(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連続方向に伸長されることより前記連続方向の伸縮性が発現する第1連続シートから、伸縮性の単票状シートを切断して生成し、該単票状シートを、第2連続シート上に重ねて接合することにより、連続シートの複合体を製造する方法であって、
互いの外周面を対向させつつ回転する上流側ロール及び下流側ロールに、前記第1連続シートの連続方向に沿って前記第1連続シートをS字状に掛け回しながら、前記上流側ロールと前記下流側ロールとの間で周速値に差をつけることにより、所定倍率で前記第1連続シートを前記連続方向に伸長して前記第1連続シートに伸縮性を発現させることと、
伸縮性が発現した前記第1連続シートを伸長状態で切断して、伸長状態の前記単票状シートを生成することと、
生成された前記伸長状態の前記単票状シートを、前記第2連続シートに接合することと、を有し、
前記第1連続シートに伸縮性を発現させることと、前記単票状シートを生成することとの間には、
伸縮性が発現した前記第1連続シートを、前記下流側ロールの周速値よりも小さい第1速度値で回転する第1回転部材に当接保持させることにより、前記第1連続シートの伸長を緩和しながら、前記下流側ロールと前記第1回転部材との間を搬送することと、
前記第1回転部材の前記第1速度値よりも大きく前記下流側ロールの前記周速値よりも小さい第2速度値で回転する第2回転部材に、前記第1連続シートを当接保持させることにより、前記所定倍率での伸長状態よりも小さい伸長状態にまで前記第1連続シートを再伸長することと、を有し、
前記単票状シートを生成することにおいては、再伸長状態の前記第1連続シートを切断して、伸長状態の前記単票状シートを生成することを特徴とする吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法。
連続方向に伸長されることより前記連続方向の伸縮性が発現する第1連続シートから、伸縮性の単票状シートを切断して生成し、該単票状シートを、第2連続シート上に重ねて接合することにより、連続シートの複合体を製造する装置であって、
互いの外周面を対向させつつ回転する上流側ロール及び下流側ロールに、前記第1連続シートの連続方向に沿って前記第1連続シートをS字状に掛け回しながら、前記上流側ロールと前記下流側ロールとの間で周速値に差をつけることにより、所定倍率で前記第1連続シートを前記連続方向に伸長して前記第1連続シートに伸縮性を発現させる伸縮性発現装置と、
伸縮性が発現した前記第1連続シートを伸長状態で切断して、伸長状態の前記単票状シートを生成する切断装置と、
生成された前記伸長状態の前記単票状シートを、前記第2連続シートに接合する接合装置と、を有し、
伸縮性が発現した前記第1連続シートを、前記下流側ロールの周速値よりも小さい第1速度値で回転する第1回転部材に当接保持させることにより、前記第1連続シートの伸長を緩和しながら、前記下流側ロールと前記第1回転部材との間を搬送し、
前記第1回転部材の前記第1速度値よりも大きく前記下流側ロールの前記周速値よりも小さい第2速度値で回転する第2回転部材に、前記第1連続シートを当接保持させることにより、前記所定倍率での伸長状態よりも小さい伸長状態にまで前記第1連続シートを再伸長し、
前記切断装置は、再伸長状態の前記第1連続シートを切断して、伸長状態の前記単票状シートを生成することを特徴とする吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
連続方向に伸長されることより前記連続方向の伸縮性が発現する第1連続シートから、伸縮性の単票状シートを切断して生成し、該単票状シートを、第2連続シート上に重ねて接合することにより、連続シートの複合体を製造する方法であって、
互いの外周面を対向させつつ回転する上流側ロール及び下流側ロールに、前記第1連続シートの連続方向に沿って前記第1連続シートをS字状に掛け回しながら、前記上流側ロールと前記下流側ロールとの間で周速値に差をつけることにより、所定倍率で前記第1連続シートを前記連続方向に伸長して前記第1連続シートに伸縮性を発現させることと、
伸縮性が発現した前記第1連続シートを伸長状態で切断して、伸長状態の前記単票状シートを生成することと、
生成された前記伸長状態の前記単票状シートを、前記第2連続シートに接合することと、を有することを特徴とする吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法。
【0015】
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、第1連続シートは、上流側ロール及び下流側ロールにS字状に掛け回されているので、上流側ロールと下流側ロールとの間に第1連続シートを短スパンで掛け渡すことができる。よって、伸縮性を発現する目的で第1連続シートを伸長する際に生じ得るネッキングを抑制することができる。なお、短スパンで掛け渡すことでネッキングが小さくなる理由などについては後述する。
【0016】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記第1連続シートに伸縮性を発現させることと、前記単票状シートを生成することとの間には、
伸縮性が発現した前記第1連続シートを、前記下流側ロールの周速値よりも小さい第1速度値で回転する第1回転部材に当接保持させることにより、前記第1連続シートの伸長を緩和しながら、前記下流側ロールと前記第1回転部材との間を搬送することと、
前記第1回転部材の前記第1速度値よりも大きく前記下流側ロールの前記周速値よりも小さい第2速度値で回転する第2回転部材に、前記第1連続シートを当接保持させることにより、前記所定倍率での伸長状態よりも小さい伸長状態にまで前記第1連続シートを再伸長することと、を有し、
前記単票状シートを生成することにおいては、再伸長状態の前記第1連続シートを切断して、伸長状態の前記単票状シートを生成するのが望ましい。
【0017】
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、下流側ロールから第1回転部材までの搬送経路においては、下流側ロールの周速値よりも第1回転部材の第1速度値を小さくすることで、第1連続シートの伸長を緩和しながら搬送する。よって、当該搬送中に第1連続シートに付与される張力によってネッキングが助長されることを有効に回避可能となる。
更に、単票状シートを伸長下で第2連続シートに接合すべく第1連続シートを再伸長する際には、伸縮性の発現に係る上記所定倍率での伸長状態よりも小さい伸長状態に留めるので、当該再伸長を無理なく速やかに行うことができる。
【0018】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記第2回転部材は、前記第1回転部材の前記第1速度値よりも大きく前記下流側ロールの周速値よりも小さい前記第2速度値で前記連続方向に沿って移動する保持部材を有し、
前記再伸長することにおいては、前記第1回転部材から搬送される前記第1連続シートを前記保持部材に吸着保持させながら前記保持部材が前記第2速度値で移動することにより、前記第1連続シートを再伸長し、
前記単票状シートを生成することにおいては、再伸長状態で前記保持部材に吸着保持された前記第1連続シートを、前記保持部材上において前記再伸長状態を維持しながら切断することにより、前記単票状シートを生成し、
前記第2連続シートに接合することにおいては、前記保持部材によって前記再伸長状態に保持されつつ前記保持部材と一体となって移動する前記単票状シートを、前記保持部材の移動方向に沿って搬送される前記第2連続シートに接合することにより、前記保持部材から前記第2連続シートに前記再伸長状態の前記単票状シートを引き渡すのが望ましい。
【0019】
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、第1回転部材の第1速度値と保持部材の速度値との差分に基づいて第1連続シートを確実に再伸長することができる。また、再伸長された第1連続シートを、速やかに保持部材の吸着保持によって再伸長状態に維持することができる。更に、かかる第1連続シートから切断生成された単票状シートも、保持部材に吸着保持されるので、切断前と同等の再伸長状態に維持される。よって、再伸長状態と同等の伸長下で単票状シートを第2連続シートに接合可能となる。
【0020】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記第1回転部材と前記第2回転部材との間には、少なくとも一つのローラーが配置されており、前記ローラーの外周面には、前記第1連続シートが所定の巻き付き角度で巻き付けられているのが望ましい。
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、第1回転部材と第2回転部材との間の搬送ルートを上記ローラーによって複数に分割されており、分割後の各掛け渡し長は短スパンにされている。よって、再伸長時に上記搬送ルートで生じ得る第1連続シートのネッキングも有効に抑制される。ちなみに、上記ローラーによってネッキングを抑制可能な理由は、次のように言い換えることもできる。上記ローラーの外周面と第1連続シートとの間の摩擦力によって第1連続シートの幅方向の収縮変形を有効に拘束することができて、その結果、再伸長時に第1回転部材と第2回転部材との間で生じ得る第1連続シートのネッキングを有効に抑制可能となる。
【0021】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記第1連続シートのうちで前記上流側ロールの外周面に巻き付いている部分を、前記外周面に押し付ける押し付けローラーが前記外周面に対向して設けられているのが望ましい。
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、上流側ロールの外周面での第1連続シートの相対滑りを抑制することができる。よって、上流側ロールの外周面と第1連続シートとの間の摩擦力により第1連続シートの幅方向の収縮変形を有効に拘束することができて、その結果、上流側ロールと下流側ロールとの間での伸長時に第1連続シートに生じ得るネッキングを有効に抑制可能となる。
【0022】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記上流側ロールと前記下流側ロールの間の隙間の大きさが、前記第1連続シートの厚さよりも大きく10mm以下になるように、前記上流側ロールと前記下流側ロールとは近接配置されているのが望ましい。
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、上流側ロールと下流側ロールとは近接配置されているので、これらロール同士の間に第1連続シートを短スパンで掛け渡すことができる。よって、これらロール同士の間で伸長される際に生じ得る第1連続シートのネッキングを有効に抑制することができる。
【0023】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記第1回転部材は、回転する一対のローラーと、前記一対のローラーに掛け回されて外周面に前記第1連続シートを吸着保持する無端ベルトと、を有し、
前記一対のローラーのうちの下流側のローラーは、前記上流側ロール及び前記下流側ロールよりも小径であるのが望ましい。
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、第1回転部材が具備する上記下流側のローラーは、第1連続シートに伸縮性を発現するための上流側ロール及び下流側ロールよりも小径であるので、第2回転部材に近接配置し易くなる。そして、これにより、再伸長時の第1回転部材と第2回転部材との間も短スパンに設定可能となって、結果、再伸長時の第1連続シートのネッキングも有効に抑制される。
【0024】
ちなみに、上流側ロールや下流側ロールよりも、第1回転部材にかかる下流側ローラーを小径にすることができる理由は次の通りである。第1連続シートに伸縮性を発現するための初回の伸長時には、大きな引っ張り荷重を付与しないと同シートは伸長しない。そのため、当該伸長時には、この引っ張り荷重の反力として、上流側ロール及び下流側ロールの外周面から大きな静止摩擦力を確保しなければならず、当該静止摩擦力の確保のためには大径ロールが必要になる。一方、二回目以降の伸長時には、伸縮性が発現済みであるため、第1連続シートは格段に小さな引っ張り荷重で伸長するようになる。そのため、引っ張り荷重の反力としての外周面の摩擦力は比較的小さくて済み、その結果、第1回転部材に係る下流側のローラーを小径にすることができる。
【0025】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記下流側ロールと前記第1回転部材との間を搬送することにおいては、前記下流側ロールと前記第1回転部材との間に設けられたガイド装置によって、前記連続方向と交差する方向に関する前記第1連続シートの走行位置のずれが抑制されるのが望ましい。
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、下流側ロールと第1回転部材との間を搬送することにおいて第1連続シートの伸長が緩和されたことに伴って起こり得る第1連続シートの連続方向と交差する方向の同シートの走行位置のずれは、ガイド装置によって有効に抑制される。よって、下流側ロールと第1回転部材との間を搬送することにおける搬送状態の安定化を図れる。
【0026】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記第1連続シートに伸縮性を発現させることと、前記単票状シートを生成することとの間に亘って、前記第1連続シートの伸長状態は、少なくとも前記単票状シートを前記第2連続シートに接合する際の前記単票状シートの伸長状態に保たれているのが望ましい。
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、単票状シートを第2連続シートに接合する前に、単票状シートに係る第1連続シートを再伸長しなくて済む。よって、かかる再伸長時に生じ得るネッキングを抑制することができる。
【0027】
かかる吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法であって、
前記第1連続シートに伸縮性を発現させることと、前記単票状シートを生成することとの間には、
伸縮性が発現した前記第1連続シートを、前記下流側ロールの前記周速値の0.9倍以上1.1倍以下の第3速度値で回転する第3回転部材に当接させることにより、前記第1連続シートを前記下流側ロールから前記第3回転部材へ搬送することを有し、
前記単票状シートを生成することは、
前記第3回転部材から送出される前記第1連続シートを、前記下流側ロールの前記周速値の0.9倍以上1.1倍以下の第4速度値で前記連続方向に沿って移動する保持部材によって吸着保持することと、
伸長状態で前記保持部材に吸着保持された前記第1連続シートを、前記保持部材上において前記伸長状態を維持しながら切断することにより、前記単票状シートを生成することと、を有し、
前記第2連続シートに接合することにおいては、
前記保持部材によって前記伸長状態に保持されつつ前記保持部材と一体となって移動する前記単票状シートを、前記保持部材の移動方向に沿って搬送される前記第2連続シートに接合することにより、前記保持部材から前記第2連続シートに前記伸長状態の前記単票状シートを引き渡すのが望ましい。
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造方法によれば、下流側ロールと保持部材との間の搬送経路を、第1連続シートは、下流側ロールの周速値と概ね同じ速度値で搬送される。よって、当該搬送経路を短時間で搬送可能であり、結果、連続シートの複合体の生産性を高めることができる
また、
連続方向に伸長されることより前記連続方向の伸縮性が発現する第1連続シートから、伸縮性の単票状シートを切断して生成し、該単票状シートを、第2連続シート上に重ねて接合することにより、連続シートの複合体を製造する装置であって、
互いの外周面を対向させつつ回転する上流側ロール及び下流側ロールに、前記第1連続シートの連続方向に沿って前記第1連続シートをS字状に掛け回しながら、前記上流側ロールと前記下流側ロールとの間で周速値に差をつけることにより、所定倍率で前記第1連続シートを前記連続方向に伸長して前記第1連続シートに伸縮性を発現させる伸縮性発現装置と、
伸縮性が発現した前記第1連続シートを伸長状態で切断して、伸長状態の前記単票状シートを生成する切断装置と、
生成された前記伸長状態の前記単票状シートを、前記第2連続シートに接合する接合装置と、を有することを特徴とする吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造装置。
このような吸収性物品に係る連続シートの複合体の製造装置によれば、第1連続シートは、上流側ロール及び下流側ロールにS字状に掛け回されているので、上流側ロールと下流側ロールとの間に第1連続シートを短スパンで掛け渡すことができる。よって、伸縮性を発現する目的で第1連続シートを伸長する際に生じ得るネッキングを抑制することができる。
【0028】
===第1実施形態===
第1実施形態の連続シートの複合体の製造方法では、当該複合体の一例として、使い捨ておむつの裏面シート1の元となる中間部品1aを製造する。
図2Aは、裏面シート1の概略平面図であり、
図2Bは、裏面シート1の元となる中間部品1aの概略平面図である。また、
図2Cは、裏面シート1の一部をなす伸縮性フィルム3の概略側面図である。
【0029】
図2Aに示すように、裏面シート1は、おむつの外装をなす外装シート2と、外装シート2の内側の面(着用者の肌側に位置する面)に貼り付けられた伸縮性フィルム3と、を有する複合シート1である。そして、かかる裏面シート1上には、順次、液不透過性の不図示の防漏フィルムや、パルプ繊維を成形してなる不図示の吸収体や、液透過性の不図示の表面シート等が積層固定され、これによりおむつの基部が生成される。
【0030】
外装シート2の素材例としては、樹脂繊維等を主材とする柔軟な不織布等が挙げられ、ここでは非伸縮性の不織布である。なお、ここで言う非伸縮性の概念には、伸縮性が無いということ以外に、弾性率が非常に高いことも含み、つまり大きな引っ張り荷重でないと弾性的に伸長しないということも含む。そして、この例では、この外装シート2の弾性率は、伸縮性が発現後の伸縮性フィルム3の弾性率よりも大幅に高くなっている。よって、伸長下の伸縮性フィルム3が外装シート2に接合されてなる裏面シート1の伸縮性は、主に伸縮性フィルム3の伸縮性に由来しており、これにより、比較的小さな荷重でも柔軟に弾性伸長変形する。
【0031】
より詳しく説明すると、短縮状態たる自然長の裏面シート1にあっては、伸縮性フィルム3の収縮力により外装シート2は皺状になっており、そして、この短縮状態から裏面シート1を伸長すると、その際には、主に伸縮性フィルム3の弾性力だけが抵抗力となるのみであって、非伸縮性の外装シート2の方は、単にその皺が延びるだけで抵抗力は概ね生じない。よって、外装シート2は裏面シート1の伸縮性に概ね寄与しない。
【0032】
一方、
図2Cに示すように、伸縮性フィルム3は、三層構造のラミネートフィルムである。そして、厚さ方向の上層3Lu及び下層3Ldには、非弾性的に(つまり塑性的に)伸長可能な伸長性樹脂フィルムが使用される一方、これら上層3Lu及び下層3Ldの間の中間層3Lmには、弾性的に伸縮可能な伸縮性樹脂フィルムが使用されている。よって、かかる三層構造の伸縮性フィルム3を少なくとも一度だけ所定方向に伸長すれば、以降、当該伸縮性フィルム3には所定方向の伸縮性が発現する。
【0033】
図3は、この伸縮性の発現についての説明図であり、当該伸縮性フィルム3の荷重P−伸び特性を示している。なお、横軸の伸長倍率は、伸長時の長さを伸長前(未伸長時)の長さで除算したものである。ここで、
図3の実線のように、一度所定方向に所定倍率(例えば2倍)まで伸長すると、それ以降に所定倍率未満で伸長する際には、同
図3の点線のように、最初に伸長した際の引っ張り荷重P(実線)よりも格段に小さな引っ張り荷重P(点線)で伸長可能になるとともに、この引っ張り荷重Pを除荷すると、同じ点線のルートをほぼ辿りつつ概ね元の長さまで収縮して戻るようになる。すなわち、一度伸長変形すれば、以降は、小さな弾性率で伸縮変形するようになり、この状態になることを、ここでは「伸縮性が発現した」と言う。
【0034】
このように一度の伸長処理で伸縮性が発現する理由については、次のように考えられている。すなわち、一度目の伸長時に中間層3Lmは弾性変形するのみであるが、上下層3Lu,3Ldについては塑性変形などして所定方向に伸びきってしまい、これにより、二度目以降の伸長時には、もはや上下層3Lu,3Ldは伸長時に抵抗力を生じ得ず、結果、中間層3Lmの伸縮性樹脂フィルムの弾性力のみで伸縮変形するようになるためである。そのため、外観上の変化としては、一度目の伸長変形を行って除荷した後には、上層3Lu及び下層3Ldには例えば多数の皺状のたるみ部が生じている。そして、二度目以降の伸長変形では、上層3Lu及び下層3Ldでは単に当該たるみ部が延びるのみであって、これら上層3Lu及び下層3Ldは、伸長変形に係る引っ張り荷重Pの抵抗力としては概ね寄与しなくなっており、つまり概ね中間層3Lmの弾性力だけで対抗するようになり、以上のようにして、所定方向の一度の伸長処理によって、伸縮性フィルム3に伸縮性が発現されるのである。
【0035】
このような裏面シート1の元となる中間部品1aは、
図2Bに示すような連続シートの複合体1aである。すなわち、中間部品1aは、外装シート2の原反としての不織布の連続ウエブ2a上に、その連続方向に製品ピッチP1と略同値の貼り付けピッチP3で複数の単票状の伸縮性フィルム3,3…が貼り付けられたものである。
【0036】
そして、このような中間部品1aは、
図4の概略側面図に示す製造装置10によって製造される。製造装置10は、上流側ロール21と、下流側ロール23と、搬送ローラー31と、ガイド装置33と、サクションベルトコンベア35と、回転ドラム装置41と、カッターロール51と、プレスロール61と、を有し、これらは、この順番で、製造ラインの搬送方向の上流から下流へと順次並んでいる。そして、これら各装置21,23,31,33,35,41,51,61は互いに連携して、伸縮性発現工程S1、弛緩搬送工程S2、再伸長工程S3、切断工程S4、及び接合工程S5を行い、その結果として、上述の中間部品1aが製造される。
【0037】
すなわち、概略説明すると、先ず、伸縮性発現工程S1では、互いの外周面21a,23aを対向させつつ回転する上流側ロール21及び下流側ロール23に、伸縮性が未発現の伸縮性フィルム3の原反たる連続フィルム3aをS字状に掛け回す。そして、上流側ロール21と下流側ロール23との間で周速値V21,V23に差をつけることにより、所定の伸長倍率M1で連続フィルム3aをその連続方向に伸長して連続フィルム3aに伸縮性を発現させる。
次の弛緩搬送工程S2では、伸縮性が発現した連続フィルム3aの伸長状態を緩和(弛緩)しながら、上述の下流側ロール23から回転ドラム装置41の近傍位置P41まで搬送する。
次の再伸長工程S3では、伸長状態が緩和されて短縮状態の連続フィルム3aを再度伸長しながら、所定の周回軌道Tr43に沿って移動する回転ドラム装置41の保持パッド43に吸着保持させる。
次の切断工程S4では、保持パッド43に再伸長状態で吸着保持された連続フィルム3aを、保持パッド43上で切断して単票状フィルム3を生成する。ちなみに、この単票状フィルム3が、前述の伸縮性フィルム3である。
最後の接合工程S5では、保持パッド43の周回軌道Tr43の引き渡し位置Poutを保持パッド43が通過する際に、同位置Poutを走行する外装シート2の原反たる連続ウエブ2aに単票状フィルム3を接合して引き渡す。そして、これにより、前述の中間部品1aが完成する。
【0038】
以下、各工程S1,S2…S5について詳細に説明するが、その前に各種方向や用語の定義をしておく。先ず、連続フィルム3aの連続方向のことを「MD方向」と言い、同連続フィルム3aの幅方向のことを「CD方向」と言う。
図4中では、MD方向は紙面と平行な任意の方向を向いている。つまり、
図4中に示すように紙面内において互いに直交する2方向を上下方向及び前後方向と定義した場合に、これら2方向で規定される任意の方向が、MD方向である。なお、上下方向は鉛直方向であり、前後方向は水平方向を向いている。
一方、CD方向は、
図4の紙面を貫通する方向を向いている。よって、CD方向とMD方向とは互いに直交関係にある。なお、連続フィルム3aは、連続方向に搬送されるので、MD方向というのは、製造ラインの搬送方向のことでもある。また、CD方向は、外装シート2に係る連続ウエブ2aの幅方向とも平行であり、この例では水平方向を向いている。
また、「連続フィルム3a」及び「単票状フィルム3」が、それぞれ請求項に係る「第1連続シート」及び「単票状シート」に相当し、また「外装シート2に係る連続ウエブ2a」が、請求項に係る「第2連続シート」に相当する。
【0039】
<<<伸縮性発現工程S1>>>
伸縮性発現工程S1は、上流側ロール21及び下流側ロール23の両者によって行われる。すなわち、これらロール21,23が共同して伸縮性発現装置を構成する。上流側ロール21及び下流側ロール23は、それぞれCD方向に沿った回転軸C21,C23回りに駆動回転する断面正円形状のロールである。そして、これらロール21,23は、互いに対向する外周面21a,23a同士の間に小さな隙間G1を隔てた状態に近接配置されている。隙間G1の大きさは、連続フィルム3aのネッキングの抑制に関係し、これについては後述する。
【0040】
これら上流側ロール21及び下流側ロール23には、伸縮性が未発現の原反ロールから繰り出された連続フィルム3aが、S字状に掛け回されている。そして、連続フィルム3aは、これらロール21,23の各外周面21a,23aにそれぞれ所定の巻き付き角度で巻き付けられて面接触状態で当接し、これらロール21,23の駆動回転によってこれら外周面21a,23aに対してほぼ滑ることなく、各ロール21,23の周速値V21,V23とほぼ同じ速度値でMD方向の下流へと搬送される。
【0041】
ここで、上流側ロール21の周速値V21は、上工程から当該上流側ロール21に送り込まれる際の連続フィルム3aの搬送速度値V3aと概ね同じ速度値に設定されているが、下流側ロール23の周速値V23は、上流側ロール21の周速値V23よりも大きな速度値に設定されている。よって、これらロール21,23同士の間の周速値V21,V23の差に基づく伸長倍率M1(=V23/V21)で連続フィルム3aはMD方向に伸長され、その結果として、連続フィルム3aにはMD方向の伸縮性が発現される。
【0042】
この伸長倍率M1は、当該伸縮性発現工程S1での伸長状態が、この後の再伸長工程S3での伸長状態よりも大きくなるように設定される。そして、これにより、最終製品のおむつの裏面シート1に設定される伸縮仕様での円滑な伸縮性が保証される。すなわち、裏面シート1の伸縮仕様たる収縮限から伸長限までの範囲は、再伸長工程S3で伸長状態の伸縮性フィルム3aが外装シート2の連続ウエブ2aに接合されることで作り込まれ、そして、当該再伸長工程S3での伸長状態が、上記の伸縮仕様の伸長限に対応している。一方、伸縮性フィルム3自体の伸縮仕様の伸長限は、伸縮性発現工程S1での伸長状態に基づいて定まっている。よって、再伸長工程S3での伸長状態よりも伸縮性発現工程S1での伸長状態を大きくしておけば、伸縮性フィルム3自体の伸縮仕様の範囲内に裏面シート1の伸縮仕様(設計仕様)を収めることができて、その結果として、伸縮性フィルム3自体の伸縮仕様要因で裏面シート1の伸縮仕様が制限されてしまうという事態を有効に防ぐことができる。そして、この例では、伸長状態の大小関係を上述のように設定すべく、未伸長状態に対する伸縮性発現工程S1での伸長状態の倍率M1を、同未伸長状態に対する再伸長工程S3での伸長状態の倍率M3よりも大きく設定しているが、これについては後述する。ちなみに、上述の「未伸長状態」というのは、上流側ロール21に送り込まれる直前の連続フィルム3aの状態のこと、あるいは、上流側ロール21に巻き付いている連続フィルム3aの部分の状態のことであり、つまり、実質的に一度も伸長履歴の無い状態のことである。
【0043】
また、この例では、上流側ロール21の周速値V21を基準値V1とした場合に、下流側ロール23の周速値V23が例えば2.6×V1となるように、当該周速値V23は逐次調整されている。つまり、上流側ロール21の周速値V21に対する下流側ロール23の周速値V23の比率(=V23/V21)は常に一定となるように下流側ロール23の回転数は制御されている。そして、これにより、仮に、上工程から当該製造装置10に送り込まれる際の連続フィルム3aの搬送速度値V3aに連動して上流側ロール21の周速値V21が変化した場合であっても、伸縮性発現工程S1での伸長倍率M1は、2.6(=V23/V21=2.6×V1/V1)倍の一定値に維持されるようになっている。但し、当該工程S1での伸長倍率M1は、何等上述の2.6倍に限るものではなく、例えば、1.8倍〜5倍の範囲から選択された任意値に設定しても良い。
【0044】
ところで、この例では、上流側ロール21及び下流側ロール23に連続フィルム3aをS字状に巻き付けているが、このS掛けの構成によれば、連続フィルム3aの伸長時に生じうるネッキングを有効に抑制することができる。以下、これについて説明する。
【0045】
ネッキングは、既述のように連続フィルム3aをMD方向に伸長した際に同フィルム3aがCD方向に収縮することであり、つまり幅縮みをすることであるが、かかるネッキングは、ロール21,23同士の間に架け渡された部分の長さたる掛け渡し長L1(以下、スパン長L1とも言う)を短くすることで、抑制することができる。この理由は、MD方向の伸長に伴って連続フィルム3aに生じるCD方向の収縮変形が、ロール21,23の外周面21a,23aと連続フィルム3aとの間のCD方向の摩擦力によって拘束されて抑制され、そして、この拘束の効果が、当該摩擦力の作用位置から離れる程に小さくなるためである。そのため、この掛け渡し長L1を短くすることがネッキングの抑制に非常に有効である。
【0046】
一方、連続フィルム3aを一対のロール21,23同士に掛け回す方式の一例としては、
図1の比較例のように、日本語カタカナのコ字状に掛け回す方式が考えられるが、この方式では、掛け渡し長L1を、これら一対のロール21,23の半径R21,R23の和よりも短くすることができず、掛け渡し長L1の短縮化が困難である。この点につき、
図4のようにS字状に掛け回せば、一対のロール21,23の半径R21,R23の和よりも、掛け渡し長L1を短く設定することができる。よって、このようなことから、掛け渡し長L1を短くすべく、この第1実施形態では、上流側ロール21及び下流側ロール23の掛け回し方式として、所謂S掛けを採用している。
【0047】
また、このS掛けの構成にあっては、一対のロール21,23同士の間の隙間G1が狭い程に、掛け渡し長L1を短くできる。そのため、望ましくは、隙間G1を、連続フィルム3aの厚さよりも大きく10mm以下の範囲の任意値に設定すると良い。この例では、連続フィルム3aの厚さが10〜50μmの範囲の任意値であることと、安全代とを考慮して、当該隙間G1を、1mm〜5mmの任意値に設定しているが、場合によっては、0.6〜10mmの任意値に設定しても良い。
【0048】
更に、この第1実施形態では、連続フィルム3aのCD方向の収縮変形の拘束を一層高めるべく、ロール21,23の外周面21a,23aをなす最外層に滑り止め作用の高いゴム層を用いているとともに、更にゴム層の表面にサンドベーパーで目荒らし処理を行っている。但し、連続フィルム3aの素材自体が高い滑り止め作用を奏する場合には、上述の滑り止め対策は行わなくて良く、つまり外周面21a,23aにロール21,23の地金の金属が露出していても良いし、目荒らし処理も必要ない。ちなみに、上述の滑り止め対策は、連続フィルム3aのMD方向の滑り止め作用も奏するので、ロール21,23同士の間の周速値V21,V23の差で連続フィルム3aの伸縮性を発現する際にも有効である。
【0049】
また、
図4の例では、同様の滑り止め目的で、上流側ロール21には、その外周面21aに連続フィルム3aを押し付ける押し付けローラー25が設けられている。この押し付けローラー25は、CD方向に沿った回転軸C25周りに回転可能なローラー部材であり、上流側ロール21への連続フィルム3aの巻き付き開始位置の近傍に配置されている。そして、この押し付けローラー25によっても、CD方向及びMD方向の滑り止め作用を奏し得る。
【0050】
なお、かかる押し付けローラー25は、モーター等の適宜な駆動源によって上流側ロール21の周速値V21と略同じ周速値V25で駆動回転する駆動ローラーであっても良いし、押し付けローラー25が接触する上流側ロール21又は連続フィルム3aから回転力を得て連れ回る従動ローラーであっても良い。また、押し付けローラー25の設置位置についても、何等上記の巻き付き開始位置の近傍に限るものではなく、それよりも下流側の位置に設置されていても良い。更には、同構成の押し付けローラー27を下流側ロール23の外周面23aに対向して設置し、当該押し付けローラー27の押し付け力で連続フィルム3aを下流側ロール23の外周面23aに押し付けても良い。
【0051】
<<<弛緩搬送工程S2>>>
弛緩搬送工程S2は、基本的に下流側ロール23、搬送ローラー31、及びサクションベルトコンベア35(第1回転部材に相当)によって行われる。すなわち、これら装置23,31,35が共同して弛緩搬送装置を構成する。
【0052】
搬送ローラー31は、連続フィルム3aを下流側ロール23からサクションベルトコンベア35へと誘導するための中継ローラー31であり、CD方向に沿った回転軸C31回りに回転する。そして、この例では、搬送ローラー31は、その外周面31aに当接する連続フィルム3aから回転力を得て連れ回る従動ローラーとして構成されている。但し、場合によっては、モーター等の駆動源によって駆動回転する駆動ローラーとして構成されても良い。なお、駆動ローラーの場合には、その周速値V31は、下流側ロール23の周速値V23とサクションベルトコンベア35の無端ベルト36の周回速度値V36との間の値に設定され、望ましくは、後者の周回速度値V36と同値に設定されると良い。
【0053】
サクションベルトコンベア35は、伸縮性が発現した連続フィルム3aを、回転ドラム装置41の近傍位置P41まで搬送するための装置35であり、回転ドラム装置41の近傍位置P41に配置されている。サクションベルトコンベア35は、MD方向に間隔を隔てて配置されてCD方向に沿った回転軸C37a,C37b回りに回転する一対のローラー37a,37bと、これら一対のローラー37a,37bに掛け回された無端ベルト36と、を有する。そして、一対のローラー37a,37bのうちの少なくとも一方のローラー37a(37b)は、モーター等の適宜な駆動源から駆動力を得て回転する駆動ローラーである。また、無端ベルト36の外周面36aには、複数の吸気孔(不図示)が全周に亘って設けられており、かかる吸気孔の吸気によって無端ベルト36の外周面36aは吸着保持機能を有している。よって、無端ベルト36の外周面36aに連続フィルム3aを面接触状態で吸着保持しながら同無端ベルト36が駆動周回することにより、連続フィルム3aは無端ベルト36と一体となってMD方向に搬送される。
【0054】
ここで、無端ベルト36の駆動周回に係る周回速度値V36(第1速度値に相当)は、伸縮性発現工程S1にも関与する前述の下流側ロール23の周速値V23よりも格段に小さい速度値に設定されている。詳しくは、概ね連続フィルム3aの搬送が可能となる最低限の張力を付与可能なレベルの速度値まで当該周回速度値V36は下げられている。これにより、この直前工程の伸縮性発現工程S1で連続フィルム3aに付与された伸長は大幅に緩和されて同フィルム3aはMD方向に大きく短縮しながら、下流側ロール23から回転ドラム装置41の近傍位置P41まで搬送される。そして、このように連続フィルム3aの伸長を、搬送不能とならないレベルのほぼ極限まで緩和しているので、伸縮性の発現後という連続フィルム3aのネッキングが生じ易いような状況下においても、ネッキングの助長を有効に回避できている。
【0055】
ちなみに、この例では、伸縮性発現工程S1に係る下流側ロール23の周速値V23の大きさが2.6×V1であったのに対して、弛緩搬送工程S2に係るサクションベルトコンベア35の無端ベルト36の周回速度値V36の大きさは例えば1.4×V1に設定されており、当該速度値の低下分(1.2V1=V23−V36=2.6V1−1.4V1)だけ、下流側ロール23から回転ドラム装置41の近傍位置P41までの間の搬送ルートでは、連続フィルム3aの伸長状態が緩和されて同フィルム3aはMD方向に短縮し、これをもってネッキングが有効に抑制されている。また、上記の「周回速度値V36の大きさが1.4×V1」という記載から明らかなように、この無端ベルト36の周回速度値V36も上流側ロール21の周速値V21の変化に連動して変化する。よって、仮に、上工程から当該製造装置10に送り込まれる際の連続フィルム3aの搬送速度値V3aに連動して上流側ロール21の周速値V21が変化した場合であっても、弛緩搬送工程S3の搬送時の張力は概ね一定に維持される。
【0056】
しかし、かかる搬送に供する張力を極限まで下げていることから、この弛緩搬送工程S2では、連続フィルム3aの走行が不安定となってCD方向に蛇行し易くなる。つまり連続フィルム3aの走行位置が、予め定められたCD方向の目標位置から同CD方向の両側にずれ易くなる。そのため、
図4の例では、下流側ロール23とサクションベルトコンベア35との間の走行ルート(上記の搬送ルートと同じ意味)には、CD方向の走行位置を安定化するためのガイド装置33が設けられており、これにより、CD方向の目標位置に連続フィルム3aの中央位置が揃うように連続フィルム3aのCD方向の位置を調整している。
【0057】
かかるガイド装置33の一例としては、連続フィルム3aのCD方向の端縁の位置を検出するエッジセンサー33sと、連続フィルム3aが所定の巻き付き角度で日本語カタカナのコ字状に巻き付けられた一対のガイドローラー34a,34bと、一対のガイドローラー34a,34bを互いに一体に所定軸C33回りに揺動するアクチュエータ(不図示)と、エッジセンサー33sから送信される連続フィルム3aの端縁の位置の情報に基づいて上記アクチュエータを制御するコントローラ(不図示)と、を有した装置を挙げることができる。
【0058】
ところで、サクションベルトコンベア35の無端ベルト36の外周面36aに対しても滑り止め対策を施しておくと良い。そうすれば、無端ベルト36と連続フィルム3aとの間のMD方向の相対滑りをより確実に防ぐことができて、無端ベルト36の周回速度値V36とほぼ同じ速度値で連続フィルム3aを確実に搬送可能となる。そして、これにより、下流側ロール23の周速値V23とサクションベルトコンベア35の無端ベルト36の周回速度値V36との差によって連続フィルム3aの伸長をより確実に緩和可能となる。かかる滑り止め対策の一例としては、無端ベルト36の外周面36aをなす最外層をゴム層にすること等が挙げられる。ちなみに、上記の滑り止め対策は、連続フィルム3aのCD方向の収縮の抑制にも寄与するので、ネッキングの抑制策としても有効である。
【0059】
<<<再伸長工程S3、切断工程S4、接合工程S5>>>
再伸長工程S3、切断工程S4、及び接合工程S5は、何れも回転ドラム装置41を用いて行われる。すなわち、再伸長工程S3は、上記のサクションベルトコンベア35と回転ドラム装置41との間で行われ、切断工程S4は、回転ドラム装置41とカッターロール51との間で行われ、接合工程S5は、回転ドラム装置41とプレスロール61との間で行われる。また、更に別の言い方をすれば、再伸長工程S3を行う再伸長装置は、回転ドラム装置41とサクションベルトコンベア35とで構成され、切断工程S4を行う切断装置は、回転ドラム装置41とカッターロール51とで構成され、接合工程S5を行う接合装置は、回転ドラム装置41とプレスロール61とで構成されている、ということもできる。
【0060】
かかる多目的の回転ドラム装置41(第2回転部材に相当)は、複数の保持パッド43,43…(保持部材に相当)を有する。これら保持パッド43,43…は、所定の周回軌道Tr43を一列の整列状態を維持しつつ一方向(
図4では時計回り)に周回する。この周回軌道Tr43の形状は、CD方向を向いた中心軸C41を円心とする正円形状に設定されている。
【0061】
各保持パッド43は、周回軌道Tr43に沿った円弧面形状の保持面43aを、周回半径方向Dr43の外方に向けた状態で有する。また、各保持面43aには複数の吸気孔(不図示)が形成されており、各吸気孔からの吸気によって保持面43aは吸着力を発生可能である。よって、各保持面43aは、連続フィルム3aの下流側端部3ae、若しくは当該下流側端部3aeが切断されて生成される単票状フィルム3を面接触状態で吸着保持する。
【0062】
一方、周回軌道Tr43上の所定位置Pinには、サクションベルトコンベア35から送出される連続フィルム3aを受け取る受け取り位置Pinが設定されている。よって、この受け取り位置Pinを各保持パッド43が通過する際に、各保持パッド43は連続フィルム3aを吸着保持する。
【0063】
詳しくは、次の通りである。先ず、受け取り位置Pinには、連続フィルム3aが、周回軌道Tr43の略接線方向に沿って送り込まれている。そして、当該受け取り位置Pinを保持パッド43の保持面43aの各部分が順次通過する際には、当該受け取り位置Pinを通過する部分が、対向する連続フィルム3aの部分を順次吸着して保持し、これにより、受け取り位置Pinを通過後には、保持面43aの下流側端部から上流側端部までの略全長に亘って連続フィルム3aが略相対移動不能に面接触状態で保持される。そうしたら、この次には、この保持パッド43の上流側に隣接する保持パッド43が同受け取り位置Pinを通過するので、上述と同様の過程を経て連続フィルム3aを吸着保持していく。
【0064】
ここで、この受け取り位置Pinを通過する際の保持パッド43の周回速度値V43(第2速度値に相当)は、上記のサクションベルトコンベア35の無端ベルト36の周回速度値V36よりも大きい値に設定されている。よって、これら周回速度値V36,V43同士の差によって、連続フィルム3aは、サクションベルトコンベア35と保持パッド43との間を通過中に再伸長される。そして、この再伸長された状態で、保持パッド43の保持面43aに面接触して吸着保持される。
【0065】
また、保持パッド43が受け取り位置Pinを通過し始めてから通過し終えるまでの全時間に亘って、上流側ロール21の周速値V21に対する保持パッド43の周回速度値V43の比率(=V43/V21)が一定となるように、保持パッド43の周回速度値V43は調整されている。よって、保持面43aの全長に亘って連続フィルム3aは一定の伸長倍率M3で一定の伸長状態に再伸長される。また、仮に、上工程から当該製造装置10に送られる連続フィルム3aの搬送速度値V3aに連動して上流側ロール21の周速値V21が変化した場合であっても、再伸長工程S3での伸長状態は一定に維持され、つまり一定の伸長倍率M3に維持される。
【0066】
更に、かかる保持パッド43の周回速度値V43は、伸縮性発現工程S1に供した下流側ロール23の周速値V23よりも小さい値に設定されている。よって、この再伸長工程S3での伸長状態は、伸縮性発現工程S1での伸長状態よりも小さい状態にされている。そして、これにより、既述のように、連続フィルム3aから切断生成される単票状フィルム3自体の伸縮仕様の範囲内に裏面シート1の伸縮仕様(設計仕様)を収めることができて、結果、単票状フィルム3自体の伸縮仕様要因で裏面シート1の伸縮仕様が制限されてしまうという事態を有効に回避することができる。
【0067】
なお、上述の内容を具体的数値例で説明すると、次のようになる。先ず、伸縮性発現工程S1における上流側ロール21の周速値V21を既述の基準値V1とした場合に、下流側ロール23の周速値V23は、2.6×V1に設定されていた。そのため、未伸長状態に対する伸縮性発現工程S1の伸長状態の倍率M1は、2.6(=2.6V1/V1)倍であった。これに対し、上述の再伸長時の保持パッド43の周回速度値V43は、例えば1.9×V1に設定されており、これにより、未伸長状態に対する再伸長工程S3の伸長状態の倍率M3は、1.9(=1.9V1/V1)になっている。よって、当該伸長倍率M1と上記伸長倍率M3との差分だけ、この再伸長工程S3での伸長状態は、伸縮性発現工程S1での伸長状態よりも小さい状態とされており、その結果、連続フィルム3aから切断生成される単票状フィルム3自体の伸縮仕様の範囲内に裏面シート1の伸縮仕様(設計仕様)を収めている。
【0068】
但し、再伸長工程S3の伸長倍率M3は、何等上述の1.9倍に限るものではなく、前述の伸縮性発現工程S1の伸長倍率M1よりも小さいという条件を満たす限りにおいて、例えば1.5倍〜4.5倍の範囲から選択した任意値に設定しても良い。
【0069】
ところで、このようにして受け取り位置Pinを通過した保持パッド43は、周回軌道Tr43の下流に設定されたカッターロール51の設置位置P51に到達する。ここで、このカッターロール51は、外周面に少なくとも一枚のカッター刃53c(
図4の例では二枚)を有するロール部材である。そして、CD方向に沿った回転軸C51回りに保持パッド43の周回移動と連動して駆動回転するように構成されており、つまり、同位置P51を保持パッド43が通過する度に一枚のカッター刃53cが同位置P51を通過するように回転する。また、カッター刃53cを受ける受け刃43cは、回転ドラム装置41の各保持パッド43における上流側端部に設けられている。
【0070】
よって、保持パッド43がカッターロール51の設置位置P51を通過する際には、保持パッド43の上流側端部に設けられた受け刃43cと、カッターロール51のカッター刃53cとで連続フィルム3aを挟み込んで切断し、これにより保持パッド43上で単票状フィルム3が生成される。ここで、かかる切断の際には、連続フィルム3は、再伸長状態で保持パッド43の保持面43aに吸着保持されている。よって、当該保持面43a上で切断生成された単票状フィルム3も、保持面43aの吸着力で再伸長状態に維持される。
【0071】
そうしたら、保持パッド43は周回軌道Tr43を更に下流側へ移動するが、当該下流側の所定位置Poutには、保持パッド43の単票状フィルム3を外装シート2に係る連続ウエブ2aへ引き渡す引き渡し位置Poutが設定されている。すなわち、連続ウエブ2aの走行経路は、引き渡し位置Poutを通る経路であって、周回軌道Tr43の引き渡し位置Poutでの接線方向と略平行な経路に設定されている。また、同位置Poutには、周回軌道Tr43に対向してプレスロール61も設けられている。
【0072】
よって、保持パッド43が引き渡し位置Poutを通過する際には、プレスロール61によって連続ウエブ2aが保持パッド43の単票状フィルム3に押し付けられ、この押し付けと、予め単票状フィルム3の方に塗布された接着剤の接着作用とが相まって、単票状フィルム3は連続ウエブ2aに接合されて連続ウエブ2aと一体となって搬送される。
【0073】
ちなみに、接着剤は、ホットメルト系接着剤であり、接着剤塗布装置38は、下流側ロール23とサクションベルトコンベア35との間の搬送ルートのうちでガイド装置33よりも下流側の位置に配置されている。塗布方式としては、スプレー等の非接触式やロールコータ等の接触式が挙げられるが、この
図4の例では、より確実な塗布を図るべく後者の接触式が採用されている。つまり接着剤塗布装置38としては、ロールコータ38が使用されている。但し、場合によってはスロットコータ(先端のノズルを塗布対象に近接(ほぼ接触)させつつ同ノズルのCD方向に広幅のスリット状開口から接着剤を吐出することで塗布する装置)を用いても良い。ちなみに、上記搬送ルートにおいて連続フィルム3aに接着剤を塗布する位置P38を、上述の如く下流側ロール23とサクションベルトコンベア35との間に設定しておけば、接着剤の塗布後に連続フィルム3aは再伸長されて、当該再伸長時には若干のネッキングを伴うので、このネッキング分だけドライエッジ(CD方向の端部に生じる接着剤の未塗布部分のこと)が軽減されるという作用効果も期待できる。
【0074】
ところで、
図4に示すように、保持パッド43,43…の周回軌道Tr43上の整列ピッチは、周回軌道Tr43の各位置に対応付けて予め定められている。例えば、前述の受け取り位置Pinを含む所定範囲では、周回軌道Tr43の前後に隣り合う保持パッド43,43同士の間隔が略詰まった状態で保持パッド43は周回するが、引き渡し位置Poutでは、同間隔が大きく広がった状態で周回するように構成されている。
【0075】
そして、これにより、受け取り位置Pinを含む所定範囲では、各保持パッド43は、連続フィルム3aを、その隣の保持パッド43との間に略隙間の無い状態で受け取り可能としながらも、引き渡し位置Poutでは、カッターロール51で切断生成された単票状フィルム3を、その隣の保持パッド43の単票状フィルム3との間に大きな間隔を有した状態で連続ウエブ2aに引き渡せるようになっている。なお、この引き渡し位置Poutでの保持パッド43,43同士の間隔の大きさは、前述の単票状フィルム3の貼り付けピッチP3(
図2B)に対応付けて設定される。
【0076】
また、引き渡し位置Poutでの保持パッド43の周回速度値V43は、連続ウエブ2aの走行速度値V2aと略同じ速度値に設定されている。そして、これにより、引き渡し位置Poutでの単票状フィルム3の皺の発生が抑制される。ちなみに、連続ウエブ2aの走行速度値V2aは、受け取り位置Pinでの保持パッド43の周回速度値V43よりも速い速度値に設定されており、これによって、上述のようなMD方向に隣り合う単票状フィルム3との間に間隔のあいた貼り付けピッチP3での単票状フィルム3の連続ウエブ2aへの貼り付けが達成されている。
【0077】
このように保持パッド43の整列ピッチ及び周回速度値V43を周回軌道Tr43の各位置に応じて変更しながら同保持パッド43を周回するという周回動作は、周知の駆動機構により実現される。例えば、かかる駆動機構は、上記中心軸C41回りに駆動回転する回転ドラム42と、回転ドラム42に対して各保持パッド43を周回軌道Tr43に沿う方向の所定範囲に亘って往復移動するカム機構等の駆動機構(不図示)と、を有している。そして、回転ドラム42の回転動作に上記の往復移動動作が合成されることにより、上述の整列ピッチ及び周回速度値V43を変更しながらの保持パッド43の周回動作が実現される。
【0078】
また、保持パッド43の吸気孔の吸気動作も、周知の機構により実現される。例えば、各保持パッド43の内部には吸気室(不図示)が区画されており、各吸気室は、それぞれ適宜な流路(不図示)を介して回転ドラム42の内部の負圧室に連通し、当該負圧室を負圧源として吸気する。
【0079】
ところで、望ましくは、
図4の例に示すように、再伸長工程S3のサクションベルトコンベア35が具備する下流側のローラー37bを、伸縮性発現工程S1の上流側ロール21及び下流側ロール23よりも小径にすると良く、このようにすれば、再伸長時の連続フィルム3aのネッキングもより有効に抑制することができる。詳しくは次の通りである。
【0080】
先ず、サクションベルトコンベア35の下流側のローラー37bを小径にすれば、サクションベルトコンベア35の下流端部35bを、回転ドラム装置41上の受け取り位置Pinを通過中の保持パッド43に近接配置し易くなる。そして、近接配置すれば、再伸長時のサクションベルトコンベア35と保持パッド43との間の掛け渡し長も短スパンに設定できて、その結果、再伸長時の連続フィルム3aのネッキングを抑制することができる。
【0081】
ちなみに、上流側ロール21及び下流側ロール23よりも、サクションベルトコンベア35の下流側のローラー37bを小径にすることが可能な理由は、次の通りである。
図3の引っ張り荷重P−伸び特性のグラフを参照しながら前述したように、伸縮性が未発現の連続フィルムの初回の伸長時には、
図3中の実線のように大きな引っ張り荷重をかけないと同フィルム3aは伸長しない。このため、伸縮性発現工程S1の伸長時には、大きな引っ張り荷重をかける必要があり、そのためには、この引っ張り荷重の反力として、上流側ロール21及び下流側ロール23の外周面21a,23aから大きな静止摩擦力を確保しなければならず、当該静止摩擦力の確保のために大径ロールが必要となる。ところが、二回目以降の伸長時には、伸縮性は発現済みであることから、
図3中の点線のように、連続フィルム3aは格段に小さな引っ張り荷重で伸長するようになっている。そのため、引っ張り荷重の反力となるべき外周面37bの静止摩擦力は比較的小さくても事足りて、結果、サクションベルトコンベア35の下流側のローラー37bは小径でも対応可能となるのである。
【0082】
===第2実施形態===
図5は、第2実施形態の連続シートの複合体の製造方法の説明図であって、同製造装置10aの概略側面図である。
【0083】
第1実施形態との主な相違は、再伸長工程S3におけるサクションベルトコンベア35と回転ドラム装置41との間に搬送ローラー39が追設され、当該搬送ローラー39の外周面39aに連続フィルム3aが所定の巻き付き角度で巻き付けられている点にあり、これ以外の構成は概ね第1実施形態と同じである。よって、以下では、この相違点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明については省略する。
【0084】
追設された搬送ローラー39(ローラーに相当)は、CD方向に沿った回転軸C39回りに回転可能なローラーである。そして、この例では、当該ローラー39は、その外周面39aに当接する連続フィルム3aから回転力を得て連れ回る従動ローラーとして構成されている。
【0085】
また、
図5に示すように、搬送ローラー39の設置位置は、保持パッド43の周回半径方向Dr43に関しては、サクションベルトコンベア35が具備する下流側のローラー37bと周回軌道Tr43との間に設定されているが、他方、周回軌道Tr43に沿う方向に関しては、同ローラー37bよりも、受け取り位置Pinから上流側に離れた位置に設定されている。そして、これにより、連続フィルム3aは、ローラー37b及び搬送ローラー39の両者にS字状に掛け回されている。すなわち、サクションベルトコンベア35から送出された連続フィルム3aは、搬送ローラー39を介して受け取り位置Pinの保持パッド43に至るが、その際の搬送ルートはS字状にされている。
【0086】
そして、かかる構成によれば、サクションベルトコンベア35から受け取り位置Pinの保持パッド43に至る搬送ルートは、搬送ローラー39によって二分割されている。すなわち、掛け渡し部分は、サクションベルトコンベア35から搬送ローラー39までの部分と、搬送ローラー39から保持パッド43までの部分との二つに分けられており、各掛け渡し部分の長さたる各掛け渡し長は、それぞれ
図4の第1実施形態の場合のサクションベルトコンベア35から保持パッド43までの掛け渡し長よりも短スパン化されている。よって、この第2実施形態では、サクションベルトコンベア35から保持パッド43に至る搬送ルートでのネッキングをより有効に抑制することができる。
【0087】
なお、望ましくは、この搬送ローラー39の外周面39aも滑り止め処理がなされていると良く、その一例としては、搬送ローラー39の最外層をゴム層で構成すること等が挙げられる。
【0088】
また、この例では、接合用の接着剤を連続フィルム3aの方には塗布し難いため、当該接着剤を、外装シート2に係る連続ウエブ2aの方に塗布している。すなわち、連続ウエブ2aの走行経路においてプレスロール61よりも上流の位置には、接着剤塗布装置38aが設置されており、この接着剤塗布装置38aによって、連続ウエブ2aにおいて単票状フィルム3が載置されるべき部分に対して接着剤が塗布される。そして、この場合には、接着剤を間欠的に塗布しなければならないため、非接触式としてスプレーによる吹きつけが採用されている。
【0089】
ところで、この第2実施形態では、搬送ローラー39を1本だけ追設していたが、何等これに限らない。つまり、装置レイアウト等が許せば、複数の搬送ローラー39を追設し、これによりS字状の掛け回しを繰り返して、略つづら折り状の搬送ルートを形成しても良い。なお、このようにすれば、サクションベルトコンベア35から保持パッド43までの搬送ルートが三つ以上に分割されて、各掛け渡し長のより一層短スパン化を図れるため、ネッキングをより効果的に抑制可能となる。
【0090】
===第3実施形態===
図6は、第3実施形態の連続シートの複合体の製造方法の説明図であって、同製造装置10bの概略側面図である。
【0091】
第1実施形態との主な相違は、下流側ロール23から回転ドラム装置41の保持パッド43までの搬送経路に設定されていた弛緩搬送工程S2と再伸長工程S3とが省略されている点にある。
【0092】
すなわち、この第3実施形態では、伸縮性発現工程S1の次に切断工程S4がなされ、その次に接合工程S5がなされるようになっている。そして、このような変更は、主に下流側ロール23の周速値V23に対するサクションベルトコンベア35に係る周回速度値V36及び回転ドラム装置41の保持パッド43の周回速度値V43を、第1実施形態の場合と異ならせることにより実現されている。つまり、装置構成は、第1実施形態とほぼ同じであるが、これら周回速度値V36,V43等を変更することにより、上述の工程省略を図っている。よって、これ以外の内容は概ね第1実施形態と同じであり、以下では、この相違点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明については省略する。
【0093】
図6に示すように、先ず、上流側ロール21の周速値V21を基準値V1とした場合に、下流側ロール23の周速値V23は、2×V1に設定されている。これにより、伸縮性発現工程S1では、2倍(=2×V1/V1)の伸長倍率M1で連続フィルム3aは伸長されて、伸縮性が発現される。
【0094】
次に、サクションベルトコンベア35(第3回転部材に相当)に係る無端ベルト36の周回速度値V36(第3速度値に相当)は、ほぼ2×V1に設定されており、また、回転ドラム装置41の保持パッド43の受け取り位置Pinでの周回速度値V43(第4速度値に相当)も、ほぼ2×V1に設定されている。つまり、周回速度値V36及び周回速度値V43の両者は、概ね周速値V23と同じ速度値に維持されている。
【0095】
よって、伸縮性発現工程S1での伸長状態が概ね維持されたまま、連続フィルム3aは保持パッド43まで搬送されて、この伸長状態のまま同保持パッド43に吸着保持される。そして、保持パッド43が、周回軌道Tr43に沿ってカッターロール51の設置位置P51を通過する際に、保持パッド43の連続フィルム3aは上記の伸長状態のまま単票状フィルム3に切断される。そして、同軌道Tr43上の引き渡し位置Poutを保持パッド43が通過する際に、単票状フィルム3は上記の伸長状態のまま保持パッド43から外装シート2に係る連続ウエブ2aへと引き渡され、以上をもって、中間部品1aが製造される。
【0096】
そして、このような第3実施形態によれば、下流側ロール23と回転ドラム装置41との間の搬送経路を、連続フィルム3aは、伸縮性発現工程S1の下流側ロール23の周速値V23とほぼ同じ速度値で搬送される。よって、当該搬送経路を連続フィルム3aは短時間で搬送されて、結果、中間部品1aの生産性を高めることができる。
ちなみに、上述で述べた「周回速度値V36,V43の両者は、概ね周速値V23と同じ速度値に維持されている」という意味は、「周回速度値V36,V43が周速値V23以上で周速値V23の1.1倍以下である」ということも含むし、また「周回速度値V36,V43が周速値V23の0.9倍以上で周速値V23以下である」ということも含む。
【0097】
また、上記の第3実施形態によれば、少なくとも製品の伸縮仕様に係る伸長状態、つまり裏面シート1の伸縮仕様に必要な伸長状態を保ちながら、連続フィルム3aは、下流側ロール23から回転ドラム装置41の保持パッド43まで搬送されている。すなわち、当該搬送経路においては、連続フィルム3aの伸長状態は、少なくとも単票状フィルム3を外装シート2に係る連続ウエブ2aに接合する際の伸長状態に保たれている。よって、上記の連続ウエブ2aへの接合前に裏面シート1の伸縮仕様確保目的で連続フィルム3aの再伸長を行わずに済んで、その結果、かかる再伸長時に生じ得るネッキングを抑制することができる。
【0098】
但し、再伸長省略の観点からは、下流側ロール23から保持パッド43までの搬送経路に亘って連続フィルム3aの伸長状態が、少なくとも裏面シート1の伸縮仕様に必要な伸長状態を保てていれば十分である。そのため、上述した「周回速度値V36,V43の両者は、概ね周速値V23と同じ速度値に維持される」という条件は必ずしも必須ではない。つまり上記の搬送経路において裏面シート1の伸縮仕様に必要な伸長状態を保てていれば、当該周回速度値V36,V43は、下流側ロール23の周速値V23より小さくても良い。例えば、上流側ロール21の周速値V21を基準値V1とし、そして下流側ロール23の周速値V23を2×V1に設定した場合に、保持パッド43の周回速度値V43を1.8×V1に設定するとともに、サクションベルトコンベア35の無端ベルト36の周回速度値V36を、1.8×V1と2×V1との間の速度値に設定しても良い。そして、このように周速値V23よりも周回速度値V43を低く設定すれば、概ねおむつの伸縮仕様となる裏面シート1の伸縮仕様(伸長倍率1.8倍)を、単票状シート3の伸縮特性が良好な範囲(伸長倍率2倍)内に確実に収めることができて、おむつの伸縮特性が良好になる。
【0099】
また、この第3実施形態の場合では、サクションベルトコンベア35の用途は、搬送経路からの連続フィルム3aの垂れ下がりを下方から押さえる程度のものであり、第1実施形態の場合のような用途ではない。つまり、周回速度値36と略同じ速度値でしっかりと連続フィルム3aを搬送することで緩和搬送工程S2及び再伸長工程S3を作り込むといった類の用途ではない。よって、無端ベルト36の外周面での連続フィルム3aの吸着保持は必須ではなく、それ故に、当該サクションベルトコンベアに代えて、無端ベルト36に吸気孔を有さない通常のベルトコンベアを用いても良い。
【0100】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0101】
上述の実施形態では、単票状シート3として単票状フィルム3を例示し、更に、単票状フィルム3の一例として三層構造のラミネートフィルムを示していたが、伸長性樹脂フィルムと伸縮性樹脂フィルムとを有しこれらが接合一体化されていれば、何等三層に限らない。例えば、伸長性樹脂フィルムと伸縮性樹脂フィルムとの二層構造でも良いし、三層構造よりも層数が多くても構わない。また、単票状シート3としては、伸長性樹脂繊維を有する不織布と、伸縮性樹脂繊維を有する不織布とが接合一体化されたラミネートシートでも良く、この場合も、二層構造に限らず、二層構造よりも層数が多くても良い。更には、伸長性樹脂繊維を有する不織布と伸縮性樹脂フィルムとが接合一体化されたラミネートシートでも良いし、逆に、伸縮性樹脂繊維を有する不織布と伸長性樹脂フィルムとが接合一体化されたラミネートシートでも良い。また、ラミネートシートでなくても良く、つまり、複数の伸長性樹脂繊維と複数の伸縮性樹脂繊維とが混合されてなる単層の不織布でも良い。そして、このような単票状シート3についても、一度だけ所定方向に所定倍率で伸長すれば、当該単票状シート3には、伸長した方向の伸縮性が発現し、以降は、これを、使い捨ておむつ1等の吸収性物品用の伸縮性シート3として使用可能となる。
【0102】
かかる伸長性樹脂の一例としては、ポリエチレン(PE)或いはポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂が挙げられ、また、伸縮性樹脂の一例としては、スチレンーイソプレンーブタジエン共重合体やSBS共重合体、SIBS共重合体等が挙げられるが、何等これらに限らない。
【0103】
上述の実施形態では、吸収性物品の一例として使い捨ておむつを例示したが、着用者の排泄液を吸収する物品であれば、何等これに限るものではなく、例えば吸収性物品が生理用ナプキンであっても良い。
【0104】
上述の第1及び第2実施形態では、第1回転部材として、サクションベルトコンベア35を例示し、第2回転部材として、回転ドラム装置41を例示したが、連続フィルム3aを面接触状態で略相対移動不能に保持しながら駆動回転可能な回転部材であれば、何等これに限らない。例えば、第1回転部材及び第3回転部材として、所定の巻き付き角度で連続フィルム3aを巻き付けてなる駆動ロールを適用しても良いし、同様に、第2回転部材にも、所定の巻き付き角度で連続フィルムを巻き付けてなる駆動ロールを適用しても良い。
【0105】
上述の第3実施形態では、第3回転部材として、ベルトコンベア35を例示したが、搬送経路からの連続フィルム3aの垂れ下がりを下方から押さえながら駆動回転可能な回転部材であれば、何等これに限らない。例えば、第3回転部材として、連続フィルム3aに下方から当接する駆動ロールを適用しても良い。