【実施例1】
【0025】
本実施例では、試料表面の分光反射率を検出して、検出した分光反射率に基づいて、試料表面に形成された微細な繰り返しパターンの断面形状を測定する装置の例を説明する。
【0026】
図5に装置の構成図を示す。装置は少なくとも、分光反射率を検出するための分光反射率検出光学系901と、試料905及び基準試料906を設置するための試料ステージ902、分光反射率検出光学系901を制御して分光検出することやステージの動作を制御する制御ユニット903、検出した分光反射強度に基づいて断面形状を算出する演算ユニット904、条件設定及び結果表示等するインターフェース907、演算ユニット904で演算に必要なデータを記憶するデータ記憶部908を備えて構成される。
【0027】
図6Aに分光反射率検出光学系901の構成の一例を示す。光学系は少なくとも、多数の波長を含む光を照射する光源1001と、光源から射出した光を試料表面に照射する光学系1002と、試料表面からの反射光を分光する分光検出器1003とから構成される。
【0028】
同図は、一般的な光学顕微鏡を応用して構成した場合を示している。光源1001にはキセノンランプを用いることで、紫外光から赤外光までの光を射出することができる。深紫外光が必要な場合には重水素ランプを用いることや、紫外光が不要であればハロゲンランプを用いてもよい。また、複数波長を含む光を射出するレーザ光源や、複数の異なる波長のレーザ光源を用いることも考えられる。
【0029】
光学系1002は一例として、照明光学系1004、ハーフミラー(またはビームスプリッタ)1005、対物レンズ1006、結像レンズ1007、視野絞り1008とを備えて構成される。
【0030】
照明光学系1004は、
図6Bに示すように、集光レンズ10041、第1のスリット板10042、コリメートレンズ10043、第2のスリット板10044を備えて構成されている。
【0031】
このような構成において、照明光学系1004は、光源1001から発射された光を集光レンズ10041で集光し、集光された光が細く絞られた個所の付近に設けられた第1のスリット板10042に設けた孔により外乱光を遮光して集光された光を透過させ、第1のスリット板の穴を通過して径が拡大した光をコリメートレンズ10043で平行光に変換し、この平行光に変換した光のうち周辺の光を第2のスリット板10044で遮光して強度が比較的そろっている中心付近の光を第2のスリット板10044に設けた孔を通過させる。第2のスリット板10044を通過した光は、ハーフミラー1005に入射し、その半分は対物レンズ1006の側に反射されて試料905に照射される。
【0032】
試料905からの反射光は、再び対物レンズ1006とハーフミラー1005を介し、今度は結像レンズ1007と視野絞り1008を介して分光検出器1003に導かれる。試料905の表面と視野絞り1008が設けられた面とは光学的に共役となっており、視野絞り1008によって試料905表面の特定の領域の反射光のみを通過させることができる構成となっている。
【0033】
ステージ902は、水平方向に2軸、垂直方向に1軸のいわゆるXYZの3軸を備えるか(
図7A)、水平方向に1軸と回転、垂直方向に1軸のいわゆるXZθステージの3軸を備える(
図7B)ことが望ましい。
【0034】
制御ユニット903は、分光反射率検出光学系901とステージ902を制御して、試料905の表面の任意の位置で分光反射率を検出することを実現する。
【0035】
断面形状を測定する一連の動作を、
図8を用いて説明する。まず始めに、ステージ902を動作させて、基準試料906を分光反射率検出光学系901で分光検出可能な位置に移動する(S1201)。ここで、基準試料906の分光反射強度Irを検出する(S1202)。次に、ステージ902を動作させて、試料905を分光反射率検出光学系901で分光検出可能な位置に移動する(S1203)。同様にここで、試料905の分光反射強度Isを検出する(S1204)。分光反射強度の検出時は必要に応じて、試料905面が、分光反射率検出光学系901のフォーカス位置となる様に、Z軸を調整する。次に、演算ユニット904において、上記、検出した2つの分光反射強度の比(Is/Ir)を算出する(S1205)。
【0036】
演算ユニット904においては、算出した分光反射率を用いて、ライブラリマッチングまたはモデルフィッティングにより、断面形状を算出する(S1206)。
【0037】
以上の動作を、必要に応じて繰返すことにより、試料905の表面の任意の位置でのパターンの断面形状を測定することができる(S1207)。
【0038】
次に、S1206で実行する断面形状の算出方法について説明する。例として、ライブラリマッチングによる方法を、
図9を用いて説明する。
【0039】
演算ユニット904において、ライブラリマッチングにより形状を測定するには、検出した分光反射率のデータを用意し(S1301)、一方、光学シミュレーションにより算出した分光反射率のデータをデータ記憶部908に記憶されているライブラリ(データベース)から引き出し(S1302)、これらのデータを比較して誤差を算出し(S1303),既に算出した誤差との比較を行って誤差の最小値判定を行う(S1304)ことをデータ記憶部908のライブラリに記憶されている全データについて行い(S1305)、S1304で検出した分光反射率との誤差が最も小さくなる分光反射率を計算した時の形状条件を形状測定値として、分光反射率と形状条件とを関連付けて記憶されているライブラリから抽出する(S1306)。
【0040】
S1303において、検出した分光反射率とデータベースから引き出したシミュレーションで計算した分光反射率との誤差を算出する方法としては、例えば、(数1)に示す平均自乗誤差を用いることが考えられる。同式で、R
sが検出した分光反射率を、R
mがシミュレーションにより算出した分光反射率を示している。
【0041】
【数1】
【0042】
実際に検出した分光反射率は、分光検出器の仕様により、波長が等間隔のデータでない場合が多い。その場合には、補間する等により検出したデータと算出したデータの波長を一致させておく。
【0043】
上記の通り、ライブラリマッチングによる方法では、予め分光反射率のライブラリを演算により作成しておく必要がある。次に分光反射率のライブラリの演算方法について
図10を用いて説明する。
【0044】
まず始めに、測定対象の断面形状をある程度把握するために、概略の形状の検出(概形状の検出)を行う(S1401)。この作業は、別の手段で対象形状を測定することや、断面をSEMで観察する等で実現できる。次にこの断面形状をモデル化する(S1402)。
【0045】
次に、ライブラリを演算するための形状パラメータを選定する(S1403)。試料の表面に形成されたパターンの断面形状は、形成プロセスの条件によって変化する。この変化は、S1401で別方式により測定した測定対象の断面形状またはSEMで観察した断面形状が、単純に相似的に変化するものではない。そのため、少ないパラメータで、可変し得る全ての形状を表現できる断面形状モデルを考える必要がある。
【0046】
最後に、ライブラリを演算する。ライブラリを演算するには、モデルを構成するパラメータの演算条件を決める必要がある(S1404)。パラメータの演算条件には、例えば、演算範囲と分解能とを設定する方法がある。演算範囲については変化し得る形状を網羅する様に設定し、分解能については必要な形状測定精度を得るのに十分な大きさとすればよい。この設定したパラメータの演算条件でライブラリを演算する(S1405)。
【0047】
分光反射率を算出する手段としては、RCWA(Rigourous Coupled Wave Analysis)法を用いる(RCWAは当該技術分野において既知の技術である)。対象パターンの大きさが小さく、検出に用いている波長の10分の1程度以下の場合には、
図11に示す様に、有効媒質近似を用いて対象パターンを層構造に近似し、この近似した層構造に基づいてフレネル係数の式で算出する方法でもよい(有効媒質近似及びフレネル係数は当該技術分野において既知の技術である)。
【0048】
有効媒質近似とフレネル係数を用いて反射率を算出する方法については、特許文献5に記載の方法を用いればよい。
【0049】
以上により、試料の表面の分光反射率を検出し、検出した分光反射率に基づいて試料表面に形成された微細な繰返しパターンの断面形状を測定することができる。
【0050】
次に、S1402において,断面形状をモデル化する方法について説明する。第1の方法として、断面形状のモデル化にガウス分布等の分布関数による分布形状を用いる方法を説明する。前述したように、従来のモデル化では、
図3に示すような左右が非対称な断面構造301を
図4に示す様に台形を垂直方向に積み重ねたモデル401を適用する。この方法では、複雑な形状をモデル化しようとした場合に垂直方向に分割する台形の数を増やさなければならず、その結果パラメータ数が大きくなるという課題があった。
【0051】
これに対して本実施例では、
図12Aに示す様に、例えばガウス分布を水平方向に複数配置して、それらを足し合わせた形状でモデル化を実現するようにした。すなわち、同図に示す様に、水方方向に配置した2つのガウス分布501,502を足し合わせてモデル化形状503を形成する(同図中点線で表示)。
【0052】
図12Aに示す例の場合、パラメータ数は、ガウス分布の数と、ガウス分布を定義するガウス分布関数のパラメータの数3(中心位置p、高さh及び半値幅w)とを掛け合わせた数6となり、従来の台形を積み重ねた場合の21と比較して大幅に減じることができる。また、断面形状とモデルとの形状誤差も小さくすることができ、より精度の高い形状測定が可能となる。
【0053】
図12Aに示したような、ガウス分布を2つ用いて断面形状モデルを作成する場合、入力データは
図12Bに示すように、ガウス分布を特徴づける高さ、半値幅と位置の3つのデータをそれぞれのガウス分布データとして入力すればよい。また、
図12Bの入力データに基づいて演算した結果として、
図12Aの実線で示した断面形状モデル503301と点線で示した2つのガウス分布501と502とを合成したデータ503との誤差データとして、
図12Cに示すような、ピーク位置誤差、高さ誤差、最大誤差等を算出した結果が出力(画面に表示)される。オペレータは、この結果を見て、
図12Bで入力したデータの調整を行うことができる。
図12Bに示した入力データ、及び
図12Cに示した出力データは、
図12Aのグラフと一緒に、インターフェース907の画面上に表示される。
【0054】
図12Aは、一例としてガウス分布を2つ用いた場合を示したものであり、用いるガウス分布の数は2つに限らない。3つ又はそれ以上を組み合わせて作成してもよい。
【0055】
また、同様に
図12Aでは、分布形状を表わす分布関数として、ガウス分布を用いているが、ガウス分布に限定するものではなく、ローレンツ分布やSINC関数等を用いてもよい。
【0056】
なお、ガウス分布を用いることは、特許文献3の[0074]に記載があるが、同文献では、ガウス分布を水平方向に複数配置することや、非対称形状を測定することは開示されていない。
【0057】
複数のガウス分布関数を用いることは、例えば、レジストを複数回露光することにより非対称な断面形状を形成させた場合には、物理的な現象と合致した妥当なモデル化であるといえる。
〔変形例1〕
断面形状をモデル化する方法の変形例として、例えば、単純なスリット状の開口をもつマスクを用いて、そのマスク位置と露光量を可変して複数回露光することにより、断面形状が非対称なパターンを形成することを考える。パターンの形成原理を、
図13を用いて説明する。同図はレジスト2004への露光を模式的に示した図である。
【0058】
光源からの射出した光2001によって、マスク2002、この場合は幅aのスリット状の開口の像が基板2005上のレジスト2004に転写される。同図は、スリットの像、すなわち露光の強度分布2006をレジストの表面を原点とし深さ方向に基板2005に向かって示した図である。スリット状開口の幅が露光に用いる光の波長に近い場合には、レジストに転写される露光の強度分布は、矩形の分布ではなく、同図に点線で示すような分布状となる。
【0059】
仮に1回だけ露光したサンプルを現像した場合は、
図14に示すような、露光強度分布2006とレジスト2004の特性や現像の条件できまる溝形状2101となる。同図はポジ型レジストの場合を例に示したものである。
【0060】
図14に示した通り、1回の露光では非対称な形状を形成することはできない。そこで、マスクの位置や露光量を変えて複数回実施してプロセスの物理現象に基づいて形状モデルを形成することにより、非対称な形状を形成する。
図15は5回露光により非対称な形状を形成した例を示している。同図の場合は、マスク2002位置を等間隔でずらし(
図15では中心位置での場合のみ図示)、それぞれの露光量2201を変えることにより、非対称な露光分布形状2202を形成した例を示している。これを現像することにより、
図16に示すような非対称なパターン形状2301を実現することができる。
【0061】
図16に示すような非対称なパターン形状2301を、上述した水平方向に展開した複数の分布形状を重ね合わせた、プロセスの物理現象に基づいて形成した形状モデルで測定する場合、上述した測定対象パターンの形成プロセスの情報を用いることができる。
【0062】
図17は基板2603上のレジスト2602に形成した非対称なパターン2601を示している。これを
図18に示すように、ガウス分布によりモデル化する。同図では、逆さまのガウス分布を5つ用いてモデル化した例を示している。モデル化した形状2701(点線)は、5つのガウス分布2701〜2705を重ね合わせた値をレジスト表面2706から減算することで求めている。この場合、モデル形状を決定するパラメータとしては、ガウス分布を定義する幅,高さ及び位置の3パラメータが5つのガウスそれぞれに必要なため3×5=15パラメータが必要であるが、対象パターンを形成するプロセス条件から、減じることができる。
【0063】
例えば、複数回露光の間隔はプロセス条件から既知であり、また露光装置にもよるが、数nm以下の精度で位置決めされているため、プロセス条件から各分布の中心位置を決定することができる。
【0064】
また、複数回露光を実施する際、
図15では同じマスクを用いている。
図19は同じスリット状のマスクを用いて、露光量を3種変えた場合の露光分布形状2401〜2403を模式的に示したものである。同図で、矢印2404で示す幅がそれぞれの半値幅であり、各分布の半値幅2404は露考量によらず一定となる。このことから、
図18に示す5つのガウス分布の半値幅は同じであると考えられる。そのため、同じマスクを用いる場合は、各露光におる分布形状の幅(半値幅)を同一の値として扱うことができる。
【0065】
また、複数露光による分布形状幅(半値幅)を同一値として1つのパラメータとする、または、予め半値幅の評価ができれば全ての分布の半値幅を固定値とすることができる。
【0066】
複数回露光のマスクの幅がすべて異なる場合も、マスクの幅と分布形状半値幅との間には相関関係があるので、計算により露光の分布形状の半値幅を確定する、または実際に評価することにより、分布形状の半値幅を確定することができる。
【0067】
分布の高さも、露光量との間に相関があるため、露光量から、これを固定値として、ライブラリ演算時のパラメータから除外することができる。
【0068】
以上はすべて、プロセス条件が安定していることが前提で固定値として扱うことができることを述べたが、プロセスにはばらつきがあるため、ばらつきの生じうるパラメータのみを用いてライブラリ演算を実施すればよい。例えば、
図16に示したような、同一マスクで等間隔に露光し、各露光の露光量を可変することにより、さまざまなパターン形状を形成しようとした場合は、モデルに用いる分布の位置と半値幅を固定とし、露光量のみをパラメータとすれば、本来パラメータ数は3×5=15パラメータ必要であるが、各露光量の5パラメータのみでモデル形状を構築することができる(
図20A)。
【0069】
または、モデルに用いる分布の半値幅だけを固定とし、分布の位置と露光量とをパラメータとすれば、必要なパラメータ数は、2×5=10パラメータとなり、10パラメータでモデル形状を構築することができる(
図20B)。
【0070】
以上の様に、パターン形成時のプロセス条件を利用することにより、ライブラリ演算のパラメータ数を減じることができる。パラメータを減じることができれば、ライブラリ数を減じることができ、パターン形状測定に必要な演算時間を短縮することができる。または各パラメータについてより詳細なライブラリを演算することが可能となり、より精度の高い測定が実現できる。
【0071】
上記に
図13乃至16及び
図18乃至
図20Bを用いて説明した例は、いわゆるポジ型のレジストについて説明したが、いわゆるネガ型についても同様に扱うことが可能である。すなわち、ポジ型では感光した部分が残るが、ネガ型では感光していない部分が残る。上記ポジ型では、例えば
図15で説明したようにパターンの表面を原点として基板に向かって分布形状を定義したが、ネガ方の場合は、例えば
図21に示すように、レジスト2004と基板2005との界面を原点として膜厚方向に分布形状2501を定義すればよい。
ネガ型のレジストを用いる場合、
図17に示したようなレジスト2602による非対称なパターン2601を基板2603上に形成するためには、
図18で説明したポジ型のレジストを用いた場合とは逆に、
図22に示すようなガウス分布によりモデル化する。同図では、
図18の場合と同様に、ガウス分布を5つ用いてモデル化した例を示している。
【0072】
モデル化した形状2906(点線)は、5つのガウス分布2901〜2905を重ね合わせた値として求めている。この場合、モデル形状を決定するパラメータとしては、
図18の場合と同様に、ガウス分布を定義する幅,高さ及び位置の3パラメータが5つのガウスそれぞれに必要なため、3×5=15パラメータが必要であるが、対象パターンを形成するプロセス条件から減じることができて5パラメータ又は10パラメータでモデル形状を構築できるのは、ポジレジストを用いた場合の例で説明したのと同じである。 上記は、例として5つのガウス分布を用いる方法を説明したが、分布の数は5に限るものではなく、分布形状も対象によって適切に選択すればよい。
【0073】
上述したとおり、形状モデルに用いる分布形状はガウス等の分布形状を用いることで、十分精度の高い測定が可能である。しかし、実際の分布形状は正確にはガウス等の比較的単純な分布形状ではなく、レジストの特性や現像条件等によって決まる形状である。
【0074】
そこで、より精度の高い測定を実現するには、実際にどのような分布であるかを実測すればよい。測定した形状に基づいてモデルを構築すればより精度の高い測定が可能である。
【0075】
また、例えば5つの分布形状でモデルを構築した場合、実際の形状との間に、分布形状に起因する誤差が生じ、5周期の誤差が生じることが考えられる。この場合は、1周期分の幅で移動平均処理をすることにより、誤差を低減することが可能である。
なお、物理現象に基づいて正確な分布形状を演算で求めることも可能である。
【0076】
上記では、複数の分布形状を水平に展開して重ね合わせすることによりモデルを構築しているが、測定対象によっては垂直方向または斜め方向に展開した分布を重ね合わせることも考えられる。また、水平方向,垂直方向及び斜め方向を組み合わせることも考えられる。
【0077】
従来は上記のとおりシミュレーションする際のモデルの形状は、台形や矩形を積み重ねたモデルを利用することが一般的であった。このモデルの特徴は、対象形状を分割して比較的単純な形状に置き換えるというものである(領域分割モデル)。一方で、本実施例のモデルは、物理現象に基づいて複雑な対象形状を比較的単純な分布形状の重ね合わせで構築するという特徴がある(分布重畳モデル)。
【0078】
〔変形例2〕
次に、S1402において,断面形状をモデル化する方法の第2の変形例として、断面形状のモデル化にフーリエ級数展開を用いる方法を説明する。
図23Aは、
図3に示す断面形状301をフーリエ級数展開してモデル化した形状を示している(同図中点線601で表示)。フーリエ級数展開によっても、実線で示した断面形状503と一致した形状を求めることができる。
図23Bには、フーリエ級数展開によりモデル化する場合に入力するデータの一例を示す。入力データとしては、位相と振幅及びモデル化に用いるフーリエ級数の項数である。
図23Cに入力するデータの他の一例を示す。入力データは
図23Cに示すように、振幅と位相の2つのデータを項数分入力すればよい。
図23Cは項数2の場合の例を示している。項数分の振幅と位相を入力する。また、計算の結果は、
図12Cに示したものと同じような情報が出力される。
図23Bまたは
図23Cの入力データ、及び
図12Cと同様な出力データは、
図23Aのグラフと一緒に、インターフェース907の画面上に表示される。
【0079】
ここで、
図3に示す断面形状をもつ回折格子の回折効率を考える。
図24A乃至
図24Cは、n項(n=2,3及び4)までのフーリエ級数で、回折格子の断面形状501モデル化した形状を示している。即ち、
図24Aは2項までのフーリエ級数によるモデル形状701(点線)を実線で示した断面形状501と重ねて表示したものである。また、
図24Bは、3項までのフーリエ級数によるモデル形状702を断面形状501と重ねて表示したものである。更に、
図24Cは、4項までのフーリエ級数によるモデル形状702を断面形状501と重ねて表示したものである。
図24A乃至
図24Cに示す様に、次数が小さい場合(
図24A)は、元の形状との誤差が大きい。
【0080】
ここで、回折格子性能の一つである回折効率に着目する。
図25は横軸にモデル化に用いる項数nを、縦軸にn項までのフーリエ級数でモデル化された形状での回折効率を計算で求めたものである。同図から形状の誤差が十分小さくなる項数に達する前に、回折効率はほとんど項数の大きい場合とほとんど同値となることがわかる。すなわち、形状誤差が十分小さくなる項数まで計算しなくても、回折格子の回折効率を評価することができる。
【0081】
なお、フーリエ級数展開を用いることは、特許文献4の[0197]に記載があるが、非対称な形状をモデル化することや、回折効率との相関をとることは開示されていない。
〔変形例3〕
次に、S1402において,断面形状をモデル化する方法の第3の変形例について説明する。上記第1の方法及び第1及び第2の変形例におけるモデル化の式を一般化すると、(数2)で表すことができる。同式は、水平方向に配置した複数の分布形状f(x)を足し合わせた式となっている。上記2つの方法の場合は、分布形状をそれぞれ、(数3)及び(数4)とした場合となる。
【0082】
【数2】
【0083】
【数3】
【0084】
【数4】
【0085】
第3の変形例においては、(数2)で表わされるような一般化した式に、分布形状f(x)として、(数3)で表わされる第1の方法で説明したものと(数4)で表わされる第2の方法で説明したものを、それぞれに重みを付けて組み合わせてモデル化する。この場合、分布形状としては、前述の通り、ガウス分布に限らず、ローレンツ分布やSINC関数等を用いることも考えられる。要は、形状モデルとして適切な分布を選択すれば良い。
【0086】
本実施例によれば、試料表面の分光反射率を検出して得られたデータから、左右非対称な断面形状のモデルデータを、複数の分布関数を用いてより少ないパラメータを用いて計算することが可能になるので、従来の台形パターンを組み合わせて断面形状のモデルデータを作成する場合と比べて、高い形状測定精度を維持しつつ、ライブラリの演算時間を低減させることが可能になった。
【実施例2】
【0087】
本実施例では、試料表面のエリプソパラメータを検出して、検出したエリプソパラメータに基づいて、試料表面に形成された微細な繰り返しパターンの断面形状を測定する装置の例を説明する。
【0088】
図26に本実施例における装置の構成図を示す。本実施例による装置構成は実施例1で
図5を用いて説明した装置と同様であるが、分光反射率を検出するための分光反射率検出光学系901の代わりに分光エリプソ光学系1601で構成されている。
【0089】
図27に分光エリプソ光学系1601の構成の一例を示す。分光エリプソ光学系1601は少なくとも、多数の波長を含む光を照射する光源1701と、偏光子1702と、光軸を中心として偏光子を回転させる回転ステージ1706と、補償子1703と、検光子1704及び分光検出器1705を備えて構成される。必要に応じて光源1701から補償子1703でまでの入射光学系と、検光子1704から分光検出器1705までの検出光学系とを試料に対して相対して同じ角度(仰角)で配置してその角度を調整可能な調整機構(図示せず)を設けるようにしてもよい。試料905を載置するステージ912は、実施例1で説明したステージ902と同様に、
図7A又は
図7Bに示したような構成を有している。
【0090】
図27に示した構成において、光源1701から射出した光は、偏光子1702と補償子1703を介してステージ912に載置された試料に照射され、その反射光は、検光子1704を介して分光検出器1705で分光検出される。なお、検光子1704と偏光子1702とは同じ構成のもの(1/4波長板又は1/2波長板又はそれらを組合せたもの)であっても良い。
【0091】
図26の制御ユニット1602は、補償子回転ステージ1706と分光検出器1705とステージ902を制御して、試料905の表面の任意の位置で分光強度を検出し、検出した分光強度に基づいて演算ユニット1603によってエリプソパラメータを算出する。
【0092】
具体的には、補償子回転ステージ1706で補償子1703の角度を回転させて分光検出器1705で分光反射強度を検出する。検出した対補償子角度の分光反射強度データに基づいてエリプソパラメータであるΔとΨとを算出する。分光強度データに基づいてエリプソパラメータを算出することは、当該技術分野において既知の技術であるので、算出の詳細は割愛する。
【0093】
実施例2における、ライブラリマッチングによる断面形状の算出方法を
図28に示す。同図は実施例1における
図8に示したフロー図に相当する。
【0094】
エリプソパラメータに基づいてライブラリマッチングにより断面形状を算出する手順は、先ず始めに、ステージ912を駆動して、試料を測定位置に移動させる(S1801)。次に、制御ユニット1602で制御された補償子回転ステージ1706を回転させて補償子1704の角度を変化させながら試料905の表面からの反射光を分光検出器1705で検出し、分光反射強度データを得る(S1802)。次に、S1802で得られた分光反射強度データを用いてエリプソパラメータであるΔとΨとを算出する(S1803)。次に、この算出したエリプソパラメータ(ΔとΨ)をもちいて、ライブラリマッチングまたはモデルフィッティングにより断面形状を算出する(S1804)。
【0095】
以上の動作を必要に応じて繰り返すことにより、試料905の表面の任意の位置での繰り返しパターンの断面形状を測定することができる(S1805)。
【0096】
次に、S1804で実行する断面形状の算出方法について説明する。例として、ライブラリマッチングによる方法を、
図29を用いて説明する。
ライブラリマッチングにより形状を測定するには、検出した分光反射強度のデータからS1803において算出したエリプソパラメータ(ΔとΨ)を用意し(S1901)、一方、光学シミュレーションにより算出したエリプソパラメータのデータをライブラリ(データベース)から引き出し(S1902)、これらのデータを比較して誤差を算出し(S1903),既に算出した誤差との比較を行って誤差の最小値判定を行う(S1904)ことをライブラリに記憶されている全データについて行い(S1905)、S1904で検出した誤差が最も小さくなるエリプソパラメータを計算した時の形状条件を形状測定値として、エリプソパラメータと形状条件とを関連付けて記憶されているライブラリから抽出する(S1906)。
【0097】
S1903において、検出したエリプソパラメータとデータベースから引き出したシミュレーションで計算したエリプソパラメータとの誤差を算出する方法としては、同様に(数5)または(数6)に示す平均自乗誤差を表す式を用いることが考えられる。同式では、一例としてΔとΨとをその可変範囲で正規化して足し合わせた値を用いた場合を示している。
【0098】
【数5】
【0099】
【数6】
【0100】
実際に検出したエリプソパラメータは、分光検出器の仕様により、波長が等間隔のデータでない場合が多い。その場合には、補間する等により検出したデータと算出したデータの波長を一致させておく。
【0101】
上記の通り、ライブラリマッチングによる方法では、予めエリプソパラメータのライブラリを演算しておく必要がある。
【0102】
ライブラリを演算して求める方法は実施例1で
図10を用いて説明した方法と同様であるので、説明を省略する。RCWAや有効媒質近似を用いてフレネルの式を用いることによりエリプソパラメータを算出することができる。
以上の方法により、試料表面に形成された微細な繰り返しパターンの断面形状を測定することができる。
【0103】
本実施例によれば、試料表面のエリプソパラメータを検出して得られたデータから、左右非対称な断面形状のモデルデータを、複数の分布関数を用いてより少ないパラメータを用いて計算することが可能になるので、従来の台形パターンを組み合わせて断面形状のモデルデータを作成する場合と比べて、高い形状測定精度を維持しつつ、ライブラリの演算時間を低減させることが可能になった。