(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザ光を出射する半導体レーザ素子と、前記レーザ光により励起される蛍光体を含む波長変換部材と、貫通孔を形成する内壁を有し前記内壁において前記波長変換部材を支持する支持部材と、を備える発光装置であって、
前記支持部材の内壁は、光入射側から光出射側に向かって順に、前記レーザ光の光軸と前記内壁とが第1角度をなす第1傾斜面と、前記レーザ光の光軸と前記内壁とが前記第1角度よりも大きい第2角度をなす第2傾斜面と、を有し、
前記波長変換部材は、その底部が前記貫通孔の光入射側端部よりも光出射側にあり、光入射側から光出射側に向かって順に、少なくとも前記第2傾斜面において固定された固定領域と、前記レーザ光の光軸と垂直をなす方向において前記第2傾斜面から離間した離間領域と、を有する、ことを特徴とする発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、発光装置を例示するものであって、本発明は、発光装置を以下のものに特定しない。また、特定的な記載がない限りは、構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0008】
<第1実施形態>
図3に、第1実施形態に係る発光装置100の概略図を示す。
図1は、発光装置100に用いられる光部品60、光ファイバ40及び先端部材50の関係を説明するための断面図である。また、
図2は光部品60の斜視図であり、
図2のX−Xにおける端面図が
図1に相当する。
【0009】
発光装置100は、レーザ光を出射する半導体レーザ素子11と、レーザ光により励起される蛍光体を含む波長変換部材62と、貫通孔61を形成する内壁を有し内壁において波長変換部材62を支持する支持部材66と、を備える。支持部材66の内壁は、光入射側から光出射側に向かって順に、レーザ光の光軸69と支持部材66の内壁とが第1角度67aをなす第1傾斜面67と、レーザ光の光軸69と支持部材66の内壁とが第1角度67aよりも大きい第2角度68aをなす第2傾斜面68と、を有する。さらに、波長変換部材62は、その底部が貫通孔61の光入射側端部よりも光出射側にあり、光入射側から光出射側に向かって順に、波長変換部材62が貫通孔61の光入射側端部から離間するように少なくとも第2傾斜面68において固定された固定領域62Aと、レーザ光の光軸69と垂直をなす方向において波長変換部材62が第2傾斜面68から離間した離間領域62Bと、を有している。
【0010】
これにより、光取り出し効率及び配光特性に優れた発光装置とすることができる。以下、この点について説明する。
【0011】
波長変換部材62は貫通孔61の内部に配置されるが、貫通孔61の光入射側端部(
図1における貫通孔の最下方の開口部)まで波長変換部材62が設けられていると、光取り出し効率が低下してしまう。これは、波長変換部材62の底部あるいはその近傍の蛍光体粒子にレーザ光が当たった際に、一部の光が半導体レーザ素子11側に戻ってしまう(以下、このような光を「戻り光」という。)からである。これを抑制するには、光入射側から光出射側に向かって開口部が大きくなるように貫通孔61を傾斜させ、かつ、貫通孔61の光入射側端部から波長変換部材62の底部を光出射側に離間させればよい(つまり、波長変換部材62の底部が貫通孔61の途中に位置するように構成すればよい)。これにより、たとえ戻り光が生じたとしても、少なくともその一部を貫通孔61を構成する傾斜面にて光出射側に反射させることができる。
【0012】
一方、波長変換部材62には、レーザ光の光軸69と垂直な方向において、貫通孔61と離間する領域を設けることが好ましい。これにより、貫通孔61の傾斜面に当たった光が波長変換部材62に再度入ることなく上方に取り出すことができるので、良好な配光特性を得ることができる。
【0013】
そこで、本実施形態では、貫通孔61に、光軸69となす角度が小さい第1傾斜面67と、光軸69となす角度が大きい第2傾斜面68とを設けている。まず、光軸69とのなす角度が小さい第1傾斜面67により、貫通孔61の光軸69方向における長さを比較的大きくとることができる。これにより、貫通孔61の途中において波長変換部材62の底部を位置させることができるので、戻り光による光取り出しの低下を抑制することができる。さらに、光軸69とのなす角度が大きい第2傾斜面68により、光軸69と垂直な方向において、波長変換部材62と支持部材66の内壁とを離間させることができるので、配光特性も向上させることができる。つまり、発光装置100では、比較的簡単な構成にも関わらず、光取り出し効率と配光特性を両立させることができるのである。ここで、光入射側とは半導体レーザ素子11からの光が入射する側を指し、光出射側とは光が出射する側を指すものとする。
【0014】
以下に、発光装置100及びそれに用いられる各部材について具体的に説明する。
(発光装置100)
【0015】
図3に示すように、発光装置100は、光源10と、光源10からの光を集光させるレンズ20と、光源10からの光を光ファイバ40に接続させるためのコネクタ30と、光ファイバ40と、光ファイバ40の先端部分を保持する先端部材50と、前記先端部材50と接続された光部品60と、を有している。また、光源10からの光の一部は、光ファイバ30により、光部品60に導入され、最終的には、光源10からの光と、波長変換部材62に含有されている蛍光体の光との混色光が取り出される。
(光源10)
【0016】
光源10は、板状のステム12と、ステム12と絶縁され且つステム12を貫通して固定されたリード13と、ステム12に設けられたヒートシンク14と、ヒートシンク14に載置された半導体レーザ素子11と、を備える。半導体レーザ素子11から出射するレーザ光は指向性が高いため、比較的容易に貫通孔61に導くことができる。半導体レーザ素子11は特に限定されないが、ここでは、窒化物半導体からなる青色発光のものを用いている。
【0017】
半導体レーザ素子11は通電により熱を生じるが、この熱はヒートシンク14及びステム12を介して外部に放散される。
(支持部材66)
【0018】
図1に示すように、支持部材66は、貫通孔を有する基体63と、貫通孔の表面に形成された反射膜64と、反射膜64の表面に形成された保護膜65と、を有する。支持部材66には、レーザ光が通過する貫通孔61が設けられているが、貫通孔61は波長変換部材62によって塞がれている。すなわち、半導体レーザ素子11からの光は支持部材66の貫通孔61を通り、波長変換部材62を介して外部に取り出されることになる。
【0019】
支持部材66の内壁には、光入射側には光軸69に対して第1角度67aをなす第1傾斜面67が設けられ、光出射側には光軸69に対して第1角度67aよりも大きい第2角度68aをなす第2傾斜面68が設けられている。ここで、本実施形態では、基体63の内壁に反射膜64及び保護膜65が形成されているが、この場合は最外層の保護膜65の表面が第1傾斜面67及び第2傾斜面68を構成することになる。もちろん、反射膜64及び保護膜65を設けずに、基体63自体を支持部材66とすることもできる。この場合は、基体63の内壁が第1傾斜面67及び第2傾斜面68を構成することになる。
【0020】
貫通孔61には、光軸69との角度が小さい第1傾斜面67を設けているので、貫通孔61を比較的長く形成することができる。これにより、波長変換部材62の底部を貫通孔61の入口から離間させやすくなるので、戻り光を光出射側に再度向けることができる。
【0021】
光軸69と第1傾斜面67とがなす第1角度67aの大きさは特に限定されるものではないが、10度以上50度未満、好ましくは20度以上50度未満、さらに好ましくは20度以上30度未満とすることができる。角度が小さいと第1傾斜面67を反射面として機能させることが難しくなり、角度が大きいと貫通孔61自体の長さを確保することが難しくなるためである。
【0022】
また、第1傾斜面67よりも光出射側には、第1角度67aよりも大きい第2角度68aを有する第2傾斜面68が形成されている。これにより、支持部材66を光出射側から見た場合において、第2傾斜面68が占める割合を大きくとることができるので、結果として、波長変換部材62をその内側に余裕をもって配置することができる。これにより、光軸69と垂直をなす方向において波長変換部材62と第2傾斜面68とを離間させることができるので、良好な配光特性を維持することができる。
【0023】
光軸69と第2傾斜面68とがなす第2角度68aの大きさは特に限定されるものではないが、20度以上60度未満、好ましくは30度以上50度未満、さらに好ましくは30度以上45度未満とすることができる。角度が小さいと第2傾斜面と波長変換部材62とが近接しすぎたり接触したりして配光特性が悪化し、角度が大きいと前方に光を反射し難くなってかえって配光特性を悪化させてしまうからである。
【0024】
貫通孔61の光入射側の開口径は、50〜600μm、好ましくは100〜400μm、さらに好ましくは150〜300μmとすることができる。開口径が小さいとレーザ光が貫通孔61内へ進入できなくなり、開口径が大きいと戻り光を抑制することができないためである。
【0025】
基体63の材料としては、鉄及び鉄合金等があげられる。この中でも、後述する波長変換部材62のバインダーとしてホウケイ酸ガラスを用いる場合は、熱膨張係数を合わせるという観点から、コバール(鉄・コバルト合金)が好ましい。
【0026】
なお、基体63を
図1のような形状とするには、例えば、円柱状の部材を旋盤を用いて所定の形状に研削すればよい。
【0027】
反射膜64の材料としては、例えば、銀又はアルミニウムを含む材料とすることができるが、特に銀を含む材料であることが好ましい。銀は硫化などにより変色しやすいが、反射率に優れるので、保護膜65によりその変色を抑制できれば、光出力の低下を大幅に抑えることができるからである。なお、反射膜64は、スパッタ等の公知の方法を用いて形成することができる。
【0028】
反射膜64の膜厚は、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.7〜3μmとすることができる。反射膜64が薄すぎると熱により劣化しやすくなり、厚すぎると作業効率が落ちてしまうからである
【0029】
保護膜65は、反射膜64の劣化を抑制するためのものであり、光透過率の高い材料で形成されることが好ましい。これにより、反射膜64で反射した光を効率良く外部へ取り出すことができる。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、好ましくは酸化ケイ素又は酸化アルミニウム、さらに好ましくは酸化ケイ素を用いることができる。これらの材料を用いることで高いレベルで安定した出力特性が得られるからである。なお、反射膜64の全てを覆うように保護膜65を形成することが好ましい。なお、保護膜65は、スパッタ等の公知の方法を用いて形成することができる。
(波長変換部材62)
【0030】
図1に示すように、支持部材66の内壁には、波長変換部材62が載置されている。波長変換部材62には、蛍光体の粒子が複数含まれており、レーザ光により励起された光とレーザ光そのものの光との混色により所望の色を再現することができる。
【0031】
本実施形態において、波長変換部材62は、第1傾斜面67及び第2傾斜面68に固定される固定領域62Aを有している。これにより、波長変換部材62と支持部材66との接触面積を増加させることができるので、両者を強固に固定することができる。さらに、波長変換部材62は、第2傾斜面から離間した離間領域11Bを有するが、これにより配光特性を向上させることできることについては前述のとおりであるので繰り返さない。
【0032】
支持部材66の内壁に波長変換部材62を載置するには、例えば、融着を用いることができる。この場合、一定以上の温度雰囲気において、支持部材66と波長変換部材62とに圧力をかけることにより両者をダイレクトに接続することができる。
【0033】
波長変換部材62の厚み(光軸69方向の厚み)や、これに含まれる蛍光体の濃度は特に限定されないが、最終的に得られる光(つまり、レーザ光と蛍光体からの光との混色光)の色や配光などを考慮して決定すればよい。
【0034】
本実施形態では、波長変換部材62は、蛍光体の粒子と、それらを結着させるバインダーと、を含む。ここでは、蛍光体としてYAG系蛍光体を用い、バインダーとしてホウケイ酸ガラスを用いている。波長変換部材62に蛍光体を含有させることにより、光源からの光を異なる波長の光に変換させることができるので、光部品60を発光装置100に組み込んだ場合に、例えば、光源からの光(青色)と蛍光体からの光(黄色)との混色光(白色)を取り出すことができる。蛍光体の種類としては、YAG系蛍光体の他に、LAG系蛍光体もしくはTAG系蛍光体またはそれらの混合物を用いることができる。
【0035】
<第2実施形態>
図4に、第2実施形態に係る発光装置200の構成を説明するための断面図を示す。発光装置200は、光源10と波長変換部材62との間にコネクタ30、光ファイバ40及び先端部材50が設けられておらず、支持部材66がステム12に直接接続されている点以外は、発光装置100と実質的に同じである。このような構成であっても、支持部材66と波長変換部材62とを特定の関係とすることにより、光取り出し効率と配光特性とを両立させることができる
【0036】
なお、発光装置200では、光源10と波長変換部材62との間に他の部材を介在させていないが、例えば両者の間にレーザ光を集光するレンズを設けることもできる。また、発光素子200では、発光装置100と同様に、支持部材66は基体63と反射膜64と保護膜65とを有するが、
図4ではそれらをまとめて支持部材66としている。