(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明者らは、単結晶シリコンの製造を安定的に行うための多結晶シリコンの品質向上につき検討を進める中で、多結晶シリコン析出時の諸条件の違いにより、多結晶シリコン棒中に含まれる「結晶粒径」の程度に差異が生じるという知見を得るに至った。
【0024】
多結晶シリコンを熱溶融する際の効率的かつ均一な溶解のためには、多結晶シリコン中に含まれる個々の結晶(グレイン)のサイズが略均一である(結晶粒径分布が小さい)ことが理想的であり、単結晶シリコンの安定的な製造のためには、結晶粒径の分布や平均粒径を適正な範囲に収めることが必要である。
【0025】
結晶粒径分布や平均粒径は、多結晶シリコンの熱伝導率や熱拡散率といった物性値に直接影響を与える。特に、多結晶シリコン棒をそのまま原料として用いるFZ法での単結晶シリコンの結晶成長の工程では、一旦、多結晶シリコンが溶融し、このシリコン融液が再度、結晶化して単結晶となる状態変化を一定速度で生じさせ、この状態変化が連続して行われるから、結晶粒径分布や平均粒径が所定の値から逸脱していると、適正な熱伝導や熱拡散が堅調に阻害され、育成中のFZ結晶中での転位発生等を引き起こしてしまう。
【0026】
本発明では、このような結晶粒径の評価に、X線回折法を応用する。
【0027】
一般的なX線回折法で結晶粒径を評価しても、本発明の目的を達成することはできない。これは、粉末X線回折ピークの線幅から結晶粒サイズを算出するシェラーの式(D=K・λ/Bcosθ)を多結晶シリコンに適用しても、上記式中のB値が、試料間であまり差が出ないことによる。
【0028】
ここで、上記式において、Bは結晶粒が有限であることによる回折線幅の拡がり(実測の回折線幅)、λはX線の波長、Kはシェラーの定数、そして、θはブラッグ角(回折角の1/2)である。
【0029】
このような問題につき、井田は、結晶粒径が統計的な分布を持つことから体積加重平均粒径について議論し、更には面積加重平均粒径の方が現実的に有用であることを指摘している(非特許文献1:井田隆、セラミックス,43(11),917-927(November 2008)。
【0030】
また、面積加重平均粒径を回折強度図形から求める方法としては、ウォーレン−アバーバッハの方法がある。(非特許文献2:B. E. Warren and B. l. Averbach, J. Appl. Phys., 21, pp.595-599 (1950))。この方法は、回折ピーク形状関数のフーリエ変換の原点での傾き(フーリエ勾配)が面積加重平均粒径に反比例することを利用しているが、多結晶シリコンの結晶粒径を正確に算出する方法としては未完成である。
【0031】
本発明者らは、多結晶シリコンの粒径をX線回折法により評価する検討を進めるなかで、多結晶シリコンを板状試料とし、該板状試料をミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が前記板状試料の主面上をφスキャンするように該板状試料の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、上記ミラー指数面からのブラッグ反射強度の上記板状試料の回転角度(φ)依存性を示すチャートを求めると、その「ベースライン」の振幅が、試料(多結晶シリコン棒)毎に異なることに気づいた。
【0032】
ここで、各ミラー指数面<hkl>についてのφスキャン・チャートに現れる回折強度は、X線が照射されている領域の結晶の配向の度合いを反映しており、ミラー指数面<hkl>に配向した領域が広い(結晶粒径が大きい)ほど、回折強度は強くなる。
【0033】
したがって、この回折強度の回転角度(φ)依存性であるφスキャン・チャートに現れる「ベースライン」は、ミラー指数面<hkl>に配向した領域の面積の回転角度分布を反映しているものとしての取り扱いが可能である。
【0034】
そこで、本発明では、このような「ベースライン」の「振幅」に着目し、φスキャン・チャートからベースラインの回折強度値の最大値(B
max)と最小値(B
min)の差(ΔB)を求め、該ΔBを回折強度値の平均値(P
ave)で除した値(ΔB/P
ave)を多結晶シリコンの粒径の評価指標として用いることとしている。
【0035】
従って、本発明で言う「結晶粒径」とは、上記手法で得られたφスキャン・チャートに現れる「ベースライン」の振幅に相当するものである。
【0036】
本発明者らが検討したところ、相対的に大きな「結晶粒径」のものがある場合には「ベースライン」の振幅が大きくなる一方、相対的に小さな「結晶粒径」のものがある場合には「ベースライン」の振幅は小さくなる。
【0037】
例えば、多結晶シリコン棒の育成に際し、トリクロロシランの濃度を下げるとともに反応温度を下げて成長速度を低下させて育成した場合、φスキャン法による回折強度は、一定で且つベースラインの振幅幅は極めて少なく、φスキャン・チャートはほぼ直線となった。
【0038】
また、試料によっては、ベースラインが「うねり」、横軸方向の幅(回転角度φの幅)が大きく、回転角度φが10度を超えるような様なベースラインの「うねり」を示す状態も確認された。
【0039】
さらに、試料によっては、ベースラインの変動とは別に、φスキャン・チャート中にシャープなピークを示すものもあった。このような試料を解析したところ、部分的に点在する結晶粒界の存在が確認された。なお、このような場合には、ベースラインは、φスキャン・チャートから上記シャープなピークを除外して求めた。
【0040】
また、結晶粒径は、電子後方散乱回折測定法(EBSD)により測定を行い、厳密な粒径分布を測定して平均粒径を算出することで、上述の裏付けを行った。
【0041】
このような、種々の条件で育成された多結晶シリコン棒を評価した結果、結晶粒径に最も影響を及ぼすのは多結晶シリコン析出時の温度であることが分かった。数℃乃至十数℃の僅かな違いによっても、結晶粒径が顕著に影響を受ける事実が確認された。
【0042】
さらに、本発明者らは、多数の多結晶シリコン棒から試料を採取して上述のφスキャン・チャートを求め、これらの多結晶シリコン棒を原料としてFZ法で単結晶化を試みた。その結果、上述したΔB/P
aveの値が特定の条件を満足する場合には、単結晶化の工程で結晶線が消失したり結晶線が乱れたりすることがない一方、この特定条件を満足しない場合には単結晶化の工程で結晶線が消失したり結晶線が乱れる確率が極めて高いことが判明した。
【0043】
このような検討により、本発明者らは、結晶粒径が大きい多結晶シリコンを原料として単結晶化を図ると、部分的な溶融残りが局部的に生じ易く、これが転位発生を誘発して結晶線消失の原因ともなり得るとの知見を得るに至った。
【0044】
そこで、本発明では、上述のΔB/P
ave値を判定基準として、単結晶シリコン製造用原料としての適否を判断することとした。
【0045】
この場合、ミラー指数面<hkl>は、<111>、<220>、および、<311>の少なくともひとつの面であることが好ましい。
【0046】
例えば、ミラー指数面<hkl>が<111>の場合には、ΔB/P
aveの値が0.2以下である場合に単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0047】
また、例えば、ミラー指数面<hkl>が<220>の場合には、ΔB/P
aveの値が0.3以下である場合に単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0048】
さらに、例えば、ミラー指数面<hkl>が<311>の場合には、ΔB/P
aveの値が0.3以下である場合に単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0049】
このような多結晶シリコン棒は、主として、シーメンス法で育成されたものである。
【0050】
そして、上記手法で選択された多結晶シリコン棒を用いたり、これを破砕して得られた多結晶シリコン塊を用いることで、単結晶シリコンを安定して製造することが可能となる。
【0051】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0052】
図1A及び
図1Bは、シーメンス法などの化学気相法で析出させて育成された多結晶シリコン棒10からの、X線回折プロファイル測定用の板状試料20の採取例について説明するための図である。図中、符号1で示したものは、表面に多結晶シリコンを析出させてシリコン棒とするためのシリコン芯線である。
【0053】
なお、この例では、多結晶シリコン棒10の結晶粒径の径方向依存性の有無を確認すべく3つの部位(CTR:シリコン芯線1に近い部位、EDG:多結晶シリコン棒10の側面に近い部位、R/2:CTRとEGDの中間の部位)から板状試料20を採取しているが、このような部位からの採取に限定されるものではない。
【0054】
図1Aで例示した多結晶シリコン棒10の直径は概ね120mmであり、この多結晶シリコン棒10の側面側から、直径が概ね20mmで長さが概ね60mmのロッド11を、シリコン芯線1の長手方向と垂直にくり抜く。
【0055】
そして、
図1Bに図示したように、このロッド11のシリコン芯線1に近い部位(CTR)、多結晶シリコン棒10の側面に近い部位(EDG)、CTRとEGDの中間の部位(R/2)からそれぞれ、多結晶シリコン棒10の径方向に垂直な断面を主面とする厚みが概ね2mmの円板状試料(20
CTR、20
EDG、20
R/2)を採取する。
【0056】
なお、ロッド11を採取する部位、長さ、および本数は、シリコン棒10の直径やくり抜くロッド11の直径に応じて適宜定めればよく、円板状試料20も、くり抜いたロッド11のどの部位から採取してもよいが、シリコン棒10全体の性状を合理的に推定可能な位置であることが好ましい。
【0057】
例えば、2枚の円板状試料を取得する場合には、シリコン棒の周の半径に対し、中心から半径の2分の1である点よりも中心側にある位置と、外側にある位置の2箇所から円板状試料を取得することが好ましい。更に、例えば比較を行う2つのサンプルの取得位置を、中心から半径の3分の1である点よりも中心側にある位置と、中心から半径の3分の2である点よりも外側にある位置とした場合、より高精度な比較ができる。また、比較する円板状試料は2枚以上であればよく、特に上限はない。
【0058】
また、円板状試料20の直径を概ね20mmとしたのも例示に過ぎず、直径はX線回折測定時に支障がない範囲で適当に定めればよい。
【0059】
本発明では、多結晶シリコンの結晶粒径をX線回折法により評価するにあたり、上述のようにして採取した板状試料20を、ミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が板状試料20の主面上をφスキャンするように円板状試料20の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、上記ミラー指数面からのブラッグ反射強度の板状試料20の回転角度(φ)依存性を示すチャートを求め、該チャートからベースラインの回折強度値の最大値(B
max)と最小値(B
min)の差(ΔB)を求め、該ΔBを回折強度値の平均値(P
ave)で除した値(ΔB/P
ave)を、多結晶シリコンの粒径の評価指標として用いる。
【0060】
ここで、本発明者らの検討によれば、ミラー指数面<111>、<220>、および、<311>からのピークは、結晶粒径の評価に特に有効であるから、上記ミラー指数面<hkl>としては、<111>、<220>、および、<311>の少なくともひとつの面であることが好ましい。
【0061】
また、本発明では、単結晶シリコン製造用原料として用いる多結晶シリコン棒をX線回折法により選択するにあたり、上述の結晶粒径評価方法を利用する。
【0062】
すなわち、本発明に係る多結晶シリコン棒の選択方法は単結晶シリコン製造用原料として用いる多結晶シリコン棒をX線回折法により選択するための方法であって、前記多結晶シリコン棒は化学気相法による析出により育成されたものであり、該多結晶シリコン棒の径方向に垂直な断面を主面とする板状試料を採取し、該板状試料をミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が前記板状試料の主面上をφスキャンするように該板状試料の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、前記ミラー指数面からのブラッグ反射強度の前記板状試料の回転角度(φ)依存性を示すチャートを求め、該チャートからベースラインの回折強度値の最大値(B
max)と最小値(B
min)の差(ΔB)を求め、該ΔBを回折強度値の平均値(P
ave)で除した値(ΔB/P
ave)を判定基準として単結晶シリコン製造用原料としての適否を判断する。
【0063】
ここでも、上記ミラー指数面<hkl>としては、<111>、<220>、および、<311>の少なくともひとつの面であることが好ましい。
【0064】
板状試料のミラー指数面<hkl>についてのφスキャン・チャートに現れるベースラインをどのように定義付けるか等については、ミラー指数面<111>および<220>についてのφスキャン・チャートを例に、後述する。
【0065】
図2は、円板状試料20からのX線回折プロファイルを、いわゆるθ-2θ法で求める際の測定系例の概略を説明するための図である。スリット30から射出されてコリメートされたX線ビーム40(Cu−Kα線:波長1.54Å)は円板状試料20に入射し、円板状試料20をXY平面内で回転させながら、試料回転角度(θ)毎の回折X線ビームの強度を検知器(不図示)で検出して、θ-2θのX線回折チャートを得る。
【0066】
図3は、上記で得られたθ-2θのX線回折チャートの例で、ミラー指数面<111>、<220>、<311>、<400>からの強いブラッグ反射がそれぞれ、2θ=28.40°、47.24°、55.98°、68.98°の位置にピークとなって現れる。
【0067】
図4は、円板状試料20からのX線回折プロファイルを、いわゆるφスキャン法で求める際の測定系の概略を説明するための図である。例えば、円板状試料20の上記θを、ミラー指数面<111>からのブラッグ反射が検出される角度とし、この状態で、円板状試料20の中心から周端に渡る領域にスリットにより定められる細い矩形の領域にX線を照射させ、このX線照射領域が円板状試料20の全面をスキャンするように円板状試料20の中心を回転中心としてYZ面内で回転(φ=0°〜360°)させる。
【0068】
図5は、上記φスキャン測定を、ミラー指数面<111>、<220>、<311>、<400>について行って得られたチャートの一例である。この例では、上記何れのミラー指数面に着目してもブラッグ反射強度は略一定であり、最大値と最小値との差を平均値で除しても、その値は略ゼロである。つまり、ブラッグ反射強度は回転角φにあまり依存せず、粉末試料と同様のチャートとなっており、この円板状試料20に結晶粒径は、小さいと判断することができる。
【0069】
図6は、円板状試料20からのX線回折プロファイルをφスキャン法で求める際の他の測定系例の概略を説明するための図で、この図に示した例では、円板状試料20の両周端に渡る領域にスリットにより定められる細い矩形の領域にX線を照射させ、このX線照射領域が円板状試料20の全面をスキャンするように円板状試料20の中心を回転中心としてYZ面内で回転(φ=0°〜180°)させる。
【0070】
図7は、上記φスキャン測定を、ミラー指数面<111>、<220>、<311>、<400>について行って得られたチャートの一例で、実質的に、
図5に示したものと同じφスキャン・チャートが得られている。
【0071】
図8は、円板状試料20からのX線回折プロファイルをφスキャン法で求める際のもうひとつの測定系例の概略を説明するための図で、この図に示した例では、円板状試料20の主面の全体ではなく、内周領域のみにX線を照射させ、このX線照射領域が円板状試料20の全面をスキャンするように円板状試料20の中心を回転中心としてYZ面内で回転(φ=0°〜180°)させる。
【0072】
このようなX線照射領域から得られるφスキャン・チャートと、上述の円板状試料20の主面全体から得られるφスキャン・チャートとの差分を求める等の処理を行うと、円板状試料20の面内での結晶粒径分布を得ることが可能となる。
【0073】
尤も、
図1A〜1Bに示したような態様で採取された円板状試料20については面内での結晶粒径分布は生じないと考えられるが、本発明に係る結晶粒径の評価は、シーメンス法等により育成された多結晶シリコン棒の選択方法としてのみならず、多結晶シリコンの結晶粒径をX線回折法により評価する方法としても有意であることは言うまでもないから、例えば、化学気相法による析出で育成された多結晶シリコン棒の径方向と平行に切り出された円板状試料につき面内での結晶粒径の分布を求めることにより、多結晶シリコン棒内での結晶粒径の有無乃至多結晶シリコン棒の口径拡大に伴う結晶粒径の変化等を知ることも可能となり、これにより単結晶シリコン製造用原料として好適な多結晶シリコン棒を選択することが可能となる。
【0074】
具体的には、上述した多結晶シリコン棒の選択方法において、ミラー指数面<hkl>は<111>であり、φスキャンを行って得られたチャートのベースラインの最大値と最小値の差をベースラインの平均値で除した値が0.2以下である場合に単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0075】
また、ミラー指数面<hkl>は<220>であり、φスキャンを行って得られたチャートのベースラインの最大値と最小値の差をベースラインの平均値で除した値が0.3以下である場合に単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0076】
さらに、ミラー指数面<hkl>は<311>であり、φスキャンを行って得られたチャートのベースラインの最大値と最小値の差をベースラインの平均値で除した値が0.3以下である場合に単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0077】
図9は、板状試料のミラー指数面<111>および<220>についてのφスキャン・チャートの例であり、これらの試料は同じ多結晶シリコン棒から採取したものである。なお、これらのφスキャン・チャートは、
図6に示した態様の測定で得られたものであり、ベースラインの意味を理解し易いように多数のピークが現れないチャート部分を示した。
【0078】
ミラー指数面<111>についてのφスキャン・チャートをみると、ベースラインに「うねり」がみられるが、このような「うねり」のない角度領域(ここでは、φ=50〜70°の範囲)で評価すると、当該領域のベースラインの回折強度値の最大値(B
max)および最小値(B
min)はそれぞれ、7.42kcpsおよび7.12kcpsであり、その差(ΔB)は0.30kcpsとなる。また、この角度領域のベースラインの回折強度値の平均値(P
ave)は7.26kcpsである。従って、ΔB/P
aveの値は、0.0413となる。
【0079】
ミラー指数面<220>についてのφスキャン・チャートをみると、このベースラインにも「うねり」がみられるが、このような「うねり」のない角度領域(ここでも、φ=50〜70°の範囲)で評価すると、当該領域のベースラインの回折強度値の最大値(B
max)および最小値(B
min)はそれぞれ、3.82kcpsおよび3.50kcpsであり、その差(ΔB)は0.32kcpsとなる。また、この角度領域のベースラインの回折強度値の平均値(P
ave)は3.66kcpsである。従って、ΔB/P
aveの値は、0.0874となる。
【0080】
なお、φスキャン・チャート中にピーク状の回折強度分布が現れている場合には、S/N比が3以上であるものを「ピーク」と判定し、当該ピーク部分については、ピーク強度の積分を行う際にベースラインを求める手法に従って、ベースラインを定める。
【0081】
図10は、ミラー指数面<hkl>が、<111>、<220>、および、<311>の多数の試料につき、EBSDによる平均粒径と上述のΔB/P
aveの値との関係を纏めた図である。本発明者らの検討結果によれば、FZ法による単結晶シリコンの安定的製造のためには、
図10の横軸値が2.5以下(平均粒径換算で6.25μmに相当)であることが好ましい。これは、
図10において、ミラー指数面<hkl>が<111>の場合にはΔB/P
aveの値が0.2以下、ミラー指数面<hkl>が<220>の場合にはΔB/P
aveの値が0.3以下、ミラー指数面<hkl>が<311>の場合にはΔB/P
aveの値が0.3以下に対応する。