(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に係る放射線撮影システムについて、好適な実施形態を、
図1〜
図17を参照しながら以下詳細に説明する。
【0040】
[本実施形態の構成]
本実施形態に係る医療システム(放射線撮影システム、医療画像放送システム)10は、
図1に示すように、例えば、医療機関の手術室12に適用される。なお、後述するように、本実施形態に係る医療システム10は、手術室12以外にも適用可能であるが、ここでは、一例として、手術室12に適用した場合について説明する。
【0041】
手術室12において、手術台14には患者(被写体、被検体)16が横臥し、該患者16に対して手術医である医師18が手術等の処置を行っている。手術室12には、患者16に放射線20を照射する放射線出力装置22が設けられている。患者16と手術台14との間には、バッテリ駆動の電子カセッテ等の放射線撮影装置24が挿入されている。放射線撮影装置24は、患者16を透過した放射線20を放射線画像に変換する。
【0042】
また、手術室12には、医師18が手術に使用する各種器具を載置する器具台26や、放射線撮影装置24を装填して充電処理を行うクレードル28も配置されている。
【0043】
さらに、手術室12には、患者16の内部の所望の部位に超音波を照射し、該部位からの反射波を超音波画像に変換する超音波診断装置(画像撮影装置)30も配置されている。また、手術室12には、患者16の内部にファイバスコープを挿入することによって患者16の内部の光学画像を撮影し、さらには、必要に応じて患者16の内部で所定の処置を行う内視鏡装置(画像撮影装置)32も配置されている。
【0044】
さらにまた、手術室12には、該手術室12全体又は一部を動画像(カメラ画像)として撮影するカメラ(画像撮影装置)34や、各種の画像(例えば、放射線画像、超音波画像、光学画像、カメラ画像)を表示する大型の表示装置36も設けられている。
【0045】
この場合、カメラ34は、天井から延びる多関節アーム40に連結された状態で支持され、放射線出力装置22は、天井から延びる多関節アーム42に連結された状態で支持され、表示装置36は、天井から延びる多関節アーム44に連結された状態で支持されている。なお、
図1では、手術室12内に1台のカメラ34と1台の表示装置36とを配置した場合を図示しているが、複数のカメラ34及び表示装置36を配置してもよいことは勿論である。
【0046】
患者16に対して手術を行う医師18の近傍には載置台46が配置され、該載置台46上に、タブレットコンピュータ(タブレットPC)、ハンドヘルドコンピュータ、又は、携帯情報端末(PDA)等の携帯機器48が載置されている。なお、携帯機器48は、患者16から僅かに離して配置された(放射線撮影装置24と比較して患者16から離れて配置された)載置台46にまで持ち運んで、医師18が手元で操作可能な携帯型の装置であり、
図1では、一例として、タブレットPCである場合を図示している。
【0047】
手術室12に隣接する準備室50には、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御する制御装置としてのコンソール52が配置され、放射線技師54(以下、技師54ともいう。)は、医師18の指示を受けてコンソール52を操作する。なお、本実施形態において、コンソール52は、例えば、
図1に示すように、携帯機器48と比較して、患者16よりも離れた場所に配置された状態で使用される。また、以下の説明では、医師18の指示を受けて超音波診断装置30を操作する超音波技師や、医師18の指示を受けて内視鏡装置32を操作する内視鏡技師も、技師54として説明する場合がある。
【0048】
ここで、放射線撮影装置24は、アンテナ56を介して携帯機器48との間で無線通信による信号の送受信が可能であると共に、コンソール52との間で光ファイバケーブル58を介した有線通信により信号の送受信を行う。携帯機器48は、アンテナ60を介して他の装置との間で無線通信による信号の送受信が可能である。超音波診断装置30は、アンテナ62を介して携帯機器48との間で無線通信による信号の送受信が可能であり、内視鏡装置32は、アンテナ64を介して携帯機器48との間で無線通信による信号の送受信が可能である。カメラ34は、アンテナ66を介して携帯機器48との間で無線通信による信号の送受信が可能である。コンソール52は、アンテナ68を介して携帯機器48との間で無線通信による信号の送受信が可能である。
【0049】
なお、
図1では、手術室12内の各装置間で無線通信を行う場合を説明しているが、具体的には、短距離無線通信や無線PAN(Personal Area Network)等の近距離無線通信、無線LAN(Local Area Network)であればよい。あるいは、赤外線通信で信号の送受信を行ってもよい。
【0050】
図2に示すように、放射線撮影装置24において、アンテナ56は、光ファイバケーブル58による信号の送受信に対するバックアップとしてのバックアップ通信部78に含まれる。放射線撮影装置24は、バッテリ駆動の電子カセッテであり、アンテナ56を含むバックアップ通信部78、放射線変換パネル80、カセッテ制御部82、フレームメモリ84、画像記憶部86、情報記憶部88、紐付け処理部90、バッテリ92、及び、通信部(第1の通信部)94を有する。
【0051】
放射線変換パネル80は、放射線出力装置22から患者16に放射線20が照射された場合に、該患者16を透過した放射線20を検出して放射線画像に応じた電気信号に変換する。このような放射線変換パネル80には、直接変換型の放射線変換パネルと、間接変換型の放射線変換パネルとがある。
【0052】
直接変換型の放射線変換パネルは、アモルファスセレン(a−Se)等からなる半導体を含み構成された放射線変換層を用いて放射線20を電気信号に直接変換する。間接変換型の放射線変換パネルは、CsIの柱状結晶からなるシンチレータ又はGOS(Gd
2O
2S)の粒状のシンチレータを用いて放射線20を蛍光に一旦変換し、該蛍光をフォトダイオード等の光電変換素子で電気信号として検出する。なお、放射線変換パネル80は、放射線20を検出する複数の画素がマトリックス状に配列された構造となっており、放射線画像に応じた電気信号は、電荷として各画素に一旦蓄積される。
【0053】
従って、医療システム10では、放射線出力装置22から患者16への放射線20の照射と、患者16を透過した放射線20の放射線変換パネル80における放射線画像への変換とを繰り返し行うことにより、該放射線画像を連続的に取得する透視撮影(放射線撮影)を行うことができる。このような透視撮影が行われる場合、カセッテ制御部82は、1回の放射線撮影(1回の放射線20の照射)毎に、放射線変換パネル80を制御して、マトリックス状に配列された各画素の電荷をライン毎に順次読み出し、読み出した電荷に応じた電気信号(デジタル信号)を1フレームの放射線画像としてフレームメモリ84に一旦記憶させる。従って、透視撮影の場合、フレームメモリ84には、1フレーム分の放射線画像が撮影毎に順次記憶される。
【0054】
情報記憶部88は、放射線撮影装置24を特定するためのカセッテID情報、患者16に対する透視撮影を要求するためのオーダ情報(被検体情報)、及び、患者16に放射線20を照射させるための撮影条件を記憶する。
【0055】
なお、オーダ情報とは、後述する放射線科情報システム(RIS)112又は医事情報システム(HIS)114において、医師18により作成されるものである。具体的に、オーダ情報には、患者16の氏名、年齢、性別等、患者16を特定するための被写体情報に加えて、透視撮影に使用する放射線出力装置22及び放射線撮影装置24の情報や、患者16の撮影部位及び撮影方法等が含まれる。また、撮影条件とは、例えば、放射線源106の管電圧や管電流、放射線20の照射時間等、患者16の撮影部位に対して放射線20を照射させるために必要な各種の条件である。
【0056】
紐付け処理部90は、フレームメモリ84に一旦記憶された少なくとも1フレーム分の放射線画像(デジタルデータの動画像)と、情報記憶部88に記憶されたカセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件とを紐付けし、紐付けした情報(動画像、カセッテID情報、オーダ情報、撮影条件)を画像記憶部86に記憶する。なお、動画像の容量は大きいため、画像記憶部86は、記憶容量が比較的大きいハードディスクドライブ(HDD)やメモリカード等の補助記憶装置であることが望ましい。
【0057】
通信部94は、画像記憶部86に記憶された紐付け後の情報(動画像、カセッテID情報、オーダ情報、撮影条件)を、光ファイバケーブル58を介して、コンソール52に送信する。また、通信部94は、コンソール52からの情報(例えば、オーダ情報、撮影条件)や制御信号(放射線撮影装置24を制御するためのコマンド)を、光ファイバケーブル58を介して受信する。
【0058】
バックアップ通信部78は、アンテナ56、デジタル・ビジュアル・インターフェース(DVI)96、信号処理部(画像処理部)98及び通信部(第2の通信部)100を有する。
【0059】
信号処理部98は、画像記憶部86に記憶された動画像(デジタルデータ)をテレビ放送用の信号(例えば、アナログテレビ放送用の信号)に変換する処理を行う。また、信号処理部98は、画像記憶部86に記憶された動画像に対して所定の間引き処理を行うことにより、該動画像よりも情報量が少ない(フレームレートを低下させた)間引き画像を生成することも可能である。
【0060】
DVI96は、図示しないディスプレイ等の表示装置に接続されて、信号処理部98で変換されたテレビ放送用の信号(アナログテレビ放送用に画像処理された動画像)を該表示装置に出力するための映像出力インターフェースである。
【0061】
通信部100は、アンテナ56を介して無線通信により携帯機器48にテレビ放送用の信号又は間引き画像を送信する。また、画像記憶部86には、動画像にカセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件が紐付けされているので、通信部100は、前記テレビ放送用の動画像又は前記間引き画像に併せて、紐付けされた各種の情報(カセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件)も携帯機器48に送信する。
【0062】
なお、通信部100は、通信部94に対するバックアップとして機能する。そのため、通信部94と光ファイバケーブル58を介したコンソール52との間での信号の送受信に異常が発生している場合には、画像記憶部86に記憶されている正規の放射線画像としての動画像と、紐付けされた各種の情報とを、無線通信により携帯機器48に送信してもよい。あるいは、放射線撮影装置24では、外部への正規の放射線画像等の送信を行わず、該正規の放射線画像と各種の情報とを画像記憶部86に一旦記憶しておき、例えば、手術の終了後に、図示しないUSB(Universal Serial Bus)等のインターフェースを用いて、画像記憶部86からコントローラ102の記憶部104又はコンソール52に、正規の放射線画像及び紐付けされた各種の情報を転送してもよい。
【0063】
バッテリ92は、放射線撮影装置24の各部に対して電力を供給する。
【0064】
放射線撮影装置24とコンソール52との間には、コントローラ102が介挿されている。すなわち、光ファイバケーブル58は、放射線撮影装置24とコントローラ102とを有線接続する光ファイバケーブル58aと、コントローラ102とコンソール52とを有線接続する光ファイバケーブル58bとから構成される。
【0065】
コントローラ102は、コンソール52からの情報(例えば、オーダ情報、撮影条件)やコマンドを通信部94に送信すると共に、紐付けされた各情報(正規の放射線画像としての動画像、カセッテID情報、オーダ情報、撮影条件)を記憶部104に記憶する。なお、記憶部104は、前述した画像記憶部86と同様に、メモリカード等の補助記憶装置であることが望ましい。また、記憶部104に記憶される紐付け後の各情報は、光ファイバケーブル58bを介してコンソール52に送信される。
【0066】
放射線出力装置22は、放射線20を出力する放射線源106と、コンソール52からの制御信号(コマンド)に従って放射線源106を駆動制御する制御部108とを有する。
【0067】
携帯機器48は、放射線撮影装置24で取得された放射線画像(正規の放射線画像、間引き画像又はテレビ放送用の画像)と紐付けされた各種の情報を受信可能であると共に、コンソール52との間で無線通信による信号の送受信が可能である。
【0068】
また、患者16内部の超音波画像を撮影するため、超音波診断装置30には、患者16の被写体情報や撮影部位等の情報が予め登録されている。そのため、携帯機器48は、超音波診断装置30から無線通信により、超音波画像と該超音波画像に紐付けされた患者16に関わる前記の情報とを受信する。
【0069】
さらに、患者16内部の光学画像を撮影するため、内視鏡装置32にも、患者16の被写体情報や撮影部位等の情報が予め登録されている。そのため、携帯機器48は、内視鏡装置32から無線通信により、光学画像と該光学画像に紐付けされた患者16に関わる前記の情報とを受信する。
【0070】
さらにまた、携帯機器48は、カメラ34からも無線通信により手術室12等のカメラ画像を受信する。
【0071】
従って、携帯機器48は、カメラ画像と、超音波画像及び該超音波画像に紐付けされている患者16に関わる情報と、光学画像及び該光学画像に紐付けされている患者16に関わる情報と、放射線画像及び該放射線画像に紐付けされている各種の情報とをコンソール52に送信することも可能である。そのため、コンソール52は、無線通信により受信した各動画像及び紐付けされた各種の情報や、光ファイバケーブル58を介して受信した放射線画像及び該放射線画像に紐付けされた各種の情報を表示装置36に表示させることが可能となる。
【0072】
また、コンソール52は、医療機関のLAN110を介してRIS112、HIS114、及び、医用画像情報システム(PACS)116と接続されている。RIS112は、医療機関内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する。HIS114は、病院内の医事情報を統括的に管理する。PACS116は、医療システム10における各種の医療機器(放射線出力装置22及び放射線撮影装置24、超音波診断装置30、内視鏡装置32)やカメラ34で取得された各情報(前述の動画像や紐付けされた各種の情報等)を、コンソール52からLAN110を介して受信し、一元的に管理することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、モダリティとしての放射線撮影装置24、超音波診断装置30及び内視鏡装置32は、いずれも、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠した装置であり、放射線撮影装置24、超音波診断装置30及び内視鏡装置32は、生成した画像データ(放射線画像、超音波画像、光学画像)に、DICOM規格で規定された付帯情報や、紐付けされる患者16に関わる情報を付加したものを画像情報として出力する。従って、DICOMサーバとしてのコンソール52は、放射線撮影装置24、超音波診断装置30及び内視鏡装置32から取得したDICOM規格の画像情報を、LAN110を介してPACS116に送信する。
【0074】
一方、カメラ34は、DICOM規格に未対応の場合もあるため、コンソール52は、カメラ34から取得した動画像をDICOM変換し、変換後の動画像(DICOM規格の画像情報)を、LAN110を介してPACS116に送信する。また、後述するように、携帯機器48とコンソール52とは、略同じ構成を有しているため、携帯機器48をDICOMサーバとして機能させることも可能である。なお、DICOM規格やDICOM変換については、公知であるため、本明細書では、その詳細な説明を省略する。
【0075】
携帯機器48は、医療機関内の所定領域(例えば、待合室、会議室、手術室12、準備室50)に向けて、後述するように、カメラ画像、超音波画像、光学画像、放射線画像等の動画像や、これらの動画像に紐付けされた各種の情報を、地上デジタルテレビ放送(日本国では、エリアワンセグメント放送)によりリアルタイムで配信することも可能である。
【0076】
ここで、医師18及び技師54以外の他の医療関係者(例えば、他の医師、研修医、医学生)が携帯電話機やタブレットPC等の携帯機器120aを所持すると共に、患者16の家族が携帯電話機やタブレットPC等の携帯機器120bを所持しており、各携帯機器120a、120bが地上デジタルテレビ放送を受信可能なアンテナ122a、122bをそれぞれ具備する場合、携帯機器120a、120bが前記所定領域内にあれば、前記動画像及び前記各種の情報を受信可能である。また、前記所定領域内に地上デジタルテレビ放送によりリアルタイムで配信された画像を表示可能なディスプレイ等の表示装置124が配置されている場合、アンテナ126を介して前記動画像及び前記各種の情報を受信可能である。
【0077】
図3は、医師18が操作する携帯機器48のブロック図であり、
図4は、コンソール52のブロック図である。携帯機器48とコンソール52とは、一部の構成要素を除き、略同じ構成要素を有する。
【0078】
携帯機器48は、前述したアンテナ60に加え、通信部(画像放送部)130、制御部132、オーダ情報記憶部134、撮影条件記憶部136、切替処理部138、送受信設定部140、暗号化処理部142、画像処理部144、画像メモリ146、表示制御部148、タッチパネル150、情報管理部152、操作制御部154及びバッテリ156を有する。また、タッチパネル150は、表示部160と操作部162とから構成される。
【0079】
一方、コンソール52は、前述したアンテナ68に加え、通信部170、172、制御部174、オーダ情報記憶部176、撮影条件記憶部178、切替処理部180、送受信設定部182、暗号化処理部184、画像処理部186、画像メモリ188、表示制御部190、表示部192、操作部194、曝射スイッチ196、情報管理部198及び操作制御部199を有する。
【0080】
先ず、携帯機器48について説明すると、通信部130は、アンテナ60を介して、手術室12内の放射線撮影装置24の通信部100、超音波診断装置30、内視鏡装置32、カメラ34及びコンソール52の通信部170との間で無線通信による信号の送受信を行う。また、通信部130は、アンテナ60を介して、医療機関内の所定領域に地上デジタルテレビ放送を行って動画像及び紐付けされた各種の情報をリアルタイムに配信する。
【0081】
制御部132は、携帯機器48内の各部を制御する。
【0082】
オーダ情報記憶部134は、患者16のオーダ情報を記憶し、撮影条件記憶部136は、患者16に対して放射線20を照射するための撮影条件を記憶する。
【0083】
切替処理部138は、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御する装置(マスタ)を、携帯機器48又はコンソール52に切り替える。すなわち、携帯機器48及びコンソール52は、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御するためのマスタ(主装置)及びスレーブ(従装置)の関係にあり、切替処理部138は、携帯機器48又はコンソール52をマスタ又はスレーブに切り替える処理を行う。なお、マスタは、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24に制御信号(コマンド)を送信して直接制御するか、あるいは、スレーブを経由して(スレーブを中継器として機能させて)、コマンドを送信することにより放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御する。
【0084】
送受信設定部140は、透視撮影の開始前に、携帯機器48の通信部130と、放射線撮影装置24の通信部100、コンソール52の通信部170、カメラ34、超音波診断装置30及び内視鏡装置32との間で多元接続による無線通信を行うためのチャンネルを予め設定する。また、送受信設定部140は、携帯機器48から放射線出力装置22、放射線撮影装置24、超音波診断装置30、内視鏡装置32及びカメラ34に送信されるコマンドの内容を予め選定する。これらの設定内容や選定内容は、情報管理部152に記憶(管理)される。
【0085】
なお、多元接続としては、例えば、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、周波数分割多元接続(FDMA)がある。送受信設定部140は、所定のチャンネル(CDMA方式:所定の符号、TDMA方式:所定のタイムスロット、FDMA方式:所定の周波数範囲)を、放射線出力装置22(中継器としてのコンソール52)、放射線撮影装置24、超音波診断装置30、内視鏡装置32及びカメラ34に予め割り当てると共に、これらの機器に送信するコマンドを予め選定する。
【0086】
暗号化処理部142は、通信部130から所定領域に向けて、地上デジタルテレビ放送がリアルタイムで行われる場合に、放射線画像に紐付けされるカセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件や、超音波画像及び光学画像に紐付けされる患者16に関わる情報のような、個人情報又は該個人情報とみなされる情報に対して、公開鍵又は秘密鍵(暗号キー)による暗号化処理を行う。
【0087】
従って、前記所定領域内にある携帯機器120a、120bや表示装置124は、暗号化された各種の情報を閲覧したい場合(各種の情報を復号化したい場合)には、公開鍵又は秘密鍵(暗号キー)を予め持っておく(事前登録する)必要がある。携帯機器48において、公開鍵又は秘密鍵は、情報管理部152で管理される。
【0088】
なお、第三者が上記の個人情報を閲覧できないようにする一方で、手術中の医師18に対して他の医療関係者が適切な助言を与えたり、あるいは、患者16の家族に対して他の医療関係者が適切な説明を行うためには、例えば、該他の医療関係者が所持する携帯機器120aのみ事前登録を行い、公開鍵又は秘密鍵を予め取得しておけばよい。勿論、患者16の家族の所持する携帯機器120bが暗号キーを取得してもよい。
【0089】
事前登録の方法としては、例えば、事前登録の希望者(他の医療関係者又は患者16の家族)が医療機関のナースセンター等に出向いて事前登録を希望する旨を伝え、該ナースセンターにおいて、希望者の所持する携帯機器120a、120bに対して事前登録の処理を行うことにより、復号用の暗号キーを取得すればよい。この場合、事前登録に先立ち、ナースが希望者に対する認証行為を行うので、患者16の手術に関わりのない第三者が勝手に事前登録を行うことを防止することができる。
【0090】
ナースセンターでの携帯機器120a、120bの事前登録は、例えば、下記の(1)〜(3)のように行えばよい。
【0091】
(1)例えば、患者16の手術前に携帯機器48がナースセンターで管理されている場合、携帯機器120a、120bから携帯機器48に電子メールを送信する。電子メールを受信した携帯機器48は、携帯機器120a、120bに対して復号用の暗号キーを添付した返信用の電子メールを送信する。携帯機器120a、120bは、返信用の電子メールを受信することにより、該暗号キーを取得することができる。暗号キーの取得により、携帯機器48に対する携帯機器120a、120bの事前登録が完了する。
【0092】
(2)上記(1)の場合とは異なり、携帯機器120a、120bから電子メールを受信した携帯機器48は、暗号キーに応じた二次元バーコードが添付された返信用の電子メールを携帯機器120a、120bに送信する。携帯機器120a、120bは、返信用の電子メールを受信すると、画面上に二次元バーコードを表示する。前記二次元バーコードを見た前記希望者が携帯機器120a、120bを操作すると、前記二次元バーコードに応じた復号用の暗号キーを取得することができる。
【0093】
(3)上記(2)の場合とは異なり、携帯機器120a、120bから電子メールを受信した携帯機器48は、暗号キーに応じたURL(Uniform Resource Locator)が記載された返信用の電子メールを携帯機器120a、120bに送信する。携帯機器120a、120bは、返信用の電子メールを受信すると、該電子メールの内容を画面上に表示する。前記URLを見た前記希望者が携帯機器120a、120bを操作すると、該URLから復号用の暗号キーを取得することができる。
【0094】
なお、LAN等のネットワークに接続される機器には、MAC(Media Access Control)アドレスが予め割り当てられており、医療機関側は、事前登録の希望者(の所持する携帯機器120a、120b)を予め把握している可能性もあるので、これらの携帯機器120a、120bのMACアドレスを携帯機器48に事前に登録し、携帯機器48からMACアドレスを登録した携帯機器120a、120bに復号用の暗号キーを配信してもよい。
【0095】
また、携帯機器120a、120bが携帯機器48に対して事前登録を行うのではなく、携帯機器120a、120bが携帯機器48から暗号キーを受け取るようにしてもよい。例えば、携帯機器120a、120bは、携帯機器48との間で無線通信又は赤外線通信を行うことにより暗号キーを受け取ってもよい(ダウンロードしてもよい)。あるいは、メモリカード又はUSBメモリに暗号キーをコピーし、携帯機器120a、120bがメモリカード又はUSBメモリから暗号キーを受け取ってもよい。
【0096】
また、暗号キーは、常に同じもの(固定)である必要はなく、例えば、携帯機器48が地上デジタル放送を行う毎に更新(変更)してもよいし、あるいは、1フレームの画像を配信する毎に更新してもよい。
【0097】
以下の説明では、他の医療関係者の所持する携帯機器120aが公開鍵又は秘密鍵(暗号キー)を取得する(携帯機器120aが事前登録を行う)ものとして説明する。
【0098】
なお、本実施形態では、後述するように、放射線出力装置22、放射線撮影装置24、超音波診断装置30、内視鏡装置32及びカメラ34を遠隔操作により制御することができる装置は、携帯機器48又はコンソール52に限定されている。すなわち、医師18又は技師54のみが携帯機器48又はコンソール52を操作することで上記の医療機器を遠隔操作により制御する権限を有している。
【0099】
そのため、携帯機器120aを所持する他の医療関係者、携帯機器120bを所持する患者16の家族、表示装置124に表示された画像を見ている者は、これらの医療機器を制御する権限を有しておらず、携帯機器48から地上デジタルテレビ放送によりリアルタイムで配信される動画像及び各種の情報を携帯機器120a、120b及び表示装置124を介して見る権限しか与えられていない。
【0100】
このようにすることで、医師18又は技師54以外の者が勝手に携帯機器48及びコンソール52等を操作し、上記の医療機器を遠隔操作により制御することを防止している。
【0101】
画像処理部144は、カメラ画像、超音波画像、光学画像及び放射線画像の動画像を表示部160に表示するための所定の画像処理を行う。画像処理後の動画像や、該動画像に紐付けされた各種の情報は、画像メモリ146に記憶される。また、画像処理部144は、画像メモリ146に記憶された動画像を、地上デジタルテレビ放送用の信号に変換する処理も行う。さらに、画像処理部144は、前述したカメラ画像に対するDICOM変換も行う。
【0102】
表示制御部148は、画像メモリ146に記憶された動画像や、該動画像に紐付けされた各種の情報をタッチパネル150の表示部160に表示させる。操作部162は、タッチパネル150の表示部160に表示されるアイコンやテキストボックス等のウィジェット(操作用画像、終了用画像)であり、医師18が操作部162を操作することに起因して、制御部132は、各種の制御処理を行う。また、医師18による操作部162の操作に起因して、表示制御部148は、操作内容に応じた画像を表示させるように表示部160を制御する。
【0103】
情報管理部152は、前述したように、送受信設定部140で設定されたチャンネル及びコマンドの内容や、暗号化処理部142での暗号化処理に用いる公開鍵又は秘密鍵(暗号キー)を管理(記憶)する。
【0104】
操作制御部154は、患者16に対して所定の診断又は処置を行う医療機器である、(1)放射線出力装置22及び放射線撮影装置24、(2)超音波診断装置30、(3)内視鏡装置32、のうち、いずれか1種類の医療機器を、医師18が操作部162を介して遠隔操作できるように、表示部160に表示されるウィジェットの種類を制限(限定)する。すなわち、手術室12には、多数の医療機器が所狭しと配置されているため、患者16に対する手術を円滑に行うためには、複数の医療機器を同時に使用せずに、いずれか1つの医療機器を使用することが好ましいためである。
【0105】
バッテリ156は、携帯機器48内の各部に電力を供給する。
【0106】
次に、コンソール52について説明するが、該コンソール52の構成要素のうち、携帯機器48の構成要素と同じ名称のものは、略同じ機能を有する。これは、前述のように、コンソール52及び携帯機器48がマスタ又はスレーブに切替可能であるため、コンソール52がマスタである場合には、前述した携帯機器48と同様の機能を発揮させる必要があるからである。
【0107】
すなわち、通信部170は、アンテナ68を介して、携帯機器48の通信部130との間で無線通信による信号の送受信を行う。また、通信部170は、アンテナ68を介し、携帯機器48を中継器として機能させることにより、医療機関内の所定領域に、動画像及び紐付けされた各種の情報を、地上デジタルテレビ放送によりリアルタイムで配信することも可能である。また、通信部172は、放射線出力装置22の制御部108、コントローラ102、放射線撮影装置24の通信部94及び表示装置36との間で有線通信による信号の送受信を行う。
【0108】
制御部174は、コンソール52内の各部を制御する。オーダ情報記憶部176は、オーダ情報を記憶し、撮影条件記憶部178は、撮影条件を記憶する。切替処理部180は、コンソール52又は携帯機器48をマスタ又はスレーブに切り替える。
【0109】
送受信設定部182は、透視撮影の開始前に、携帯機器48の通信部130との間や、携帯機器48の通信部130と、放射線撮影装置24の通信部100、コンソール52の通信部170、超音波診断装置30、内視鏡装置32及びカメラ34との間での多元接続による無線通信を行うためのチャンネルを予め設定する。また、送受信設定部140は、コンソール52から放射線撮影装置24、放射線出力装置22、超音波診断装置30、内視鏡装置32及びカメラ34に送信されるコマンドの内容を予め選定する。これらの設定内容や選定内容は、情報管理部198に記憶(管理)される。
【0110】
暗号化処理部184は、通信部170から携帯機器48経由で、所定領域に向けて、地上デジタルテレビ放送をリアルタイムで行う場合に、前述した患者16の個人情報に対して、公開鍵又は秘密鍵(暗号キー)を用いて暗号化処理を行う。公開鍵又は秘密鍵は、情報管理部198に記憶される。
【0111】
画像処理部186は、カメラ画像、超音波画像、光学画像及び放射線画像の動画像を表示部192に表示するための所定の画像処理を行う。また、画像処理部144は、カメラ画像に対するDICOM変換も行う。画像処理後の動画像や、該動画像に紐付けされた各種の情報は、画像メモリ188に記憶される。さらに、画像処理部186は、画像メモリ188に記憶された動画像を、地上デジタルテレビ放送用の信号に変換する処理を行う。
【0112】
表示制御部190は、画像メモリ188に記憶された動画像や、該動画像に紐付けされた各種の情報を表示部192に表示させる。この場合、表示制御部190は、前述したタッチパネル150の表示部160に表示される表示内容と同じ内容を表示部192に表示させることも可能である。
【0113】
但し、コンソール52の操作部194は、キーボード又はマウスであり、医師18又は技師54は、表示部192の表示内容を見ながら、キーボード又はマウス(操作部194)を操作することになる。制御部174は、医師18又は技師54による操作部194の操作内容に従って、各種の制御処理を行う。また、医師18又は技師54による操作部194の操作に起因して、表示制御部190は、操作内容に応じた画像を表示させるように表示部192を制御する。
【0114】
情報管理部198は、前述したように、送受信設定部182で設定されたチャンネル及びコマンドの内容や、暗号化処理部184での暗号化処理に用いた公開鍵又は秘密鍵(暗号キー)を管理(記憶)する。
【0115】
操作制御部199は、患者16に対して所定の診断又は処置を行う医療機器である、(1)放射線出力装置22及び放射線撮影装置24、(2)超音波診断装置30、(3)内視鏡装置32、のうち、いずれか1種類の医療機器を、医師18又は技師54が操作部194を介して遠隔操作できるように、表示部192に表示されるウィジェットの種類を制限(限定)する。
【0116】
曝射スイッチ196は、放射線20の照射を開始させるための曝射ボタンである。医師18又は技師54が曝射スイッチ196を操作すると、制御部174は、放射線源106からの放射線20の出力の開始と、放射線変換パネル80における放射線20の検出及び放射線画像への変換との同期を取ることにより、患者16の撮影部位に対する透視撮影を実行するための同期制御信号を生成する。従って、コンソール52は、同期制御信号に応じたコマンドを制御部108に送信すると共に、コントローラ102を介して放射線撮影装置24に送信する。
【0117】
図5は、医師18がタブレットPCの携帯機器48を操作する状態を図示したものである。
【0118】
携帯機器48は、滅菌袋200に密封された状態で使用される。なお、
図5には、タッチパネル150の表示部160に、患者16の動画像202(放射線画像)と、医師18が操作するためのアイコン204とがそれぞれ表示されている。
【0119】
[本実施形態の特徴的な機能]
以上のように構成される本実施形態に係る医療システム10の特徴的な機能(第1〜第3の特徴的な機能)について、
図6A〜
図10Bを参照しながら説明する。
【0120】
第1の特徴的な機能とは、透視撮影の開始後に発生する撮影条件の変更や患者16のポジショニング等の作業を迅速且つ的確に行うために、透視撮影の開始後、携帯機器48をマスタ、コンソール52をスレーブにそれぞれ切り替えるというものである。
【0121】
第2の特徴的な機能とは、手術室12にいる医師18が各種の医療機器を遠隔操作できるように、手元にある携帯機器48を各医療機器に対するリモートコントローラとして機能させるというものである。
【0122】
第3の特徴的な機能とは、所定領域内にいる患者16の家族や医療関係者(の所持する携帯機器120a、120b及び表示装置124)に向けて、手術室12にいる患者16に関わる動画像等を、地上デジタルテレビ放送によりリアルタイムで配信するというものである。
【0123】
次に、第1〜第3の特徴的な機能の詳細について、順に説明する。
【0124】
[第1の特徴的な機能]
第1の特徴的な機能では、先ず、透視撮影が開始されるまで、コンソール52の切替処理部180(
図4参照)は、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24(
図1及び
図2参照)を制御するマスタをコンソール52に維持すると共に、携帯機器48をスレーブに維持する。すなわち、手術中の医師18から口頭で患者16に対する透視撮影の開始の指示を受けると、技師54は、コンソール52を操作して撮影条件の設定等の作業を行う必要があるため、透視撮影を開始するまでは、コンソール52をマスタにしておく必要があるからである。
【0125】
なお、前述のように、携帯機器48とコンソール52との間では、無線通信による信号の送受信が可能であるため、切替処理部180は、透視撮影開始前のマスタ及びスレーブの関係を、通信部170から無線通信により携帯機器48の切替処理部138(
図3参照)に通知すればよい。これにより、携帯機器48は、透視撮影の開始前はスレーブであることを認識することができる。また、制御部132は、通知内容に基づいて、携帯機器48がマスタとして機能しないように(医師18によるタッチパネル150の操作に起因して携帯機器48が放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御しないように)、携帯機器48内の各部を制御する。
【0126】
次に、透視撮影の準備が完了した後に、技師54による曝射スイッチ196の操作に起因して、制御部174が同期制御信号を生成し、通信部172を介して放射線出力装置22及び放射線撮影装置24に同期制御信号(コマンド)を送信した場合、切替処理部180は、透視撮影が開始されたと判定し、その判定結果に基づいて、コンソール52をスレーブに切り替えると共に、携帯機器48をマスタに切り替える。
【0127】
そして、切替処理部180は、通信部170から無線通信により携帯機器48の切替処理部138に対して、マスタが切り替わったことを通知する。これにより、携帯機器48は、透視撮影の開始後に携帯機器48がマスタに切り替わったことを認識することができ、制御部132は、通知内容に基づいて、携帯機器48がマスタとして機能するように、携帯機器48内の各部を制御する。この結果、医師18は、手元の携帯機器48を操作して放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御することが可能となる。
【0128】
一方、スレーブに切り替わったコンソール52において、制御部174は、コンソール52がマスタとして機能しないように(技師54による操作部194の操作に起因してコンソール52が放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御しないように)、コンソール52内の各部を制御する。
【0129】
図6Aは、透視撮影中のタッチパネル150の表示部160の表示内容を図示したものである。
【0130】
表示部160の画面には、患者16の動画像210が表示されると共に、2つのアイコン212、214と、患者16の氏名及びIDや撮影条件が表示された個人情報表示領域216とが表示されている。アイコン212は、透視撮影を一時的に停止(中断)させるための操作用アイコンであり、アイコン214は、透視撮影を終了させるための操作用アイコン(終了用アイコン)である。また、動画像210は、例えば、患者16の血管220内に挿入したカテーテル222の進入状況を撮影した放射線画像であり、該カテーテル222は、狭窄部分224を目指して血管220内を進行している。
【0131】
なお、表示制御部148(
図3参照)は、血管220、カテーテル222及び狭窄部分224の表示位置を避けるように、アイコン212、214及び個人情報表示領域216を表示させることが好ましい。また、表示部160の画面上に表示される動画像の内容に応じて、アイコン及び個人情報表示領域の表示位置が適宜変更されることは、
図6B〜
図10Bにおいても同様である。
【0132】
ここで、透視撮影によって所望の画像が得られた後に、該透視撮影を終了させる場合、医師18は、アイコン214を操作すればよい(アイコン214にタッチすればよい)。医師18によるアイコン214の操作に起因して、制御部132は、通信部130を介して無線通信により放射線撮影装置24(
図1及び
図2参照)に透視撮影の終了を指示するコマンドを送信すると共に、コンソール52を介して放射線出力装置22に前記コマンドを送信する。この結果、制御部108は、受信したコマンドに基づいて、放射線源106からの放射線20の出力を停止させる。
【0133】
また、切替処理部138は、医師18によりアイコン214が操作された場合、又は、前記コマンドが送信された場合に、透視撮影が終了したと判定し、その判定結果に基づいて、携帯機器48をスレーブ、コンソール52をマスタに切り替える。さらに、切替処理部138は、マスタが切り替わったことを、通信部130から無線通信によりコンソール52の切替処理部180(
図4参照)に通知する。
【0134】
これにより、コンソール52は、透視撮影の終了によってマスタに切り替わったことを認識することができ、技師54は、コンソール52を操作して放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御することが可能となる。一方、スレーブに切り替わった携帯機器48において、制御部132は、携帯機器48がマスタとして機能しないように、携帯機器48内の各部を制御する。
【0135】
ところで、透視撮影中、医師にとって見づらい放射線画像(例えば、コントラストの低い画像や、患者16が体動した画像)が表示部160に表示された場合、医師18は、撮影条件の再設定や患者16のポジショニングを行うために透視撮影を一時的に停止(中断)させることを決定し、該透視撮影の一時停止を示すアイコン212を操作する(アイコン212にタッチする)。
【0136】
これにより、制御部132は、放射線20の照射の一時停止を指示するコマンドを、通信部130から無線通信により放射線撮影装置24に送信すると共に、コンソール52を介して放射線出力装置22に送信する。従って、制御部108は、受信したコマンドに基づいて、放射線源106からの放射線20の出力を中断させる。また、切替処理部138は、透視撮影が中断しても、携帯機器48をマスタに維持する。
【0137】
図6Bは、透視撮影が中断している時間帯での表示部160の表示内容を図示したものである。
【0138】
この場合、表示部160の画面には、動画像210が表示されると共に、個人情報表示領域216と、アイコン226と、テキストボックス表示領域228とが表示されている。アイコン226は、中断している透視撮影を再開するための操作用アイコンである。
【0139】
また、テキストボックス表示領域228は、透視撮影の撮影条件を変更するためのウィジェットである。すなわち、テキストボックス表示領域228には、撮影条件である放射線源106の管電圧、管電流及び放射線20の照射時間を変更するためのテキストボックスや、テキストボックスの変更内容を確定させるための「OK」ボタンや、変更内容を修正又はキャンセルするための「修正」ボタンが表示されている。
【0140】
従って、医師18は、撮影条件を変更したい場合には、各テキストボックスに所望の条件を入力して「OK」ボタンを押せばよい。医師18の操作により変更された撮影条件は、撮影条件記憶部136に記憶される。また、表示制御部148は、個人情報表示領域216に表示されている撮影条件も変更後の内容に切り替えるように表示部160を制御する。なお、技師54が患者16のポジショニングを行う場合には、テキストボックス表示領域228での撮影条件の変更は行われない。
【0141】
そして、医師18がアイコン226を操作すると、制御部132は、(変更後の撮影条件に基づく)放射線20の照射を再開するコマンドを、通信部130から無線通信により放射線撮影装置24に送信すると共に、コンソール52を介して放射線出力装置22に送信する。従って、制御部108は、受信した前記コマンドに基づいて、(変更後の撮影条件に従った)放射線源106からの放射線20の出力を再開させる。
【0142】
なお、上記の説明では、マスタとなる装置(携帯機器48又はコンソール52)の切替処理部138、180により、マスタ又はスレーブの切替処理を行う場合について説明したが、携帯機器48とコンソール52との間では無線通信による信号の送受信が可能であるため、スレーブの切替処理部138、180により切替処理を行うことも可能である。
【0143】
また、
図6A及び
図6Bの表示内容を携帯機器48から無線通信によりコンソール52に送信したり、さらには、医師18が携帯機器48を操作することにより、変更後の撮影条件を携帯機器48から無線通信によりコンソール52に送信してもよい。これにより、タッチパネル150の表示部160と同じ表示内容がコンソール52の表示部192にも表示されると共に、撮影条件記憶部178にも変更後の撮影条件が記憶される。
【0144】
[第2の特徴的な機能]
第2の特徴的な機能では、患者16に対して所定の診断又は処置を行うために、医師18が手元の携帯機器48を操作することにより、医師18が使用する手術器具よりも滅菌レベルが低い(医師18が直接操作することのできない)放射線出力装置22及び放射線撮影装置24、超音波診断装置30、又は、内視鏡装置32の各種の医療機器を遠隔操作により制御するというものである。
【0145】
この場合、先ず、携帯機器48で各医療機器を制御する前、例えば、透視撮影の開始前に、携帯機器48の送受信設定部140は、通信部130と各医療機器、カメラ34及びコンソール52との間で多元接続による無線通信を行うために、これらの装置に所定のチャンネルを設定すると共に、携帯機器48から各装置に送信されるコマンドの内容も予め選定する。これらのチャンネル及びコマンドの内容は、情報管理部152で管理される。
【0146】
図7A〜
図9Bは、患者16に対して所定の診断又は処置を行うために、医師18(
図1及び
図5参照)が携帯機器48のタッチパネル150を操作して各医療機器を制御する際の表示部160の表示内容を図示したものである。なお、これらの表示内容は、操作制御部154(
図3参照)からの指示(通知)に基づいて、表示制御部148が表示部160に表示する。
【0147】
先ず、
図7Aは、患者16の放射線画像を取得するために、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24(
図1及び
図2参照)を制御する場合のタッチパネル150の表示部160の表示内容を図示したものである。
【0148】
表示部160の画面には、動画像210、アイコン212、214及び個人情報表示領域216が表示されると共に、3つのアイコン230、232、234も表示されている。アイコン230は、透視撮影の撮影条件を変更するための操作用アイコンである。アイコン232は、超音波診断装置30を制御する場合に医師18が選択するための選択用アイコンである。アイコン234は、内視鏡装置32を制御する場合に医師18が選択するための選択用アイコンである。
【0149】
図7Aでは、患者16の放射線画像を取得する目的で、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御するために、透視撮影に関わる表示内容が表示部160の画面上に表示される一方で、超音波診断装置30を選択するためのアイコン232と、内視鏡装置32を選択するためのアイコン234とが、破線表示されて、選択できないようになっている。
【0150】
すなわち、操作制御部154は、患者16に対して現在行われている診断又は処置の内容が、患者16の放射線画像の取得であるため、
図7Aで操作可能なアイコンをアイコン212、214、230に限定することを表示制御部148に通知し、表示制御部148は、その通知内容に従って、表示部160の画面上でアイコン232、234を破線表示している。
【0151】
しかも、制御対象(操作対象)となる放射線出力装置22及び放射線撮影装置24に関わるアイコン212、214、230は、選択できないアイコン232、234よりも大きく表示されている。
【0152】
これは、手術室12に多数の医療機器が配置されているが、患者16に対する手術を円滑に行うために、複数の医療機器のうち、いずれか1つの医療機器が使用中である場合には、使用中の医療機器に対する操作を有効にすると共に、使用していない他の医療機器に対する操作を無効にして、医師18が操作対象となる1つの医療機器を確実に遠隔操作できるようにするためである。
【0153】
従って、
図7Aにおいて、医師18がアイコン230を操作すると、操作制御部154は、医師18のアイコン230の操作を有効と判断し、その判断結果を表示制御部148に通知する。表示制御部148は、その通知内容に従って、
図6Bの表示内容を表示部160に表示させる。これにより、医師18による撮影条件の変更が可能となり、携帯機器48から放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御することができる。
【0154】
なお、撮影条件を変更する際には、透視撮影を中断させる必要があるため、透視撮影の一時停止を示すアイコン212を操作しなくても、アイコン230が操作された場合には、操作制御部154から制御部132に前記判断結果を通知し、制御部132は、通知内容に従い、通信部130を介して放射線撮影装置24とコンソール52(経由で放射線出力装置22)とに、透視撮影の中断を指示するためのコマンドを送信することになる。
【0155】
また、
図7Aにおいて、医師18が誤ってアイコン232、234を操作した場合、操作制御部154は、医師18による操作内容を無効と判断し、この判断結果を表示制御部148に通知する。表示制御部148は、その通知内容に従って、
図7Aの画面表示を継続する。
【0156】
さらに、医師18がアイコン214を操作した場合、操作制御部154は、 医師18のアイコン230の操作を有効と判断すると共に、透視撮影の終了を指示する操作であると判断し、これらの判断結果を表示制御部148及び制御部132に通知する。
【0157】
制御部132は、その通知内容に従って、通信部130を介して放射線撮影装置24とコンソール52(経由で放射線出力装置22)とに、透視撮影の終了を指示するためのコマンドを送信し、透視撮影を終了させる。
【0158】
また、表示制御部148は、前記通知内容に従って、表示部160の表示内容を
図7Aから
図7Bに切り替える。
図7Bにおいて、表示部160には、動画像210と、個人情報表示領域216と、3つのアイコン232〜236とが表示される。この場合、2つのアイコン232、234は、破線表示から実線表示に切り替わる。また、アイコン236は、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御する場合に医師18が選択するための選択用アイコンである。
【0159】
すなわち、透視撮影の終了によって、手術室12内の全ての医療機器が一時的に使用されない状態となるため、表示部160には、全ての医療機器に応じたアイコン232〜236が選択可能に表示される。従って、医師18がアイコン232を操作すれば超音波診断装置30の制御が可能となり、アイコン234を操作すれば内視鏡装置32の制御が可能となり、アイコン236を操作すれば放射線出力装置22及び放射線撮影装置24の制御が可能となる。
【0160】
具体的に、3つのアイコン232〜236のうち、いずれか1つのアイコンが操作されると、操作制御部154は、該アイコンの操作を有効と判断すると共に、前記アイコンに応じた医療機器を次に制御すると判断し、これらの判断結果を制御部132及び表示制御部148に通知する。制御部132は、その通知内容に従い、通信部130を介して当該医療機器に、携帯機器48からの制御が行われることを通知する。また、表示制御部148は、前記通知内容に従って、表示部160の表示内容を当該医療機器に応じた表示内容に切り替える。
【0161】
図8Aは、患者16の超音波画像を取得する目的で、超音波診断装置30を制御する場合でのタッチパネル150の表示部160の表示内容を図示したものである。
【0162】
表示部160の画面上には、超音波画像の動画像240、アイコン242、244、248〜252と、個人情報表示領域246とが表示されている。動画像240には、患者16の臓器254が写り込んでいる。
【0163】
アイコン242は、超音波画像の動画撮影を一時的に停止(中断)させるための操作用アイコンであり、アイコン244は、該動画撮影を終了させるための操作用アイコンである。また、個人情報表示領域246には、患者16の氏名及びIDや、超音波診断装置30が計測可能な最大深度、音響出力、超音波の周波数、超音波パルスを制御することにより変化する超音波画像の表示方式(ノーマル又はティッシュハーモニックイメージングのBモード、カラードップラ等)が表示される。なお、
図8A及び
図8Bでは、一例として、患者16の氏名及びIDと超音波の周波数とを個人情報表示領域246に表示した場合を図示している。
【0164】
アイコン248は、前記動画撮影の撮影条件(例えば、超音波の周波数)を変更するための操作用アイコンである。アイコン250は、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御する場合に医師18が選択するための選択用アイコンであり、アイコン252は、内視鏡装置32を制御する場合に医師18が選択するための選択用アイコンである。
【0165】
図8Aにおいても、患者16の超音波画像を取得する目的で、超音波診断装置30を制御するために、超音波画像の動画撮影に関わる表示内容が表示部160の画面上に表示される一方で、アイコン250、252は、破線表示されて、選択できないようになっている。
【0166】
すなわち、操作制御部154は、患者16に対して現在行われている診断又は処置の内容が、患者16の超音波画像の取得であるため、
図8Aで操作可能なアイコンをアイコン242、244、248に限定することを表示制御部148に通知し、表示制御部148は、その通知内容に従って、表示部160の画面上でアイコン250、252を破線表示している。
【0167】
また、操作対象となる超音波診断装置30に関わるアイコン242、244、248は、選択できないアイコン250、252よりも大きく表示されている。
【0168】
ここで、医師18がアイコン248を操作すると、操作制御部154は、該アイコン248の操作を有効と判断し、その判断結果を表示制御部148に通知する。表示制御部148は、その通知内容に従って、超音波診断装置30の撮影条件を変更するための表示内容を表示部160に表示させる。これにより、医師18による撮影条件の変更が可能となり、携帯機器48から超音波診断装置30を制御することができる。
【0169】
なお、この場合でも、撮影条件を変更する際には、動画撮影を中断させる必要があるため、動画撮影の一時停止を示すアイコン242を操作しなくても、アイコン248が操作された場合、操作制御部154は、前記判断結果を制御部132に通知し、制御部132から通信部130を介して超音波診断装置30に、動画撮影の中断を指示するためのコマンドを送信させる。また、
図8Aにおいて、医師18が誤ってアイコン250、252を操作した場合、操作制御部154は、医師18による操作内容を無効と判断し、その判断結果を表示制御部148に通知する。
【0170】
さらに、医師18がアイコン244を操作した場合、操作制御部154は、 医師18のアイコン244の操作を有効と判断すると共に、動画撮影の終了を指示する操作であると判断し、これらの判断結果を表示制御部148及び制御部132に通知する。制御部132は、その通知内容に従って、通信部130を介して超音波診断装置30に動画撮影の終了を指示するためのコマンドを送信して動画撮影を終了させる。
【0171】
また、表示制御部148は、前記通知内容に従って、表示部160の表示内容を
図8Aから
図8Bに切り替える。
図8Bにおいて、表示部160には、動画像240と、個人情報表示領域246と、3つのアイコン250、252、256とが表示される。この場合、2つのアイコン250、252は、破線表示から実線表示に切り替わる。また、アイコン256は、超音波診断装置30を制御する場合に医師18が選択するための選択用アイコンである。
【0172】
この場合でも、動画撮影の終了によって、手術室12内の全ての医療機器が一時的に使用されない状態となるため、表示部160には、全ての医療機器に応じたアイコン250、252、256が選択可能に表示される。従って、医師18がいずれか1つのアイコンを操作すれば、操作制御部154は、操作されたアイコンに応じた医療機器が次に制御されると共に、表示部160に該医療機器に応じた表示内容が表示されるように、制御部132及び表示制御部148を制御する。
【0173】
図9Aは、患者16の光学画像を取得する目的で、内視鏡装置32を制御する場合のタッチパネル150の表示内容を図示したものである。
【0174】
表示部160の画面には、光学画像の動画像260、アイコン262、264、268〜272と、個人情報表示領域266とが表示されている。動画像260には、患者16の消化器官274に挿入されたファイバスコープ276の先端部に設けられた鉗子278を用いてポリープ等の組織280を採取した状態が写り込んでいる。
【0175】
アイコン262は、光学画像の動画撮影を一時的に停止(中断)させるための操作用アイコンであり、アイコン264は、該動画撮影を終了させるための操作用アイコンである。また、個人情報表示領域266には、患者16の氏名及びID、消化器官274内に送り込む空気の圧力、光学画像の倍率が表示されている。アイコン268は、前記動画撮影の撮影条件(例えば、消化器官274内に送り込む空気の圧力、光学画像の倍率)を変更するための操作用アイコンである。アイコン270は、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御する場合に選択するための選択用アイコンであり、アイコン272は、超音波診断装置30を制御する場合に選択するための選択用アイコンである。
【0176】
図9Aにおいても、患者16の光学画像を取得する目的で、内視鏡装置32を制御するために、光学画像の動画撮影に関わる表示内容が表示部160の画面上に表示される一方で、アイコン270、272は、破線表示されて、選択できないようになっている。
【0177】
すなわち、操作制御部154は、患者16に対して現在行われている診断又は処置の内容が、患者16の光学画像の取得及び組織280の採取であるため、
図9Aで操作可能なアイコンをアイコン262、264、268に限定することを表示制御部148に通知し、表示制御部148は、その通知内容に従って、表示部160の画面上でアイコン270、272を破線表示している。
【0178】
また、操作対象となる内視鏡装置32に関わるアイコン262、264、268は、選択できないアイコン270、272よりも大きく表示されている。
【0179】
ここで、医師18がアイコン268を操作すると、操作制御部154は、該アイコン268の操作を有効と判断し、その判断結果を表示制御部148に通知する。表示制御部148は、その通知内容に従って、内視鏡装置32の撮影条件を変更するための表示内容を表示部160に表示させる。これにより、医師18による撮影条件の変更が可能となり、携帯機器48から内視鏡装置32を制御することができる。
【0180】
なお、この場合でも、撮影条件を変更する際には、動画撮影を中断させる必要があるため、動画撮影の一時停止を示すアイコン262を操作しなくても、アイコン268が操作された場合、操作制御部154は、前記判断結果を制御部132に通知し、制御部132から通信部130を介して内視鏡装置32に、動画撮影の中断を指示するためのコマンドを送信させる。また、
図9Aにおいて、医師18が誤ってアイコン270、272を操作した場合、操作制御部154は、医師18による操作内容を無効と判断し、その判断結果を表示制御部148に通知する。
【0181】
さらに、医師18がアイコン264を操作した場合、操作制御部154は、 医師18のアイコン264の操作を有効と判断すると共に、動画撮影の終了を指示する操作であると判断し、これらの判断結果を表示制御部148及び制御部132に通知する。制御部132は、その通知内容に従って、通信部130を介して内視鏡装置32に動画撮影の終了を指示するためのコマンドを送信して動画撮影を終了させる。
【0182】
また、表示制御部148は、前記通知内容に従って、表示部160の表示内容を
図9Aから
図9Bに切り替える。
図9Bにおいて、表示部160には、動画像260と、個人情報表示領域266と、3つのアイコン270、272、282とが表示される。この場合、2つのアイコン270、272は、破線表示から実線表示に切り替わる。また、アイコン282は、内視鏡装置32を制御する場合に医師18が選択するための選択用アイコンである。
【0183】
この場合でも、動画撮影の終了によって、手術室12内の全ての医療機器が一時的に使用されない状態となるため、表示部160には、全ての医療機器に応じたアイコン270、272、282が選択可能に表示される。従って、医師18がいずれか1つのアイコンを操作すれば、操作制御部154は、操作されたアイコンに応じた医療機器が次に制御されると共に、表示部160に該医療機器に応じた表示内容が表示されるように、制御部132及び表示制御部148を制御する。
【0184】
なお、第2の特徴的な機能においても、携帯機器48とコンソール52との間では無線通信による信号の送受信が可能であるため、制御部132は、タッチパネル150の表示部160の表示内容を通信部130から無線通信によりコンソール52(
図1、
図2及び
図4参照)に送信し、コンソール52の表示制御部190は、受信した表示内容を表示部192に表示させることも可能である。
【0185】
また、コンソール52に、送受信設定部140、表示制御部148、情報管理部152及び操作制御部154と同じ機能を有する送受信設定部182、表示制御部190、情報管理部198及び操作制御部199をそれぞれ設け、医師18又は技師54が操作部194を操作することにより、手術室12内の各医療機器を制御することも可能である。
【0186】
[第3の特徴的な機能]
第3の特徴的な機能では、先ず、手術室12で患者16に対する手術が行われる前に、暗号化処理部142での暗号化処理に必要な公開鍵又は秘密鍵(暗号キー)を情報管理部152に記憶させると共に、医療機関内の他の医療関係者が所持する携帯機器120aにも暗号キーを事前に取得させる。
【0187】
その後、カメラ34は、手術室12全体(例えば、手術室12の全景を俯瞰した画像)、又は、手術室12の一部(例えば、医師18による患者16への手術の状況)を撮影してカメラ画像を取得し、該カメラ画像を無線通信により携帯機器48に送信する。また、放射線撮影装置24は、透視撮影の放射線画像を取得し始めると、該放射線画像を無線通信により携帯機器48に送信するか、光ファイバケーブル58及びコンソール52経由で携帯機器48に送信する。さらに、超音波診断装置30は、超音波画像を取得すると、無線通信により該超音波画像を携帯機器48に送信する。内視鏡装置32は、光学画像を取得すると、無線通信により該光学画像を携帯機器48に送信する。
【0188】
これらの動画像に各種の情報(例えば、オーダ情報や撮影条件)が紐付けされていれば、これらの情報も各装置から携帯機器48に送信される。携帯機器48の暗号化処理部142は、上述した動画像(カメラ画像、放射線画像、超音波画像、光学画像)及び紐付けされた各種の情報を受信すると、紐付けされた各種の情報に対して暗号化処理を施す。また、画像処理部144は、動画像を地上デジタルテレビ放送用の信号に変換する。暗号化処理された情報と、地上デジタルテレビ放送用に処理された動画像とは、通信部130から医療機関内の所定領域に向けて、地上デジタルテレビ放送によりリアルタイムで配信される。
【0189】
図10Aは、所定領域内にいる医療関係者が所持する携帯機器120a(
図2参照)の表示部290aに表示された表示内容を図示したものである。また、
図10Bは、所定領域内にいる患者16の家族が所持する携帯機器120bの表示部290b、又は、所定領域内に配置された表示装置124の表示部292に表示された表示内容を図示したものである。
【0190】
この場合、医療関係者が所持する携帯機器120aは、暗号キーを事前に取得しているため、地上デジタルテレビ放送により動画像及び暗号化された各種の情報を受信すると、暗号化された各種の情報(動画像に紐付けされた情報)を復号化する。これにより、表示部290aの画面上には、動画像210が表示されると共に、復号化された情報を個人情報表示領域216に表示させることができる。
【0191】
一方、患者16の家族が所持する携帯機器120bや表示装置124は、暗号キーを取得していないため、地上デジタルテレビ放送により動画像及び暗号化された各種の情報を受信しても、該暗号化された各種の情報に対する復号化を行うことはできず、従って、表示部290b、292の画面上には、動画像210のみ表示されることになる。
【0192】
なお、第3の特徴的な機能においても、携帯機器48とコンソール52との間では無線通信による信号の送受信が可能であるため、制御部132は、地上波デジタルテレビ放送で配信する動画像及び暗号化された各種の情報を、通信部130から無線通信によりコンソール52に送信してもよい。この場合、暗号キーを情報管理部198に事前に登録しておけば、コンソール52の表示制御部190は、暗号化した各種の情報に対する復号化処理を行い、復号化した情報と動画像とを表示部192に表示させることも可能となる。
【0193】
また、コンソール52に、暗号化処理部142及び画像処理部144と同じ機能を有する暗号化処理部184及び画像処理部186をそれぞれ設け、地上波デジタルテレビ放送用の情報(動画像、暗号化した各種の情報)をコンソール52で生成し、携帯機器48を中継器として機能させれば、コンソール52から携帯機器48経由で所定領域に向けて地上波デジタルテレビ放送をリアルタイムで配信することも可能となる。
【0194】
[本実施形態の動作]
次に、本実施形態に係る医療システム10の動作について説明する。
【0195】
ここでは、最初に、医療システム10の基本的な動作(例えば、患者16に対して手術中に行われる透視撮影)について
図11を参照しながら説明する。次に、本実施形態の特徴的な動作(第1〜第3の特徴的な機能による動作)について、
図12A〜
図14を参照しながら順に説明する。
【0196】
なお、
図11の基本的な動作とは、透視撮影の開始前から終了まで、コンソール52がマスタを維持した場合における医療システム10全体の動作をいう。従って、
図11では、医師18からの指示を受けて技師54がコンソール52を操作することに起因して、透視撮影が開始され、あるいは、終了する場合について説明する。
【0197】
また、
図11〜
図14の説明では、放射線撮影装置24から携帯機器48に無線通信により間引き画像及び紐付けされた各種の情報が送信される一方で、放射線撮影装置24から光ファイバケーブル58、コントローラ102及びコンソール52経由で正規の放射線画像及び紐付けされた各種の情報が送信される場合について説明する。
【0198】
さらに、
図11〜
図14の説明では、携帯機器48から所定領域に向けて、地上デジタルテレビ放送により動画像及び各種の情報をリアルタイムで配信する場合について説明する。
【0200】
[本実施形態の基本的な動作]
図11のステップS1において、患者16(
図1及び
図2参照)に対する手術に先立ち、医療システム10に用いられる各装置間の通信設定が行われる。
【0201】
具体的に、携帯機器48の送受信設定部140(
図3参照)は、携帯機器48の通信部130と、放射線撮影装置24の通信部100、コンソール52の通信部170(
図4参照)、カメラ34、超音波診断装置30及び内視鏡装置32との間で多元接続による無線通信を行うために、放射線撮影装置24、超音波診断装置30、内視鏡装置32、カメラ34及びコンソール52に所定のチャンネルを割り当てる。また、送受信設定部140は、これらの装置に送信するコマンドも選定する。さらに、送受信設定部140は、他の医療関係者が所持する携帯機器120aに対して、暗号化処理部142での暗号化処理に用いられる公開鍵又は秘密鍵(暗号キー)を通知することにより、該携帯機器120aの事前登録を行う。割り当てられたチャンネル、選定されたコマンド及び暗号キーは、情報管理部152で管理される。
【0202】
そして、患者16を手術室12に案内して手術が行われる場合、次のステップS2において、カメラ34は、手術室12内の撮影を開始する。カメラ34が撮影した手術室12の動画像(少なくとも1フレーム分のカメラ画像)は、無線通信により携帯機器48に逐次送信される。携帯機器48の画像処理部144は、受信したカメラ画像を地上デジタルテレビ放送用の信号に変換する処理を行い、処理後のカメラ画像を画像メモリ146に記憶する。
【0203】
次のステップS3において、制御部132は、画像メモリ146に記憶されたカメラ画像を、通信部130から所定領域に向けて地上デジタルテレビ放送によるリアルタイムでの配信を開始させる。これにより、所定領域にある携帯機器120a、120b及び表示装置124は、カメラ画像を受信し、表示部290a、290b、292にそれぞれ表示する。この結果、他の医療関係者や患者16の家族は、表示部290a、290b、292の表示内容を見ることで、手術室12の現状を把握することができる。なお、携帯機器48は、手術室12のカメラ画像のみ放送し、患者16の個人情報を配信しないので、各表示部290a、290b、292には、手術室12の映像のみ表示される。
【0204】
また、地上デジタルテレビ放送によりリアルタイムで配信されるカメラ画像は、携帯機器48の表示部160にも表示される。さらに、コンソール52もカメラ画像を受信し、該カメラ画像を表示部192や表示装置36に表示させることが可能である。
【0205】
次に、患者16を手術室12に案内し、該患者16を手術台14に横臥させた後に、医師18による患者16の手術が開始される。前述のように、カメラ34が手術室12を撮影し続けることにより、カメラ画像が地上デジタルテレビ放送によりリアルタイムで配信されるため、手術室12での患者16に対する手術の模様が携帯機器120a、120bの表示部290a、290b、表示装置124の表示部292、携帯機器48の表示部160、コンソール52の表示部192及び表示装置36にそれぞれ表示される。
【0206】
これにより、他の医療関係者や患者16の家族は、患者16に対する手術が行われていることを把握することができる。また、本実施形態において、各携帯機器120a、120b及び表示装置124は、携帯機器48から配信されるカメラ画像を受信し、表示部290a、290b、292に表示する権限しか与えられていない。従って、各携帯機器120a、120b及び表示装置124側から携帯機器48を介して手術室12内の各医療機器を遠隔操作することはできない。
【0207】
そして、患者16に対する手術中、医師18は、患者16に対する透視撮影が必要と判断した場合に、技師54に対して口頭で透視撮影の開始を指示する。
【0208】
技師54は、医師18からの指示を受けて、コンソール52の操作部194を操作する。これにより、制御部174は、RIS112又はHIS114からオーダ情報を取得し、取得したオーダ情報をオーダ情報記憶部176に記憶する(ステップS4)。
【0209】
ステップS5において、技師54による操作部194の操作に起因して、制御部174は、オーダ情報に含まれる患者16の撮影部位及び撮影方法や、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24の情報に基づいて、放射線出力装置22の放射線源106から患者16の撮影部位に放射線20を照射させるための撮影条件(管電圧、管電流、照射時間)を設定し、設定した撮影条件とオーダ情報とを撮影条件記憶部178に記憶する。
【0210】
ステップS6において、技師54は、患者16と手術台14との間に放射線撮影装置24を挿入した後に、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24に対する患者16の撮影部位のポジショニングを行う。
【0211】
この場合、放射線出力装置22の制御部108は、コンソール52に撮影条件等の送信を要求し、制御部132は、通信部172を介して受信した放射線出力装置22の送信要求に基づき、撮影条件記憶部178に記憶された撮影条件を通信部172を介して制御部108に送信する。
【0212】
また、放射線撮影装置24内において、バッテリ92からカセッテ制御部82及び通信部94に電力が供給されていれば、カセッテ制御部82は、通信部94を介してコンソール52にオーダ情報等の送信を要求する。制御部132は、通信部172を介して受信したカセッテ制御部82の送信要求に基づき、撮影条件記憶部178に記憶されたオーダ情報及び撮影条件を通信部172を介して放射線撮影装置24に送信する。カセッテ制御部82は、通信部94を介して受信したオーダ情報及び撮影条件を情報記憶部88に記憶する。なお、バッテリ92から放射線変換パネル80の各画素に電圧が供給されることにより、各画素では、放射線20を電荷に変換して蓄積可能な状態に至る。
【0213】
さらに、携帯機器48のバッテリ156から該携帯機器48の各部に電力が供給されている場合、制御部132も、通信部130を介してコンソール52にオーダ情報等の送信を要求する。制御部132は、通信部170を介して受信した制御部132の送信要求に基づき、撮影条件記憶部178に記憶されたオーダ情報及び撮影条件を通信部170を介して携帯機器48に送信する。制御部132は、通信部130を介して受信したオーダ情報をオーダ情報記憶部134に記憶すると共に、該オーダ情報及び撮影条件を撮影条件記憶部136に記憶する。
【0214】
そして、患者16のポジショニング等の撮影準備が完了したことを前提に、技師54は、曝射スイッチ196を投入する。これにより、制御部174は、放射線源106からの放射線20の出力の開始と、放射線変換パネル80における放射線20の検出及び放射線画像への変換との同期を取ることにより、患者16の撮影部位に対する放射線撮影を実行するための同期制御信号を生成する。制御部174は、生成した同期制御信号(コマンド)を通信部172を介して放射線出力装置22に送信すると共に、通信部170から無線通信により放射線撮影装置24及び携帯機器48に送信する。
【0215】
これにより、放射線出力装置22の制御部108は、同期制御信号を受信すると、前記撮影条件に従って、所定の線量からなる放射線20を放射線源106から患者16の撮影部位に向けて所定の照射時間だけ照射させる(ステップS7)。
【0216】
放射線20は、患者16の撮影部位を透過して放射線撮影装置24内の放射線変換パネル80に至る。ここで、直接変換型の放射線変換パネル80であれば、a−Se等からなる放射線変換層で放射線20が電荷に直接変換され、各画素に蓄積される。一方、間接変換型の放射線変換パネル80であれば、シンチレータで放射線20が蛍光に一旦変換され、各画素の光電変換素子で該蛍光が電荷に変換されて蓄積される。
【0217】
カセッテ制御部82は、通信部94を介して同期制御信号を受信しているので、放射線変換パネル80に制御信号を供給することにより、各画素に蓄積された患者16の放射線画像に応じた電荷を電気信号として読み出す。すなわち、カセッテ制御部82は、マトリックス状に配列された各画素の電荷をライン毎に順次読み出し、読み出した電荷に応じた電気信号を1フレーム分の放射線画像としてフレームメモリ84に一旦記憶する(ステップS8)。
【0218】
次のステップS9において、紐付け処理部90は、フレームメモリ84に記憶された1フレーム分の放射線画像と、情報記憶部88に記憶されたカセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件とを紐付けし、紐付け後の放射線画像、カセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件とを画像記憶部86に記憶する(ステップS10)。
【0219】
ステップS11において、カセッテ制御部82は、画像記憶部86に記憶された放射線画像、カセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件を通信部94及び光ファイバケーブル58aを介してコントローラ102に転送すると共に、信号処理部98に出力する。
【0220】
信号処理部98は、放射線画像に対して所定の間引き処理を行って間引き画像を生成し、通信部100は、間引き画像と、カセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件とを無線通信により携帯機器48に送信する。
【0221】
携帯機器48の通信部130が放射線撮影装置24から間引き画像及び該間引き画像に紐付けされた各種の情報(カセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件)を受信した場合、制御部132は、間引き画像及び紐付けされた各種の情報を画像メモリ146に記憶し、表示制御部148は、画像メモリ146に記憶された間引き画像及び紐付けされた各種の情報を表示部160に表示させる(ステップS12)。医師18は、表示部160の表示内容を見ることにより、患者16の撮影部位の状況を直ちに把握することができる。
【0222】
一方、コントローラ102は、光ファイバケーブル58aを介して受信した放射線画像及び該放射線画像に紐付けされた各種の情報(カセッテID情報、オーダ情報及び撮影条件)を記憶部104に記憶すると共に、光ファイバケーブル58bを介してコンソール52に送信する。コンソール52の制御部174は、通信部172を介して放射線画像及び紐付けされた各種の情報を受信すると、画像メモリ188に記憶すると共に、表示部192に表示させる(ステップS12)。技師54は、表示部192の表示内容を見ることにより、患者16の撮影部位の状況や放射線画像の画質等を把握することができる。
【0223】
また、コンソール52の制御部174は、画像メモリ188に記憶された放射線画像及び紐付けされた各種の情報を通信部170を介して無線通信により携帯機器48に転送する。放射線撮影装置24から転送された放射線画像及び紐付けされた各種の情報を携帯機器48の通信部130が受信した場合、制御部132は、受信した放射線画像及び紐付けされた各種の情報を画像メモリ146に一旦記憶する。表示制御部148は、間引き画像及び紐付けされた各種の情報に代えて、正規の放射線画像及び紐付けされた各種の情報を表示するように表示部160を制御する(ステップS12)。医師18は、表示部160を見ることにより、患者16の撮影部位の詳細な状況や放射線画像の画質等を把握することができる。
【0224】
次に、画像処理部144は、放射線画像を地上デジタルテレビ放送用の信号に変換し、一方で、暗号化処理部142は、情報管理部152に管理された暗号キーを用いて、放射線画像に紐付けされた各種の情報に対する暗号化処理を行う。制御部132は、地上デジタルテレビ放送用の放射線画像と、暗号化された各種の情報とを画像メモリ146に記憶すると共に、通信部130から所定領域に向けて、地上デジタルテレビ放送により、放射線画像及び暗号化された各種の情報をリアルタイムで配信する。なお、受信側である携帯機器120a、120b及び表示装置124側の処理については、
図14において詳しく説明する。
【0225】
次のステップS13において、透視撮影を継続する場合(ステップS13:NO)、ステップS7に戻り、次の放射線20の照射が行われる。従って、ステップS7〜S13の処理を繰り返すことにより、患者16の撮影部位の動画像(複数のフレームの放射線画像)を取得することができる。
【0226】
また、ステップS13において、透視撮影を終了する場合(ステップS13:YES)、医師18は、技師54に対して口頭で透視撮影の終了を指示する。医師18からの指示に従って技師54が操作部194を操作すると、制御部174は、通信部172を介して放射線出力装置22に透視撮影の終了を指示するコマンドを送信すると共に、通信部170を介して無線通信により放射線撮影装置24及び携帯機器48に前記コマンドを送信する。これにより、制御部108は、受信したコマンドに基づいて、放射線源106からの放射線20の出力を停止させる。これにより、地上デジタルテレビ放送による放射線画像の配信が終了する。
【0227】
なお、透視撮影が終了しても、患者16に対する手術が引き続き行われている場合もあるので、技師54は、患者16と手術台14との間に挿入された放射線撮影装置24を抜き取らず、該患者16の現在のポジショニング状態を維持させる。
【0228】
その後、患者16に対する手術が終了し、手術台14に横臥した患者16が手術室12から退室した後に、カメラ34による手術室12の撮影を停止させ(ステップS14:YES)、地上デジタルテレビ放送によるカメラ画像の配信も終了する。
【0229】
[第1の特徴的な機能による動作]
次に、
図12A〜
図12Cを参照して、第1の特徴的な機能による動作を説明する。
【0230】
図11のステップS7で透視撮影が開始された直後の
図12AのステップS20において、コンソール52の切替処理部180(
図4参照)は、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24(
図1及び
図2参照)を制御するマスタを携帯機器48に切り替えると共に、該コンソール52をスレーブに切り替える。次に、切替処理部180は、透視撮影の開始によりマスタ及びスレーブの関係が切り替わったことを、通信部170から無線通信により携帯機器48の切替処理部138(
図3参照)に通知する。従って、制御部174は、技師54が操作部194等を操作しても動作しないように(技師54による操作が無効となるように)、コンソール52内の各部を制御する。
【0231】
携帯機器48では、通信部130が切替処理部180からの通知内容を受信すると、透視撮影の開始によって携帯機器48がマスタに切り替わったことを認識することができる。また、制御部132は、通知内容に基づいて、医師18が携帯機器48を操作できるように、携帯機器48の各部を制御する。従って、ステップS20後、医療システム10では、
図11のステップS8以降の処理が行われる。
【0232】
一方、ステップS13において、医師18によりアイコン214(
図6A及び
図7A参照)が操作されることにより、又は、アイコン214の操作に起因して透視撮影の終了を指示するコマンドが放射線撮影装置24及びコンソール52に送信された場合に(ステップS13:YES)、次の
図12BのステップS21において、マスタである携帯機器48の切替処理部138は、透視撮影が終了したと判定し、その判定結果に基づいて、携帯機器48をスレーブに切り替えると共に、コンソール52をマスタに切り替える。次に、切替処理部138は、透視撮影の終了によりマスタ及びスレーブの関係が切り替わったことを、通信部130から無線通信によりコンソール52の切替処理部180に通知する。従って、制御部132は、医師18が操作部162等を操作しても動作しないように(医師18による操作が無効となるように)、携帯機器48内の各部を制御する。
【0233】
そして、コンソール52では、切替処理部138からの通知内容を通信部170が受信すると、透視撮影の終了によってコンソール52がマスタに切り替わったことを認識することができる。また、制御部174は、通知内容に基づいて、技師54がコンソール52を操作できるように、コンソール52の各部を制御する。
【0234】
さらに、ステップS12で携帯機器48の表示部192等に放射線画像が表示され、この放射線画像が医師18にとり見づらい動画像である場合、医師18は、撮影条件の再設定や患者16のポジショニングを行うために透視撮影を中断させることを決定し、アイコン212を操作する(ステップS22:YES)。
【0235】
この場合、切替処理部138は、透視撮影が中断しても、医師18による携帯機器48の操作が引き続き行われるため、該携帯機器48をマスタに維持する(ステップS23)。一方、携帯機器48の制御部132は、放射線20の照射の中断を指示するコマンドを、通信部130から無線通信により放射線撮影装置24に送信すると共に、コンソール52を介して放射線出力装置22にも送信する。従って、制御部108は、受信したコマンドに基づいて、放射線源106からの放射線20の出力を中断させる。
【0236】
そして、透視撮影が中断している時間帯において、医師18からの口頭による指示に従って、技師54が患者16に対するポジショニングを行うか(ステップS6)、又は、医師18が携帯機器48の操作部162を操作して撮影条件の再設定を行う(ステップS5)。あるいは、オーダ情報が間違っている場合、医師18は、携帯機器48の操作部162を操作してオーダ情報の再設定を行うことも可能である(ステップS4)。
【0237】
これらの作業の後、医師18がアイコン226を操作すると、制御部132は、(再設定後の撮影条件を含めた)放射線20の照射の再開を指示するコマンドを、通信部130から無線通信により放射線撮影装置24に送信すると共に、コンソール52を介して放射線出力装置22に送信するため、制御部108は、受信したコマンドに基づいて、(再設定後の撮影条件を反映した)放射線源106からの放射線20の出力を再開させることができる(ステップS7)。
【0238】
[第2の特徴的な機能による動作]
次に、
図13を参照して、第2の特徴的な機能による動作を説明する。
【0239】
先ず、ステップS31において、医師18(
図1及び
図5参照)が特定の医療機器を使用したい場合、他の医療機器を現在使用中であれば(ステップS31:YES)、該医師18は、操作部162(
図6A及び
図7Aのアイコン214、
図8Aのアイコン244、
図9Aのアイコン264)を操作して、前記他の医療機器の使用を終了させる(ステップS32)。
【0240】
すなわち、ステップS32において、携帯機器48の制御部132は、通信部130を介して無線通信により前記他の医療機器に動画像の撮影を終了させるためのコマンドを送信する。これにより、前記他の医療機器は、受信したコマンドに従って、該動画像の撮影を終了する。
【0241】
この結果、手術室12内の全ての医療機器が使用可能な状態に至り、表示部160の表示内容は、
図7B、
図8B及び
図9Bの表示内容に切り替わる。なお、
図7Bは、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24の使用を終了した場合を図示し、
図8Bは、超音波診断装置30の使用を終了した場合を図示し、
図9Bは、内視鏡装置32の使用を終了した場合を図示している。
【0242】
次のステップS33において、医師18が前記特定の医療機器を示すアイコン(アイコン232〜236、250、252、256、270、272、282のうち、いずれか1つのアイコン)を操作した場合、操作制御部154は、医師18による前記アイコンの操作が有効と判断し、前記特定の医療機器が選択されたことを制御部132及び表示制御部148に通知する。これにより、制御部132は、通信部130から無線通信により前記特定の医療機器に対して、該特定の医療機器が制御対象として選択されたことを通知する。また、表示制御部148は、前記特定の医療機器を操作するための表示内容を表示部160に表示させる。
【0243】
これにより、次のステップS34において、医師18が操作部162を操作して前記特定の医療機器を操作することが可能となる。なお、医師18が操作部162(前記特定の医療機器を示すアイコン)を操作すると、操作制御部154は、医師18による前記アイコンの操作が有効と判断し、その操作内容を制御部132及び表示制御部148に通知する。
【0244】
制御部132は、通知内容に応じたコマンドを通信部130から無線通信により前記特定の医療機器に送信する。前記特定の医療機器は、前記コマンドに従って動画像を取得し、取得した動画像を無線通信により携帯機器48に送信する。これにより、携帯機器48では、受信した動画像を表示部160に表示することが可能となる。一方、表示制御部148は、通知内容に応じた表示内容を表示するように表示部160を制御する。
【0245】
次のステップS35において、前記特定の医療機器の使用を終了する場合には(ステップS35:YES)、前述のステップS32と同様に、医師18は、操作部162(アイコン214、244、264)を操作して、前記特定の医療機器の使用を終了させればよい(ステップS36)。これにより、制御部132は、通信部130を介して無線通信により前記特定の医療機器に動画像の撮影を終了させるためのコマンドを送信する。この結果、前記特定の医療機器は、受信したコマンドに従って、該動画像の撮影を終了する。
【0246】
なお、ステップS31において、前記他の医療機器の使用を継続する場合には(ステップS31:NO)、ステップS32の処理は行わず、前記他の医療機器に対してステップS33以降の処理を行えばよい。この場合、上述したステップS33〜S36の説明において、「特定の医療機器」の文言を「他の医療機器」に置き換えれば、前記他の医療機器に対する説明となるため、該他の医療機器に関するステップS33〜S36の説明については省略する。
【0247】
[第3の特徴的な機能による動作]
次に、
図14を参照して、第3の特徴的な機能による動作を説明する。
【0248】
携帯機器48から所定領域に向けての地上デジタルテレビ放送によるリアルタイムでの動画像及び暗号化された各種の情報(動画像に紐付けされた情報)の配信については、
図11において既に説明したので、ここでは、受信側である携帯機器120a、120b及び表示装置124での処理について説明する。
【0249】
先ず、ステップS41において、所定領域にある携帯機器120aが動画像及び暗号化された各種の情報を受信した場合、最初の受信であれば(ステップS42:NO)、携帯機器120aは、暗号キー(パスワード等)の取得による事前登録を予め行っているため(ステップS43:YES)、例えば、表示部290aにパスワードの入力画面を表示し、該携帯機器120aを所持する他の医療関係者に対して、パスワードの入力を促す。
【0250】
ステップS44において、該他の医療関係者が携帯機器120aを操作してパスワードを入力し、入力したパスワードと予め取得したパスワードとが一致すれば、携帯機器120aは、暗号化された各種の情報に対する復号化処理を行い(ステップS45)、動画像と、復号化された情報とを表示部290aに表示する(ステップS46、
図10A)。従って、他の医療関係者は、表示部290aの表示内容を見ることで、患者16に関わる動画像と、患者16に関わる個人情報(オーダ情報、撮影条件等)とを把握することができる。
【0251】
地上デジタルテレビ放送が終了せず(ステップS47:NO)、引き続き次の動画像及び暗号化された各種の情報を受信した場合(ステップS41)、携帯機器120aは、2回目以降の受信であるため(ステップS42:YES)、パスワードの入力操作を省略し、直ちにステップS45、S46の処理を行う。
【0252】
従って、地上デジタルテレビ放送が終了するまで(ステップS47:YES)、携帯機器120aは、ステップS41、S42、S45〜S47の処理を繰り返し行う。
【0253】
一方、所定領域にある携帯機器120b及び表示装置124が動画像及び暗号化された各種の情報を受信する場合(ステップS41)、最初の受信であれば(ステップS42:NO)、携帯機器120b及び表示装置124は、パスワードの取得による事前登録を行っていないため(ステップS43:NO)、暗号化された各種の情報に対する復号化処理は行うことができず、動画像のみを表示部290b、292に表示することになる(ステップS48、
図10B)。従って、患者16の家族は、表示部290b、292の表示内容を見ることで、患者16に関わる動画像を把握することができる。
【0254】
地上デジタルテレビ放送が終了せず(ステップS47:NO)、引き続き次の動画像及び暗号化された各種の情報を受信した場合(ステップS41)、携帯機器120b及び表示装置124は、2回目以降の受信であるため(ステップS42:YES)、引き続きステップS48の処理を行う。
【0255】
従って、地上デジタルテレビ放送が終了するまで(ステップS47:YES)、携帯機器120b及び表示装置124は、ステップS41、S42、S48、S47の処理を繰り返し行う。
【0256】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る医療システム10によれば、第1〜第3の特徴的な機能を有することにより、下記の効果が得られる。
【0257】
[第1の特徴的な機能が奏する効果]
第1の特徴的な機能によれば、透視撮影の開始後に、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御する装置(マスタ)を、コンソール52から携帯機器48に切り替える。すなわち、携帯機器48及びコンソール52は、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御するためのマスタ及びスレーブの関係にある。透視撮影の開始前は、コンソール52がマスタであると共に携帯機器48がスレーブであり、透視撮影の開始後に、コンソール52がスレーブ、携帯機器48がマスタにそれぞれ切り替わる。
【0258】
これにより、例えば、医師18は、透視撮影の中断及び透視撮影の撮影条件の再設定を技師54に口頭で指示しなくても、患者16の近傍(医師18の手元)に配置されている、マスタに切り替わった携帯機器48を操作して、撮影条件の再設定を迅速且つ的確に行うことができる。一方、技師54は、患者16の体動が発生した場合に、医師18からの口頭による指示を受けて、透視撮影が中断している時間帯に、患者16のポジショニングのみ行えばよい。この結果、技師54の作業負担が軽減され、該ポジショニングを迅速に行うことができる。
【0259】
従って、第1の特徴的な機能によれば、透視撮影の開始後に発生する撮影条件の変更や患者16のポジショニング等の作業を迅速且つ的確に行うことができ、一旦中断した透視撮影を速やかに再開することが可能となる。
【0260】
また、透視撮影の終了後、切替処理部138、180は、マスタを携帯機器48からコンソール52に切り替えるので、技師54は、マスタに切り替わったコンソール52を操作して、次の透視撮影の撮影条件等を設定することができる。
【0261】
また、透視撮影が中断した場合に、医師18が携帯機器48を操作できるようにするため、切替処理部138、180は、透視撮影が中断しても、携帯機器48をマスタに維持する。従って、コンソール52は、透視撮影が終了するまでスレーブに維持される。
【0262】
さらに、携帯機器48がマスタである場合に、携帯機器48のタッチパネル150に対する医師18の操作に起因して、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24が制御されるため、医師18は、タッチパネル150を操作して撮影条件の再設定を容易に行うことができる。しかも、タッチパネル150は、表面に凹凸がないため、手術後にタッチパネル150の表面に対して滅菌処理を行えば、該表面を清潔に保つことができ、院内感染を防止することも可能となる。
【0263】
また、切替処理部138、180が携帯機器48とコンソール52とに設けられ、携帯機器48とコンソール52との間では無線通信による信号の送受信が可能であるため、携帯機器48とコンソール52との間でのマスタ及びスレーブの切替処理を速やかに行うことができる。また、携帯機器48がマスタである場合に、該携帯機器48は、コンソール52を中継器として機能させて、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御することも可能となる。
【0264】
さらに、放射線撮影装置24は、通信部94とコンソール52との間で光ファイバケーブル58を用いた有線通信により信号の送受信を行うと共に、通信部100と携帯機器48との間で無線通信による信号の送受信を行っている。この場合、通信部94は、画像記憶部86に記憶された正規の放射線画像を通信部94からコンソール52に送信し、通信部100は、信号処理部98で前記放射線画像を間引くことにより生成された間引き画像を無線通信により携帯機器48に送信する。
【0265】
放射線画像よりもデータ量の少ない(フレームレートを低下させて情報量を少なくした)間引き画像を生成することにより、放射線撮影装置24から携帯機器48に無線通信で動画像(間引き画像)を送信することが可能となる。これにより、携帯機器48の表示部160に間引き画像を速やかに表示することが可能になる。
【0266】
また、間引き処理の行われない正規の放射線画像を放射線撮影装置24からコンソール52に有線通信により送信すれば、コンソール52の表示部192や表示装置36に放射線画像を表示すると共に、コントローラ102の記憶部104に該放射線画像を記憶させることも可能となる。さらに、コンソール52がマスタである場合、該コンソール52は、通信部94を介して放射線撮影装置24を直接制御し、一方で、携帯機器48がマスタである場合、該携帯機器48は、通信部100を介して放射線撮影装置24を直接制御することも可能となる。
【0267】
また、通信部94から光ファイバケーブル58を介したコンソール52との間での信号の送受信に異常があることで、記憶部104に放射線画像を記憶することができなくなっても、放射線撮影装置24が画像記憶部86を具備することにより、該放射線撮影装置24側で放射線画像を記憶することができる。さらに、放射線撮影装置24は、携帯機器48を介してコンソール52に正規の放射線画像を無線通信により送信することも可能となる。なお、コンソール52がマスタに切り替わっても光ファイバケーブル58による信号の送受信の異常状態が継続している場合に、コンソール52は、携帯機器48を中継器として機能させることにより、放射線撮影装置24を制御することもできる。
【0268】
[第2の特徴的な機能が奏する効果]
第2の特徴的な機能によれば、医師18による携帯機器48の操作部162の操作に起因して、操作内容に応じた信号(医療機器を制御するためのコマンド)が通信部130から操作対象の医療機器に送信され、該医療機器は、受信した信号に従って制御される。これにより、手術室12で患者16に対して手術を行っている医師18は、医療機器の操作者(例えば、技師54)に口頭で指示しなくても、又は、医師18が使用する手術器具よりも滅菌レベルが低い医療機器を直接操作できなくても、該医師18の手元に配置された携帯機器48の操作部162を操作することにより、当該医療機器を遠隔操作で制御することができる。このように、携帯機器48が各医療機器に対するリモートコントローラとして機能するので、医師18は、手術の進行状況に応じて、手元の携帯機器48を操作して所望の医療機器を制御することにより、該医療機器の遠隔操作を迅速且つ的確に行うことが可能となる。
【0269】
しかも、第2の特徴的な機能では、医師18による操作部162の操作に起因して制御される医療機器を操作制御部154が限定するので、医師18は、患者16に対する診断又は処置の内容に応じた適切な医療機器を確実に操作することができる。
【0270】
また、手術室12には多数の医療機器が配置され、患者16に対する手術を円滑に行うために、複数の医療機器を同時に使用しないようにしている。そのため、各医療機器のうち、いずれか1つの医療機器が使用中である場合に、操作制御部154は、使用中の医療機器に対する医師18による操作部162の操作を有効にすると共に、他の医療機器に対する医師18による操作部162の操作を無効にするようにしている。これにより、医師18は、操作対象となる1つの医療機器を確実に遠隔操作することができるので、他の医療機器が誤って遠隔操作されることを確実に防止することができる。
【0271】
また、携帯機器48は、表示部160及び操作部162を含むタッチパネル150を具備している。この場合、操作部162は、タッチパネル150の画面上に表示されて、各医療機器、及び/又は、該各医療機器に対する操作内容を示し、且つ、各医療機器に対する医師18の操作が可能なアイコン204、212、214、226、230〜236、242、244、248〜252、256、262、264、268、270、272、282、及び、テキストボックス表示領域228等のウィジェットである。そして、操作制御部154は、使用中の医療機器に応じたアイコン等に対する医師18の操作を有効にすると共に、他の医療機器に応じたアイコン等に対する医師18の操作を無効にしている。
【0272】
このように、各医療機器に対する操作内容がアイコンやテキストボックス等のウィジェットとしてタッチパネル150の表示部160に表示されるので、医師18は、これらのウィジェットを操作することにより、使用中の医療機器を容易に遠隔操作することができる。また、使用中ではない他の医療機器に応じたウィジェットを医師18が操作しても、その操作結果が無効になるため、他の医療機器が誤って制御されることを確実に防止することができる。
【0273】
そして、表示部160において、使用中の医療機器に応じたウィジェットが、他の医療機器に応じたウィジェットよりも大きく表示されていれば、医師18は、使用中の医療機器に応じたウィジェットを容易に操作することができる。
【0274】
また、表示部160に、携帯機器48から使用中の医療機器に対する制御を終了するための終了用のアイコン214、244、264を表示し、医師18がアイコン214、244、264を操作した場合、操作制御部154は、各医療機器に応じたアイコン232〜236、250、252、256、270、272、282に対する操作を有効状態に切り替える。これにより、医師18は、アイコン232〜236、250、252、256、270、272、282を操作して、次に使用する医療機器を選択することが可能となる。
【0275】
この場合、操作制御部154は、各アイコン232〜236、250、252、256、270、272、282に対する医師18の操作が有効状態に切り替わった後に、医師18が1つの医療機器に応じたアイコンを操作した場合には、操作されたアイコンに応じた1つの医療機器を新たに使用する医療機器と判定し、この判定結果に応じた信号を通信部130を介して新たに使用する医療機器に送信すると共に、他の医療機器に応じた操作用画像に対する医師18の操作を無効状態に切り替えるようにしている。
【0276】
また、手術室12には、前述のように多数の医療機器が配置されているため、通信部130から1つの医療機器に信号(コマンド)が確実に送信される必要がある。そこで、携帯機器48は、各医療機器を制御する前に、送受信設定部140により、通信部130と各医療機器との間での多元接続の無線通信による信号の送受信を予め設定している。
【0277】
多元接続による信号の送受信を予め設定することにより、限られた周波数帯域(例えば、2.4GHz〜2.56GHzの帯域)内で、通信部130と1つの医療機器との間の無線通信による信号の送受信を確実に行うことが可能となる。
【0278】
また、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24が使用中である場合に、携帯機器48は、操作部162で操作された操作内容に応じた信号を、通信部130から無線通信によりコンソール52に送信することにより、コンソール52を介して放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御する。これにより、携帯機器48は、コンソール52を中継器として機能させて、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御することも可能となる。
【0279】
あるいは、通信部130から放射線撮影装置24に信号を送信すると共に、通信部130からコンソール52を介して放射線出力装置22に信号を送信することにより、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24を制御してもよい。この場合でも、携帯機器48は、放射線撮影装置24を直接制御すると共に、コンソール52を中継器として機能させて、放射線出力装置22を制御することができる。
【0280】
[第3の特徴的な機能が奏する効果]
第3の特徴的な機能によれば、患者16の診断又は処置に関わる動画像を、所定領域内に向けて、地上デジタルテレビ放送(我が国の場合には、エリアワンセグメント放送)により、リアルタイムで配信することができる。
【0281】
これにより、手術室12において、患者16に対して医師18が手術を行っている場合に、カメラ34は、手術室12の動画像(カメラ画像)を撮影し、放射線撮影装置24、超音波診断装置30及び内視鏡装置32は、患者16内部の動画像(患者16の診断又は処置に関わる放射線画像、超音波画像、光学画像)を撮影する。そして、携帯機器48の通信部130は、これらの動画像を、医療機関内の待合室等の所定領域に待機している患者16の家族が所持し、且つ、地上波デジタルテレビ放送の受信機能を有する携帯電話機等の携帯機器120bや、該医療機関内の手術室12、準備室50又は会議室等の所定領域にいる他の医療関係者(医師、研修医、医学生)が所持し、且つ、地上波デジタルテレビ放送の受信機能を有する携帯電話機等の携帯機器120aや、前記所定領域に設置されたディスプレイ等の表示装置124に配信することができる。
【0282】
この結果、患者16の家族や他の医療関係者に向けて、動画像を実況中継することができ、患者16に対する手術が適切に行われているか否かが明確となる。また、患者16の家族と他の医療関係者とが同室にいれば、患者16の家族は、携帯機器120bの表示部290bや、表示装置124の表示部292に表示された動画像を見ながら、患者16に対する手術の進行状況等について、他の医療関係者から適宜説明を受けることも可能となる。さらに、他の医療関係者は、医師18に対して適切な助言を行うことができる。
【0283】
このように、第3の特徴的な機能によれば、手術室12での患者16に対する診断又は処置の状況を、所定領域内にいる患者16の家族や他の医療関係者に向けて、リアルタイムで放送することが可能となる。
【0284】
また、携帯機器48の通信部130は、放射線撮影装置24から無線通信により放射線画像を直接受信するか、又は、放射線撮影装置24から光ファイバケーブル58及びコンソール52を介して無線通信により放射線画像を受信する。いずれの場合でも、携帯機器48は、地上デジタルテレビ放送の中継器として機能することになる。
【0285】
さらに、通信部130は、動画像と暗号化された各種の情報とを所定領域内にリアルタイムで放送する場合、所定領域内の携帯機器120aは、暗号化された各種の情報に対する復号化を行って動画像と前記情報とを閲覧可能であり、一方で、携帯機器120b及び表示装置124は、動画像のみ閲覧可能である。これにより、動画像と個人情報である暗号化された各種の情報とは、他の医療関係者のみ閲覧できる一方で、患者16の家族は、動画像のみ閲覧することになる。この結果、第三者が携帯電話機を用いて個人情報を閲覧することを阻止することができる。
【0286】
さらにまた、地上デジタルテレビ放送を行う携帯機器48は、患者16から僅かに離れて載置台46上に配置されているため、地上デジタルテレビ放送による電波が患者16に及ぼす影響を抑制することができると共に、患者16の存在により地上デジタルテレビ放送の電波状況が影響されることを回避することができる。
【0287】
また、手術室12内の各種の医療機器ではなく、携帯機器48から地上デジタルテレビ放送を行うため、可搬型の放射線撮影装置24、超音波診断装置30及び内視鏡装置32や、これらの医療機器に搭載されたバッテリに該地上デジタルテレビ放送の電波が及ぼす影響を抑制することもできる。
【0288】
[第1〜第3の特徴的な機能に共通する効果]
第1〜第3の特徴的な機能では、携帯機器48がタブレットPC、ハンドヘルドコンピュータ又はPDAであるため、患者16の近傍にまで該携帯機器48を容易に持ち運ぶことが可能となる。
【0289】
特に、タブレットコンピュータは、キーボードやマウスがなく、表面に凹凸がないため、手術後にタブレットコンピュータの表面に対して滅菌処理を行えば、該表面を清潔にすることができ、院内感染を防止することも可能となる。
【0290】
また、携帯機器48は、滅菌袋200に密封された状態で使用され、医師18は、滅菌袋200を介して携帯機器48を操作することになるので、該携帯機器48を清潔に維持することができる。なお、滅菌袋200が使い捨ての透明な袋であれば、携帯機器48に対して滅菌処理を施すことなく、携帯機器48を新たな滅菌袋200に密封して繰り返し使用することができる。
【0291】
[本実施形態の変形例]
本実施形態に係る医療システム10は、上記の説明に限定されることはなく、下記の構成(第1〜第3変形例)を採用することも可能である。
【0292】
[第1変形例]
本実施形態の第1変形例は、
図15Aに示すように、医師18が指で表示部192の画面上の所望箇所をクリックすることにより、クリックした部分が画面の中心に表示されるように患者16に対する次回の撮影が行われ、その後、
図15Bに示すように、次回の撮影で取得された画像が表示部192の画面上に表示された際、クリックした部分が画面の中心に表示されるというものである。ここでは、一例として、
図6Aと同様に、透視撮影の動画像を表示部192の画面に表示する場合について説明する。
【0293】
図15Aに示すように、表示部192の画面上に透視撮影の動画像が表示され、丸く囲った狭窄部分224を含む所定の領域が医師18にとって関心領域296である場合、医師18は、関心領域296を指でクリックする。携帯機器48の制御部132は、撮影条件記憶部136に記憶された撮影条件、表示部192に現在表示されている放射線画像等に基づいて、医師18がクリックした部分に応じた放射線源106の現在の位置(高さ及び平面位置)と、クリックした部分が画面の中心位置となるような放射線源106の位置とをそれぞれ算出し、算出した各位置を用いて、放射線源106の移動量を算出する。
【0294】
次に、制御部132は、通信部130からコンソール52を介して放射線出力装置22の制御部108に、放射線源106の移動量を示す制御信号を送信する。制御部108は、制御部132からの制御信号を受信すると、当該制御信号の示す移動量に従って多関節アーム42を動作させる。これにより、放射線源106の位置は、前記クリックした部分が画面の中心位置となるような位置に自動的に調整される。
【0295】
このように放射線源106の位置が調整された状態で、制御部108が同期制御信号を受信すると、放射線源106は、撮影条件に従って、所定の線量からなる放射線20を患者16の撮影部位に向けて所定の照射時間だけ照射し、次回の撮影が行われる。従って、放射線変換パネル80が患者16を透過した放射線20を放射線画像に変換し、携帯機器48が放射線撮影装置24から当該放射線画像を取得した場合、携帯機器48の表示部160の画面には、
図16Bに示すように、前記クリックした部分が画面の中心位置となる放射線画像(次回の撮影により取得された放射線画像)が表示される。
【0296】
この場合、クリックした部分が画面の中心位置となる放射線画像とは、前記クリックした部分に対応する患者16内部の位置が放射線20の照射範囲の中心位置となるように、放射線源106から患者16に放射線20を照射することによって得られた放射線画像である。従って、第1変形例では、
図15Aに示す放射線画像に対応する放射線20の照射範囲(照射位置、照射面積)と、
図15Bに示す放射線画像に対応する放射線20の照射範囲(照射位置、照射面積)とは、互いに異なることになる。
【0297】
このように、第1変形例では、医師18が表示部160の画面を指でクリックするだけで、クリックした部分が画面の中心位置となるように放射線源106の位置及び放射線20の照射範囲が自動的に調整され、調整後に次回の撮影が行われるので、当該次回の撮影により取得された放射線画像を表示部160の画面上に表示した際、前記クリックした部分を画面の中心位置に確実に表示させることができる。
【0298】
なお、前述のように、携帯機器48及びコンソール52は、マスタ又はスレーブに切り替わるので、マスタであるコンソール52の操作部194を医師18又は技師54が操作することに起因して、放射線源106の位置を自動的に調整してもよい。この場合でも、クリックした部分が表示部192の画面の中心位置となるように放射線源106の位置及び放射線20の照射範囲が自動的に調整されるので、調整後に次回の撮影が行われ、当該次回の撮影により放射線画像が取得された際、表示部192の画面上に前記クリックした部分が画面の中心位置となる放射線画像を表示することができる。
【0299】
また、携帯機器48は、携帯機器120a、120b及び表示装置124に、地上デジタルテレビ放送により放射線画像をリアルタイムで配信しているため、前記クリックした部分が画面の中心位置となる放射線画像を、携帯機器120a、120b及び表示装置124に表示させることが可能であることは勿論である。
【0300】
さらに、上記の説明では、表示部160の画面を医師18が指でクリックすることにより放射線源106の位置及び放射線20の照射範囲を自動的に調整できるようにしているが、これに代えて、医師18が
図5に示すアイコン204を指で操作することにより、クリックする部分を指定してもよい。この場合、アイコン204の一部が、画面をスクロールするための矢印ボタンと決定ボタンとになっており、矢印ボタンを操作してクリックする部分を定めた後に、決定ボタンを押すことで、クリックする部分が指定され、放射線源106の位置調整(放射線20の照射範囲の調整)が開始される。
【0301】
さらにまた、上記の説明では、クリックした部分に応じた放射線源106の位置等を携帯機器48又はコンソール52側で自動的に算出し、該放射線源106の位置調整を自動的に行っているが、これに代えて、医師18又は技師54が携帯機器48又はコンソール52を用いて、次回の撮影における放射線源106の位置調整をマニュアル操作で設定することも可能である。この場合、医師18又は技師54は、携帯機器48のアイコン204又はコンソール52の操作部162を操作して、高さ位置を含めた放射線源106の位置及び放射線20の照射範囲を入力する。これにより、携帯機器48又はコンソール52は、入力された放射線源106の位置及び放射線20の照射範囲を示す制御信号を放射線出力装置22に送信する。放射線出力装置22の制御部108は、受信した制御信号に従って、多関節アーム42を動作させることで放射線源106の位置を調整すると共に、図示しないコリメータを用いて放射線20の照射範囲を絞る。
【0302】
また、上記の説明では、多関節アーム42により放射線源106の位置を調整しているが、位置調整の方法は、この説明に限定されるものではない。例えば、多関節アーム42の先端部に放射線源106が装着されている場合に、多関節アーム42の軸を中心として放射線源106を回転させることにより、放射線源106を所望の向きに調整することも可能である。
【0303】
さらに、放射線源106の位置調整を行う場合には、放射線源106及び多関節アーム42が移動するため、少なくとも移動中、携帯機器48又はコンソール52は、医師18又は技師54に対して、表示部160、192の画面表示により、あるいは、図示しないスピーカからの音出力により、放射線源106の位置調整が行われていることを報知(警告)することが望ましい。これにより、医師18又は技師54が、位置調整中の放射線源106及び多関節アーム42と不意に接触することを回避すると共に、次回の撮影で医師18又は技師54が不用意に被曝することを回避することができる。
【0304】
[第2変形例]
これまでの説明は、手術室12内で医師18が患者16に対して手術を行う場合を前提として説明した。
【0305】
本実施形態の第2変形例は、
図16に示すように、医療機関内の病室298等において、ベッド300に患者16が横臥している場合に、技師54又は医師18が回診車302を病室298まで移動させて、患者16に対する回診(例えば、放射線源106及び放射線撮影装置24を用いた放射線撮影)を行うものである。
【0306】
回診車302には、台車304上に設けられた筐体としての台ユニット306に、表示部192、操作部194及び曝射スイッチ196を統合した表示操作部308を含むコンソール52が配置されている。台ユニット306には、放射線撮影装置24を装填するための装填口が形成されている。台ユニット306の内部には、装填口に装填された放射線撮影装置24を充電するクレードル28が設けられている。
【0307】
また、携帯機器48についても、装填口に装填すれば、クレードル28により充電可能である。さらに、台ユニット306の側部には、各種情報を音として出力するスピーカ310が設けられている。
【0308】
台ユニット306の前方には、支柱312が立設されており、該支柱312に沿って昇降可能な支持アーム314の先端部に放射線出力装置22が取り付けられている。この場合、放射線出力装置22は、例えば、支持アーム314の先端部に対して回動することで、放射線源106から出力される放射線20の照射方向を変更可能である。放射線出力装置22の外周部には、カメラ34が取り付けられている。また、放射線出力装置22における放射線20の出力側には、放射線20の照射範囲を規制するコリメータ316が設けられている。
【0309】
従って、回診車302は、放射線撮影装置24及び携帯機器48をクレードル28に装填した状態で、放射線出力装置22、放射線撮影装置24、クレードル28及びコンソール52を一体的に(分離しない状態で)移動可能である。この場合、回診車302は、技師54又は医師18による携帯機器48又はコンソール52の操作に従って移動可能である。また、回診車302は、無線通信により外部(RIS112、HIS114、PACS116)と通信可能であるので、配線の引き回しを考慮する必要がない上、ベッド300(に横臥する患者16)に対して、いずれの側からでもアクセスすることが可能である。
【0310】
なお、
図16は、ベッド300と患者との間に放射線撮影装置24を挿入し、放射線源106及び放射線撮影装置24に対する患者16のポジショニングが完了した後に、技師54又は医師18が携帯機器48を操作して、放射線源106及び放射線撮影装置24を遠隔操作により制御することで、放射線源106から患者16に向けて放射線20を照射させる場合を図示したものである。
【0311】
このように、第2変形例は、患者16のいる場所が病室298であり、コンソール52が回診車302によって移動可能である点で、
図1に示す本実施形態及び第1変形例とは異なる。従って、第2変形例の場合でも、本実施形態及び第1変形例と共通する構成については、同様の効果が得られる。
【0312】
ここで、第2変形例で採り得る構成及び動作、並びに、当該構成及び動作による効果について、以下に説明する。なお、以下の説明では、本実施形態及び第1変形例の説明と一部重複する内容も含まれる。
【0313】
第2変形例においても、第1変形例と同様に、携帯機器48又はコンソール52を操作して、表示部160及び表示操作部308の画面に表示された所望の箇所をクリックすることにより、放射線源106の位置(放射線20の照射範囲)が調整され、調整後の放射線源106の位置にて次回の撮影が行われた場合、該次回の撮影で取得された放射線画像について、表示部160及び表示操作部308の画面の中心位置に前記クリックした部分を表示させることができる。この場合、放射線源106の位置調整時に、コリメータ316による放射線20の照射範囲の絞りも併せて行ってもよい。
【0314】
放射線源106の位置及び放射線20の照射範囲は、支持アーム314の昇降、及び、支持アーム314に対する放射線出力装置22の回動に加え、回診車302自体が移動することにより調整可能である。この場合、スピーカ310からの音出力により、又は、携帯機器48の表示部160及び表示操作部308の画面表示により、技師54又は医師18に対して、放射線源106の位置調整及び放射線20の照射範囲の調整が行われていることを警告することが望ましい。これにより、技師54又は医師18が、位置調整中の放射線源106及び回診車302と不意に接触することを回避すると共に、次回の撮影で技師54又は医師18が不用意に被曝することを回避することができる。
【0315】
また、第2変形例でも、本実施形態での説明と同様に、携帯機器48及びコンソール52は、マスタ又はスレーブの関係にあるので、マスタとして機能する携帯機器48又はコンソール52により、回診車302全体の制御や、撮影条件の変更、各種の画像に対する画像処理等を実行することができることは勿論である。
【0316】
すなわち、第2変形例では、少なくとも、コンソール52が搭載されている回診車302と、携帯機器48を所持する技師54又は医師18とが離れている場合に、携帯機器48は、マスタに切り替わる。つまり、第2変形例では、放射線出力装置22、放射線撮影装置24、携帯機器48及びコンソール52が回診車302に搭載されて、回診先の患者16のいる病室298に搬送された後、技師54又は医師18が回診車302から携帯機器48を取り出し、回診車302から離れた位置に移動した場合(コンソール52を直ぐに操作できない位置に移動した場合)に、携帯機器48がマスタに切り替え可能である。
【0317】
具体的に、第2変形例では、放射線出力装置22及び放射線撮影装置24に対する患者16のポジショニングのため、携帯機器48を所持する技師54又は医師18が回診車302から離れた位置(患者16に近い位置)にいる場合に、携帯機器48は、マスタに切り替わる。
【0318】
これにより、技師54又は医師18は、患者16のポジショニング時に、実際の患者16の状態を見て、撮影条件を変更したい場合でも、回診車302に戻ることなく、携帯機器48を操作することにより、撮影条件の変更を行うことができる。つまり、技師54又は医師18は、撮影条件を変更するために患者16と回診車302(のコンソール52)との間を行き来する必要がなくなる。この結果、技師54又は医師18の作業負担が軽減され、撮影条件の変更や患者16のポジショニング等の作業を迅速に行うことができる。
【0319】
また、患者16のポジショニング後に、携帯機器48がマスタに切り替ってもよい。この場合、技師54又は医師18は、携帯機器48を操作して、放射線源106及び放射線撮影装置24を遠隔操作することができる。この結果、患者16に対する透視撮影を開始させると共に、技師54又は医師18の被曝を防止することが可能となる。
【0320】
なお、携帯機器48及び放射線撮影装置24に図示しない接触センサを具備させてもよい。
【0321】
この場合、技師54又は医師18が携帯機器48を持って、回診車302から携帯機器48を取り出したときに、接触センサは、技師54又は医師18が携帯機器48に接触したことを検出し、携帯機器48は、接触センサの検出結果に基づいて、マスタに切り替わる。
【0322】
また、患者16のポジショニング時に、技師54又は医師18が患者16とベッド300との間に放射線撮影装置24を挿入したときに、接触センサは、患者16が放射線撮影装置24に接触したことを検出し、放射線撮影装置24は、接触センサの検出結果を携帯機器48に送信する。携帯機器48は、受信した接触センサの検出結果に基づいて、マスタに切り替わる。
【0323】
このように、接触センサの検出結果に基づいて、携帯機器48をマスタに切り替えることにより、患者16のポジショニング時以降、携帯機器48を確実にマスタとして機能させることができる。
【0324】
なお、前述のように、回診車302は、技師54又は医師18による携帯機器48又はコンソール52の操作に従って移動可能であるため、技師54又は医師18が携帯機器48を常時携帯する場合も想定される。このような場合には、医療機関内での回診時についてのみ、当該携帯機器48を常時マスタとして機能させてもよい。あるいは、技師54又は医師18が携帯機器48を常時携帯している場合に、例えば、患者16のポジショニング時又はポジショニング後における、技師54又は医師18による表示部160のアイコン204の操作や、接触センサの検出結果に起因して、携帯機器48をマスタに切り替えてもよい。
【0325】
また、前述のように、第2変形例において、技師54又は医師18は、患者16に対して放射線撮影を行うために、患者16とベッド300との間に放射線撮影装置24を挿入し、携帯機器48を操作する。また、回診車302は、技師54又は医師18による携帯機器48の操作に起因して移動可能である。従って、第2変形例の場合、技師54又は医師18が接触する機器は、少なくとも携帯機器48及び放射線撮影装置24である。
【0326】
そこで、第2変形例では、汚染防止の観点から、少なくとも携帯機器48及び放射線撮影装置24が汚染防止袋(例えば、滅菌袋200)にそれぞれ密封された状態で使用されていることが好ましい。
【0327】
従来は、1日の回診が終わると、放射線撮影装置24のみならず、回診車302全体に対してアルコール拭きによる洗浄処理を実施していた。そのため、回診後の洗浄処理に手間がかかり、技師54の作業負担が増大していた。
【0328】
これに対して、第2変形例では、少なくとも携帯機器48及び放射線撮影装置24を汚染防止袋に密封した状態で使用する。従って、回診後、技師54は、携帯機器48及び放射線撮影装置24を密封している汚染防止袋を廃棄し、携帯機器48及び放射線撮影装置24に対してのみ、洗浄処理を行えばよい。これにより、回診後の洗浄処理の手間を大幅に軽減することができる。
【0329】
一方、携帯機器48及び放射線撮影装置24以外の回診車302等の他の機器については、技師54又は医師18が触れる可能性は低いので、回診後の洗浄処理が簡単に済むか、あるいは、洗浄処理自体が不要となる。
【0330】
なお、汚染防止袋の着脱については、例えば、該汚染防止袋を着脱可能な装置を回診車302に搭載し、患者16に対して放射線撮影を行うために、技師54又は医師18が回診車302から放射線撮影装置24を取り出す際、前記装置が汚染防止袋により放射線撮影装置24を自動的に密封させてもよい。これにより、技師54又は医師18は、放射線撮影装置24を密封する手間が省けると共に、汚染防止袋で密封された状態で放射線撮影装置24を使用することができる。この場合、撮影後の放射線撮影装置24を技師54又は医師18が回診車302に戻すと、前記装置は、汚染防止袋を自動的に破いて、該汚染防止袋を回収する。
【0331】
また、表示操作部308を含むコンソール52は、キーボード等を含み構成されているため、表面に凹凸があり、汚染防止袋の着脱は容易ではない。この点からも、携帯機器48を汚染防止袋で密封し、マスタとして機能させることで、各種の効果を容易に得ることができる。
【0332】
さらに、携帯機器48は、RIS112からコンソール52を介して取得したオーダ情報に基づいて、本日の回診において、回診対象となる患者16のリスト等を示す一覧表を表示部160の画面に表示させてもよい。これにより、技師54又は医師18は、回診対象となる患者16の人数や、回診先の患者16の情報等の各種の情報を事前に把握することができる。
【0333】
そして、回診時の撮影では、回診先の患者16の状態を見て、撮影条件を含めたオーダ情報を変更する場合が多い。前述のように、携帯機器48は、マスタとして機能すると共に、コンソール52と略同様の機能を有する。
【0334】
そのため、技師54又は医師18は、回診先の患者16の状態を見ながら、携帯機器48を操作して、オーダ情報記憶部134に記憶されたオーダ情報(の撮影条件)を容易に変更することができる。つまり、携帯機器48は、RIS112としての機能も兼ね備えており、制御部132は、オーダ情報記憶部134に記憶されたオーダ情報を、変更後のオーダ情報に更新する。制御部132は、変更後のオーダ情報を、通信部130から無線通信によりコンソール52に送信する。コンソール52は、オーダ情報記憶部176に記憶されているオーダ情報を、受信したオーダ情報に更新する。従って、変更後のオーダ情報に基づいて、患者16に対する放射線撮影が行われることになる。
【0335】
また、第2変形例において、回診車302が複数の放射線撮影装置24を搬送している場合、携帯機器48は、オーダ情報に基づく適切な放射線撮影装置24を選択し、表示部160に表示してもよい。これにより、技師54又は医師18は、表示部160に表示された適切な放射線撮影装置24を回診車302から取り出し、患者16とベッド300との間に挿入することができる。
【0336】
さらに、第2変形例では、混信を防止するため、携帯機器48とコンソール52との間の無線通信の周波数帯域と、放射線撮影装置24とコンソール52との間の無線通信の周波数帯域とを、互いに異なる周波数帯域とすることが好ましい。
【0337】
さらにまた、第2変形例において、病室298には、撮影対象の患者16以外の他の患者がいる場合もある。この場合、患者16に関する情報を前記他の患者に見られないようにするため、回診中(特に、撮影前)は、携帯機器48をマスタとして機能させ、技師54又は医師18のみが見る携帯機器48の表示部160の画面にのみ、患者16の撮影に必要な情報を表示させることが好ましい。この場合、コンソール52の表示操作部308の画面には、何らの情報も表示させないようにする(表示操作部308の画面表示を消去する)。これにより、患者16に関する情報が前記他の患者に漏洩することを防止することができる。
【0338】
なお、技師54又は医師18が表示部160の画面を見ないときには、例えば、技師54又は医師18が表示部160のアイコン204を操作して、当該画面表示を消去し、前記他の患者に対して、患者16に関する情報を瞬時に見られないようにすることも、患者16に関する情報の漏洩防止にとり好適である。
【0339】
また、第2変形例において、携帯機器48をマスタとして機能させることにより、携帯機器48は、撮影された患者16の放射線画像と、当該患者16の過去の放射線画像とを、表示部160の画面に並べて表示することも可能となる。これにより、ベッド300に横臥している患者16に対して、両者の画像を比較して、病状の経過等を容易に示すことができる。すなわち、携帯機器48は、DICOMサーバであるコンソール52及びLAN110を介してPACS116にアクセス可能であるため、PACS116からコンソール52経由で過去の放射線画像を取得し、取得した過去の放射線画像を表示部160に容易に表示することができる。
【0340】
[第3変形例]
本実施形態の第3変形例は、
図17に示すように、第2変形例(
図16参照)を一部改変したものである。
【0341】
この場合、病室298内のベッド318には、患者16が横臥している。病室298の天井320には、レール322が直線状に設けられ、ベース部材324がレール322に沿って走行可能である。ベース部材324には、多関節アーム326が連結され、該多関節アーム326の先端部に放射線出力装置22が取り付けられている。放射線出力装置22の外周部には、カメラ34が取り付けられている。ベース部材324には、アンテナ328が設けられており、携帯機器48から無線通信により制御信号を受信することに起因して、ベース部材324内部に設けられた図示しない駆動機構が駆動し、ベース部材324は、レール322に沿って走行すると共に、多関節アーム326を動作させる。
【0342】
従って、第3変形例は、放射線出力装置22が天井吊り下げ方式で支持されている点を除いては、第2変形例と略同様の構成を有する。
【0343】
そして、第3変形例では、第1変形例及び第2変形例と同様に、放射線源106の位置及び放射線20の照射範囲を変更するために、技師54又は医師18が携帯機器48を操作すると、携帯機器48の通信部130から無線通信によりアンテナ328に、放射線源106の位置変更及び放射線20の照射範囲の変更を指示する制御信号が送信される。前記駆動機構は、アンテナ328で受信された制御信号に基づいて駆動し、レール322に沿ってベース部材324を所定位置まで走行させ、多関節アーム326を動作させて、放射線出力装置22(の放射線源106)を所定の高さ位置及び向きに調整する。これにより、放射線源106が所望の位置に変更されて、放射線20の照射範囲が変更されると共に、次回の撮影では、変更後の位置から患者16に対して前記照射範囲で放射線20を照射させることができる。
【0344】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。