(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の印刷領域及び/又は前記第二の印刷領域に隣接する位置に、前記第一の機能性又は前記第二の機能性を含まず、かつ、前記第一の色材及び/又は前記第二の色材と等色の第三の色材により第三の印刷領域が形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の真偽判別印刷物。
前記第一の印刷領域及び前記第二の印刷領域以外の領域に形成された他の印刷領域によって、可視画像が形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の真偽判別印刷物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の真偽判別印刷物において、盛り上がりを有する画線によって機能性画線を形成する場合は、凹版印刷及びスクリーン印刷等の盛り上がりを有する画線を形成することができる印刷方式を用いるため、高価な設備が必要となるという課題が残されていた。
【0007】
また、大量の機能性材料を含むインキによって特殊な印刷方式を用いることなく、オフセット印刷等の印刷膜厚の低い印刷方式を用いる方法については、大量の機能性材料を含むインキが必要となるため、流動特性が高くなるとともに、保存安定性等の低下が発生することから、印刷適性が悪くなり、結果としてインキの転移不良が発生し、適正な印刷画線を形成することができないという課題が残されていた。
【0008】
さらに、前述した2つの方法の双方に共通する課題として、赤外吸収材料であるカーボンブラックや、黒系色の磁性材料を大量に添加した場合、機能性画線の印刷濃度が高くなり、デザイン上の制約を受けるという課題が残されていた。
【0009】
本発明は、前述の課題を解決することを目的としたものであり、オフセット印刷等の一般的な印刷方式を用い、かつ、機能性材料の含有量を低減させたインキで、基材の表裏面において少なくとも一部が重なるように機能性材料を含む印刷画線を形成し、表裏面に形成された印刷画線に含まれる機能性データを合計して検出することで、低膜厚な印刷画線であっても機械読取可能な真偽判別印刷物である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の真偽判別印刷物は、基材の一方の面における少なくとも一部に第一の機能性を有する第一の色材によって第一の印刷領域が形成され、他方の面における少なくとも一部に第一の機能性を有する第二の色材によって第二の印刷領域が形成され、第一の印刷領域及び第二の印刷領域は、基材の表裏面において少なくとも一部が重なる位置に形成され、第一の印刷領域及び第二の印刷領域は所定の膜厚以下の画線によって形成され、第一の印刷領域及び第二の印刷領域の少なくとも一部が重なって配置された領域における第一の機能性の合計値によって真偽判別を行うことを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0011】
また、本発明の真偽判別印刷物における第一の色材及び/又は第二の色材は、さらに第二の機能性を有する材料を含むことを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0012】
また、本発明の真偽判別印刷物における第一の機能性及び第二の機能性の各々は、磁気特性、赤外透過吸収特性及び発光特性から選択されるいずれか一つである真偽判別印刷物である。
【0013】
また、本発明の真偽判別印刷物における第一の色材及び第二の色材は、等色又は異なる色であることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0014】
また、本発明の真偽判別印刷物は、第一の印刷領域及び/又は第二の印刷領域に隣接する位置に、第一の機能性又は第二の機能性を含まず、かつ、第一の色材及び/又は第二の色材と等色の第三の色材により第三の印刷領域が形成されたことを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0015】
また、本発明の真偽判別印刷物は、第一の印刷領域及び第二の印刷領域以外の領域に形成された他の印刷領域によって、可視画像が形成されたことを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0016】
さらに、本発明の真偽判別印刷物における第1の印刷領域及び第2の印刷領域は、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷及びインクジェット印刷のいずれかで形成されたことを特徴とする真偽判別印刷物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の真偽判別印刷物は、基材の表裏面に形成された機能性を有する画線によって検出される機能性データの合計値によって真偽判別を行うことが可能であるため、盛り上がりを有する画線を形成する必要がないことから、印刷方式の制限を受けることがないという効果を奏する。
【0018】
また、本発明の真偽判別印刷物は、機能性画線を表裏面に印刷することで、真偽判別に必要な機能性データを確実に得ることができるとともに、機能性材料の増加による色濃度の上昇及び画線形状等の制限を受けないことから、デザイン性の自由度が向上するという効果を奏する。
【0019】
さらに、本発明の真偽判別印刷物は、表裏面に形成された印刷画線が重なった領域における機能性データの合計値によって真偽判別を行うこととしているため、表裏いずれかの一方の面を偽造しても、機械読取が不可能であることから、高い偽造防止抵抗力を有するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0022】
(第一の実施の形態)
本発明の第一の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1(a)は、本発明の真偽判別印刷物1(以下「印刷物」という。)における第一の印刷領域3が形成された印刷物1の表面を示すものであり、基材2に額面等の他の印刷領域4が形成された商品券タイプの印刷物1である。
【0023】
第一の印刷領域3は、機能性材料を含むインキによって形成する必要があり、機能性材料を含むインキとしては、磁気特性を有する磁性インキ、赤外吸収特性等のメタメリックな機能を有するインキ及び発光インキ等を用いることができる。なお、第一の実施の形態における印刷物1については、赤外吸収特性を有する材料を用いた例で説明する。ここでは、赤外線吸収特性を有する色材として、カーボンブラックを重量比4%配合した紅色の赤外吸収インキを用いて第一の印刷領域3を形成している。
【0024】
第一の印刷領域3は、オフセット印刷により、印刷膜厚1μm程度のベタ印刷により、八角形の模様が形成されたものである。第一の印刷領域3における波長領域900nm付近での分光反射率は、22%程度である。
【0025】
図1(b)は、第一の実施の形態における印刷物1の裏面を鏡面反射させた状態として示すものであり、印刷物1の裏面において、
図1(a)における第一の印刷領域3と少なくとも一部が重なる状態として第二の印刷領域7が形成されたものである。なお、第二の印刷領域7は、第一の印刷領域3と同様に、赤外吸収特性を有する材料としてカーボンブラックを重量比4.5%配合した黄緑色の赤外吸収インキを用いて形成した。
【0026】
第二の印刷領域7は、オフセット印刷により、印刷膜厚1μm程度のベタ印刷により、十字状の模様が形成されたものである。第二の印刷領域7における波長領域900nm付近での分光反射率は、17%程度である。
【0027】
また、赤外吸収特性を有する材料を用いた場合、表面に形成される第一の印刷領域3及び裏面に形成された第二の印刷領域7は、波長領域900nmにおける分光反射率を15〜25%とすることができ、双方の領域に形成された赤外吸収特性の合計値が10%以下となれば安定して機械読取適正を得ることができることから、適宜設定することができる。
【0028】
第一の印刷領域3における分光反射率を15%未満とすると明度が著しく低下し、デザイン面の制約を受けるため好ましくない。また、25%より高い分光反射率とした場合、裏面に形成する第二の印刷領域7における分光反射率を15%未満としなければ、表裏面に形成された赤外吸収特性を満足することができないため、機械読取適正が不安定となる。結果的に、いずれか一方の面の分光反射率を15%未満としなければならないため、好ましくない。
【0029】
また、印刷物1の表面に形成された第一の印刷領域3と裏面に形成された第二の印刷領域7における赤外吸収特性の差が大きくなると、一方の面の明度が著しく低下するため、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7の赤外吸収特性の差異を5%以内とすることが好ましい。
【0030】
また、第一の実施の形態における印刷物1の第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7は、オフセット印刷方式を用いて形成したが、印刷方式については特に限定されず、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷及びインクジェット印刷等の一般的な印刷方式を用いることが可能であり、特に限定されない。
【0031】
第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7について印刷膜厚が1μm程度の画線で形成したが、本発明の印刷物における第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7を形成する印刷膜厚は、5μm以下の画線で形成すれば良く、好ましくは0.5μm〜3μmである。印刷膜厚が5μmを超えるとインキの濃度が高くなり、明度が著しく低下することから、デザイン上の制約を受けるため、好ましくない。また、第一の実施の形態における印刷物1では、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7の印刷膜厚を双方ともに1μm程度の画線で形成した例で説明したが、5μm以下の範囲であって、かつ、双方の機能性の合計値が機械読取適正を満足するものであれば、異なる膜厚で形成することができる。
【0032】
さらに、第一の実施の形態では、第一の印刷領域3と第二の印刷領域7を異なる色のインキで形成した例で説明したが、同じインキ又は他の機能性を含む等色のインキを用いても良い。
【0033】
図2は、第一の実施の形態における印刷物1の第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7が形成された状態の断面図を示したものであり、基材2の一方の面に第一の印刷領域3が形成され、他方の面に形成された第一の印刷領域3と少なくとも一部が重なる位置に第二の印刷領域7形成されたものである。
図2では、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7が基材から比較的高い盛り上がりを有する画線のように図示しているが、実際には、所定の膜厚以下の画線で形成されている。
【0034】
次に、第一の実施の形態における印刷物の機械読取適正について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3(a)は、基材の表面に第一の印刷領域3が形成された状態である、すなわち、第二の印刷領域7が形成される前の印刷物1の断面及び赤外透過光量を測定した状態を示すものであり、第一の方向に搬送される印刷物1の表面側に光源10を設け、裏面側にピーク感度波長が900nmの光学センサ11を設け、搬送時の印刷物1の赤外透過光量を測定したものである。
【0035】
図3(b)は、
図3(a)の測定で得られる赤外透過光量の波形12であり、第一の印刷領域3上では、赤外透過光量が低下する。また、波形12において波形13が、第一の印刷領域3に対応しており、第一の印刷領域3を赤外吸収領域として検知するためには、所定の基準レベル14で二値化する必要があるが、第一の印刷領域3以外の領域の波形との差が少ないため、所定の基準レベル14で二値化すると、
図3(c)に示すような波形となり、赤外吸収領域と他の領域を「0」と「1」に切り分けることができず、第一の印刷領域3を検知することができない。なお、第二の印刷領域7のみを形成した場合も同様である。
【0036】
一方、
図4(a)は、第一の実施の形態における印刷物1の表裏面に形成された第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7の赤外透過光量を測定した状態を示したものであり、
図4(b)は、
図4(a)の測定で得られる赤外透過光量の波形12である。
【0037】
図4(b)を見れば明らかなように、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7上を透過型の光学センサ11で測定した場合、表裏面に形成された第一の印刷領域3及び第2の印刷領域7の各々が有する赤外吸収特性の合計値が検出されるため、基準値14を上回る赤外吸収特性15を検出することができる。
【0038】
図4(c)に示すように、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7が重なった領域である赤外吸収領域と他の領域を「0」と「1」に明確に切り分けることができることから、真偽判別を行うことができる。
【0039】
前述のとおり、赤外吸収特性を有する領域が印刷物1の表面に形成された第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7のいずれか一方のみの場合は、第一の印刷領域3に含まれる赤外吸収特性を他の領域と差別化するレベルで検知することができないが、
図4(a)のように、基材の表裏面に第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7が形成された印刷物1は、表裏面に形成された赤外吸収特性の合計値によって検知することができることから、オフセット印刷のような一般的な印刷方式で形成した印刷膜厚が1μm程度の印刷画線で、かつ、各々の領域における波長領域900nmの反射率が20%程度であっても、赤外吸収領域を確実に検知することができる。
【0040】
また、第一の実施の形態において用いたインキのように、赤外吸収特性を有する材料としてカーボンブラックを用いた紅色の赤外吸収インキと黄緑色の赤外吸収インキの例で説明したが、表裏面に形成された赤外吸収特性の合計値で検出可能であるため、カーボンブラックの添加量を4%にまで抑えることができることから、紅色及び黄緑色等の比較的に明度の高いインキで第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7を形成することができることから、デザイン面の制約を受けず、かつ、顔料コンテントが著しく増加することもないことから、印刷適性面での問題もない。
【0041】
なお、第一の実施の形態では、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7をベタ印刷で、かつ、双方の画線が重なる領域を広域に設けているが、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7が重なる領域は、光学センサ11の解像度によって適宜設定すれば良く、例えば、特許第5005760号に記載のとおり、一つの波長を約16dpi(1画素約1.5mm)でスキャンする場合に安定した識別が可能な状態とするためには、表裏の図柄が重なる部分の縦及び横の幅を4.5mm以上とすることが必要である。第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7が重なる領域の面積が光学センサ11の解像度と合わない大きさしか存在しない場合には、ノイズとして検出されるため、双方の面に形成された機能性データを正確に検出することができないからである。
【0042】
さらに、前述したとおり、第一の実施の形態における印刷物1は、いずれか一方の面に形成された第一の印刷領域3又は第二の印刷領域7だけでは、赤外吸収領域と他の領域のレベルを区分することができないため、印刷物1のいずれか一方の面を偽造した場合に形成された赤外吸収材料を含む第一の印刷領域3又は第二の印刷領域7のみの赤外吸収特性となるため、真正品と同等の赤外吸収特性を検知することができない。よって、容易に偽造品であることを判別することができる。
【0043】
(比較例)
ここで、比較例として、従来の印刷物のように印刷物の一方の面に形成された赤外吸収特性を有する印刷画線により、
図4(a)に示した第一の実施の形態における印刷物1と同等の赤外吸収特性を得るため、凹版印刷により印刷膜厚の高い画線を形成した比較例について、
図5を用いて説明する。比較例に用いたインキは、赤外吸収特性を有する材料として、カーボンブラックを重量比4%配合した褐色の赤外吸収インキによって、膜厚10μm程度の印刷画線を形成した。波長領域900nmにおける分光反射率が約10%である。
【0044】
図5のように、第一の実施の形態における印刷物1と同等の赤外吸収特性を基材の一方の面に印刷された画線によって得るためには、カーボンブラックを含む印刷画線を高膜厚な印刷画線とすることで、同等の赤外吸収特性を得ることができる。この場合、盛り上がりを有する画線を形成する印刷方法は、凹版印刷及びスクリーン印刷等の特殊な印刷方式に制限されるとともに、インキ使用量の増加、インキ皮膜の硬化性及びインキの保存安定性の低下等、さまざまな問題が発生する。
【0045】
また、その他の方法として、第一の実施の形態と同様に、オフセット印刷等の比較的膜印刷膜厚の低い印刷方式を用いる方法について説明する。比較的に印刷膜厚の低い印刷領域から第一の実施の形態と同等の赤外吸収特性を得るためには、第一の印刷領域3を形成するインキに含まれるカーボンブラックの量を大量に増加させたインキを用いる必要があり、カーボンブラックの添加量を増加させたインキは、顔料コンテントが高くになることから、タック値、粘度及び降伏値等の流動特性が上昇し、印刷適性を満足することができないことから、低膜厚な印刷画線によって機能性データを満足する機能性画線を形成することは困難である。
【0046】
また、凹版インキによって高膜厚な印刷を施した場合と同様に、大量のカーボンブラックを添加する必要があることから、インキの明度が著しく低下し、デザイン上の制約を受けることとなる。
【0047】
(第二の実施の形態)
第二の実施の形態における印刷物について説明する。なお、第二の実施の形態については、第一の実施の形態の印刷物1と同一な画線構成とし、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7を形成するインキに含まれる機能性材料を、磁気特性を有するインキによって形成したものであるため、画線構成の説明は省略する。
【0048】
図6は、第二の実施の形態における印刷物1の断面図及び機械読取適正を示す図である。
図6(a)は、第二の実施の形態における印刷物1の片面に第一の印刷領域3のみが形成された状態において、磁気特性を測定した状態を示すものであり、第一の方向に搬送される印刷物1における第一の印刷領域3上の磁気量を読み取る磁気センサ16を設け、搬送時の磁気量を測定したものである。
【0049】
図6(b)は、磁気センサ16により印刷物1の表裏面に形成された第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7における磁気量を測定したものであり、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7における磁気量の合計値を示したものである。
【0050】
図6(a)及び
図6(b)を比較すれば明らかなように、
図6(a)に示した印刷物1の一方の面のみに第一の印刷領域3が形成された状態では、磁気の検知レベルが少なく、磁気特性を付与した領域とそれ以外領域を所定の基準レベル19によって切り分けることできない。一方、
図6(b)に示すように、印刷物1の表裏面に形成された第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7の磁気の量の合計値を検出した場合、略倍の磁気量が検出されることから、磁気特性を付与した領域とそれ以外の領域を所定の基準レベル19によって明確に切り分けることができることから、真偽判別を行うことができる。
【0051】
なお、第1の実施の形態及び比較例において説明したとおり、印刷物の片面に形成された磁性材料を含む画線によって、
図6(b)に示す検知電圧を得るためには、凹版印刷等の特殊な印刷方法を用いて高膜厚な印刷画線を形成するか、又は大量の磁性材料を含む磁性インキによってオフセット印刷等の比較的膜厚の低い画線を形成することが考えられるが、特殊な印刷機を用いる場合は、前述した問題点によりコストパフォーマンスが低い。また、大量の磁性材料を含むインキは流動特性が著しく低下するため、適正な印刷膜厚を得ることができない。
【0052】
(第三の実施の形態)
図7は、第三の実施の形態における印刷物1を示すものであり、第一の実施の形態と異なる点として、印刷物1の表裏面に形成される第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7を規則的に所定のピッチ及び幅の非画線部を挟んで複数形成されたひし形の画線の集合によって形成したものである。
【0053】
図7(a)は、第三の実施の形態における印刷物1の表面を示すものであり、第一の実施の形態の印刷物と同様に、基材2に額面等の他の印刷領域4がと第一の印刷領域3が形成された商品券タイプの印刷物1である。
【0054】
図7(b)は、
図7(a)に示す第一の印刷領域3を拡大したものであり、オフセット印刷によって、印刷膜厚1μm程度で一辺の長さが0.9mm程度のひし形5の画線を規則的に所定のピッチで幅0.1mmの非画線部6を挟んで複数形成することで、格子状に形成されたひし形5の集合により、八角形の模様が形成されたものである。第一の印刷領域3における単位面積当たりの画線面積率は80%であり、波長領域900nm付近での分光反射率は、19%程度である。
【0055】
図8(a)は、第三の実施の形態における印刷物1の裏面を鏡面反射させた状態として示すものであり、印刷物1の裏面において、
図7(a)における第一の印刷領域3と少なくとも一部が重なる状態として第二の印刷領域7が形成されたものである。なお、第二の印刷領域7は、オフセット印刷によって、印刷膜厚1μm程度で一辺の長さが1.2mmのひし形8の画線を規則的に所定のピッチで幅0.1mmの非画線部9を挟んで複数形成することで、格子状に形成されたひし形8の集合により、十字状の模様が形成されたものである。第二の印刷領域7における単位面積当たりの画線面積率は85%であり、波長領域900nm付近での分光反射率は、17%程度である。
【0056】
第三の実施の形態における印刷物1の機械読取適正については、印刷物1の表面に形成された第一の印刷領域3と印刷物1の裏面に形成された第二の印刷領域7の赤外吸収特性の合計により、他の領域の赤外吸収特性と明確に切り分けることができることから、適正な機械読取適正を有することを確認した。
【0057】
また、第三の実施の形態における印刷物1の変形例として、基材2の表面に形成された赤外吸収特性を有する第1の印刷領域3上に、赤外透過特性を有する凹版インキを形成する(図示せず)ことも可能であり、その場合、第一の印刷領域3に形成された格子模様をカムフラージュすることができる。
【0058】
また、第一の実施の形態の印刷物1のように、ベタ画線で形成された第一の印刷領域3上に赤外透過特性を有する凹版インキを印刷することも可能であるが、ベタ印刷が施された領域上に凹版印刷を施すと、凹版インキのトラッピング不良が発生することが懸念される。しかしながら、第三の実施の形態における印刷物1のように、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7に形成された規則的な非画線部を有することで、凹版インキのトラッピング不良の発生を抑制することができることから、印刷適性を損なうことなく印刷物を作製することができる。
【0059】
(第四の実施の形態)
次に、第四の実施の形態について図面を用いて説明する。第四の実施の形態における印刷物1は、第一乃至第三の実施の形態と異なる構成として、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7が重なる位置及び面積等を任意に設定することで、所定の情報を付与することができるものである。
【0060】
図9は、第四の実施の形態における印刷物1の表面を示したものであり、第一の印刷領域3は、第一の実施の形態と同様の構成としている。第四の実施の形態に用いるインキについては、カーボンブラックを重量比3%配合した青色の赤外吸収インキを用いて、フレキソ印刷により規則的に所定のピッチ及び所定の幅によって配置された非画線部を含む画像が形成されたものである。
【0061】
第四の実施の形態における第一の印刷領域3は、フレキソ印刷により印刷膜厚が3μm程度の画線を形成した。第一の印刷領域3における波長領域900nmでの分光反射率は、約22%であった。
【0062】
図10は、第四の実施の形態における印刷物1の裏面を鏡面反射させたものであり、第一の実施の形態と同様に、額面等の他の印刷領域4と、第二の印刷領域(a)21及び第二の印刷領域(b)22が形成されたものである。
【0063】
第二の印刷領域(a)21及び第二の印刷領域(b)22は、第一の印刷領域3と同様に、赤外吸収材料としてカーボンブラックを重量比4.5%配合した紫色の赤外吸収インキを用いて、オフセット印刷により、印刷膜厚が1μm程度で画線幅が4.5mmの直画線によって形成し、第一の印刷領域3が形成された領域の裏面を完全に通過するように形成したものである。第二の印刷領域(a)21及び第二の印刷領域(b)22における波長領域900nmでの分光反射率は、約17%であった。
【0064】
図11(a)は、第四の実施の形態における印刷物1の赤外透過光量を測定したものであり、第一の方向に搬送される印刷物1の表面側に光源10を設け、裏面側にピーク感度波長が900nmの光学センサ11を設け、搬送時の赤外透過光量を測定したものである。
【0065】
図11(b)は、
図11(a)の測定で得られた赤外透過光量を示す波形12であり、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域(a)21で形成された領域は、波形23に対応し、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域(b)22で形成された領域は、波形24に対応している。
【0066】
波形12を所定の基準レベル14で二値化すると、
図11(c)に示すような波形となり、第一の印刷領域3と重なった位置に形成された第二の印刷領域(a)21及び第二の印刷領域(b)22が形成された領域とそれ以外の領域を「0」と「1」に切り分けることで2つピークを有する赤外吸収特性のパターンを検知することが可能であった。
【0067】
第四の実施の形態のように、第一の印刷領域3及び第二の印刷領域21、22が重なる領域の形状、面積及びピッチ等を任意に設定することで、任意の情報を付与することが可能であり、これらのパターンを機械読取することで、より高度な真偽判別を行うことができる。
【0068】
(第五の実施の形態)
第五の実施の形態について図面を用いて説明する。第五の実施の形態における印刷物1は、前述した第一乃至第四の実施の形態と異なる構成として、基材2の表面に形成される第一の印刷領域25と隣接する位置に、第一の印刷領域25を形成するインキと等色で、かつ、第一の印刷領域25を形成する機能性材料を含まないインキにより、第三の印刷領域26を形成することで、第一の印刷領域25が形成されたことをカムフラージュした例である。
【0069】
第一の印刷領域25は、第一の実施の形態と同様に、赤外吸収特性を有する材料として、カーボンブラックを重量比4%配合した紅色の赤外吸収インキによって、印刷膜厚1μm程度の印刷画線を形成した。
【0070】
一方、第三の印刷領域26は、第一の印刷領域25を形成したインキと等色で、かつ、赤外吸収特性を有しない紅色の赤外透過インキによって印刷膜厚1μm程度の印刷画線を形成した。なお、第三の印刷領域26を形成するインキについては、第一の印刷領域25を形成した赤外吸収特性を含まないインキであれば良く、他の機能性材料として、例えば、赤外透過の磁性材料や発光材料等を含ませることも可能である。
【0071】
また、第一の印刷領域25及び第三の印刷領域26は、規則的に所定のピッチ及び所定の幅を有する非画線部を挟んで形成された複数のひし形の集合により、八角形の模様が形成されている。第一の印刷領域25及び第三の印刷領域26に形成された各々のひし形は、八角形の模様における中心、すなわち、左右対称となる境界線を境に領域を分けて隣接して配置されているため、肉眼では、第一の印刷領域25及び第三の印刷領域26の境目を区別することができない。
【0072】
なお、第一の印刷領域25と第三の印刷領域26は、肉眼では等色として観察されるが、波長領域900nmにおける分光反射率は、第一の印刷領域25が約20%であり、第三の印刷領域26が約95%である。
【0073】
図12(a)は、第五の実施の形態における印刷物1の表面を示したものであり、赤外吸収材料としてカーボンブラックを重量比4%配合した紅色の赤外吸収インキを用いて、第一の印刷領域25が形成されている。また、第一の印刷領域25と隣接する位置に赤外透過特性を有し、かつ、第一の印刷領域25が形成された赤外吸収インキと等色のインキを用いて、第三の印刷領域26が形成されている。第一の印刷領域25及び第三の印刷領域26は、双方の領域を隣接して配置することで、等色の八角形の模様として観察される。
【0074】
図12(b)は、
図12(a)に示す第一の印刷領域25及び第三の印刷領域26を拡大した八角形の模様を示すものであり、第一の印刷領域25は、オフセット印刷により、印刷膜厚1μm程度で一辺の長さが0.9mm程度のひし形5の画線を規則的に所定のピッチで幅0.1mmの非画線部6を挟んで複数形成することで、格子状に形成されたひし形5の集合により、八角形の模様の半分が形成されている。
【0075】
また、第三の印刷領域26は、第一の印刷領域25と同様にオフセット印刷により、印刷膜厚1μm程度で一辺の長さが0.9mm程度のひし形5の画線を規則的に所定のピッチで幅0.1mmの非画線部6を挟んで複数形成することで、格子状に形成されたひし形5の集合により、八角形の模様の半分が形成されている。第一の印刷領域25及び第三の印刷領域26における単位面積当たりの画線面積率は80%であり、波長領域900nm付近での分光反射率は、第一の印刷領域25が20%程度であり、第三の印刷領域26が95%程度である。
【0076】
なお、
図12(a)及び
図12(b)では、第一の印刷領域25と第三の印刷領域26を区分けして説明するために異なる色で示しているが、実際には、等色として観察される。
【0077】
図13(a)は、第五の実施の形態における印刷物1の裏面を鏡面反射させた状態として示したものであり、第一の実施の形態と同様に額面等の他の印刷領域4と、第二の印刷領域7が形成されたものである。
【0078】
図13(b)は、
図13(a)に示す第二の印刷領域7を拡大したものであり、赤外吸収材料としてカーボンブラックを重量比4%配合した黄緑色の赤外吸収インキを用いてオフセット印刷により、印刷膜厚1μm程度で一辺の長さが1.2mmのひし形8の画線を規則的に所定のピッチで幅0.1mmの非画線部9を挟んで複数形成することで、格子状に形成されたひし形8の集合により、十字状の模様が形成されたものである。第二の印刷領域7における単位面積当たりの画線面積率は85%であり、波長領域900nm付近での分光反射率は、20%程度である。
【0079】
図14(a)は、第五の実施の形態における印刷物1の赤外透過光量を測定したものであり、第一の方向に搬送される印刷物1の表面側に光源10を設け、裏面側にピーク感度波長が900nmの光学センサ11を設け、搬送時の赤外透過光量を測定したものである。
【0080】
図14(b)は、
図14(a)の測定で得られる赤外透過光量の波形12であり、印刷物1の表裏面において第一の印刷領域25及び第二の印刷領域7が重なった領域は、波形15に対応している。
【0081】
波形12を所定の基準レベル14に二値化すると、
図14(c)に示すような波形となり、第一の印刷領域25及び第二の印刷領域7が重なって形成された領域と、第三の印刷領域26及び第二の印刷領域7が重なって形成された領域を「0」と「1」に切り分けることで、肉眼では、第一の実施の形態における印刷物1と同等の第一の印刷領域3及び第二の印刷領域7が形成された印刷物と同等の可視画像が観察される印刷物1から、肉眼では観察することができない赤外吸収特性のパターンを検知することができる。
【0082】
前述のように、印刷物1の表面に第一の印刷領域25及び第三の印刷領域26を形成し、裏面における第一の印刷領域25及び第三の印刷領域26と重なる位置に形成された第二の印刷領域7を、肉眼では観察されない所定の赤外透過吸収のパターンによって区分することができることから、更に高度な真偽判別を行うことができる。