタジエニル)ルテニウム、ビス(シクロペンタジエニル)(2,4−メチルペンタジエニル)ルテニウム、(2,4−ジメチルペンタジエニル)(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(2,4−メチルペンタジエニル)(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムのようなルテニウムのペンタジエニル化合物を用いたCVDや、スパッタリング等のPVDで成膜することもできる。
【0030】
なお、トレンチやビアの間口が広く、オーバーハングが生じにくい場合等には、必ずしもRuライナー膜205を形成する必要はなく、バリア膜の上に直接Cu膜を形成してもよい。
【0031】
次いで、PVDによりCu膜206を形成し、トレンチ203およびビア(図示せず)をほぼ完全に埋め込む(ステップ4、
図2(d))。この際の成膜は、iPVD、例えばプラズマスパッタを用いることが好ましい。
【0032】
通常のPVD成膜の場合には、Cuの凝集により、トレンチやホールの間口を塞ぐオーバーハングが生じやすいが、iPVDを用い、ウエハに印加するバイアスパワーを調整して、Cuイオンの成膜作用とプラズマ生成ガスのイオン(Arイオン)によるエッチング作用とを制御することにより、Cuを移動させてオーバーハングの生成を抑制することができ、狭い開口のトレンチやホールであっても良好な埋め込み性を得ることができる。このとき、Cuの流動性を持たせて良好な埋め込み性を得る観点からはCuがマイグレートする高温プロセス(65〜350℃)が好ましい。また、上述したように、Cu膜206の下地にCuに対する濡れ性が高いRuライナー膜205を設けることにより、Ruライナー膜上でCuが凝集せず流動するので、微細な凹部においてもオーバーハングの生成を抑制することができ、ボイドを発生させずに確実にCuを埋め込むことができる。
【0033】
なお、トレンチやホールの開口幅が大きい場合等、オーバーハングが生成し難い場合には、Cuがマイグレートしない低温プロセス(−50〜0℃)により、高速で成膜することができる。
【0034】
また、Cu膜成膜時における処理容器内の圧力(プロセス圧力)は、1〜100mTorr(0.133〜13.3Pa)が好ましく、35〜90mTorr(4.66〜12.0Pa)がより好ましい。
【0035】
このようにトレンチ203およびビア(ホール)内にCuを埋め込んだ後は、その後の平坦化処理に備えてCu膜206の上に積み増し層207を成膜する(ステップ5、
図2(e))。
【0036】
積み増し層207は、Cu膜206に引き続いてiPVD等のPVDによりCu膜を成膜することにより形成してもよいし、めっきにより形成してもよい。ただし、良好なスループットを得る観点、および装置の簡略化の観点等から、Cu膜206を形成したのと同じPVD(iPVD)装置を用いて積み増し層207を形成することが好ましい。積み増し層207は埋め込み性をほとんど考慮する必要はないため、PVDで成膜する際には、Cu膜206よりも高い成膜速度で形成することが好ましい。
【0037】
このようにして積み増し層207まで成膜した後、必要に応じてアニール処理を行う(ステップ6)。このアニール処理により、Cu膜206を安定化させる。
【0038】
この後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)によりウエハW表面の全面を研磨して、積み増し層207、Ruライナー膜205、バリア膜204を除去して平坦化する(ステップ7、
図2(f))。これによりトレンチおよびビア(ホール)内にCu配線208が形成される。
【0039】
その後、CMP研磨後のウエハW表面のCu配線208および層間絶縁膜202を含む全面に以下に説明するようなMn含有膜からなるメタルキャップ209を成膜する(ステップ8、
図2(g))。
【0040】
以下に示すように本実施形態で用いるMn含有膜からなるメタルキャップ209は、従来のメタルキャップと同様、Cu配線208と誘電体キャップ213の密着性を良好にしてCuのエレクトロマイグレーション耐性を向上させる効果を得ることができる。一方、Mn含有膜からなるメタルキャップ209は、以下に説明するように、従来のメタルキャップとは異なり、成膜段階でCu配線208に対する選択性は不要であり、全面に成膜することができる等の従来のメタルキャップにはない効果を奏する。
【0041】
Mn含有膜からなるメタルキャップ209の形成方法としては、以下の第1〜第3の方法を挙げることができる。
【0042】
(第1の方法)
第1の方法について
図3を参照して説明する。なお、
図3においては、バリア膜204は省略している。以下に説明する
図4および
図5も同様である。
【0043】
CMP研磨後のCu配線208の表面には、酸化を防止する観点からベンゾトリアゾール(BTA)のような防錆剤が施されているため、最初に、防錆剤を除去するとともに表面のCuOxを還元する前処理を行う(
図3(a))。前処理は、デガス処理やH
2熱処理により行うことができる。H
2熱処理の代わりにH
2プラズマ処理であってもよく、NH
3を用いた熱処理やプラズマ処理であってもよい。
【0044】
次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)やALD(Atomic Layer Deposition)、またはPVDにより、ウエハ全面に酸化マンガン膜(MnO
2膜)210を例えば2〜5nmの厚さで成膜し、これをメタルキャップ209とする(
図3(b))。なお、このように成膜される酸化マンガン膜は必ずしもMnO
2とはならないが、ここでは代表的な酸化マンガンであるMnO
2を用いて表記する。
【0045】
PVDでMnO
2膜を成膜する際には、MnO
2ターゲットを用いてスパッタリングしてもよいし、Mnターゲットを用いて成膜中にO
2を添加する反応性スパッタリングでMnO
2膜を成膜してもよい。
【0046】
CVDによりMnO
2膜を成膜する場合には、マンガン化合物ガスを供給してウエハ上で熱分解させることにより、またはマンガン化合物ガスと酸素含有ガスとをウエハ上に供給して反応させることにより成膜する。
【0047】
マンガン化合物ガスとしては、一般式Mn(RC
5H
4)
2で表されるビス(アルキルシクロペンタジエニル)マンガンのようなシクロペンタジエニル系マンガン化合物や、デカカルボニル2マンガン(Mn
2(CO)
10)やメチルシクロペンタジエニルトリカルボニルマンガン((CH
3C
5H
4)Mn(CO)
3)のようなカルボニル系マンガン化合物や、ビス(ジピバロイルメタナト)マンガン(Mn(C
11H
19O
2)
2)のようなベータジケトン系マンガン化合物や、米国公報US2009/0263965A1号に開示されている一般式Mn(R
1N−CR
3−NR
2)
2で表されるビス(N,N'−ジアルキルアセトアミジネート)マンガンのようなアミジネート系マンガン化合物、または、国際公開第2012/060428号に開示されている一般式Mn(R
1N−Z−NR
22)
2で表されるビス(N,N'−1−アルキルアミド−2−ジアルキルアミノアルカン)マンガンのようなアミドアミノアルカン系マンガン化合物を好適に用いることができる。ここで、前記R,R
1,R
2,R
3は−C
nH
2n+1(nは0以上の整数)で記述されるアルキル基であり、前記Zは−C
nH
2n−(nは0以上の整数)で記述されるアルキレン基である。これらの中では、アミドアミノアルカン系マンガン化合物が、低温成膜することができるので好ましい。
【0048】
ALDでMnO
2膜を形成する場合には、上記マンガン化合物ガスと酸素含有ガスとを交互に供給することにより成膜する。
【0049】
このようにして成膜されたMnO
2膜210は絶縁膜であるから、ウエハ全面に形成して、層間絶縁膜202上に存在してもCu配線間のリーク電流が増加することはない。
【0050】
(第2の方法)
第2の方法は、
図4に示すように、最初に、第1の方法と同様に、デガス処理、または、H
2もしくはNH
3を用いた熱処理やプラズマ処理熱処理により、防錆剤を除去するとともに表面のCuOxを還元する前処理を行う(
図4(a))。
【0051】
次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)やALD(Atomic Layer Deposition)、またはPVDにより、ウエハ全面にMn膜211を成膜する(
図4(b))。
【0052】
PVDでMn膜を成膜する際には、例えばMnターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜する。
【0053】
CVDによりMn膜を成膜する場合には、マンガン化合物ガスと還元性の反応ガスとをウエハ上に供給し、これらを反応させることにより成膜する。て酸素含有ガスとをウエハ上に供給して反応させることにより成膜する。
【0054】
マンガン化合物ガスとしては、上記第1の方法と同じものを用いることができる。また、還元性の反応ガスとしては、水素(H
2)ガスや、一酸化炭素(CO)ガス、ホルムアルデヒド(HCHO)などのアルデヒド(R−CHO)ガス、蟻酸(HCOOH)などのカルボン酸(R−COOH)ガスを好適に用いることができる。ここで、上記Rは、−C
nH
2n+1(nは0以上の整数)で記述されるアルキル基である。
【0055】
ALDでMn膜を形成する場合には、上記マンガン化合物ガスと上記還元性の反応ガスとを交互に供給することにより成膜する。
【0056】
その後、Mn膜211の全面を酸化してMnO
2膜210を形成し、メタルキャップ209とする(
図4(c))。酸化のための処理としてはO
2プラズマ処理を用いることができ、好適な例としてはマイクロ波プラズマを挙げることができる。
【0057】
このようにして形成されたMnO
2膜210は絶縁膜であるから、ウエハ全面に形成してもCu配線間のリーク電流が増加することはない。
【0058】
(第3の方法)
第3の方法は、
図5に示すように、最初に、第1の方法と同様に、デガス処理、または、H
2もしくはNH
3を用いた熱処理やプラズマ処理熱処理により、防錆剤を除去するとともに表面のCuOxを還元する前処理を行う(
図5(a))。
【0059】
次に、第2の方法と同様に、CVD(Chemical Vapor Deposition)やALD(Atomic Layer Deposition)、またはPVDにより、ウエハ全面にMn膜211を成膜する(
図5(b))。
【0060】
その後、アニールすることによりCu配線208上にはMn膜211がそのまま残存し、Cu配線208の間の層間絶縁膜202上のMn膜211は層間絶縁膜202のSiおよびOと反応して自己整合膜であるMnSiOx膜212となり、Mn膜211とMnSiOx膜212とからなるメタルキャップ209が形成される。
【0061】
本方法では、層間絶縁膜202上には絶縁膜であるMnSiOx膜212が形成されるから、Cu配線間のリーク電流が増加することはない。
【0062】
なお、この第3の方法では、全面にMn膜を形成する代わりに、Mn−Ru等のMn合金膜を形成してもよい。Mn合金膜を成膜する場合にも、Mn合金ターゲットを用いたPVD、または、マンガン化合物ガス、合金成分の化合物ガス、および還元性の反応ガスを用いたCVDもしくはALDにより成膜することができる。
【0063】
このようにして、メタルキャップ209を形成した後、その上に、例えばSiCNからなる誘電体キャップ213を成膜する(ステップ9、
図2(h))。誘電体キャップ213は、CVDで成膜することができる。
【0064】
本実施形態によれば、Cu膜をPVDによりトレンチやホールに埋め込んでCu配線を形成するので、Cuめっきにより埋め込む場合のようなボイドの発生を防止することができる。また、Cu配線形成後に、Cu配線208との密着性が高いMn含有膜からなるメタルキャップ209を形成するので、エレクトロマイグレーション耐性の高いCu配線を得ることができる。このとき、Mn含有膜を全面に形成して、少なくともCu配線208の間の層間絶縁膜202上の部分が絶縁性となるようにメタルキャップ209を形成するので、Cu配線に選択的にメタルキャップを形成するための煩雑な工程を用いることなく、Cu配線間のリーク電流の増大を抑制することができる。
【0065】
このようなメタルキャップを設けた場合には、メタルキャップを構成する金属がCu配線に拡散してCu配線中に残留するので、配線抵抗が高くなることが懸念されるが、本実施形態のようにメタルキャップ209としてMn含有膜を形成し、Cu配線208の下地にRuライナー膜205を設けた場合には、余剰MnがRuライナー膜205に偏析して、Cu配線208のMn残留量が極めて少なくなることが判明した。このため、本実施形態では、Mn残留量が少なく、低い配線抵抗のCu配線を得ることができる。
【0066】
また、メタルキャップを設けることにより配線間の容量が変化することが懸念されるが、メタルキャップを構成するMnO
2の比誘電率は5.1であり、誘電体キャップを構成するSiCNの比誘電率が5程度であるから、配線間容量はメタルキャップの有無によってほとんど変化しない。
【0067】
なお、上記一連の工程のうち、バリア膜204を成膜するステップ2、Ruライナー膜205を成膜するステップ3、Cu膜206を成膜するステップ4、積み増し層207を成膜するステップ5は、真空中で大気暴露を経ずに連続して成膜することが好ましいが、これらのいずれかの間で大気暴露してもよい。
【0068】
<本発明の実施形態に係るCu配線の形成方法の実施に好適なCu配線形成システム>
次に、本発明の実施形態に係るCu配線の形成方法の実施に好適なCu配線形成システムについて説明する。
【0069】
<積み増し層までの成膜の実施に好適な成膜システム>
図6は上記Cu配線の形成方法の中で積み増し層の成膜までの実施に好適なマルチチャンバタイプの成膜システムの一例を示す平面図である。
【0070】
成膜システム1は、バリア膜およびRuライナー膜を形成する第1の処理部2と、Cu膜を形成する第2の処理部3と、搬入出部4とを有しており、ウエハWに対してCu配線を形成するためのものであり、上記実施形態における積み増し層の形成までを行うものである。なお、CMPによる研磨の後のメタルキャップの形成およびその上の誘電体キャップの形成は他の成膜システムにより行われる。
【0071】
第1の処理部2は、平面形状が七角形をなす第1の真空搬送室11と、この第1の真空搬送室11の4つの辺に対応する壁部に接続された、2つのバリア膜成膜装置12a,12bおよび2つのRuライナー膜成膜装置14a,14bとを有している。バリア膜成膜装置12aおよびRuライナー膜成膜装置14aとバリア膜成膜装置12bおよびRuライナー膜成膜装置14bとは線対称の位置に配置されている。
【0072】
第1の真空搬送室11の他の2辺に対応する壁部には、それぞれウエハWのデガス処理を行うデガス室5a,5bが接続されている。また、第1の真空搬送室11のデガス室5aと5bとの間の壁部には、第1の真空搬送室11と後述する第2の真空搬送室21との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡し室5が接続されている。
【0073】
バリア膜成膜装置12a,12b、Ruライナー膜成膜装置14a,14b、デガス室5a,5b、および受け渡し室5は、第1の真空搬送室11の各辺にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブGを開放することにより第1の真空搬送室11と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより第1の真空搬送室11から遮断される。
【0074】
第1の真空搬送室11内は所定の真空雰囲気に保持されるようになっており、その中には、バリア膜成膜装置12a,12b、Ruライナー膜成膜装置14a,14b、デガス室5a,5b、および受け渡し室5に対してウエハWの搬入出を行う第1の搬送機構16が設けられている。この第1の搬送機構16は、第1の真空搬送室11の略中央に配設されており、回転および伸縮可能な回転・伸縮部17を有し、その回転・伸縮部17の先端にウエハWを支持する2つの支持アーム18a,18bが設けられており、これら2つの支持アーム18a,18bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部17に取り付けられている。
【0075】
第2の処理部3は、平面形状が八角形をなす第2の真空搬送室21と、この第2の真空搬送室21の対向する2つの辺に対応する壁部に接続された、トレンチを含む凹部を埋めるCu膜を成膜するための2つの第1のCu膜成膜装置22a,22bと、積み増し層を形成するための2つの第2のCu膜成膜装置24aおよび24bを有している。
【0076】
第2の真空搬送室21の第1の処理部2側の2辺に対応する壁部には、それぞれ上記デガス室5a,5bが接続され、デガス室5aと5bとの間の壁部には、上記受け渡し室5が接続されている。すなわち、受け渡し室5ならびにデガス室5aおよび5bは、いずれも第1の真空搬送室11と第2の真空搬送室21との間に設けられ、受け渡し室5の両側にデガス室5aおよび5bが配置されている。さらに、搬入出部4側の辺には、大気搬送および真空搬送可能なロードロック室6が接続されている。
【0077】
第1のCu膜成膜装置22a,22b、第2のCu膜成膜装置24a,24bデガス室5a,5b、およびロードロック室6は、第2の真空搬送室21の各辺にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブを開放することにより第2の真空搬送室21と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより第2の真空搬送室21から遮断される。また、受け渡し室5はゲートバルブを介さずに第2の搬送室21に接続されている。
【0078】
第2の真空搬送室21内は所定の真空雰囲気に保持されるようになっており、その中には、第1のCu膜成膜装置22a,22b、第2のCu膜成膜装置24a,24b、デガス室5a,5b、ロードロック室6および受け渡し室5に対してウエハWの搬入出を行う第2の搬送機構26が設けられている。この第2の搬送機構26は、第2の真空搬送室21の略中央に配設されており、回転および伸縮可能な回転・伸縮部27を有し、その回転・伸縮部27の先端にウエハWを支持する2つの支持アーム28a,28bが設けられており、これら2つの支持アーム28a,28bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部27に取り付けられている。
【0079】
搬入出部4は、上記ロードロック室6を挟んで第2の処理部3と反対側に設けられており、ロードロック室6が接続される大気搬送室31を有している。ロードロック室6と大気搬送室31との間の壁部にはゲートバルブGが設けられている。大気搬送室31のロードロック室6が接続された壁部と対向する壁部には被処理基板としてのウエハWを収容するキャリアCを接続する2つの接続ポート32,33が設けられている。これら接続ポート32,33にはそれぞれ図示しないシャッターが設けられており、これら接続ポート32,33にウエハWを収容した状態の、または空のキャリアCが直接取り付けられ、その際にシャッターが外れて外気の侵入を防止しつつ大気搬送室31と連通するようになっている。また、大気搬送室31の側面にはアライメントチャンバ34が設けられており、そこでウエハWのアライメントが行われる。大気搬送室31内には、キャリアCに対するウエハWの搬入出およびロードロック室6に対するウエハWの搬入出を行う大気搬送用搬送機構36が設けられている。この大気搬送用搬送機構36は、2つの多関節アームを有しており、キャリアCの配列方向に沿ってレール38上を走行可能となっていて、それぞれの先端のハンド37上にウエハWを載せてその搬送を行うようになっている。
【0080】
この成膜システム1は、この成膜システム1の各構成部を制御するための制御部40を有している。この制御部40は、各構成部の制御を実行するマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ41と、オペレータが成膜システム1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜システム1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース42と、成膜システム1で実行される処理をプロセスコントローラ41の制御にて実現するための制御プログラムや、各種データ、および処理条件に応じて処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部43とを備えている。なお、ユーザーインターフェース42および記憶部43はプロセスコントローラ41に接続されている。
【0081】
上記レシピは記憶部43の中の記憶媒体43aに記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0082】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース42からの指示等にて任意のレシピを記憶部43から呼び出してプロセスコントローラ41に実行させることで、プロセスコントローラ41の制御下で、成膜システム1での所望の処理が行われる。
【0083】
このような成膜システム1においては、キャリアCから大気搬送用搬送機構36によりトレンチやホールを有する所定パターンが形成されたウエハWを取り出し、ロードロック室6に搬送し、そのロードロック室を第2の真空搬送室21と同程度の真空度に減圧した後、第2の搬送機構26によりロードロック室のウエハWを取り出し、第2の真空搬送室21を介してデガス室5aまたは5bに搬送し、ウエハWのデガス処理を行う。その後、第1の搬送機構16によりデガス室のウエハWを取り出し、第1の真空搬送室11を介してバリア膜成膜装置12aまたは12bに搬入し、上述したようなバリア膜を成膜する。バリア膜成膜後、第1の搬送機構16によりバリア膜成膜装置12aまたは12bからウエハWを取り出し、Ruライナー膜成膜装置14aまたは14bに搬入し、上述したようなRuライナー膜を成膜する。Ruライナー膜成膜後、第1の搬送機構16によりRuライナー膜成膜装置14aまたは14bからウエハWを取り出し、受け渡し室5に搬送する。その後、第2の搬送機構26によりウエハWを取り出し、第2の真空搬送室21を介して第1のCu膜成膜装置22aまたは22bに搬入し、Cu膜を成膜してトレンチを含む凹部へのCuの埋め込みを行う。その後、トレンチ内に埋め込まれたCu膜の上に積み増し層を形成するが、積み増し層の形成は、同じ第1のCu膜成膜装置22aまたは22b内でCu膜を連続して形成することにより行ってもよいし、第2の搬送機構26により第1のCu膜成膜装置22aまたは22bからウエハWを取り出して、第2のCu膜成膜装置24aまたは24bに搬入し、そこでCu膜を形成して積み増し層としてもよい。
【0084】
積み増し層の形成後、ウエハWをロードロック室6に搬送し、そのロードロック室を大気圧に戻した後、大気搬送用搬送機構36によりCu膜が形成されたウエハWを取り出し、キャリアCに戻す。このような処理をキャリア内のウエハWの数の分だけ繰り返す。
【0085】
成膜システム1によれば、大気開放することなく真空中でバリア膜、ライナー膜、Cu膜、積み増し層を成膜するので、各膜の界面での酸化を防止することができ、高性能のCu配線を得ることができる。
【0086】
なお、積み増し層をCuめっきで形成する場合には、Cu膜を成膜後、ウエハWを搬出する。
【0087】
<第1のCu膜成膜装置>
次に、Cu膜を形成する第1のCu膜成膜装置22a(22b)の好適な例について説明する。
図7は、第1のCu膜成膜装置の一例を示す断面図である。ここではCu膜成膜装置としてiPVDであるICP(Inductively Coupled Plasma)型プラズマスパッタ装置を例にとって説明する。
【0088】
図7に示すように、このCu膜成膜装置22a(22b)は、例えばアルミニウム等により筒体状に成形された処理容器51を有している。この処理容器51は接地され、その底部52には排気口53が設けられており、排気口53には排気管54が接続されている。排気管54には圧力調整を行うスロットルバルブ55および真空ポンプ56が接続されており、処理容器51内が真空引き可能となっている。また処理容器51の底部52には、処理容器51内へ所定のガスを導入するガス導入口57が設けられる。このガス導入口57にはガス供給配管58が接続されており、ガス供給配管58には、プラズマ励起用ガスとして希ガス、例えばArガスや他の必要なガス例えばN
2ガス等を供給するためのガス供給源59が接続されている。また、ガス供給配管58には、ガス流量制御器、バルブ等よりなるガス制御部60が介装されている。
【0089】
処理容器51内には、被処理基板であるウエハWを載置するための載置機構62が設けられる。この載置機構62は、円板状に成形された載置台63と、この載置台63を支持するとともに接地された中空筒体状の支柱64とを有している。載置台63は、例えばアルミニウム合金等の導電性材料よりなり、支柱64を介して接地されている。載置台63の中には冷却ジャケット65が設けられており、図示しない冷媒流路を介して冷媒を供給するようになっている。また、載置台63内には冷却ジャケット65の上に絶縁材料で被覆された抵抗ヒーター87が埋め込まれている。抵抗ヒーター87は図示しない電源から給電されるようになっている。載置台63には熱電対(図示せず)が設けられており、この熱電対で検出された温度に基づいて、冷却ジャケット65への冷媒の供給および抵抗ヒーター87への給電を制御することにより、ウエハ温度を所定の温度に制御できるようになっている。
【0090】
載置台63の上面側には、例えばアルミナ等の誘電体部材66aの中に電極66bが埋め込まれて構成された薄い円板状の静電チャック66が設けられており、ウエハWを静電力により吸着保持できるようになっている。また、支柱64の下部は、処理容器51の底部52の中心部に形成された挿通孔67を貫通して下方へ延びている。支柱64は、図示しない昇降機構により上下移動可能となっており、これにより載置機構62の全体が昇降される。
【0091】
支柱64を囲むように、伸縮可能に構成された蛇腹状の金属ベローズ68が設けられており、この金属ベローズ68は、その上端が載置台63の下面に気密に接合され、また下端が処理容器51の底部52の上面に気密に接合されており、処理容器51内の気密性を維持しつつ載置機構62の昇降移動を許容できるようになっている。
【0092】
また底部52には、上方に向けて例えば3本(
図2では2本のみ示す)の支持ピン69が起立させて設けられており、また、この支持ピン69に対応させて載置台63にピン挿通孔70が形成されている。したがって、載置台63を降下させた際に、ピン挿通孔70を貫通した支持ピン69の上端部でウエハWを受けて、そのウエハWを外部より侵入する搬送アーム(図示せず)との間で移載することができる。このため、処理容器51の下部側壁には、搬送アームを侵入させるために搬出入口71が設けられ、この搬出入口71には、開閉可能になされたゲートバルブGが設けられている。このゲートバルブGの反対側には、前述した第2の真空搬送室21が設けられている。
【0093】
また上述した静電チャック66の電極66bには、給電ライン72を介してチャック用電源73が接続されており、このチャック用電源73から電極66bに直流電圧を印加することにより、ウエハWが静電力により吸着保持される。また給電ライン72にはバイアス用高周波電源74が接続されており、この給電ライン72を介して静電チャック66の電極66bに対してバイアス用の高周波電力を供給し、ウエハWにバイアス電力が印加されるようになっている。この高周波電力の周波数は、400kHz〜60MHzが好ましく、例えば13.56MHzが採用される。
【0094】
一方、処理容器51の天井部には、例えばアルミナ等の誘電体よりなる高周波に対して透過性のある透過板76がOリング等のシール部材77を介して気密に設けられている。そして、この透過板76の上部に、処理容器51内の処理空間Sにプラズマ励起用ガスとしての希ガス、例えばArガスをプラズマ化してプラズマを発生するためのプラズマ発生源78が設けられる。なお、このプラズマ励起用ガスとして、Arに代えて他の希ガス、例えばHe、Ne、Kr等を用いてもよい。
【0095】
プラズマ発生源78は、透過板76に対応させて設けた誘導コイル80を有しており、この誘導コイル80には、プラズマ発生用の例えば13.56MHzの高周波電源81が接続されて、上記透過板76を介して処理空間Sに高周波電力が導入され誘導電界を形成するようになっている。
【0096】
また透過板76の直下には、導入された高周波電力を拡散させる例えばアルミニウムよりなるバッフルプレート82が設けられる。そして、このバッフルプレート82の下部には、上記処理空間Sの上部側方を囲むようにして例えば断面が内側に向けて傾斜されて環状(截頭円錐殻状)のCuからなるターゲット83が設けられており、このターゲット83にはArイオンを引きつけるための直流電力を印加するターゲット用の電圧可変の直流電源84が接続されている。なお、直流電源に代えて交流電源を用いてもよい。
【0097】
また、ターゲット83の外周側には、これに磁界を付与するための磁石85が設けられている。ターゲット83はプラズマ中のArイオンによりCuの金属原子、あるいは金属原子団としてスパッタされるとともに、プラズマ中を通過する際に多くはイオン化される。
【0098】
またこのターゲット83の下部には、上記処理空間Sを囲むようにして例えばアルミニウムや銅よりなる円筒状の保護カバー部材86が設けられている。この保護カバー部材86は接地されるとともに、その下部は内側へ屈曲されて載置台63の側部近傍に位置されている。したがって、保護カバー部材86の内側の端部は、載置台63の外周側を囲むようにして設けられている。
【0099】
なお、第1のCu膜成膜装置の各構成部も、上述の制御部40により制御されるようになっている。
【0100】
このように構成される第1のCu膜成膜装置においては、ウエハWを
図7に示す処理容器51内へ搬入し、このウエハWを載置台63上に載置して静電チャック66により吸着し、制御部40の制御下で以下の動作が行われる。このとき、載置台63は、熱電対(図示せず)で検出された温度に基づいて、冷却ジャケット65への冷媒の供給および抵抗ヒーター87への給電を制御することにより温度制御される。
【0101】
まず、真空ポンプ56を動作させることにより所定の真空状態にされた処理容器51内に、ガス制御部60を操作して所定流量でArガスを流しつつスロットルバルブ55を制御して処理容器51内を所定の真空度に維持する。その後、可変直流電源84から直流電力をターゲット83に印加し、さらにプラズマ発生源78の高周波電源81から誘導コイル80に高周波電力(プラズマ電力)を供給する。一方、バイアス用高周波電源74から静電チャック66の電極66bに対して所定のバイアス用の高周波電力を供給する。
【0102】
これにより、処理容器51内においては、誘導コイル80に供給された高周波電力によりアルゴンプラズマが形成されてアルゴンイオンが生成され、これらイオンはターゲット83に印加された直流電圧に引き寄せられてターゲット83に衝突し、このターゲット83がスパッタされて粒子が放出される。この際、ターゲット83に印加する直流電圧により放出される粒子の量が最適に制御される。
【0103】
また、スパッタされたターゲット83からの粒子はプラズマ中を通る際に多くはイオン化される。ここでターゲット83から放出される粒子は、イオン化されたものと電気的に中性な中性原子とが混在する状態となって下方向へ飛散して行く。特に、この処理容器51内の圧力をある程度高くし、これによりプラズマ密度を高めることにより、粒子を高効率でイオン化することができる。この時のイオン化率は高周波電源81から供給される高周波電力により制御される。
【0104】
そして、イオンは、バイアス用高周波電源74から静電チャック66の電極66bに印加されたバイアス用の高周波電力によりウエハW面上に形成される厚さ数mm程度のイオンシースの領域に入ると、強い指向性をもってウエハW側に加速するように引き付けられてウエハWに堆積してCu膜が形成される。
【0105】
このとき、ウエハ温度を高く(65〜350℃)設定するとともに、バイアス用高周波電源74から静電チャック66の電極66bに対して印加されるバイアスパワーを調整してCuの成膜とArによるエッチングを調整して、Cuの流動性を良好にすることにより、開口が狭いトレンチやホールであっても良好な埋め込み性でCuを埋め込むことができる。具体的には、Cu成膜量(成膜レート)をT
D、プラズマ生成用のガスのイオンによるエッチング量(エッチングレート)をT
Eとすると、0≦T
E/T
D<1、さらには0<T
E/T
D<1となるようにバイアスパワーを調整することが好ましい。
【0106】
良好な埋め込み性を得る観点から、処理容器51内の圧力(プロセス圧力)は、1〜100mTorr(0.133〜13.3Pa)、さらには35〜90mTorr(4.66〜12.0Pa)が好ましく、ターゲットへの直流電力は4〜12kW、さらには6〜10kWとすることが好ましい。
【0107】
なお、トレンチやホールの開口が広い場合等には、ウエハ温度を低く(−50〜0℃)設定するとともに、処理容器51内の圧力をより低くして成膜することができる。これにより、成膜レートを高くすることができる。また、このような場合には、iPVDに限らず、通常のスパッタ、イオンプレーティング等の通常のPVDを用いることもできる。
【0108】
また、第1のCu膜成膜装置22a(22b)で引き続き積み増し層を形成する場合には、積み増し層は微細な凹部に埋め込む必要がないので、埋め込み用のCu膜成膜の際よりも成膜速度の大きい条件を採用することが好ましい。
【0109】
<第2のCu膜成膜装置>
第2のCu膜成膜装置24a(24b)としては、基本的に、
図7に示す第1のCu膜成膜装置22a(22b)と同様の装置を用いることができる。また、iPVDに限らず、通常のスパッタ、イオンプレーティング等の通常のPVDを用いることもできる。積み増し層は微細な凹部に埋め込む必要がないので、第1のCu膜成膜装置22a(22b)よりも成膜速度の大きい条件で成膜を行うことが好ましい。
【0110】
<バリア膜成膜装置>
バリア膜成膜装置12a(12b)としては、ターゲット83を使用する材料に変えるのみで
図7の成膜装置と同様の構成の成膜装置を用いてプラズマスパッタにより成膜することができる。また、プラズマスパッタに限定されず、通常のスパッタ、イオンプレーティング等の他のPVDであってもよく、CVD(Chemical Vapor Deposition)やALD(Atomic Layer Deposition)、プラズマを用いたCVDやALDで成膜することもできる。不純物を低減する観点からはPVDが好ましい。
【0111】
<Ruライナー膜成膜装置>
次に、Ruライナー膜を形成するためのRuライナー膜成膜装置14a(14b)について説明する。Ruライナー膜は熱CVDにより好適に形成することができる。
図8は、Ruライナー膜成膜装置の一例を示す断面図であり、熱CVDによりRuライナー膜を形成するものである。
【0112】
図8に示すように、このRuライナー膜成膜装置14a(14b)は、例えばアルミニウム等により筒体に形成された処理容器101を有している。処理容器101の内部には、ウエハWを載置する例えばAlN等のセラミックスからなる載置台102が配置されており、この載置台102内にはヒーター103が設けられている。このヒーター103はヒーター電源(図示せず)から給電されることにより発熱する。
【0113】
処理容器101の天壁には、Ru膜を形成するための処理ガスやパージガス等を処理容器101内にシャワー状に導入するためのシャワーヘッド104が載置台102と対向するように設けられている。シャワーヘッド104はその上部にガス導入口105を有し、その内部にガス拡散空間106が形成されており、その底面には多数のガス吐出孔107が形成されている。ガス導入口105にはガス供給配管108が接続されており、ガス供給配管108にはRu膜を形成するための処理ガスやパージガス等を供給するためのガス供給源109が接続されている。また、ガス供給配管108には、ガス流量制御器、バルブ等よりなるガス制御部110が介装されている。Ruを成膜するためのガスとしては、上述したように、好適なものとしてルテニウムカルボニル(Ru
3(CO)
12)を挙げることができる。このルテニウムカルボニルは熱分解によりRu膜を形成することができる。
【0114】
処理容器101の底部には、排気口111が設けられており、この排気口111には排気管112が接続されている。排気管112には圧力調整を行うスロットルバルブ113および真空ポンプ114が接続されており、処理容器101内が真空引き可能となっている。
【0115】
載置台102には、ウエハ搬送用の3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン116が載置台102の表面に対して突没可能に設けられ、これらウエハ支持ピン116は支持板117に固定されている。そして、ウエハ支持ピン116は、エアシリンダ等の駆動機構118によりロッド119を昇降することにより、支持板117を介して昇降される。なお、符号120はベローズである。一方、処理容器101の側壁には、ウエハ搬出入口121が形成されており、ゲートバルブGを開けた状態で第1の真空搬送室11との間でウエハWの搬入出が行われる。
【0116】
このようなRuライナー膜成膜装置14a(14b)においては、ゲートバルブGを開けて、ウエハWを載置台102上に載置した後、ゲートバルブGを閉じ、処理容器101内を真空ポンプ114により排気して処理容器101内を所定の圧力に調整しつつ、ヒーター103より載置台102を介してウエハWを所定温度に加熱した状態で、ガス供給源109からガス供給配管108およびシャワーヘッド104を介して処理容器101内へルテニウムカルボニル(Ru
3(CO)
12)ガス等の処理ガスを導入する。これにより、ウエハW上で処理ガスの反応が進行し、ウエハWの表面にRu膜が形成される。
【0117】
Ru膜の成膜には、ルテニウムカルボニル以外の他の成膜原料、例えば上述したようなルテニウムのペンタジエニル化合物をO
2ガスのような分解ガスとともに用いることができる。またRu膜をPVDで成膜することもできる。ただし、良好なステップカバレッジが得られ、かつ膜の不純物を少なくすることができることからルテニウムカルボニルを用いたCVDで成膜することが好ましい。
【0118】
<メタルキャップおよび誘電体キャップの成膜システム>
以上の成膜システム1により上記実施形態における積み増し層の形成までを行うことができるが、アニール工程およびCMP工程が終了した後のメタルキャップおよび誘電体キャップを形成する工程は、別の成膜システムを用いて成膜する。この際に用いる成膜システムとしては、
図6の成膜システムに準じたマルチチャンバタイプの成膜システムを用いることができる。ただし、必要な処理装置の数が少ない場合には、真空搬送室は一つでよい。
【0119】
メタルキャップを形成する装置としては、上記第1の方法の場合、前処理を行う前処理装置、およびMnO
2膜またはMn膜を成膜する成膜装置が必要である。また、上記第2の方法を行う場合には、さらに、Mn膜を酸化するための装置、例えばO
2ガスを用いたマイクロ波プラズマ処理装置が必要であり、上記第3の方法を行う場合には、さらに、アニール装置が必要である。
【0120】
前処理装置は、本発明の分野で通常用いられている熱処理装置やプラズマ処理装置を用いることができ、第2の方法に用いるMn膜を酸化するためのマイクロ波プラズマ処理装置や、第3の方法に用いるアニール装置についても、本発明の分野で通常用いられているものを用いることができる。
【0121】
MnO
2膜やMn膜は、上述したようにPVDやCVDもしくはALDで成膜することができるが、PVDで成膜する場合には、
図7に示すiPVDであるICPプラズマスパッタ装置や、通常のスパッタ装置、さらには、イオンプレーティング等の他のPVD装置を用いることができ、また、CVDやALDで成膜する場合には、
図8に示すような装置を用いることができる。
【0122】
また、SiCN膜のような誘電体キャップを成膜するCVD装置としても、
図8に示すような装置を用いることができる。
【0123】
また、成膜システム1から搬出した後のウエハWに対し、アニールを行うアニール装置、およびCMP研磨を行うCMP装置は、通常用いられる構成のものでよい。
【0124】
積み増し層までを形成する成膜システムと、メタルキャップおよび誘電体キャップを形成する成膜システムと、上記アニール装置およびCMP装置とで、Cu配線形成システムを構成し、制御部40と同じ機能を有する共通の制御部により一括して制御するようにすることにより、上記実施形態に示された方法を一つのレシピにより一括して制御することができる。
【0125】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
(埋め込み性評価等)
20nm幅のトレンチに対し、iPVDによりTaN下地膜を4nm、CVDによりRuライナー膜を2nmで成膜した後、以下のような条件でiPVDによりCu膜を20nm成膜することにより埋め込みを行った。その結果、20nm幅のトレンチが十分に埋め込まれていた。
【0126】
(電気特性)
i)配線抵抗
次に、
図9のようなトレンチパターンを有し、パターン幅Wが60nmおよび80nmであるウエハに対しCu配線を形成して配線抵抗を測定した。ここでは、これらウエハに対し、iPVDによりTaN下地膜を4nm、CVDによりRuライナー膜を2nmで成膜した後、iPVDによりCu膜を成膜してトレンチを埋め込み、さらにCu積み増し層を形成し、その後、アニールおよびCMPを行ってCu配線パターンを形成し、さらにその上にMnO
2膜からなるメタルキャップを2nmの厚さで形成した後、SiCN誘電体キャップを20nmの厚さで形成したサンプル(MnO
2キャップあり)と、CMPまでを同様に行った後、メタルキャップを形成せずにSiCN誘電体キャップを形成したサンプル(MnO
2キャップなし)を作成した。
【0127】
これらサンプルの配線抵抗を測定した結果を
図10に示す。
図10に示すように、パターン幅が60nm、80nmのいずれにおいても、MnO
2キャップ「あり」の場合と「なし」の場合とでほぼ同じ配線抵抗を示した。このことからMnO
2膜からなるメタルキャップを形成することによる配線抵抗への影響はほとんどなかった。このことは、MnO
2膜からなるメタルキャップを形成してもCu配線内には配線抵抗に影響するほどのMnが残留していないことを示している。
【0128】
ii)線間容量
次に、
図11のようなトレンチパターンを有し、パターン幅Wが60nmであるウエハに対しCu配線を形成して線間容量を測定した。ここでは、このようなウエハに対し、上述のような「MnO
2キャップあり」のサンプルと、「MnO
2キャップなし」のサンプルを作成した。
【0129】
これらサンプルの線間容量を測定した結果を
図12に示す。
図12に示すように、MnO
2キャップ「あり」の場合と「なし」の場合とでほぼ同じ線間容量を示し、MnO
2膜は線間容量には影響しないことが確認された。これは、MnO
2の誘電率が5.1であり、誘電体キャップのSiCNの誘電率である5程度とほぼ同じであることによる。
【0130】
iii)線間リーク電流
次に、
図13のようなトレンチパターンを有し、パターン幅Wが60nmであるウエハに対しCu配線を形成して線間リーク電流を測定した。ここでは、このようなウエハに対し、上述のような「MnO
2キャップあり」のサンプルと、「MnO
2キャップなし」のサンプルを作成した。
【0131】
これらサンプルの線間リーク電流を測定した結果を
図14に示す。
図14に示すように、MnO
2キャップ「あり」の場合と「なし」の場合とでほぼ同じ線間リーク電流を示し、MnO
2膜は線間リーク電流には影響しないことが確認された。これは、MnO
2が絶縁体であるため、絶縁膜(層間絶縁膜)上に形成されてもリーク電流には影響しないからである。
【0132】
iv)信頼性試験
次に、
図15のようなテストパターン(パターン幅100nm、ビア径80nm)を有するウエハに対しCu配線を形成して信頼性を評価した。ここでは、このようなウエハに対し、上述のような「MnO
2キャップあり」のサンプルと、「MnO
2キャップなし」のサンプルを作成した。
【0133】
信頼性試験は、250℃、25M/cm
2の条件で実施した。その結果を
図16に示す。
図16に示すように、「MnO
2キャップあり」のサンプルのほうが「MnO
2キャップなし」のサンプルよりも寿命が長く、信頼性が高いものとなった。この結果から、MnO
2キャップを形成することにより、エレクトロマイグレーション耐性が向上することが確認された。
【0134】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、成膜システムとしては、
図6のようなタイプに限らず、一つの搬送装置に全ての成膜装置が接続されているタイプであってもよい。また、
図6のようなマルチチャンバタイプのシステムではなく、バリア膜、Ruライナー膜、Cu膜、積み増し層のうち、一部のみを同一の成膜システムで形成し、残部を別個に設けた装置により大気暴露を経て成膜するようにしてもよいし、全てを別個の装置で大気暴露を経て成膜するようにしてもよい。メタルキャップおよび誘電体キャップの形成についても、一部の装置のみを同一の成膜システムで形成し、残部を別個に設けた装置により大気暴露を経て成膜するようにしてもよいし、全てを別個の装置で大気暴露を経て成膜するようにしてもよい。
【0135】
さらに、上記実施形態では、トレンチとビア(ホール)とを有するウエハに本発明の方法を適用した例を示したが、トレンチのみを有する場合でも本発明を適用できることはいうまでもない。また、シングルダマシン構造、ダブルダマシン構造、三次元実装構造等、種々の構造のデバイスにおける埋め込みに適用することができる。また、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハにはシリコンのみならず、GaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体も含まれ、さらに、半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等にも本発明を適用することができることはもちろんである。