特許第5971144号(P5971144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971144
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】基板処理装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20160804BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20160804BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H01L21/31 C
   H05H1/46 L
   H01L21/31 B
   C23C16/505
   H05H1/46 M
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-21384(P2013-21384)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-154630(P2014-154630A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山涌 純
(72)【発明者】
【氏名】輿水 地塩
(72)【発明者】
【氏名】立花 光博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
(72)【発明者】
【氏名】三浦 繁博
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆文
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0132874(US,A1)
【文献】 特開2011−151343(JP,A)
【文献】 特開2008−251830(JP,A)
【文献】 特開平11−251303(JP,A)
【文献】 特開平09−008014(JP,A)
【文献】 特開2011−181599(JP,A)
【文献】 特開2010−239102(JP,A)
【文献】 特開2011−040574(JP,A)
【文献】 特開平08−213378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205、21/302、21/3065−21/31、
21/365、21/461、21/469、21/86、
H05H 1/00− 1/54、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて基板に対してプラズマ処理を行うための基板処理装置において、
基板を載置するための基板載置領域を前記真空容器の周方向に沿って複数箇所に配置すると共にこれら基板載置領域を各々公転させるための回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転に伴い基板上に分子層あるいは原子層を順次積層して薄膜を形成するために前記基板載置領域の通過領域に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理ガス供給部に対して前記回転テーブルの回転方向に離間して位置し、基板に対して前記分子層あるいは原子層の改質処理であるプラズマ処理を行うためのプラズマ発生領域にプラズマ発生用ガスを供給するプラズマ発生用ガス供給部と、
前記プラズマ発生用ガスにエネルギーを供給して当該ガスをプラズマ化するためのエネルギー供給部と、
前記回転テーブルの下方側にて前記プラズマ発生領域に対向するように設けられ、プラズマ中のイオンを基板の表面に引き込むためのバイアス電極と、
前記回転テーブルの上方側にて前記バイアス電極に対向するように配置された容量結合用の対向電極と、
前記対向電極及び前記バイアス電極を容量結合させて基板にバイアス電位を発生させるために、これら電極の間に高周波電力を供給するためのバイアス用の高周波電源と、
前記真空容器内を排気するための排気口と、を備え、
前記バイアス電極は、前記回転テーブルの回転中心側から外縁側に向かって伸びるように形成されると共に、前記回転テーブルの回転方向における幅寸法が互いに隣接する基板載置領域同士の離間寸法よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記エネルギー供給部は、プラズマ発生領域に誘導結合プラズマを発生させるために、鉛直軸周りに巻回されたアンテナと、このアンテナに接続されたプラズマ発生用の高周波電源と、を備え、
前記対向電極は、前記アンテナと前記プラズマ発生領域との間に設けられ、前記アンテナにより形成される電磁界の電界を遮断し、磁界を通過させるために、前記アンテナの伸びる方向と交差するように形成されたスリットをアンテナの長さ方向に沿って複数配列した導電板であることを特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記エネルギー供給部は、前記プラズマ発生領域に容量結合プラズマを発生させるために、互いに対向するように配置された一対の電極を備えていることを特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板載置領域は、前記回転テーブル上に4箇所以上設けられ、
互いに隣接する基板載置領域同士の離間寸法は、30mm以上120mm以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記バイアス電極を昇降させるための昇降機構を備えたことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
真空容器内にて基板に対して成膜処理を行うための成膜方法において、
前記真空容器の周方向に沿って回転テーブル上に複数箇所に設けられた基板載置領域に、表面に凹部が形成された基板を各々載置すると共に、前記回転テーブルを回転させて基板載置領域を各々公転させる工程と、
前記回転テーブルの回転に伴い基板上に分子層あるいは原子層を順次積層して薄膜を形成するために前記基板載置領域の通過領域に処理ガスを供給する工程と、
前記回転テーブルを回転させながら、前記処理ガスの供給領域に対して回転テーブルの回転方向に離間したプラズマ発生領域にプラズマ発生用ガスを供給すると共に、このプラズマ発生用ガスをプラズマ化して、プラズマによって前記分子層あるいは原子層の改質処理を行う工程と、
前記回転テーブルの下方側にて前記プラズマ発生領域に対向するように設けられたバイ
アス電極と、前記回転テーブルの上方側にて前記バイアス電極に対向するように配置された対向電極と、の間に高周波電力を供給してこれら電極を容量結合させ、これにより基板にバイアス電位を発生させてプラズマ中のイオンを基板の表面に引き込む工程と、
前記真空容器内を排気する工程と、を含み、
前記バイアス電極は、前記回転テーブルの回転中心側から外縁側に向かって伸びるように形成されると共に、前記回転テーブルの回転方向における幅寸法が互いに隣接する基板載置領域同士の離間寸法よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対してプラズマ処理を行う基板処理装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)にシリコン酸化膜(SiO2)などの薄膜を成膜する手法として、例えば特許文献1に記載の装置を用いたALD(Atomic Layer Deposition)法が知られている。この装置では、回転テーブル上に5枚のウエハを周方向に並べると共に、この回転テーブルの上方側に複数のガスノズルを配置している。そして、公転している各々のウエハに対して互いに反応する複数種類の反応ガスを順番に供給して、反応生成物を積層している。
【0003】
このようなALD法において、ウエハ上に積層される反応生成物に対してプラズマ改質を行うために、特許文献2のように、ガスノズルに対して周方向に離間した位置にプラズマ改質を行う部材を設けた装置が知られている。しかしながら、ウエハの表面に例えば数十から百を超える大きなアスペクト比を持つホールや溝(トレンチ)などの凹部が形成されている場合には、この凹部の深さ方向における改質の度合いがばらついてしまうおそれがある。
【0004】
即ち、このようにアスペクト比の大きな凹部が形成されていると、プラズマ(詳しくはアルゴンイオン)が凹部内に進入しにくくなる。また、真空容器内ではプラズマ改質処理と共に成膜処理を行っているので、当該真空容器内における処理圧力は、プラズマが良好に活性を維持できる真空雰囲気と比べて高圧となっている。そのため、凹部の内壁面にプラズマが接触した時に当該プラズマが失活しやすいので、このことからも凹部の深さ方向における改質の度合いがばらつきやすくなっている。また、凹部が形成されていないウエハであっても、回転テーブルが1回転する間に改質処理を行うためには、即ち互いに隣接するガスノズル同士の間の狭い領域で良好に改質を行うためには、ウエハの近傍に高密度のプラズマを形成しておく必要がある。
特許文献3には、下部電極にバイアス電圧を印加する装置について記載されているが、回転テーブルによりウエハを公転させる技術については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−239102
【特許文献2】特開2011−40574
【特許文献3】特開平8−213378
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転テーブルにより各々公転している複数の基板に対してプラズマ処理を行うにあたって、各々の基板の表面の凹部の深さ方向において均一性の高いプラズマ処理を行うことのできる基板処理装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板処理装置は、
真空容器内にて基板に対してプラズマ処理を行うための基板処理装置において、
基板を載置するための基板載置領域を前記真空容器の周方向に沿って複数箇所に配置すると共にこれら基板載置領域を各々公転させるための回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転に伴い基板上に分子層あるいは原子層を順次積層して薄膜を形成するために前記基板載置領域の通過領域に処理ガスを供給する処理ガス供給部と
前記処理ガス供給部に対して前記回転テーブルの回転方向に離間して位置し、基板に対して前記分子層あるいは原子層の改質処理であるプラズマ処理を行うためのプラズマ発生領域にプラズマ発生用ガスを供給するプラズマ発生用ガス供給部と、
前記プラズマ発生用ガスにエネルギーを供給して当該ガスをプラズマ化するためのエネルギー供給部と、
前記回転テーブルの下方側にて前記プラズマ発生領域に対向するように設けられ、プラズマ中のイオンを基板の表面に引き込むためのバイアス電極と、
前記回転テーブルの上方側にて前記バイアス電極に対向するように配置された容量結合用の対向電極と、
前記対向電極及び前記バイアス電極を容量結合させて基板にバイアス電位を発生させるために、これら電極の間に高周波電力を供給するためのバイアス用の高周波電源と、
前記真空容器内を排気するための排気口と、を備え、
前記バイアス電極は、前記回転テーブルの回転中心側から外縁側に向かって伸びるように形成されると共に、前記回転テーブルの回転方向における幅寸法が互いに隣接する基板載置領域同士の離間寸法よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて基板に対して成膜処理を行うための成膜方法において、
前記真空容器の周方向に沿って回転テーブル上に複数箇所に設けられた基板載置領域に、表面に凹部が形成された基板を各々載置すると共に、前記回転テーブルを回転させて基板載置領域を各々公転させる工程と、
前記回転テーブルの回転に伴い基板上に分子層あるいは原子層を順次積層して薄膜を形成するために前記基板載置領域の通過領域に処理ガスを供給する工程と、
前記回転テーブルを回転させながら、前記処理ガスの供給領域に対して回転テーブルの回転方向に離間したプラズマ発生領域にプラズマ発生用ガスを供給すると共に、このプラズマ発生用ガスをプラズマ化して、プラズマによって前記分子層あるいは原子層の改質処理を行う工程と、
前記回転テーブルの下方側にて前記プラズマ発生領域に対向するように設けられたバイ
アス電極と、前記回転テーブルの上方側にて前記バイアス電極に対向するように配置された対向電極と、の間に高周波電力を供給してこれら電極を容量結合させ、これにより基板にバイアス電位を発生させてプラズマ中のイオンを基板の表面に引き込む工程と、
前記真空容器内を排気する工程と、を含み、
前記バイアス電極は、前記回転テーブルの回転中心側から外縁側に向かって伸びるように形成されると共に、前記回転テーブルの回転方向における幅寸法が互いに隣接する基板載置領域同士の離間寸法よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
本発明は、回転テーブル上にて各々公転している複数の基板に対してプラズマ処理を行うにあたり、回転テーブルの下方側にてプラズマ発生領域に対向する位置に、イオン引き込み用のバイアス電極を配置している。そして、このバイアス電極について、回転テーブルの回転中心側から外縁側に向かって伸びるように形成すると共に、前記回転テーブルの回転方向における幅寸法が互いに隣接する基板載置領域同士の離間寸法よりも小さくなるように形成している。そのため、互いに隣接する2枚の基板に対して同時にバイアス電界が加わることを抑制しながら、各々の基板に対してプラズマ中のイオンを個別に引き込むことができる。従って、基板の表面に既述の大きなアスペクト比の凹部が形成されていても、凹部の深さ方向に亘ってプラズマ処理を均質に行うことができると共に、当該プラズマ処理の度合いを面内に亘って且つ複数の基板の間に亘って揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の成膜装置の一例を示す縦断面図である。
図2】前記成膜装置を示す斜視図である。
図3】前記成膜装置を示す横断平面図である。
図4】前記成膜装置を示す横断平面図である。
図5】前記成膜装置の回転テーブルを示す斜視図である。
図6】前記成膜装置のプラズマ処理部を示す分解斜視図である。
図7】前記成膜装置のバイアス電極を示す分解斜視図である。
図8】プラズマ処理部及びバイアス電極を拡大して示す縦断面図である。
図9】前記成膜装置を周方向に沿って上下方向に切断した縦断面を展開した展開図である。
図10】バイアス電極を2枚のウエハに跨るように形成した場合にプラズマが発生する部位を模式的に示す横断平面図である。
図11】バイアス電極を2枚のウエハに跨るように形成した場合のプラズマの特性を模式的に示す縦断面図である。
図12】バイアス電極を2枚のウエハに跨るように形成した場合のプラズマの特性を模式的に示す縦断面図である。
図13】本発明におけるプラズマの特性を模式的に示す縦断面図である。
図14】本発明におけるプラズマの特性を模式的に示す縦断面図である。
図15】前記プラズマ処理部及びバイアス電極に係る電気回路を模式的に示す縦断面図である。
図16】前記成膜装置における作用を示す模式図である。
図17】前記成膜装置における作用を示す模式図である。
図18】前記成膜装置の他の例を模式的に示す縦断面図である。
図19】前記成膜装置の他の例を示す縦断面図である。
図20】前記成膜装置の他の例を示す平面図である。
図21】前記成膜装置の他の例を模式的に示す縦断面図である。
図22】前記成膜装置の他の例の一部を示す斜視図である。
図23】前記成膜装置の他の例を示す横断平面図である。
図24】前記成膜装置の他の例を示す横断平面図である。
図25】前記成膜装置の他の例を示す横断平面図である。
図26】前記成膜装置の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態の基板処理装置(成膜装置)について、図1図15を参照して説明する。この装置は、図1図4に示すように、平面形状が概ね円形である真空容器1と、真空容器1の中心に回転中心を有すると共に複数枚この例では5枚のウエハWを各々公転させる回転テーブル2と、を備えており、これらウエハWに対して成膜処理及びプラズマ改質処理を行うように構成されている。また、プラズマ改質処理を行うにあたって、回転テーブル2の下方側にバイアス電極を配置して、プラズマ中のイオンをウエハW側に引き込むようにしている。そして、各ウエハW間において高い均一性でプラズマ改質処理を行うために、回転テーブル2の回転方向におけるバイアス電極の幅寸法について、後述の図9に示すように、互いに隣接するウエハW同士の離間寸法よりも小さくしている。続いて、既述のバイアス電極について詳述する前に、装置の全体の概要について簡単に説明する。
【0015】
真空容器1の天板11の中心部には、後述の処理領域P1、P2を仕切るために、当該真空容器1内に分離ガス(N2ガス)を通流させる分離ガス供給管51が接続されている。回転テーブル2の下側には、図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられており、当該回転テーブル2を介してウエハWを成膜温度例えば300℃に加熱するようになっている。図1中7aはカバー部材、73はパージガス供給管である。
【0016】
回転テーブル2は、例えば石英などの誘電体により構成されており、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されている。この回転テーブル2は、コア部21の下面に接続された回転軸22によって、鉛直軸周りこの例では時計周りに回転自在に構成されている。図1中23は回転軸22を鉛直軸周りに回転させる駆動部(回転機構)であり、20は回転軸22及び駆動部23を収納するケース体、72はパージガス供給管である。
【0017】
回転テーブル2の表面部には、図3図4に示すように、直径寸法が例えば300mmのウエハWを載置するための載置領域をなす凹部24が当該回転テーブル2の回転方向(周方向)に沿って複数箇所例えば5箇所に形成されている。回転テーブル2の回転方向において互いに隣接する凹部24、24間の離間寸法dは、30mm以上、120mm以下となっている。回転テーブル2の下面は、図5及び図8に示すように、各々の凹部24の底面と回転テーブル2の下面との間の寸法(回転テーブル2の板厚寸法)ができるだけ小さくなるように、回転テーブル2と同心円状にリング状に窪んでバイアス電極120を収納するための凹部である溝部2aをなしている。尚、図5は、回転テーブル2を下側から見た斜視図を示している。
【0018】
凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる5本のノズル31、32、34、41、42が真空容器1の周方向に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これらノズル31、32、34、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部に向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見て時計周り(回転テーブル2の回転方向)にプラズマ発生用ガスノズル34、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズル32がこの順番で配列されている。
【0019】
処理ガスノズル31、32は、夫々第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部をなし、プラズマ発生用ガスノズル34はプラズマ発生用ガス供給部をなしている。また、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。尚、図2及び図3はプラズマ発生用ガスノズル34が見えるように後述のプラズマ処理部80及び筐体90を取り外した状態、図4はこれらプラズマ処理部80及び筐体90を取り付けた状態を表している。また、図2については回転テーブル2についても取り外した状態を示している。
【0020】
各ノズル31、32、34、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。即ち、第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含む第1の処理ガス例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスなどの供給源に接続されている。第2の処理ガスノズル32は、第2の処理ガス例えばオゾン(O3)ガスと酸素(O2)ガスとの混合ガスの供給源(詳しくはオゾナイザーの設けられた酸素ガス供給源)に接続されている。プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばアルゴン(Ar)ガスと酸素ガスとの混合ガスからなるプラズマ発生用ガスの供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスである窒素ガスのガス供給源に各々接続されている。これらガスノズル31、32、34、41、42の例えば下面側には、ガス吐出孔33が各々形成されており、このガス吐出孔33は、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所に例えば等間隔に配置されている。図2及び図3中31aはノズルカバー(フィン)である。
【0021】
処理ガスノズル31、32の下方領域は、夫々第1の処理ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域(成膜領域)P1及びウエハWに吸着した第1の処理ガスの成分と第2の処理ガスとを反応させるための第2の処理領域P2となる。プラズマ発生用ガスノズル34の下方側の領域は、後述するように、ウエハWに対してプラズマ改質処理を行うための改質領域(プラズマ発生領域)S1となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、各処理ガス同士の混合を阻止するために、凸状部4の下面である低い天井面が配置されている。
【0022】
次に、既述のプラズマ処理部80について説明する。このプラズマ処理部80は、図1及び図6に示すように、金属線からなるアンテナ83を鉛直軸周りにコイル状に巻回して構成されており、平面で見た時に回転テーブル2の中央部側から外周部側に亘ってウエハWの通過領域を跨ぐように配置されている。このアンテナ83は、図4に示すように、回転テーブル2の半径方向に沿って伸びる帯状の領域を囲むように概略8角形をなしている。
【0023】
アンテナ83は、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように配置されている。即ち、既述のプラズマ発生用ガスノズル34の上方側における天板11は、平面的に見た時に概略扇形に開口しており、図6に示すように、例えば石英などの誘電体からなる筐体90によって気密に塞がれている。この筐体90は、周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出すと共に、中央部が真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成されており、この筐体90の内側に前記アンテナ83が収納されている。図1中11aは、筐体90と天板11との間に設けられたシール部材であり、91は、筐体90の周縁部を下方側に向かって押圧するための押圧部材である。
【0024】
アンテナ83には、図15に示すように、スイッチ84a、整合器(マッチングボックス)84b及びフィルタ84cを介して、周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85がエネルギー供給部として接続されている。尚、フィルタ84cは、後述の高周波電源128の周波数帯の信号を阻止(カット)するためのものである。図1中86は、後述のプラズマ高周波電源85にアンテナ83を電気的に接続するための接続電極である。
【0025】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域への窒素ガスやオゾンガスなどの侵入を阻止するために、図1に示すように、外縁部が周方向に亘って下方側(回転テーブル2側)に向かって垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、既述のプラズマ発生用ガスノズル34が収納されている。
【0026】
筐体90とアンテナ83との間には、図1図4及び図6に示すように、上面側が開口する概略箱型のファラデーシールド95が対向電極として配置されており、このファラデーシールド95は、導電性の板状体である金属板により構成されている。ファラデーシールド95は、当該ファラデーシールド95における水平面が回転テーブル2上のウエハWに対して水平になるように配置されている。
【0027】
ファラデーシールド95の水平面には、アンテナ83において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるために、スリット97が形成されている。このスリット97は、アンテナ83の巻回方向に対して直交(交差)する方向に伸びるように形成されており、アンテナ83に沿うように周方向に亘って当該アンテナ83の下方位置に設けられている。図6などにおける94は、ファラデーシールド95とアンテナ83とを絶縁するための例えば石英からなる絶縁板である。
【0028】
ここで、図15を参照してファラデーシールド95に関わる電気回路について説明する。ファラデーシールド95は、例えば可変容量コンデンサ400やインダクタンス401などを含むバイアス引き込み回路402を介して接地されている。このバイアス引き込み回路402の前段側(ファラデーシールド95側)には、電流値を検出するための検出部403が設けられており、検出部403における検出値に基づいて例えば可変容量コンデンサ400の容量値をアクチュエータ(図示せず)により調整するようにしている。具体的には、前記電流値が事前に求めた最大値付近の設定値を超えるように、ファラデーシールド95とバイアス電極120との間におけるインピーダンスを調整し、高周波が異常経路を流れることを抑えて、異常放電を防止している。
【0029】
あるいは、後述の制御部200により、ファラデーシールド95とバイアス電極120との間におけるインピーダンスを自動で調整しても良い。このように前記インピーダンスを自動で調整する場合には、検出部403について、電流値を検出することに代えて、あるいはこの電流値と共に、ファラデーシールド95とバイアス電極120との間のインピーダンス(主にリアクタンス成分)を測定するように構成しても良い。そして、前記インピーダンスの変化から、可変容量コンデンサ400の容量値を事前にどのように調整するか、具体的にはインピーダンスが増加した時、前記容量値を増やすように調整するか、あるいは容量値を減らすように調整するか、予め決めておいても良い。即ち、制御パラメータ(電流値やインピーダンス)をモニタしつつ、制御部200が自動でインピーダンスを調整しても良いし、インピーダンスを事前に合わせ込んでも良い。従って、制御部200を介して自動で前記インピーダンスを調整する場合には、プラズマ処理の間に亘って異常放電が防止される。
【0030】
そして、以上説明したファラデーシールド95の下方側における真空容器1の底面部には、既述の図1及び図7に示すように、平面で見た時にアンテナ83の配置された領域と重なり合う位置に開口部121が形成されている。具体的には、この開口部121は、平面で見た時に既述のプラズマ発生用ガスノズル34に対して回転テーブル2の回転方向下流側に離間した位置において、当該回転テーブル2の回転中心側から外縁側に向かって回転テーブル2の半径方向に沿って細長く形成されている。
【0031】
この開口部121内には、図7及び図8に示すように、概略円筒形の絶縁部材122が下方側から気密に挿入されており、この絶縁部材122は、下方側が開口すると共に平面で見た時に開口部121と同様に回転テーブル2の半径方向に沿って細長く形成されている。絶縁部材122の下端側外周端は、外側に向かって周方向に亘ってフランジ状に伸び出しており、この下端側外周端の上面側に周方向に沿って設けられたO−リングなどのシール部材123によって、真空容器1の底面部に気密に接触している。この絶縁部材122と回転テーブル2との間の領域をプラズマ非励起領域S2と呼ぶと、絶縁部材122の上面部の概略中央部には、当該プラズマ非励起領域S2に対して後述のプラズマ阻止用ガスを吐出するために、当該絶縁部材122を上下方向に貫通するガス吐出口124が形成されている。この例では、絶縁部材122は、例えば石英などの誘電体により構成されている。
【0032】
続いて、バイアス電極120について詳述する。このバイアス電極120は、当該バイアス電極120とファラデーシールド95とを容量結合させてバイアス電界を形成し、回転テーブル2上のウエハWにプラズマ中のイオンを引き込むためのものであり、回転テーブル2の下方側にて改質領域S1に対向するように配置されている。そして、このバイアス電極120は、図3から分かるように、当該バイアス電極120の上方側にウエハWが位置した時、当該ウエハWにおける回転中心側の端部と、外縁側の端部との間に跨るように配置されると共に、既述の絶縁部材122の内部に収納されている。即ち、バイアス電極120は、図8に示すように、下端側が開口すると共にこの下端側外周端がフランジ状に外側に向かって伸び出す概略円筒形状をなしており、絶縁部材122よりも一回り小さく形成されている。この例では、バイアス電極120は、例えばニッケル(Ni)や銅(Cu)などの導電部材により構成されている。
【0033】
そして、バイアス電極120(詳しくは後述の流路部材127)には、図15に示すように、スイッチ130、整合器132フィルタ133を介して、周波数が50kHz〜40MHz及び出力電力が500〜5000Wの高周波電源128が電気的に接続されている。この例では、この高周波電源128の周波数と既述のプラズマ発生用のプラズマ高周波電源85の周波数とは互いに異なる周波数(高周波電源128の周波数:13.56〜100MHz)になっている。この高周波電源128と既述のバイアス引き込み回路402との各アース側は、図示しない導電路により互いに接続されている。
【0034】
フィルタ133は、プラズマ発生用のプラズマ高周波電源85の周波数帯の信号をカットするためのものであり、例えば当該フィルタ133を流れる電流値を検出するための電流検出部134に接続されている。尚、電流検出部134としては、前記電流値に代えて、あるいは当該電流値と共に、フィルタ133における電圧を検知する構成であっても良い。
【0035】
ここで、バイアス電極120は、既述の図3に破線で示すように、互いに隣接する2枚のウエハWに対して同時にバイアス電界が加わらないように、平面で見た時にこれら2枚のウエハWに同時に跨らないように配置されている。即ち、回転テーブル2の回転方向におけるバイアス電極120の幅寸法tは、図9にも示すように、回転テーブル2上における互いに隣接する凹部24、24同士の離間寸法dよりも小さくなるように形成されており、具体的には20mm〜90mm(幅寸法t=離間寸法d×(50%〜90%))となっている。以下に、バイアス電極120の幅寸法tをこのような値に設定した理由について詳述する。
【0036】
即ち、バイアス電極120に対して後述のように高周波電力を供給すると、平面で見た時に、当該バイアス電極120の中央部では周縁部よりも電圧が高くなる。従って、回転テーブル2の回転によってウエハWの端部が当該回転テーブル2の回転方向上流側から移動してバイアス電極120の上方側に差し掛かった時、前記端部には、バイアス電極120の中央部に対応する、比較的強いバイアス電圧が印加されることになる。
【0037】
そのため、この電圧がウエハWの周方向に沿って伝達されて、意図しない領域にてプラズマが発生してしまうおそれがある。具体的には、図10に示すように、改質領域S1に対して回転テーブル2の回転方向上流側に外れた位置においてプラズマが発生するおそれがある。このように予期しない位置でプラズマが発生すると、予定していない反応(パーティクルの発生)が起こったり、ウエハWにダメージが発生してしまったりする場合がある。また、改質領域S1をウエハWが抜け出ようとする時、同様に当該ウエハWにおける回転テーブル2の回転方向上流側の端部についても、前記比較的強い電圧が印加される。従って、既に改質領域S1の外に位置するウエハWの反対側(回転テーブル2の回転方向下流側)の端部にてプラズマが発生するおそれもある。尚、図10では、改質領域S1から外れた領域でプラズマが発生する部位について、斜線を付して模式的に示している。
【0038】
更に、平面で見た時にバイアス電極120が互いに隣接する2枚のウエハWに跨るように配置されていると、バイアス電界は、これら2枚のウエハWの各々に対して印加される。従って、このように2枚のウエハWに対して一度に(同時に)バイアス電界が印加されると、回転テーブル2上の5枚のウエハWにおいてプラズマ処理の度合いがばらついてしまうおそれがある。即ち、例えば回転軸22の歪みやぶれ、あるいはウエハWの厚み寸法や凹部24の深さ寸法の極僅かな誤差などによって、ウエハWの表面の高さ位置は、各ウエハW毎にまちまちになっている。また、5枚のウエハWのうちある特定のウエハWについても、回転テーブル2が一回転する中で、同様に既述の歪みなどによって、改質領域S1に到達する度に前記高さ位置が変わる場合がある。
【0039】
従って、図11及び図12に示すように、2枚のウエハWのうち一方のウエハWに対して、他方のウエハWよりも大きなバイアス電界が印加されるおそれがある。そして、これら互いに隣接する2枚のウエハW間における相対的な高さ位置は各ウエハW毎に変わるため、ウエハW間でプラズマ処理の度合いがばらついてしまう。図11及び図12において、改質領域S1における回転テーブル2の回転方向下流側のウエハW及び回転テーブル2の回転方向上流側のウエハWに夫々「1」及び「2」を付すと、バイアス電界は、図11ではウエハW2よりもウエハW1の方が大きくなり、図12ではウエハW1よりもウエハW2が大きくなっている。
【0040】
そこで、バイアス電極120の幅寸法tについて、既に説明したように、互いに隣接するウエハW(凹部24)同士の離間寸法dよりも小さく設定している。そのため、5枚のウエハWのうち一のウエハWに対してプラズマ処理が行われている時、図13及び図14に示すように、他の4枚のウエハWについてはプラズマが照射されない(バイアス電界が印加されない)か、あるいはプラズマが照射されたとしてもそのプラズマ強度は前記一のウエハWよりも小さい。即ち、一のウエハW(ウエハW1)がバイアス電極120の上方側に位置している時、図13に示すように、当該一のウエハWに対してプラズマ処理が行われる。次いで、図14に示すように、この一のウエハWが改質領域S1から抜け出ようとする時、当該一のウエハWに対して回転テーブル2の回転方向上流側に位置する他のウエハW(ウエハW2)は、バイアス電極120の上方側の領域に対して前記上流側に離間している。そして、前記他のウエハWがバイアス電極120の上方側の領域に到達した時には、前記一のウエハWは、当該領域から回転テーブル2の回転方向下流側に既に離脱している。従って、各ウエハWに対して、個別にプラズマ処理(バイアス電界の印加)が行われる。
【0041】
続いて、バイアス電極120の構成の説明に戻ると、このバイアス電極120における下端側外周端は、既述の図8に示すように、真空容器1の底面部に接触しないように、絶縁部材122の外端部よりも内側寄りに位置するように配置されている。そして、バイアス電極120は、前記下端側外周端の上面側に設けられたO−リングなどのシール部材125によって、絶縁部材122に対して気密に配置されている。従って、バイアス電極120は、回転テーブル2に接触しないように(非接触となるように)、また真空容器1に対して電気的に絶縁されるように配置されている。
【0042】
バイアス電極120の概略中央部には、絶縁部材122のガス吐出口124の配置位置に対応するように、当該バイアス電極120の上端面を上下に貫通する貫通口126が形成されている。この貫通口126の下方側には、図1に示すように、プラズマ非励起領域S2に対してプラズマ阻止用ガス(例えば窒素(N2)ガスやヘリウム(He)ガスなど)を供給するために、導電部材により構成された流路部材127が気密に設けられている。
【0043】
図1に示すように、バイアス電極120の下方側には、封止部材131が配置されており、この封止部材131は、例えば石英などの絶縁体により構成されると共に概略円板状に形成されている。封止部材131の外周端は、真空容器1の底面部とバイアス電極120の外周端との間において、上方側の絶縁部材122に向かって周方向に亘って起立している。従って、真空容器1の開口部121に絶縁部材122、バイアス電極120及び封止部材131を下方側からこの順番で挿入すると共に、この封止部材131を真空容器1の底面部に対して例えば図示しないボルトなどによって固定すると、真空容器1に対して絶縁部材122が気密に接触する。また、絶縁部材122に対してバイアス電極120が気密に接触する。更に、封止部材131によって、バイアス電極120と真空容器1との間が電気的に絶縁される。
【0044】
そして、図8の下側に拡大して示すように、回転テーブル2の下面側の溝部2a内に絶縁部材122の上面が位置すると共に、回転テーブル2上のウエハWとバイアス電極120とが面内に亘って平行になる。これら回転テーブル2の下面と絶縁部材122の上面との間の離間寸法は、例えば0.5mm〜3mmとなる。尚、図7では、シール部材123、125については描画を省略している。
【0045】
回転テーブル2の外周側には、環状のサイドリング100が配置されており、既述の筐体90の外縁側におけるサイドリング100の上面には、当該筐体90を避けてガスを通流させるための溝状のガス流路101が形成されている。このサイドリング100の上面には、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2に夫々対応するように排気口61、62が形成されている。これら第1の排気口61及び第2の排気口62から夫々伸びる排気管63には、図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65を介して、排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0046】
真空容器1の側壁には、図2図4に示すように、図示しない外部の搬送アームと回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。また、この搬送口15を臨む位置における回転テーブル2の下方側には、回転テーブル2の貫通口を介してウエハWを裏面側から持ち上げるための昇降ピン(いずれも図示せず)が設けられている。
【0047】
従って、以上説明したバイアス電極120とファラデーシールド95とからなる構成は、図15に示すように、一対の対向電極をなしており、改質領域S1の下方側にウエハWが位置した時、平面で見ると当該ウエハWと重なり合う位置に各々配置されている。そして、バイアス電極120に対して高周波電源128から供給される高周波電力によって、これら対向電極間に容量結合が形成されて、いわばバイアス空間S3が発生する。そのため、プラズマ処理部80によって真空容器1内に形成されるプラズマ中のイオンは、後述するように、このバイアス空間S3において上下方向に振動(移動)する。従って、回転テーブル2の回転によってウエハWがこのバイアス空間S3に位置すると、イオンが上下動する中で当該ウエハWに衝突するので、イオンがウエハWに引き込まれることになる。尚、図1では、以上説明した電気回路については省略している。
【0048】
また、この成膜装置には、図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部200が設けられており、この制御部200のメモリ内には後述の成膜処理及びプラズマ改質処理を行うためのプログラムが格納されている。そして、プラズマ改質処理を行うにあたり、制御部200は、真空容器1内に発生するプラズマ密度を調整するためのフィードバック機能を持っている。具体的には、制御部200は、バイアス電極120に接続されたフィルタ133を流れる電流値に基づいて、当該フィルタ133のリアクタンスや整合器84bの容量値を調整するように構成されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部201から制御部200内にインストールされる。
【0049】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、ゲートバルブGを開放して、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。各々のウエハWの表面には、溝やホールなどからなる凹部10(図16参照)が形成されており、この凹部10のアスペクト比(凹部10の深さ寸法÷凹部10の幅寸法)は、例えば数十から百を超える大きさになっている。次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を例えば2rpm〜240rpmで時計周りに回転させる。そして、ヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃程度に加熱する。
【0050】
続いて、処理ガスノズル31、32から夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを吐出すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34からプラズマ発生用ガスを吐出する。また、プラズマ非励起領域S2に対して、当該領域S2のガス圧力が改質領域S1よりも陽圧(高圧)となるように、即ち領域S2においてプラズマの発生を阻止するために、プラズマ阻止用のガスを吐出する。このプラズマ阻止用ガスは、回転テーブル2の下方側を通流して排気口62から排気される。
【0051】
また、分離ガスノズル41、42から分離ガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72からも窒素ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整部65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整する。また、アンテナ83及びバイアス電極120に対して夫々高周波電力を供給する。
【0052】
第1の処理領域P1では、ウエハWの表面に第1の処理ガスの成分が吸着して吸着層が生成する。次いで、第2の処理領域P2では、図16に示すように、ウエハW上の吸着層が酸化されて、薄膜成分であるシリコン酸化膜(SiO2)の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物である反応層301が形成される。この反応層301には、例えば第1の処理ガスに含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が残る場合がある。
【0053】
プラズマ処理部80では、プラズマ高周波電源85から供給される高周波電力により、電界及び磁界が発生する。これら電界及び磁界のうち電界は、ファラデーシールド95により反射あるいは吸収(減衰)されて、真空容器1内への到達が阻害される。一方、磁界は、ファラデーシールド95にスリット97を形成しているので、このスリット97を通過して、筐体90の底面を介して真空容器1内の改質領域S1に到達する。
【0054】
従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、磁界によって活性化されて、例えばイオン(アルゴンイオン:Ar)やラジカルなどのプラズマが生成する。既述のように、回転テーブル2の半径方向に伸びる帯状体領域を囲むようにアンテナ83を配置していることから、このプラズマは、アンテナ83の下方側において、回転テーブル2の半径方向に伸びるように概略ライン状となる。
【0055】
ここで、プラズマは、アンテナ83の巻回方向に沿って、いわば平面的に分布しようとする。しかしながら、ファラデーシールド95とバイアス電極120との間を容量結合させて高周波電界を形成していることから、このプラズマ中のイオンに対して上下方向の電界が加わるので、既述のようにイオンがウエハW側に引き込まれる。従って、プラズマ中のイオンは、図17に示すように、ウエハWの表面(互いに隣接する凹部10、10同士の間における水平面)だけでなく、凹部10の内壁面や当該凹部10の底面にまで亘って接触する。こうして反応層301にアルゴンイオンが衝突すると、反応層301から水分や有機物などの不純物が放出されたり、反応層301内の元素の再配列が起こって当該反応層301の緻密化(高密度化)が図られたりして、当該反応層301が改質される。そのため、改質処理は、ウエハWの面内に亘って、且つ凹部10の深さ方向に亘って均等に行われる。また、既述のようにバイアス電極120の幅寸法tについて、互いに隣接するウエハW同士の離間寸法dよりも小さく設定しており、各ウエハWに対して個別にバイアス電界が形成されるので、改質処理は、5枚のウエハW間に亘って均等に行われる。
【0056】
その後、回転テーブル2の回転を続けることにより、吸着層の吸着、反応層301の生成及び反応層301の改質処理がこの順番で多数回に亘って行われて、反応層301の積層によって薄膜が形成される。この薄膜は、凹部10の深さ方向に亘って、且つウエハWの面内に亘って、更にはウエハW間に亘って、緻密で均質な膜質となる。尚、図17では、ファラデーシールド95、バイアス電極120及びウエハWについて模式的に示している。
【0057】
以上の一連のプロセスを行っている間、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に窒素ガスを供給しているので、第1の処理ガスと第2の処理ガス及びプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気される。また、回転テーブル2の下方側にパージガスを供給しているため、回転テーブル2の下方側に拡散しようとするガスは、前記パージガスにより排気口61、62側へと押し戻される。
【0058】
上述の実施の形態によれば、回転テーブル2上にて各々公転している複数枚のウエハWに対してプラズマ処理を行うにあたって、回転テーブル2の下方側にて改質領域S1に対向する位置にバイアス電極120を配置している。そして、このバイアス電極120について、回転テーブル2の回転方向における幅寸法tが互いに隣接するウエハW同士の離間寸法dよりも小さくなるように形成している。そのため、互いに隣接するウエハWに対して同時にバイアス電界が加わることを抑制しながら、各ウエハWに対して個別にバイアス電界を形成してプラズマ中のイオンを引き込むことができる。従って、ウエハWの表面にアスペクト比の大きな凹部10が形成されていても、凹部10の深さ方向に亘って、且つウエハWの面内に亘って、更には複数のウエハW間に亘って膜質の揃った薄膜を形成できる。
【0059】
また、プラズマ処理部80の直下にバイアス空間S3を形成して、いわば改質領域S1とバイアス空間S3とを互いに重ね合わせていることから、当該改質領域S1以外の領域における不要なプラズマの発生を抑制できる。即ち、既述のように、アンテナ83の下方位置にてプラズマを発生させようとしているが、例えば真空容器1内で局所的に圧力が低くなっている場所や、真空容器1の内壁面など金属面が露出している場所等において、意図せずにプラズマが発生(拡散)してしまう場合がある。そして、このような意図しないプラズマが例えばSi系ガスに干渉すると、ウエハWに吸着する前にガス分解が起こり、膜質の劣化に繋がってしまう。しかしながら、既に詳述したように、アンテナ83の下方側にバイアス空間S3を形成して、プラズマ(イオン)をウエハW側に引き込んでいる。そのため、プラズマ改質処理を行いながら、意図しないプラズマの発生を抑制できる。
【0060】
更に、ファラデーシールド95とバイアス電極120との間に容量結合を形成し、イオンをウエハW側に引き込んでいることから、イオンがウエハWに衝突する時、このイオンの衝突するエネルギーが熱に変換されて当該ウエハWの温度が上昇する。このウエハWの温度変化(温度上昇)は、高周波電源128に供給する電力量に比例する。従って、ウエハW上の反応生成物の改質処理を行うにあたり、当該ウエハWに対してイオンを供給するだけでなく、ウエハWの温度を上昇させることができるので、ウエハWの温度上昇分だけ更に良好な膜質の薄膜を形成できる。
【0061】
ここで、バイアス用の高周波は、1周波に限らず、2周波(互いに周波数が異なる高周波電源を2つ用いる)であっても良いし、3周波以上であっても良い。即ち、バイアス電極120に対して互いに周波数の異なる高周波電源を接続することにより、ウエハWの中心部と外縁部との間におけるプラズマ処理の度合いを調整できるので、ウエハWの面内に亘って膜質の揃った薄膜を形成できる。
【0062】
図18は、ファラデーシールド95とバイアス電極120とを容量結合させる構成として、高周波電源128について、バイアス電極120に接続することに代えて、対向電極に相当するファラデーシールド95に接続した例を示している。バイアス電極120については、バイアス引き込み回路402を介して接地している。このようにファラデーシールド95に高周波電源128を接続する場合には、プラズマ発生用のプラズマ高周波電源85を利用しても良い。即ち、高周波電源128を使用せずに、プラズマ高周波電源85について、アンテナ83及びファラデーシールド95に対して並列で接続しても良い。尚、図18について、既に説明済みの部材については、既述の例と同じ符号を付して説明を省略すると共に、装置構成を簡略化して描画している。
【0063】
また、アンテナ83の下方側にバイアス電極120を配置したが、例えば回転テーブル2の回転方向におけるプラズマの分布状態を調整する場合などにおいて、アンテナ83に対して例えば前記回転方向上流側にバイアス電極120をずらしても良い。従って、バイアス電極120について、「回転テーブル2の下方側にて改質領域S1に対向する位置」とは、当該改質領域S1の直下だけではなく、改質領域S1から回転テーブル2の回転方向下流側あるいは上流側に各々0mm〜100mmだけ離間した位置も含まれる。
【0064】
更に、図19及び図20に示すように、金属(Cu(銅)、Al(アルミニウム))などの導電体及びSiなどの半導体の少なくとも一方を含む円板状の補助電極140を回転テーブル2の内部に埋設しても良い。図20に示すように、この補助電極140は、各々のウエハW毎に個別に設けられると共に、平面で見た時に各々のウエハWの投影領域と同じかこの投影領域よりも大きくなるように形成されている。このように回転テーブル2の内部に補助電極140を埋設すると、ファラデーシールド95とバイアス電極120との間の容量結合は、当該補助電極140を介して形成される。従って、補助電極140の厚み寸法の分だけ、ウエハWをバイアス電極120側に電気的に近接させることができるので、イオンをウエハW側に引き込む作用をより一層高めることができる。
【0065】
また、補助電極140に対して給電するにあたり、例えば回転テーブル2や回転軸22などを導電材により構成し、当該回転軸22に対して例えば図示しないスリップリング機構を介して給電するように構成しても良い。更に、アンテナ83については、一端側の端子を高周波電源85に接続すると共に、他端側の端子を接地したが、これら一端側及び他端側を各々高周波電源85に接続しても良い。また、アンテナ83の一端側の端子を高周波電源85に接続すると共に、他端側の端子についてはフロート状態に(周囲の導電部から浮いた状態で支持)しても良い。
【0066】
更にまた、プラズマ中のイオンをウエハW側に引き込むにあたって、既述の各例ではファラデーシールド95とバイアス電極120とを容量結合させたが、ウエハWとバイアス電極120との間における静電結合を利用しても良い。即ち、ファラデーシールド95を配置せずに、バイアス電極120に対して高周波電源128から給電した時におけるある瞬間を見ると、図21に示すように、当該バイアス電極120には負の直流電圧が印加されていると言える。即ち、バイアス電極120に対して高周波電源128から電子が供給されて、当該バイアス電極120は負に帯電している。そして、これらバイアス電極120とウエハWとが非接触となっており、また電気的に絶縁されている。また、非励起領域S2では、既述のようにプラズマの発生が阻止されている。そのため、バイアス電極120の上方側にウエハWが到達すると、バイアス電極120の負の直流電圧によって、当該ウエハWには静電誘導により厚み方向における電荷の偏りが生じる。即ち、ウエハW内部の電子は、前記負の直流電圧の斥力によって、ウエハWの表面側に移動する。この電子の移動量(ウエハWの表面側の帯電量)は、ウエハWに対してバイアス電極120の上面が平行となるように配置していることから、ウエハWの面内に亘って揃う。
【0067】
一方、バイアス電極120に対して高周波電源128から高周波電力を供給している別の瞬間を見ると、当該バイアス電極120には正の直流電圧が印加されていると言える。そのため、バイアス電極120に対して、高周波電源128から正の電荷(陽子)が移動しようとする。しかし、既述のように高周波電源128では高周波を使用しており、正の直流電圧と負の直流電圧とが高速で切り替わっている。従って、バイアス電極120に正の直流電圧が印加される時間(高周波電源128から印加される極性が維持される時間)は極めて短い。そして、電子と比べて陽子の質量が3桁程度も大きく、従って陽子は電子よりも移動しにくい。そのため、高周波電源128からバイアス電極120に陽子が到達する前に、当該高周波電源128の極性が切り替わり、一方電子は直ぐにこのバイアス電極120に到達するため、結果としてバイアス電極120は、負に帯電したままとなる。こうしてウエハの表面の負の電荷によって、改質領域S1における正のイオン具体的にはアルゴンイオンがウエハW側に引き寄せられる。
【0068】
このようにバイアス電極120とウエハWとの間の静電結合を利用する場合においても、アンテナ83と改質領域S1との間に既述のファラデーシールド95を配置しても良い。この場合には、アンテナ83のアース側の端子と、バイアス電極120(高周波電源128)のアース側の端子とは、ファラデーシールド95とバイアス電極120とが容量結合しないように、互いに別経路で接地される。また、ファラデーシールド95としては、アースすることに代えて、真空容器1の他の導電部材から電気的にフロート(浮いた)状態となるように保持しても良い。
以上の例において、図21に示すように、高周波電源128に代えて、負の直流電源129を用いても良い。
【0069】
また、以上述べた各例では、プラズマ処理部80としてアンテナ83を巻回して誘導結合型のプラズマ(ICP:Inductively coupled plasma)を発生させたが、容量結合型のプラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を発生させるようにしても良い。この場合には、図22に示すように、プラズマ発生用ガスノズル34に対して回転テーブル2の回転方向下流側に、一対の対向電極170、170が配置される。
【0070】
更に、バイアス電極120の幅寸法tについて、平面で見た時に互いに隣接するウエハW同士の離間寸法dよりも小さくするにあたって、以下のように構成しても良い。図23は、バイアス電極120について、プラズマ発生用ガスノズル34に対して回転テーブル2の回転方向下流側に離間した位置に配置するにあたり、当該ガスノズル34と平行となるように配置した例を示している。従って、バイアス電極120は、回転テーブル2の半径方向に伸びる仮想線と交差するように(前記仮想線と平行にならないように)配置されている。
【0071】
図24は、バイアス電極120について、回転テーブル2の中心側から外縁側に向かうにつれて、平面で見た時に概略拡径するように配置した例を示している。即ち、互いに隣接するウエハW同士の離間寸法dは、回転テーブル2の回転中心側及び外縁側では比較的大きくなっていて、これら回転中心と外縁との間の領域では小さくなっている。言い換えると、前記離間寸法dは、平面で見た時に5枚のウエハWの各々の中心を結んだ円を通る位置にて最も小さくなり、当該位置から回転中心側あるいは外周部側に向かう程大きくなっている。そこで、図24では、バイアス電極120の幅寸法tを当該バイアス電極120の長さ方向に亘って前記離間寸法dより小さく設定しながらも、外縁側に向かうにつれて拡径するように形成している。そのため、回転テーブル2の回転によって前記外縁側にて中心側よりもプラズマ処理の度合いが小さくなろうとしても、回転テーブル2の半径方向におけるプラズマ処理の度合いを揃えることができる。
【0072】
また、図25は、バイアス電極120について、回転テーブル2の回転方向上流側の縁部及び回転テーブル2の回転方向下流側の縁部を各々ウエハWの外縁に沿うように概略円弧状に形成した例を示している。従って、回転テーブル2上のウエハWがバイアス電極120の上方側の領域に進入する時、及び当該領域から抜け出る時のいずれの場合についても、ウエハWの外縁部は、回転テーブル2の半径方向に亘って当該プラズマに接触する。そのため、例えばウエハWの端部にて局所的にバイアス電界が加わることを抑制できる。
これら図24及び図25についても、バイアス電極120は、平面で見た時に互いに隣接する2枚のウエハWに同時に跨らないように形成されている。
【0073】
また、回転テーブル2におけるウエハWの載置枚数としては、既述の例では5枚に設定した例について説明したが、複数枚例えば2枚以上であれば良い。そして、直径寸法をある任意の値に設定した回転テーブル2にウエハWを載置するにあたって、ウエハWの載置枚数が増える程、互いに隣接するウエハW同士の離間寸法dが小さくなっていき、従って互いに隣接する2枚のウエハWに対して同時にバイアス電界が形成されやすくなる。一方、ウエハWの載置枚数が増える程、同時に処理できるウエハWの数量が増加してスループットの向上につながることから、回転テーブル2に載置するウエハWの枚数としては、4枚以上が好ましい。
【0074】
更に、回転テーブル2の中心側から外縁側に向かう方向(半径方向)における前記バイアス電極120の長さ寸法について、ウエハWの直径寸法(300mm)よりも長くなるように形成すると共に、当該ウエハWの直径部分と重なり合うように配置したが、この直径部分の一部だけと重なり合うように配置しても良い。即ち、例えばウエハWの中央部にだけ既述のアスペクト比を持つ凹部が形成されている場合には、回転テーブル2の半径部分における中央部にだけ対向するようにバイアス電極120を配置しても良い。
【0075】
ここで、回転テーブル2の下方側にバイアス電極120を非接触で配置する場合において、当該バイアス電極120の好ましい高さ位置について説明する。回転テーブル2に対してバイアス電極120を離間させて配置するにあたって、回転テーブル2とバイアス電極120とが離間しすぎていると、非励起領域S2にてプラズマ(異常放電)が発生してしまうおそれがある。従って、前記異常放電を抑制するためには、回転テーブル2に対してバイアス電極120をできるだけ近づけた方が良いことは当然である。しかしながら、真空容器1内の加熱温度に応じて、回転テーブル2の熱膨張量が変わるので、バイアス電極120の最適な高さ位置は、処理レシピ毎にまちまちになると言える。また、例えば真空容器1内の真空度に応じて、前記異常放電の起こりやすさが変わる。更に、回転テーブル2の回転数(回転テーブル2のぶれやすさ)、回転テーブル2の下面の加工精度などによっても、バイアス電極120の最適な高さ位置が異なる場合がある。
【0076】
そこで、バイアス電極120について、昇降自在に構成することが好ましい。図26は、このような例を示しており、流路部材127は、真空容器1の下方側において昇降機構720に接続されている。図26中721は流路部材127と真空容器1の底面との間を気密に密閉するためのベローズである。尚、バイアス電極120の上方側に既述の絶縁部材122を設けて、当該バイアス電極120と共に昇降自在に構成しても良いし、あるいはバイアス電極120の表面に例えば石英などの絶縁材を用いてコーティング膜を形成しても良い。
【0077】
以下の表1は、回転テーブル2の下面とバイアス電極120の上面との間の離間距離及びバイアス電極120に供給する高周波電力値を種々変えて、これら回転テーブル2とバイアス電極120との間の領域におけるプラズマの発生状態(電圧)を確認した結果を示している。表1において、薄い灰色を付した部位は条件によっては非励起領域S2にてプラズマが発生した結果、濃い灰色を付した部位は前記領域S2にプラズマが発生した結果を示している。また、白色(灰色以外の場所)は、領域S2にはプラズマが発生しなかった結果を示している。
【0078】
(表1)
【0079】
尚、この表1の実験には、アンテナ83に供給する高周波電力を1500Wに設定すると共に、バイアス電極120には周波数が40MHzの高周波電源129を接続した。また、回転テーブル2の下方側に供給するガスとしては、ArガスとO2ガスとの混合ガス(Ar:700sccm、O2:70sccm)を用いた。
【0080】
この結果、回転テーブル2とバイアス電極120との間の離間寸法が小さい程、非励起領域S2ではプラズマが発生しにくくなることが分かった。また、バイアス用の高周波電力値が小さくなる程、異常放電が抑制されることが分かった。
また、バイアス電極120に接続する高周波電源129の周波数について、3.2MHzに設定したところ、以下の表2に示すように、同様の結果が得られた。
【0081】
(表2)
【0082】
また、このようにバイアス電極120を昇降自在に構成するにあたり、回転テーブル2とバイアス電極120との間の領域(非励起領域S2)に対して不活性ガスを導入することによって、当該領域S2を真空容器1の内部雰囲気よりも高圧にしても良い。また、図示しない真空ポンプから伸びる排気路を当該領域S2にて開口させて、この領域S2を真空容器1の内部領域よりも低圧に設定しても良い。
【0083】
以上説明したシリコン酸化膜を成膜するにあたって用いる第1の処理ガスとしては、以下の表3の化合物を用いても良い。尚、以下の各表において、「原料Aエリア」とは、第1の処理領域P1を示しており、「原料Bエリア」とは、第2の処理領域P2を示している。また、以下の各ガスは一例であり、既に説明したガスについても併せて記載している。
【0084】
(表3)
【0085】
また、表3の第1の処理ガスを酸化するための第2の処理ガスとしては、表4の化合物を用いても良い。
(表4)
尚、この表4における「プラズマ+O2」や「プラズマ+O3」とは、例えば第2の処理ガスノズル32の上方側に既述のプラズマ処理部80を設けて、これら酸素ガスやオゾンガスをプラズマ化して用いることを意味している。
【0086】
また、既述の表3の化合物を第1の処理ガスとして用いると共に、表5の化合物からなるガスを第2の処理ガスとして用いて、シリコン窒化膜(SiN膜)を形成しても良い。
(表5)
尚、この表5における「プラズマ」についても、表4と同様に「プラズマ」の用語に続く各ガスをプラズマ化して用いることを意味している。
【0087】
更に、第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして表6の化合物からなるガスを各々用いて、炭化シリコン(SiC)膜を成膜しても良い。
(表6)
【0088】
更にまた、上に挙げた表6の第1の処理ガスを用いて、シリコン膜(Si膜)を成膜しても良い。即ち、この場合には第2の処理ガスノズル32が設けられておらず、回転テーブル2上のウエハWは、第1の処理領域(成膜領域)P1と改質領域S1とを分離領域Dを介して交互に通過することになる。そして、第1の処理領域P1においてウエハWの表面に第1の処理ガスの成分が吸着して吸着層が形成されると、回転テーブル2によって回転する間に、ヒータユニット7の熱によってウエハWの表面にて吸着層が熱分解を起こして水素や塩素などの不純物が脱離していく。従って、吸着層の熱分解反応によって反応層301が形成されていく。
【0089】
しかしながら、回転テーブル2が鉛直軸周りに回転していることから、回転テーブル2上のウエハWが第1の処理領域P1を通過した後、改質領域S1に至るまでの時間、即ち吸着層から不純物を排出するための時間は極めて短い。そのため、改質領域S1に到達する直前のウエハWの反応層301には、依然として不純物が含まれている。そこで、改質領域S1において例えばアルゴンガスのプラズマをウエハWに供給することにより、反応層301から不純物が除去されて、良好な膜質の反応層301が得られる。こうして領域P1、S1を交互に通過させることにより、反応層301が多層積層されてシリコン膜が成膜される。従って、本発明において「プラズマ改質処理」とは、反応層301から不純物を除去して当該反応層301の改質を行う処理の他に、吸着層を反応(熱分解反応)させるための処理も含まれる。
【0090】
シリコン膜のプラズマ処理に用いるプラズマ発生用ガスとしては、ウエハWに対してイオンのエネルギーを与えるプラズマを発生させるガスが用いられ、具体的には既述のアルゴンガスの他に、ヘリウム(He)ガスなどの希ガスあるいは水素ガスなどが用いられる。
【0091】
また、シリコン膜を形成する場合には、第2の処理ガスとして表7のドープ材を用いて、ホウ素(B)やリン(P)を当該シリコン膜にドープしても良い。
(表7)
【0092】
また、以下の表8に示す化合物からなるガスを第1の処理ガスとして用いると共に、既述の第2の処理ガスを用いることにより、金属酸化膜、金属窒化膜、金属炭化膜あるいはHigh−k膜(高誘電率膜)を形成しても良い。
(表8)
【0093】
また、プラズマ改質用ガスあるいは当該プラズマ改質用ガスと共に用いるプラズマイオン注入ガスとしては、以下の表9の化合物からなるガスのプラズマを用いても良い。
(表9)
尚、この表7において、酸素元素(O)を含むプラズマ、窒素元素(N)を含むプラズマ及び炭素元素(C)を含むプラズマについては、酸化膜、窒化膜及び炭化膜を成膜するプロセスだけに夫々用いても良い。
【0094】
また、以上説明したプラズマ改質処理は、回転テーブル2が回転する度に、即ち反応層301を成膜する度に行ったが、例えば10〜100層の反応層301を積層する度に行っても良い。この場合には、成膜開始時にはプラズマ高周波電源85、128への給電を停止しておき、回転テーブル2を反応層301の積層数分だけ回転させた後、ノズル31、32へのガスの供給を停止すると共に、これらプラズマ高周波電源85、128に対して給電してプラズマ改質を行う。その後、再度反応層301の積層とプラズマ改質とを繰り返す。
【0095】
更にまた、既に薄膜が形成されたウエハWに対してプラズマ改質処理を行っても良い。この場合には、真空容器1内には、各ガスノズル31、32、41、42は設けられずに、プラズマ発生用ガスノズル34、回転テーブル2及びバイアス電極120などが配置される。このように真空容器1内でプラズマ改質処理だけを行う場合であっても、バイアス空間S3によって凹部10内にプラズマ(イオン)を引き込むことができるので、当該凹部10の深さ方向に亘って均一なプラズマ改質処理を行うことができる。
【0096】
更にまた、ウエハWに対して行うプラズマ処理としては、改質処理に代えて、処理ガスの活性化を行っても良い。具体的には、既述の第2の処理ガスノズル32にプラズマ処理部80を組み合わせると共に、当該ノズル32の下方側にバイアス電極120を配置しても良い。この場合には、ノズル32から吐出する処理ガス(酸素ガス)がプラズマ処理部80にて活性化されてプラズマが生成し、このプラズマがウエハW側に引き込まれる。従って、凹部10の深さ方向に亘って、反応層301の膜厚や膜質を揃えることができる。
【0097】
このように処理ガスをプラズマ化する場合であっても、処理ガスのプラズマ化と共に、既述のプラズマ改質処理を行っても良い。また、処理ガスをプラズマ化する具体的なプロセスとしては、既述のSi−O系の薄膜の成膜以外にも、例えばSi−N(窒化シリコン)系の薄膜に適用しても良い。このSi−N系の薄膜を成膜する場合には、第2の処理ガスとして窒素(N)を含むガス例えばアンモニア(NH3)ガスが用いられる。
【符号の説明】
【0098】
W ウエハ
1 真空容器
2 回転テーブル
P1、P2 処理領域
S3 バイアス空間
10 凹部
31、32、34 ガスノズル
80 プラズマ処理部
83 アンテナ
95 ファラデーシールド
120 バイアス電極
85、128 高周波電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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