【実施例】
【0133】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0134】
(実施例1)
以下の方法で、高導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0135】
(マイエナイト化合物の合成)
酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al
2O
3)のモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO
3、関東化学社製、特級)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(α−Al
2O
3、関東化学社製、特級)粉末186.5gとを混合した。次に、この混合粉末を、大気中、300℃/時間の昇温速度で1350℃まで加熱し、1350℃に6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温し、約362gの白色塊体を得た。
【0136】
次に、アルミナ製スタンプミルにより、この白色塊体を大きさが約5mmの破片になるよう粉砕した後、さらに、アルミナ製自動乳鉢で粗粉砕し、白色粒子(以下、粒子「A1」と称する)を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた粒子A1の粒度を測定したところ、平均粒径は、20μmであった。
【0137】
次に、粒子A1を350gと、直径5mmのジルコニアボール3kgと、粉砕溶媒としての工業用ELグレードのイソプロピルアルコール350mlとを、2リットルのジルコニア製容器に入れ、容器にジルコニア製の蓋を載せてから、回転速度94rpmで、16時間、ボールミル粉砕処理を実施した。
【0138】
処理後、得られたスラリーを用いて吸引ろ過を行い、粉砕溶媒を除去した。また、残りの物質を80℃のオーブンに入れ、10時間乾燥させた。これにより、白色粉末(以下、粉末「B1」と称する)を得た。X線回折分析の結果、得られた粉末B1は、C12A7構造であることが確認された。また、前述のレーザ回折散乱法により得られた粉末B1の平均粒径は、3.3μmであることがわかった。
【0139】
(マイエナイト化合物の成形体の作製)
前述の方法で得られたマイエナイト化合物の粉末B1を79.8g、成形用バインダとしてポリエチレンオキサイドを13.0g、可塑剤としてフタル酸ジブチルを0.2g、潤滑剤としてステアリン酸を7.0gを配合し、150℃に加熱させて混練させた。得られた混練物を射出成形用の成形型に流し込み、室温まで冷却させた。これにより、直径3.4mmφ、長さ15mmのロッド型の成形体C1を得た。
【0140】
次に、成形体C1の脱バインダ処理を行った。
【0141】
成形体C1をアルミナ板に置いた状態で電気炉内に設置し、大気中で、40分間で200℃まで加熱した。さらに8時間で600℃まで加熱した後、2時間で室温まで冷却させた。脱脂された成形体は、白色であり、ロッド形状を維持していた。
【0142】
(高導電性マイエナイト化合物の作製)
次に、
図3に示す装置を使用して脱脂後の成形体C1を高温で焼成処理し、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0143】
図3には、脱脂後の成形体C1の焼成処理に使用した装置を示す。
【0144】
図3に示すように、この装置300は、アルミナ容器310と、カーボン製の蓋335付きのカーボン容器330とを備える。また、アルミナ容器310の底部には、0.8gの金属チタン粉末が敷き詰められて構成されたチタン層320が配置されている。チタン層320は、装置300が高温になった際に、チタン蒸気を発生するチタン蒸気源となる。
【0145】
アルミナ容器310は、外径20mm×内径18mm×高さ10mmの略円筒状の形状を有しており、チタン蒸気がカーボン容器330全体に拡散するように、縁を粗く削る処理を施してある。また、カーボン容器330は、外径50mm×内径40mm×高さ60mmの略円筒状の形状を有する。
【0146】
この装置300は、以下のように使用した。
【0147】
まず、チタン層320を有するアルミナ容器310の上部に、アルミナ板315を配置した。次に、前述の脱脂後の成形体C1を複数個、アルミナ板315上に配置した。この状態では、成形体C1は、チタン層320とは直接接触しない。
【0148】
さらに、これら全体を、カーボン容器330内に配置し、カーボン容器330の上部にカーボン製の蓋335を配置した。
【0149】
次に、この装置300を、雰囲気調整可能な電気炉内に設置した。また、ロータリーポンプおよび拡散ポンプを用いて、炉内を真空引きした。その後、炉内の圧力が0.1Pa以下になってから、装置300の加熱を開始し、2時間で1300℃まで昇温した。装置300をこの状態で6時間保持した後、2時間で室温まで冷却させた。
【0150】
この熱処理により、成形体C1は焼結され、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D1」と称する)が得られた。この焼結体D1の相対密度は、96.6%であった。
【0151】
電子密度測定用サンプルを採取するため、アルミナ製自動乳鉢で焼結体D1の粗粉砕を実施した。粗粉砕は、アルミナ乳鉢およびアルミナ製自動乳鉢を用いて実施した。
【0152】
得られた粉末は、濃い焦げ茶色を呈していた。X線回折分析の結果、この粉末は、C12A7構造だけを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルのピーク位置から求められた電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は、16S/cmであった。このことから、焼結体D1は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0153】
また、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、焼結体D1の断面を観察した。断面観察の結果から、焼結体D1は、ポアが少なく緻密な状態であることが確認された。また、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0154】
(実施例2)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例2では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理温度を1320℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0155】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D2」と称する)が得られた。焼結体D2の相対密度は、96.6%であった。
【0156】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D2を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D2は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D2の電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は16S/cmであった。
【0157】
このことから、焼結体D2は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0158】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D2の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0159】
(実施例3)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例3では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理温度を1280℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0160】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D3」と称する)が得られた。焼結体D3の相対密度は、98.5%であった。
【0161】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D3を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D3は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D3の電子密度は、1.7×10
21cm
−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0162】
このことから、焼結体D3は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0163】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D3の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0164】
(実施例4)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例4では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理時間を12時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0165】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D4」と称する)が得られた。焼結体D4の相対密度は、97.5%であった。
【0166】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D4を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D4は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D4の電子密度は、1.7×10
21cm
−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0167】
このことから、焼結体D4は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0168】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D4の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約15μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0169】
(実施例5)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例5では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理時間を48時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0170】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D5」と称する)が得られた。焼結体D5の相対密度は、96.0%であった。
【0171】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D5を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D5は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D5の電子密度は、1.4×10
21cm
−3であり、電気伝導率は14S/cmであった。
【0172】
このことから、焼結体D5は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0173】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D5の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約15μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0174】
(実施例6)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例6では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理時間を96時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0175】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D6」と称する)が得られた。焼結体D6の相対密度は、96.7%であった。
【0176】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D6を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D6は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D6の電子密度は、1.5×10
21cm
−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0177】
このことから、焼結体D6は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0178】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D6の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約20μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0179】
なお、実施例5と実施例6の結果と比較すると、両者において、相対密度および電子密度は、ほとんど変化していないことがわかる。このことから、焼成処理の時間を48時間より長くしても、電子密度をさらに高めることは難しいと考えられる。従って、表面層の成長抑制の観点から、保持時間は、約50時間以内とすることが好ましいと言える。
【0180】
(実施例7)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例7では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理時間を0.5時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0181】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D7」と称する)が得られた。焼結体D7の相対密度は、95.2%であった。
【0182】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体
D7を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D7は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D7の電子密度は、1.0×10
21cm
−3であり、電気伝導率は10S/cmであった。
【0183】
このことから、焼結体D7は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0184】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D7の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0185】
(実施例8)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例8では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程における金属チタン層320として、実施例1と同条件で一回使用したものを用いた。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0186】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D8」と称する)が得られた。焼結体D8の相対密度は、97.2%であった。
【0187】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D8を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D8は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D8の電子密度は、1.5×10
21cm
−3であり、電気伝導率は16S/cmであった。
【0188】
このことから、焼結体D8は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0189】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D8の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0190】
この結果から、金属チタン層320は、再利用することが可能であることがわかった。ちなみに、その後の実験から、装置300において、金属チタン層320を5回繰り返し使用しても、ほぼ同等の高導電性マイエナイト化合物が得られることが確認されている。
【0191】
(実施例9)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例9では、前述の(マイエナイト化合物の成形体の作製)の工程において、使用する粉末を、マイエナイト化合物ではなく、電子密度が5.0×10
19cm
−3の導電性マイエナイト化合物の粉末を使用した。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0192】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D9」と称する)が得られた。焼結体D9の相対密度は、96.5%であった。
【0193】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D9を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D9は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D9の電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0194】
このことから、焼結体D9は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0195】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D9の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0196】
(実施例10)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例10では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、真空処理の際に拡散ポンプを使用しなかった。従って、この実施例10では、炉内の圧力は、約50Pa程度であった。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0197】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D10」と称する)が得られた。焼結体D10の相対密度は、96.3%であった。
【0198】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D10を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体
D10は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D10の電子密度は、1.1×10
21cm
−3であり、電気伝導率は11S/cmであった。
【0199】
このことから、焼結体D10は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0200】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D10の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約20μm〜約40μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0201】
(実施例11)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例11では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、マイエナイト化合物の成形体C1を作製せず、マイエナイト化合物の粉末のまま、焼成処理を行った。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0202】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色で一部が焼結された塊(以下、焼結体「D11」と称する)が得られた。
【0203】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D11を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D11は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体
D11の電子密度は、1.5×10
21cm
−3であった。
【0204】
このことから、焼結体D11は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0205】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D11の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0206】
(実施例12)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例12では、前述の(マイエナイト化合物の成形体の作製)の工程において、
成形体C1の代わりに、成形体C1にニッケル線を挿入したものを作製し、これを被処理体とした。
【0207】
被処理体は、以下のように作製した。
【0208】
まず、リューターを使って、成形体C1の一つ底面の中心に、直径約0.7mm、深さ約2.5mmの穴を形成した。次に、この穴内に、150℃に加熱した線径0.7mm、長さ10mmのニッケル線を挿入した。ニッケル線は、加熱されているため、成形体C1との接触部分の樹脂は軟化し、ニッケル線を容易に挿入することができた。
【0209】
このようにして、ニッケル線付きの成形体を作製した。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0210】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、ニッケル線と結合された黒色の焼結体(以下、焼結体「D12」と称する)が得られた。焼結体D12のニッケル線を除いた部分の相対密度は、96.7%であった。
【0211】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D12を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D12は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D12の電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は16S/cmであった。
【0212】
このことから、焼結体D12は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0213】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D12の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0214】
なお、ニッケル線は、10回程曲げても折れることはなく、脆化等の劣化は生じていないことがわかった。
【0215】
(実施例13)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例13では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理温度を1360℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0216】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D13」と称する)が得られた。焼結体D13の相対密度は、97.8%であった。
【0217】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D13を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D13は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D13の電子密度は、1.5×10
21cm
−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0218】
このことから、焼結体D13は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0219】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D13の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約20μm程度であり、表面層は薄いことが確認された。
【0220】
(実施例14)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例14では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理温度を1250℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0221】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D14」と称する)が得られた。焼結体D14の相対密度は、96.0%であった。
【0222】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D14を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D14は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D14の電子密度は、1.0×10
21cm
−3であり、電気伝導率は10S/cmであった。
【0223】
このことから、焼結体
D14は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0224】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体
D14の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0225】
(実施例15)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例15では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、室温から1300℃まで加熱する際の時間を4時間とし、1300℃から室温まで冷却させる時間を4時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0226】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D15」と称する)が得られた。焼結体D15の相対密度は、97.0%であった。
【0227】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D15を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D15は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D15の電子密度は、1.5×10
21cm
−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0228】
このことから、焼結体D15は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0229】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D15の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0230】
(比較例1)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例1では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理温度を1200℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0231】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D51」と称する)が得られた。
【0232】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D51を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D51は、C12A7構造の他、多様な異相を有することがわかった。焼結体D51は、異相を有するため、電子密度および電気伝導率を求めることはできなかった。
【0233】
(比較例2)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例2では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理温度を1400℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0234】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D52」と称する)が得られた。焼結体D52は、変形が激しく、元の形状を維持していなかった。このため、相対密度を測定することはできなかった。
【0235】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D52を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D52は、C12A7構造の他、異相を有することがわかった。焼結体D52は、異相を有するため、正確な電子密度および電気伝導率は不明であるが、焼結体D52の電子密度は、おおよそ7.7×10
19cm
−3と見積もられた。
【0236】
このことから、焼結体D52は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0237】
(比較例3)
前述の実施例10と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例3では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、アルミナ容器310およびアルミナ板315のみを使用し、蓋335付きのカーボン容器330は、使用しなかった。その他の条件は、実施例10の場合と同様である。
【0238】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が白色の焼結体(以下、焼結体「D53」と称する)が得られた。焼結体D53の相対密度は、92.0%であった。
【0239】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D53を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D53は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D53の電子密度は、測定限界以下であり、このことから、焼結体D53は、高導電性マイエナイト化合物でないことが確認された。
【0240】
(比較例4)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例4では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、金属チタン層320は、使用しなかった。すなわち、この比較例5では、チタン蒸気の存在しない環境下で、成形体C1の焼成処理を行った。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0241】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D54」と称する)が得られた。焼結体D54の相対密度は、99.7%であった。
【0242】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D54を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D54は、C12A7構造のみを有することがわかった。しかしながら、得られた粉末の光拡散反射スペクトルからクベルカムンク変換により求められた電子密度は、4.0×10
19cm
−3であり、電気伝導率は、0.04S/cmであった。
【0243】
このことから、焼結体D54は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0244】
(比較例5)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例5では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、アルミナ板315は使用せず、マイエナイト化合物の成形体C1を、直接金属チタン層320の上に設置した。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0245】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、焼結体(以下、焼結体「D55」と称する)が得られた。焼結体D55は、金属チタン層320と接触した表面が白色になっていた。白色物質を取り除いた焼結体D55の相対密度は、94.4%であった。
【0246】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D55を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D55は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D55の電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は、16S/cmであった。
【0247】
実施例1と同様の方法により、焼結体D55の表面の形態を観察した。その結果、焼結体D55の表面には、厚さ約10μmの白色層が存在し、その直下に、別の層が観察された。この別の層は、他の焼結体(例えば焼結体D1)における表面層と同様の形態を有していた。この別の層の厚さは、約40μm〜約50μmもあり、厚いことが確認された。
【0248】
(比較例6)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この比較例6では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、熱処理する雰囲気を窒素雰囲気とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0249】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面がクリーム色の焼結体(以下、焼結体「D56」と称する)が得られた。焼結体D56の相対密度は、97.8%であった。
【0250】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D56を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D56は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D56の電子密度は、測定限界以下であり、このことから、焼結体D56は、高導電性マイエナイト化合物でないことが確認された。
【0251】
表1には、実施例1〜15と比較例1〜6における被処理体の種類、CO源およびチタン源の有無、処理温度、処理時間、ならびに得られた焼結体の電子密度、相対密度、および表面層の厚さをまとめて示した。
【0252】
【表1】
(実施例21)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例21では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、脱脂後の成形体C1の代わりに、マイエナイト化合物(非導電性)の焼結体E21を用いた。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0253】
なお、マイエナイト化合物の焼結体E21は下記のように作製した。
【0254】
まず、前述の実施例1の(マイエナイト化合物の成形体の作製)の工程を経て得られた成形体C1をアルミナ板上に配置し、大気下で1100℃まで加熱した。昇温速度は、300℃/時間とした。次に、成形体C1を1100℃で2時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却した。これにより、非導電性マイエナイト化合物の焼結体E21が得られた。
【0255】
焼結体E21を用いて、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程を実施した。これにより、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D21」と称する)が得られた。焼結体D21の相対密度は、95.8%であった。
【0256】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D21を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D21は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D21の電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は16S/cmであった。
【0257】
このことから、焼結体D21は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0258】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D21の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0259】
(実施例22)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例22では、(マイエナイト化合物の成形体の作製)の工程において、粉末B1の代わりに、フッ素成分を含む混合粉末を使用して成形体C22を調製した。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0260】
なお、混合粉末F22は、下記の工程により作製した。
【0261】
(混合粉末の調製方法)
まず、実施例1の(マイエナイト化合物の合成)の欄に記載した方法で得られた粉末B1の38.72gに、フッ化カルシウム(CaF
2、関東化学社製、特級)粉末0.73gと、酸化アルミニウム(α−Al
2O
3、関東化学社製、特級)粉末0.55gとを添加し、これらを十分に混合して、混合粉末F22を得た。
【0262】
最終的に製造されるマイエナイト化合物においても、この混合粉末F22のCa/Al/Fの組成比が維持されると仮定した場合、製造されるマイエナイト化合物は、化学式
(12−x)CaO・7Al
2O
3・xCaF
2 (1)式
で表され、特にx=0.32となる。
【0263】
混合粉末F22を用いて作製した成形体C22を用いて、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程を実施した。これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D22」と称する)が得られた。焼結体D22の相対密度は、97.2%であった。
【0264】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D22を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D22は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D22の電子密度は、1.1×10
21cm
−3であり、電気伝導率は12S/cmであった。
【0265】
次に、焼結体D22の格子定数を測定した結果、焼結体D22の格子定数は、実施例1における焼結体D1の値よりも小さかった。このことから、焼結体D22では、マイエナイト化合物にフッ素が含有していると考えられる。
【0266】
次に、黒色物質D22を破断し、エネルギー分散型X線分析(EDX)により、破断面の組成分析を行った。分析結果から、検出されたフッ素の割合は、混合粉末F22の混合比に近いことがわかった。
【0267】
このように、焼結体D22は、フッ素を含む高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0268】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D22の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0269】
(実施例23)
前述の実施例22と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例23では、前述の(混合粉末の調製方法)の工程において、粉末B1の39.78gに、フッ化カルシウム(CaF
2、関東化学社製、特級)粉末0.12gと、酸化アルミニウム(α−Al
2O
3、関東化学社製、特級)粉末0.09gとを添加し、これらを十分に混合して、混合粉末F23を得た。
【0270】
最終的に製造されるマイエナイト化合物においても、この混合粉末F23のCa/Al/Fの組成比が維持されると仮定した場合、製造されるマイエナイト化合物は、上述の化学式(3)で表され、特にx=0.06となる。
【0271】
その他の条件は、実施例22と同様である。
【0272】
混合粉末F23を用いて作製した成形体C23を用いて、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程を実施した。これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D23」と称する)が得られた。焼結体D23の相対密度は、96.0%であった。
【0273】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D23を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D23は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D23の電子密度は、1.1×10
21cm
−3であり、電気伝導率は11S/cmであった。
【0274】
次に、焼結体D23の格子定数を測定した結果、焼結体D23の格子定数は、実施例1における焼結体D1の値よりも小さかった。このことから、焼結体D23では、マイエナイト化合物にフッ素が含有していると考えられる。
【0275】
次に、黒色物質D23を破断し、エネルギー分散型X線分析(EDX)により、破断面の組成分析を行った。分析結果から、検出されたフッ素の割合は、混合粉末F23の混合比に近いことがわかった。
【0276】
このように、焼結体D23は、フッ素を含む高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0277】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D23の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0278】
(実施例24)
前述の実施例22と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例24では、前述の(混合粉末の調製方法)の工程において、粉末B1の38.11gに、フッ化カルシウム(CaF
2、関東化学社製、特級)粉末1.07gと、酸化アルミニウム(α−Al
2O
3、関東化学社製、特級)粉末0.82gとを添加し、これらを十分に混合して、混合粉末F24を得た。
【0279】
最終的に製造されるマイエナイト化合物においても、この混合粉末F24のCa/Al/Fの組成比が維持されると仮定した場合、製造されるマイエナイト化合物は、上述の化学式(3)で表され、特にx=0.48となる。
【0280】
その他の条件は、実施例22と同様である。
【0281】
混合粉末F24を用いて作製した成形体C24を用いて、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程を実施した。これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D24」と称する)が得られた。焼結体D24の相対密度は、95.7%であった。
【0282】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D24を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D24は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D24
の電子密度は、1.0×10
21cm
−3であり、電気伝導率は10S/cmであった。
【0283】
次に、焼結体D24の格子定数を測定した結果、焼結体D24の格子定数は、実施例1における焼結体D1の値よりも小さかった。このことから、焼結体D24では、マイエナイト化合物にフッ素が含有していると考えられる。
【0284】
次に、黒色物質D24を破断し、エネルギー分散型X線分析(EDX)により、破断面の組成分析を行った。分析結果から、検出されたフッ素の割合は、混合粉末F24の混合比に近いことがわかった。
【0285】
このように、焼結体D24は、フッ素を含む高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0286】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D24の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0287】
(実施例25)
前述の実施例22と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例25では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、成形体C22の代わりに、フッ素を含むマイエナイト化合物(非導電性)の焼結体E25を使用した。その他の条件は、実施例22の場合と同様である。
【0288】
なお、マイエナイト化合物の焼結体E25は、以下のように作製した。
【0289】
まず、前述の実施例22の成形体C22をアルミナ板上に配置し、大気下で1100℃まで加熱した。昇温速度は、300℃/時間とした。次に、成形体C22を1100℃で2時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却した。これにより、フッ素を含む非導電性マイエナイト化合物の焼結体E25が得られた。
【0290】
焼結体E25を用いて、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程を実施した。これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に、表面が黒色の焼結体(以下、焼結体「D25」と称する)が得られた。焼結体D25の相対密度は、95.6%であった。
【0291】
さらに、実施例1と同様の方法により、この焼結体D25を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、焼結体D25は、C12A7構造のみを有することがわかった。焼結体D25の電子密度は、1.0×10
21cm
−3であり、電気伝導率は10S/cmであった。
【0292】
次に、焼結体D25の格子定数を測定した結果、焼結体D25の格子定数は、実施例1における焼結体D1の値よりも小さかった。このことから、マイエナイト化合物にフッ素が含有していると考えられる。
【0293】
次に、黒色物質D25を破断し、エネルギー分散型X線分析(EDX)により、破断面の組成分析を行った。分析結果から、検出されたフッ素の割合は、混合粉末F22の混合比に近いことがわかった。
【0294】
このように、焼結体D25は、フッ素を含む高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0295】
また、実施例1と同様の方法により、焼結体D25の表面層の厚さを評価した結果、表面層の厚さは、約5μm〜約10μm程度であり、表面層は、極めて薄いことが確認された。
【0296】
表2には、実施例21〜25における被処理体の種類、CO源およびチタン源の有無、処理温度、処理時間、ならびに得られた焼結体の電子密度、相対密度、および表面層の厚さをまとめて示した。
【0297】
【表2】
なお、表2において、「F添加量(x値)」の欄における数値は、被処理体に含まれるフッ素(F)量を表す。この値は、被処理体から、最終的に以下の(1)式
(12−x)CaO・7Al
2O
3・xCaF
2 (1)式
で表されるマイエナイト化合物が製造されたと仮定した場合の、xの値を意味する。