特許第5969367号(P5969367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969367
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】レターデーション上昇剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/10 20060101AFI20160804BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20160804BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20160804BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 5/1545 20060101ALI20160804BHJP
   C07D 311/30 20060101ALN20160804BHJP
   C07D 311/92 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   C08L1/10
   G02B5/30
   G02F1/13363
   G02F1/1335 510
   C08K5/1545
   !C07D311/30
   !C07D311/92
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-262002(P2012-262002)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-105327(P2014-105327A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】原田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 昌希
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−111914(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/065384(WO,A1)
【文献】 Zhurnal Prikladnoi Khimii,1988年,61(7),p.1659-1660
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/10
C08K 5/1545
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも一種からなるレターデーション上昇剤。
(式中、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルカノイルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基を示し、R〜Rで示される基のうち隣り合う2個の基が連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環または6員環を形成してもよい。R〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルカノイルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基を示し、R〜R10で示される基のうち隣り合う2個の基が連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環または6員環を形成してもよい。但し、R〜R10のすべてが水素原子となることはない。)
【請求項2】
一般式(1)のR〜R10の少なくともひとつが、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基である請求項1記載のレターデーション上昇剤。
【請求項3】
一般式(1)のR〜R10の少なくともひとつが、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基である請求項1記載のレターデーション上昇剤。
【請求項4】
セルロース系樹脂100質量部に対し、請求項1〜3の何れか1項に記載のレターデーション上昇剤を0.01〜30質量部配合してなるセルロース系樹脂組成物から得られるフィルムであって、光学補償用途であることを特徴とするフィルム。
【請求項5】
前記セルロース系樹脂がセルロースアシレートである請求項4記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに使用されるレターデーション上昇剤、及びそれを含有するセルロース系樹脂組成物、該セルロース系樹脂組成物から得られるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像や文字を鮮明に表示できる液晶表示装置を備えたノートパソコンやテレビ等の情報機器が次々と市場に供給されている。これらの情報機器に対する消費者の要望として、高機能性付与の他に、住環境の多様化に応じられるような省スペース化等があり、これらのニーズに応える上で、情報機器の薄型化や軽量化、大画面化に伴う高視野角や高コントラストなどが求められている。
【0003】
情報機器の薄型化は、情報機器に備えられている液晶表示装置の奥行きを薄くする事に依存する。液晶表示装置は、概略として2枚のガラス基板の間に電極からなる層と液晶物質からなる層とを有する積層構造体から構成される。前記ガラス基板は液晶層とは反対側の面に偏光子が添付されており、この偏光子としては、通常、ポリビニルアルコールからなる偏光子の両面に保護フィルムを貼付したものが使用されている。前記偏光子保護フィルムは、一般的に透明性が高く、適度な強度を有しており、かつポリビニルアルコールとの接着性に優れるものとしてセルロースエステル系樹脂フィルムが使用されている。
【0004】
一方、液晶表示装置の高視野角化に寄与するために、セルロースエステル系樹脂フィルムに光学補償能を付与することが求められている。しかし、セルロースエステル系樹脂フィルムはそのままでは光学補償フィルムに必須なレターデーション(複屈折性)が十分ではないため、セルロースエステル系樹脂フィルムにレターデーションを付与するさまざまな検討がなされてきている。近年、液晶テレビのさらなる視野角拡大や薄膜化のために、より大きなレターデーションが求められている。
【0005】
樹脂フィルムのレターデーションを増加させるため、レターデーション上昇剤を添加する方法が知られているが、これまでのレターデーション上昇剤では多量添加が必要となりブリードアウトなどの問題が発生するため、実用化が困難であった。また、セルロースの総アシル基置換度を低下させる方法なども提案されているが、吸湿性が増加したりするなどの問題があって、やはり実用化は難しかった。
【0006】
例えば特許文献1には、フェノール性水酸基を有する多環芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用してなるセルロースエステルフィルムが提案されているが、相溶性が不十分であるため光学特性向上効果が不十分であった。また特許文献2、3には特定の芳香族化合物からなるレターデーション向上剤が記載され、2−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンの記載もあるが、これのレターデーション上昇効果は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−222433号公報
【特許文献2】特許第4605908号公報
【特許文献3】特開2011−58002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、相溶性に優れ、ブリードアウト等を生じることなく、高いレターデーション値をフィルムに付与することができるレターデーション上昇剤を提供すること、また該レターデーション上昇剤を含有するセルロースエステル系樹脂組成物を提供すること、また該セルロース系樹脂組成物から得られる、優れた光学特性を有するフィルムを提供することにある。
【0009】
なお、本発明において優れた光学特性を有するフィルムとは、大きなレターデーションが付与されたフィルムを意味する。このレターデーションは、フィルムの厚み方向のレターデーション値(Rth)によって把握することが可能である。
Rthは下記式で定義される値である。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxはフィルム面内の屈折率が最も大きい方向の屈折率、nyは前記屈折率が最も大きい方向に直角な方向のフィルム面内の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。]
【0010】
上記レターデーション値Rthは、例えば、KOBRA−WR(王子計測機器(株)製)やRETS−100(大塚電子(株)製)などの自動複屈折率計を用いて測定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、優れたレターデーション上昇効果を有する化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明のレターデーション上昇剤は、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも一種からなることを特徴とするものである。
(式中、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルカノイルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基を示し、R〜Rで示される基のうち隣り合う2個の基が連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環または6員環を形成してもよい。R〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルカノイルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基を示し、R〜R10で示される基のうち隣り合う2個の基が連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環または6員環を形成してもよい。但し、R〜R10のすべてが水素原子となることはない。)
【0013】
本発明のレターデーション上昇剤は、上記一般式(1)のR〜R10の少なくともひとつが、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基であることが好ましい。
【0014】
本発明のレターデーション上昇剤は、上記一般式(1)のR〜R10の少なくともひとつが、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基であることが好ましい。
【0015】
本発明のフィルムは、セルロース系樹脂100質量部に対し、上記レターデーション上昇剤を0.01〜30質量部配合してなるセルロース系樹脂組成物から得られるフィルムであって、光学補償用途であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明のフィルムは、上記セルロース系樹脂がセルロースアシレートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、相溶性に優れ、ブリードアウト等を生じることなく、高いレターデーション値をフィルムに付与することができるレターデーション上昇剤を提供することができる。また優れた光学特性を有するフィルムを得られるセルロース系樹脂組成物を提供することができる。それにより、光学特性に優れたフィルを提供することができる。また、本発明のフィルムは、光学補償フィルム、とりわけVA液晶用の位相差フィルムなどに好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明について詳述する。
【0021】
本発明のレターデーション上昇剤は、下記一般式(1)で表される化合物である。
(式中、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルカノイルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基を示し、R〜Rで示される基のうち隣り合う2個の基が連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環または6員環を形成してもよい。R〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルカノイルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基を示し、R〜R10で示される基のうち隣り合う2個の基が連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環または6員環を形成してもよい。但し、R〜R10のすべてが水素原子となることはない。)
【0022】
一般式(1)において、R〜Rがとりうるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0023】
また、一般式(1)において、R1〜Rがとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−アミル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、1,3−ジメチルブチル、1−イソプロピルプロピル、1,2−ジメチルブチル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、1,4−ジメチルペンチル、tert−ヘプチル、2−メチル−1−イソプロピルプロピル、1−エチル−3−メチルブチル、n−オクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、2−メチルヘキシル、2−プロピルヘキシル、n−ノニル、イソノニル、n−デシル、イソデシル、n−ウンデシル、イソウンデシル、n−ドデシル、イソドデシル、n−トリデシル、イソトリデシル、n−テトラデシル、イソテトラデシル、n−ペンタデシル、イソペンタデシル、n−ヘキサデシル、イソヘキサデシル、n−ヘプタデシル、イソヘプタデシル、n−オクタデシル、イソオクタデシル、n−ノナデシル、イソノナデシル、n−イコシル、イソイコシル等が挙げられる。なお、置換基としては、下記のものが挙げられる。
【0024】
また、一般式(1)において、R〜Rがとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基の例としては、上記アルキル基に対応したものが挙げられ、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、1,2−ジメチル−プロポキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1,3−ジメチルブトキシ、1−イソプロピルプロポキシ等が挙げられる。
【0025】
また、一般式(1)において、R1〜Rがとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセン−1−イル、フェナントレン−1−イル等が挙げられる。
【0026】
また、一般式(1)において、R〜Rがとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基の例としては、上記アリール基に対応したものが挙げられ、具体的には、フェノキシ、ナフトキシ等が挙げられる。
【0027】
また、一般式(1)において、R1〜Rがとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基の例としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、スチリル、シンナミル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル等が挙げられる。
【0028】
また、一般式(1)において、R1〜Rがとりうる置換基を有してもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、4−メチルシクロヘキシル等が挙げられる。
【0029】
また、一般式(1)において、R1〜Rがとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルカノイルオキシ基の例としては、前記アルキル基に対応したアルカノイルオキシ基が挙げられる。
【0030】
また、一般式(1)において、R1〜Rがとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基の例としては、前記アルキル基に対応したアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0031】
また、一般式(1)において、R〜Rで示される基のうち隣り合う2個の基は連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環または6員環を形成してもよい。
5員環の例としては、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チオフェン環、フラン環、ピロール環等が挙げられる。6員環の例としては、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピラジン環、ピロン環、ピロリジン環等が挙げられる。5員環および6員環は置換基を有していてもよい。
【0032】
一般式(1)において、R〜R10がとりうるハロゲン原子としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0033】
また、一般式(1)において、R〜R10がとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0034】
また、一般式(1)において、R〜R10がとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基の例としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0035】
また、一般式(1)において、R〜R10がとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基の例としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0036】
また、一般式(1)において、R〜R10がとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基の例としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0037】
また、一般式(1)において、R〜R10がとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基の例としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0038】
また、一般式(1)において、R〜R10がとりうる置換基を有してもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基の例としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0039】
また、一般式(1)において、R〜R10がとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルカノイルオキシ基の例としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0040】
また、一般式(1)において、R〜R10がとりうる置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基の例としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0041】
また、一般式(1)において、R〜R10で示される基のうち隣り合う2個の基は連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環または6員環を形成してもよい。
5員環および6員環の例としては、上記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0042】
上記アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ならびに、R〜RおよびR〜R10が形成しうる5員環および6員環が有することのできる置換基の例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、tert−アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、tert−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、tert−アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、tert−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、tert−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、tert−アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、tert−ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、tert−オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられる。これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は、塩を形成していてもよい。尚、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数5〜12のシクロアルキル基が、炭素原子を含む置換基を有する場合は、該置換基に含まれる炭素原子も含めた炭素原子数がそれぞれ規定された範囲内となる。
【0043】
〜Rは、レターデーション上昇性とセルロース系樹脂への相溶性の点から、水素原子、炭素原子数1〜20アルキル基、または炭素原子数1〜20のアルコキシ基が好ましく、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、または炭素原子数1〜8のアルコキシ基がより好ましく、水素原子または炭素原子数1〜8のアルコキシ基が更に好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0044】
〜R10は、レターデーション上昇性とセルロース系樹脂への相溶性の点から、水素原子、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数1〜20のアルコキシ基が好ましい。また、R〜R10のいずれかひとつが炭素原子数1〜20のアルコキシ基または炭素原子数6〜20のアリール基であることがより好ましく、R〜R10のいずれかひとつが炭素素原子数6〜20のアリール基であることが更に好ましく、Rが炭素原子数6〜20のアリール基であることが最も好ましい。
【0045】
上記一般式(1)で表される、本発明のレターデーション上昇剤の具体例としては、下記の化合物No.1〜No.25が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
化合物No.1 化合物No.2

化合物No.3 化合物No.4

化合物No.5 化合物No.6

化合物No.7 化合物No.8

化合物No.9 化合物No.10
化合物No.11 化合物No.12
化合物No.13 化合物No.14
化合物No.15 化合物No.16
化合物No.17 化合物No.18
化合物No.19 化合物No.20
化合物No.21 化合物No.22
化合物No.23 化合物No.24
化合物No.25
【0046】
次に本発明のセルロース系樹脂組成物について説明する。
まず、セルロース系樹脂について説明する。
本発明に用いられるセルロース系樹脂は、セルロース系樹脂であればいずれであってもよいが、セルロースの脂肪酸エステル(セルロースアシレート)であることが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルであることがより好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。セルロースの低級脂肪酸エステルとしては、例えば、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートや、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0047】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、セルロース系樹脂100質量部に対して、前記一般式(1)で表される化合物の少なくとも一種からなるレターデーション上昇剤を0.01〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部配合してなることを特徴とする。
【0048】
本発明のセルロース系樹脂組成物には、可塑剤を任意に使用することができる。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレートなどのフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペートなどのアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのホスフェート系可塑剤;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどと、二塩基酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などとを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどと、一塩基酸として、酢酸、安息香酸、p−第三ブチル安息香酸などを、用いて得られる多価アルコールエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤などが挙げられる。
【0049】
また、本発明のセルロースエステル系樹脂組成物には、さらに各種の添加剤、例えば、リン系、フェノール系または硫黄系抗酸化剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などを配合することもできる。
【0050】
上記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェニル)・エチルホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4’−n―ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)]・1,6−ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイトなどが挙げられる。
【0051】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン]、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
【0052】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステルなどのジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルチオプロピオネート)などのポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などが挙げられる。
【0053】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−第三ブチル−4’−(2−メタクリロイルオキシエトキシエトキシ)ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などの2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−C7〜9混合アルコキシカルボニルエチルフェニル)トリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステルなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリドなどの置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどのシアノアクリレート類などが挙げられる。
【0054】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどが挙げられる。
【0055】
その他、本発明のセルロース系樹脂組成物には、さらに必要に応じて、その他の添加剤、例えば、充填剤、着色剤、架橋剤、帯電防止剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性化剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤等を配合することができる。
【0056】
次に、本発明のセルロース系樹脂組成物からフィルムを製造する方法について説明する。
該フィルムの製造は、セルロース系樹脂組成物を溶剤に溶解させたドープ液を塗布、乾燥して行われる。ドープ液には必要に応じて各種添加剤を混合することができる。ドープ液中のセルロース系樹脂の濃度は、濃い方が支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロース系樹脂の濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これ等を両立する濃度としては、10〜30質量%が好ましく、更に好ましくは15〜25質量%である。
【0057】
本発明に係るドープ液の調製に用いる溶剤は、1種単独でもよく、2種以上の併用でもよいが、セルロース系樹脂の良溶剤と貧溶剤とを混合して用いることが生産効率の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が30〜2質量%である。本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤については、使用するセルロース系樹脂を単独で溶解するものを良溶剤、単独では膨潤するのみかあるいは溶解し得ないものを貧溶剤と定義する。そのため、セルロース系樹脂の平均酢化度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えば、アセトンは、平均酢化度55%のセルロース系樹脂では良溶剤になり、平均酢化度60%のセルロース系樹脂では貧溶剤となってしまう。このように、良溶剤、貧溶剤はすべての場合に一義的に決まるものではない。本発明において好ましいセルロース系樹脂であるセルローストリアセテートの場合には、良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類が挙げられ、また、セルロースアセテートプロピオネートの場合にはメチレンクロライド、アセトン、酢酸メチル等が挙げられる。一方、これらの場合、貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0058】
上記ドープ液を調製するときのセルロース系樹脂の溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止することができるため、好ましい。また、セルロース系樹脂を貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。さらに、公知の冷却溶解法を用いてもよい。冷却溶解法を用いる場合には、良溶剤として酢酸メチル、アセトンを用いることができる。加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は、外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易であるため、好ましい。
【0059】
溶剤を添加した後の加熱温度は、使用溶剤の常圧での沸点以上で、かつ溶剤が沸騰しない範囲の温度が、セルロース系樹脂の溶解度の観点から好ましい。加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃が更に好ましい。また、圧力は、設定温度で溶剤が沸騰しないように調整する。加熱後は、得られたセルロース系樹脂溶液を濾紙等の適当な濾材を用いて濾過する。濾材としては、不要物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾材の目詰まりが発生しやすいという問題点が生じる。このため、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの範囲の濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材が更に好ましい。濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、例えば、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材やステンレス等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく、好ましい。
【0060】
ドープ液の濾過は通常の方法で行うことができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾材前後の差圧(以下、濾圧ということがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい濾過の温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃が更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6×10Pa以下であることが好ましく、1.2×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることが更に好ましい。
【0061】
フィルムの膜厚は、薄い方が液晶ディスプレイの薄型化が容易になるため好ましいが、薄過ぎると、透湿度が増大し、引き裂き強度等が不足する。これ等を両立するセルロース系樹脂フィルムの膜厚としては、10〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【実施例】
【0062】
<実施例1〜6、比較例1〜6>
セルローストリアセテート(酢化度61.5%、重合度260)を100質量部及び下記の表1記載の量のレターデーション上昇剤を、ジクロロメタン400質量部とメチルアルコール100質量部とからなる混合溶剤に撹拌しながら均一に溶解させ、各種ドープ液を調製した。次いで、得られたドープ液をガラス板上に膜厚が80μmになるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、40℃で1時間乾燥させ、さらに80℃で1時間乾燥させた。
【0063】
<耐ブリード性の評価方法>
得られたフィルムを30mm×40mmの大きさに切り取り、温度85℃、相対湿度90%の恒温恒湿中に120時間放置した。その後フィルム表面を目視で観察し、ブリードの有無を以下の評価基準にて確認した。
○:ブリード物が観察されなかった。
×:ブリード物が観察された。
【0064】
<レターデーション測定方法>
得られたフィルムを50mm×50mmの大きさに切り取り、25℃60%RHで3時間以上調湿した。その後、下記式に従い自動複屈折率計RETS−100(大塚電子(株)製)を用いて、25℃60%RH環境下、波長590nmにおける厚み方向のレターデーション(Rth)を測定した。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中,nxはフィルム面内の屈折率が最も大きい方向の屈折率、nyは前記屈折率が最も大きい方向に直角な方向でのフィルム面内の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。]
得られた評価結果を下記表1に示す。
【0065】
【表1】
*1:レターデーション上昇剤無添加
*2:トリフェニルホスフェート
*3:トリアジン系レターデーション上昇剤
*4:2−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
【0066】
実施例1〜6から明らかなように、本発明のレターデーション上昇剤を使用したいずれの実施例も相溶性に優れていた。また、本発明のレターデーション上昇剤を使用したいずれの実施例も、汎用改質剤であるトリフェニルホスフェートや、トリアジン系のレターデーション上昇剤である比較化合物−1を使用した比較例、更には比較化合物−2を使用した比較例と比較してレターデーション(Rth)の値が大きく、優れた光学特性を示した。
また、比較例4から明らかなように、比較化合物−1をセルロース系樹脂100質量部に対して5質量部配合した場合にはブリードが発生した。それに対して、本発明にかかるレターデーション上昇剤を使用した実施例においては、ブリードは生じなかった。