特許第5971178号(P5971178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許5971178太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び太陽電池モジュール
<>
  • 特許5971178-太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び太陽電池モジュール 図000012
  • 特許5971178-太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び太陽電池モジュール 図000013
  • 特許5971178-太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び太陽電池モジュール 図000014
  • 特許5971178-太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び太陽電池モジュール 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971178
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20160804BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-84803(P2013-84803)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2013-243347(P2013-243347A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-97424(P2012-97424)
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】大和田 寛人
(72)【発明者】
【氏名】降籏 智欣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 厚雄
(72)【発明者】
【氏名】金 亨培
(72)【発明者】
【氏名】山川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 篤
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−254009(JP,A)
【文献】 特開2004−186168(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047892(WO,A1)
【文献】 特表2007−527109(JP,A)
【文献】 特開2006−286893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を入射する表面ガラスと太陽光入射の反対側に配置される裏面シート又は裏面ガラスの間に介装する太陽電池セルを封止する太陽電池モジュール用シリコーン封止材であって、該シリコーン封止材が、
(A)下記平均組成式(1)
aR’bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
で表される一分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対してケイ素
原子に結合した水素原子が0.4〜2.5倍モルとなる量、
(C)付加反応触媒 触媒量
を含んでなり、かつ該シリコーン封止材の硬化物の40℃・1mm厚みにおける水蒸気透過率が80g/m2・day以上であってその弾性率が0.1〜5.0MPaであることを特徴とする太陽電池モジュール用シリコーン封止材。
【請求項2】
(A)成分が、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンと、直鎖状のジオルガノポリシロキサンと分岐鎖状あるいは三次元網状のレジン状のオルガノポリシロキサンとの混合物であって、その直鎖状のジオルガノポリシロキサンとレジン状のオルガノポリシロキサンとの配合割合がそれぞれ質量比で60:40〜100:0である請求項1に記載される太陽電池モジュール用シリコーン封止材。
【請求項3】
(B)成分が、下記平均組成式(2)
c3dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、c及びdは、0<c<2、0.8≦d≦2かつ0.8<c+d≦3となる数であり、また、一分子中のケイ素原子の数は、2〜10個である。)
で表される請求項1又は2に記載される太陽電池モジュール用シリコーン封止材。
【請求項4】
(B)成分の少なくとも一部に、一分子中にエポキシ基及び/又はアルコキシ基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載される太陽電池モジュール用シリコーン封止材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載されるシリコーン封止材を用いてなる太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び該封止材を用いてなる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光を利用したエネルギー資源として、太陽光発電に対する関心が高まってきている。ここで太陽電池の発電素子は、一般的にシリコン等の半導体からなり、太陽電池モジュールは、個々の太陽電池セルを電気的に相互接続した状態で、受光面ガラス基板等に積載される。
【0003】
その際、太陽電池セルに光が当たる表面又は裏面側は、封入材料で覆われることにより、外的環境、例えば、雨、風、雪、埃等から保護されることになる。封入材料として一般的には、低コスト等の観点からエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用されている。
【0004】
例えば、特開2000−183385号公報(特許文献1)には、太陽電池モジュールに、封止材として酢酸ビニル含有率が10〜30質量%であるEVAの太陽電池封止材の使用が記載されている。しかしながら、封止材としてEVAを使用した場合、特に高温高湿環境下において酢酸が発生するため、この発生酢酸が原因となって、太陽電池セル電極を腐食するなどの影響により、発電性能が劣化するという問題があった。特に、太陽電池は数十年単位の長期使用が期待されるため、経時劣化は保証の観点から早急な解消が望まれていた。
またEVAは、上記問題に留まらず、UV耐性が低く、長期間屋外に暴露されることにより変色が生じ、黄色あるいは褐色となるために、外観を損ねるという問題もあった。
【0005】
これらの問題が生じない封止材として、シリコーンが挙げられる。例えば、シリコーンを封止材として使用した場合、酢酸の発生がないことにより電極腐食が抑えられるだけでなく、黄色又は褐色の変色問題も解消される。例えば、Barry Ketolaら(非特許文献1)によれば、シリコーンを太陽電池モジュール封止材として適用した場合の性能が記されている。
【0006】
一般に、太陽電池の長期使用を検討する際、高温高湿環境を形成したチャンバーの中に太陽電池モジュールを設置し、一定時間暴露することで劣化を加速、進行させ、不具合箇所の特定、劣化メカニズムを検証することが行われる。例えば、特開2007−329404号公報(特許文献2)には封止材としてEVAを使用した場合、温度121℃、湿度100%、2気圧の環境条件で240時間のプレッシャークッカー試験を行い、試験後の酢酸発生量にて太陽電池モジュールの耐久性を評価する方法が記されている。
【0007】
しかし、封止材としてシリコーンを用いた場合、上記にあるような加速劣化試験の適用例がなく、どのようなシリコーンが太陽電池の長期使用に適するのか未だ明らかにされていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−183385号公報
【特許文献2】特開2007−329404号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Barry Ketola,Keith R.McIntoch,Ann Norris,Mary Kay Tomalia,”Silicone For Photovoltaic Encapsulation”:23rd European Photovoltaic Solar Energy Conference 2008,pp.2969−2973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、太陽光を入射させる表面ガラスと太陽光入射の反対側に配置される裏面シート又は裏面ガラスの間に介装する太陽電池セルを封止してなる太陽電池モジュールに係り、長期屋外暴露環境に耐え得る高信頼性の太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び該封止材を用いてなる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、太陽光を入射させる表面ガラスと太陽光入射の反対側に配置される裏面シート又は裏面ガラスの間に介装する太陽電池セルをシリコーン封止材で封止してなる太陽電池モジュールであって、該シリコーン封止材が、
(A)下記平均組成式(1)
aR’bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
で表される一分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対してケイ素
原子に結合した水素原子が0.4〜2.5倍モルとなる量、
(C)付加反応触媒 触媒量
を含んでなり、かつ該シリコーン封止材の硬化物の40℃・1mm厚みにおける水蒸気透過率が80g/m2・day以上であってその弾性率が0.1〜5.0MPaであることを特徴とする太陽電池モジュール用シリコーン封止材を提供する。また、本発明はかかるシリコーン封止材を用いてなる太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期屋外暴露環境に耐え得る高信頼性の太陽電池モジュール用シリコーン封止材及び該封止材を用いてなる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係る太陽電池モジュール作製における第一工程の太陽電池モジュールの一部省略断面図である。
図2】本発明の一実施例に係る太陽電池モジュール作製における第二工程の太陽電池モジュールの一部省略断面図である。
図3】本発明の一実施例に係る太陽電池モジュール作製における第三工程の太陽電池モジュールの一部省略断面図である。
図4】本発明の一実施例に係る太陽電池モジュール作製における第四工程の太陽電池モジュール(完成品)の一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、図4に示したように、太陽光を入射させる表面ガラス2と太陽光入射の反対側に配置される裏面シート又は裏面ガラス6との間に介装する太陽電池セル4を封止する太陽電池モジュール用シリコーン封止材(熱硬化性シリコーン樹脂組成物)3,5を提供し、更に該封止材を用いてなる太陽電池モジュール1を提供するものである。
【0015】
ここで、上記太陽電池モジュール用シリコーン封止材は、以下の(A)〜(C)成分を含んでなる熱硬化性シリコーン樹脂組成物である。
熱硬化性シリコーン樹脂組成物
【0016】
[(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、この組成物のベースポリマーであり、下記平均組成式(1)で表される、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するものである。
aR’bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
【0017】
このようなアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、一分子中に平均2個以上(通常2〜50個)、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個程度のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する。(A)成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基Rとしては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の炭素数2〜10、特に2〜8のものが挙げられ、特に、ビニル基が好ましい。アルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。
【0018】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基R’としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられるが、耐UV特性を鑑みると、特に、メチル基が好ましい。
【0019】
このようなアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等が挙げられるが、基本的に主鎖がジオルガノシロキサン単位(D単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサン、直鎖状のジオルガノポリシロキサンと分岐鎖状あるいは三次元網状のオルガノポリシロキサンの混合物であることが好ましい。
【0020】
この場合、レジン状(分岐鎖状、三次元網状)のオルガノポリシロキサンとしては、アルケニル基を含むM単位やD単位とSiO4/2単位(Q単位)及び/又はR’’SiO3/2(T単位)(R’’は上記R又はR’である。)を含有するオルガノポリシロキサンであれば特に制限されないが、SiO4/2単位(Q単位)と、RR’2SiO1/2単位やR’3SiO1/2単位等のM単位からなり、M/Qのモル比が0.6〜1.2であるレジン状オルガノポリシロキサンや、T単位とM単位及び/又はD単位からなるレジン状オルガノポリシロキサン等が例示される。
【0021】
直鎖状オルガノポリシロキサンとレジン状オルガノポリシロキサンの好ましい配合割合は、質量比で好ましくは60:40〜100:0、特に好ましくは80:20〜100:0である。レジン状のオルガノポリシロキサンを40質量%を超えて添加すると、粘度が高くなり取扱性が悪化するおそれがある。
【0022】
式(1)中、aは、0<a≦2、好ましくは0.001≦a≦1、bは、0<b<3、好ましくは0.5≦b≦2.5、a+bは、0<a+b≦3、好ましくは0.5≦a+b≦2.7を満たす数である。
【0023】
このような(A)成分の25℃における粘度は、得られるシリコーンゴムの物理的特性や組成物の取扱作業性が良好であることを考慮すると、100〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に400〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。直鎖状オルガノポリシロキサンにレジン状オルガノポリシロキサンを併用する場合は、レジン状オルガノポリシロキサンは直鎖状オルガノポリシロキサンに溶解するため、混合して均一な状態での粘度とする。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定することができる。
【0024】
このような(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R13SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R122SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R12SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R13SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R122SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R122SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R12SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R12SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R1SiO3/2で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0025】
なお、上記式中のR1はアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。また、上記式中のR2はアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基等が挙げられる。
【0026】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば、3〜150個程度)、より好ましくは3〜100個程度のケイ素原子に結合した水素原子(すなわち、SiH基)を含有するものであり、直鎖状、分岐状、環状、あるいは三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。
【0027】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
c3dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、c及びdは、0<c<2、0.8≦d≦2かつ0.8<c+d≦3となる数であり、好ましくは0.05≦c≦1、1.5≦d≦2かつ1.8≦c+d≦2.7となる数である。また、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、2〜100個、特に3〜50個が好ましい。)
【0028】
式(2)中、R3の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、前記のR’として例示したものと同様のものが挙げられるほか、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が挙げられるが、好ましくはフェニル基等の芳香族基を含まないものであり、代表的なものは炭素数が1〜10、特に炭素数が1〜7のものであり、好ましくはメチル基等の炭素数1〜3の低級アルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、特に好ましくはメチル基、メトキシ基、エトキシ基である。
【0029】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R32(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR33SiO1/2単位、R32SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(但し、R3は前記と同じである)等の他、これらの例示化合物においてメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換したものなどが挙げられ、更には下記式
【化1】

(式中、R3は前記と同じであり、s、tはそれぞれ0又は1以上の整数である。)
等で表されるものが挙げられる。
【0030】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の方法で得ることができ、例えば、一般式:R3SiHCl2及びR32SiHCl(式中、R3は前記と同じである)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを(共)加水分解し、あるいは該クロロシランと一般式:R33SiCl及びR32SiCl2(式中、R3は前記と同じである)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを組み合わせて共加水分解し、縮合することにより得ることができる。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、このように(共)加水分解縮合して得られたポリシロキサンを平衡化したものでもよい。
また、接着性をより向上させるために、(B)成分の少なくとも一部に、一分子中にエポキシ基及び/又はアルコキシ基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることが好ましい。例えば、エポキシ基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記のものが挙げられる。
【0031】
【化2】
【0032】
更に、下記のアルコキシシリル基含有シロキサンが挙げられる。
【化3】

(式中、R4はメチル基、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0以上、特に0〜40の整数、nは2以上、特に2〜20の整数、pは1以上の整数、特に1〜10、q、rは1〜3の整数である。)
【0033】
【化4】
【0034】
(B)成分は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。(B)成分の配合量は、(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対してケイ素原子に結合した水素原子が0.4〜2.5倍モル、特に0.7〜1.8倍モルとなる量であり、通常(A)成分100質量部に対し0.5〜50質量部、特に1〜30質量部である。
【0035】
[(C)付加反応触媒]
本発明に用いる付加(ヒドロシリル化)反応触媒は、前記アルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子(すなわち、SiH基)との付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として白金族金属系触媒等の周知の触媒が挙げられる。
【0036】
白金族金属系触媒としては、ヒドロシリル化反応触媒として公知のものが全て使用できる。例えば、白金黒、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・yH2O、H2PtCl6・yH2O、NaHPtCl6・yH2O、KHPtCl6・yH2O、Na2PtCl6・yH2O、K2PtCl4・yH2O、PtCl4・yH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・yH2O(式中、yは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。
【0037】
これらの中で、好ましいものとして、相溶性の観点及び塩素不純物の観点から、塩化白金酸をシリコーン変性したものが挙げられ、具体的には例えば塩化白金酸をテトラメチルジビニルジシロキサンで変性した白金触媒が挙げられる。
【0038】
白金族金属系触媒の配合量は、触媒量であり、(A)〜(C)成分の合計質量に対する白金原子質量換算で0.1〜500ppm、好ましくは0.5〜100ppm、より好ましくは1〜50ppmである。
【0039】
また、本組成物には接着性を更に向上させるためにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤等が例示される。シランカップリング剤を配合する場合、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部、特に0.5〜10質量部であることが好ましい。
【0040】
更に必要に応じ、上記成分の機能を損なわない範囲で付加反応制御剤等、その他の公知の添加成分を配合してもよい。
【0041】
本組成物は、上記成分を常法に準じて混合することにより調製することができる。その際に、混合される成分を必要に応じて2パート又はそれ以上のパートに分割して混合してもよく、例えば、(A)成分の一部及び(C)成分からなるパートと、(A)成分の残部及び(B)成分からなるパートとに分割して混合することも可能である。
【0042】
このような組成物からなるシリコーン封止材は、その硬化物の架橋密度が上がるにつれて水蒸気透過率が下がる特徴を有している。その中で、1mm厚みの硬化物の40℃における水蒸気透過率が80g/m2・day以上であるものを使用した場合、太陽電池モジュールの経時での特性低下を大きく抑制することが可能である。すなわち、シリコーン封止材の硬化物が水蒸気を通したとしても、モジュールとの界面においてその存在量は最低限に抑えられ、太陽電池セルの致命的な劣化を引き起こさないということが明らかとなった。また、シリコーン封止材の硬化物自身も水分を溜め込まないことから、封止材の硬化物の外側の雰囲気によっては過剰な水蒸気を放出するという特徴も有効であったと考えられる。なお、水蒸気透過率のより好ましい範囲は80〜160g/m2・day、更に好ましくは80〜120g/m2・dayである。
【0043】
ジメチルシロキサンを骨格とするシリコーン硬化物について1mm厚みで40℃における水蒸気透過率は、弾性率が0.7MPaのもので155g/m2・day、3MPaのもので110g/m2・day、9MPaのもので40g/m2・dayとなっている。この結果より、弾性率を下げることで更に水蒸気透過率を上げることも可能であると考えられるが、弾性率を0.1MPa未満とした場合、封止材の硬化物自身の形状維持が困難となったり、モジュール裏面(バックシート側)からの不意の外力によってセルにクラックが生じるおそれがある。
【0044】
反対に、水蒸気透過率を下げるようにシリコーン封止材の硬化物の弾性率を上げた場合、シリコーン封止材の機械的強度は上昇する。しかし、温度変動による伸縮の影響で、セル電極上のタブ線に応力を与え、セル電極上のタブ線を剥離させることでモジュール発電効率を低下させるおそれがある。
【0045】
シリコーン封止材の硬化物の水蒸気透過率及び弾性率は、(A)成分と(B)成分の反応部位数を変化させることで達成される。すなわち、(A)成分についてR13SiO1/2、R122SiO1/2、R12SiO2/2、(B)成分について、R33SiO1/2単位、R32SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位からなるものは高水蒸気透過率、低弾性率となり、(A)成分、(B)成分中にR1SiO3/2、SiO4/2、(H)SiO3/2単位を導入すると低水蒸気透過率、高弾性率となる。
【0046】
このようなシリコーン封止材を太陽電池モジュールに使用する場合、弾性率が0.1MPaを下回ると、封止材の硬化物自身の形状が維持できず適当でない。従って、自ずと0.1MPa以上が必要条件となる。また弾性率が上がると、それに応じて水分透湿性が下がり、水分を伴う加速試験においては有効な部分もあるが、温度サイクル試験等においては、電極に大きな応力が加わることでモジュール特性を劣化させることがある。弾性率が5.0MPaを超えると、電極に加わる応力緩和ができず電極部にクラック等を発生させることがある。弾性率が5.0MPaである場合、シリコーン樹脂の水蒸気透過率は80g/m2・dayである。従って、本発明において、封止材の硬化物の弾性率は0.1〜5.0MPa、特に0.1〜3.0MPaであることが好ましい。
【0047】
本発明では、上記熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物を太陽電池モジュール用シリコーン封止材として使用するに際し、水蒸気透過率が80g/m2・day以上で、好ましくは弾性率が0.1〜5.0MPaを満たすようにすることによって、長期屋外暴露環境に耐え得る高信頼性の太陽電池モジュールが得られるものである。
特に、加速劣化試験として、プレッシャークッカー試験の他、温度サイクル試験、結露凍結試験を取り上げ、上記シリコーン封止材の硬化物がこれらの試験に耐え得るよう、上記物性値の範囲を満足するように予めシリコーン封止材を構成するそれぞれの成分の配合量にフィードバックをかけることが好ましい。
【0048】
上記、プレッシャークッカー試験として、温度125℃、湿度100%、2気圧、暴露時間100時間で太陽電池モジュールを暴露させると、弾性率が0.1MPa以上の物性である場合、モジュール効率の低下が確認されない。
【0049】
例えば、温度サイクル試験として、IEC61215規格に準じた温度プロファイル条件、すなわち、85℃〜−40℃の温度変動を1サイクル(6時間)とし、200サイクル暴露すると、封止材の硬化物の弾性率が大きいEVA等では、セル電極上のタブ線に大きな応力を与え、セル電極上のタブ線が剥離するなどでモジュール発電効率を低下させることがある。
【0050】
同様に、結露凍結試験として、IEC61215規格に準じた温湿度プロファイル条件、すなわち85℃、85RH%から−40℃の温度変動を1サイクルとし、10サイクル暴露すると、セル電極上のタブ線に大きな応力を与え、セル電極上のタブ線が剥離する現象が見られる他、封止材の硬化物がセル表面から剥離するデラミネーションが発生するなどで、モジュール発電効率や外観を低下させることがある。
【0051】
この場合においても、封止材の硬化物の弾性率が大きいEVA等では、セル電極上のタブ線の剥離等が特に出やすい。
封止材がシリコーン樹脂の場合においては、硬化後のシリコーン樹脂が、水蒸気透過率が80g/m2・day以上、また弾性率0.1MPa以上5.0MPa以下の範囲内のいずれかであれば、このような現象は確認されない。
従って、上記熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物を太陽電池モジュール用シリコーン封止材として使用するに際し、該硬化物が、水蒸気透過率が80g/m2・day以上、また弾性率0.1MPa以上5.0MPa以下のいずれかの物性を満たすようにしておくことにより、上記加速劣化試験のいずれかに対してもバランスのよいものとなる。
【0052】
本発明の太陽電池モジュールは、上記シリコーン封止材を用いてなるもので、例えば、図1〜4に示される第一工程〜第四工程の太陽電池モジュールの断面図のように作製することができる。
【0053】
太陽電池モジュール
先ず、図1(第一工程)のように、太陽光を入射させる表面ガラス2上にシリコーン封止材(熱硬化性シリコーン樹脂組成物)3を塗布し、温度80〜150℃、硬化時間1〜30分で熱硬化させ、図2(第二工程)のように、その上に予め個々の太陽電池セル4を電気的に接続して組みセルとしたセル・ストリングスを載置する。このとき、上記熱硬化性シリコーン樹脂組成物3は、完全に熱硬化させずに部分的に硬化した状態を保っていてもよい。次に、図3(第三工程)のように、セル・ストリングスの上に更にシリコーン封止材(熱硬化性シリコーン樹脂組成物)5を塗布することによって、セル・ストリングスを上記熱硬化性シリコーン樹脂組成物3,5又はその硬化物中に封入し、最後に、図4(第四工程)のように、その上に太陽光入射の反対側となる裏面シート又は裏面ガラス6を載置すると共に、再び、温度80〜150℃、硬化時間1〜30分で熱硬化させ、太陽電池セル4を完全に封止した太陽電池モジュール1とする。
【0054】
ここで、第一工程及び第三工程で使用されるシリコーン封止材(熱硬化性シリコーン樹脂組成物)3,5には、予め、最後に得られるそれらの硬化物が、水蒸気透過率80g/m2・day以上、また弾性率0.1MPa以上5MPa以下のいずれかの物性を満たすように、上述した(A)〜(C)成分を所定の配合の範囲内で調製されたものが使用される。これは、予め少量バッチの熱硬化性組成物を作製し、上記物性を測定することにより容易に確認することができる。なお、水蒸気透過率は、水蒸気透過度計L80−5000を用いて40℃下で測定を行い、また、弾性率はTMA等、−40℃〜120℃、通常25℃の下、公知の測定方法(JIS K7129A法)によって測定することができる。
【0055】
また、最後に上記物性の硬化物が得られさえすればよいので、第一工程及び第三工程で使用される熱硬化性シリコーン樹脂組成物3,5は、上述した(A)〜(C)成分を所定の配合の範囲内で調製されたものである限り、それぞれ別の組成物としても同一の組成物としても構わない。
【0056】
熱硬化性シリコーン樹脂組成物の塗布は、スプレーコーティング、フローコーティング、カーテンコーティング、スクリーンコーティング、流し込み及びそれらの組み合わせ等、公知の塗布方法を使用することができる。また、熱硬化性シリコーン樹脂組成物の塗布厚さは、10〜1,000μm、好ましくは50〜800μm、更に好ましくは100〜600μmとなるようにする。これは、10μmより薄いと太陽電池セル又は太陽電池セル・ストリングスの厚みを吸収することができなくなる可能性があり、また、1,000μmより厚いと硬化性シリコーン材料のコスト高となるからである。
【0057】
このようにして塗布された熱硬化性シリコーン樹脂組成物の熱硬化には、ホットプレート、オーブン等、公知の加熱器具又は装置が使用される。加熱温度及び加熱処理時間も必ずしも上記のみに限定されず、必要に応じてポスト加熱を追加しても構わない。
【0058】
太陽電池モジュールを構成するパーツについて述べる。太陽光を入射させる側の表面ガラス2としては、青板硝子、白板硝子又は強化硝子等が使用され、その他、合成樹脂材として、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又はエポキシ樹脂等の有機系ガラスも使用することができる。
【0059】
太陽光入射と反対側となる裏面には、上記表面ガラス2と同様のガラスの他、フッ素樹脂やPET樹脂からなるTPT等のバックシートも使用することができる。また、太陽電池モジュール内に生じる部分的なホットスポット現象を緩和するため、銅、アルミニウム、鉄等の金属シート、シリカを初め、酸化チタン、アルミナ、窒化アルミニウムなど高い熱伝導性を有する材料を合成樹脂に担持した複合材料シート等を使用してもよい。
【0060】
また、必要に応じて、上述した太陽電池モジュール1(図4参照)の外縁部を、衝撃、風圧又は積雪に対する強度や耐候性を確保するため、軽量性を備えたアルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属フレームで覆ってもよい。
【0061】
更に、上記太陽電池モジュールの外縁部と上記金属フレームの間にできる空間をブチルゴム等のふち取り封止材料で封止してもよい。なお、この封止方法は公知の方法による。
【0062】
太陽電池セルは、一般的な単結晶シリコン又は多結晶シリコンのうちから選ばれる1種もしくは2種のシリコン半導体を用いてなるもので、太陽電池セル・ストリングスは、ここでは、上記太陽電池セルをタブ線で接続し組みセルとしたものである。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0064】
太陽電池モジュールの作製
図1のように、340mm×360mmの厚さ3.2mmの白板強化ガラス2上に第1の熱硬化性シリコーン樹脂組成物3をフローコーティングにより600μmの厚さで塗布した後、100℃のオーブンに投入し10分間の硬化時間で硬化させた。次に、図2のように、硬化させたシリコーン樹脂3の上にシリコン単結晶太陽電池セル4を2直×2並の組みセルにしたセル・ストリングスを載置した。次いで、図3のように、セル・ストリングス上に第2の熱硬化性シリコーン樹脂組成物5をフローコーティングにより100μmの厚さで塗布した後、更に図4に示すように、上部から縦340mm×横360mm×厚3.2mmの白板強化ガラス6を載置し、100℃のオーブンに投入し10分間の硬化時間で硬化させ、太陽電池モジュール1を完成させた。
【0065】
太陽電池モジュールの評価
得られた太陽電池モジュール1の初期の発電効率を測定するとともに、太陽電池モジュール1を2気圧、125℃、100RH%のプレッシャークッカー試験器に投入し、100時間経過後の発電効率を測定し、両者の発電効率差を求めた。
【0066】
温度サイクル試験として、IEC61215規格に準じた温度プロファイル条件、すなわち、85℃〜−40℃の温度変動を1サイクル(6時間)とし、200サイクル実施することとし、同様に太陽電池モジュール1の初期に対する温度サイクル試験後の発電効率差を求めた。
【0067】
また、結露凍結試験については、IEC61215規格に準じた温湿度プロファイル条件、すなわち85℃、85RH%から−40℃の温度変動を1サイクルとし、10サイクル実施することとし、同様に太陽電池モジュール1の初期に対する結露凍結試験後の発電効率差を求めた。
【0068】
[実施例1〜3、比較例1,2]
熱硬化性シリコーン樹脂組成物3,5に、これまで述べた配合範囲の(A)〜(C)成分を含む硬化後の弾性率が0.05、0.1、1、5、9(MPa)の5種類のメチル系シリコーン樹脂を使用したときの評価結果を表1〜3に示す。なお、それぞれの条件の水蒸気透過率は、弾性率が低い順から順に、165、160、145、80、40g/m2・dayである。
ここで、実施例1〜3、比較例1,2の組成は以下の通りである。
【0069】
実施例1
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が1,000mPa.sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.012mol/100gであるジメチルポリシロキサン100質量部と、白金原子として1wt%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05質量部、付加反応制御剤として1−エチニル−1−ヘキサノール0.01質量部を加え、均一に混合した後、側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.0055mol/g)0.15質量部、末端にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.001mol/g)8質量部を混合し、100℃で1時間加熱硬化させた。この硬化物の弾性率は0.1MPaであった。
【0070】
実施例2
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が1,000mPa.sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.012mol/100gであるジメチルポリシロキサン100質量部、(CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位及びSiO2単位からなる樹脂質共重合体[〔(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位との合計〕/SiO2単位=0.8(モル比)、ビニル基含有量=0.0085mol/g]25質量部、白金原子として1wt%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.06質量部、付加反応制御剤として1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン0.1質量部を混合した後、下記式で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン16質量部を均一に混合し、100℃で1時間加熱硬化させた。この硬化物の弾性率は1MPaであった。
【化5】
【0071】
実施例3
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が5,000mPa.sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.006mol/100gであるジメチルポリシロキサン100質量部、(CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位及びSiO2単位からなる樹脂質共重合体[〔(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位との合計〕/SiO2単位=0.8(モル比)、ビニル基含有量=0.0085mol/g]100質量部、白金原子として1wt%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.2質量部、付加反応制御剤として1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン0.8質量部、1−エチニル−1−ヘキサノール0.08質量部を混合した後、側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.015mol/g)8質量部、及び下記式で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン1.5質量部を均一に混合し、100℃で1時間、続いて150℃で1時間加熱硬化させた。この硬化物の弾性率は5MPaであった。
【化6】
【0072】
比較例1
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が1,000mPa.sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.012mol/100gであるジメチルポリシロキサン100質量部と、分子鎖の片末端がビニルジメチルシロキシ基で封止された、23℃における粘度が1,000mPa.sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.0035mol/100gであるジメチルポリシロキサン60質量部、白金原子として1wt%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05質量部、付加反応制御剤として1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン0.005質量部を加え、均一に混合した後、側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.0055mol/g)0.15質量部、末端にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.001mol/g)12質量部を混合し、100℃で1時間加熱硬化させた。この硬化物の弾性率は0.05MPaであった。
【0073】
比較例2
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が60mPa.sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.06mol/100gであるジメチルポリシロキサン100質量部、(CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位及びSiO2単位からなる樹脂質共重合体[〔(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位との合計〕/SiO2単位=0.8(モル比)、ビニル基含有量=0.0085mol/g]300質量部、白金原子として1wt%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.6質量部、付加反応制御剤兼硬度調整剤として1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン12.5質量部を混合した後、側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.015mol/g)40質量部、及び下記式で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン20質量部を均一に混合し、100℃で1時間、続いて150℃で1時間加熱硬化させた。この硬化物の弾性率は9MPaであった。
【化7】
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【符号の説明】
【0077】
1 太陽電池モジュール
2 表面ガラス
3 熱硬化性シリコーン樹脂組成物(シリコーン封止材)
4 太陽電池セル
5 熱硬化性シリコーン樹脂組成物(シリコーン封止材)
6 裏面シート又は裏面ガラス
図1
図2
図3
図4