特許第5971711号(P5971711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5971711ロータリースクリーン印刷機におけるインキ安定供給機構及びインキ供給方法、並びにインキ循環装置及びインキ循環方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971711
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ロータリースクリーン印刷機におけるインキ安定供給機構及びインキ供給方法、並びにインキ循環装置及びインキ循環方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/40 20060101AFI20160804BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20160804BHJP
   B41F 31/02 20060101ALI20160804BHJP
   B41F 31/20 20060101ALI20160804BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20160804BHJP
   B41F 31/22 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B41F15/40 D
   B41F15/08 302D
   B41F31/02 A
   B41F31/02 C
   B41F31/20
   B41F33/00
   B41F31/22
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-204839(P2012-204839)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-58123(P2014-58123A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】広田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】柳川 茂
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−105189(JP,A)
【文献】 特開2011−230388(JP,A)
【文献】 特開2002−195866(JP,A)
【文献】 実開昭48−063066(JP,U)
【文献】 特開昭59−073732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/40
B41F 15/08
B41F 31/02
B41F 31/20
B41F 31/22
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴内に固定設置した支持体に対して上向きに支持されたスキージを有するロータリースクリーン印刷機におけるインキ安定供給機構であって、
前記インキ安定供給機構は、
容器状の上部にインキを投入するための開口された投入部と、下部にインキを均一に前記版胴内に供給するガイドを有する供給部から成る、前記支持体上の上部に配置された供給手段と、
前記版胴に対して、エアを用いて前記供給手段内のインキ量を測定するために、あらかじめ設定した一定量のエアを供給する減圧手段と、
前記減圧手段と前記供給手段の間に設置され、前記減圧手段からのエアを二つに分岐し、前記供給手段内のインキ量の増減に伴う二つのエアの流量値のバランス変動により、前記供給手段内のインキ量を測定する流量測定手段と、
前記供給手段内のインキ量を測定した結果に基づき、前記供給手段に適量のインキ供給を命令する制御部を少なくとも有し、
前記制御部は、前記流量測定手段により測定した測定値をあらかじめ設定した演算方法により演算する演算手段と、前記演算手段における演算結果とあらかじめ設定した基準値とを比較する比較手段と、前記測定値及び前記基準値を記憶する記憶手段を少なくとも備えることを特徴とするロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構。
【請求項2】
前記流量測定手段は、前記減圧手段からの二つに分岐されたエアの一方を前記供給手段内のインキ中に供給するためのエア配管に係る水(インキ)圧によりエア流量値を測定する第一流量測定手段と、
前記第一流量測定手段と並置され、前記減圧手段からの二つに分岐されたエアの他方を大気中に放出し、前記第一流量測定手段で測定されるエア流量値に連動して変動する前記大気中に放出されたエアの流量値を測定する第二流量測定手段から成ることを特徴とする請求項1記載のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構。
【請求項3】
前記流量測定手段は、前記第一流量測定手段及び前記第二流量測定手段により測定したエアの流量値を基に、前記二つのエアの圧力差を測定する差圧測定手段を更に有することを特徴とする請求項2記載のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構。
【請求項4】
前記減圧手段と前記第一流量測定手段及び前記第二流量測定手段の間に設置され、前記減圧手段からのエアが、あらかじめ設定した基準のエアの流量値であるか否かを測定する基準流量測定手段を備えたことを特徴とする請求項2又は3記載のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構。
【請求項5】
前記版胴内における前記ガイドと近接及び/又は隣接する位置に、前記供給部からのインキが、前記ガイドの長辺方向に均一に供給されているか否かを検知するインキ監視手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構と、前記版胴内の余剰インキを回収及び再供給するインキ回収機構を少なくとも有するロータリースクリーン印刷機のインキ循環装置であって、
前記インキ回収機構は、前記スキージ下部に配置され、容器状の上部に前記余剰インキを回収する開口部を有する回収手段と、
前記回収手段内の前記余剰インキを吸引により回収し、次工程に供給する回収ポンプと、
前記回収した前記余剰インキ及び新規インキを貯蔵する貯蔵手段と、
前記インキ安定供給機構で測定した前記供給手段内のインキ量が、あらかじめ設定した残量以下となった場合、前記貯蔵手段内のインキを前記供給手段に供給する供給ポンプを備えたことを特徴とするロータリースクリーン印刷機のインキ循環装置。
【請求項7】
ロータリースクリーン印刷機におけるインキ量を基準の範囲内で保つためのインキ供給方法であって、
前記ロータリースクリーン印刷機における版胴内のインキ量の測定に用いるエアを、エア配管を途中で二つに分岐し、一方をインキ中に、他方を大気中に供給するエア供給工程と、
前記一方のエア配管の先端部を前記インキ中に配置し、前記他方のエアが大気中に放出可能なようにエア配管を配置することで、前記インキ量の増減に伴い前記エア配管に係る水(インキ)圧により変動する前記二つに分岐したエアの値を測定するエア流量測定工程と、
前記エア流量測定工程により測定したエアの値とあらかじめ設定した基準となるエアの値を比較するエア比較工程と、
前記エア比較工程により比較したエアの値が、前記基準となるエアの値の許容範囲外である場合、適切なインキ量を供給するインキ供給工程とを少なくとも有することを特徴とするロータリースクリーン印刷機のインキ供給方法。
【請求項8】
前記エア流量測定工程は、前記エア配管をインキ中に配置した一方のエアに対する流量値と、エアを大気中に放出する前記他方のエアに対する流量値を測定するエア流量値測定工程、又は、前記エア配管をインキ中に配置した一方のエアと大気中に放出したエアとの差圧を測定する差圧測定工程から成ることを特徴とする請求項7記載のロータリースクリーン印刷機のインキ供給方法。
【請求項9】
前記版胴内のインキ量を安定して測定するために、前記エア供給工程において、エアが二つに分岐される前に供給するエアの変動値を測定するエア流量値設定工程を有することを特徴とする請求項7又は8記載のロータリースクリーン印刷機のインキ供給方法。
【請求項10】
請求項7乃至9記載のインキ供給方法を用いたロータリースクリーン印刷機のインキ循環方法であって、
紙に転移されない余剰インキを前記版胴内の一箇所に回収する余剰インキ回収工程と、
前記回収した余剰インキを前記版胴内からポンプを用いて吸引して前記ロータリースクリーン印刷機外の近傍に貯蔵し、前記貯蔵したインキをかくはん及び温度調整して、紙の転移に適した粘度にするインキ調整工程を有し、
前記インキ供給方法の前記インキ供給工程において、前記基準となるエアの値の許容範囲外である場合に、新規インキ及び前記インキ調整工程において調整されたインキを混合し、適切なインキ量をポンプを用いて前記版胴内に供給することを特徴とするロータリースクリーン印刷機のインキ循環方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリースクリーン印刷機に関し、特に、インキを安定して供給するためのインキ安定供給機構及びインキ供給方法、並びに該インキ安定供給機構を用いたインキ循環装置及びインキ循環方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にスクリーン印刷は、版面にインキが通過する貫通孔と通過しない非貫通孔を形成し、スキージによりインキを押し出して紙に転写することで印刷を行うものである。
【0003】
スクリーン印刷は、平面状の版面を用いる平面式と、シリンダ状の版面を用いるロータリー式とがあり、ロータリー式のスクリーン印刷を用いた装置は、ロータリースクリーン印刷機とも呼ばれ、その構成は、給紙部及び印刷部等を有している。
【0004】
ロータリースクリーン印刷機における印刷方法としては、紙を給紙部にて順次給紙した後に印刷部へと搬送する。次に、版胴に内設したインキ供給手段から版胴内にインキを吐出することで供給した後に、版胴下部に滞留したインキが版胴の回転に伴い、最上部まで移動する。次に、版胴内に設置したスキージにより、インキを掻き取りながら版胴の貫通孔に押し込む。最後に、紙に対して圧胴及び版胴内に設けたスキージにより、インキを挟みこむように押圧することで、貫通孔に押し込まれたインキが紙に転移する。
【0005】
ロータリースクリーン印刷機においても、インキ切れとならないように、常に版胴内にインキを供給し続ける必要があるが、その量が多すぎる場合には、余剰インキが長時間版胴内に滞留し続けるため、インキが劣化するおそれがあり、好ましくない。そこで、これらのインキの劣化を防止する対策として、様々な工夫がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1においては、余剰インキを回収する回収パンを版胴内に設けたインキ供給装置が開示されている。余剰インキは、液面センサを設けた回収パンを経由してインキタンクに回収された後、インキタンクにて粘度及び温度等を一定にした状態でインキを再供給する。その際、回収パンに設けた液面センサの検出信号に応動し、インキタンクからインキを供給する。それにより、適切な量のインキを自動で供給することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−105189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のインキ供給装置により、ロータリースクリーン印刷機における版胴内にインキを自動供給することが可能となったが、特許文献1の液面センサについては、直接的にインキに接触させてインキ量を測定することから、センサヘッドにインキが付着することで発生する誤作動や、微量のインキ量を測定することができないという問題があった。特にインキの特性及び種類により、その事象は顕著に発生するものもある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ロータリースクリーン印刷機における版胴内のインキ量を、誤作動することなく測定し、適切な量のインキを自動で版胴内に供給するとともに、版胴内のインキ量を基準の範囲内で保つことが可能なインキ安定供給機構及びインキ供給方法、並びに該インキ安定供給機構を有するインキ循環装置及びインキ循環方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、版胴内に固定設置した支持体に対して上向きに支持されたスキージを有するロータリースクリーン印刷機におけるインキ安定供給機構であって、インキ安定供給機構は、容器状の上部にインキを投入するための開口された投入部と、下部にインキを均一に版胴内に供給するガイドを有する供給部から成る支持体上の上部に配置された供給手段と、版胴に対してエアを用いて供給手段内のインキ量を測定するために、あらかじめ設定した一定量のエアを供給する減圧手段と、減圧手段と供給手段の間に設置され、減圧手段からのエアを二つに分岐し、供給手段内のインキ量の増減に伴う二つのエアの流量値のバランス変動により、供給手段内のインキ量を測定する流量測定手段と、流量測定手段により測定した二つのエアの流量値の差と、あらかじめ設定した基準となるエアの流量値の差とを比較し、供給手段内のインキ量を測定した結果に基づき、供給手段に適量のインキ供給を命令する制御部を少なくとも有することを特徴とするロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構である。
【0011】
また、本発明のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構は、流量測定手段が、減圧手段からの二つに分岐されたエアの一方を供給手段内のインキ中に供給するためのエア配管に係る水(インキ)圧により、エア流量値を測定する第一流量測定手段と、第一流量測定手段と並置され、減圧手段からの二つに分岐されたエアの他方を大気中に放出し、第一流量測定手段で測定されるエア流量値に連動して変動する前記大気中に放出されたエアの流量値を測定する第二流量測定手段から成ることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構は、流量測定手段が、第一流量測定手段及び第二流量測定手段により測定したエアの流量値を基に、二つのエアの圧力差を測定する差圧測定手段を更に有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構は、減圧手段と第一流量測定手段及び第二流量測定手段の間に設置され、減圧手段からのエアが、あらかじめ設定した基準のエアの流量値であるか否かを測定する基準流量測定手段を更に備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構は、版胴内におけるガイドと近接及び/又は隣接する位置に、供給部からのインキが、ガイドの長辺方向に均一に供給されているか否かを検知するインキ監視手段を更に備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前述したロータリースクリーン印刷機のインキ安定供給機構と、ロータリースクリーン印刷機の版胴内の余剰インキを回収及び再供給するインキ回収機構を少なくとも有するロータリースクリーン印刷機のインキ循環装置であって、インキ回収機構は、スキージ下部に配置され、容器状の上部に余剰インキを回収する開口部を有する回収手段と、回収手段内の余剰インキを吸引により回収し、次工程に供給する回収ポンプと、回収した余剰インキ及び新規インキを貯蔵する貯蔵手段と、インキ安定供給機構で測定した供給手段内のインキ量が、あらかじめ設定した残量以下となった場合、貯蔵手段内のインキを供給手段に供給する供給ポンプを備えたことを特徴とするロータリースクリーン印刷機のインキ循環装置である。
【0016】
また、本発明は、ロータリースクリーン印刷機におけるインキ量を基準の範囲内で保つためのインキ供給方法であって、ロータリースクリーン印刷機における版胴内のインキ量の測定に用いるエアを、エア配管を途中で二つに分岐し、一方をインキ中に、他方を大気中に供給するエア供給工程と、一方のエア配管の先端部をインキ中に配置し、他方のエアが大気中に放出可能なようにエア配管を配置することで、インキ量の増減に伴いエア配管に係る水(インキ)圧により変動する二つに分岐したエアの値を測定するエア流量測定工程と、エア流量測定工程により測定したエアの値とあらかじめ設定した基準となるエアの値を比較するエア比較工程と、エア比較工程により比較したエアの値が、基準となるエアの値の許容範囲外である場合、適切なインキ量を供給するインキ供給工程とを少なくとも有することを特徴とするロータリースクリーン印刷機のインキ供給方法である。
【0017】
また、本発明のロータリースクリーン印刷機のインキ供給方法は、エア流量測定工程が、エア配管をインキ中に配置した一方のエアに対する流量値と、エアを大気中に放出する他方のエアに対する流量値を測定するエア流量値測定工程、又はエア配管をインキ中に配置した一方のエアと大気中に放出したエアとの差圧を測定する差圧測定工程から成ることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のロータリースクリーン印刷機のインキ供給方法は、版胴内のインキ量を安定して測定するために、エア供給工程において、エアが二つに分岐される前に供給するエアの変動値を測定するエア流量値設定工程を有することを特徴とする。
【0019】
さらに本発明は、前述のインキ供給方法を用いたロータリースクリーン印刷機のインキ循環方法であって、紙に転移されない余剰インキを版胴内の一箇所に回収する余剰インキ回収工程と、回収した余剰インキを版胴内からポンプを用いて吸引してロータリースクリーン印刷機外の近傍に貯蔵し、貯蔵したインキをかくはん及び温度調整して、紙の転移に適した粘度にするインキ調整工程を有し、インキ供給方法のインキ供給工程において、基準となるエアの値の許容範囲外である場合に、新規インキ及びインキ調整工程において調整されたインキを混合し、適切なインキ量をポンプを用いて版胴内に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のインキ安定供給機構を用いることで、ロータリースクリーン印刷機における版胴内のインキ量を、エアを用いて測定することが可能となり、インキ付着に起因するセンサの誤作動が発生することがないため、版胴内のインキ量を誤作動することなく測定し、適切な量のインキを版胴内に供給するとともに、版胴内のインキ量を基準の範囲内で確実に保つことが可能となる。
【0021】
本発明のインキ安定供給機構を有するインキ循環機構により、余剰インキを再使用することが可能となるだけではなく、新規のインキと併せて回収したインキを用いて、適切な量のインキを版胴内に供給するとともに、版胴内のインキ量を一定に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のインキ循環装置(S)を備えたロータリースクリーン印刷機(M)を示す模式図である。
図2】本発明のインキ安定供給機構(N1)を有するインキ循環装置(S)の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第一流量供給手段(8−1)の構成を示す模式図である。
図4】本発明のインキ循環方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他様々な実施の形態が含まれる。
【0024】
まず、ロータリースクリーン印刷機(M)について簡単に説明した後、本発明のインキ安定供給機構(N1)及びそのインキ安定供給機構(N1)を有するインキ循環装置(S)の実施の形態について説明する。図1は、本発明のロータリースクリーン印刷機(M)におけるインキ安定供給機構(N1)及びそのインキ安定供給機構(N1)を有するインキ循環装置(S)を示す模式図である。
【0025】
ロータリースクリーン印刷機(M)は、印刷部(1)を備えるとともに、図示しない給紙部、排紙部等を備えている。給紙部は、給紙手段等を備えており、積載手段から印刷部(1)へ紙(図示省略)を供給するものである。
【0026】
印刷部(1)は、版胴(2)、スキージ(3)、支持体(4)、更には図示しない圧胴、回転体、固定具等を備えている。
【0027】
圧胴及び版胴(2)は、紙を介して対向するように配置されており、印刷時に圧胴が時計回りに回転駆動し、版胴(2)が反時計回りに回転駆動する。その際、版胴(2)の中空内部に供給されたインキを、支持体(4)により版胴(2)内に上向きに支持されたスキージ(3)を用いて、版胴(2)内から紙へと押し出すことで、紙に模様及び画線等の印刷画像を形成する。紙に転移しなかったインキは、スキージ(3)により掻き出すことで版胴(2)内に流れ落ち、再度供給される。
【0028】
さらに、印刷部(1)は、本発明の特徴点であるエアを用いて版胴(2)内のインキ量を測定し、必要量のインキを供給するインキ安定供給機構(N1)を備える。
【0029】
オフセット印刷及び凹版印刷等は、インキの残量を目視により確認しながら印刷することができるが、ロータリースクリーン印刷機(M)は、中空円筒状の版胴(2)を用いることから、印刷中に版胴(2)内のインキ量を確認することができない。よって、版胴(2)内のインキ量が減ることに起因する、画線切れ、濃度ムラ等の印刷不良が発生することがある。
【0030】
そこで、本発明においては、エアを用いて版胴(2)のインキ量を測定するインキ安定供給機構(N1)を設置することとした。エアを用いてインキ量を測定することで、特許文献1の技術におけるセンサにインキが付着することに起因する、センサの誤作動が発生することなく、インキ量を測定することが可能となる。
【0031】
また、詳細については後述するが、本発明においては、エアを版胴(2)内のインキ中に吐出する際に発生するエアの流量の変化によりインキ量を算出する。エアの流量値は、版胴(2)内におけるインキの全体量に対して一定であることから、印刷中に版胴(2)の軸方向に対して、両端部と中央部でインキ量に偏りが出た場合においても、インキ量を正確に測定することが可能となる。よって、エアを用いて正確なインキ量を測定し、その測定したインキ量を基に、適切な量のインキを供給することが可能となる。
【0032】
図2は、本発明のインキ安定供給機構(N1)を有するインキ循環装置(S)の構成を示すブロック図である。なお、図2においては、インキ安定供給機構(N1)及びインキ回収機構(N2)から成るインキ循環装置(S)をブロック図で示しているが、まず始めに、本発明の特徴点であるインキ安定供給機構(N1)について説明し、そのインキ安定供給機構(N1)と、他の機構となるインキ回収機構(N2)を有するインキ循環装置(S)については後述する。
【0033】
図1の模式図及び図2のブロック図を基に説明する。インキ安定供給機構(N1)は、前述のとおり、エアを用いて版胴(2)内のインキ量を測定した後、測定したインキ量に基づき、必要量のインキを版胴(2)内に供給する機構である。
【0034】
インキ安定供給機構(N1)は、版胴(2)内のインキ量をエアを用いて測定するための減圧手段(7)及びエアの変動状態を測定する流量測定手段(8)と、インキを版胴(2)内に均一に供給するための供給手段(5)を少なくとも有しており、それぞれがエア配管を介して接続して構成されたインキ供給部(Q1)と、そのインキ供給部(Q1)を構成する各部の動作を制御する制御部(Q2)により構成されている。
【0035】
まず、インキ供給部(Q1)から説明することとする。インキ供給部(Q1)を構成している供給手段(5)は、支持体(4)上に設置された版胴(2)内にインキを供給する手段であり、スキージ(3)の幅方向と略同一の長さで、上部にインキを投入する投入部(19)と、下部にインキを均一に版胴(2)内に供給するガイド(6)を有する供給部(20)が設置された容器状である。
【0036】
前述のとおり、ロータリースクリーン印刷は、印刷中に供給部(20)から版胴(2)内に供給されたインキが、版胴(2)内を落下中に軸方向の中心に集まる傾向にある。よって、印刷中において版胴(2)の長辺方向における両端部からインキが少なくなり、印刷品質のムラが発生する。そこで、インキの落下時間を少なくなるために、ガイド(6)を設け、ガイド(6)上を流れ落ちながら版胴(2)内に供給することで、スキージ(3)の幅方向に均一な状態で版胴(2)に供給することが可能となる。
【0037】
なお、ガイド(6)は、インキがスキージ(3)の幅方向に均一な状態で流れ落ちるように、形状を適宜設定するが、より均一に流れ落ちるために、支持体(4)に対して垂直より角度をつけて取り付けることが好ましい。
【0038】
また、供給部(20)においては、ガイド(6)上に供給するインキ量を調整する開閉部(図示せず)を更に有しても良い。この開閉部は、開度の調整により供給手段(5)内のインキの流れ落ちる量を調整可能な開閉式の羽根であり、バネ付丁番により供給部(20)に設置される。なお、開閉部の開度は、インキの粘度及び所望の版胴(2)内へのインキ供給量に合わせて適宜設定しておく。
【0039】
減圧手段(7)は、版胴(2)に対してエアを用いて供給手段(5)内のインキ量を測定する際に用いるエアを供給する手段である。
【0040】
減圧手段(7)は、図示しないエア源からのエアを、供給手段(5)内のインキに対してエアを用いてインキ残量を測定するために、あらかじめ設定した一定量のエアを連続供給する手段である。
【0041】
供給手段(5)内のインキ量を測定する際に用いるエアは、インキ粘度に応じて測定に必要なエア圧を有する。詳細については後述するが、本発明においては、エアを版胴(2)内のインキ中に吐出する際に発生するエアの流量の変化によりインキ量を算出する。したがって、インキ粘度は高くなるほどインキ流動性も高くなることから、流動性の高いインキに対してエアを吐出した場合、エアの流量の変化が少なくなり、インキ量を測定しづらくなる。
【0042】
反対に、流動性の低いインキに対してエアを吐出した場合、エア圧により供給手段(5)内からインキが溢れ出てしまい、好ましくない。さらに、インキ液面が変動し、正確なインキ量を測定することができなくなる。よって、インキ粘度に適したエアを減圧手段(7)から供給する必要がある。なお、エアの強さについては、あらかじめ印刷に用いるインキの粘度を測定しておき、その粘度に合わせて適宜エア圧を設定する。
【0043】
なお、エア源は、一般的なコンプレッサを用いるが、コンプレッサは、貯蔵容量によりエア圧に変動が発生しやすい。例えば、エアの貯蔵容量が小さい場合には、コンプレッサの運転停止によりエア圧の変動が起きる。よって、減圧手段(7)によりエア源からのエアを減圧させた後、後述する流量測定手段(8)に供給することで、エア圧を基に測定するインキ残量を安定して測定することが可能となる。
【0044】
コンプレッサのエアの貯蔵量が大きい場合には、コンプレッサを本実施形態における減圧手段(7)として用いることが可能である。一方、コンプレッサのエアの貯蔵量が小さい場合には、エア源と、レギュレータ及びバルブ等のエア圧力を減圧させる手段とを、減圧手段(7)として用いる。レギュレータとは、エアの圧力を所望の圧力に下げる減圧制御弁のことである。レギュレータには汎用タイプと精密タイプがあるが、インキ残量をより正確に測定するためには、精密タイプが好ましい。また、バルブを用いてエアを制御することも可能である。
【0045】
本実施形態においては、インキの微量な変動を測定することから、微量なエア流量値の変動を測定する必要がある。よって、コンプレッサのエア圧が約0.05〜0.2M・Paの小さいエア圧で変動が少ない場合には、減圧の必要はない。一方、一般的な公知の印刷機械に用いるコンプレッサのエア圧は、約3.0〜5.0M・Paと大きい。よって、大きいエア圧では、微量なエア流量値の変動を測定することができないことから、エア圧の変動が少ない場合でも、エアを減圧させる必要がある。
【0046】
流量測定手段(8)は、供給手段(5)内のインキ量を測定する際に用いるエアの流量値を測定する手段であり、版胴(2)外に、エア配管を介して減圧手段(7)と接続して設置する。なお、エア配管は、インキ安定供給機構(N1)を構成する各手段を繋ぐ管であり、銅配管及びチューブ等のエアを供給可能な管であれば特に限定しない。
【0047】
流量測定手段(8)は、第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)を少なくとも備えている。減圧手段(7)からのエアは、エア配管により二つの経路に分岐される。その分岐した二つの経路の一方の経路に第一流量測定手段(8−1)を備え、他方の経路に第二流量測定手段(8−2)を備える。
【0048】
第一流量測定手段(8−1)は、供給手段(5)に供給されるエアの流量値(以下「エア流量値」という。)を測定する手段であり、第二流量測定手段(8−2)は、版胴(2)外の、所謂、大気中に放出されるエア流量値を測定する手段である。第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)は、いずれも減圧手段(7)及び供給手段(5)とエア配管を介して接続して設置されている。
【0049】
図3は、第一流量測定手段(8−1)の構成を示す模式図である。減圧手段(7)からのエアは、エア配管により二つの経路に分岐される。その分岐した二つの経路の一方の経路に第一流量測定手段(8−1)を備える。第一流量測定手段(8−1)は、エア配管を介して供給手段(5)と接続している。図3に示すように、エア配管の先端部の実際にエアが吐出される吐出口(21)については、供給手段(5)内のインキ中に配置されるが、エア配管の先端部の吐出口(21)からは、減圧手段(7)から供給されたエアが連続的に供給されることから、吐出口(21)自体がインキ中に配置されていても、更には供給手段(5)内のインキ量が増加しても、エア配管内にインキが入ることはない。
【0050】
図3のように、インキ中に配置されたエア配管の先端部の吐出口(21)は、供給手段(5)内のインキが減少しても必ずインキ中に配置されなければならないため、供給手段(5)の底部にほぼ近接(接しない)する程度の距離(w)を有するように配置することとなる。
【0051】
エア流量値とは、一定時間に流れている気体の量をいい、本発明においては、減圧手段(7)から供給されたエアが、エア配管から供給手段(5)内に供給される際に、エア配管の吐出口(21)から一定時間に流れているエアの量をいう。
【0052】
供給手段(5)は、インキ量の増減によりインキ液面が上昇又は下降し、減圧手段(7)からエアを供給するエア配管の吐出口(21)にかかる水(インキ)圧が大きくなる。それにより、水(インキ)圧が負荷となることで、供給手段(5)内のエア流量値が増減する。その増減するエア流量値を測定し、あらかじめ設定した供給手段(5)内にインキが十分に供給されているときのインキ液面高さにおけるエア流量値と比較することで、供給手段(5)内のインキ量を測定することが可能となる。
【0053】
なお、第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)としては、公知の流量計を用いることができ、例えば、キーエンス社製の流量計(センサヘッド:FD-V40シリーズ、アンプ:FD-V40A)等を用いることができる。
【0054】
また、流量測定手段(8)は、さらに、差圧測定手段(8−3)を備えても良い。
【0055】
差圧測定手段(8−3)とは、第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)により測定したエア流量値を基に、エアの圧力差(以下「差圧」とする。)を測定する手段であり、版胴(2)外における第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)の間に、エア配管を介して接続して設置する。
【0056】
前述した第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)のみであっても、後述する制御部(Q2)を用いて演算を行うことにより、供給手段(5)内のインキ量を算出することが可能である。しかしながら、その場合は、第一流量測定手段(8−1)と第二流量測定手段(8−2)のそれぞれのエア流量値を、二つの信号としてそれぞれ演算を行うことでインキ量を算出することから、処理に若干の時間を要することがある。
【0057】
しかし、差圧測定手段(8−3)は、第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)のエアの差圧を測定している。エアの差圧を用いて、供給手段(5)内のインキ量を算出する場合には差圧のみであり、制御部(Q2)で一つの信号として捉えることが可能となる。よって、二つの信号を用いて演算を行う必要はなく、短時間で処理を行い、インキ量を算出することが可能となる。なお、差圧測定手段(8−3)としては、公知の差圧計を用いることができ、例えば、キーエンス社製の差圧計(微差圧センサ:JP208-F、JP208-G)等を用いることができる。
【0058】
前述のとおり、供給手段(5)内のインキ量を測定するために、減圧手段(7)から供給されるエアを二つに分岐して、一方を第一流量測定手段(8−1)に、他方を第二流量測定手段(8−2)に供給して、その流量値によりインキ量を測定するか、又はそれぞれに対する差圧により、インキ量を測定する方法について説明したが、二つに分岐されるエアについては、必ずしも二等分とする必要はない。
【0059】
例えば、減圧手段(7)からのエアを100%とした場合、第一流量測定手段(8−1)に40%のエアを供給し、第二流量測定手段(8−2)に60%のエアを供給しても良い。この場合、基準となる両方の測定手段における流量値であることを適切に把握してあれば問題とはならない。ただし、両方の流量値のバランスにより、インキ量の増減を判断するため、50%ずつにエアを供給する方がインキの増減を把握することが容易となり、好ましい。
【0060】
さらに、第一流量測定手段(8−1)と第二流量測定手段(8−2)に供給するエアの割合を測定する基準時については、供給手段(5)内にインキが空の状態のときを基準としても良いし、もっとも適切なインキ量が供給手段(5)内に供給されている状態時の流量値を基準としても良く、どちらにおいても、基準とした条件時に両方のエアの流量値がどのようなバランスを保っているのかを把握しておくことが重要となる。ただし、エア配管の長さや大きさ等により、エアの流量値は微妙に異なるため、インキが供給手段(5)内にある状態で流量値を図っても、正確なエアの流量値となっているか、疑問を生じることもあるため、前者の供給手段(5)内にインキが空の状態のときに両方のエアの流量値を測定し、それを基準としておくことが好ましい。
【0061】
インキ安定供給機構(N1)は、さらに、基準流量測定手段(9)を備えても良い。
【0062】
基準流量測定手段(9)とは、減圧手段(7)から供給されたエアを、第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)で測定する前に、減圧手段(7)からのエアが、あらかじめ設定した基準のエア流量値であるか否かを測定する手段であり、減圧手段(7)と、第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)との間に、エア配管を介して接続して設置する。
【0063】
減圧手段(7)においては、コンプレッサ及びエアタンク等の圧縮されたエアを供給する手段からのエアを用いている。したがって、コンプレッサの駆動開始時及び終了時のようにコンプレッサのエア貯蔵容量に起因する減圧手段(7)から供給されたエアに変動がある場合は、第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)に供給されるエア量は一定ではなく、上下に変動したエア量が供給されることから、供給手段(5)内に送られるエア量も上下に変動したエア量が供給されてしまう。そうなると供給手段(5)内のインキ量を正確に測定することができなくなる。
【0064】
よって、第一流量測定手段(8−1)及び第二流量測定手段(8−2)にエアを供給する前に、エア変動の有無を測定し、エア変動が激しい場合には、減圧手段(7)を調整して、より正確に供給手段(5)内のインキ量を測定することが可能となる。なお、減圧手段(7)の調整については、手動で行っても良いし、基準流量測定手段(9)と減圧手段(7)とが連動してエア変動を常に一定に保つことでも良い。
【0065】
制御部(Q2)とは、インキ供給部(Q1)を構成する各部の動作を制御する部位である。なお、制御部(Q2)においては、後述するインキ安定供給機構(N1)を用いたインキ循環装置(S)を構成する各部の動作についても制御を行うが、その点については後述する。
【0066】
制御部(Q2)は、演算手段(15)、比較手段(16)、A−D変換手段(17)、記憶手段(18)を少なくとも備えている。
【0067】
演算手段(15)は、インキ供給部(Q1)を構成する各部で測定した測定値を、あらかじめ設定した演算方法により演算する手段である。例えば、第一流量測定手段(8−1)において測定したエア流量値を、演算手段(15)により、あらかじめ設定した演算方法により演算することで、供給手段(5)内のインキ量を算出する。
【0068】
比較手段(16)は、演算手段(15)における演算結果と、あらかじめ設定した基準となる値とを比較する手段である。また、比較手段(16)においては、その比較結果を基に、各部の動作の制御も行う。例えば、演算手段(15)により算出した供給手段(5)内のインキ量と、あらかじめ設定した基準となるインキ量とを比較し、供給手段(5)内のインキ量が基準となるインキ量以下である場合には、供給手段(5)内にインキを供給する。
【0069】
A−D変換手段(17)は、インキ供給部(Q1)を構成する各手段で測定した測定値を、アナログ信号からデジタル信号に変換する手段である。インキ供給部(Q1)を構成する各手段で測定した測定値が、アナログ信号であった場合には、演算手段(15)において演算可能とするために、A−D変換手段(17)でデジタル信号に変換する。
【0070】
前述した第一流量測定手段(8−1)、第二流量測定手段(8−2)及び差圧測定手段(8−3)が図示しないセンサアンプを有している場合、各手段で測定する数値は、電流又は電圧の変化としてアナログ信号により出力される。よって、A−D変換手段(17)によりアナログで出力された信号を、デジタル信号に変換する。
【0071】
記憶手段(18)は、供給手段(5)内のインキ量を測定する際に用いる、あらかじめ設定した基準値や、インキ供給部(Q1)を構成する各手段において測定及び設定した値を記憶しておく手段である。
【0072】
前述のとおり、本発明の目的は、ロータリースクリーン印刷機(M)における版胴(2)内のインキ量を誤作動することなく測定し、適切な量のインキを版胴(2)内に供給することである。本実施形態においては、印刷部(1)にインキ供給部(Q1)を設置することで、供給手段(5)内のインキ量を、エアを用いて測定することが可能となる。よって、供給手段(5)内のインキ量を測定し、過不足となった場合には、その測定したインキ量に応じてインキを供給手段(5)内に投入することで、安定して印刷を行うことが可能となる。
【0073】
供給手段(5)内のインキが減少するにつれて、インキが供給手段(5)内の供給部から吐出される際に、ガイド(6)の幅方向に均一に流れ落ちなくなることがある。よって、版胴(2)内における中央部にはインキが供給されるが、両端部にはインキが不足し、インキの不足に起因する画線切れが発生することがある。また、画線切れが発生しない場合でも、均一に流れ落ちない場合には、中央部と両端部でインキの濃度ムラが発生してしまう。
【0074】
しかしながら、インキが供給される版胴(2)の内部においては、印刷中に観察することはできない。よって、供給手段(5)に供給されたインキが、前述したガイド(6)の幅方向に均一に流れ落ちているかを確認することは困難である。
【0075】
したがって、インキ供給部(Q1)においては、さらに、インキ監視手段(14)を設けて、ガイド(6)上を流れ落ちるインキが、幅方向に均一であるか否かを監視する機構とすることが好ましい。
【0076】
インキ監視手段(14)とは、ガイド(6)上を流れ落ちるインキが、ガイド(6)における長辺方向に均一に流れ落ちているかを監視する手段である。インキ監視手段(14)を設けることにより、ガイド(6)上でインキが均一に流れ落ちていない場合には、版胴(2)の両端部において画線切れが発生する前にインキを供給することで、印刷不良を抑えることが可能となる。
【0077】
インキ監視手段(14)においては、ガイド(6)上における版胴(2)と近接した先端に設けることとする。インキは、供給手段(5)から供給された後、ガイド(6)上を支持体(4)に対して下方に流れ落ちた後、ガイド(6)の先端から版胴(2)内に落下することで供給される。よって、ガイド(6)の先端に設けることで、幅方向にインキが均一に流れ落ちているかを監視することが可能となる。
【0078】
インキ監視手段(14)としては、カメラ及びセンサ等、インキの有無を直接又は間接的に検出することが可能な出力手段を用いる。カメラを用いた場合には、版胴(2)内におけるインキが付着せず、かつ、幅方向を十分に撮像可能な位置に設置する。センサを設けた場合には、ガイド(6)の長辺方向における両端部における少なくとも一方に設け、好ましくは両端部に一か所ずつ設けることが、好ましい。なお、センサとしては、一般的な光電センサを用いることができる。
【0079】
光電センサとは、投光部から信号光を発射し、検出物体によって反射又は遮光させる光を検出することで出力信号を得るセンサである。ガイド(6)の長辺方向の両端部にセンサを設けることで、幅方向に十分にインキが供給されているかを検出することが可能なる。
【0080】
インキ監視手段(14)において監視した結果、幅方向にインキが均一に流れ落ちていない場合、供給手段(5)のインキ滞留を確認し、必要に応じて滞留するインキを除去する。また、供給手段(5)内にインキが少なくなってきた場合においても、インキは、幅方向から中央部に集まることから、インキが幅広く均一にガイド(6)を流れて行かないため、インキを適宜投入する。
【0081】
以上のように、インキ供給部(Q1)におけるインキ量を、エアを用いて測定した結果及びインキ監視手段を用いてインキの流れ落ち状態を確認した結果により、供給手段(5)内のインキが許容範囲を下回る状態に近くなった場合に、制御部においてインキ供給の命令が発せられ、供給手段(5)に適切なインキ量が供給されることとなる。したがって、ロータリースクリーン印刷機(M)の運転を停止することなくインキを供給することが可能となる。
【0082】
また、本発明は、前述のとおり、ロータリースクリーン印刷機(M)の運転を停止しない状態でインキの自動供給を行う点が特徴ではあるが、さらに、インキ回収機構(N2)を設けることで、運転中の余剰インキを連続的に回収し、回収インキを新規インキとともにロータリースクリーン印刷機(M)の印刷部(1)に供給する機構とすることが可能であることから、インキ回収機構(N2)とインキ安定供給機構(N1)を有するインキ循環装置(S)について説明する。
【0083】
インキ回収機構(N2)とは、印刷中において供給手段(5)から版胴(2)内に供給したインキのうち、紙に転移しなかった余剰インキを回収し、再度インキ安定供給機構(N1)における供給手段(5)により、再供給可能とする機構のことである。インキ安定供給機構(N1)に付随してインキ回収機構(N2)を設けることで、停滞インキによる品質の低下や、インキの再利用によるコスト低減等、常に安定的したインキ供給を維持することができるため、ロータリースクリーン印刷機(M)の運転を停止しないまま印刷することができることに寄与している。
【0084】
インキ回収機構(N2)は、回収手段(10)、回収ポンプ(11)、貯蔵手段(12)及び供給ポンプ(13)を少なくとも備えており、それぞれがインキ配管(図示せず)を介して接続している。
【0085】
回収手段(10)は、版胴(2)内に供給されたインキのうち、紙に転移されずに版胴(2)の内周面に付着したインキをスキージ(3)で掻き取った余剰インキを回収する手段である。
【0086】
回収手段(10)は、上部に余剰インキを回収する開口部(22)を有する容器であり、支持体(4)上におけるスキージ(3)下部に設置することで、スキージ(3)上を流れ落ちる余剰インキを開口部(22)から回収する。なお、回収手段(10)における開口部(22)は、スキージ(3)の長辺方向と略同一の長さとすることが好ましい。略同一の長さとすることで、スキージ(3)上を流れ落ちる余剰インキを、効率的に回収することが可能となる。
【0087】
回収ポンプ(11)は、回収手段(10)で回収した余剰インキを吸引した後、後述する貯蔵手段(12)へインキを供給する手段である。なお、この回収ポンプ(11)については、チューブポンプ及びラジアルベーンポンプ等、公知のポンプを用いることが可能である。
【0088】
この回収ポンプ(11)は、ロータリースクリーン印刷機(M)外の近傍に、回収手段(10)とインキ配管を介して接続し、設置される。
【0089】
次に、貯蔵手段(12)は、回収手段(10)により回収した余剰インキと、未供給のインキである新規インキを貯蔵する手段であり、図示しないかくはん機及び温度計等のインキ粘度を調整する手段を有する。
【0090】
この貯蔵手段(12)においては、貯蔵する余剰インキ及び新規インキを再度印刷に用いることを可能とするために、適宜インキのかくはん及び温度管理を行い、インキの粘度を管理及び調整する。インキの粘度を管理及び調整することで、余剰インキと新規インキの粘度を均一にすることが可能となり、安定した粘度のインキを再度供給することが可能となる。さらには、新規インキの劣化を防ぐことも可能となる。
【0091】
また、貯蔵手段(12)においては、貯蔵手段(12)内のインキ量を測定する重量計を更に有しても良い。重量計によりインキ量を測定し、インキ量が少ない場合には、貯蔵手段(12)内に新規インキを投入することで、安定した量のインキ供給を行うことを可能とする。
【0092】
なお、貯蔵手段(12)は、ロータリースクリーン印刷機(M)外の近傍に回収手段(10)とインキ配管を介し、接続して配置する。
【0093】
次に、供給ポンプ(13)とは、貯蔵手段(12)のインキを供給手段(5)へ供給する手段であり、版胴(2)外に、インキ配管を介して貯蔵手段(12)及び供給手段(5)と接続して配置される。なお、この供給ポンプ(13)は、チューブポンプ及びラジアルベーンポンプ等、公知のポンプを用いることが可能である。
【0094】
なお、供給ポンプ(13)は、インキ安定供給機構(N1)において測定した供給手段(5)内のインキ量に応じて、制御部(Q2)により動作を制御しながら、供給手段(5)へインキを供給する。供給手段(5)内のインキ量が、あらかじめ設定した残量以下となったときに、制御部(Q2)により供給ポンプ(13)を動作することで、貯蔵手段(12)からインキが供給ポンプ(13)を介して、供給手段(5)内へと供給することが可能となる。その後、供給手段(5)内のインキ量が、あらかじめ設定した量となった場合には、制御部(Q2)により供給ポンプ(13)の動作を停止することで、インキの供給が停止される。この動作を繰り返すことで、必要量のインキを供給手段(5)内に連続供給することが可能となる。
【0095】
インキ安定供給機構(N1)とインキ回収機構(N2)を構成している各手段とを繋ぐインキ配管(図示せず)は、インキ回収機構(N2)を構成する各手段を繋ぐ管であり、銅配管及びチューブ等、インキを供給可能な管を用いる。
【0096】
以上、インキ循環装置(S)においては、インキ安定供給機構(N1)に加え、インキ回収機構(N2)を設置することで、ロータリースクリーン印刷機(M)における版胴(2)内の余剰インキを回収した後、適切な量のインキを版胴(2)内に連続的に供給することが可能となった。
【0097】
次に、ロータリースクリーン印刷機(M)において、インキを常に安定して供給するため、版胴(2)内の供給インキの量を測定するとともに、紙に転移されなかった余剰インキを回収し、その回収したインキと新規インキの供給量を測定した結果に基づき、適切な量のインキを供給していくインキ循環方法について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、このインキ循環方法については、前述したインキ循環装置(S)を用いることが好ましいが、これに限定されるものではなく、各ステップが問題なく遂行可能であれば特に前述したインキ循環装置(S)を用いなくても良い。
【0098】
まず、ステップ1(S1)として、版胴(2)内にエア配管を通してエアを供給する。このエアについては、コンプレッサ等のエア源からのエアを一定量として、連続供給する工程である。このエア源となるコンプレッサについては、エアの貯蔵量が大きい場合には、そのまま用いることができるが、貯蔵量が小さい場合には、エアの圧力を減圧させる手段を用いることが好ましい。エアを減圧させる具体的な装置としては、レギュレータ及びバルブ等があり、前述したインキ安定供給機構(N1)において詳細を説明したため、ここでの説明は省略する。
【0099】
このエアは、版胴(2)内のインキ量を確実に測定するために用いるものであり、エア源からのエア(エアの圧力を減圧させた場合には、その手段からのエア)を二つに分岐した二股のエア配管を介して一方を版胴(2)内の印刷前のインキ中に供給し、他方を版胴(2)外の、所謂、大気中に供給する。二股に分岐されたエアの流量値に対する差圧を測定することにより、版胴(2)内の供給用のインキの量を確実に測定する。このインキ中に供給されたエアの流量値と、大気中に供給されたエアの流量値を測定するための手段については、公知の流量計を用いれば良い。なお、ステップ1(S1)においては、版胴(2)内に供給するエアは、インキが空の状態において供給する。
【0100】
本実施形態においては、後述するが版胴(2)内の供給用のインキ量を、インキの液面の上昇又は下降に伴い変動するエア流量値と、大気中に放出されたエアの差により、インキ量を算出する。よって、エア源からのエア(エアの圧力を減圧させた場合には、その手段からのエア)を二つに分岐し、それぞれ各流量値を測定するための手段に供給する。
【0101】
なお、エアの差圧を用いて版胴(2)内の供給用のインキ量を測定するために、エアを二つに分割して供給するが、等分に分割することに限らず、適宜分割することが可能である。例えば、エア源からのエアを100%とした場合、一方の流量値を測定するための手段に40%のエアを供給し、他方の流量値を測定するための手段に残りの60%のエアを供給することも可能である。
【0102】
二つに分割してエアを供給するときのエアの流量については、版胴(2)内にインキが空の状態のときを基準として、そのときの両方のエアの流量値を測定しておいても良いし、もっとも適切なインキ量が版胴(2)内に供給されている状態時の流量値を基準としても良く、どちらにおいても、基準とした条件時に両方のエアの流量値がどのようなバランスを保っているのかを把握しておくことが重要となる。ただし、エア配管の長さや大きさ等により、エアの流量値は微妙に異なるため、インキがある状態で基準を図っても、正確なエアの流量値となっているか疑問を生じることもあるため、前者の版胴(2)内にインキが空の状態のときに両方のエアの流量値を測定し、それを基準としておくことが好ましい。
【0103】
この場合、ステップ1(S1)においては、版胴(2)内の供給用のインキが空の状況と、版胴(2)外の大気中にエアを供給している。よって、一方の流量値を測定するための手段に40%のエアを供給し、他方の流量値を測定するための手段に60%のエアを供給したときのエアの流量値が、版胴(2)内の供給用のインキが空になったときのエア流量値となる。
【0104】
なお、ステップ1(S1)では、エアを二等分に分割して差圧によりインキ量を測定するため、二つの流量値の差を容易に把握するためには、50%ずつのエアを各流量値を測定するための手段に供給することが好ましい。
【0105】
エアを供給するエア配管の長さ及び径等の大きさにより、エア流量値は若干変動する。そのため、各流量値を測定するための手段に同じ量のエアを供給することで、エア配管のロスがどれくらいかを算出しやすくなることから、より正確に版胴(2)内の供給用のインキ量を測定することが可能となる。以下、本実施形態においては、各流量値を測定するための手段にエア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)からエアを50%ずつ供給したとして説明する。
【0106】
なお、版胴(2)内に送られるエアは、インキの粘度に合わせて設定することが好ましい。
【0107】
版胴(2)内の供給用のインキ量は、エア配管の先端部がインキ内に完全に埋没した状態にてその先端部にかかる水圧に起因するエア流量値の増減により測定している。よって、同じ量(液面高さ)のインキに対して、同じ圧力のエアを吐出した場合でも、インキの粘度が高ければ、強い圧力がかかり、反対にインキの粘度が低ければ、弱い圧力がかかる。よって、インキの粘度により、エア流量値は変化することから、インキ粘度に併せて、あらかじめエア流量値を設定することが好ましい。なお、印刷中におけるインキ量の増減を測定するため、エア配管の先端部は、常にインキ内に埋没した状態でなければならない。そのため、先端部は版胴(2)内の供給用のインキが貯蔵されている容器に対して、できる限り底部に近いところまで配置するようにする。
【0108】
なお、ステップ1(S1)の前に、準備工程としてのステップ0(S0)として、版胴(2)内の供給用のインキ量を安定して測定するために、エア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)からエアを二股に分岐する前のところで、二股に分岐するエアの流量値を測定する手段に供給するエアの変動値を測定しておくことが好ましい。例えば、前述したインキ安定供給機構(N1)における減圧手段(7)からのエアの変動値を測定しておくことが、本ステップ0(S0)に該当する。
【0109】
エアの変動値とは、あらかじめ設定したエア流量値から、どれくらい上下に変動しているかを示す値のことである。エア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)から供給されるエアは、コンプレッサの駆動開始時、終了時及びコンプレッサのエアの貯蔵容量により、あらかじめ設定したエアの流量に対して上下にあばれ(変動)が発生する。よって、エア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)からのエアが、コンプレッサの駆動開始時、終了時及びコンプレッサのエアの貯蔵容量により、あらかじめ設定したエア流量値からどれくらい変動するかを測定しておくことで、仮に、エア流量値が変動した場合でも、版胴(2)内の供給用のインキ量を正確に測定することが可能となる。
【0110】
次に、ステップ2(S2)として、版胴(2)内のインキ量の増減を用いて、実際のインキ量を測定する。このステップ2(S2)については、インキ量の増減により変動するエア流量値を、前述した二股に分割されたエアの流量値を測定するそれぞれの手段により測定する方法(S2-1)と、エアの差圧を測定することにより、インキ量を測定する方法(S2-2)の二通りのインキ量の測定方法がある。まず、二股に分割されたエアの流量値をそれぞれの手段により測定する方法(S2-1)について説明し、次にエアの差圧を測定することにより、インキ量を測定する方法(S2-2)について説明する。
【0111】
エア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)から供給したエアは、二等分に分割した後、両方の配管に設けられている流量値を測定する各々の手段に、50%ずつのエアを供給する。なお一方の流量値を測定するための手段に供給したエアは、前述した図3に示すように、エア配管の吐出口(21)から版胴(2)内のインキ(I)中に連続的に吹き付ける。
【0112】
前述のとおり、ステップ1(S1)において、版胴(2)内の供給用のインキが貯蔵してある容器にインキが入っていない空の状態のときに、エアの流量値を測定するための二つの手段にエアを50%ずつ供給する。よって、版胴(2)内にインキが供給されることでインキ液面(h)が上昇し、エア配管の吐出口(21)にかかる水圧が大きくなる。それにより、水圧が負荷となることで、版胴(2)内の供給用のインキのエア流量値が減少する。
【0113】
例えば、版胴(2)内にインキが供給されることで、エア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)からのエアは、50%から30%へと減少する。版胴(2)内に供給されるエア流量値は一定であることから、版胴(2)内で減少したエア流量値は、負荷がかからない版胴(2)外の、所謂、大気中へと排出される。例えば、50%から30%へと減少した場合には、差の20%のエアが大気中へと放出される。
【0114】
一方、版胴(2)内のインキ量が減少した場合には、インキ液面(h)が下降し、エア配管の吐出口(21)にかかる水圧が小さくなり、版胴(2)内のエア流量値が増加する。版胴(2)内に供給するエア流量値は一定であることから、版胴(2)内で増加した分のエア流量値は、大気中から流れ込むことで、その分大気中に供給するエア流量値が少なくなる。
【0115】
版胴(2)内の供給用のインキがなくなり、インキ切れが発生したときには、二股に分割されたエアの流量値の差はなくなり、それぞれに50%のエアがエア源から供給された状態となる。
【0116】
以上、ステップ2(S2-2)においては、エア源から供給されたエアを二股に分割したエア流量値を測定することで、版胴(2)内のインキ量の増減を測定することが可能となる。二股に分割されたエアを測定した各々のエア流量値は、後述する基準の流量値との比較に用いるために記憶しておくことが好ましい。
【0117】
次に、ステップ2(S2-2)として、エア源から供給されたエアを二股に分割したエア流量値を基に、二つの測定されたエア流量値の差圧を測定することにより、インキ量を測定する方法について説明する。
【0118】
ステップ2(S2-2)においては、前述したステップ2(S2-1)と同様に、版胴(2)内のインキ量の増減により変動するエア流量値を、エア源から供給されたエアを二股に分割したところで測定する。
【0119】
前述のとおり、ステップ2(S2)においては、エア源から二股に分割されたエアについては、版胴(2)内のインキ量の増加により、一方のエア流量値が減少した場合には、その減少したエア流量値と同じ量のエア流量値が増加したエアを他方に供給する。反対に、版胴(2)内のインキ量の減少により、一方のエア流量値が増加した場合には、その増加したエア流量値と同じ量のエア流量値が減少したエアを他方に供給する。
【0120】
そもそも、エア源から二股に分割されたエアの割合が等しいときは、版胴(2)内に供給用のインキが入っていない空の状態である。よって、版胴(2)内に、インキ量が十分に供給されていないときには、エア源から供給されて二股に分割されたエアの流量値に変動はない。
【0121】
一方、版胴(2)内に、インキ量が十分に供給されているときには、二股に分割されたエアの流量値に差が生じる。よって、それぞれエア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)から異なるエアの圧力が掛かる状態となり、二股に分割されたエアの間での差圧が大きくなる。よって、インキ量に対して変動するエアの差圧を基に、実際のインキ量を測定することが可能となる。測定したエアの差圧は、後述する基準の流量値との比較に用いるために記憶しておくことが好ましい。
【0122】
次に、ステップ3(S3)として、ステップ2(S2-1)において測定したエア流量値と、あらかじめ設定した基準となるエア流量値とを比較するか、又はステップ2(S2-2)において測定したエアの差圧と、あらかじめ設定した基準となるエアの差圧とを比較する。
【0123】
まず、ステップ2(S2-1)において測定したエア流量値と、あらかじめ設定した基準となるエア流量値とを比較する方法としては、エア源から供給されて二股に分割されたエアの流量値の差を求める。次に、求めたエア流量値の差が、あらかじめ設定した基準となるエア流量値の差の許容範囲内であるかを比較する。なお、あらかじめ設定した基準となるエア流量値については、記憶できる手段に記憶しておくことが好ましい。
【0124】
基準となるエア流量値の差とは、印刷物に印刷ムラが生じない、最低限のインキ量が版胴(2)内に入っているときに測定した、二股に分割されたエアの流量値の差のことをいう。基準となるエア流量値の差の許容範囲外である場合には、インキ量の不足により印刷ムラや画線切れが生じる。反対に過度にインキが多い場合においても、印刷ムラが生じる。
【0125】
よって、あらかじめ所望する印刷の濃度に合わせて、濃度の許容範囲を設定した後、基準となるエア流量値の差と、測定したエア流量値の差とを比較し、許容範囲内か否かを比較することで、インキ量の過不足を測定することが可能となる。なお、基準となるエアの流量値においては、印刷に用いるインキの粘度やエア源からのエア供給量により異なることから、用いるインキ及びエア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)を変更した際には、基準となるエアの流量値を適宜測定し直す必要がある。
【0126】
ステップ3(S3)における二つのエア流量値の比較方法としては、まず、二股に分割されたエアのエア流量値をデジタル信号とする。なお、測定したエア流量値がアナログ出力の場合には、A−D変換手段(17)によってアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0127】
最後に、デジタル信号に変換した二股に分割されたエアのエア流量値の差を求めた後、基準となるエア流量値の差と比較する。なお、基準となるエア流量値の差については、記憶可能な手段にあらかじめ記憶しておくことが好ましい。
【0128】
次に、ステップ3(S3)として、ステップ2(S2-2)において測定したエアの差圧と、あらかじめ設定した基準となるエアの差圧とを比較する方法について説明する。
【0129】
まず、エア源から供給されたエアを二股に分割した一方のエアの流量値と、他方のエアの流量値を基にエアの差圧を求める。なお、二股に分割されたエアに対する差圧を計測可能な手段を用いた場合には、別々のエア流量値から差圧を求める必要がないため、容易に差圧を求めることが可能である。
【0130】
次に、求めたエアの差圧が、あらかじめ設定した基準となるエアの差圧の許容範囲内であるかを比較する。
【0131】
基準となるエアの差圧とは、印刷物に印刷ムラが生じない、最低限のインキ量が版胴(2)内に入っているときに測定した、二股に分割されたエアの差圧のことをいう。エアの差圧においても、前述したエア流量値と同様に、あらかじめ所望する印刷の濃度に合わせて、濃度の許容範囲を設定した後、基準となるエアの差圧と、測定したエアの差圧を比較し、許容範囲内か否かを比較することで、インキ量の過不足を測定することが可能となる。
【0132】
なお、基準となるエアの差圧においては、印刷に用いるインキの粘度やエア源からのエア供給量により異なることから、用いるインキ及びエア源(エアの圧力を減圧するための手段を設ける場合には、その手段)を変更した際には、基準となるエアの差圧を適宜測定し直す必要がある。
【0133】
ステップ3(S3)におけるエアの差圧の比較方法としては、まず、二股に分割されたエアの差圧をデジタル信号とする。なお、測定したエアの差圧がアナログ出力の場合には、A−D変換手段(17)によりアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0134】
最後に、デジタル信号に変換した、二股に分割されたエアの差圧を基準となるエアの差圧と比較する。なお、基準となるエアの差圧については、記憶可能な手段にあらかじめ記憶しておくことが好ましい。
【0135】
ステップ3(S3)において比較した結果、あらかじめ設定した許容範囲内であった場合には、版胴(2)内に十分なインキ量があり、インキ供給を行う必要はない。
【0136】
一方、ステップ3(S3)において比較した結果、あらかじめ設定した許容範囲外であった場合には、版胴(2)内にインキが不足していることとなる。よって、次に、ステップ4(S4)としてインキを版胴(2)内に供給する。インキ供給後においては、再度ステップ2(S2)及びステップ3(S3)を行い、インキが十分に供給されたかを確認し、インキが不足している場合には、インキが十分に供給されるまでステップ2(S2)及びステップ3(S3)を繰り返し行う。
【0137】
インキの供給方法としては、印刷機(M)を停止した後、版胴(2)内にインキを投入する方法があるが、インキ循環装置(S)について説明したように、余剰インキを回収する機構や回収したインキと新規インキを貯蔵しておく手段、更には貯蔵してあるインキを、前述したインキ量の測定結果に基づいて版胴(2)内に自動で供給する手段を備えてあれば、印刷機(M)を停止することなく供給することが可能となる。
【0138】
なお、余剰インキを用いるインキ供給方法としては、ステップ5(S5)として、スキージ(3)で掻き取った紙に転移しなかった余剰インキを、版胴(2)内から回収する。回収した余剰インキは、インキ配管を介して貯蔵される。具体的に回収する機構等については、前述したインキ循環装置(S)における回収機構(N2)を用いることが可能である。
【0139】
次に、ステップ6(S6)として、回収した余剰インキをかくはん及び温度調整し、紙の転移に適したインキ粘度に調整する。かくはんの方法としては、インキを貯蔵してある手段にかくはん機を設けたり、棒やヘラ等のかくはん手段により、インキをかき混ぜたりすることで行う。また、温度調整の方法としては、インキを貯蔵してある手段に保温機を設けて、印刷に適した所望のみかけ粘度を有する温度となるように、適宜温度管理を行う。かくはん及び温度調整を行うことで、回収した余剰インキは、紙の転移に適したインキ粘度を有するインキとなる。インキ粘度調整後のインキを、再度版胴(2)内に供給することにより、無駄なくインキを利用して印刷を行うことが可能となる。
【0140】
なお、回収した余剰インキを貯蔵しておく手段にインキが足りない場合には、インキ粘度調整後の余剰インキに、未供給の新規インキを混合させた後、版胴内(2)へ供給する。
【0141】
また、新規インキを調整前の余剰インキと混合させた後、かくはん及び温度調整を行い、インキ粘度を調整しても良い。
【符号の説明】
【0142】
1 印刷部
2 版胴
3 スキージ
4 支持体
5 供給手段
6 ガイド
7 減圧手段
8 流量測定手段
8−1 第一流量測定手段
8−2 第二流量測定手段
8−3 差圧測定手段
9 基準流量測定手段
10 回収手段
11 回収ポンプ
12 貯蔵手段
13 供給ポンプ
14 インキ監視手段
15 演算手段
16 比較手段
17 A−D変換手段
18 記憶手段
19 投入部
20 供給部
21 吐出口
22 開口部
M ロータリースクリーン印刷機
S インキ循環装置
N1 インキ安定供給機構
N2 インキ回収機構
Q1 インキ供給部
Q2 制御部
図1
図2
図3
図4