(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主成分とし、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを除くハイドロハロアルケン不純物、およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物を、
下式(1)で表される抽出除去指標(r)が6.5以下の溶媒に接触させて、前記ハイドロハロアルケン不純物の少なくとも一部およびハイドロハロアルカン不純物の少なくとも一部を前記溶媒に溶解させて除去する工程を有する、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
r=[4×(δD−17.2)2+(δP−8.3)2+(δH−2.6)2]1/2 ・・・(1)
ただし、δD、δPおよびδHは、それぞれ溶媒のハンセン溶解度パラメータにおける分散項、極性項および水素結合項であり、単位はいずれも(MPa)1/2である。
前記ハイドロハロアルカン不純物がハイドロハロプロパンおよびハイドロハロエタンの少なくとも一方を含む請求項1または2に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3−ジフルオロプロペンおよび1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンからなる群から選ばれる1種以上の少なくとも一部を除去する請求項1〜3のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、3,3,3−トリフルオロプロペンの少なくとも一部を除去する請求項1〜3のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
前記混合物から、前記ハイドロハロアルカン不純物として、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン、1,1,1−トリフルオロプロパンおよび1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンからなる群から選ばれる1種以上の少なくとも一部を除去する請求項1〜5のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(R−1234yf)の精製方法は、R−1234yfを主成分とし、R−1234yfを除くハイドロハロアルケン不純物(以下、単に「ハイドロハロアルケン不純物」という。)、およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物を、後述する抽出除去指標(r)が6.5以下の溶媒(以下、「溶媒(A)」という。)に接触させ、前記ハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物の少なくとも一部を除去する工程を有する方法である。以下、ハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物を合わせて単に「不純物」ということがある。
【0010】
本発明のR−1234yfの精製方法においては、下式(1)で表される抽出除去指標(r)が6.5以下の溶媒(A)を使用する。
r=[4×(δD−17.2)
2+(δP−8.3)
2+(δH−2.6)
2]
1/2
・・・(1)
ただし、δD、δPおよびδHは、それぞれ溶媒のハンセン溶解度パラメータ(以下、「HSP」という。)における分散項、極性項および水素結合項であり、単位はいずれも(MPa)
1/2である。
【0011】
本発明では、前記抽出除去指標(r)が6.5以下という、R−1243zf等の不純物に対して特定の溶解性を示す溶媒(A)に混合物を接触させることで、混合物中の不純物を溶媒(A)中に抽出して分離除去する工程を有する。前記式(1)は、HSPの三次元空間における2点間の距離Raを求める式としてよく知られた式:(Ra)
2=4×(δD
2−δD
1)
2+(δP
2−δP
1)
2+(δH
2−δH
1)
2を基にして導出した式である。
HSPは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項δD、極性項δP、水素結合項δHの3成分に分割し、三次元空間に表したものである。分散項δDは分散力による効果、極性項δPは双極子間力による効果、水素結合項δHは水素結合力による効果を示す。
HSPの定義と計算は、下記の文献に記載されている。
Charles M. Hansen著、Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook(CRCプレス、2007年)。
【0012】
溶媒のHSP[δD、δP、δH]は、例えば、コンピュータソフトウエア Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いることによって、その化学構造から簡便に推算できる。本発明では、HSPiPバージョン3.0.38のデータベースに登録されている溶媒に関してはその値を使用し、データベースに無い溶媒に関しては、HSPiPバージョン3.0.38により推算される値を使用する。
【0013】
以下、前記式(1)と、抽出除去指標(r)が6.5以下という条件の導出方法について説明する。本発明において導出したような抽出除去指標(r)は、式:(Ra)
2=4×(δD
2−δD
1)
2+(δP
2−δP
1)
2+(δH
2−δH
1)
2を基にして、下記工程(x)および工程(y)を有する方法により導出する。
(x)HSP[δD、δP、δH]が既知である複数の溶媒に、R−1234yfを主成分とし、任意の不純物を含む混合物を特定の条件で接触させ、該混合物中の任意の不純物のうち除去対象とする不純物aの除去率X(単位:%)を算出する。
(y)前記除去率Xが特定の値以上の溶媒のHSPの座標がすべて内側に内包され、前記除去率Xが前記特定の値に満たない溶媒のHSPの座標がすべて外側になるような球を探し出し、該球の中心座標[δD
0、δP
0、δH
0]から式:r=[4×(δD−δD
0)
2+(δP−δP
0)
2+(δH−δH
0)
2]
1/2を導き、該球の半径を抽出除去指標(r)の最大値とする。
【0014】
工程(x)における除去対象とする不純物aの除去率X(単位:%)は、下式(2)により算出する。
X=[Y−Z]/Y×100 ・・・(2)
ただし、Yは溶媒(A)と接触させる前の混合物中の除去対象の不純物aの濃度であり、Zは溶媒(A)と接触させた後の混合物中の当該不純物aの濃度である。
不純物aの濃度は、ガスクロマトグラフィー等により測定できる。
【0015】
工程(y)における球を探し出す方法としては、例えば、HSPiPのSphere(球)ファンクションを使用する方法が挙げられる。
【0016】
具体的には、本発明では、混合物中に含まれるハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物のなかでも、特にR−1234yfと沸点が近く蒸留精製が困難なR−1243zfを除去対象の不純物aとして式(1)と抽出除去指標(r)を求めた。そして、工程(y)において除去率Xが5%以上の溶媒のHSPの座標がすべて内側に内包される球を探し出し、該球の座標[17.2、8.3、2.6]と、抽出除去指標(r)の最大値6.5を得たものである。
溶媒(A)としては、例えば、表1および表2に示す溶媒が挙げられる。
【0019】
溶媒(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒(A)としては、特にR−1243zfの除去効率が高くなる点から、抽出除去指標(r)が6.0以下の溶媒が好ましく、抽出除去指標(r)が5.0以下の溶媒がより好ましい。
溶媒(A)の沸点は、不純物の除去効率の点から、40℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
溶媒(A)としては、アニソール、4−ブロモー1−ブテン、2−ブロモブタン、プロピオン酸ブチル、ブチルメルカプタン、3−クロロ−1−プロペン、2−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロブタン、デシルアルデヒド、セバシン酸ジブチル、ジブチルスルフィド、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、ジエチルケトン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、フタル酸ジイソデシル、エチルヘキシルアミン、3−ヘプタノン、ギ酸ヘキシル、イソホロン、メチルトリクロロシラン、2−メチルテトラヒドロフラン、パラアルデヒド、ピペラジン、テトラヒドロフラン、1,1,1−トリクロロエタン、2,3−ブタンジオン、2−クロロエチルエチルエーテル、1,8−シネオール、クロロシクロヘキサン、1,1−ジクロロアセトン、ジヒドロピラン、1,3−ジメトキシブタン、N−エチルモルフォリン、エチレングリコールブチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、メントフラン、酢酸メンチル、2−メトキシテトラヒドロピラン、3−メチルシクロヘキサノン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロピラン、トリクロロアセトニトリル、フェニル酢酸エチル、4−メトキシトルエン、エチラール、カルボン、γ−ドデカラクトン、酢酸イソボロニル、ブチルキノリン、メトキシシクロペンタン、またはキシレンが好ましく、アニソール、2−ブロモブタン、プロピオン酸ブチル、2−クロロ−2−メチルプロパン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、ジエチルケトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルヘキシルアミン、ギ酸ヘキシル、イソホロン、パラアルデヒド、テトラヒドロフラン、2,3−ブタンジオン、1,1−ジクロロアセトン、メントフラン、2−メトキシテトラヒドロピラン、3−メチルシクロヘキサノン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロピラン、トリクロロアセトニトリル、フェニル酢酸エチル、4−メトキシトルエン、エチラール、カルボン、γ−ドデカラクトン、酢酸イソボロニル、またはキシレンがより好ましく、2−ブロモブタン、2−クロロ−2−メチルプロパン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、ジエチルケトン、1,1−ジクロロアセトン、3−メチルシクロヘキサノン、トリクロロアセトニトリル、γ−ドデカラクトン、またはキシレンが特に好ましい。
本発明のR−1234yfの精製方法においては、前記ハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物の5%以上を除去するのが好ましく、10%以上を除去するのがさらに好ましい。
さらに、本発明のR−1234yfの精製方法においては、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを除くハイドロハロアルケン不純物、およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3−ジフルオロプロペンおよび1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンからなる群から選ばれる1種以上の5%以上を除去するのが好ましく、10%以上を除去するのがさらに好ましい。
また、本発明のR−1234yfの精製方法においては、前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、3,3,3−トリフルオロプロペンの5%以上を除去するのが好ましく、10%以上を除去するのがさらに好ましい。
また、本発明のR−1234yfの精製方法においては、前記混合物から、前記ハイドロハロアルカン不純物として、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン、1,1,1−トリフルオロプロパンおよび1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンからなる群から選ばれる1種以上の5%以上を除去するのが好ましく、10%以上を除去するのがさらに好ましい。
【0020】
混合物を溶媒(A)に接触させる方法としては、溶媒(A)に接触させる混合物の形態の違いにより、例えば、下記方法(α)または方法(β)が挙げられる。
(α)ガス状の混合物(以下、「混合物ガス」という。)を溶媒(A)に接触させる方法。
(β)液状の混合物(以下、「混合液」という。)を溶媒(A)に接触させる方法。
【0021】
(方法(α))
方法(α)としては、例えば、混合物ガスを溶媒(A)中に吹き込み、溶媒(A)を通過した精製ガスを回収する方法が挙げられる。
方法(α)における精製は、回分式でもよく、連続式でもよい。
【0022】
方法(α)における溶媒(A)の温度は、溶媒(A)の融点以上沸点以下であればよく、−30〜70℃が好ましく、−30〜40℃がより好ましい。溶媒(A)の温度が下限値以上であれば、冷却に要するエネルギーが少なくてすみ、設備等も簡便になる。溶媒(A)の温度が上限値以下であれば、混合物ガス中の不純物が溶媒(A)中に溶解して抽出されやすくなるので、不純物の除去効率が向上する。
【0023】
方法(α)における精製時の圧力(絶対圧)は、R−1234yfの液化圧力以下であればよく、10〜600kPaが好ましく、100〜300kPaがより好ましい。圧力が下限値以上であれば、不純物の除去効率が向上する。圧力が上限値以下であれば、取り扱い性がよく、設備等が簡便で済む。
【0024】
方法(α)における溶媒(A)200mL(ミリリットル)当たりへの混合物ガスの吹き込み流量は、2〜50mL/分が好ましく、10〜20mL/分がより好ましい。混合物ガスの吹き込み流量が下限値以上であれば、精製により得られるR−1234yfの量がより多くなる。混合物ガスの吹き込み流量が上限値以下であれば、不純物の除去効率が向上する。接触時間は、0.5秒以上が好ましく、1秒以上がより好ましい。接触時間が長いと不純物の除去効率が向上する。
【0025】
方法(α)における混合物ガス中に含まれる不純物の総量は、不純物の除去効率の点から、溶媒(A)の総質量に対して、10質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。つまり、方法(α)においては、溶媒(A)への混合物ガスの総吹き込み流量を、溶媒(A)に対する不純物の割合が前記上限値以下となるように調節して精製することが好ましい。
【0026】
方法(α)に使用する反応器としては、溶媒(A)を収容して混合物ガスを接触させた後に精製ガスを回収できるものであれば特に限定されず、公知の反応器を採用できる。
反応器の材質としては、例えば、ガラス、鉄、ニッケル、またはこれらを主成分とする合金、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素樹脂等が挙げられる。
【0027】
(方法(β))
方法(β)としては、例えば、溶媒(A)を収容した容器中に混合液を加え、溶媒(A)中から容器の気相部に得られた精製ガスを回収する方法が挙げられる。
方法(β)における精製は、回分式でもよく、連続式でもよい。
【0028】
方法(β)における溶媒(A)の温度は、溶媒(A)の融点以上沸点以下である。溶媒(A)の温度は、−30〜70℃が好ましく、−30〜40℃がより好ましい。溶媒(A)の温度が下限値以上であれば、冷却に要するエネルギーがより少なくてすみ、設備等も簡便になる。溶媒(A)の温度が上限値以下であれば、不純物の除去効率が向上する。
【0029】
方法(β)における容器内の圧力(ゲージ圧)は、−91〜2000kPaGが好ましく、0〜200kPaGがより好ましい。圧力が下限値以上であれば、不純物の除去効率が向上する。圧力が上限値以下であれば、取り扱い性がよく、設備等が簡便ですむ。
【0030】
方法(β)における混合液中に含まれる不純物の総量は、不純物の除去効率の点から、溶媒(A)の総量に対して、10質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。つまり、方法(β)においては、溶媒(A)と接触させる混合液の総量を、溶媒(A)に対する不純物の割合が前記上限値以下となるように調節して精製することが好ましい。滞留時間は、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。滞留時間が長いと不純物の除去効率が向上する。
【0031】
方法(β)に使用する反応器としては、溶媒(A)と混合液を接触させた後、気相に得られる精製ガスを回収できるものであればよく、公知の反応器を採用できる。
反応器の材質としては、例えば、ガラス、鉄、ニッケル、またはこれらを主成分とする合金、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素樹脂等が挙げられる。
【0032】
混合物を溶媒(A)に接触させて不純物を除去する工程では、不純物の除去効率がより高い点から、方法(β)よりも方法(α)を採用することが好ましい。また、設備が簡便になる点では、精製対象となる混合物がガス状で得られる場合は方法(α)、混合物が液状で得られる場合は方法(β)を採用することが有利である。
【0033】
本発明の精製方法では、必要に応じて、混合物を溶媒(A)に接触させる工程で除去されない不純物を除去する他の工程を有してもよい。他の工程としては、例えば、公知の蒸留精製によって不純物を除去する工程等が挙げられる。他の工程は、前述した混合物を溶媒(A)に接触させて不純物を除去する工程の前に行ってもよく、後に行ってもよい。
【0034】
本発明の精製方法の精製の対象となる混合物は、R−1234yfを主成分として含む。混合物がR−1234yfを主成分とするとは、混合物中のR−1234yfの含有量が50体積%以上であることを意味する。
混合物中のR−1234yfの含有量は、高純度なR−1234yfが得られやすい点から、70体積%以上が好ましく、75体積%以上がより好ましい。また、混合物中のR−1234yfの含有量の上限は特に限定されないが、現実的には90体積%程度である。
【0035】
また、混合物は、ハイドロハロアルケン不純物とハイドロハロアルカン不純物を含む。ハイドロハロアルケンとは、水素原子とハロゲン原子の両方を有する、R−1234yf以外のアルケンである。また、ハイドロハロアルカンとは、水素原子とハロゲン原子の両方を有するアルカンである。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0036】
混合物中のハイドロハロアルケン不純物は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
本発明の精製方法は、ハイドロハロアルケン不純物として、R−1234yfと沸点が近いハイドロハロプロペンを除去対象とすることが有効である。具体的には、R−1243zf、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(CF
3CF=CHF、R−1225ye、沸点−19℃)および3,3−ジフルオロプロペン(CHF
2CH=CH
2、R−1252zf、沸点−27℃)からなる群から選ばれる1種以上を除去対象とすることが有効である。なかでも、本発明の精製方法は、R−1234yfと沸点が非常に近く蒸留精製で分離困難なR−1243zfでも高効率に除去できるので、ハイドロハロアルケン不純物として、R−1243zfを除去対象とすることが特に有効である。
【0037】
混合物中のハイドロハロアルカン不純物は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
本発明の精製方法は、ハイドロハロアルカン不純物として、ハイドロハロプロパンおよびハイドロハロエタンの少なくとも一方を除去対象とすることが有効である。ハイドロハロプロパンとしては、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(CF
3CHFCH
3、R−254eb、沸点−6℃)、1,1,1−トリフルオロプロパン(CF
3CH
2CH
3、R−263fb、沸点−13℃)等が挙げられる。ハイドロハロエタンとしては、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(CF
3CHClF、R−124、沸点−12℃)等が挙げられる。本発明の精製方法は、ハイドロハロアルカン不純物として、R−254eb、R−263fbおよびR−124からなる群から選ばれる1種以上を除去対象とすることが有効である。
【0038】
R−1234yfを主成分とし、前記ハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物としては、例えば、公知の方法により、触媒の存在下、R−1214yaを水素と反応させて還元することにより得られる生成物等が挙げられる。
【0039】
R−1214yaを水素還元した生成物等、目的とするR−1234yfに、R−1243zf等の沸点がR−1234yfと近い不純物が含まれる場合、該不純物を蒸留精製で除去することは困難である。また、溶媒で不純物を抽出して除去する場合、通常は当該不純物の溶解度が高い溶媒を選択するが、目的物と不純物の溶媒に対する溶解性が同程度であると分離は困難である。例えばR−1243zfのHSPは[14.4、4.4、2.7]であり、R−1234yfのHSP[14.2、3.9、1.6]と近く、R−1243zfの溶解度が高い溶媒はR−1234yfの溶解度も高い。
これに対し、本発明の精製方法では、式(1)で表される抽出除去指標(r)を用いることにより、R−1243zf等の不純物の溶解度とR−1234yfの溶解度に、該不純物を除去可能な差が生じる特定の溶媒(A)を容易に探し出すことができ、かかる溶媒(A)を使用することによって、蒸留精製では分離困難なR−1243zf等の不純物でも効率的に除去できる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1〜6、10〜15は実施例であり、例7〜9、16〜18は比較例である。
[ガス組成および除去率X]
本実施例で使用した混合物ガスおよび精製ガスの組成は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。また、各不純物の除去率X(%)は、下式により算出した。
X=[Y−Z]/Y×100
ただし、Yは精製前の混合物ガス中の対象とする不純物の濃度であり、Zは精製ガス中の当該不純物の濃度である。
【0041】
<方法(α)>
[例1]
玉付きコンデンサーとマグネチックスターラーを備えた三口フラスコに、溶媒(A)として2−クロロ−2−メチルプロパン(抽出除去指標(r)=3.3、温度20℃)の155.5gを仕込み、撹拌しながら、R−1234yfを主成分とする表3に示す組成の混合物ガスの9.9gを流量12.9mL/分でバブリングし、コンデンサーを通過した精製ガスを回収した。得られた精製ガスの組成、および各不純物の除去率Xを表3に示す。
【0042】
[例2〜9]
使用する溶媒の種類および使用量と、使用する混合物ガスの組成、ガス流量、およびガス流通量を表3に示すとおりに変更した以外は、例1と同様にして精製ガスを回収した。得られた精製ガスの組成、および各不純物の除去率Xを表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
なお、表3中の略号は以下の意味を示す。
A−1:2−クロロ−2−メチルプロパン(HSP[15.6、7.6、2.0]、抽出除去指標(r)=3.3)
A−2:キシレン(HSP[18.4、4.4、3.1]、抽出除去指標(r)=4.6)
A−3:(CF
3)
2CHOCH
3(HSP[14.6、5.1、3.0]、抽出除去指標(r)=6.1)
A−4:シネオール(HSP[16.7、6.2、2.8]、抽出除去指標(r)=3.9)
A−5:3−クロロ−1−プロペン(HSP[17.0、6.2、2.3]、抽出除去指標(r)=2.2)
A−6:1,2−ジクロロプロパン(HSP[17.3、7.1、2.9]、抽出除去指標(r)=1.3)
B−1:HFE−7100(3M製、HSP[13.5、1.9、1.5]、抽出除去指標(r)=9.8)
B−2:HFE−7200(3M製、HSP[13.7、1.8、1.5]、抽出除去指標(r)=9.6)
B−3:HFE−7300(3M製、HSP[14.2、1.1、0.8]、抽出除去指標(r)=9.5)
R−1234yf:2,3,3,3−テトラフルオロプロペン
R−1243zf:3,3,3−トリフルオロプロペン
R−1225ye:1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン
R−1252zf:3,3−ジフルオロプロペン
R−254eb:1,1,1,2−テトラフルオロプロパン
R−263fb:1,1,1−トリフルオロプロパン
R−124:1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン
【0045】
<方法(β)>
[例10]
50mLのSUS製オートクレーブに、溶媒(A)として2−クロロ−2−メチルプロパン(抽出除去指標(r)=3.3)の21.0gを仕込み、該オートクレーブ内に、R−1234yfを主成分とする表4に示す組成の混合物ガスを液化して得た混合液の6.0gを加えた。20℃で2時間混合した後、オートクレーブ内の圧力は0.15MPa(G)となった。精製後、気相から精製ガスを回収した。得られた精製ガスの組成、および各不純物の除去率Xを表4に示す。
【0046】
[例11〜18]
使用する溶媒の種類および使用量と、使用する混合液の組成および使用量を表4に示すとおりに変更した以外は、例10と同様にして精製ガスを回収した。得られた精製ガスの組成、および各不純物の除去率を表4に示す。
また、例1〜18における溶媒の抽出除去指標(r)に対するR−1243zfの除去率Xを
図1に示す。
【0047】
【表4】
なお、表4における略号は、表3と同じ意味である。
【0048】
表3および
図1に示すように、方法(α)により、抽出除去指標(r)が6.5以下の溶媒(A)に混合物ガスを接触させた例1〜6は、抽出除去指標(r)が6.5を超える溶媒を使用した例7〜9に比べて、R−1234yfと特に沸点が近いR−1243zfでも高効率で除去できた。同様に、表4および
図1に示すように、方法(β)により、抽出除去指標(r)が6.5以下の溶媒(A)に混合液を接触させた例10〜15は、抽出除去指標(r)が6.5を超える溶媒を使用した例16〜18に比べて、R−1234yfと特に沸点が近いR−1243zfでも高効率で除去できた。