特許第5969961号(P5969961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5969961-配線基板 図000004
  • 特許5969961-配線基板 図000005
  • 特許5969961-配線基板 図000006
  • 特許5969961-配線基板 図000007
  • 特許5969961-配線基板 図000008
  • 特許5969961-配線基板 図000009
  • 特許5969961-配線基板 図000010
  • 特許5969961-配線基板 図000011
  • 特許5969961-配線基板 図000012
  • 特許5969961-配線基板 図000013
  • 特許5969961-配線基板 図000014
  • 特許5969961-配線基板 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969961
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20160804BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20160804BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G06F3/041 430
   G06F3/044 128
   H05K1/02 J
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-146601(P2013-146601)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-18494(P2015-18494A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2015年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】多田 信之
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明裕
(72)【発明者】
【氏名】栗城 匡志
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−129112(JP,A)
【文献】 特開2013−45262(JP,A)
【文献】 特開2008−83899(JP,A)
【文献】 特開2008−270757(JP,A)
【文献】 特開2005−353045(JP,A)
【文献】 特開昭63−205928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、該絶縁基板の表面に配置された導電部とを有する配線基板において、
前記導電部は、
前記絶縁基板の表面に配置された複数の電極部と、
前記絶縁基板の表面に、複数の前記電極部に対応して配置され、外部回路との電気的接続を行う複数の端子部と、
前記絶縁基板の表面に配置され、複数の前記電極部とそれぞれ対応する前記端子部とを電気的に接続する端子配線部とを有し、
各前記端子配線部のうち、少なくとも対応する前記端子部との境界部を中心とする半径10mmの円に入る部分において線幅が5μm以上、100μm以下となる部分を有し、
前記端子配線部の配線抵抗値がいずれも100オーム以上、10kオーム以下であることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板において、
各前記端子配線部のうち、対応する前記端子部との境界部を中心とする半径10mmの円に入る部分において線幅が10μm以上、50μm以下となる部分を有していることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載の配線基板において、
前記端子配線部の配線抵抗値がいずれも200オーム以上、5kオーム以下であることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線基板において、
複数の前記端子部のうち、対応する電極部までの直線距離が最も短い1以上の端子部に接続された前記端子配線部のうち、対応する前記端子部との境界部を中心とする半径10mmの円に入る部分が、前記直線距離よりも長く引き回されていることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線基板において、
複数の前記端子部のうち、対応する電極部までの直線距離が最も短い1以上の端子部に接続された前記端子配線部のうち、対応する前記端子部との境界部を中心とする半径10mmの円に入る部分が、少なくとも1つの折り曲げ部を有することを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項5記載の配線基板において、
前記部分は、前記折り曲げ部が少なくとも1回繰り返されるパターンを有し、
前記パターンの間隔は、該パターンを構成する配線幅の2倍以上であることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の配線基板において、
前記絶縁基板の裏面のうち、前記端子部に近い部分であって、且つ、複数の前記端子配線部の各一部に対向する部分に、一定電位に維持された電極膜が形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の配線基板において、
前記導電部は、単一の導電性素材にて構成され、
前記単一の導電性素材は、銀、銅、アルミニウムのうちの1種類からなる金属、もしくはこれらの少なくとも1つを含む合金からなることを特徴とする配線基板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の配線基板において、
前記導電部は、前記絶縁基板の表面に配置された透明導電膜による複数の電極部と、
前記絶縁基板の表面に、複数の前記電極部に対応して配置され、外部回路との電気的接続を行う複数の端子部と、
前記絶縁基板の表面に配置され、複数の前記電極部とそれぞれ対応する前記端子部とを電気的に接続する端子配線部とを有し、
前記各部位の導電部の厚みは同一であることを特徴とする配線基板。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の配線基板において、
前記導電部の導電率は、1×106〜5×106S/mであることを特徴とする配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関し、例えば電気的に接続される電子回路(集積回路等)への静電気放電による破損防止を図ることができ、例えばタッチスクリーンパネル等に用いて好適な配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、液晶表示パネル等においては、その製造過程での静電気による帯電破壊が問題となり、その問題を解決するために、特許文献1及び2等に記載された技術が提案されている。
【0003】
一方、タッチスクリーンパネル等の位置入力装置においては、透明電極からIC回路までの配線部の電気抵抗を低減する構造(特許文献3参照)や、複数の配線間の各抵抗値の差を低減して、配線間のRC時定数の差を小さくする構造(特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−216062号公報
【特許文献2】特開平5−198806号公報
【特許文献3】特開2012−043298号公報
【特許文献4】特開2010−140041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タッチスクリーンパネルは、タッチ位置を検出するための多数の電極が形成された配線基板と、配線基板に電気的に接続された制御回路(集積回路等の電子部品)とを有し、配線基板の周辺部に形成された複数の端子配線を介して複数の電極と制御回路とを電気的に接続するようにしている。
【0006】
また、配線基板の周辺部、特に、複数の端子配線部の形成部分の外側には、静電気放電によるノイズ電流の制御回路、もしくは、電極部への流れ込みを抑制するために、すなわち、静電気放電ノイズ対策のために、一定電位(例えば接地電位)に保持されたシールド配線を形成するようにしている。
【0007】
タッチスクリーンパネルは、静電気放電ノイズ対策として端子配線部の外側にシールド配線を取り入れているが、近年の画面サイズの大型化に伴い、特に、画面中央部で生じた静電気放電によるノイズ電流の制御回路への流れ込みはシールド配線にて抑制することができなくなってきている。
【0008】
そこで、特許文献1や2に記載された手法で、タッチスクリーンパネルの静電気放電ノイズ対策を施すことが考えられるが、液晶表示パネルに対する静電破壊防止策は、端子配線の外部からパネル内に形成されたTFT(薄膜トランジスタ)等への静電気放電による静電破壊を防止するものであるから、画面中央部で生じた静電気放電によるノイズ電流の制御回路への流れ込みを抑制するためには適用することができない。
【0009】
また、特許文献3に記載された、電極からIC回路までの配線パターンの電気抵抗を低減する構造や、特許文献4に記載された、端子配線間の抵抗値の差を低減して、端子配線間のRC時定数の差を小さくする構造を、画面中央部で生じた静電気放電によるノイズ電流の制御回路への流れ込みを抑制する構造として適用することはできない。
【0010】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、端子配線部や画面中央部で生じた静電気放電によるノイズ電流の制御回路への流れ込みを抑制することができ、例えばタッチスクリーンパネルの画面サイズの大型化を促進させることができる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 本発明に係る配線基板は、絶縁基板と、該絶縁基板の表面に配置された導電部とを有する配線基板において、前記導電部は、前記絶縁基板の表面に配置された複数の電極部と、前記絶縁基板の表面に、複数の前記電極部に対応して配置され、外部回路との電気的接続を行う複数の端子部と、前記絶縁基板の表面に配置され、複数の前記電極部とそれぞれ対応する前記端子部とを電気的に接続する端子配線部とを有し、各前記端子配線部のうち、少なくとも対応する前記端子部との境界部を中心とする半径10mmの円に入る部分において線幅が5μm以上、100μm以下となる部分を有し、前記端子配線部の配線抵抗値がいずれも100オーム以上、10kオーム以下であることを特徴とする。
【0012】
一般に、静電気放電に伴って生じるノイズ電流の外部回路への流れ込みを抑制することを目的として、外部回路と端子配線部との間に、保護抵抗素子を挿入接続することが望ましい。そこで、本発明では、保護抵抗素子と同等の機能を配線基板上に形成する条件を見い出し、上述した構成を満足することで、端子配線部の抵抗値増加を最小限に留めながらも、端子配線部に加えて画面中央部で生じた静電気放電によるノイズ電流の外部回路への流れ込みを抑制することができ、例えばタッチスクリーンパネルの画面サイズの大型化を促進させることができる。
【0013】
[2] 本発明において、各前記端子配線部のうち、対応する前記端子部との境界部を中心とする半径10mmの円に入る部分において静電気放電ノイズ対策として前記端子配線部の線幅は狭いほど有効であるが、一方で、配線の線幅が狭くなりすぎると断線する可能性も増加することより、「10μm以上、100μm以下」が好ましく、さらには、「10μm以上、50μm以下」がより好ましく、前記端子配線部の線幅は素材の導電率、製造能力、断線等の弊害、を考慮して決められる。
【0014】
[3] また、複数の前記端子配線部の配線抵抗値がいずれも200オーム以上、5kオーム以下であることがより好ましい。
【0015】
[4] 複数の前記端子配線部のうち、端子配線部の導電率、端子配線部の厚み、及び端子配線部の幅の制約により、所定の抵抗値を満たせない前記端子配線部において、直線距離よりも長く引き回されていてもよい。
【0016】
[5] 複数の前記端子配線部のうち、前記端子配線部の導電率、前記端子配線部の厚み、及び前記端子配線部の配線幅の制約により、所定の抵抗値を満たせない前記端子配線部において少なくとも1つの折り曲げ部を有してもよい。
【0017】
[6] この場合、前記部分は、前記折り曲げ部が少なくとも1回繰り返されるパターンを有し、前記パターンの間隔は、該パターンを構成する配線幅の2倍以上であることがより好ましい。
【0018】
[7] 複数の前記端子配線部のうち、線幅を制限する範囲として対応する前記端子部との境界部を中心とする半径10mmの円に入る部分としているが、この範囲に対して別段の対策、例えば、タッチセンサーパネルを搭載する筐体における静電破壊防止構造の採用等、が実施される場合においては、その静電破壊防止対策部位の境界部を基点とみなすこともある。
【0019】
[8] 本発明において、前記絶縁基板の裏面のうち、前記端子部に近い部分であって、且つ、複数の前記端子配線部の各一部に対向する部分に、一定電位に維持された電極膜が形成されていてもよい。この場合、端子配線部のうち、それぞれ端子部に近接する部分と電極膜との間にコンデンサが形成され、これにより、端子配線部や画面中央部で生じた静電気を一時的に前記コンデンサに蓄積し徐々に放電させることができ、配線基板に静電気放電に対する耐性を持たせることができる。
【0020】
[9] また、前記導電部は、単一の導電性素材にて構成され、前記単一の導電性素材は、銀、銅、アルミニウムのうちの1種類からなる金属、もしくはこれらの少なくとも1つを含む合金からなり、前記導電部の導電率は、1×106〜5×106S/mであることが好ましい。
【0021】
[10] 前記端子配線部のうち、対応する前記端子部との境界部を中心とする半径10mmの円に入る部分以外の部分の線幅は、20〜200μmが好ましく、前記端子配線部の導電率、前記端子配線部の厚み、前記端子配線部の抵抗値、及び搭載されるパネルのデザイン等を考慮して決定される。
【0022】
[11] 本発明において、前記導電部は、前記絶縁基板の表面に配置された透明導電膜による複数の電極部と、前記絶縁基板の表面に、複数の前記電極部に対応して配置され、外部回路との電気的接続を行う複数の端子部と、前記絶縁基板の表面に配置され、複数の前記電極部とそれぞれ対応する前記端子部とを電気的に接続する端子配線部とを有し、前記各部位の導電部の厚みは同一であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る配線基板によれば、画面周辺部や画面中央部で生じた静電気放電によるノイズ電流の制御回路への流れ込みを防止することができ、例えばタッチスクリーンパネルの画面サイズの大型化を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態に係る配線基板をタッチスクリーンパネルに適用した構成例を示す分解斜視図である。
図2】積層導電性フイルムの断面構造の一例と制御系(自己容量方式)の一例を示す説明図である。
図3】第1導電性フイルムの要部(第1電極部、第1結線部、第1端子配線部及び第1端子部)を上から見て示す平面図である。
図4】第2導電性フイルムに形成される第2導電部のパターンの他の例を、第1導電部のパターンと共に示す平面図である。
図5】積層導電性フイルムの断面構造の一例と制御系(相互容量方式)の一例を示す説明図である。
図6】シミュレーションにて使用したタッチスクリーンパネルの層構成と各層の厚みを示す説明図である。
図7】タッチスクリーンパネルの透明基体の表面及び裏面に形成された第1導電部及び第2導電部の構成例を示す平面図である。
図8】第1端子部と第1端子配線部との接続部分の詳細を示す拡大図である。
図9】第1端子配線部が完全導体で、且つ、線幅500μmの場合を基準(0dB)とした場合において、第1端子配線部の線幅及び導電率を変えたときの誘起ノイズ(ノイズ電圧)の変化を示す特性図である。
図10図10Aは第1具体例に係る第1導電性フイルムの要部(第1電極部、第1結線部、第1端子配線部及び第1端子部)を上から見て示す平面図であり、図10Bは第2具体例に係る第1導電性フイルムの要部を上から見て示す平面図であり、図10Cは第3具体例に係る第1導電性フイルムの要部を上から見て示す平面図である。
図11】第1導電性フイルムの要部(第1電極部、第1結線部、第1端子配線部及び第1端子部)と、第1透明基体の裏面に形成した電極膜の例とを上から見て示す平面図である。
図12】積層導電性フイルムの断面構造の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る配線基板を例えばタッチスクリーンパネルに適用した実施の形態例を図1図12を参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。また、本明細書では、略長方形の電極部パターン形状を採用しているが、電極部形状は本形状に限定されるものではなく、電極部がひし形形状の組み合わせとして構成されているパターン等においても適用される。
【0026】
本実施の形態に係る配線基板が適用されるタッチスクリーンパネル10は、図1に示すように、センサ本体12と制御回路14(IC回路等で構成:図2参照)とを有する。センサ本体12は、第1導電性フイルム16A(配線基板)と第2導電性フイルム16B(配線基板)とを積層して構成された積層導電性フイルム18と、その上に積層された例えばガラス製のカバー層20とを有する。積層導電性フイルム18及びカバー層20は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置22における表示パネル24上に配置されるようになっている。第1導電性フイルム16A及び第2導電性フイルム16Bは、上面から見たときに、表示パネル24の表示画面24aに対応した第1センサ領域26A及び第2センサ領域26Bと、表示パネル24の外周部分に対応する第1端子配線領域28A及び第2端子配線領域28B(いわゆる額縁)とを有する。
【0027】
第1導電性フイルム16Aは、図2に示すように、第1透明基体32Aと、該第1透明基体32Aの表面上に形成された上述の第1導電部30Aと、第1導電部30Aを被覆するように形成された第1透明粘着剤層34Aとを有する。
【0028】
第1センサ領域26Aには、図1及び図3に示すように、金属細線にて構成された透明導電層による複数の第1電極部36Aが形成されている。第1電極部36Aは、多数の格子38(図3参照)が組み合わされて構成された帯状のメッシュパターン40(図3参照)を有し、第1方向(x方向)に延在し、且つ、第1方向と直交する第2方向(y方向)に配列されている。
【0029】
上述のように構成された第1導電性フイルム16Aは、各第1電極部36Aの一方の端部に、それぞれ第1結線部42aを介して金属配線による第1端子配線部44aが電気的に接続されている。
【0030】
すなわち、タッチスクリーンパネル10に適用した第1導電性フイルム16Aは、図2に示すように、第1センサ領域26Aに対応した部分に、上述した多数の第1電極部36Aが配列され、第1端子配線領域28Aには各第1結線部42aから導出された複数の第1端子配線部44aが配列されている。また、図1に示すように、第1端子配線部44aの外側には、一方の第1接地端子部46aから他方の第1接地端子部46aにかけて、第1センサ領域26Aを囲むように、シールド効果を目的とした第1接地ライン48aが形成されている。
【0031】
図1の例では、第1導電性フイルム16Aの外形は、上面から見て長方形状を有し、第1センサ領域26Aの外形も長方形状を有する。第1端子配線領域28Aのうち、第1導電性フイルム16Aの一方の長辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、上述した一対の第1接地端子部46aに加えて、複数の第1端子部50aが前記一方の長辺の長さ方向に配列形成されている。また、第1センサ領域26Aの一方の長辺(第1導電性フイルム16Aの一方の長辺に最も近い長辺:y方向)に沿って複数の第1結線部42aが直線状に配列されている。各第1結線部42aから導出された第1端子配線部44aは、第1導電性フイルム16Aの一方の長辺における略中央部に向かって引き回され、それぞれ対応する第1端子部50aに電気的に接続されている。
【0032】
一方、第2導電性フイルム16Bは、図2に示すように、第2透明基体32Bと、該第2透明基体32Bの表面上に形成された上述の第2導電部30Bと、第2導電部30Bを被覆するように形成された第2透明粘着剤層34Bとを有する。
【0033】
第2センサ領域26Bには、図1に示すように、上述した第1導電性フイルム16Aと同様に、金属細線にて構成された透明導電層による複数の第2電極部36Bを有する。第2電極部36Bは、図示しないが、第1電極部36Aと同様に、多数の格子38が組み合わされて構成された帯状のメッシュパターン40を有し、第2方向(y方向)に延在し、且つ、第1方向(x方向)に配列されている。
【0034】
上述のように構成された第2導電性フイルム16Bは、例えば奇数番目の各第2電極部36Bの一方の端部、並びに偶数番目の各第2電極部36Bの他方の端部に、それぞれ第2結線部42bを介して金属配線による第2端子配線部44bが電気的に接続されている。
【0035】
すなわち、タッチスクリーンパネル10に適用した第2導電性フイルム16Bは、図1に示すように、第2センサ領域26Bに対応した部分に、多数の第2電極部36Bが配列され、第2端子配線領域28Bには各第2結線部42bから導出された複数の第2端子配線部44bが配列されている。また、第2端子配線部44bの外側には、一方の第2接地端子部46bから他方の第2接地端子部46bにかけて、第2センサ領域26Bを囲むように、シールド効果を目的とした第2接地ライン48bが形成されている。
【0036】
図1に示すように、第2端子配線領域28Bのうち、第2導電性フイルム16Bの一方の長辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、上述した一対の第2接地端子部46bに加えて、複数の第2端子部50bが前記一方の長辺の長さ方向に配列形成されている。また、第2センサ領域26Bの一方の短辺(第2導電性フイルム16Bの一方の短辺に最も近い短辺:x方向)に沿って複数の第2結線部42b(例えば奇数番目の第2結線部42b)が直線状に配列され、第2センサ領域26Bの他方の短辺(第2導電性フイルム16Bの他方の短辺に最も近い短辺:x方向)に沿って複数の第2結線部42b(例えば偶数番目の第2結線部42b)が直線状に配列されている。
【0037】
複数の第2電極部36Bのうち、例えば奇数番目の第2電極部36Bが、それぞれ対応する奇数番目の第2結線部42bに接続され、偶数番目の第2電極部36Bが、それぞれ対応する偶数番目の第2結線部42bに接続されている。奇数番目の第2結線部42bから導出された第2端子配線部44b並びに偶数番目の第2結線部42bから導出された第2端子配線部44bは、第2導電性フイルム16Bの一方の長辺における略中央部に向かって引き回され、それぞれ対応する第2端子部50bに電気的に接続されている。
【0038】
なお、第1端子配線部44aの導出形態を上述した第2端子配線部44bと同様にし、第2端子配線部44bの導出形態を上述した第1端子配線部44aと同様にしてもよい。
【0039】
そして、この積層導電性フイルム18をタッチスクリーンパネル10として使用する場合は、第1導電性フイルム16A上にカバー層20を積層し、第1導電性フイルム16Aの多数の第1電極部36Aから導出された第1端子配線部44aと、第2導電性フイルム16Bの多数の第2電極部36Bから導出された第2端子配線部44bとを、例えばスキャンをコントロールする制御回路14(図2参照)に接続する。
【0040】
第2導電性フイルム16Bに形成される第2導電部30Bのパターンとしては、上述した図1に示すパターンのほか、図4に示すパターンも好ましく採用することができる。図4は、第1導電性フイルム16A及び第2導電性フイルム16Bを積層した状態を上面から見て示す平面図である。
【0041】
すなわち、図4に示すように、第2電極部36Bの各一方の端部にそれぞれ第2結線部42bを介して金属細線による第2端子配線部44bを電気的に接続する。また、第2端子配線領域28Bのうち、第1導電性フイルム16Aの第1端子配線部44aと対向する位置に電極膜58を形成し、この電極膜58と第2接地端子部46bとを電気的に接続する。
【0042】
タッチ位置の検出方式としては、自己容量方式や相互容量方式を好ましく採用することができる。
【0043】
自己容量方式は、図2に示すように、制御回路14から第1端子配線部44aに対して順番にタッチ位置を検出するための第1パルス信号P1を供給し、制御回路14から第2端子配線部44bに順番にタッチ位置を検出するための第2パルス信号P2を供給する。
【0044】
指先がカバー層20の上面に接触又は近接させることで、タッチ位置に対向する第1電極部36A及び第2電極部36BとGND(グランド)間の容量が増加することから、当該第1電極部36A及び第2電極部36Bからの伝達信号の波形が他の電極部からの伝達信号の波形と異なった波形となる。従って、制御回路14では、第1電極部36A及び第2電極部36Bから供給された伝達信号に基づいてタッチ位置を演算する。
【0045】
一方、相互容量方式は、図4に示すように、制御回路14から第2電極部36Bに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号S2を印加し、第1電極部36Aに対して順番にセンシング(伝達信号S1の検出)を行う。指先がカバー層20の上面に接触又は近接させることで、タッチ位置に対向する第1電極部36Aと第2電極部36B間の寄生容量に対して並列に指の浮遊容量が加わることから、当該第2電極部36Bからの伝達信号S1の波形が他の第2電極部36Bからの伝達信号S1の波形と異なった波形となる。従って、制御回路14では、電圧信号S2を供給している第2電極部36Bの順番と、供給された第1電極部36Aからの伝達信号S1に基づいてタッチ位置を演算する。
【0046】
このような自己容量方式又は相互容量方式のタッチ位置の検出方法を採用することで、カバー層20の上面に同時に2つの指先を接触又は近接させても、各タッチ位置を検出することが可能となる。
【0047】
なお、投影型静電容量方式の検出回路に関する先行技術文献として、米国特許第4,582,955号明細書、米国特許第4,686,332号明細書、米国特許第4,733,222号明細書、米国特許第5,374,787号明細書、米国特許第5,543,588号明細書、米国特許第7,030,860号明細書、米国特許出願公開第2004/0155871号明細書等がある。
【0048】
そして、本実施の形態においては、後述する構成例を除き、少なくとも第1導電性フイルム16Aに形成される複数の第1端子配線部44aの引き回し距離ができるだけ短くなるように、第1端子配線部44aと第1電極部36Aとの接続点を設定している。すなわち、図3に示すように、複数の第1端子部50aが第1導電性フイルム16Aの長さ方向中央部部分に位置する場合、図3上、例えば右側に存在する第1端子配線部44aについては、対応する第1電極部36Aとの接続点をそれぞれ左側に位置させ、反対に左側に存在する第2端子配線部44bについては、対応する第1電極部36Aとの接続点をそれぞれ右側に位置させている。特に、第1端子部50aのうち、中央部分の2つの第1端子部50aに接続される第1端子配線部44aは、蛇行や屈曲することなく直線状に配線されている。それゆえ、前記中央部分の最短長となる第1端子配線部44aの抵抗値は高々数10オームの低い値となっている。
【0049】
本実施の形態では、さらに、複数の第1端子配線部44aを以下のように構成している。
【0050】
(a) 各第1端子配線部44aのうち、対応する第1端子部50aとの境界部52を中心とする半径10mmの円に入る部分において線幅が「5μm以上、100μm以下」、好ましくは「10μm以上、100μm以下」、より好ましくは「10μm以上、50μm以下」となる部分を有する構造にしている。具体的には、図3に示すように、例えば右端に位置する第1端子配線部44aを見たとき、該第1端子配線部44aのうち、対応する右端の第1端子部50aとの境界部52を中心とする半径10mmの円54に入る部分56(図3上、細線で示す部分)の線幅が「10μm以上、50μm以下」である。他の第1端子配線部44aも同様である。
【0051】
(b) 各第1端子配線部44aの配線抵抗値を、「100オーム以上、好ましくは200オーム以上」、且つ、「10kオーム以下、好ましくは、5kオーム以下」とすることである。
【0052】
一般に、タッチスクリーンパネル10に使用される配線基板においては、タッチスクリーンパネル10上に発生した静電気放電によって、第1電極部36Aにノイズ電流が発生し、このノイズ電流が第1端子配線部44a及び第1端子部50aを介して制御回路14に流れ込み、最悪の場合、制御回路14の破損という事態が想定される。この事態を防ぐ手段として、第1端子配線部44aの外側に形成された第1接地ライン48aがあるが、近年の画面サイズの大型化に伴い、特に、画面中央部で生じた静電気放電によるノイズ電流の制御回路14への流れ込みを抑制することができなくなってきている。この問題を解消するには、制御回路14と第1端子配線部44aとの間に、保護抵抗素子を挿入接続することが望ましい。
【0053】
そこで、本実施の形態では、静電気放電に伴って生じるノイズ電流の制御回路14への流れ込みを抑制することを目的として、第1端子配線部44aのうち、第1端子部50a付近の配線抵抗を高めている。つまり、保護抵抗素子と同等の機能を配線基板上に形成する条件を見い出した。具体的には、第1端子配線部44aの線幅を狭くするほど静電気放電の影響を少なくすることができ、しかも、第1端子配線部44aの配線抵抗は、線幅に反比例して高くなることから、静電気放電によるノイズ電流の伝達を抑制することができる。
【0054】
以下に、静電気放電によるノイズと、端子配線部の線幅及び端子配線部の導電率との関係についてシミュレーションを行った結果を、図6図9を用いて説明する。
【0055】
図6は、シミュレーションにて使用したタッチスクリーンパネル10の層構成と各層の厚みを示している。すなわち、表示装置22の表示パネル24(厚み2mm)上に、厚み0.05mmの第1透明粘着剤層34Aを介して厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート製の透明基体32が積層され、さらに、透明基体32上に厚み0.05mmの第2透明粘着剤層34Bを介して厚み0.5mmのガラス製のカバー層20が積層されている。なお、表示パネル24の端面には、シールド層(GND層)が配されている。
【0056】
このシミュレーションでは、静電気放電は最上層のカバー層20に対して放電が発生する場合を想定している。また、第1導電部30Aは透明基体32の表面(カバー層20側)に形成され、第2導電部30Bは透明基体32の裏面(表示パネル24側)に形成されている。
【0057】
図7は、タッチスクリーンパネル10の透明基体32の表面及び裏面に形成された第1導電部30A及び第2導電部30Bの構成例を表している。第1電極部36A、第2電極部36B、第1端子配線部44a及び第2端子配線部44b等のパターンは、上述した図4に示すパターンと略同じである。この図4では、第1端子配線部44a及び第2端子配線部44bは全て同一の厚みを有しているものとした。
【0058】
ここでは、図示していないが、透明基体32の表面に形成された第1端子部50a及び透明基体32の裏面に形成された第2端子部50bを通して外部の制御回路14と電気的に接続されている状態としている。
【0059】
図8は、第1端子部50aと第1端子配線部44aとの接続部分の詳細を表している。
【0060】
本シミュレーションでは、カバー層20の表面のうち、静電気放電が生じた部位の直下に配置された第1端子配線部44aにおいて、その第1端子配線部44aにて誘起されたノイズが第1端子部50aを経由して外部の制御回路14に伝播し、そのとき発生する電圧(誘起されるノイズ電圧)の結果を図9に示した。
【0061】
特に、この図9では、第1端子配線部44aが完全導体で、且つ、線幅500μmの場合を基準(0dB)とし、第1端子配線部44aの線幅及び導電率を変えたときの誘起ノイズの変化を確認した。図9の実線L1は、完全導体である第1端子配線部44aの線幅を変えたときのノイズ電圧の変化(完全導体における誘起ノイズの線幅依存性)を示す。実線L2は、導電率1×106S/mである第1端子配線部44aの線幅を変えたときのノイズ電圧の変化(導電率が1×106S/mの導体における誘起ノイズの線幅依存性)を示す。
【0062】
図9の結果から、「完全導体における線幅依存性により、線幅が狭くなるに従い、誘起されるノイズ電圧は減少する」と共に、「線幅の減少によって生じる抵抗値の増加によっても、誘起されるノイズ電圧は減少する」が示されている。
【0063】
このことから、本実施の形態では、静電気放電によるノイズ電流の制御回路14への伝達を抑制する配線パターンとして、保護抵抗素子と同等の機能を果たす配線パターンの配置位置、配線抵抗値、及び、線幅を見い出し、上述した(a)及び(b)の構成を満足することで、画面周辺部に加えて画面中央部で生じた静電気放電によるノイズ電流の制御回路14への流れ込みを抑制することができ、タッチスクリーンパネル10の画面サイズの大型化を促進させることができる。
【0064】
また、タッチスクリーンパネル10に使用される配線基板(この場合、第1導電性フイルム16A)は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の第1透明基体32A上に、第1端子配線部44a等の信号伝達用の配線を形成している。特に、第1端子配線部44a等の配線は、信号伝達特性を向上させる目的で低抵抗であることが求められている。しかし、第1端子配線領域28A等のいわゆる額縁部分の狭小化に伴い、配線スペースが十分確保できないことから、配線幅や配線間隔に制約があり、さらに、画面サイズの拡大化に伴う配線数の増加と配線の狭幅化、配線長の増加という抵抗値を増大させる要因もある。その一方で、信頼性の1つである静電気放電ノイズ対策も重要な検討事項の1つである。
【0065】
このような背景において、本実施の形態は、上述した(a)及び(b)を満足させることで、タッチスクリーンパネル10用の配線基板において、抵抗値増加を最小限に留めながらも、静電気放電ノイズ対策も実現させることができる。
【0066】
そして、上述の(a)及び(b)のうち、(b)を実現させるための構成例としては、対象となる第1端子部50aに接続された第1端子配線部44aの引き回し距離を、対応する第1電極部36Aまでの直線距離よりも長くすることが挙げられる。この場合、本実施の形態では、線幅が「5μm以上、100μm以下」好ましくは「10μm以上、50μm以下」となっている部分、すなわち、対応する第1端子部50aとの境界部52を中心とする半径10mmの円54に入る部分56の線幅を10μm未満としない代わりに、前記部分56の厚みを薄くすること、前記部分56を蛇行、屈曲させる等して長く引き回すことが挙げられる。
【0067】
ここで、上述の構成例を達成するいくつかの具体例(第1具体例〜第3具体例)について図10A図10Cを参照しながら説明する。
【0068】
第1具体例〜第3具体例は、図10A図10Cに示すように、いずれも横方向に配列された複数の第1端子部50aのうち、中央部分の2つの第1端子部50aを、対象となる第1端子部50aとしている。
【0069】
そして、第1具体例は、図10Aに示すように、対象となる第1端子部50aに接続された第1端子配線部44aのうち、対応する第1端子部50aとの境界部52を中心とする半径10mmの円に入る部分56をミアンダ状に引き回して構成している。図10Aの例では、第1端子配線部44aと、それに対応する第1電極部36Aとの境界部52を中央に位置させ、第1端子部50aとの境界部52から第1電極部36Aとの接続点にかけて、第1端子配線部44aをミアンダ状に引き回した例を示す。また、ミアンダ状に形成された部分の配線間隔は、第1端子配線部44aの線幅の2倍以上とされている。
【0070】
第2具体例は、図10Bに示すように、対象となる第1端子部50aに接続された第1端子配線部44aのうち、対応する第1端子部50aとの境界部52を中心とする半径10mmの円に入る部分56を波状に引き回して構成している。図10Bの例では、右側の第1端子配線部44aと、それに対応する第1電極部36Aとの接続点を左側に位置させ、左側の第1端子配線部44aと、それに対応する第1電極部36Aとの接続点を右側に位置させ、第1端子部50aとの境界部52から第1電極部36Aとの接続点にかけて、第1端子配線部44aを波状に引き回した例を示す。また、波状に形成された部分の配線間隔は、第1端子配線部44aの線幅の2倍以上とされている。
【0071】
第3具体例は、図10Cに示すように、対象となる第1端子部50aに接続された第1端子配線部44aのうち、対応する第1端子部50aとの境界部52を中心とする半径10mmの円に入る部分56を屈曲させて引き回している。図10Cの例では、右側の第1端子配線部44aと、それに対応する第1電極部36Aとの接続点を右側に位置させ、左側の第1端子配線部44aと、それに対応する第1電極部36Aとの接続点を左側に位置させた例を示す。
【0072】
上述した(a)及び(b)の構成例に加えて、図11に示すように、第1透明基体32Aの裏面のうち、第1端子部50aに近い部分であって、且つ、複数の第1端子配線部44aの各一部に対向する部分に、1つの電極膜58と、該電極膜58に電気的に接続された接続端子部60とを形成する。そして、接続端子部60とGND(グランド)あるいは一定電位とを接続して、電極膜58を接地電位あるいは一定電位に維持させてもよい。すなわち、各第1端子配線部44aのうち、それぞれ第1端子部50aに近接する部分とGND等との間にコンデンサを形成する。これにより、画面周辺部や画面中央部で生じた静電気を一時的に前記コンデンサに蓄積し徐々に放電させることができ、配線基板に静電気放電に対する耐性を持たせることができる。図11では、第1透明基体32Aの裏面に電極膜58を形成した例を示したが、その他、上述した図4に示すように、第2導電性フイルム16Bの表面に電極膜58を形成してもよい。
【0073】
上述の例では、(a)及び(b)の構成例を第1端子配線部44aに適用した例について説明したが、もちろん、第1端子配線部44aに加えて、第2端子配線部44bについても上述した(a)及び(b)の構成例を採用してもよい。
【0074】
次に、配線基板のその他の好ましい態様について説明する。
【0075】
上述した第1端子配線部44a、第2端子配線部44b、第1端子部50a、第2端子部50b、第1接地ライン48a、第2接地ライン48b、第1接地端子部46a及び第2接地端子部46bを構成する金属配線、並びに透明導電層を構成する金属細線は、それぞれ単一の導電性素材にて構成されている。単一の導電性素材は、銀、銅、アルミニウムのうちの1種類からなる金属、もしくはこれらの少なくとも1つを含む合金からなる。
【0076】
格子38の一辺の長さは50〜500μmであることが好ましく、150〜300μmであることがさらに好ましい。一辺の長さが、上記下限値未満であると、検出時の静電容量が減るため、検出不良になる可能性が高くなる。他方、上記上限値を超えると、位置検出精度が低下する虞がある。また、格子38が上記範囲である場合には、さらに透明性も良好に保つことが可能であり、表示装置22の表示パネル24上にとりつけた際に、違和感なく表示を視認することができる。
【0077】
また、第1電極部36A及び第2電極部36Bを構成する金属細線の線幅は、1〜9μmである。この場合、第1電極部36Aの線幅は第2電極部36Bの線幅と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0078】
すなわち、透明導電層を構成する金属細線の線幅は、下限は1μm以上、3μm以上、4μm以上、もしくは5μm以上が好ましく、上限は9μm以下、8μm以下が好ましい。線幅が上記下限値未満の場合には、導電性が不十分となるためタッチスクリーンパネルに使用した場合に、検出感度が不十分となる。他方、上記上限値を越えるとモアレが顕著になったり、タッチスクリーンパネル10に使用した際に視認性が悪くなったりする。なお、上記範囲にあることで、第1センサ領域26A及び第2センサ領域26Bでのモアレが改善され、視認性が特によくなる。線間隔は(隣接する金属細線の間隔)は30μm以上500μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以上400μm以下、最も好ましくは100μm以上350μm以下である。また、金属細線は、アース接続等の目的においては、線幅は200μmより広い部分を有していてもよい。
【0079】
本実施の形態における第1導電性フイルム16A及び第2導電性フイルム16Bは、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、金属細線を除いた透光性部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅6μm、細線ピッチ240μmの正方形の格子状の開口率は、95%である。
【0080】
上述の積層導電性フイルム18では、例えば図2に示すように、第1透明基体32Aの表面に第1導電部30Aを形成し、第2透明基体32Bの表面に第2導電部30Bを形成するようにしたが、その他、図12に示すように、第1透明基体32Aの表面に第1導電部30Aを形成し、第1透明基体32Aの裏面に第2導電部30Bを形成するようにしてもよい。この場合、第2透明基体32Bが存在せず、第2導電部30B上に、第1透明基体32Aが積層され、第1透明基体32A上に第1導電部30Aが積層された形態となる。この場合も、第1導電部30Aを被覆するように第1透明粘着剤層34Aが形成され、第2導電部30Bを被覆するように第2透明粘着剤層34Bが形成される。また、第1導電性フイルム16Aと第2導電性フイルム16Bとはその間に他の層が存在してもよく、第1電極部36Aと第2電極部36Bとが絶縁状態であれば、それらが対向して配置されてもよい。
【0081】
図1に示すように、第1導電性フイルム16Aと第2導電性フイルム16Bの例えば各コーナー部に、第1導電性フイルム16Aと第2導電性フイルム16Bの貼り合わせの際に使用する位置決め用の第1アライメントマーク66a及び第2アライメントマーク66bを形成することが好ましい。この第1アライメントマーク66a及び第2アライメントマーク66bは、第1導電性フイルム16Aと第2導電性フイルム16Bを貼り合わせて積層導電性フイルム18とした場合に、新たな複合アライメントマークとなり、この複合アライメントマークは、該積層導電性フイルム18を表示パネル24に設置する際に使用する位置決め用のアライメントマークとしても機能することになる。
【0082】
上述の例では、第1導電性フイルム16A及び第2導電性フイルム16Bを投影型静電容量方式のタッチスクリーンパネル10に適用した例を示したが、その他、表面型静電容量方式のタッチスクリーンパネルや、抵抗膜式のタッチスクリーンパネルにも適用することができる。
【0083】
なお、上述した本実施の形態に係る第1導電性フイルム16A及び第2導電性フイルム16Bは、表示装置22のタッチスクリーンパネル用の導電フイルムのほか、表示装置22の電磁波シールドフイルムや、表示装置22の表示パネル24に設置される光学フイルムとしても利用することができる。表示装置22としては液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL、無機EL等が挙げられる。
【0084】
次に、代表的に第1導電性フイルム16Aの製造方法について簡単に説明する。第1導電性フイルム16Aを製造する方法としては、例えば第1透明基体32Aに感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって、露光部及び未露光部にそれぞれ金属銀部及び光透過性部を形成して第1導電部30Aを形成するようにしてもよい。なお、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部に導電性金属を担持させるようにしてもよい。金属銀部に導電性金属を担持させた層全体を導電性金属部と記す。
【0085】
あるいは、第1透明基体32A上にめっき前処理材を用いて感光性被めっき層を形成し、その後、露光、現像処理した後にめっき処理を施すことにより、露光部及び未露光部にそれぞれ金属部及び光透過性部を形成して第1導電部30Aを形成するようにしてもよい。なお、さらに金属部に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属部に導電性金属を担持させるようにしてもよい。
【0086】
めっき前処理材を用いる方法のさらに好ましい形態としては、次の2通りの形態が挙げられる。なお、下記のより具体的な内容は、特開2003−213437号公報、特開2006−64923号公報、特開2006−58797号公報、特開2006−135271号公報等に開示されている。
【0087】
(a) 第1透明基体32A上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を含む被めっき層を塗布し、その後、露光・現像した後にめっき処理して金属部を被めっき材料上に形成させる態様。
【0088】
(b) 第1透明基体32A上に、ポリマー及び金属酸化物を含む下地層と、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を含む被めっき層とをこの順に積層し、その後、露光・現像した後にめっき処理して金属部を被めっき材料上に形成させる態様。
【0089】
その他の方法としては、第1透明基体32A上に形成された銅箔上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する銅箔をエッチングすることによって、第1導電部30Aを形成するようにしてもよい。
【0090】
あるいは、第1透明基体32A上に金属微粒子を含むペーストを印刷し、ペーストに金属めっきを行うことによって、第1導電部30Aを形成するようにしてもよい。
【0091】
あるいは、第1透明基体32A上に、第1導電部30Aをスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。
【0092】
あるいは、第1透明基体32A上に、第1導電部30Aをインクジェットにより形成するようにしてもよい。
【0093】
ここで、第1導電性フイルム16A及び第2導電性フイルム16Bの各層の構成について、以下に詳細に説明する。
【0094】
[透明基体]
第1透明基体32A及び第2透明基体32Bとしては、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類;トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。第1透明基体32A及び第2透明基体32Bとしては、融点が約290℃以下であるプラスチックフイルム、又はプラスチック板が好ましく、特に、光透過性や加工性等の観点から、PETが好ましい。
【0095】
[銀塩乳剤層]
透明導電層を構成する金属細線となる銀塩乳剤層は、銀塩とバインダーの他、溶媒や染料等の添加剤を含有する。
【0096】
本実施の形態に用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本実施の形態においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0097】
銀塩乳剤層の塗布銀量(銀塩の塗布量)は、銀に換算して1〜30g/m2が好ましく、1〜25g/m2がより好ましく、5〜20g/m2がさらに好ましい。この塗布銀量を上記範囲とすることで、導電性フイルムとした場合に所望の表面抵抗を得ることができる。
【0098】
本実施の形態に用いられるバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0099】
本実施の形態の銀塩乳剤層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。銀塩乳剤層中のバインダーの含有量は、銀/バインダー体積比で1/4以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。銀/バインダー体積比は、100/1以下が好ましく、50/1以下がより好ましい。また、銀/バインダー体積比は1/1〜4/1であることがさらに好ましい。1/1〜3/1であることが最も好ましい。銀塩乳剤層中の銀/バインダー体積比をこの範囲にすることで、塗布銀量を調整した場合でも抵抗値のばらつきを抑制し、均一な表面抵抗を有する導電性フイルムを得ることができる。なお、銀/バインダー体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダー量(重量比)を銀量/バインダー量(重量比)に変換し、さらに、銀量/バインダー量(重量比)を銀量/バインダー量(体積比)に変換することで求めることができる。
【0100】
<溶媒>
銀塩乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0101】
<その他の添加剤>
本実施の形態に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。
【0102】
[その他の層構成]
銀塩乳剤層の上に図示しない保護層を設けてもよい。また、銀塩乳剤層よりも下に、例えば下塗り層を設けることもできる。
【0103】
[導電性フイルム]
第1導電性フイルム16Aの第1透明基体32A及び第2導電性フイルム16Bの第2透明基体32Bの厚さは、5〜350μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜350μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、且つ、取り扱いも容易である。
【0104】
第1透明基体32A及び第2透明基体32B上に設けられる金属銀部の厚さは、第1透明基体32A及び第2透明基体32B上に塗布される銀塩乳剤層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、0.001mm〜0.2mmから選択可能であるが、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。金属銀部は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。金属銀部がパターン状であり、且つ、2層以上の重層構成である場合、異なる波長に感光できるように、異なる感色性を付与することができる。これにより、露光波長を変えて露光すると、各層において異なるパターンを形成することができる。
【0105】
導電性金属部の厚さは、タッチスクリーンパネル10の用途としては、薄いほど表示パネル24の視野角が広がるため好ましく、視認性の向上の点でも薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
【0106】
本実施の形態では、上述した銀塩乳剤層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらに物理現像及び/又はめっき処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する導電性フイルムであっても容易に形成することができる。
【0107】
なお、第1導電性フイルム16A及び第2導電性フイルム16Bの製造方法では、めっき等の工程は必ずしも行う必要はない。銀塩乳剤層の塗布銀量、銀/バインダー体積比を調整することで所望の表面抵抗を得ることができるからである。なお、必要に応じてカレンダー処理等を行ってもよい。
【0108】
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
なお、本発明に係る配線基板は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0112】
10…タッチスクリーンパネル 12…センサ本体
14…制御回路 16A…第1導電性フイルム
16B…第2導電性フイルム 18…積層導電性フイルム
26A…第1センサ領域 26B…第2センサ領域
28A…第1端子配線領域 28B…第2端子配線領域
30A…第1導電部 30B…第2導電部
32A…第1透明基体 32B…第2透明基体
36A…第1電極部 36B…第2電極部
44a…第1端子配線部 44b…第2端子配線部
46a…第1接地端子部 46b…第2接地端子部
48a…第1接地ライン 48b…第2接地ライン
50a…第1端子部 50b…第2端子部
52…境界部 54…円
56…部分 58…電極膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12