(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設定流量整形部が、受け付けられた入力設定流量の第1目標値と第2目標値との偏差の絶対値が大きいほど、前記連続変化区間における単位時間当たりの目標値の変化量の絶対値が大きくなるように構成されている請求項1乃至3いずれかに記載の流量制御装置。
前記設定流量整形部が、前記連続変化区間の目標値により流量制御が開始されてから前記流量センサで測定される測定流量が閾値流量値になった時点で、前記一次式の傾きの絶対値を変更するように構成されている請求項5記載の流量制御装置。
前記設定流量整形部が、前記流量センサで測定される測定流量が各時刻における上限流量値及び下限流量値により規定される許容流量領域内に入ったときの目標値の単位時間当たりの変化量を前記連続変化区間に設定するように構成された請求項1乃至7いずれかに記載の流量制御装置。
【背景技術】
【0002】
半導体製造チャンバーにガスを供給する際、流量制御装置には例えば目標値がステップ状に変化する入力設定流量が入力されて流量制御が行われる。従来、このようなステップ入力に対する応答は、安定状態において実際の流量がどれほど設定流量に追従しているかが流量精度として重要視されていたが、近年さらに過渡応答状態においても高い流量精度が求められつつある。
【0003】
すなわち、半導体製造分野においてはオーバーシュート量や、過渡応答状態から安定状態に到達するまでの目標応答時間や、過渡応答状態の各時刻における上限流量値、下限流量値等についても厳しい制限が設けられており、これらの要求値を満たすように各流量制御装置について精度管理する必要がある。
【0004】
このような要求に応えるために、流量制御装置の生産段階においては各流量制御装置の固体ごとのばらつきを調整するために、例えばPID係数を個々の流量制御装置について調整したうえで出荷するようにしている。
【0005】
しかしながら、このような制御係数の調整により特に過渡応答状態における要求精度を満たすことは以下のような理由で限界がある。
【0006】
まず、PID係数等の調整は試行錯誤的に行う必要があり、過渡応答状態についても厳密に精度を満たすようにすると生産効率等の制約から決まる調整時間内での調整は難しい場合がある。
【0007】
また、所定の条件においてPID係数の調整ができたとしても、例えば、上流側圧力、温度、設定流量等と言ったパラメータが変化するとステップ応答も変化してしまい、過渡応答状態における要求精度を満たせない場合もある。すなわち、PID係数の調整だけでは、オーバーシュート量や目標応答時間等から定まるステップ応答のパターンを異なる大きさの設定流量等の条件において所望の範囲内に収めることは難しいことがある。
【0008】
ところで、上述したようなPID係数の調整により所望の流量精度を得ようとするアプローチ以外にも、例えば特許文献1に示されるようにユーザにより入力されたステップ状に目標値が変化する入力設定流量をより好ましい応答が得やすい目標値の変化のものに変換して流量制御を行う方法もある。
【0009】
具体的には特許文献1に記載の流量制御装置は、目標値がステップ状に変化する入力設定値を受け付けた場合に、不連続部分に目標値がランプ状に変化する連続変化区間を挿入した整形後設定流量を出力する目標値整形部を備え、この整形後設定流量と測定流量の偏差をフィードバックすることにより流量制御を行うものである。
【0010】
このように、不連続に目標値が変化する部分をなくし、ランプ状に目標値を変化させることで過渡応答における実際の流量の追従性能を向上させるようにしている。
【0011】
しかしながら、特許文献1に示されているように入力設定流量における不連続部分をランプ関数で単純に接続した整形後設定流量を用いて流量制御を行っても、前述したように最終的な目標値の大きさ等の違いがあると要求される目標応答時間等の制約条件を全て満たすことは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述したような問題を鑑みてなされたものであり、例えば入力設定流量における最終目標値の大きさ等の前提条件に関係なく、実際に流れる流体の流量が所望のオーバーシュート量、目標応答時間等の制約条件を満たすようにすることができる流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明に係る流量制御装置は、流体の流れる流路に設けられた流量センサと、前記流路に設けられた流量制御バルブと、基準時間内に第1目標値から第2目標値へと各目標値の偏差の絶対値が基準値以上変化する入力設定流量を受け付けた場合に、第1目標値から第2目標値へと所定時間かけて連続的に変化する連続変化区間が形成された整形後設定流量を出力する設定流量整形部と、前記設定流量整形部から出力される整形後設定流量と前記流量センサで測定される測定流量との偏差が小さくなるように前記流量制御バルブの開度を制御するバルブ制御部とを備え、前記設定流量整形部が、受け付けられた入力設定流量の第1目標値と第2目標値との偏差の絶対値の大きさに応じて、前記連続変化区間における単位時間当たりの目標値の変化量を変更するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、「不連続に時間変化する」とは、例えば制御サイクル等の基準時間内に目標値が基準値以上変化することを言う。逆に、「連続的に変化する」とは例えば制御サイクル等の基準時間内に目標値が基準値以内しか変化しないことを言う。
【0016】
また、「基準時間」及び「基準値」とは例えば流量制御装置の制御特性に基づいて定められる値であり、第1目標値から第2目標値に変化した場合に所定の精度で追従可能かどうかによって定められる。
【0017】
このようなものであれば、前記設定流量整形部が、受け付けられた入力設定流量の第1目標値と第2目標値との偏差の絶対値の大きさに応じて、前記連続変化区間における単位時間当たりの目標値の変化量を変更するので、実際に変化させるべき流量の大きさに応じて最も適した態様で前記流量制御バルブの開度を制御する事が可能となる。
【0018】
実際に変化させるべき流量が大きく、オーバーシュートが起こりにくい領域では短時間で過渡応答状態から安定状態となるようにするとともに、実際に変化させるべき流量が小さく、短時間で過渡応答状態から安定状態となる領域ではオーバーシュートを発生しにくくして、どのような入力設定流量であっても所望の流量制御が行えるようにするには、前記設定流量整形部が、受け付けられた入力設定流量の第1目標値と第2目標値との偏差の絶対値が大きいほど、前記連続変化区間における単位時間当たりの目標値の変化量の絶対値が大きくなるように構成されていればよい。
【0019】
前記設定流量整形部において入力設定流量から整形後設定流量を作成する際の計算負荷を小さくして実装しやすくしつつ、最終目標値がどのような値であっても所望の流量制御特性が得られるようにするには、前記連続変化区間における目標値が、時間を変数とする一次式で表現されるものであり、前記設定流量整形部が、第1目標値と第2目標値の偏差の絶対値が大きいほど、前記一次式の傾きの絶対値を大きく設定するように構成されていればよい。
【0020】
実際に変化させるべき流量が大きい場合でも過渡応答状態から安定状態に至るまでの目標応答時間を非常に短くできるとともに、オーバーシュート等も起させないようにするには、前記設定流量整形部が、前記連続変化区間の目標値により流量制御が開始されてからにおける前記流量センサで測定される測定流量が閾値流量値になった時点で、前記一次式の傾きの絶対値を変更するように構成されていればよい。
【0021】
本発明により流量制御のスタート時における流量制御特性を所望のものとすることができるとともに、個々の流量制御装置の流量制御特性のばらつきを低減することができる具体的な適用例としては、前記入力設定流量が、目標値がステップ状に変化するものであり、前記流量設定値整形部が、前記連続変化区間において目標値がランプ状に変化する整形後設定流量を出力するものが挙げられる。
【0022】
第1目標値と第2目標値の偏差の絶対値の大きさごとに、最も適した流量制御が行えるように前記連続変化区間における目標値の単位時間当たりの変化量を設定するには、前記設定流量整形部が、前記流量センサで測定される測定流量が各時刻における上限流量値及び下限流量値により規定される許容流量領域内に入ったときの目標値の単位時間当たりの変化量を前記連続変化区間に設定するように構成されたものであればよい。
【0023】
既存の流量制御装置に対して本発明の流量制御方法を後付けで実現するには、流体の流れる流路に設けられた流量センサと、前記流路に設けられた流量制御バルブとを備えた流量制御装置に用いられるプログラムであって、基準時間内に第1目標値から第2目標値へと各目標値の偏差の絶対値が基準値以上変化する入力設定流量を受け付けた場合に、目標値が第1目標値から第2目標値へと所定時間かけて連続的に変化する連続変化区間が形成された整形後設定流量を出力する設定流量整形部と、前記設定流量整形部から出力される整形後設定流量と前記流量センサで測定される測定流量との偏差が小さくなるように前記流量制御バルブの開度を制御するバルブ制御部とを備え、前記設定流量整形部が、受け付けられた入力設定流量の第1目標値と第2目標値との偏差の絶対値の大きさに応じて、前記連続変化区間における単位時間当たりの目標値の変化量を変更するように構成されていることを特徴とする流量制御装置用プログラムを用いればよい。例えば、このようなプログラムが記録された記録媒体を使って、既存の流量制御装置を構成するコンピュータに本発明のプログラムをインストールすればよい。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明の流量制御装置によれば、例えば第1目標値と第2目標値との偏差に応じて、それぞれ異なる態様で目標値が変化する連続変化区間を有する整形後設定流量により前記流量制御バルブの開度が制御されることになるので、どのような入力設定流量がユーザにより入力されたとしても、過渡応答特性を要求されている精度のものにすることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
第1実施形態の流量制御装置100は、いわゆるマスフローコントローラであって半導体製造プロセスにおいて内部が真空に保たれている真空チャンバー内に基板に蒸着させるための材料ガス等を所定の流量で導入するために用いられるものである。
【0028】
図1の流体回路図及び
図2の断面図に示すように、前記流量制御装置100は、流量制御のためのハードウェア及びソフトウェアが1つのモジュールとして構成してあり、材料ガスが流れる配管にこのモジュールを接続することで流量制御機能を発揮するように構成してある。
【0029】
より具体的には、前記流量制御装置100は、内部に流路1が形成された概略直方体形状の基板ブロックBと、基板ブロックBの上面を取付面BPとして取り付けられた各種流体制御機器と、前記各種流体制御機器の制御を司る情報処理機構10と、前記取付面BP上において前記各種流体制御機器と前記情報処理機構10を内部に収容するケーシングとから構成してある。
【0030】
前記基板ブロックBは、取付面BPと対向する底面において流体が内部へと導入される導入ポートB1と、前記各種流体制御機器を通過した流体が外部へと導出される導出ポートB2とを備えている。そして、基板ブロックB内の流路1は前記導入ポートB1と導出ポートB2との間を基板ブロックB内において概略長手方向へと進行するとともに、取付面BPの三箇所に開口するように形成してある。また、基板ブロックBの底面に形成された導入ポートB1及び導出ポートB2にはそれぞれ内部に流路1が形成された接続ブロック(図示しない)が接続されて半導体製造プロセスのためのガスパネルシステムが形成される。
【0031】
前記流体制御機器は、流量制御バルブ2、第1圧力センサ31、流体抵抗32、第2圧力センサ33から構成されるものであり、この順番で取付面BPに流路1の上流から順番に取り付けてある。各流体機器は前記流路1の取付面BPにおける開口部分をそれぞれ塞ぐように取り付けられる。
【0032】
前記流量制御バルブ2は、例えばピエゾ素子により印加される電圧によって内部の弁体の位置が制御されて、弁座と弁体との開度が適宜変更されて流路1を流れる流体の流量を調節するものである。すなわち、この流量制御バルブ2は、流路1が閉止されて完全に流体が流れなくなる状態から、全開となって略自由に抵抗なく流体が流れる状態まで変化させることができる。
【0033】
前記第1圧力センサ31、流体抵抗32、第2圧力センサ33は、流路1を流れる流体の流量測定用機器として用いられる。前記流体抵抗32は、例えば矩形状薄板を複数枚積層させて内部を流れる流体が層流となるように構成した層流素子である。この層流素子は、取付面BPの凹部に嵌めこまれた状態でその上側から前記第1圧力センサ31で押さえつけて固定してある。
【0034】
前記第1圧力センサ31、前記第2圧力センサ33は、前記流体抵抗32により生じる圧力変化を測定するためのものであり、当該流体抵抗32の上流側と下流側の圧力をそれぞれ測定する。
【0035】
前記情報処理機構10は、ケーシングの上部空間内に収容されているものであり、物理的には、CPU、メモリ、I/Oチャネル、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、その他のアナログ乃至デジタル電気回路からなり、メモリに格納したプログラムにしたがってCPUやその他周辺機器が協働することによって、この情報処理機構10が、少なくとも流量算出部34、設定流量整形部41、バルブ制御部42、としての機能を担うように構成してある。
【0036】
まず流量算出部34について説明する。この流量算出部34は、前記第1圧力センサ31及び第2圧力センサ33からの圧力測定信号を受け付け、それらの値と予め記憶してある前記流体抵抗32の流体抵抗特性とに基づいて、流路1を流れる流体の質量乃至体積流量を算出して出力するものである。言い換えると、第1圧力センサ31、層流素子、第2圧力センサ33、流量算出部34は協業することにより流路1を流れる流体の流量を測定するための圧力式の流量センサ3を構成している。この流量算出部34から出力される測定流量Q
pは、前記バルブ制御部42へとフィードバックされ、流量制御のために用いられる。
【0037】
前記設定流量整形部41は、ユーザにより入力される入力設定流量Q
rに不連続点がある場合に、その入力設定流量Q
rを実際に流れる流体の流量のオーバーシュート量や目標応答時間を所望の値にするのに適した連続的な変化をする整形後設定流量Q
trに変換するものである。言い換えると、前記設定流量整形部41は、入力設定流量Q
rが基準時間内に第1目標値から第2目標値へと各目標値の偏差の絶対値が基準値以上変化する場合、入力設定流量Q
rに基づいて流量制御装置100の流量制御特性に適した整形後設定流量Q
trを出力するものである。
【0038】
より具体的には、前記設定流量整形部41は、例えば基準時間内に大きく目標値が変化する入力設定流量Q
rを受け付けた場合に、第1目標値r
1から第2目標値r
2へと所定時間かけて連続的に変化する連続変化区間が形成された整形後設定流量を出力するように構成してある。
【0039】
すなわち、前記設定流量整形部41は、目標値が第1目標値r
1から第2目標値r
2へと不連続に時間変化する不連続点を有する入力設定流量Q
rを受け付けた場合に、目標値が第1目標値r
1から第2目標値r
2へと所定時間かけて連続的に変化する連続変化区間を入力設定流量Q
rにおける不連続点に挿入した整形後設定流量Q
trを出力するように構成してある。
【0040】
第1実施形態では、
図4のグラフに示すように初期状態において第1目標値r
1の流量がゼロであり、所定時刻になった時点で所定の第2目標値r
2となるように不連続に変化するステップ関数が入力設定流量Q
rと入力されることを前提としている。前記設定流量整形部41が、このような入力設定流量Q
rを受け付けた場合、
図4に示すように不連続点に連続変化区間を挿入して目標値がゼロと第2目標値r
2との間で連続に変化するように変換した整形後設定流量Q
trを出力することになる。なお、整形後設定流量の連続変化区間の開始点が、入力設定流量の不連続点から所定時間ずれているのは、連続変化区間における目標値を設定するのにかかる演算時間が時間遅れとして発生しているためである。
【0041】
この設定流量整形部41は、前記連続変化区間の時間の長さを実際の流量が過渡応答状態から第2目標値r
2において略安定する安定状態となるまでの目標応答時間に基づいて所定時間に定めるとともに、第1目標値r
1と第2目標値r
2との間について時間を変数とする一次式で連続に接続して整形後設定流量Q
trとして出力するように構成してある。言い換えると、設定流量整形部41は、入力設定流量Q
rにおける不連続点にランプ関数(1次関数)で表現される目標値変化を与えることにより、急激な目標値の変化をなくすことで、より実際の流量が安定的に追従し、目標のオーバーシュート量や目標応答時間を達成しやすくしている。
【0042】
さらに、前記設定流量整形部41は、
図5に示すように受け付けられた入力設定流量Q
rの第1目標値r
1と第2目標値r
2の偏差の絶対値に応じて、前記連続変化区間における目標値の単位時間当たりの変化量の絶対値を設定している。
【0043】
より具体的には、
図5に示すように第1実施形態においては初期状態である第1目標値r
1はゼロで共通しているので、最終目標値である第2目標値r
2の大きさが大きいほど前記設定流量設定部は、前記連続変化区間におけるランプ関数の傾きを大きくすることで、第2目標値r
2が大きいほど単位時間当たりの目標値の変化量が大きくなるようにして整形後設定流量Q
trを出力するようにしてある。なお、第1実施形態においては、過渡応答状態から安定状態となるまでにかかる時間の目標値である目標応答時間は、最終目標値にかかわらず略一定の時間内に収めることを意図しているので、いずれの第2目標値r
2であっても連続変化区間の時間の長さは略同じにしてある。
【0044】
より具体的には、前記設定流量整形部41は、
図6の概念的グラフに示すように前記流量センサで測定される測定流量Q
pが各時刻における上限流量値及び下限流量値により規定される許容流量領域内に入ったときの目標値の単位時間当たりの変化量を前記連続変化区間に設定するように構成してある。すなわち、連続変化区間における目標値の単位時間当たりの変化量を示すランプ関数の傾きの大きさは実験等により最終目標値ごとに実際の流量の時間変化グラフが要求ステップ応答範囲に基づいて定められた許容流量領域内に入る値を調べてある。第1実施形態では、測定流量Q
pが許容流量領域内に入る所定時間の長さのうち、各最終目標値において共通するものを連続変化区間の長さとして設定することで、目標応答時間が略揃うようにしてある。
【0045】
また、上述した構成から明らかであるが、入力設定流量Q
rに不連続点が存在しない場合には前記設定流量整形部41は、入力された入力設定流量Q
rをそのまま整形後設定流量Q
trとして出力するように構成してある。
【0046】
なお、デジタル制御の場合において目標値が不連続に変化するとは、隣接する制御サイクルにおいて目標値の差分の絶対値が規定値以上の値になることを言う。また、目標値が連続に変化するとは、制御サイクルごとの隣接する各目標値の差分の絶対値が規定値未満となっていることを言う。すなわち、本明細書においては入力設定流量Q
r及び整形後設定流量Q
trが時間に関する関数ではなく、時間に関する点列として表現される場合についても連続、不連続の概念を拡張して使用している。
【0047】
前記バルブ制御部42は、前記設定流量整形部41から出力される整形後設定流量Q
trと前記流量センサで測定される測定流量Q
pとの偏差が小さくなるようにフィードバック制御により前記流量制御バルブ2に印加される電圧を制御することで前記流量制御バルブ2の開度を制御するものである。例えばこのバルブ制御部42はPID制御により前記流量制御バルブ2の開度を制御するものであり、PID係数については入力設定流量Q
rの最終目標値である第2目標値r
2の大きさに応じて変更されることはなく、固定された値を用いている。場合によって第2目標値r
2の大きさに応じてPID係数を適宜変更することにより流量制御特性を改善しても構わない。
【0048】
このように第1実施形態の流量制御装置100によれば、前記設定流量整形部41が、ユーザにより入力されたステップ状の入力設定流量Q
rに対して、不連続点にランプ状に目標値が変化する連続変化区間を挿入するとともに、最終目標値である第2目標値r
2の値が大きくなるほど連続変化区間における目標値の時間変化率を大きく設定した整形後設定流量Q
trを出力するので、実際に流路1を流れる流体の流量が過渡応答状態から安定状態になるまでの時間を略一定に保つことができる。
【0049】
また、安定かつオーバーシュート量や目標応答時間を満たすように連続変化区間における目標値の時間変化率を最終目標値ごとに予め実験により取得しているので、どのような入力設定流量Q
rがユーザにより入力されたたとしても、整形後設定流量Q
trと測定流量Q
pによるフィードバックにより常に所定の許容流量領域内で流量制御を行うことができる。
【0050】
さらに、第1実施形態においてはユーザから入力された入力設定流量Q
rを整形後設定流量Q
trに変換することだけで、実際の測定流量Q
pの応答を所望のものにすることができるので、例えば前記バルブ制御部42におけるPID係数の調整によりさらに流量制御特性を改善する事も可能である。
【0051】
次に第2実施形態の流量制御装置100について説明する。なお、第1実施形態と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0052】
第1実施形態の設定流量整形部41は、各最終目標値である第2目標値r
2に応じて連続変化区間における目標値の時間変化率を異ならせるとともに、ある第2目標値r
2が与えられた場合に連続変化区間における目標値の時間変化率を常に一定に保ち、連続変化区間中において傾きを常に一定に保つように構成してあったが、第2実施形態の設定流量整形部41は、所定の条件下において連続変化区間内において傾きを変化させるように構成してある。
【0053】
すなわち、第2実施形態の設定流量整形部41は第1目標値r
1と第2目標値r
2の偏差の絶対値が大きいほど、各偏差の絶対値の大きさに応じて連続変化区間における少なくとも一部分の目標値の時間変化率を大きくしている。さらに、この設定流量整形部41は、前記連続変化区間の目標値により流量制御が開始されてからにおける前記流量センサで測定される測定流量Q
pが閾値流量値になった時点で、目標値の時間変化表す一次式の傾きの絶対値を変更するように構成してある。
【0054】
より具体的には、前記設定流量整形部41は
図7に示すように初期状態である第1目標値r
1が0%であり、最終目標値である第2目標値r
2が100%に設定されている場合には、連続変化区間の目標値に流量制御が開始されてから測定流量Q
pが閾値流量値である80%に到達すると、連続変化区間における後半部分の傾きは、前半部分に比べて小さくなるように変化させる。すなわち、連続変化区間が開始されてから測定流量Q
pが閾値流量値となるまでの間は、目標値の時間変化を表す一次式の傾きを非常に大きく設定して応答速度を上げているのに対して、閾値流量値を超えてからはオーバーシュート量を抑えて安定性をより向上させるために目標値の時間変化率を表す一次式の傾きを小さくして最終目標値に緩やかに収束するようにしてある。
【0055】
また、閾値流量値よりも小さい値が最終目標値である第2目標値r
2に設定されている場合には、
図7に示すように前記設定流量整形部41は連続変化区間において目標値の時間変化を表す一次式の傾きを常に一定に保つように構成してある。
【0056】
このように、第2実施形態の流量制御装置100によれば、第1目標値r
1と第2目標値r
2の偏差が所定値よりも大きい場合には、実際に流れている流量が閾値流量値を超えた時点を境界として連続変化区間中における目標値の時間変化率を大きい状態から小さい状態に変更するように構成してあるので、何も流れていない状態から大流量を流す場合でも応答時間を大幅に短縮するとともに、オーバーシュート量を小さくすることができる。
【0057】
第2実施形態の変形例について説明する。整形後設定流量Q
trにおいて目標値の時間変化率が変化するタイミングについては、測定流量Q
pに基づかずに決定してもよい。例えば、連続変化区間の時間長さに対して所定割合だけ時間が経過した時点での目標値が閾値流量値となるように整形後設定流量Q
trが前記設定流量整形部41から出力されるように構成してもよい。
【0059】
前記各実施形態においては、前記設定流量整形部が出力する整形後設定流量の連続変化区間における目標値の単位時間当たりの変化量は、時間変化率や目標値の時間変化を表す一次式の傾きにより変更していたが、単純に隣接する各目標値の差分や比によって変更してもよい。また、前記設定流量整形部は、入力設定流量の不連続点に連続変化区間を挿入し、元々あった第2目標値を連続変化区間分だけ後にずらすことで整形後設定流量を形成していたが、例えば、第2目標値で一定に保たれている初期区間の一部を連続変化区間に変化させて整形後設定流量を形成するようにしても構わない。
【0060】
より具体的には、
図8(a)に示すように連続変化区間の開始点と終了点においてS字補完するとともに、連続変化区間の中央部における目標値の単位時間当たりの変化量の絶対値を最終目標値である第2目標値の大きさに応じて変化させるように前記設定流量整形部を構成してもよい。
【0061】
また、
図8(b)に示すように第2目標値の大きさに応じて連続変化区間の長さを変更して各第2目標値の大きさに応じた目標値の時間変化率を設定するように前記設定流量整形部を構成してもよい。より具体的には、例えば第2目標値が大きいほど連続変化区間の長さが長くなるように設定することで、第2目標値が大きいほどそれぞれの目標値の時間変化を表す一次式の傾きが大きくなるようにしてもよい。
【0062】
前記実施形態では初期状態である第1目標値は0%に固定していたが、例えば予め10%や20%等のある低流量が一定に保たれている状態を第1目標値としてもよい。このようなものであっても、本発明の流量制御装置によれば第1目標値と第2目標値の偏差に応じて、連続変化区間における目標値の単位時間当たりの変化量を変更することで、どのような入力設定流量が入力されても好ましい流量制御を行うことができる。
【0063】
さらに、前記実施形態においては流量を増加させる方向の流量制御について説明したが、同様にある流量から別の流量へと流量を減少させる場合にも本発明は同様に適用することができる。この場合、第1目標値と第2目標値の偏差の絶対値が大きい、すなわち、第1目標値に対して第2目標値が小さいほど、整形後設定流量の連続変化区間における目標値の時間変化量は大きくなるようにすればよい。このようにすれば、流量を増加させる場合と同様に、どのような目標値変化が与えられたとしても実際に測定される測定流量を目標応答範囲内に収めることができるようになる。
【0064】
また、上述してきたような設定流量整形部及びバルブ制御部をプログラムとして記録した記録媒体によって、既存の流量制御装置のプログラムを更新すれば、本発明の効果を後付けで既存の流量制御装置にも付加することができる。
【0065】
加えて、第1目標値から第2目標値へと所定時間かけて連続的に目標値が変化する連続変化区間については、隣接する目標値について各目標値の偏差の絶対値が基準時間内に基準値以下となっているものの集合であればよい。例えば、ある隣接する目標値間の時間変化量がΔt
a、目標値変化量がΔr
a、別の隣接する目標値間の時間変化量がΔt
b、目標値変化量がΔrbのようにそれぞれ異なっていたとしても、Δt
a、Δt
bが基準時間内であり、目標値変化量Δr
a、Δr
bの絶対値が基準値以内であれば連続と見なすことができ、連続変化区間を構成するものにできる。言い換えると、一部分だけ隣接する目標値間の時間変化量が大きかったり、目標値変化量が大きかったりしたとしても、上述した基準時間、基準値内のものであれば連続変化区間の一部を構成するものとなる。
【0066】
ハードウェア構成については、前記実施形態等に図示したものに限られない。例えば、流路上における各流体機器の設置の順番は図示したものに限られず、流量センサ、流量制御バルブの順番で配置されていても構わない。また、流体抵抗としては層流素子に限られず、音速ノズル等を用いても構わない。さらに、流体抵抗の下流側が例えば略真空に保たれており、流体抵抗の下流側の圧力が略一定値で変化しない場合には、第2圧力センサを省略して第1圧力センサで測定される圧力のみで流量を算出してもよい。
【0067】
加えて、流量センサとしては、各実施形態に示した圧力式のものに限られず、熱式の流量センサを用いても構わない。
【0068】
さらに、本発明は流量制御装置だけでなく、圧力制御装置に用いても構わない。より具体的には、圧力センサと、圧力制御バルブと、不連続に第1目標値から第2目標値へと変化する設定圧力値を受け付けたばあいに、第1目標値から第2目標値へと所定時間かけて連続的に変化する連続変化区間が形成された整形後設定圧力を出力する設定圧力整形部と、整形後設定圧力と測定圧力に基づいて圧力制御バルブを制御するバルブ制御部とを備え、前記設定圧力整形部が、受け付けられた入力設定圧力の第1目標値と第2目標との偏差の絶対値の大きさに応じて、前記連続変化区間における単位時間当たりの目標値の変化量を変更するように構成されているものであってもよい。また、
図5、
図7、
図8等に記載されている入力設定流量から整形後設定流量を形成する各実施形態についても流量を圧力に読み替えることで同様に圧力制御装置においても実現することができる。
【0069】
その他、本発明は前記図示例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。