(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0014】
(光学フィルム)
本発明の光学フィルムは、繰り返し単位を有する化合物、及びセルロースエステルを少なくとも含み、波長590nmにおける面内レタデーション(Re)が10nm以下であり、弾性率が3.5GPaを超え、繰り返し単位を有する化合物が、多塩基酸及び多価アルコールの縮合体であり、かつ、下記(1)〜(6)の条件を満たすことを特徴とする。
(1)多塩基酸として炭素数5以下の多塩基酸を少なくとも含む。
(2)多塩基酸の平均炭素数が3以上6未満。
(3)多価アルコールの平均炭素数が2以上3以下。
(4)1種の多塩基酸と1種の多価アルコールの組み合わせによって構成される繰り返し単位がすべて炭素数4以上9以下。
(5)数平均分子量が800以上5000以下。
(6)水酸基価が40mgKOH/g未満。
このような構成を有するため、本発明の光学フィルムは、収縮力が低く、弾性率が高い。
なお、本発明の光学フィルムは、一度もロール状に巻き取らずに得られた光学フィルムであってもよく、ロール状光学フィルムを巻きだして所定の大きさに切り取った光学フィルムであってもよい。
【0015】
本発明の光学フィルムは、所定の繰り返し単位を有する化合物をセルロースエステルに含有させることで、弾性率が3.5GPaを超えても、収縮力を抑制することができる。これにより、本願発明の光学フィルムは、収縮が抑制され且つ製造適性に優れる。また、所定の繰り返し単位を有する化合物を含有させることで、フィルム作製時における泣き出し(ブリードアウト)を抑制することも可能となる。
以下、光学フィルムの各材料について説明する。
【0016】
[繰り返し単位を有する化合物]
本発明の光学フィルムに含まれる繰り返し単位を有する化合物は、多塩基酸及び多価アルコールの縮合体であり、かつ、下記(1)〜(6)の条件を満たす。
(1)多塩基酸として炭素数5以下の多塩基酸を少なくとも含む。
(2)多塩基酸の平均炭素数が3以上6未満。
(3)多価アルコールの平均炭素数が2以上3以下。
(4)1種の多塩基酸と1種の多価アルコールの組み合わせによって構成される繰り返し単位がすべて炭素数4以上9以下。
(5)数平均分子量が800以上5000以下。
(6)水酸基価が40mgKOH/g未満。
【0017】
疎水化処理(末端封止)した水酸基価が40mgKOH/g未満の繰り返し単位を有する化合物を用いるとフィルムの含水率が低減し、湿度寸法変化が低下することは知られている。しかし、収縮力を十分に低減するためには化合物の添加量を増やすと弾性率が低下するため、収縮力低減(ワープ性能)と製造適性(弾性力改善)の両立には至っていなかった。
本発明者らは、アジピン酸の代わりに/またはアジピン酸と併用して、コハク酸などのアジピン酸よりも炭素数の少ない二塩基酸を用いるなど、上記条件(1)〜(6)を満たすような従来よりもやや親水的なオリゴマーとした繰り返し単位を有する化合物を用いたところ、当業者の予想に反してフィルムの含水率が同等あるいはやや低くなることを見出し、しかも含水率の低減効果以上に湿度寸法変化が良化することを見出した。
なお、上記条件(1)〜(6)を満たすような従来よりもやや親水的なオリゴマーとした繰り返し単位を有する化合物を用いた光学フィルムの弾性率は高く(3.5GPa超え)、搬送性を確保しやすい。そのため、繰り返し単位を有する化合物の添加量を増やすこともでき、収縮力改善(ワープ性能)との両立も可能である。
【0018】
前記多価アルコールと多塩基酸との縮合体としては、特に制限はないが、二塩基酸とグリコールの反応によって得られる縮合体(反応物)であることが好ましい。以下、本発明における多価アルコールと多塩基酸との縮合体の合成に好ましく用いることができる二塩基酸及びグリコールについて具体的に説明することがあるが、本発明は二塩基酸とグリコールの反応によって得られる縮合体を用いる態様に限定されるものではない。
【0019】
本発明の光学フィルムに用いることのできる前記繰り返し単位を有する化合物は(1)多塩基酸として炭素数5以下の多塩基酸を少なくとも含む。すなわち、前記繰り返し単位を有する化合物は、炭素数5以下の多塩基酸由来の繰り返し単位を含む。前記繰り返し単位を有する化合物は、炭素数5以下の多塩基酸由来の繰り返し単位を含むことにより、弾性率を高めることができる。
繰り返し単位を有する化合物が、多価アルコールと1種の多塩基酸との縮合体の場合は、該1種の多塩基酸は炭素数が5以下の多塩基酸であり、この場合前記(2)多塩基酸の平均炭素数が3以上6未満であるとの条件も満たすこととなる。
一方、繰り返し単位を有する化合物が、多価アルコールと2種以上の多塩基酸の混合物との縮合体の場合は炭素数が5以下の多塩基酸を少なくとも1種含み、かつ前記(2)多塩基酸の平均炭素数が3以上6未満であるとの条件も満たすことが必要となる。
【0020】
本発明の光学フィルムに用いることのできる前記繰り返し単位を有する化合物は、(2)多塩基酸の平均炭素数が3以上6未満である。すなわち、前記繰り返し単位を有する化合物は、多塩基酸由来の繰り返し単位の平均の炭素数が3以上6未満である。本発明に用いる前記繰り返し単位を有する化合物の二塩基酸の平均炭素数は、4以上6未満であることが好ましく、4以上5以下であることが好ましい。ただし、二塩基酸が1種の場合は、炭素数が5以下であり、4以下が好ましい。本発明では2種以上の二塩基酸の混合物を用いてもよく、上述のとおりこの場合、炭素数が5以下の多塩基酸を少なくとも含み、且つ2種以上の二塩基酸の平均炭素数が上記範囲となる。二塩基酸の平均炭素数が上記範囲であれば、輝度ムラの改良に加えて、本発明の光学フィルムを構成するポリマーとの相溶性に優れ、光学フィルムの製膜時、加熱延伸時、及びフィルムを長期保管した場合においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
【0021】
本発明において多価アルコールと多塩基酸との縮合体に使用される二塩基酸としては、上記条件(1)、(2)および(4)を満たすものであれば特に制限はなく、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のいずれも用いることができるが、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸残基又は脂環式ジカルボン酸残基又は炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。そして、加熱処理に伴うブリードアウトの程度を良化させるため、少なくとも炭素数5以下の脂肪族多塩基酸を含むことがより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、マロン酸、コハク酸及びアジピン酸が相溶性向上の観点から好ましく、コハク酸及びアジピン酸が上記条件(1)〜(6)を満たしやすい観点からより好ましく、コハク酸が特に好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、フタル酸及びテレフタル酸が好ましく、フタル酸が特に好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを併用することも好ましい。具体的には、アジピン酸とフタル酸との併用、アジピン酸とテレフタル酸との併用、コハク酸とフタル酸との併用、コハク酸とテレフタル酸との併用が好ましく、コハク酸とフタル酸との併用、コハク酸とテレフタル酸との併用がより好ましく、コハク酸とフタル酸との併用が特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを併用する場合、両者の比率(モル比)は特に限定されないが、95:5〜40:60が好ましく、55:45〜45:55がより好ましい。
【0022】
本発明の光学フィルムに用いることのできる前記繰り返し単位を有する化合物は、(3)多価アルコールの平均炭素数が2以上3以下である。すなわち、前記繰り返し単位を有する化合物は、多価アルコール由来の繰り返し単位の平均の炭素数が2以上3以下である。2種以上の多価アルコールを用いる場合には、該2種以上の平均炭素数が上記範囲となることが好ましい。多価アルコールの平均炭素数が上記範囲であれば、輝度ムラの改良に加えて、本発明の光学フィルムを構成するセルロースエステルとの相溶性に優れ、フィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
【0023】
また、本発明において多価アルコールと多塩基酸との縮合体に使用されるグリコールとしては、上記条件(3)および(4)を満たすものであれば特に制限はないが、炭素数が2〜12の脂肪族又は脂環式グリコール残基、炭素数6〜12の芳香族グリコール残基であることが好ましい。
【0024】
グリコール(ジオール)としては、脂肪族ジオール及び芳香族ジオールが挙げられ、脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エチレングリコール(エタンジオール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくは、エチレングリコール及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種である。2種用いる場合は、エチレングリコール及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。
【0025】
本発明の光学フィルムに用いることのできる前記繰り返し単位を有する化合物は、(4)1種の多塩基酸と1種の多価アルコールの組み合わせによって構成される繰り返し単位がすべて炭素数4以上9以下であるため、収縮力抑制と弾性率改善を両立することができる。
ここで、前記1種の多塩基酸と1種の多価アルコールの組み合わせによって構成される繰り返し単位がすべて炭素数n
1(n
1は自然数を表す)以上とは、前記繰り返し単位を有する化合物に用いられる多塩基酸のうち最小の炭素数を有する多塩基酸の炭素数と、前記繰り返し単位を有する化合物に用いられる多価アルコールのうち最小の炭素数を有する多価アルコールの炭素数の和がn
1以上であることを意味する。前記1種の多塩基酸と1種の多価アルコールの組み合わせによって構成される繰り返し単位がすべて炭素数n
2(n
2は自然数を表す)以下とは、前記繰り返し単位を有する化合物に用いられる多塩基酸のうち最大の炭素数を有する多塩基酸の炭素数と、前記繰り返し単位を有する化合物に用いられる多価アルコールのうち最大の炭素数を有する多価アルコールの炭素数の和がn
2以下であることを意味する。
前記繰り返し単位を有する化合物は、1種の多塩基酸と1種の多価アルコールの組み合わせによって構成される繰り返し単位がすべて炭素数4以上8以下が好ましく、4以上7以下がより好ましい。
【0026】
本発明の光学フィルムに用いることのできる前記繰り返し単位を有する化合物は(6)水酸基価が40mgKOH/g未満であるため、収縮力抑制と弾性率改善を両立することができる。
前記繰り返し単位を有する化合物は多価アルコールと多塩基酸との縮合体(反応物)であり、反応物の両末端は反応物のままでもよいが、更に反応物の両末端にモノカルボン酸やモノアルコールを反応させて、所謂末端の封止を実施すると湿熱環境下で保持した場合のレタデーション変化を抑制することができ好ましい。前記繰り返し単位を有する化合物は末端が未封止の縮合体と比較して水酸基価が低下して上記(6)の条件を満たしやすくすることができ、すなわち、水酸基価が40mgKOH/g未満としやすい。前記繰り返し単位を有する化合物の水酸基価は20mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
【0027】
前記繰り返し単位を有する化合物の両末端を、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護する場合、モノアルコール残基としては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコール残基が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
【0028】
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族カルボン酸でもよい。まず好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0029】
このとき、両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、該多価アルコールと多塩基酸との縮合体の加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することができる。このような観点からは、封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2〜22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることが更に好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸(末端がアセチル基となる)が最も好ましい。封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
【0030】
なお、多価アルコールと多塩基酸との縮合体の両末端が未封止の場合、該縮合体はポリエステルポリオールであることが好ましい。
【0031】
以上、具体的な好ましい多価アルコールと多塩基酸との縮合体としては、ポリ(エチレングリコール/コハク酸)エステルの両末端が酢酸エステル、ポリ(1,2−プロパンジオール/コハク酸)エステルの両末端が酢酸エステル、ポリ(エタンジオール/1,2−プロパンジオール/コハク酸/アジピン酸)エステルの両末端が酢酸エステル、ポリ(エチレングリコール/アジピン酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/アジピン酸)エステル、ポリ(1,3−ブタンジオール/アジピン酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/セバチン酸)エステル、ポリ(1,3−ブタンジオール/セバチン酸)エステル、ポリ(1,6−ヘキサンジオール/アジピン酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/フタル酸)エステル、ポリ(1,3−ブタンジオール/フタル酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/テレフタル酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/1,5−ナフタレン−ジカルボン酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/テレフタル酸)エステルの両末端が2−エチル−ヘキシルアルコールエステル/ポリ(プロピレングリコール、アジピン酸)エステルの両末端が2−エチル−ヘキシルアルコールエステル、アセチル化ポリ(ブタンジオール/アジピン酸)エステル、などを挙げることができる。
【0032】
前記繰り返し単位を有する化合物は上記(5)の条件を満たし、すなわち前記繰り返し単位を有する化合物の数平均分子量(Mn)は、800以上5000以下であり、800〜4800であることがより好ましく、800〜2000が更に好ましく、800〜1000が最も好ましい。繰り返し単位を有する化合物の数平均分子量は800以上であれば揮発性が低くなり、本発明の光学フィルムを製膜したり、延伸した時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染を生じにくくなると同時に、分子量を上昇させることによって湿熱環境下で保持した場合のレタデーション変化を抑制することができる。また、5000以下であれば光学フィルムの耐水性を高めやすく、収縮力低減をしやすい上、本発明の光学フィルムを構成するセルロースエステルとの相溶性を確保することができブリードアウトが生じにくくなる。
本発明における繰り返し単位を有する化合物の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。
また、前記繰り返し単位を有する化合物は使用する環境温度あるいは湿度下で(一般には室温状況、所謂25℃、相対湿度60%)、液体であっても固体であっても良い。また、その色味は少ないほど良好であり特に無色であることが好ましい。熱的にはより高温において安定であることが好ましく、分解開始温度が150℃以上、更に200℃以上が好ましい。
以下、本発明に用いられる繰り返し単位を有する化合物について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いることができる繰り返し単位を有する化合物はこれらに限定されるものではない。
【0033】
これら多価アルコールと多塩基酸は上記条件(1)〜(6)を満たす以外は所望のレタデーションに応じて、適宜選択して使用することができ、1種類だけを含有させてもよく、2種類以上を含有させてもよい。例えば、レタデーションを低減させたフィルムを作製したい場合には、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸残基又はフタル酸残基、及び脂肪族又は脂環式グリコール残基を選択することが好ましい。また、レタデーションを上昇させたフィルムを作製したい場合には、芳香族ジカルボン酸残基及び/又は芳香族グリコール残基を含有させることが好ましい。本発明の光学フィルムでは、レタデーション(Re、およびRthの絶対値)を低減させる観点から、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸残基、及び、脂肪族又は脂環式グリコール残基を選択することが好ましく、脂肪族ジカルボン酸残基、及び、脂肪族グリコール残基を選択することがより好ましい。
【0034】
かかる多価アルコールと多塩基酸との縮合体の合成は常法により、上記二塩基性酸又はこれらのアルキルエステル類とグリコール類との(ポリ)エステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらの多価アルコールと多塩基酸との縮合体については、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0035】
また、商品として、前記繰り返し単位を有する化合物を入手することもできる。例えば、株式会社ADEKAから、多価アルコールと多塩基酸との縮合体としてDIARY 2007、55頁〜27頁に記載にアデカサイザー(アデカサイザーPシリーズ、アデカサイザーPNシリーズとして各種あり)を使用でき、また大日本インキ化学工業株式会社「ポリマ関連製品一覧表2007年版」25頁に記載のポリライト各種の商品や、大日本インキ化学工業株式会社「DICのポリマ改質剤」(2004.4.1.000VIII発行)2頁〜5頁に記載のポリサイザー各種を利用できる。更に、米国CP HALL社製のPlasthall Pシリーズとして入手できる。ベンゾイル官能化ポリエーテルは、イリノイ州ローズモントのベルシコルケミカルズ(Velsicol Chemicals)から商品名BENZOFLEXで商業的に販売されている(例えば、BENZOFLEX400、ポリプロピレングリコールジベンゾエート)。
【0036】
本発明の光学フィルム中、前記繰り返し単位を有する化合物の総含有量は、セルロースエステルに対して0.1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、15〜35質量%が更に好ましい。
このような条件を満たす添加量、膜厚であれば輝度ムラを改善することができるため好ましく、40質量%以下であれば、フィルムからのブリードアウトを抑制しやすく好ましい。膜厚が薄いフィルムの場合には、フィルムからのブリードアウトが促進される傾向のため、添加量の上限は低めに設定される。
なお、前記繰り返し単位を有する化合物を2種以上含有させる場合には、本発明の光学フィルムでは該2種以上の前記繰り返し単位を有する化合物の合計含有量が上記範囲に収まればよい。
【0037】
[セルロースエステル]
本発明の光学フィルムはセルロースエステルを含む。
本発明の光学フィルムは、セルロースエステル含有率が30〜99質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましく、50〜80質量%であることが更に好ましく、このことにより、偏光板加工性に優れた光学フィルムを製造することができる。
本発明の光学フィルムに用いられるセルロースエステルは、原料のセルロースと酸とのエステルであり、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステル(所謂セルロースアシレート)であることが好ましく、炭素数6以下の低級脂肪酸エステルであることがより好ましい。セルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じた方法や、NMR法を挙げることができる。そして、炭素数2〜22程度のセルロースエステルである場合には、繰り返し単位を有する化合物を用い、特に炭素数2のセルロースアセテートである場合には、これに加え、繰り返し単位を有する付加物も好ましく用いることによって液晶表示装置の輝度ムラを改善することができる。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明の光学フィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0038】
本発明で用いられるセルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、偏光板保護フィルム、光学フィルムの用途に用いる場合、フィルムに適度な透湿性や吸湿性を付与するため、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.00〜3.00であることが好ましい。更には置換度が2.30〜2.98であることが好ましく、2.70〜2.96であることがより好ましく、2.80〜2.94であることが更に好ましい。また、フィルム表面から1μmの領域に含まれるセルロースエステルのアシル置換度(DSs)と、光学フィルムの厚み方向中心から1μmの領域に含まれるセルロースエステルのアシル置換度(DSc)とは、DSs≦DScの関係を満たすことが好ましい。DSsは、例えば、フィルム表面から1μmの領域をカミソリ刃等で削り出し、得られた粉を公知の方法で測定することができ、DScは、同じくフィルムを厚み方向中心まで削り出し(例えば、50μmのフィルムであれば、25μmまで削り出した後に、さらに1μmの領域を削り出す)、測定することができる。
【0039】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族基でもよく特に限定されず、単一でも二種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0040】
これらの中でも、合成の容易さ、コスト、置換基分布の制御のしやすさなどの観点から、アセチル基、アセチル基とプロピル基の混合エステルが好ましく、アセチル基が特に好ましい。
【0041】
本発明で好ましく用いられるセルロースエステルの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースエステルのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる傾向がある。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう傾向がある。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。
【0042】
また、本発明で好ましく用いられるセルロースエステルの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることが更に好ましく、2.3〜3.4であることが最も好ましい。
【0043】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースエステルよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースエステルは、通常の方法で合成したセルロースエステルから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースエステルを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースエステルを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布が狭い)セルロースエステルを合成することができる。本発明の光学フィルムの製造時に使用される際には、セルロースエステルの含水率は2質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.7質量%以下である。一般に、セルロースエステルは、水を含有しており、その含水率は2.5〜5質量%が知られている。本発明で上記のようなセルロースエステルの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。これらのセルロースエステルに関しては、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0044】
本発明では、セルロースエステルは置換基、置換度、重合度、分子量分布などの観点で、単一あるいは異なる二種類以上のセルロースエステルを混合して用いることができる。
【0045】
一方、本発明の光学フィルムを用いた偏光板のリワーク性を改善させるために、例えば、公知の共流延技術などを用い、前記添加剤の厚み方向分布を付与することが好ましい。具体的には、表面付近の添加剤の含有量が、他の部分の含有量より低いことが好ましい。
【0046】
なお、添加剤としては、通常セルロースエステルに使われる添加剤(例えば、発明協会公開技報2001−1745)を用いることができ、前述のような繰り返し単位を有する化合物であることが、ブリードアウト抑制やフィルム製造過程における揮発抑制の観点から好ましい。
【0047】
[レタデーション調整剤]
本発明の光学フィルムの光学異方性は、前述の繰り返し単位を有する化合物の添加によっても制御されるが、目的のレタデーションに応じて、更に異なる光学異方性調整剤を加えてもよい。例えば、特開2006−30937号23ページから72ページに記載のRthを低減させる化合物を添加することもできるし、Rthを上昇させる化合物(具体的には、芳香環を1個以上有する化合物が好ましく、2〜15個有することがより好ましく、3〜10個有することが更に好ましい。化合物中の芳香環以外の各原子は、芳香環と同一平面に近い配置であることが好ましく、芳香環を複数有している場合には、芳香環同士も同一平面に近い配置であることが好ましい。また、Rthを選択的に上昇させるため、添加剤のフィルム中での存在状態は、芳香環平面がフィルム面と平行な方向に存在していることが好ましい)を添加することもできる。これらのレタデーション調整剤の中でも、本発明の光学フィルムは、Rthを上昇させる化合物を含むことが好ましい。
前記レタデーション調整剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上の添加剤を組み合わせて使用しても良い。
Rthを上昇させる効果のある添加剤としては、具体的には、特開2005−104148号公報の33〜34頁に記載の可塑剤や、特開2005−104148号公報の38〜89頁に記載の光学異方性のコントロール剤(この光学異方性のコントロール剤の中でも、後述のレタデーション耐久性改良剤として挙げる後述の一般式(10)で表される化合物が好ましい)などが挙げられる。詳細な理由は分かっていないが、本発明においては、液晶表示装置を斜めから観察した際に視認される円形状の光ムラの視認性を抑制するために、Rthを上昇させる効果のある低分子化合物を含有させることが、好ましい。このような化合物を添加することによって、後述するRth湿熱耐久性を適切に制御することができる。
Rthを上昇させる効果のあるレタデーション調整剤としては、後述のレタデーション耐久性改良剤として挙げる後述の一般式(10)で表される化合物がより好ましい。Rthを上昇させる効果のあるレタデーション調整剤としての後述の一般式(10)で表される化合物の好ましい範囲も、レタデーション耐久性改良剤としての後述の一般式(10)で表される化合物の好ましい範囲と同様である。
【0048】
[レタデーション耐久性改良剤]
本発明の光学フィルムは、レタデーションの耐久性(その中でも湿熱耐久性)を向上させる化合物を含むことが好ましい。このような化合物の添加量は特に限定されないが、セルロースエステルに対し0.001〜20質量%であることが好ましく、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%が最も好ましい。
レタデーションの湿熱耐久性には、フィルムを湿熱環境下で保持した場合のレタデーション変化として観測される耐久性と、フィルムを偏光板形態にした上で湿熱環境下で保持した場合のレタデーション変化とがある。前者に関しては、前述の特定の分子量を有する繰り返し単位を有する化合物を用いること、及び/又は後述の寸法変化率を制御することで改善させることができる。また、後者に関しては、前述の特定の分子量を有する繰り返し単位を有する化合物を用いること、及び/又はレタデーションの湿熱耐久性を向上させる化合物を添加することで改善させることができる。
レタデーションの湿熱耐久性を向上させる化合物として、塩基性を示す化合物を好ましく用いることができ、無機化合物と有機化合物のどちらか、もしくは両方を使用してもよく、弱塩基性を示す化合物であることがより好ましい。
無機塩基(塩基性を示す無機化合物)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができる。
有機塩基(塩基性を示す有機化合物)としては、分子内に塩基性の官能基を有する化合物を用いることができ、塩基性の官能基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基等の含窒素ヘテロ環基、グアニジノ基、イミノ基、イミダゾイル基、インドール基、プリン基、ピリミジン基等が挙げられる。
【0049】
<アミノ基を有する化合物>
本発明の光学フィルムは、レタデーション耐久性改良剤として、アミノ基を有する化合物を含有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるアミノ基を含む化合物としては、特に限定されることはないが、トリアジン母核とし、置換可能ないずれかの位置にアミノ基を置換基として有するものが好ましく、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0051】
(一般式(1)中、Raは置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換の複素環基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。X
1、X
2、X
3及びX
4はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアシル基、又は、置換若しくは無置換の複素環基を表す。)
【0052】
前記Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基又はアリール基を表し、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。
前記Raがアルキル基である場合、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数3〜15であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアルケニル基である場合、炭素数2〜20であることが好ましく、炭素数2〜15であることがより好ましく、炭素数2〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアルキニル基である場合、炭素数2〜20であることが好ましく、炭素数2〜15であることがより好ましく、炭素数2〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアリール基である場合、炭素数6〜30であることが好ましく、炭素数6〜20であることがより好ましく、フェニル基が最も好ましい。
前記Raが複素環基である場合、含窒素複素芳香環基であることが好ましく、ピリジル基がより好ましい。
【0053】
前記Raは更に置換基を有していてもよい。
前記Raが有していてもよい置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0054】
前記、X
1〜X
4は、単結合又は2価の連結基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。X
1、X
2、X
3及びX
4は単結合であることが好ましい。2価の連結基としては、下記連結基群(L)の中から選ばれることが好ましい。
連結基群(L)
【0056】
(*側が前記一般式(1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
【0057】
R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアシル基、又は、置換若しくは無置換の複素環基を表し、R
1、R
2、R
3及びR
4は水素原子であることが好ましい。
【0058】
前記R
1、R
2、R
3及びR
4がアルキル基である場合、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましい。
前記R
1、R
2、R
3及びR
4がアルケニル基である場合、炭素数2〜12であることが好ましく、炭素数2〜6であることがより好ましく、炭素数2〜4であることが特に好ましい。
前記R
1、R
2、R
3及びR
4がアルキニル基である場合、炭素数2〜12であることが好ましく、炭素数2〜6であることがより好ましく、炭素数2〜4であることが特に好ましい。
前記R
1、R
2、R
3及びR
4がアリール基である場合、炭素数6〜18であることが好ましく、炭素数6〜12であることがより好ましく、炭素数6であることが特に好ましい。
前記R
1、R
2、R
3及びR
4は水素原子、アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
前記R
1、R
2、R
3及びR
4は更に置換基を有していてもよく、該置換基としては前記Raが有していてもよい置換基を挙げることができる。
【0060】
(一般式(2)中、Rb及びRcはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換の複素環基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。X
5及びX
6はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R
5及びR
6はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアシル基、又は、置換若しくは無置換の複素環基を表す。)
【0061】
前記Rb及びRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基又はアリール基を表し、具体例は前記Raの具体例と同様であり、アルキル基又はアリール基が好ましい。
【0062】
X
5及びX
6はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、具体例及び好ましい範囲は前記X
1、X
2、X
3及びX
4の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0063】
前記R
5及びR
6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表し、具体例及び好ましい範囲は前記R
1、R
2、R
3及びR
4の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0064】
以下、レタデーション耐久性改良剤として、本発明に好ましく用いることのできる一般式(1)又は(2)で表される化合物を示す。
【0067】
また、前記アミノ基を有する化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。なお、下記一般式(3)で表される化合物には、ピリジン又はピリミジン母核とし、置換可能ないずれかの位置にアミノ基を置換基として有する化合物が含まれる。
一般式(3)
【化6】
【0068】
一般式(3)中、Yはメチン基又は窒素原子を表す。Qa、Qb及びQcはそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。Ra、Rb、及びRcはそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の複素環基、又は、−N(Rd)(Rd’)を表し、Rd及びRd’はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Rd及びRd’は互いに連結して環を形成してもよい。RaとRbは互いに連結して環を形成してもよい。X
1は単結合又は下記2価の連結基群(L)から選択される2価の連結基を表す。X
2は単結合又は2価の連結基を表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換の複素環基を表し、R
1とR
2は互いに連結して環を形成してもよい。
連結基群(L)
【0070】
(各式中、*側が前記一般式(3)で表される化合物中の含窒素芳香環に置換している窒素原子との連結部位であり、R
gは置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換の複素環基を表す。)
【0071】
前記一般式(3)で表される化合物は、特開2012−42938号公報の一般式(4)で表される化合物であることが好ましく、特開2012−42938号公報の一般式(5)で表される化合物であることがより好ましく、特開2012−42938号公報の一般式(6)で表される化合物であることが特に好ましく、下記一般式(7)で表される化合物であることがより特に好ましい。
一般式(7)
【0073】
一般式(7)中、Q
dは単結合、酸素原子、又は−NH−を表す。R
a8は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【0074】
一般式(7)中、Q
dは単結合、酸素原子、又は−NH−を表す。Q
dは単結合又は酸素原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
一般式(7)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は水素原子、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0075】
以下、一般式(3)で表される化合物として、本発明に好ましく用いることのできる化合物を示す。また、一般式(3)で表される化合物のその他の例としては、特開2012−42938号公報の[0097]〜[0106]に記載の化合物を挙げることができる。
【0077】
また、アミノ基を有する化合物としては、下記一般式(10)で表される化合物であることも好ましい。
一般式(10)
【0079】
一般式(10)中、X
21〜X
26はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R
21〜R
26はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表す。
【0080】
一般式(10)中、X
21〜X
26が2価の連結基を表す場合の具体例は、前記一般式(1)におけるX
1が2価の連結基を表す場合の具体例と同様である。一般式(10)中、X
21〜X
26が単結合であることが好ましい。
一般式(10)中、R
21〜R
26の具体例は前記一般式(1)におけるR
1の具体例と同様である。一般式(10)中、R
21、R
23、及びR
25が水素原子であり、かつR
22、R
24、及びR
26がアリール基であることが好ましい。
一般式(10)中、R
21〜R
26はさらに置換基を有していてもよく、R
21〜R
26が有していてもよい置換基としては、前記一般式(1)においてRaが有していてもよい置換基を挙げることができ、各置換基の好ましい範囲も前記一般式(1)においてRaが有していてもよい置換基の好ましい範囲と同様である。この中でもR
21〜R
26が有していてもよい置換基は、アルキル基またはアルコキシ基が好ましく、R
22、R
24及びR
26のうち2つがアルキル基であり、かつ、1つがアルコキシ基であることがより好ましく、R
22、R
24及びR
26のうち2つがメチル基であり、かつ、1つがメトキシ基であることが特に好ましい。
【0081】
一般式(10)で表される化合物の具体例としては例えば以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
その他の本発明に使用されるレタデーション耐久性改良剤としては、特開2012−42938号公報の一般式(8)または(9)で表される化合物を挙げることができ、その内容は本発明に組み込まれる。
【0084】
[レタデーション湿度依存性改良剤]
本発明の光学フィルムは、前述の分子量が大きな繰り返し単位を有する化合物を含むことを特徴とする。このようなフィルムでは、レタデーションの湿度依存性がやや大きくなることがあるため、更に湿度依存性を低減させる化合物を含むことも好ましい。湿度依存性を低減させる化合物として、下記式(IA)で定義されるΔRth(A)が−100以上0nm未満であるレタデーション湿度依存性改良(低減)剤を含むこともできる。
式(IA) ΔRth(A)=(ΔRth(rh、A)−ΔRth(rh、0))/Q
[式中、ΔRth(rh、A)は、該化合物がA質量%添加されたフィルムの25℃・相対湿度10%におけるRthから25℃・相対湿度80%におけるRthを引いた値を表し、ΔRth(rh、0)は、該化合物が添加されていないフィルムの25℃・相対湿度10%におけるRthから25℃・相対湿度80%におけるRthを引いた値を表し、Qは該フィルム中のセルロースエステルの質量を100としたときの該化合物の質量を表す。]
このような化合物を使用すると、少ない添加量でも効果的にΔRthを低減することができるため、セルロースエステルに対する添加剤の総量を減らすことができ、例えば、製膜過程での添加剤の揮散を抑制したり、フィルムの搬送性を向上させたり、フィルムのブリードアウトを抑制したりすることができる。ΔRth(A)は−50〜10nmがより好ましく、−30〜0nmが更に好ましい。
このような化合物としては、水素結合性基を有しており、かつ分子量あたりの水素結合性基密度が高い化合物を挙げることができる。水素結合性基としては、少なくとも1つの−OH基又は−NH基を含有する基であるのが好ましく、例えば、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルバモイル基(−CONHR)、スルファモイル基(−SONHR)、ウレイド基(−NHCONHR)、アミノ基(−NHR)、ウレタン基(−NHCOOR)、アミド基(−NHCOR)がより好ましい。ただし、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基又はヘテロ環基を表すが、好ましくは、水素原子を表す。より好ましくは、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、スルファモイル基又はウレイド基であり、更に好ましくはアミノ基、ヒドロキシル基である。そしてヒドロキシル基のうち、少なくとも1つはフェノール性水酸基であることが更にまた好ましい。
レタデーションの湿度依存性を低減させる化合物としては、例えば下記のような化合物を具体例として挙げることができる。
【0085】
<ヒドロキシル基を有する化合物>
本発明でレタデーション湿度依存性改良剤として好ましく用いられるヒドロキシル基を含む化合物は、好ましくはフェノール性水酸基を含む化合物である。このようなフェノール性水酸基を含む化合物としては、例えば、上記にてレタデーション耐久性改良剤として挙げた前記一般式(3)で表される化合物、特開2008−89860号の13〜19ページに記載のある化合物Aや、特開2008−233530号の7〜9ページに記載のある一般式(I)で表される化合物を好ましく用いることができ、前記一般式(3)で表される化合物をより好ましく用いることができる。レタデーション湿度依存性改良剤としての前記一般式(3)で表される化合物の好ましい範囲も、レタデーション耐久性改良剤としての前記一般式(3)で表される化合物の好ましい範囲と同様である。
【0086】
[マット剤微粒子]
本発明の光学フィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜20nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。
マット剤のモース硬度は1〜8であることが好ましく、5〜7であることがより好ましい。
マット剤の添加量としては、前記セルロースエステルに対して0.001質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。
【0087】
本発明に使用されるマット剤微粒子の例およびその他の好ましい態様としては、特開2012−42938号公報の[0148]〜[0153]に記載のマット剤微粒子の例および好ましい態様と同様であり、本発明に組み込まれる。
【0088】
[その他の添加剤]
前述の繰り返し単位を有する化合物、レタデーション調整剤、レタデーションの湿熱耐久性を向上させる化合物、レタデーション湿度依存性低減剤、マット剤微粒子の他に、本発明の光学フィルムには、種々のその他の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外線吸収剤、波長分散調整剤、前記条件を満たす繰り返し単位を有する化合物以外のその他の高分子系添加剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号などに記載されている。更にまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号に記載されている。前記条件を満たす繰り返し単位を有する化合物以外のその他の高分子系添加剤としては、特開2012−42938号公報の[0037]〜[0038]に記載の化合物を挙げることができる。
【0089】
[添加剤の添加時期]
本発明の光学フィルムを製造するときに、各添加剤を添加する時期はドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、光学フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0090】
[添加剤の添加量]
本発明の光学フィルムにおいては、前述の繰り返し単位を有する化合物に加えてこれら他の添加剤を添加する場合、本発明の光学フィルムに含まれる添加剤の総量は、使用されるセルロースエステルの総量に対して30質量%以上200質量%以下であることが好ましく、35質量%以上150質量%以下であることが好ましい。
【0091】
[光学フィルムの特性]
<レタデーション>
本発明の光学フィルムは、下記式(I)で定義される波長590nmにおける面内レタデーション(Re)が10nm以下であり、0〜5nmが好ましく、0〜3nmがより好ましい。また、下記式(II)で定義される波長590nmにおける厚み方向のレタデーション(Rth)は、−25〜25nmであることが好ましく、−20〜5nmであることがより好ましく、−10〜0nmであることがさらに好ましい。
これらの値は、本発明の光学フィルムを構成するポリマーの化学構造(例えば、セルロースエステルであれば置換基の種類や置換度)、前述の繰り返し単位を有する化合物の種類や添加量、フィルムの膜厚、製膜時の工程条件、延伸工程などにより制御することができる。
本発明の光学フィルムのレタデーションを低減させ、例えば、IPSモードの液晶パネル用途で使用する場合には、下記式(IIIa)及び(IVa)を満たすことが好ましく、更に保護フィルムとして用いられる光学フィルムを支持体として、後述の機能層を設けることもできる。これにより、例えば、液晶表示装置の表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりすることができる。
式(I) Re=(nx−ny)×d(nm)
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
式(IIIa) Re<10
式(IVa) |Rth|<25
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
この場合、面内の遅相軸の方位は特に限定されないが、面内でフィルムの弾性率が最大となる方位に対して略並行若しくは略直交であることが好ましい。
本発明の光学フィルムを液晶表示装置の偏光板の液晶セル側保護フィルムとして用いる場合に、Re及びRthが上記範囲にあると、斜め方向からの光漏れがより改良され、表示品位を向上させることができる。本発明の光学フィルムは、液晶と光学フィルムとが直接光学補償しないIPS型液晶表示装置において、特に好ましく用いることができる。
【0092】
なお、Re及びRthは次のようにして測定できる。
【0093】
本明細書において、Re、Rth(単位;nm)は次の方法に従って求めたものである。まず、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、プリズムカップラー(MODEL2010 Prism Coupler:Metricon製)を用い、25℃、相対湿度60%において、532nmの固体レーザーを用いて下記式(B)で表される平均屈折率(n)を求める。
式(B): n=(n
TE×2+n
TM)/3
[式中、n
TEはフィルム平面方向の偏光で測定した屈折率であり、n
TMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
【0094】
本明細書において、Re(λnm)、Rth(λnm)は各々、波長λ(単位;nm)における面内レタデーション及び厚さ方向のレタデーションを表す。Re(λnm)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが一軸又は二軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λnm)は算出される。
Rth(λnm)は前記Re(λnm)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、λに関する記載が特になく、Re、Rthとのみ記載されている場合は、波長590nmの光を用いて測定した値のことを表す。また、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレタデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレタデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率及び入力された膜厚値を基に、以下の式(3)及び式(4)よりRthを算出することもできる。
【0096】
[式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタ−デーション値を表す。また、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの膜厚を表す。]
式(4): Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
測定されるフィルムが一軸や二軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λnm)は算出される。
Rth(λnm)は前記Re(λnm)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。これら平均屈折率と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、上記の測定において、平均屈折率は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することもできる。平均屈折率の値が既知でないものについては、前述の方法で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
【0097】
<弾性率>
本発明の光学フィルムは、弾性率が3.5GPaを超え、4.0GPa以上が好ましい。弾性率の上限については特に制限はないが、10GPa以下である。弾性率が3.5GPaを超えることで、フィルムの製造適性を向上させることができる。また、本発明の光学フィルムが巻かれて後述の本発明のロール状光学フィルムとして保管されたときの外観が劣化しにくいため好ましい。
本発明の光学フィルムの弾性率は、音波伝播速度が最大となる方向の弾性率を表すものとする。本発明の光学フィルムを用いた後述の本発明のロール状光学フィルムの場合も同様である。
弾性率の具体的な測定方法としては、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0098】
<音波伝播速度、音波伝播速度が最大となる方向とそれと直交する方向における音波伝播速度の比>
本発明の光学フィルムにおける音波伝播速度が最大となる方向とそれと直交する方向における音波伝播速度の比(最大方向/最大方向の直交方向)は、1.10以上であることが好ましく、1.20以上であることがより好ましく、1.24以上であることがさらに好ましい。上限については特に制限はないが、2.0以下である。音波伝播速度の比を1.10以上とすることで、フィルムの製造適性を向上させることができる。
【0099】
本発明において、音波伝播速度が最大方向とは、音速伝播方向が最大方向に対して±10°の角度範囲にあることを意味し、±5°の角度で交わっていることが好ましく、±1°の角度で交わっていることがより好ましい。
音波伝播速度が最大方向と直交する方向とは、音速伝播方向が最大方向に対して90°±10°の角度で交わっていることを意味し、90°±5°の角度で交わっていることが好ましく、90°±1°の角度で交わっていることがより好ましい。
【0100】
本発明において音波伝播速度が最大となる方向は、光学フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、配向性測定機(SST−2500:野村商事(株)製)を用いて、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向として求めた。また、このときに測定した超音波パルスの縦波振動の伝搬速度を、音波伝播速度が最大となる方向における音波伝播速度とした。さらに、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向と直交する方向を決定した後、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向と直交する方向における超音波パルスの縦波振動の伝搬速度を、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向と直交する方向における音波伝播速度として求めた。
【0101】
<収縮力>
本発明の光学フィルムの収縮力(単位 ×10N/m)は、下記式(1)で表される。収縮力を低減させることによって、湿度寸法変化を抑制することができる。
式(1) Fw1=Ew1×εw1×dw
[式中、特性量はすべて音波伝播速度が最大方向の値である。Ew1は湿熱処理後の弾性率、εw1は湿熱処理後の湿度寸法変化率の絶対値、dwは湿熱処理後の膜厚を表す。Ew1は2.0〜8.0GPa、εw1は0.01〜0.38%、dwは5〜80μmの範囲である。]
【0102】
上記式(1)中のEw1は、光学フィルムを60℃相対湿度90%の環境で48時間保持した後、後記実施例で示した弾性率の測定方法で算出する。本発明において、音波伝播速度が最大方向における湿熱処理後の弾性率(Ew1)は、2.0〜8.0GPaが好ましく、2.5〜7.0がより好ましく、3.0〜5.5がさらに好ましい。
【0103】
上記式(1)中のεw1は、音波伝播速度が最大となる方向またはこれと直交する方向を長手方向として切り出した長さ12cm(測定方向)、幅3cmのフィルム試料、及びそれと直交する方向を長手として切り出した試料をそれぞれ用意し、該試料に10cmの間隔でピン孔を空け、60℃相対湿度90%の環境で48時間保持した後、25℃相対湿度80%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL
80とする)。次いで、試料を25℃相対湿度60%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL
60とする)。続いて試料を25℃相対湿度10%にて48時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL
10とする)。これらの測定値を用いて下記式により湿度寸法変化率を算出する。
相対湿度10%と80%との湿度寸法変化率(εw1、音波伝播速度が最大となる方向)[%]=|L
10−L
80|/L
60
音波伝播速度が最大となる方向における湿熱処理後の湿度寸法変化の絶対値(εw1;相対湿度10%と80%との変化;単位 %)は0.01〜0.38が好ましく、0.05〜0.30がより好ましく、0.07〜0.28がさらに好ましい。
【0104】
ここで、本発明の光学フィルムを、パネル両面に配置される偏光板のうち、視認側に配置される偏光板の保護フィルムとして使用する場合には、偏光板の脱水に伴う収縮力を低減するため、前記Fw1が1〜70であることが好ましく、10〜50であることがより好ましく、20〜35であることがさらに好ましい。
【0105】
[光学フィルムの厚さ]
本発明の光学フィルムの厚さは5〜80μmであることが好ましく、10〜70μmが更に好ましく、25〜40μmが特に好ましい。
【0106】
<光学フィルムの幅>
光学フィルムの幅は、700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1300〜2500mmであることが特に好ましい。
【0107】
<光学フィルムのヘイズ>
本発明の光学フィルムのヘイズは、小さいほうが好ましく、0.01〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.5%以下である。ヘイズの測定は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0108】
<光学フィルムの平衡含水率>
本発明の光学フィルムの含水率(平衡含水率)は特に限定されることはないが、偏光板の保護フィルムとして用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃、相対湿度80%における含水率が、0〜4質量%であることが好ましい。0.1〜3.5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることが特に好ましい。平衡含水率が4質量%以下であれば、位相差フィルムの支持体として用いる際に、レタデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎることがなく好ましい。
含水率の測定法は、本発明の光学フィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置“CA−03”及び“VA−05”{共に三菱化学(株)製}にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
【0109】
<光学フィルムの透湿度>
光学フィルムの透湿度は、JIS Z−0208をもとに、40℃、90%RHの条件において測定される。本発明の光学フィルムの透湿度は特に限定されることはないが、50〜1500g/(m
2・24h)であることが好ましい。100〜1000g/(m
2・24h)であることがより好ましく、200〜800g/(m
2・24h)であることが特に好ましい。透湿度がこの範囲であれば、偏光板加工性と、湿度若しくは湿熱に対する偏光板の耐久性とを両立することができ、好ましい。また、偏光膜を挟んで本発明の光学フィルムの対向側に使われる保護フィルムの透湿度は特に限定されることはないが、低いほうが好ましく、3〜1000g/(m
2・24h)以下であることが好ましく、5〜500g/(m
2・24h)であることがより好ましく、10〜100g/(m
2・24h)であることがさらに好ましく、10〜50g/(m
2・24h)であることが特に好ましい。この範囲であれば、偏光板加工性と、湿度若しくは湿熱に対する偏光板の耐久性とを両立したり、パネルの反りをさらに効果的に改良したりすることができる。
【0110】
<光弾性係数>
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして使用した場合には、偏光膜の収縮による応力などにより複屈折(Re、Rth)が変化する場合がある。このような応力に伴う複屈折の変化は光弾性係数として測定できるが、その範囲は、15×10
12Pa
-1以下(15Br以下)であることが好ましく、−5×10
12Pa
-1〜12×10
12Pa
-1であることがより好ましく、−2×10
12Pa
-1〜11×10
12Pa
-1であることが更に好ましい。
【0111】
<アルカリ鹸化処理による光学フィルム表面の接触角>
本発明の光学フィルムはセルロースエステルを含むため、偏光板保護フィルムとして用いる場合の表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が挙げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後の光学フィルム表面の接触角が55°以下であることが好ましい。より好ましくは50°以下であり、45°以下であることが更に好ましい。
【0112】
[表面処理]
光学フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、光学フィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10
-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0113】
[機能層]
本発明の光学フィルムは、その用途として、例えば、光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、及び該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることが更に好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VA及びHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明の光学フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。これらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0114】
[位相差フィルム]
また、本発明の光学フィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、位相差板、光学補償フィルム、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、位相差フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
本発明の光学フィルムを用いることで、レタデーションが自在に制御され、偏光膜との密着性に優れた位相差フィルムを作製することができる。
【0115】
また、本発明の光学フィルムを複数枚積層したり、本発明の光学フィルムと本発明外のフィルムとを積層したりしてReやRthを適宜調整して位相差フィルムとして用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
【0116】
また、場合により、本発明の光学フィルムを位相差フィルムの支持体として用い、その上に液晶等からなる光学異方性層を設けて位相差フィルムとして使用することもできる。本発明の位相差フィルムに適用される光学異方性層は、例えば、液晶性化合物を含有する組成物から形成してもよいし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成してもよいし、本発明の光学フィルムから形成してもよい。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物又は棒状液晶性化合物が好ましい。
【0117】
<ディスコティック液晶性化合物>
本発明において前記液晶性化合物として使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(例えば、C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang etal.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
【0118】
前記光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。また、ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子については、特開2001−4387号公報に開示されている。
【0119】
<棒状液晶性化合物>
本発明において前記液晶性化合物として使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。また、前記棒状液晶性化合物としては、以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0120】
前記光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例は、例えば、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4,683,327号明細書、同5,622,648号明細書、同5,770,107号明細書、国際公開第95/22586号パンフレット、同95/24455号パンフレット、同97/00600号パンフレット、同98/23580号パンフレット、同98/52905号パンフレット、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報等に記載の化合物が含まれる。
【0121】
[ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム]
本発明の光学フィルムは、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用することができる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の光学フィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明の光学フィルムを好ましく用いることができる。
【0122】
[透明基板]
本発明の光学フィルムは光学的異方性をゼロに近く作ることもでき、優れた透明性を持っており、かつ湿熱環境下で保持してもレタデーション変化が小さいことから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることもできる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明の光学フィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明の光学フィルムの少なくとも片面にSiO
2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設けたり、これら無機層と有機層とを積層する方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明の光学フィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079や特開2000−227603などに公開されている。
【0123】
(ロール状光学フィルム)
本発明のロール状光学フィルムは、本発明の光学フィルムが巻かれてなり、長手方向の弾性率が、3.5GPaを超えることを特徴とする。
本発明のロール状光学フィルムの弾性率は、上述のとおり音波伝播速度が最大となる方向における弾性率として定義される。ここで、本発明の光学フィルムの製造方法では、搬送方向に延伸処理を行っているので、本発明の光学フィルムを用いた本発明のロール状光学フィルムは、音波伝播速度の最大方向は長手方向となることが好ましい。この場合、本発明のロール状光学フィルムの長手方向の弾性率が3.5GPaを超えることは、弾性率(音波伝播速度の最大方向の弾性率)が3.5GPaを超えることと同義である。
本発明のロール状光学フィルムに含まれる材料、物性、製法など、特に断りがない限り本発明の光学フィルムと同様であり、好ましい範囲も同様である。
本発明のロール状光学フィルムの長さは、100〜16000mであることが好ましく、1000〜10000mであることがより好ましく、3000〜8000mであることが特に好ましい。本発明のロール状光学フィルムは弾性率が高いため、このような長さで製造した場合も搬送性が良好である。
本発明のロール状光学フィルムは、任意の巻き芯に本発明の光学フィルムが巻かれてなっていてもよい。
【0124】
(光学フィルムの製造方法)
本発明の光学フィルムの製造方法は、少なくとも下記(a)、(b)、(c)の工程を有することが弾性率の低減を抑制しつつ収縮力も低減する観点から好ましく、下記(a)、(b)、(c)の工程をこの順で有することがより好ましい。
(a)繰返し単位を有する化合物、セルロースエステル、及び溶媒を少なくとも含む溶液を支持体上に流延する工程
(b)前記支持体上に流延された前記溶液から前記溶媒を除去してフィルムを製膜し、フィルムを前記支持体から剥ぎ取る工程
(c)前記フィルムを搬送方向に延伸する工程
【0125】
前記(c)前記フィルムを搬送方向に延伸する工程が、残留溶媒量が1.0〜300質量%の状態で行われることが、本発明の光学フィルムを用いた偏光板のリワーク性改良の観点から好ましく、残留溶媒量が100〜280質量%がより好ましく、150〜250質量%が更に好ましく、180〜240質量%がより更に好ましい。
【0126】
搬送方向への延伸倍率はフィルムに要求する特性に応じて適宜設定することができ、100〜200%の間であることが好ましく、105〜150%がより好ましく、110〜140%がさらに好ましく、115〜130%が特に好ましい。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式を用いて求めたものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
ここで、延伸前の長さ、および延伸後の長さは、延伸ゾーン前におけるベースの搬送速度、および延伸ゾーン後におけるベースの搬送速度として評価することもできる。
本発明の光学フィルムの製造方法では、搬送方向に沿って延伸倍率を100%〜200%の間で順時拡大することが好ましい。搬送方向に沿って延伸倍率を100%〜200%の間で順時拡大する方法としては特に制限はないが、例えば支持体から剥ぎ取られたウェブ(フィルム)を2本以上のローラーを有する渡り部で搬送するときに、渡り部の2本以上のローラーの支持体速度に対する回転速度(週速度)を上流から下流に向けて順次高くしていき、搬送方向への延伸倍率を順次拡大した多段延伸を行う方法を挙げることができる。
【0127】
本発明の光学フィルムの製造方法では、搬送方向への延伸における延伸速度は50〜10000%/分が好ましく、より好ましくは100〜3000%/分であり、さらに好ましくは200〜1500%/分である。
【0128】
前記延伸工程の後に熱処理する(後熱処理)工程を有することが弾性率の低減を抑制しつつ収縮力も低減する観点から好ましい。後熱処理の温度は、フィルムに溜まった残留歪みを短時間で低減する観点から、光学フィルムのガラス転移温度をTg(単位 ℃)とした場合に、(Tg−10)℃以上(Tg+60)℃未満であることが好ましく、Tg〜(Tg+50)℃がより好ましく、(Tg+10)℃〜(Tg+40)℃がさらに好ましい。(Tg−10)℃を下回ると残留歪みを十分低減するために必要な熱処理時間が著しく長くなるため生産性が好ましくなく、(Tg+60)℃以上になるとレタデーションズレが発生することがあるため好ましくない。また、該熱処理の時間は、残留歪みを低減するのに十分な時間であれば特に限定されることはないが、0.01〜60分間であることが好ましく、0.1〜40分間であることがより好ましく、1〜30分間であることがさらに好ましい。0.01分間以上であれば残留歪みが十分に低減することができるため好ましく、60分間以下であれば生産性を確保できるため好ましい。
【0129】
[ドープ溶液の有機溶媒]
本発明では、ソルベントキャスト法によりフィルムを製造することが好ましく、ポリマーを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明で主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、ポリマーが溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、使用される主要なポリマーがセルロースエステルの場合には、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、及び炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。
【0130】
以上本発明の光学フィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としても良いし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明の光学フィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0131】
その他、前記ドープ溶液及び光学フィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752などに記載されている。これらの特許によると本発明で好ましく用いられるセルロースエステルに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0132】
[溶解工程]
前記ドープ溶液の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよく、更には冷却溶解法あるいは高温溶解方法、更にはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるドープ溶液の調製、更には溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0133】
[流延、乾燥、巻取り工程]
次に、前記ドープ溶液を用いた光学フィルムの製造方法について述べる。本発明の光学フィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を用いることができる。溶解機(釜)から調製されたドープ溶液を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られた光学フィルムを加熱装置内のロール群で機械的に搬送して巻取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。別の態様としては、先述の金属支持体を5℃以下に冷却したドラムとし、ドラム上にダイから押出したドープをゲル化させてから約1周した時点で剥ぎ取り、ピン状のテンターで把持しながら搬送して乾燥し、続いて得られた光学フィルムを加熱装置内のロール群で機械的に搬送して巻取り機でロール状に所定の長さに巻き取る方法など、ソルベントキャスト法で製膜する様々な方法をとることが可能である。本発明では、前記金属支持体から剥離した後からテンターで把持する前までの間のゾーンを延伸工程として好ましく用いることができ、前記金属支持体の回転速度とテンターの搬送速度とに差をつけることでウェブを延伸することができ、好ましい延伸倍率は前述の通りである。
前記加熱装置内のロール群で機械的に搬送するゾーンを、後熱処理工程として好ましく用いることができ、搬送時張力は低いほうが好ましく、10〜300Nであることが好ましく、15〜200Nであることがより好ましく、20〜150Nであることがさらに好ましい。搬送張力は、加熱装置内のロールの周速差をつけることによって制御することができ、10N以上であれば、フィルムとロール間で起こるスリップ防止し、フィルムに微細なキズが付くことを防げるため好ましく、300N以下であれば、フィルムの残留歪みを効果的に低減することができるため好ましい。また、搬送張力を低くすると残留歪みが溜まりにくくなる。
本発明で使用する光学フィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよい。例えば、コア層と表層の2層からなる積層構造であって、共流延によって製膜された態様であることも好ましい。
なお、共流延する場合には、例えば、層数の調整が容易なフィードブロック法や、各層の厚み精度に優れるマルチマニホールド法を用いることができ、本発明においては、フィードブロック法をより好ましく用いることができる。
【0134】
本発明の光学フィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性偏光板保護フィルムやハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等の光学フィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0135】
(偏光板)
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムと、偏光膜とを有する。
本発明の光学フィルム又は前記位相差フィルムは、偏光板(本発明の偏光板)の保護フィルムとして用いることができる。本発明の偏光板は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(光学フィルム)を有し、本発明の光学フィルム又は前記位相差フィルムは少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることが特に好ましい。
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、本発明の光学フィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、又は、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましい。前記表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
【0136】
本発明の光学フィルムは、搬送方向への分子配向が強く進んでいるため、一般的な偏光板で用いられる従来の光学フィルムと比較して、偏光膜の分子配向度と、本願のフィルムの分子配向度とが近くなっている。その結果、本発明の光学フィルムを用いた偏光板では、例えば、偏光膜と本発明の光学フィルムの熱膨張係数や湿度膨張係数が、従来品より近くなるため、液晶表示装置のような実用形態において、温湿度のような環境変化が起こった場合に、本発明の光学フィルムに生じる内部応力が低減される。その結果、実用形態でのフィルムのレタデーション変化のような特性が、より抑制されるという好ましい効果も得られる。
【0137】
また、前記偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜の両面に本発明の光学フィルムの表面処理面を直接貼り合わせることができる。本発明の製造方法においては、このように前記光学フィルムが偏光膜と直接貼合されていることが好ましい。前記接着剤としては、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。
【0138】
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明の光学フィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明の光学フィルムは、液晶表示装置における偏光膜と液晶層(液晶セル)との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。また、本発明の光学フィルムは、偏光膜の吸収軸と、本発明の光学フィルムの音波伝播速度の最大方向とが平行となるように配置されることが好ましい。
また、前記偏光膜を挟んで本発明の光学フィルムの反対側に配置される保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層、低透湿層などを設けることができ、特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムとして好ましく用いられる。このとき、該保護フィルムについて、液晶表示装置の視認側に用いられる偏光板の保護フィルムと、視認側とは反対側に用いられる偏光板の保護フィルムとは、偏光板の水分蒸発速度が、例えば特開2012−133301号公報に開示されるようになるように選択されることが、湿熱処理後の反りや輝度ムラ改良の観点から好ましい。
偏光板は偏光膜及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0139】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、本発明の光学フィルム、あるいは、本発明の偏光板を有することを特徴とする。
本発明の光学フィルム、及び偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下に本発明の光学フィルム、及び偏光板が用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明の光学フィルム及び偏光板は、全てのモードにおいて好ましく用いることができるが、特にIPSモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型及び半透過型のいずれでもよい。
【0140】
[TN型液晶表示装置]
本発明の光学フィルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体として用いることができる。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号及び特開平9−26572号の各公報の他、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0141】
[STN型液晶表示装置]
本発明の光学フィルムは、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0142】
[VA型液晶表示装置]
本発明の光学フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の位相差フィルムや位相差フィルムの支持体として用いてもよい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。これらの態様において本発明の光学フィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
【0143】
[IPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置]
本発明の光学フィルムは、IPSモード及びECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置の位相差フィルムや位相差フィルムの支持体、又は偏光板の保護フィルムとして特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明の光学フィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
また、|Rth|<25が好ましいが、更に450〜650nmの領域において、Rthが0nm以下であることが、色味の変化が小さく、特に好ましい。
【0144】
この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護フィルムのうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護フィルム(セル側の保護フィルム)に本発明の光学フィルムを用いた偏光板を液晶セルの上下に用いることが好ましい。また、更に好ましくは、偏光板の保護フィルムと液晶セルの間に光学異方性層のレタデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定した光学異方性層を片側に配置するのが好ましい。
【0145】
[OCB型液晶表示装置及びHAN型液晶表示装置]
本発明の光学フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置或いはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムには、レタデーションの絶対値が最小となる方向が位相差フィルムの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質及び光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0146】
[反射型液晶表示装置]
本発明の光学フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の位相差フィルムとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
【0147】
[その他の液晶表示装置]
本発明の光学フィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置とについては、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089(1998))に記載がある。
更に、本発明の光学フィルムは、3D立体映像表示を表示することができる映像表示パネルで好ましく用いられる位相差フィルムや、位相差フィルムの支持体として用いることもできる。具体的には、本発明の光学フィルムの全面にλ/4層を形成させたり、例えばライン状に交互に複屈折率が異なるパターン化された位相差層を形成させたりすることができる。本発明の光学フィルムは、従来のセルロースエステルフィルムと比較して、湿度変化に対する寸法変化率が小さいため、特に後者において好ましく用いることができる。
【実施例】
【0148】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0149】
(測定法)
まず、特性の測定法及び評価法を以下に示す。
【0150】
[置換度]
セルロースエステルのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で
13C−NMRにより求めた。
【0151】
[残留溶媒量]
光学フィルム製造時のウェブ(フィルム)の残留溶媒量は、下記式に基づいて算出した。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
[式中、Mは、ウェブ(フィルム)の質量を表し、Nは、ウェブ(フィルム)を110℃で3時間乾燥させたときの質量を表す。]
【0152】
[ヘイズ]
光学フィルムの幅方向30点(フィルムの両端部からそれぞれ30mmの位置の間を等間隔に30分割した位置)を長手方向に100mごとにサンプリングし、4cm×4cmの大きさのサンプルを取り出し、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて測定した平均値をヘイズとし、(最大値−最小値)をヘイズ分布とした。
【0153】
[音波伝播速度]
前述の方法で測定した。
【0154】
[レタデーション]
光学フィルムの幅方向5点(フィルムの中央部、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)、及び中央部と端部の中間部2点)を長手方向に100mごとにサンプリングし、5cm×5cmの大きさのサンプルを取り出し、前述の方法に従って評価した各点の平均値を算出し、それぞれRe、Rthを求めた。
【0155】
[弾性率]
作製した光学フィルムから搬送方向が長手となるように200mm×10mmのサンプルを切り出し、東洋ボールドウィン(株)製万能引っ張り試験機“STM T50BP”を用い、25℃、60RH%雰囲気で24時間調湿した後、引張速度10%/分で0.1%伸びと0.5%伸びにおける応力を測定し、その傾きから弾性率を求めた。
【0156】
[偏光度]
作製した2枚の偏光板を吸収軸を平行に重ね合わせた場合の透過率(Tp)及び吸収軸を直交させて重ね合わせた場合の透過率(Tc’)を測定し、下記式から偏光度(P)を算出した。
偏光度P = ((Tp−Tc’)/(Tp+Tc’))
0.5
【0157】
(光学フィルムの製造)
本発明の光学フィルムは、以下に示す材料と製造方法から表1および表3に記載のものを選択して製造した。
【0158】
[製膜に使用する素材]
<ポリマー樹脂>
下記のポリマー樹脂の中から表3に記載されるものを選択した。各ポリマー樹脂は120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後に使用した。
【0159】
ポリマー樹脂A:
置換度が2.86のパルプ由来のセルロースアセテート粉体 20質量部を用いた。ポリマー樹脂Aの粘度平均重合度は300、6位のアセチル基置換度は0.89、アセトン抽出分は7質量%、質量平均分子量/数平均分子量比は2.3、含水率は0.2質量%、6質量%ジクロロメタン溶液中の粘度は305mPa・s、残存酢酸量は0.1質量%以下、Ca含有量は65ppm、Mg含有量は26ppm、鉄含有量は0.8ppm、硫酸イオン含有量は18ppm、イエローインデックスは1.9、遊離酢酸量は47ppmであった。粉体の平均粒子サイズは1.5mm、標準偏差は0.5mmであった。
【0160】
ポリマー樹脂B:
置換度が2.94、粘度平均重合度が280のリンタ由来のセルロースアセテート粉末 20質量部を用いた。
【0161】
ポリマー樹脂C:
置換度が2.87、粘度平均重合度が310のリンタ由来のセルロースアセテート粉末 20質量部を用いた。
【0162】
ポリマー樹脂D:
特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従い、メタクリル酸メチル7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、得られたラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル樹脂を用いた。
【0163】
<溶媒>
下記の溶媒の中から表3に記載される溶媒80質量部を使用した。各溶媒の含水率は0.2質量%以下であった。
溶媒A ジクロロメタン/メタノール/ブタノール=81/18/1(質量比)
溶媒B ジクロロメタン/メタノール=92/8(質量比)
【0164】
<添加剤>
下記の添加剤の中から表1および表3に記載されるものを選択した。但し、表3中、繰返し単位を有する化合物、レタデーション上昇剤、レタデーション耐久性改良剤、レタデーション湿度依存性改良剤の「添加量」は、セルロースエステルを100質量%としたときの質量%を表す。前記量となるようにセルロースエステル溶液への添加剤、レタデーション上昇剤の添加量を調整した。
繰返し単位を有する化合物:
・A−1: エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)の縮合体、数平均分子量1000、水酸基価112mgKOH/g
・A−2: エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)の縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量1000、水酸基価0mgKOH/g
・A−3: エタンジオール/コハク酸(1/1モル比)の縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量1000、水酸基価0mgKOH/g
・A−4: 1,2−プロパンジオール/コハク酸(1/1モル比)の縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量1000、水酸基価0mgKOH/g
・A−5: 1,2−プロパンジオール/コハク酸(1/1モル比)の縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量800、水酸基価0mgKOH/g
・A−6: エタンジオール/1,2−プロパンジオール/コハク酸/アジピン酸(1/1/1/1モル比)の縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量1000、水酸基価0mgKOH/g
・A−7: エタンジオール/コハク酸(1/1モル比)の縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量1500、水酸基価0mgKOH/g
・A−8: エタンジオール/コハク酸(1/1モル比)の縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量4800、水酸基価0mgKOH/g
・A−9: 1,2−プロパンジオール/アジピン酸(1/1モル比)の縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量6000、水酸基価0mgKOH/g
・A−10: エタンジオール/アジピン酸/フタル酸(2/1/1モル比)との縮合体の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量760、水酸基価0
繰返し単位を有する化合物の組成を下記表1に記載した。下記表1中、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸を、EGはエタンジオール(エチレングリコール)を、PGは1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)を表す。
【0165】
<レタデーション上昇剤>
下記構造の化合物
【化12】
【0166】
<レタデーション耐久性改良剤>
下記構造の化合物
【化13】
【0167】
<レタデーション湿度依存性改良剤>
下記構造の化合物
【化14】
【0168】
<マット剤微粒子>
・M−1:二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度約7)(セルロースエステルを100質量部に対して0.02質量部)
・M−2:二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度約7)(セルロースエステルを100質量部に対して0.05質量部)
【0169】
(繰返し単位を有する化合物の強制泣出し評価)
表1記載のセルロースエステル 17.8質量部、繰り返し単位を有する化合物A−1 7.1質量部、ジクロロメタン 132.7質量部、メタノール 33.6質量部、ブタノール 1.7質量部を300mLの耐圧容器に投入し、室温にて15分間攪拌した後、80℃にて3時間加熱してドープ溶液を得た。得られたドープは絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過した後、ガラス板上に流延して、70℃で6分間加熱した後に、ガラス板から剥ぎ取り、金属枠に固定した上で、更に70℃で15分間加熱して、膜厚60μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを40mm角に切り出し、140℃のオーブンに入れて20分間加熱し、フィルムを目視観察して泣き出しを調べた(強制泣出し試験)。また、繰り返し単位を有する化合物A−2〜A−10に変えた以外は同様にして作製したフィルムの泣き出しを調べた。結果を表1に示す。
A: 泣き出しが全く見られない
B: フィルムの一部に、僅かに泣き出しが見られる
C: フィルムが一部若しくは全面に明確な泣き出しが見られる
D: フィルムが全面泣き出している
【0170】
【表1】
【0171】
以上の素材を用い、下記の製膜プロセスA〜Cの中から下記表3に記載されるものを選択してフィルムNo.1〜27を作製した。なお、全てのフィルムはヘイズが0.5%以下の透明性に優れるものであった。
【0172】
[製膜プロセスA]
<ドープ溶液の調製>
溶解工程:
攪拌羽根を有する4000リットルのステンレス製溶解タンクに、前記溶媒及び添加剤を投入して撹拌、分散させながら、前記ポリマー樹脂を徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、ドープ溶液を得た。
なお、攪拌には、5m/sec(剪断応力5×10
4kgf/m/sec
2〔4.9×10
5N/m/sec
2〕)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×10
4kgf/m/sec
2〔9.8×10
4N/m/sec
2〕)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
膨潤した溶液をタンクから、ジャケット付配管で50℃まで加熱し、更に1.2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。この際、高温にさらされるフィルター、ハウジング、及び配管はハステロイ合金(登録商標)製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
次に36℃まで温度を下げ、ドープ溶液を得た。
【0173】
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧のタンク内でフラッシュさせて、蒸発した溶剤を凝縮器で回収分離した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、24.8質量%となった。なお、凝縮された溶剤は調製工程の溶剤として再利用すべく回収工程に回された(回収は蒸留工程と脱水工程などにより実施されるものである)。フラッシュタンクでは、中心軸にアンカー翼を有する軸を周速0.5m/secで回転させることにより攪拌して脱泡を行った。タンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。
【0174】
ろ過:
次に、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルターを通過させた。ろ過後のドープ温度は、36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。
【0175】
流延工程:
続いてストックタンク内のドープを送液した。流延ダイは、幅が2.1mであり、流延幅を2000mmとしてダイ突出口のドープの流量を調整して流延を行った。ドープの温度を36℃に調整するため、流延ダイにジャケットを設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
ダイ、フィードブロック、配管はすべて作業工程中で36℃に保温した。
【0176】
《流延ダイ》
ダイの材質は、オーステナイト相とフェライト相との混合組成を持つ2相系ステンレス鋼であり、熱膨張率が2×10
-6(℃
-1)以下の素材であり、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有する素材を使用した。
また、流延ダイのリップ先端には、溶射法によりWCコーティングを形成したものを用いた。また、ドープを可溶化する溶剤である混合溶媒をビード端部とスリットの気液界面に片側で0.5ml/分で供給した。
【0177】
《金属支持体》
支持体として幅2.1mで直径が3mのドラムである鏡面ステンレス支持体を利用した。表面はニッケル鋳金及びハードクロムメッキを行った。ドラムの表面粗さは0.01μm以下に研磨し、50μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜50μmのピンホールは1個/m
2以下、10μm以下のピンホールは2個/m
2以下である支持体を使用した。このとき、ドラムの温度は−5℃に設定し、ドラムの周速度が80m/分となるようにドラムの回転数を設定した。なお、流延に伴ってドラム表面が汚れた場合には、適宜、清掃を実施した。
【0178】
流延・搬送方向への延伸:
ダイから押出されたドープは、続いて、15℃に設定された空間に配置されているドラム上に流延され、冷却されてゲル化したドープは、ドラム上で320°回転した時点でゲル化フィルム(ウェブ)として剥ぎ取られ、剥ぎ取られたウェブは3本のローラーを備えた渡り部で搬送された。このとき、支持体速度に対するローラーの回転速度、および後述のテンターの駆動速度を調整して搬送方向への延伸を渡り部で行い、表1記載の音波伝播速度比のフィルムが得られるように搬送方向への延伸倍率を設定した。延伸開始時の残留溶媒量は180〜240質量%の間であり、延伸速度は200〜1,200%/分であった。渡り部の3本のローラーでは、上流から下流に向けて支持体速度に対するローラーの回転速度(周速度)を順次高くしていき、搬送方向への延伸を例えば、108%、113%、120%(最終延伸倍率に相当)と順次拡大した多段延伸を行った。
【0179】
テンター搬送・乾燥工程:
剥ぎ取られたウェブは、ピンクリップを有したテンターで両端を固定されながら乾燥ゾーン内を搬送され、乾燥風により乾燥した。なお、フィルム8を除いてこの工程では積極的な延伸は行わなかった。
フィルム8では、フィルム7と同様の条件で前述の搬送方向への延伸を行った後、テンターでフィルムを搬送方向と直交する方向(幅方向)への延伸を行い、搬送方向よりも搬送方向と直交する方向の弾性率が高く、且つ表1記載の音波伝播速度比を有するフィルムが得られるように延伸倍率を設定した。
【0180】
後乾燥工程:
前述した方法で得られた耳切り後の光学フィルムを、ローラー搬送ゾーンで更に乾燥した。該ローラーの材質はアルミ製若しくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラーの表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。作製した光学フィルムを110℃、搬送テンション190Nとして後熱処理を行った。
【0181】
後処理、巻取り:
乾燥後の光学フィルムは、30℃以下に冷却して両端耳切りを行った。耳切りはフィルム端部をスリットする装置をフィルムの左右両端部に、2基ずつ設置して(片側当たりスリット装置数は2基)、フィルム端部をスリットした。更に光学フィルムの両端にナーリングを行った。ナーリングは片側からエンボス加工を行うことで付与した。こうして、最終製品幅1490mmの光学フィルムを得て、巻取り機により巻き取り、3900m巻きのロールを作製した。
なお、フィルム1、フィルム5、フィルム7では、ロール外観評価用に、1000m巻きのロールも別途作製し、フィルム5では、さらに7600m巻きのロールも別途作製した。
【0182】
[製膜プロセスB]
<ドープ溶液の調製>
溶解:
攪拌羽根を有する4000リットルのステンレス製溶解タンクに、前記溶媒及び添加剤を投入して撹拌、分散させながら、前記ポリマー樹脂を徐々に添加した。投入完了後、室温にて30分間撹拌し、更に100分間撹拌を実施し、ドープ溶液を得た。
膨潤した溶液をタンクから、ジャケット付配管で50℃まで加熱し、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。この際、高温にさらされるフィルター、ハウジング、及び配管はハステロイ合金(登録商標)製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
次に36℃まで温度を下げ、ドープ溶液を得た。
【0183】
ろ過:
次に、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルターを通過させた。ろ過後のドープ温度は、36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。
【0184】
流延工程:
続いてストックタンク内のドープを送液した。流延ダイは、幅が1.7mであり、ダイ突出口のドープの流量を調整して流延を行った。ドープの温度を36℃に調整するため、流延ダイにジャケットを設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
ダイ、フィードブロック、配管はすべて作業工程中で36℃に保温した。
【0185】
《流延ダイ》
ダイの材質は、オーステナイト相とフェライト相との混合組成を持つ2相系ステンレス鋼であり、熱膨張率が2×10
-6(℃
-1)以下の素材であり、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有する素材を使用した。
また、流延ダイのリップ先端には、溶射法によりWCコーティングを形成したものを用いた。また、ドープを可溶化する溶剤である混合溶媒をビード端部とスリットの気液界面に片側で0.5ml/分で供給した。
【0186】
《金属支持体》
支持体として幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを利用した。バンドの厚みは1.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下に研磨したものを使用した。材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものとした。バンドは2個のドラムにより駆動するタイプを用い、流延部のドラムは支持体を冷却するように内部に伝熱媒体(冷媒)を循環させる設備を有しているものを用いた。また、他方のドラムが乾燥のための熱を供給するために伝熱媒体が通水できるものである。それぞれの伝熱媒体の温度は5℃(流延ダイ側)と40℃とした。流延直前の支持体中央部の表面温度は15℃であった。両端の温度差は6℃以下であった。
【0187】
流延・搬送方向への延伸:
前記流延代及び支持体などが設けられている流延室の温度は、35℃に保った。ダイから押出され、バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥し、ドープ中の残留溶媒量が50質量%になった時点で流延支持体からフィルムとして剥離した。続いて得られたフィルムを3本の駆動ローラーと、駆動ローラーの間にパスローラーを有する縦延伸ゾーンに送り、表1記載の音波伝播速度比のフィルムが得られるように搬送方向への延伸倍率を設定した。3本の駆動ローラーでは、それぞれ搬送方向への延伸を例えば、108%、113%、120%と順次拡大した多段延伸を行った(延伸開始前のフィルムの長さを基準とし、各ローラーを通過した後のフィルムの長さの割合を、各延伸倍率として記載した)。なお、フィルム20では、剥ぎ取りロールドローが1.01倍になるように設定した。
【0188】
テンター搬送・乾燥工程:
剥ぎ取られたフィルムは、クリップを有したテンターで両端を固定されながらテンターの乾燥ゾーン内を搬送され、乾燥風により乾燥した。クリップには、20℃の伝熱媒体を供給して冷却した。テンター内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃、100℃、110℃とした。テンターの出口では、フィルム内の残留溶媒量は10質量%以下となるように調製した。なお、この工程では積極的な延伸は行わなかった。なお、フィルム20では、幅方向に1.05倍に延伸した。
【0189】
後乾燥工程:
前述した方法で得られた耳切り後の光学フィルムを、ローラー搬送ゾーンで更に乾燥した。該ローラーの材質はアルミ製若しくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラーの表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。作製した光学フィルムを110℃、搬送テンション100Nとして後乾燥処理を行った。
【0190】
後処理、巻取り:
乾燥後の光学フィルムは、30℃以下に冷却して両端耳切りを行った。耳切りはフィルム端部をスリットする装置をフィルムの左右両端部に、2基ずつ設置して(片側当たりスリット装置数は2基)、フィルム端部をスリットした。更に光学フィルムの両端にナーリングを行った。ナーリングは片側からエンボス加工を行うことで付与した。こうして、最終製品幅1490mmの光学フィルムを得て、巻取り機により巻き取り、3900m巻きのロールを作製した。
【0191】
[製膜プロセスC]
ペレットの作製:
調製した前記ポリマー樹脂を90℃の真空乾燥機で乾燥して含水率を0.03%以下とした後、安定剤(イルガノックス1010(チバガイギ(株)製)0.3重量%添加し230℃において窒素気流中下、ベント付2軸混練押出し機を用い、水中に押出しストランド状にした後、裁断し直径3mm長さ5mmのペレットを得た。
【0192】
溶融製膜:
得られたペレットを90℃の真空乾燥機で乾燥し含水率を0.03%以下とした後、1軸混練押出し機を用い供給部210℃、圧縮部230℃、計量部230℃で混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間に300メッシュのスクリーンフィルター、ギアポンプ、濾過精度7μmのリーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。さらにスタチックミキサーをダイ直前のメルト配管内に設置し、ダイ両端の温度とダイ中央の温度の差、ダイリップ温度とダイ温度の差温度、C/T比を調整しながら、ハンガーコートダイから押出した。
この後、3連のキャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側のキャストロール(チルロール)にタッチロールを接触させた。タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの、但し薄肉金属外筒厚みは2mmとした)を用いた。なお、チルロールを含む3連のキャストロールの温度は、上流から順に、タッチロール温度+3℃、タッチロール温度−2℃、タッチロール温度−7℃とした。
続いて、得られたフィルムは一対のニップロールを含む縦延伸ゾーンで延伸された後、ローラー搬送ゾーンに送られてアニール処理された。なお、延伸ゾーンでは、表3記載の音波伝播速度比のフィルムが得られるように延伸倍率を設定した。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅1.5mとし、製膜速度30m/分で3000m巻き取った。
【0193】
(フィルム作製における評価)
[搬送性の評価]
前述の製膜プロセスA〜Cのローラー搬送ゾーンにおける搬送性を以下の基準で評価した。結果を表3に示す。実用上、搬送性はA〜Cであることが求められる。
A: フィルムの剛性が十分あり、搬送中にフィルムが不安定になることなく、20ロールを連続で製膜することができた。
B: フィルムの剛性が十分あり、若干のバタツキが観測されたが、問題なく製膜することができた。
C: フィルムがやや柔軟であり、若干のバタツキや蛇行が観測されたが、問題となるレベルではなかった。
D: フィルムがやや柔軟で脆く、製膜を続けた際に1回以上の破断が生じた。
E: フィルムが柔軟であり、安定的に製膜を続けることが難しかった。
【0194】
[ロール外観の評価]
ロールを作製した直後に外観を目視で検査し、以下の基準で評価した(初期評価)。また、25℃、相対湿度55%の貯蔵ラックに1ヶ月保管した後のロール外観を目視で検査し、以下の基準で評価した(経時評価)。結果を表2に示す。
A : 巻き緩み、ベコ、シワなし
B : 若干の巻き緩み、ベコ、又はシワが確認されるが実用上問題なし
C : 巻き緩み、ベコ、又はシワが酷く光学フィルムとして適用できない
【表2】
【0195】
(偏光板作製)
[偏光板保護フィルム用の透湿度制御フィルムの作製]
基材フィルム1の作製:
光学フィルム12に対向する偏光板保護フィルムとして用いる透湿度制御フィルムを、以下の方法で作製した。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた内容積30Lの反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)8000g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)2000gおよび重合溶媒としてトルエン10000gを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート10.0gを添加するとともに、t−アミルパーオキシイソノナノエート20.0gとトルエン100gとからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の環流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。重合反応率は96.6%、得られた重合体におけるMHMAの含有率(重量比)は20.0%であった。
【0196】
次に、得られた重合溶液に、環化触媒として10gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学工業製、Phoslex A−18)を加え、約80〜100℃の環流下において5時間、環化縮合反応を進行させた。
【0197】
次に、得られた重合溶液を、バレル温度260℃、回転速度100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時の処理速度で導入し、押出機内で環化縮合反応および脱揮を行った。次に、脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂からなる透明なペレットを得た。この樹脂の重量平均分子量は148000、メルトフローレート(JIS K7120に準拠し、試験温度を240℃、荷重を10kgとして求めた。以降の製造例においても同じ)は11.0g/10分、ガラス転移温度は130℃であった。
【0198】
次に、得られたペレットとAS樹脂(東洋スチレン製、商品名:トーヨーAS AS20)を、ペレット/AS樹脂=90/10の重量比で単軸押出機(φ=30mm)を用いて混錬することにより、ガラス転移温度が127℃の透明なペレットを得た。
【0199】
上記で作製した樹脂組成物のペレットを、二軸押出機を用いて、コートハンガー型Tダイから溶融押出し、厚さ約160μmの樹脂フィルムを作製した。
【0200】
次に、得られた未延伸の樹脂フィルムを、縦方向に2.0倍、横方向に2.0倍に同時二軸延伸することにより、透明プラスチックフィルム基材を作製した。このようにして得た二軸延伸性フィルムの厚さは40μm、全光線透過率は92%、ヘイズは0.3%、ガラス転移温度は127℃であった。
【0201】
<低透湿層形成用組成物の調製>
下記に示すように調製した。
【0202】
低透湿層形成用組成物B−1の組成:
A−DCP(100%) 97.0g
イルガキュア907(100%) 3.0g
SP−13 0.04g
MEK(メチルエチルケトン) 81.8g
【0203】
使用した材料を以下に示す。
・A−DCP:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート[新中村化学工業(株)製]
・イルガキュア907:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・SP−13(レベリング剤):
【化15】
【0204】
<透湿度制御フィルムの作製>
基材フィルムとして上記で作成した基材フィルム1をロール形態から巻き出して、上記低透湿層形成用組成物B−1を使用し、特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥させた。その後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm
2、照射量300mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、巻き取った。低透湿層の膜厚は5μmになるよう塗布量を調整した。
得られたフィルムを透湿度制御フィルムとした。
【0205】
<透湿度制御フィルムの評価>
前記作製した透湿度制御フィルムの物性測定と評価を行った。なお、低透湿層の膜厚は低透湿層の積層前後の膜厚を測定し、その差から求めた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
フィルム 膜厚(μm) 透湿度(g/m
2/day)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
基材フィルム1 40 95
低透湿層 5 230
透湿度制御フィルム 45 67
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0206】
(偏光板の作製)
[光学フィルムの鹸化]
作製した光学フィルム1〜27(なお、光学フィルム20に対向する偏光板保護フィルムとして用いる上記光学フィルム20(アクリルフィルム))、光学フィルム1〜11および13〜20、22〜24および26に対向する偏光板保護フィルムとして用いるフジタックTDP40UT(富士フイルム(株)製)、光学フィルム12に対向する偏光板保護フィルムとして用いる上記透湿度制御フィルムをそれぞれ37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理した光学フィルムを作製した。
【0207】
[偏光膜の作製]
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
【0208】
[貼り合わせ]
このようにして得た偏光膜と、前記鹸化処理した光学フィルムのうちから表1に記載した組み合わせで2枚選び、これらで前記偏光膜を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸と光学フィルムの音速最大方向とが平行となるようにロールツーロールで貼り合わせて偏光板を作製した。
なお、アクリルフィルムを用いた偏光板では、偏光膜との接着面には鹸化処理ではなく、コロナ処理を行った。
【0209】
(偏光板の評価)
[初期偏光度]
前記偏光板の偏光度を前述した方法で算出したところ、全ての偏光板の偏光度が99.9%であった。
【0210】
[経時偏光度1]
前記偏光板の表3記載の光学フィルム(上記実施例及び比較例で作製した光学フィルム)側を粘着剤でガラス板に貼り合わせ、60℃・相対湿度90%の条件で500時間放置し、放置後の偏光度(経時偏光度1)を前述の方法で算出したところ、全ての偏光板の偏光度が99.9%であった。
【0211】
[経時偏光度2]
前記、経時偏光度1の評価と同様に、前記偏光板をガラス板に貼り合わせ、90℃ドライ環境で500時間放置し、放置後の偏光度(経時偏光度2)を前述の方法で算出したところ、比較例5を除く全ての偏光板の偏光度が99.9%であった。
【0212】
[レタデーション信頼性(レタデーション湿熱耐久性)評価]
前記偏光板を、表3記載の光学フィルム側を粘着剤を介してガラス板に貼合し、80℃・相対湿度90%の条件で120時間放置した。放置後のサンプルから対向の光学フィルムおよび偏光膜を剥がし取り、ガラス板に残ったフィルムが透明であることを目視確認した上で、前述の方法でレタデーション測定を行った。そして、湿熱処理前後のRth変化(レタデーション信頼性)を以下の基準で評価し、結果を表3に記載した。
A:Rth変化が3nm未満であり表示特性に影響しない。
B:Rth変化が5nm未満であり表示特性に影響しない。
C:Rth変化が10nm未満であり表示特性に殆ど影響しない。
D:Rth変化が20nm未満であり表示特性に僅かに影響することがある。
E:Rth変化が20nm以上であり表示特性に影響が出る。
【0213】
(IPS型液晶表示装置への実装)
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶テレビ;LG電子製42LS5600)から、液晶セルを挟んでいる一対の偏光板を剥がし取り、前記作製した偏光板を、表3記載の光学フィルム側が液晶セル側に配置されるように、粘着剤を介して液晶セルに再貼合した。組みなおした液晶テレビの表示特性を確認し、正面及び斜めからの輝度、色味を確認し(初期表示特性)、異常がないことを確認した。また、液晶セルを挟んでいる一対の偏光板のうち、視認側の偏光板だけを剥がしとって再貼合した場合も、初期表示特性は好ましいものであった。但し、フィルム26を含む偏光板を用いた場合は、斜めから視認したときの色味変化が非常に大きいことを確認した。
【0214】
[IPS型液晶表示装置への実装評価1(ワープ性能・光学フィルムの収縮力評価)]
前記作製した液晶表示装置を、50℃・相対湿度90%の環境で3日間保持した後に、25℃・相対湿度60%の環境に移し、黒表示状態で点灯させ続け、4時間後に目視観察して、正面方向の輝度ムラを以下の基準で評価した(ウェット評価)。評価結果を表3に示す。なお、視認側の偏光板だけを剥がしとって再貼合した場合も、改良効果があることを確認した。また、フィルム1を含む偏光板、およびフィルム5を含む偏光板を、それぞれ表3記載の光学フィルム側が液晶セル側と反対側に配置されるように(表3記載の対向の光学フィルムが液晶セル側に配置されるように)粘着剤を介して液晶セルに再貼合した場合も、フィルム5を含む偏光板の方が輝度ムラが抑制されることを確認した。実用上、A〜Cの評価であることが求められる。
A:照度100lxの環境下でムラが全く視認されない。
B:照度100lxの環境下でムラがほとんど視認されない。
C:照度100lxの環境下で淡いムラが視認される。
D:照度100lxの環境下で明確なムラが視認される。
E:照度300lxの環境下で明確なムラが視認される。
【0215】
[IPS型液晶表示装置への実装評価2(エッグ性能・光学フィルムの湿度依存性評価)]
前述の実装評価1(4時間後の評価)の後、さらに続けて黒表示状態で点灯を続け、25℃・相対湿度60%の環境で点灯させ続けてから、48時間後に装置正面からの方位角方向45度、極角方向70度における黒表示時の輝度ムラ、色味ムラを目視観察して、光ムラを実装評価1と同様の基準で評価した(強制評価)。評価結果を表3に示す。
【0216】
【表3】
【0217】
上記表3から、本発明の光学フィルムを有する液晶表示装置は、実装評価1が良好な結果を示していることから、本発明の光学フィルムは、収縮力が抑制されていることがわかる。本発明の光学フィルムは、弾性率も3.5GPaを超え、弾性率も高いことがわかる。また、弾性率も3.5GPaを超えることから、ロール状の光学フィルムの製造適性も優れることがわかる。
搬送性の評価がDまたはEである光学フィルムの弾性率は全て3.5GPa以下であるのに対し、搬送性の評価がC以上である光学フィルムの弾性率は、3.5GPaを超えることがわかる。このことから、弾性率が3.5GPaを超えると、ロール状の光学フィルムの製造適性が優れることがわかる。
一方、比較例の光学フィルムは搬送性が実施例よりも劣るか、比較例の光学フィルムを有する液晶表示装置は実装評価1が実施例よりも劣ることがわかる。