(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969728
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ズームレンズ装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 15/16 20060101AFI20160804BHJP
G02B 7/04 20060101ALI20160804BHJP
G02B 7/08 20060101ALI20160804BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20160804BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
G02B15/16
G02B7/04
G02B7/08
H04N5/225
H04N5/232
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-511486(P2016-511486)
(86)(22)【出願日】2015年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2015056639
(87)【国際公開番号】WO2015151718
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-71029(P2014-71029)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】遠山 信明
【審査官】
辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−044319(JP,A)
【文献】
特開2007−080318(JP,A)
【文献】
特開平09−184951(JP,A)
【文献】
特開平09−035322(JP,A)
【文献】
特開2010−152168(JP,A)
【文献】
特開2010−237250(JP,A)
【文献】
特開2006−064986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 15/16
G02B 7/04
G02B 7/08
H04N 5/225
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上のレンズから構成されているズームレンズ群が複数個含まれているズームレンズ装置において,
上記ズームレンズ群を構成し,かつ光軸が上記ズームレンズ群の光軸と共通する2枚以上のレンズのうち,少なくとも1枚のレンズを,上記ズームレンズ群の光軸を中心として,上記ズームレンズ群の上記少なくとも1枚のレンズ以外のレンズに対して相対的に回転させるレンズ回転機構,
ズーム指令に応じて,上記ズームレンズ装置に含まれている複数個のズームレンズ群のうち少なくとも1つのズームレンズ群を上記光軸方向に動かすズームレンズ群駆動機構,および
上記ズームレンズ群の光軸方向の位置に対応する回転角度で,上記少なくとも1枚のレンズを,上記光軸を中心に回転させるように上記レンズ回転機構を制御する制御機構,
を備えたズームレンズ装置。
【請求項2】
上記レンズ回転機構は,隣接する第1のレンズと第2のレンズとの2枚のレンズを回転させる,
請求項1に記載のズームレンズ装置。
【請求項3】
上記第1のレンズの方が上記第2のレンズよりも観察対象被写体側に配置されており,
上記第1のレンズは曲面である2つの光学機能面を有し,上記2つの光学機能面のうち,光軸を中心とした周方向において上記曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が被写体側となり,
上記第2のレンズは曲面である2つの光学機能面を有し,上記2つの光学機能面のうち,光軸を中心とした周方向において,上記曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が像側となっている,
請求項2に記載のズームレンズ装置。
【請求項4】
上記第1のレンズの方が上記第2のレンズよりも観察対象被写体側に配置されており,
上記第1のレンズは曲面である2つの光学機能面を有し,上記2つの光学機能面のうち,光軸を中心とした周方向において上記曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が像側となり,
上記第2のレンズは曲面である2つの光学機能面を有し,上記2つの光学機能面のうち,光軸を中心とした周方向において,上記曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が被写体側となっている,
請求項2に記載のズームレンズ装置。
【請求項5】
上記レンズ回転機構は,上記第1のレンズと上記第2のレンズとを逆方向に回転させるものである,
請求項2に記載のズームレンズ装置。
【請求項6】
上記レンズ回転機構により回転させられるレンズは,ズームレンズ装置を構成するレンズのうち,相対的に非点収差が大きいものである,
請求項1から5のうち,いずれか一項に記載のズームレンズ装置。
【請求項7】
上記レンズ回転機構により回転させられるレンズは,ズームレンズ装置を構成するレンズの非点収差の平均値より大きいレンズ,あるいはズームレンズ装置を構成するレンズの非点収差の中央値より大きいレンズである,
請求項1から6のうち,いずれか一項に記載のズームレンズ装置。
【請求項8】
ズームレンズ装置全体の非点収差が閾値以下となるように,ズームレンズ装置のズーム量に対応して,上記レンズ回転機構により回転させられるレンズの回転量が決められている,
請求項1から7のうち,いずれか一項に記載のズームレンズ装置。
【請求項9】
上記ズームレンズ群駆動機構による,少なくとも1つのズームレンズ群の動きと,上記レンズ回転機構による少なくとも1枚のレンズの回転とが連動している,
請求項1から8のうち,いずれか一項に記載のズームレンズ装置。
【請求項10】
上記レンズ回転機構は,少なくとも2枚のレンズを回転させるものであり,上記少なくとも2枚のレンズは,同一の上記ズームレンズ群を構成するものである,
請求項1から9のうち,いずれか一項に記載のズームレンズ装置。
【請求項11】
上記レンズ回転機構は,少なくとも2枚のレンズを回転させるものであり,上記少なくとも2枚のレンズは,異なる上記ズームレンズ群を構成するものである,
請求項1から9のうち,いずれか一項に記載のズームレンズ装置。
【請求項12】
上記レンズ回転機構が回転させるレンズは,1枚のレンズであり,上記1枚のレンズを,180度の回転角度の範囲内で回転させるものである,
請求項1に記載のズームレンズ装置。
【請求項13】
上記レンズ回転機構は,上記第1のレンズを90度の回転角度の範囲内で回転させ,かつ上記第2のレンズを,上記第1のレンズの回転方向と逆方向に,90度の回転角度の範囲内で回転させるものである,
請求項5に記載のズームレンズ装置。
【請求項14】
上記レンズ回転機構は,上記ズームレンズ群を構成する2枚以上のレンズのうち,曲面の曲率の最大値をもつレンズおよび曲面の曲率の最小値をもつレンズを回転させるものである,
請求項1に記載のズームレンズ装置。
【請求項15】
2枚以上のレンズから構成されているズームレンズ群が複数個含まれているズームレンズ装置の制御方法において,
レンズ回転機構が,上記ズームレンズ群を構成し,かつ光軸が上記ズームレンズ群の光軸と共通する2枚以上のレンズのうち,少なくとも1枚のレンズを,上記ズームレンズ群の光軸を中心として,上記ズームレンズ群の上記少なくとも1枚のレンズ以外のレンズに対して相対的に回転させ,
ズームレンズ群駆動機構が,ズーム指令に応じて,上記ズームレンズ装置に含まれている複数個のズームレンズ群のうち少なくとも1つのズームレンズ群を上記光軸方向に動かし,
制御機構が,上記ズームレンズ群の光軸方向の位置に対応する回転角度で,上記少なくとも1枚のレンズを,上記光軸を中心に回転させるように上記レンズ回転機構を制御する,
ズームレンズ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,ズームレンズ装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ズームレンズ装置においては,レンズの製造上,非点収差がニュートン縞で0.1本程度発生してしまうことがある。従来は,ズームレンズの組み立ての際に非点収差が少なくなるようにしている(特許文献1)。しかしながら,高精度テレビジョン放送システムを上回るようなズームレンズでは連続的にズーム倍率を変えた場合に非点収差の影響を無視できないことが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2012/046450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は,非点収差を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は,2枚以上のレンズから構成されているズームレンズ群が複数個含まれているズームレンズ装置において,ズームレンズ群を構成する2枚以上のレンズのうち,少なくとも1枚のレンズを,ズームレンズ群の光軸を中心として,ズームレンズ群の少なくとも1枚のレンズ以外のレンズに対して相対的に回転させるレンズ回転機構,ズーム指令に応じて,ズームレンズ装置に含まれている複数個のズームレンズ群のうち少なくとも1つのズームレンズ群を光軸方向に動かすズームレンズ群駆動機構,およびズームレンズ群の光軸方向の位置に対応する回転角度で,少なくとも1枚のレンズを,光軸を中心に回転させるようにレンズ回転機構を制御する制御機構を備えていることを特徴とする。
【0006】
この発明は,ズームレンズ装置の制御方法も提供している。すなわち,2枚以上のレンズから構成されているズームレンズ群が複数個含まれているズームレンズ装置の制御方法において,レンズ回転機構が,ズームレンズ群を構成する2枚以上のレンズのうち,少なくとも1枚のレンズを,ズームレンズ群の光軸を中心として,ズームレンズ群の少なくとも1枚のレンズ以外のレンズに対して相対的に回転させ,ズームレンズ群駆動機構が,ズーム指令に応じて,ズームレンズ装置に含まれている複数個のズームレンズ群のうち少なくとも1つのズームレンズ群を光軸方向に動かし,制御機構が,ズームレンズ群の光軸方向の位置に対応する回転角度で,少なくとも1枚のレンズを,光軸を中心に回転させるようにレンズ回転機構を制御するものである。
【0007】
レンズ回転機構は,たとえば,隣接する第1のレンズと第2のレンズとの2枚のレンズを回転させる。
【0008】
第1のレンズの方が第2のレンズよりも被写体側に配置されており,第1のレンズは曲面である2つの光学機能面を有し,2つの光学機能面のうち,光軸を中心とした周方向において曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が被写体側となり,第2のレンズは曲面である2つの光学機能面を有し,2つの光学機能面のうち,光軸を中心とした周方向において,曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が像側となっていてもよい。
【0009】
第1のレンズの方が上記第2のレンズよりも被写体側に配置されており,第1のレンズは曲面である2つの光学機能面を有し,2つの光学機能面のうち,光軸を中心とした周方向において曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が像側となり,第2のレンズは曲面である2つの光学機能面を有し,2つの光学機能面のうち,光軸を中心とした周方向において,曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が被写体側となっていてもよい。
【0010】
レンズ回転機構は,たとえば,第1のレンズと第2のレンズとを逆方向に回転させるものである。
【0011】
レンズ回転機構により回転させられるレンズは,ズームレンズ装置を構成するレンズのうち,相対的に非点収差が大きいものでもよい。
【0012】
レンズ回転機構により回転させられるレンズは,ズームレンズ装置を構成するレンズの非点収差の平均値より大きいレンズ,あるいはズームレンズ装置を構成するレンズの非点収差の中央値より大きいレンズでもよい。
【0013】
ズームレンズ装置全体の非点収差が減少するように,ズームレンズ装置のズーム量に対応して,レンズ回転機構により回転させられるレンズの回転量が決められていることが好ましい。
【0014】
ズームレンズ群駆動機構による,少なくとも1つのズームレンズ群の動きと,レンズ回転機構による少なくとも1枚のレンズの回転とが連動していてもよい。
【0015】
レンズ回転機構は,少なくとも2枚のレンズを回転させるものでもよいし,少なくとも2枚のレンズは,同一の上記ズームレンズ群を構成するものでもよい。
【0016】
レンズ回転機構は,少なくとも2枚のレンズを回転させるものであり,少なくとも2枚のレンズは,異なるズームレンズ群を構成するものでもよい。
【0017】
レンズ回転機構が回転させるレンズは,1枚のレンズであり,1枚のレンズを,180度の回転角度の範囲内で回転させるものでもよい。
【0018】
レンズ回転機構は,第1のレンズを90度の回転角度の範囲内で回転させ,かつ第2のレンズを,第1のレンズの回転方向と逆方向に,90度の回転角度の範囲内で回転させるものでもよい。
【0019】
レンズ回転機構は,ズームレンズ群を構成する2枚以上のレンズのうち,曲面の曲率の最大値をもつレンズおよび曲面の曲率の最小値をもつレンズを回転させるものでもよい。
【発明の効果】
【0020】
この発明によると,ズームレンズ群の光軸方向の位置に対応する回転角度で,少なくとも1枚のレンズが光軸を中心に回転させられる。ズームレンズ群が光軸方向に動いた場合であっても,その動きに応じて非点収差が軽減されるような回転角度でレンズを回転させることができる。ズームレンズ群の位置にかかわらず,非点収差を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】テレビ・カメラ用レンズの光学的構成および電気的構成を示している。
【
図2】レンズ回転機構およびズームレンズ群駆動機構を示している。
【
図3】レンズ,レンズ固定枠およびレンズ保持枠の分解斜視図である。
【
図4】レンズ固定枠が固定されたレンズの背面図である。
【
図7】レンズ制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】第1のレンズおよび第2のレンズを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は,ズームレンズ装置を備えたテレビ・カメラ用レンズ(レンズ装置)1の電気的構成を示すブロック図である。
【0023】
テレビ・カメラ用レンズ1の全体の動作は,制御回路40によって統括される。
【0024】
テレビ・カメラ用レンズ1には,撮像素子11が含まれている。この撮像素子11の前方に,1または複数のレンズが含まれているフォーカス光学系2,ズーム倍率を変更するズーム光学系(ズームレンズ装置)5,絞り6,イクステンダ・レンズ(群)7および1または複数のレンズが含まれているマスタ光学系10が配置されている。テレビ・カメラ用レンズ1の光軸Lは,フォーカス光学系2,ズーム光学系5,絞り6,マスタ光学系10および撮像素子11の受光面の中心を通る。ズーム光学系5は,1または複数の変倍系レンズ3と1または複数の補正系レンズ4とから構成されている。イクステンダ・レンズ7は,ターレット板(図示略)に撮像倍率が1倍の撮像レンズ8および撮像倍率が2倍の撮像レンズが取り付けられている。切替スイッチ41からの切替制御信号に応じてイクステンダ・レンズ7のターレット板が回転する。すると,1倍の撮像レンズ8または2倍の撮像レンズ9のいずれかが光軸L上に位置決めされる。
【0025】
フォーカス光学系2に含まれているレンズのレンズ位置は,検出器13によって検出される。検出器13によって検出されたフォーカス光学系2に含まれているレンズのレンズ位置を示す検出信号は,アナログ/ディジタル変換回路14においてディジタル検出データに変換されて制御回路40に入力する。ユーザは,フォーカス・リング(図示略)を回してフォーカス量を設定する。設定されたフォーカス量と検出されたディジタル検出データによって表わされるフォーカス光学系2に含まれているレンズのレンズ位置とが制御回路40によって比較され,その比較値にもとづいてフォーカス光学系2に含まれているレンズの駆動量を示すデータが生成される。生成された駆動量を示すデータが駆動回路15に与えられ,駆動回路15によってフォーカス・モータ16が制御されることにより,フォーカス光学系2に含まれているレンズのレンズ位置が調整される。
【0026】
ズーム光学系5を構成する変倍系レンズ3(2枚以上のレンズから構成されているズームレンズ群)は焦点距離を変化させ,補正系レンズ4(2枚以上のレンズから構成されているズームレンズ群)は焦点位置が変動しないように補正するものである。ズーム・ボタン46からのズーム指令が制御回路40に与えられると,制御回路40によって駆動回路19Aが制御され,モータ20Aが回転させられる。モータ20Aによって変倍系レンズ3および補正系レンズ4の少なくとも一方は光軸L上を移動する。もちろん,ユーザによって操作されるズーム・リング(図示略)の回転に応じて回転するズーム・カム筒(図示略)が回転することにより変倍系レンズ3および補正系レンズ4が光軸L上を一定の関係で移動してもよい。ズーム光学系5を構成する変倍系レンズ3および補正系レンズ4の光軸方向の位置は検出器17によって検出される。検出器17から出力される検出信号は,アナログ/ディジタル変換回路18においてディジタル検出データに変換されて制御回路40に入力する。ズーム・リングによって設定されたズーム量と検出されたディジタル検出データによって表されるズーム光学系5に含まれるレンズのレンズ位置とが制御回路40によって比較され,その比較値にもとづいてズーム光学系5に含まれるレンズの駆動量を示すデータが生成される。生成された駆動量を示すデータが駆動回路19に与えられ,駆動回路19Aによってズーム・モータ20Aが制御されることにより,ズーム光学系5を構成する変倍系レンズ3および補正系レンズ4のレンズ位置が調整される。
図1においては,変倍系レンズ3および補正系レンズ4がそれぞれ1つずつ図示されているが,それぞれ複数枚存在しているのはいうまでもない。必要に応じて複数枚のレンズに対応して複数の検出器17が設けられ,上述した制御が行われる。駆動回路19A,ズーム・モータ20Aおよび制御回路40が,ズーム指令に応じて,ズーム光学系5(ズームレンズ装置)に含まれている複数個のズームレンズ群のうち少なくとも1つのズームレンズ群を光軸方向に動かすズームレンズ群駆動機構となる。
【0027】
さらに,この実施例では,ズーム光学系5に含まれるレンズを,光軸Lを中心に回転させることができる。このために,テレビ・カメラ用レンズ1には,駆動回路19Bおよびモータ20Bが含まれている。駆動回路19Bによってモータ20Bが駆動させられることにより,ズーム光学系5に含まれる所望のレンズを光軸Lを中心に回転させることができる。
【0028】
絞り6の絞り量は検出器23によって検出される。検出器23から出力される検出信号は,アナログ/ディジタル変換回路24によってディジタル検出データに変換されて制御回路40に入力する。また,ユーザによって操作される絞りリング(図示略)の回転量に応じて駆動量を示すデータが生成される。生成された駆動量を示すデータと検出された駆動量を示すデータとが比較されて,その比較値にもとづいて絞り6の駆動量を示すデータが生成される。生成された駆動量を示すデータが駆動回路21に与えられ,駆動回路21によって絞りモータ22が制御されることにより,絞り6が所望の絞り値に設定される。
【0029】
イクステンダ・レンズ7の近傍には,イクステンダ・レンズ7を構成する撮像レンズ8および9のどちらのレンズが光軸L上に位置決めされているかを検出するフォトインタラプタ(検出器)25が設けられている。フォトインタラプタ25からの出力信号が制御回路40に入力し,切替スイッチ41により指定された撮像レンズ8または9が光軸L上に位置決めされているかどうかが検出される。切替スイッチ41により指定された撮像レンズ8または9が光軸L上に位置決めされていなければ,指定された撮像レンズ8または9が光軸L上に位置決めされるように制御回路40によって駆動データが生成され駆動回路26に与えられる。駆動回路26によってイクステンダ・モータ27が制御され,撮像レンズ8または9が光軸L上に位置決めされる。
【0030】
1または複数のレンズが含まれているマスタ光学系10の調整量を設定するフランジバック調整つまみ30が設けられている。このつまみ30によって設定される調整量を示すデータは制御回路40に入力する。また,マスタ光学系10の移動量を検出するポテンショ・メータ(検出器)28から出力される検出信号は,アナログ/ディジタル変換回路29に入力し,ディジタル検出データに変換されて制御回路40に入力する。つまみ30によって設定された調整量を示すデータとマスタ光学系10の移動量を示すディジタル検出データとが制御回路40において比較され,比較値にもとづいて駆動データが生成される。生成された駆動データが駆動回路31に与えられ,マスタ・レンズ・モータ32が駆動される。マスタ光学系10が光軸L上に沿って移動することにより,被写体像が撮像素子11の撮像面に合焦するように焦点補正が行われる。
【0031】
撮像素子11から出力される映像信号は,信号処理回路12に入力し,サンプリング処理,白バランス調整,ガンマ補正などの信号処理が行われて,テレビ信号が生成される。生成されたテレビ信号は,ビュー・ファインダに出力されて再生されるとともに出力端子47に与えられる。
【0032】
さらに,制御回路40には,メモリ42,日時を計測するタイマ43,テレビ用カメラ・レンズ1を構成する光学系が故障したときにユーザ等にその故障を発光して知らせるためのエラーLED44および故障が生じる可能性が高くなったときに発光して警告するための警告LED45も接続されている。
【0033】
図2は,ズーム光学系5の一部断面図,
図3は,ズーム光学系5に含まれているレンズ51等の分解斜視図,
図4は,レンズ51等を撮像素子11の側から見た背面図,
図5は,レンズ51等を光軸L方向に移動させるレンズ移動機構の一部を構成する部分を示す平面図である。
【0034】
レンズ51の外周面には,内周面がレンズ51の外周面に固定されているレンズ固定枠52が取り付けられている。レンズ固定枠52の撮像素子11側の端面には,レンズ固定枠52の外周面よりも内側に,周方向にギア53が形成されている(
図4参照)。
【0035】
レンズ固定枠52の外周を囲むレンズ保持枠56が設けられている。
図2に示すように,レンズ保持枠56の内周面56Cを挟んで光軸方向Lに2つのフランジ56Bが形成されている。フランジ56Bにより,レンズ51(レンズ固定枠52)は,レンズ保持枠56に対して光軸L方向にずれることなく,光軸Lを中心に回転可能となっている。レンズ保持枠56の内周面56Cとレンズ固定枠52の外周面との間にボール・ベアリングを設けるようにしてもよい。レンズ51がスムーズに回転する。
【0036】
モータ20Bは,レンズ保持枠56に固定されており,モータ20Bの軸にギア54が固定されている。このギア54は,レンズ固定枠52のギア53に噛み合っている。モータ20Bが駆動させられることにより,レンズ固定枠52が回転させられ,レンズ51が光軸Lを中心に回転する。
【0037】
レンズ保持枠56には,複数のピン60の一端部が固定されている。これらのピン60の他端部は,ズーム光学系5の鏡筒62内に形成されている案内溝61内に入っている。案内溝61は光軸L方向に形成されており,ピン60が案内溝61に沿って動くことにより,レンズ保持枠56(レンズ51)が光軸L方向に動くことができる。
【0038】
レンズ保持枠56の一部には,光軸L方向に突出したラック57が形成されている。このラック57に形成されている歯57Aにはピニオン58が噛み合っている。ピニオン58には上述したモータ20Aの軸が固定されている。
【0039】
図5を参照して,ラック57には,歯57Aが形成されている部分と歯57が形成されていない部分57Bとがあり,歯57が形成されていない部分57B上にモータ20Aが配置されている。歯57Aが形成されていない部分57Bには光軸L方向に案内溝57Cが形成されており,モータ58から下方(
図2において下方)に出ている規制ピン(図示略)が案内溝57Cに入っている。モータ20Aが駆動させられると,ピニオン58が回転し,ラック57が光軸L方向に移動するので,レンズ51も光軸L方向に移動する。モータ20Aはラック57の歯57Aが形成されていない部分58Bに固定されていず,鏡筒62の内周面に固定されている。モータ20Aはラック57とともに動かずにレンズ51が光軸L方向に動く。
【0040】
モータ20A,ピニオン58,ラック57,レンズ保持枠56,レンズ固定枠52,ピン60および案内溝61が,ズーム指令に応じて,ズームレンズ装置に含まれている複数のズームレンズ群のうち少なくとも1つのズームレンズ群を光軸方向に動かすズームレンズ群駆動機構を構成する。また,モータ20B,ギア54,レンズ固定枠52,およびレンズ保持枠56が,ズームレンズ群を構成する2枚以上のレンズのうち,少なくとも1枚のレンズを,ズームレンズ群の光軸を中心としてズームレンズ群の,少なくとも1枚のレンズ以外のレンズに対して相対的に回転させるレンズ回転機構を構成する。
【0041】
レンズ71の外周面には,内周面がレンズ71の外周面に固定されているレンズ固定枠72が取り付けられている。レンズ固定枠72には,複数のピン70の一端部が固定されている。これらのピン70の他端部は,ズーム光学系5の鏡筒62内に形成されている案内溝61内に入っている。ピン70が案内溝61に沿って動くことにより,レンズ固定枠72(レンズ71)が光軸L方向に動くことができる。
【0042】
レンズ固定枠72の一部には,光軸L方向に突出したラック77が形成されている。このラック77に形成されている歯77Aにはピニオン78が噛み合っている。ピニオン78には上述したモータ20Aの軸が固定されている。モータAが駆動させられると,ピニオン78が回転し,ラック77が光軸L方向に移動するので,レンズ71も光軸L方向に移動する。
【0043】
レンズ51を光軸L方向に移動させるモータ20Aとレンズ71を光軸L方向に移動させるモータ20Aとは同じ符号が付されているが,それぞれのモータ20Aは単独で駆動させることができ,レンズ51とレンズ71とを異なる距離だけ光軸L方向に移動させることができるのはいうまでもない。
【0044】
レンズ51およびレンズ71が,上述したようにズーム光学系5を構成する変倍系レンズ3,補正系レンズ4を構成するレンズとなる。
【0045】
図6は,レンズ51の位置とレンズ51の回転角度との関係を示す位置/回転角度テーブルの一例である。
【0046】
この実施例では,レンズ51(ズームレンズ群)の光軸L方向の複数の位置と,これらの複数の位置の各々に対応する複数の回転角度とが,位置/回転角度テーブルとしてメモリ(記憶部)42に記憶されている。レンズ51が光軸L方向の位置に位置決めされると,位置決めされた位置に対応して記憶されている回転角度で,レンズ回転機構によってレンズ51が光軸Lを中心として回転させられる。このようにレンズ回転機構は,光学系に含まれている少なくとも1つのレンズを,メモリ(記憶部)42に記憶された複数の回転角度のうち,レンズ移動機構によって移動させられるレンズの光軸L方向の位置に対応する回転角度で,光学系の光軸Lを中心に回転させ,レンズ移動機構と独立に駆動可能とされている。たとえば,レンズ51が位置P1に位置決めされると,レンズ51はθ1の角度だけ回転させられる。レンズ51の回転方向の基準位置が決められており,その基準位置を基準としてモータ20Bによって回転させられるのはいうまでもない。必要であれば,レンズ固定枠52に基準となる目印をつけ,センサによってその目印を検出することにより,レンズ51の回転基準位置およびその回転基準位置から,決められた回転角度だけレンズ51を回転させることができる。ズーム光学系5(ズームレンズ装置)全体の非点収差が閾値以下となるように,ズーム光学系5のズーム量に対応して,レンズ回転機構により回転させられるレンズの回転量が決められている,
【0047】
たとえば,レンズを回転させることにより,収差が最小(小さく)となるような,光軸L方向の位置と回転角度との関係が位置/回転角度テーブルに格納され,位置決めされた位置に応じてレンズが回転させられることにより,テレビ・カメラ用レンズ1の収差が小さくなる。レンズ51以外に回転させるその他のレンズが存在する場合,その他のレンズの回転角度を考慮して収差が小さくなるようにレンズ51の回転角度が定められているのはいうまでもない。
【0048】
図7は,ズーム光学系(ズームレンズ装置)5の制御処理手順を示すフローチャートである。
【0049】
ズーム・ボタン46から制御回路40にズーム指令が与えられると,そのズーム指令に応じて上述したようにズーム光学系5に含まれるズームレンズ群に含まれるレンズが光軸Lの方向に移動させられる(ステップ81)。光軸Lの方向に移動させられたレンズの位置が検出器17によって検出され(ステップ82),移動位置に対応するレンズの回転量が位置/回転角度テーブルから読み取られる(ステップ83)。読み取られた回転量だけ,レンズが回転させられる(ステップ84)。
【0050】
回転させるレンズを含むズームレンズ群自体が光軸Lを中心に回転してもよいし,回転しなくともよいが,回転させるレンズを含むズームレンズ群自体が光軸Lを中心に回転する場合には,ズームレンズ群の回転量と合わせて位置/回転角度テーブルから読み取られた回転量だけレンズが回転させられることとなる。
【0051】
図8は,ズームレンズ光学系5(ズームレンズ装置)を構成する第1のレンズ51と第2のレンズ91とを示している。
【0052】
第1のレンズ51および第2のレンズ91のいずれも,変倍系レンズ3または補正系レンズ4のいずれでもよい。また,第1のレンズ51および第2のレンズ91のいずれも上述のように光軸Lを中心として回転可能である。
【0053】
第1のレンズ51と第2のレンズ91とは,隣接しており,隣接している第1のレンズ51と第2のレンズ91とが,光軸方向Lの位置に応じた回転角度で回転させられる。第2のレンズ91についても第1のレンズ51と同様に,
図6に示すような光軸方向Lの位置と回転角度との関係を示すテーブルがメモリ42に格納されており,第2のレンズ91に応じた回転角度で回転させられる。第1のレンズ51と第2のレンズ91とは隣接していなくともよい。
【0054】
図8においては,被写体側に第1のレンズ51が配置され,撮像素子11側(像側)に第2のレンズ91が配置されている。
【0055】
第1のレンズは曲面である2つの光学機能面51Aおよび51Bを有している。これらの2つの光学機能面51Aおよび51Bのうち,光軸Lを中心とした周方向において光学機能面51Aおよび51Bの曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面51Aが被写体側とされている。また,第2のレンズ91Bも曲面である2つの光学機能面91Aおよび91Bを有している。これらの光学機能面91Aおよび91Bのうち,光軸Lを中心とした周方向において光学機能面91Aおよび91Bの曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面91Bが像側とされている。
【0056】
図8に示す例では,第1のレンズ51と第2のレンズ91とは隣接しているが,必ずしも隣接していなくともよい。
【0057】
また,ズームレンズ群を構成する2枚以上のレンズのうち,曲面(光学機能面)の曲率の最大値をもつレンズおよび曲面の曲率の最小値をもつレンズを回転させるようにしてもよい。
【0058】
図8に示すように,第1のレンズ51の方が第2のレンズ91よりも被写体側に配置されている場合,第1のレンズ51の2つの光学機能面51Aおよび51Bのうち,光軸Lを中心とした周方向において曲面の曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面を像側としてもよい。この場合,第2のレンズ91の2つの光学機能面91Aおよび91Bのうち,光軸Lを中心とした周方向において,曲面91Aおよび91Bの曲率の最大値と最小値との差が大きい光学機能面が被写体側となる。
【0059】
また,上述したレンズ回転機構は,第1のレンズ51と第2のレンズ91とを逆方向に回転させるものでもよいし,同方向に回転させるものでもよい。
【0060】
レンズ回転機構により回転させられるレンズは,ズームレンズ装置を構成するレンズのうち,相対的に非点収差が大きいものであることが好ましい。
【0061】
レンズ回転機構により回転させられるレンズは,ズームレンズ装置を構成するレンズの非点収差の平均値より大きいレンズ,あるいはズームレンズ装置を構成するレンズの非点収差の中央値より大きいレンズでもよい。
【0062】
ズームレンズ群駆動機構による,少なくとも1つのズームレンズ群の動きと,レンズ回転機構による少なくとも1枚のレンズの回転とが連動するようにしてもよい。そのようにするためには,上述したモータ20Aおよび20Bが制御回路40によって制御させられる。
【0063】
上述したように,第1のレンズ51,第2のレンズ91の少なくとも2枚のレンズを回転させる場合には,それらの少なくとも2枚のレンズは,同一の上記ズームレンズ群を構成するものでもよいし,異なるズームレンズ群を構成するものでもよい。
【0064】
レンズ回転機構が回転させるレンズは,1枚のレンズでもよい。その場合に,1枚のレンズを,180度の回転角度の範囲内で回転させるようにすることもできる。
【0065】
さらに,第1のレンズ51を90度の回転角度の範囲内で回転させ,かつ第2のレンズ91を,第1のレンズ51の回転方向と逆方向に,90度の回転角度の範囲内で回転させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
5 ズーム光学系(ズームレンズ装置)
19A 駆動回路(ズーム群駆動機構)
19B駆動回路(レンズ回転機構)
20Aモータ(ズーム群駆動機構)
20B モータ(レンズ回転機構)
40 制御回路(制御機構)
51 第1のレンズ
57,77 ラック(ズーム群駆動機構)
91 第2のレンズ