特許第5971736号(P5971736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5971736ポリアミック酸高分子複合体及びこの製造方法{POLYAMICACIDPOLYMERCOMPOSITEANDMETHODFORPRODUCINGSAME}
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971736
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ポリアミック酸高分子複合体及びこの製造方法{POLYAMICACIDPOLYMERCOMPOSITEANDMETHODFORPRODUCINGSAME}
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20160804BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160804BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20160804BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   C08G73/10
   C08K3/36
   B05D7/00 H
   B05D7/24 302X
【請求項の数】23
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-540984(P2014-540984)
(86)(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公表番号】特表2015-504458(P2015-504458A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】KR2013005907
(87)【国際公開番号】WO2014007544
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2014年5月8日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0072298
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0077439
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハンア
(72)【発明者】
【氏名】シン、ボラ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、チョルミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ギョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジョンホ
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−505287(JP,A)
【文献】 特開2007−254499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79
C08G 73
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子50〜99wt%と、
シリカ系粒子1〜50wt%と、
を含むポリアミック酸高分子複合体:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
は、下記化学式2dの芳香族の2価の有機基であり、
[化学式2d]
【化2d】
は、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され、
は、水酸基を有する芳香族、脂環族または脂肪族から誘導された2価以上の有機基からなる群より選択され、また、
n及びmは、各々1以上の整数であり、
前記化学式2dにおいて、
14及びR15は、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、スルホン酸基及びカルボン酸基からなる群より選択されるものであり、R14及びR15のいずれかは、炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、
d1及びe1は、各々独立に、0〜4の整数であり、前記d1及びe1は、同時に0になることはなく、また、
11は、各々独立に、単結合、−O−、−CR1819−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、このとき、R18及びR19は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群より選択されるものである。
【請求項2】
前記化学式1の前記Rの有機基内の1以上の水素原子が、炭素数1〜10のフルオロアルキル基で置換されたものである、
請求項1に記載のポリアミック酸高分子複合体。
【請求項3】
前記シリカ系粒子の表面のシリコン原子と、前記Rとが化学的に結合されている、
請求項1又は請求項2に記載のポリアミック酸高分子複合体。
【請求項4】
前記シリカ系粒子は、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されたものである、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体。
【請求項5】
前記シリカ系粒子は、互いに網状構造をなしている−Si−O−結合を含む、
請求項3に記載のポリアミック酸高分子複合体。
【請求項6】
下記化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子50〜99wt%と、
シリカ系粒子1〜50wt%と、
を含むポリアミック酸高分子複合体:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
は、下記化学式2dの芳香族の2価の有機基であり、
[化学式2d]
【化2d】
は、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され、
は、水酸基を有する芳香族、脂環族または脂肪族から誘導された2価以上の有機基からなる群より選択され、また、
n及びmは、各々1以上の整数であり、
前記化学式2において、
14及びR15は、炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり
d1及びe1は、各々独立に、〜4の整数であり、また、
は、単合である。
【請求項7】
前記化学式1のRは、下記化学式4a〜4dの芳香族の4価の有機基、炭素数3〜12のシクロアルカンの構造を含む脂環族の4価の有機基、下記化学式4eの脂環族の4価の有機基、及び炭素数1〜10の分岐状アルカン構造を有する脂肪族の4価の有機基からなる群より選択されるものである、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体:
[化学式4a]
【化4a】
[化学式4b]
【化4b】
[化学式4c]
【化4c】
[化学式4d]
【化4d】
[化学式4e]
【化4e】
前記化学式4a〜4eにおいて、
21〜R27は、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、
a2は、0または2の整数、b2は、0〜4の整数、c2は、0〜8の整数、d2及びe2は、各々独立に、0〜3の整数、f2及びg2は、各々独立に、0〜9の整数であり、また、
21及びA22は、各々独立に、単結合、−O−、−CR2829−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、このとき、前記R28及びR29は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群より選択されるものである。
【請求項8】
前記化学式1のRは、下記化学式5a〜5tの4価の有機基からなる群より選択される4価の有機基である請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体:
前記化学式5a〜5tにおいて、xは1〜3の整数である。
【請求項9】
前記化学式1のR3は、芳香族、脂環族及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択される2価の有機基を含み、前記2価の有機基に含まれた水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換されたジアミンから誘導されたものである、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体。
【請求項10】
前記化学式1のRは、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、及び2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群より選択される化合物から誘導された有機基である、
請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項のポリアミック酸複合体を硬化させて得た、下記化学式6の繰り返し単位を有するポリイミドとシリカ系粒子とを含むポリイミド高分子複合体:
[化学式6]
【化6】
前記化学式6において、R、R及びRは、化学式1について定義したとおりである。
【請求項12】
請求項11のポリイミド高分子複合体のフィルムを含むディスプレイ基板。
【請求項13】
前記ディスプレイ基板は、10〜30μmの厚みの範囲で550nmの波長の光に対する光透過度が80%以上であり、100〜300℃の温度範囲で20ppm/K以下の熱膨張係数及び350℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するものである、
請求項12に記載のディスプレイ基板。
【請求項14】
ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水酸基を有するジアミンを反応させて、下記化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸を製造する段階と、
前記製造されたポリアミック酸とシリカ系粒子とを混合した後、反応させて、化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子とシリカ系粒子とを含む複合体を製造するか、または、
前記製造されたポリアミック酸と下記化学式8で表されるシラン化合物を反応させてポリアミック酸高分子を製造した後、アルコキシシランを反応させて下記化学式1の繰り返し単位と、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されたシリカ系粒子を含むポリアミック酸高分子複合体を製造する段階と
を有する、
ポリアミック酸高分子複合体の製造方法:
[化学式1]
【化1】
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
前記化学式1、7及び8において、
は、下記化学式2dの芳香族の2価の有機基であり、
[化学式2d]
【化2d】
は、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され、
は、水酸基を有する芳香族、脂環族または脂肪族から誘導される2価以上の有機基からなる群より選択され、
'は、水酸基を有する芳香族、脂環族及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され、
Rは、炭素数1〜5のアルキル基であり、
Xは、求電子剤を含む脂肪族または芳香族の1価の有機基であり、また、
n及びmは、各々1以上の整数であり、
前記化学式2dにおいて、
14及びR15は、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、スルホン酸基及びカルボン酸基からなる群より選択されるものであり、R14及びR15のいずれかは、炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、
d1及びe1は、各々独立に、0〜4の整数であり、前記d1及びe1は、同時に0になることはなく、また、
11は、各々独立に、単結合、−O−、−CR1819−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、このとき、R18及びR19は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群より選択されるものである。
【請求項15】
ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水酸基を有するジアミンを反応させて、下記化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸を製造する段階と、
前記製造されたポリアミック酸とシリカ系粒子とを混合した後、反応させて、化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子とシリカ系粒子とを含む複合体を製造するか、または、
前記製造されたポリアミック酸と下記化学式8で表されるシラン化合物を反応させてポリアミック酸高分子を製造した後、アルコキシシランを反応させて下記化学式1の繰り返し単位と、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されたシリカ系粒子を含むポリアミック酸高分子複合体を製造する段階と、
を有する、
ポリアミック酸高分子複合体の製造方法:
[化学式1]
【化1】
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
前記化学式1、7及び8において、
は、下記化学式2dの芳香族の2価の有機基であり、
[化学式2d]
【化2d】
は、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され、
は、水酸基を有する芳香族、脂環族または脂肪族から誘導される2価以上の有機基からなる群より選択され、
'は、水酸基を有する芳香族、脂環族及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され、
Rは、炭素数1〜5のアルキル基であり、
Xは、求電子剤を含む脂肪族または芳香族の1価の有機基であり、また、
n及びmは、各々1以上の整数であり、
前記化学式2dにおいて、
14及びR15は、炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、
d1及びe1は、各々独立に、1〜4の整数であり、また、
11は、単結合であり、
前記ジアミンは、下記化学式2dの芳香族2価の有機基、及び前記2価の有機基に結合する2価のアミノ基を含む化合物である、
リアミック酸高分子複合体の製造方法。
【請求項16】
前記水酸基を有するジアミンは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の2価の有機基を含む群より選択される2価の有機基、及び前記2価の有機基に結合する2価のアミノ基を含み、前記2価の有機基内の1以上の水素原子が水酸基で置換された化合物である、
請求項14又は請求項15に記載のポリアミック酸高分子複合体の製造方法。
【請求項17】
前記ジアミンまたは水酸基を有するジアミンは、分子内1個以上の水素原子がフルオロアルキル基で置換されたものである、
請求項14〜16のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体の製造方法。
【請求項18】
前記水酸基を有するジアミンは、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、3,3'−ジヒドロキシ−4.4' −ジアミノビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン及びこれらの混合物からなる群より選択されるものである、
請求項14〜17のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体の製造方法。
【請求項19】
前記ジアミンと水酸基を有するジアミンは、99:1〜60:40のモル(mol)比で反応するものである、
請求項14〜18のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体の製造方法。
【請求項20】
前記化学式8の求電子剤は、イソシアネート基、エステル基、エポキシ基及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである、
請求項14〜19のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体の製造方法。
【請求項21】
前記化学式8の化合物は、イソシアネートプロピルトリエトキシシランまたは3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランである、
請求項14〜20のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体の製造方法。
【請求項22】
前記アルコキシシランは、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコシシラン及びこれらの混合物からなる群より選択されるものである、
請求項14〜21のいずれか一項に記載のポリアミック酸高分子複合体の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜10のいずれか一項のポリアミック酸高分子複合体を含む組成物を支持体に塗布した後、硬化してポリイミド高分子複合体フィルムを形成する段階;及び
前記ポリイミド高分子複合体フィルムを支持体から分離する段階、
を含む、
ディスプレイ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸高分子複合体及びこの製造方法に関するものであり、より詳細には、高透明性と共に低い熱膨張性を有し、ディスプレイ基板の製造に適用可能なポリアミック酸高分子複合体及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、機械的特性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等に優れるため、半導体用層間絶縁膜、バッファコート、フレキシブル印刷配線回路用基板の液晶配向膜など様々な電子デバイスや光導波路用の膜に広く用いられている。
【0003】
これまで液晶表示装置、有機電気発光表示装置(organic electro luminescence display)、有機薄膜トランジスタ(organic thin-film transistor)等の基板にはガラスが広く使用されていたが、最近の軽量化、フレキシブル化の流れによって、PEN(ポリエーテルナフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)などプラスチックを用いたフレキシブル基板が開発されている。かかるフレキシブル基板は、高透明性、低熱膨張性、及び高いガラス転移温度などの特性が求められる。具体的には、膜厚10〜30μmにおける光透過性が80%以上であること、基板の膨張及び収縮による基板上の表示ピクセルや配線等の誤整列抑制のために熱膨張係数が100〜300℃の範囲において20ppm/℃以下であること、ガラス転移温度が350℃以上であることが求められる。
【0004】
高透明性のポリイミドフィルムを得るためには、骨格中に屈曲性の良いモノマー、またはフッ素置換基の導入が有効であると知られている。フッ素置換基が導入されたものとしては、例えば、フッ素化酸二無水物である2,2−ビス(3,4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物と、フッ素化ジアミンである2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンから得られる全フッ素化ポリアミドが知られている。かかる全フッ素化ポリアミドから得られるフィルムは、20μmの膜厚における400nmの光透過率が85%と示され、比較的高い光透過性を示すが、熱膨張係数は48ppm/℃で、熱膨張性が非常に高いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許登録第1175812号(2012.08.14登録)
【特許文献2】韓国特許登録第1167483号(2012.07.13登録)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高透明性と共にガラス水準の低い熱膨張性を有し、ディスプレイ基板の製造に適用可能なポリアミック酸高分子複合体及びこの製造方法を提供することである。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、前記ポリアミック酸高分子複合体を用いて製造されたポリイミド高分子複合体及びこれを用いたディスプレイ基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によるポリアミック酸高分子複合体は、下記化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子50〜99重量%と、シリカ系粒子1〜50重量%を含む。
[化学式1]
【化1】
【0009】
前記化学式1において、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され、Rは、選択的に水酸化基を有する芳香族、脂環族または脂肪族から誘導される2価以上の有機基からなる群より選択され、またnとmは、各々1以上の整数である。
【0010】
ここで、前記Rは、水酸化基を有する芳香族、脂環族または脂肪族から誘導される2価以上の有機基からなる群より選択されることが好ましい。
【0011】
ここで、前記化学式1の前記Rの有機基内の1以上の水素原子または前記Rの有機基内の1以上の水素原子がフルオロアルキル基で置換されたものであり得る。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記シリカ系粒子表面のシリコンと、前記Rとが化学的に結合され得る。
【0013】
ここで、前記シリカ系粒子は、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合され得る。
【0014】
前記において、シリカ系粒子は、互いに網状構造をなしている−Si−O−結合を含み得る。
【0015】
また、前記化学式1のRは、下記化学式2a〜2dの芳香族の2価の有機基、下記化学式2eの脂環族の2価の有機基、炭素数4〜18のシクロアルカンジイル基を含む脂環族の2価の有機基、及び炭素数1〜8のアルカンジイル基を含む脂肪族の2価の有機基からなる群より選択される2価の有機基であり得る。
[化学式2a]
【化2a】
[化学式2b]
【化2b】
[化学式2c]
【化2c】
[化学式2d]
【化2d】
[化学式2e]
【化2e】
【0016】
前記化学式2a〜2eにおいて、R11〜R17は、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、スルホン酸基、及びカルボン酸基からなる群より選択されるものであり、a1、d1及びe1は、各々独立に、0〜4の整数、b1は、0〜6の整数、c1は、0〜3の整数、且つf1及びg1は、各々独立に、0〜10の整数であり、また、A11及びA12は、各々独立に、単結合、−O−、−CR1819−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、このとき、R18及びR19は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群より選択されるものである。
【0017】
また、前記化学式1のRは、下記化学式3a〜3uの2価の有機基からなる群より選択されるものであり得る。
【0018】
また、前記化学式1のRは、下記化学式4a〜4dの芳香族の4価の有機基、炭素数3〜12のシクロアルカンの構造を含む脂環族の4価の有機基、下記化学式4eの脂環族の4価の有機基、及び炭素数1〜10の分岐状アルカン構造を有する脂肪族の4価の有機基からなる群より選択される4価の有機基であり得る。
[化学式4a]
【化4a】
[化学式4b]
【化4b】
[化学式4c]
【化4c】
[化学式4d]
【化4d】
[化学式4e]
【化4e】
【0019】
前記化学式4a〜4eにおいて、R21〜R27は、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、a2は、0または2の整数、b2は、0〜4の整数、c2は、0〜8の整数、d2及びe2は、各々独立に、0〜3の整数、f2及びg2は、各々独立に、0〜9の整数であり、また、A21及びA22は、各々独立に、単結合、−O−、−CR2829−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、このとき、前記R28及びR29は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群より選択されるものである。
【0020】
また、前記化学式1のRは、下記化学式5a〜5tの4価の有機基からなる群より選択される4価の有機基であり得る。
【0021】
前記化学式5a〜5tにおいて、xは1〜3の整数である。
【0022】
また、前記化学式1のR3は、芳香族、脂環族及び脂肪族の有機基からなる群より選択される2価以上の有機基を含み、前記有機基に含まれた水素原子の少なくとも1つが水酸化基で置換されたジアミンから誘導される有機基であり得る。
【0023】
さらに、前記化学式1のRは、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、3,3−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、及び2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群より選択される化合物から誘導される2価の有機基であり得る。
【0024】
本発明の他の側面によると、前記ポリアミック酸複合体を硬化させて得ることができる、下記化学式6の繰り返し単位を有するポリイミド高分子とシリカ系粒子とを含むポリイミド高分子複合体が提供される。
[化学式6]
【化6】
【0025】
前記化学式6において、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され、Rは、選択的に水酸化基を有する芳香族、脂環族たは脂肪族から誘導される2価以上の有機基からなる群より選択され、また、nとmは、それぞれ1以上の整数である。
【0026】
前記で、シリカ系粒子は、互いに網状構造をなしている−Si−O−結合を含み得る。
【0027】
ここで、前記シリカ系粒子表面のシリコン原子と、前記Rとが、化学的に結合され得る。
【0028】
前記ポリイミド高分子複合体は、フィルムで加工されてディスプレイ基板に使用できる。
【0029】
また、前記ディスプレイ基板は、10〜30μmの厚み範囲における550nmの波長及び光に対する光透過度が80%以上であり、100〜300℃の温度範囲で20ppm/K以下の熱膨張係数及び350℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するものであり得る。
【0030】
本発明のもう一つの側面による前記化学式1の繰り返し単位を含むポリアミック酸高分子複合体の製造方法は、ジアミン、テトラカルボン酸無水物、及び選択的に水酸化基を有するジアミンを反応させて、下記化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸を製造する段階;
前記製造されたポリアミック酸とシリカ系粒子とを混合した後、反応させて、化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子とシリカ系粒子とを含む複合体を製造するか、または、
前記製造されたポリアミック酸と下記化学式8で表されるシラン化合物とを反応させて、ポリアミック酸高分子を製造した後、アルコキシシランを反応させて、下記化学式1の繰り返し単位と、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されたシリカ系粒子を含むポリアミック酸高分子複合体を製造する段階を含み得る。
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
【0031】
前記化学式7及び8において、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され、R'は、選択的に水酸化基を有する芳香族、脂環族及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され、Rは、炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、求電子剤を含む脂肪族または芳香族の1価の有機基であり、そしてn及びmは、各々1以上の整数である。
【0032】
前記において、ジアミンは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の2価の有機基を含む群より選択される2価の有機基、及び前記2価の有機基に結合する2つのアミノ基を含む化合物であり得る。
【0033】
さらに、前記で水酸化基を有するジアミンは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の2価の有機基を含む群より選択される2価の有機基、及び前記2価の有機基に結合する2価のアミノ基を含み、前記2価の有機基内の1以上の水素原子が水酸化基で置換された化合物であり得る。
【0034】
また、前記ジアミンまたは水酸化基を有するジアミンは、分子内に1個以上の水素原子が炭素数1〜10のフルオロアルキル基で置換されたものであり得る。
【0035】
また、前記水酸化基を有するジアミンは、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、3,3'−ジヒドロキシ−4.4' −ジアミノビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるものであり得る。
【0036】
さらに、前記ジアミンと水酸化基とを有するジアミンは、99:1〜60:40のモル(mol)比で使用し得る。
【0037】
さらに、前記化学式8の求電子剤は、イソシアネート基、エステル基、エポキシ基、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものであり得る。
【0038】
また、前記化学式8の化合物は、イソシアネートプロピルトリエトキシシランまたは3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランであり得る。
【0039】
さらに、前記アルコキシシランは、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコシシシラン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるものであり得る。
【0040】
本発明のもう一つの側面によるディプレイ基板の製造方法は、前記ポリアミック酸高分子複合体を含む組成物を支持体に塗布した後、硬化してポリイミドフィルムを形成する段階、そして前記ポリイミドフィルムを支持体から分離する段階を含み得る。
【0041】
その他、本発明の具現例の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0042】
本発明によるポリアミック酸高分子複合体を用いて製造されたディスプレイ基板は、高透明性を有しつつも、低い熱膨張性を有し、フレキシブルディスプレイへの適用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有し得るが、特定の実施例を例に挙げて詳細な説明で7777詳しく説明したいと思う。しかし、これは、本発明を特定の実施形態について限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物ないし代替物を含むものであると理解されるべきである。本発明を説明するにあたって、関連の公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨をぼやけさせ得ると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0044】
本明細書において、すべての化合物または作用基は、特別な言及がない限り、置換または非置換のものであり得る。ここで、「置換」とは、化合物または作用基に含まれた少なくとも1つの水素がハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、及びこれらの誘導体からなる群より選択される置換基で代替されたことを意味する。
【0045】
また、本明細書において、「これらの組み合わせ」とは、特別な言及がない限り、2つ以上の作用基が単結合、二重結合、三重結合、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)など)、炭素数1〜10のフルオロアルキレン基(例えば、フルオロメチレン(−CH−)、パーフルオロエチレン(−CFCF−)など)、N、O、P、S、またはSiのようなヘテロ原子或いはこれを含む作用基(具体的には、分子内にカルボニル基(−C=O−)、エーテル基(−O−)、エステル基(−COO−)、−S−、−NH−または−N=N−等を含むヘテロアルキレン基)のような連結基により結合されているか、または2つ以上の作用基が縮合、連結されていることを意味する。
【0046】
本発明は、下記化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子とシリカ系粒子とを含むポリアミック酸高分子複合体を提供する。
[化学式1]
【化1】
【0047】
前記化学式1において、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され得、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され得、Rは、選択的に水酸化基を有する芳香族、脂環族または脂肪族から誘導される2価以上の有機基からなる群より選択され得、またnとmは、各々1以上の整数である。
【0048】
本発明はまた、下記化学式6の繰り返し単位を有するポリイミドと、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されているか物理的に結合されたシリカ系粒子を含むポリイミド高分子複合体及びこのフィルムを含むディスプレイ基板を提供する。
[化学式6]
【化6】
【0049】
前記化学式6において、R〜R、nとmは、先に定義したとおりである。
【0050】
さらに、本発明は、ジアミン、テトラカルボン酸無水物、及び選択的に水酸化基を有するジアミンを反応させて、下記化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸を製造する段階;
前記製造されたポリアミック酸とシリカ系粒子とを混合した後、反応させて、化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子とシリカ系粒子とを含む複合体を製造するか、または、
前記製造されたポリアミック酸と下記化学式8で表されるシラン化合物を反応させてポリアミック酸高分子を製造した後、アルコキシシランを反応させて下記化学式1の繰り返し単位と、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されたシリカ系粒子を含むポリアミック酸高分子複合体を製造する段階を含む、前記化学式1のポリアミック酸高分子複合体の製造方法を提供する。
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
【0051】
前記化学式7及び8において、R1〜、nとmは、先に定義したとおりであり、R'は、選択的に水酸化基を有する芳香族、脂環族及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され得、Rは、炭素数1〜5のアルキル基であり得、またXは、求電子剤を含む脂肪族または芳香族の1価の有機基であり得る。
【0052】
また、本発明は、前記ポリアミック酸高分子複合体を含む組成物を支持体に塗布した後、硬化してポリイミド高分子複合体のフィルムを形成する段階、また、前記ポリイミド高分子複合体フィルムを支持体から分離する段階を含むディスプレイ基板の製造方法を提供する。
【0053】
以下、発明の具体例によるポリアミック酸高分子複合体とこの製造方法、これを用いたディスプレイ基板及びこの製造方法についてより詳しく説明する。
【0054】
本発明の一具現例によれば、下記化学式1の繰り返し単位と、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群から選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されるかまたは物理的に結合されたシリカ系粒子を含むポリアミック酸高分子複合体が提供される。
[化学式1]
【化1】
【0055】
前記化学式1において、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され得、Rは、芳香族、脂環族、及び脂肪族の4価の有機基からなる群より選択され得、Rは、選択的に水酸化基を有する芳香族、脂環族及び脂肪族から誘導される2価以上の有機基からなる群より選択され得、またnとmは、各々1以上の整数であり得る。
【0056】
[置換基R
前記Rは、ジアミン系化合物から誘導される芳香族、脂環族、または脂肪族の2価の有機基であって、具体的には、下記化学式2a〜2dの芳香族の2価の有機基;下記化学式2eの作用基及び炭素数4〜18のシクロアルカンジイル基を含む脂環族の2価の有機基;及び炭素数1〜8のアルカンジイル基を含む脂肪族の2価の有機基からなる群より選択されるものであり得る。このとき、前記シクロアルカンジイル基及びアルカンジイル基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、及びスルホン酸基からなる群より選択される置換基で置換され得もする。
[化学式2a]
【化2a】
[化学式2b]
【化2b】
[化学式2c]
【化2c】
[化学式2d]
【化2d】
[化学式2e]
【化2e】
【0057】
前記化学式2a〜2eにおいて、
前記R11〜R17は、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、スルホン酸基、及びカルボン酸基からなる群より選択され得、
前記a1、d1、e1は、各々独立に、0〜4の整数、b1は、0〜6の整数、c1は、0〜3の整数、またf1及びg1は、各々独立に、0〜10の整数であり得、
前記A11及びA12は、各々独立に、単結合、−O−、−CR1819−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され得、このとき、前記R18及びR19は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群より選択されるものであり得る。
【0058】
好ましくは、前記化学式1のRは、下記化学式3a〜3uからなる群より選択される2価の有機基であり得る:
【0059】
前記化学式3a〜3uの2価の作用基内の1以上の水素原子は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、スルホン酸基、及びカルボン酸基からなる群より選択される置換基で置換され得もする。
【0060】
より好ましくは、前記化学式1のRは、前記化学式3c〜3eの2価の有機基から選択されるものであり得る。
【0061】
本発明の好ましい実施例によれば、前記Rは、ジフェニルエーテル、ビフェニル、メチレンジアニリン、及び2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルからなる群より選択されたいずれかの化合物から誘導された2価の有機基であり得る。
【0062】
本発明の他の好ましい実施例によれば、前記Rの2価の有機基内の1以上の水素原子が炭素数1〜10のフルオロアルキル基で置換されたものであり得る。
【0063】
[置換基R
前記化学式1のRは、無水物から誘導される芳香族、脂環族、または脂肪族の4価の有機基であって、具体的には、前記Rは、下記化学式4a〜4dの芳香族の4価の有機基;炭素数3〜12のシクロアルカンの構造を含む脂環族の4価の有機基;下記化学式4eの脂環族の4価の有機基;及び炭素数1〜10の分岐状アルカン構造を有する脂肪族の4価の有機基からなる群より選択されるものであり得る。
[化学式4a]
【化4a】
[化学式4b]
【化4b】
[化学式4c]
【化4c】
[化学式4d]
【化4d】
[化学式4e]
【化4e】
【0064】
前記化学式4a〜4eにおいて、
前記R21〜R27は、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり得、
前記a2は、0または2の整数、b2は、0〜4の整数、c2は、0〜8の整数、d2及びe2は、各々独立に、0〜3の整数、f2及びg2は、各々独立に、0〜9の整数であり得、また、
前記A21及びA22は、各々独立に、単結合、−O−、−CR2829−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものであり得、このとき、前記R28及びR29は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群より選択されるものであり得る。
【0065】
好ましくは、前記化学式1のRは、下記化学式5a〜5tの4価の有機基からなる群より選択されるものであり得る:
【0066】
前記化学式5a〜5tにおいて、xは1〜3の整数である。
【0067】
また、前記化学式5a〜5tの4価の有機基は、4価の有機基内に存在する1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフルオロアルキル基で置換され得もする。
【0068】
[置換基R
前記化学式1のRは、芳香族、脂環族または脂肪族の2価以上の有機基を含み、前記2価以上の有機基は、有機基内の水素原子中の少なくとも1つが水酸化基で置換されたジアミン系化合物から誘導された芳香族、脂環族または脂肪族の2価以上、好ましくは、2価以上10価以下の有機基であって、前記置換された水酸化基中のいずれかがシリカ粒子との結合に関わる反応性基となり得るものを除いては、上記で置換基Rの2価の有機基について説明した構造から選択され得る。
【0069】
特に、前記Rの有機基内の1以上の水素原子が炭素数1〜10のフルオロアルキル基で置換されたものが、透明度の面でより改善した効果を示し得るので好ましい。
【0070】
また、前記化学式1において、m及びnは、高分子内に含まれる繰り返し単位の個数を示すもので、m及びnは、各々独立に、1以上の整数であって、その上限は必要に応じて調節できるため、特別な意味を持たない。
【0071】
本発明によるポリアミック酸高分子複合体は、上記のような化学式1の繰り返し構造を含むポリアミック酸内にシリカ系粒子が物理的または化学的に結合された構造を有する。
【0072】
詳しくは、前記シリカ系粒子は、前記化学式1の繰り返し単位内のRに水酸化基を有する場合、水酸化基における酸素が求核剤として作用して、求電子剤を含むシラン化合物における求電子剤と反応した結果により形成されたエーテル結合、アミド結合、またはエステル結合を介してポリアミック酸高分子のRに結合され得る。
【0073】
また、シリカ系粒子は、化学式1のRまたはRに置換されたフルオロアルキル基との親和力により物理的に結合され得る。
【0074】
さらに、前記シリカ系粒子は、互いに網状構造をなしている−Si−O−結合を含むことができ、前記シリカ系粒子表面のシリコンと、前記Rとが化学的に結合されていてもよい。
【0075】
前記シリカ系粒子は、ポリアミック酸高分子複合体の固形分の総重量に対して1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%で含まれ得る。ポリアミック酸高分子複合体中に含まれるシリカ系粒子の含有量が低すぎると、本発明による効果が微々たるものとなる半面、シリカ系粒子の含有量が高すぎると、ポリアミック酸高分子複合体を用いて製造されたポリイミドフィルムにおける物性、例えば、透明性等が低下する恐れがあるため、前記含有量で含まれることが好ましい。
【0076】
このように、無機粒子であるシリカ系粒子のポリアミック酸高分子内の導入によって、前記ポリアミック酸高分子複合体は、イミド化を経てポリイミドフィルムとして製造されたとき、高透明性を有しつつもガラス水準の熱膨張性を有することができるようになって、フレキシブルディスプレイ用基板として有用であり得る。
【0077】
本発明の他の一具現例によれば、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び選択的に水酸化基を有するジアミンを反応させて、下記化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸を製造する段階;前記製造されたポリアミック酸とシリカ系粒子とを混合した後、反応させて、化学式1の繰り返し単位を有するポリアミック酸高分子とシリカ系粒子とを含む複合体を製造するか、または、
前記製造されたポリアミック酸と下記化学式8で表されるシラン化合物とを反応させて、ポリアミック酸高分子を製造した後、アルコキシシランを反応させて、下記化学式1の繰り返し単位と、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されたシリカ系粒子を含むポリアミック酸高分子複合体を製造する段階を含む前記化学式1のポリアミック酸高分子複合体の製造方法が提供される。
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
【0078】
前記化学式7及び8において、R、R、m及びnは、先に定義したとおりであり、
前記R'は、選択的に水酸化基を有する芳香族、脂環族及び脂肪族の2価の有機基からなる群より選択され得、このとき、前記芳香族、脂環族及び脂肪族の2価の有機基は、先に説明したとおりであり、
前記Rは、炭素数1〜5のアルキル基であり得、また、
前記Xは、求電子剤を含む脂肪族または芳香族の1価の有機基であり得る。
【0079】
以下、各段階別に詳しく説明する。
【0080】
段階1は、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び選択的に水酸化基を有するジアミンを反応させて、化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸を製造する段階である。
【0081】
前記ポリアミック酸の製造時に使用可能なジアミンは、2価のアミノ基と共に芳香族、脂環族、または脂肪族の2価の有機基を含む化合物であって、前記芳香族、脂環族、または脂肪族の2価の有機基は、先に説明したとおりである。
【0082】
具体的には、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3'−ジメチルベンジジン、4,4'−(または3,4'−、3,3'−、2,4'−または2,2'−)ジアミノジフェニルメタン、4,4'−(または3,4'−、3,3'−、2,4'−または2,2'−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−(または3,4'−、3,3'−、2,4'−または2,2'−)ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−(または3,4'−、3,3'−、2,4'−または2,2'−)ジアミノジフェニルスルホン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4'−ベンゾフェノンジアミン、4,4'−ジ−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルホン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジ−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルホン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、4,4'−ジアミノターフェニル、2,5−ジアミノピリジン、4,4'−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、及びヘキサヒドロ−4,7−メタンノインダニレンジメチレンジアミンからなる群より選択された一つ以上であり得る。
【0083】
また、前記テトラカルボン酸二無水物は、具体的に、芳香族、脂環族、または脂肪族の4価の有機基を含むテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。このとき、前記芳香族、脂環族、または脂肪族の4価の有機基は、先に説明したとおりである。
【0084】
好ましくは、前記二無水物は、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペンタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロプロパンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−フェニレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'−スルホニルジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[2,3または3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−または3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(2,3−または4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物からなる群より選択される1つ以上であり得る。
【0085】
また、前記水酸化基を有するジアミンは、分子内に2個のアミノ基と共に1個以上の水酸化基を有する化合物であって、具体的には、芳香族、脂環族、または脂肪族の2価の有機基を含むジアミンにおいて、前記芳香族、脂環族、または脂肪族の2価の有機基内の1以上の水素原子が水酸化基で置換されたジアミンを使用し得る。このとき、前記芳香族、脂環族、または脂肪族の2価の有機基は、先に説明したとおりである。
【0086】
具体的に、前記水酸化基を有するジアミンは、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、及び2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群より選択された1つ以上であり得る。
【0087】
また、前記ジアミンまたは水酸化基を有するジアミンは、分子内の1以上の水素原子がトリフルオロメチル基等のような炭素数1〜10のフルオロアルキル基で置換されたものが透明度の面でより改善した効果を示し得るため好ましい。
【0088】
前記のジアミン、二無水物、及び水酸化基を有するジアミンの反応を介したポリアミック酸の製造方法は、溶液重合など通常のポリアミック酸重合製造方法によって実施できる。具体的には、ジアミン及び水酸化基を有するジアミンをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)とN−メチルピロリドン(NMP)等のような有機溶媒中に溶解させたのち、結果として得られた混合溶液に二無水物を添加して重合反応させることで製造できる。このとき、反応は無水条件で実施でき、前記重合反応時の温度は25〜50℃、好ましくは40〜45℃で実施できる。
【0089】
また、前記ポリアミック酸の重合反応時に用いられるジアミンと水酸化基を有するジアミンは、99:1〜60:40のモル(mol)比で使用され得る。万が一、前記混合比の範囲を外れて水酸化基を有するジアミンの含有量が低すぎると、シラン系化合物との結合部位の含有量が低くなり、本発明による効果を得にくく、水酸化基を有するジアミンの含有量が高すぎると、耐熱特性の効果が低下する恐れがあるが、前記モル比で使用される場合、上記のような恐れなく前記化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸が製造できる。
【0090】
段階2は、上記で製造された化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸をシリカ系粒子と混合して反応させるか、前記化学式8のシラン化合物と反応させてポリアミック酸高分子を製造する段階である。
【0091】
このとき、前記化学式8のシラン化合物は、アルコキシ基と共に求電子剤を含む脂肪族の1価の有機基を含むシラン系化合物であって、好ましくは、前記化学式5において、Xは、イソシアネート基、エステル基、エポキシ基及びこれらの組み合わせからなる群より選択される求電子剤を含む炭素数1〜20の鎖状アルキル基となり得、Rは、炭素数1〜5のアルキル基となり得る。
【0092】
具体的に、前記化学式8のシラン化合物は、イソシアネートプロピルトリエトキシシランまたは3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランであり得る。
【0093】
前記化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸と前記化学式8のシラン化合物との反応時、化学式8のシラン化合物は、段階1で水酸化基を有するジアミンにおける水酸化基と同じ当量で使用され得る。
【0094】
また、前記反応は、30〜60℃の温度で実施されることが好ましい。
【0095】
前記のような反応条件によって実施すると、化学式7の繰り返し単位を含むポリアミック酸内の作用基Rに含まれた水酸化基における酸素原子が求核剤として作用して、前記化学式8のシラン化合物における求電子剤を含む脂肪族鎖を攻撃する反応が起こり得る。かかる反応の結果によりエーテル結合、アミド結合、またはエステル結合が形成され得、これらの結合によって前記化学式7の繰り返し単位のRに化学的に結合されたアルコキシシランを含むポリアミック酸高分子が生成され得る。
【0096】
段階3は、上記で製造されたポリアミック酸高分子とアルコキシシランとを反応させて、ポリアミック酸高分子複合体を製造する段階である。
【0097】
前記アルコキシシランは、特に限定されはしないが、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、及びテトラアルコシシシランからなる群より選択され得、好ましくはテトラアルコキシシラン単独で使用でき、テトラアルコキシシランに残りのモノ、ジ、トリアルコキシシランのうち1つ以上を共に使用できる。
【0098】
このとき、前記反応時にアルコシシシランは、前記段階2における化学式5のシラン化合物とアルコシシシラン化合物から生成されるSiOの総含有量が全固形分の1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%になるようにする量で使用され得る。
【0099】
また、前記ポリアミック酸高分子とアルコシシシランとの反応は、塩酸(HCl)等のような酸触媒条件下で進行し得る。
【0100】
上記のような方法によって段階2で製造されたポリアミック酸高分子とアルコシシシランとを反応させると、互いに網状構造をなしている−Si−O−結合を含むシリカ系粒子が生成される。すなわち、本段階を通じて化学式1の繰り返し単位のRに化学的に結合されたシリカ系粒子を含むポリアミック酸高分子複合体が最終的に製造されることになる。
【0101】
下記反応式1は、本発明によるポリアミック酸高分子複合体の製造反応の一例を概略的に示している。下記反応式1は、本発明を説明するためのものであるだけで、本発明がこれに限定されるのではない。
[反応式1]
【0102】
前記反応式1において、R〜R、R'、X、m及びnは、先に定義したとおりであり、Zは、連結基であって、エーテル結合、アミド結合またはエステル結合を表す。
【0103】
前記反応式1に示されているとおり、ポリアミック酸(i)と求電子剤として含むシラン化合物を反応させると、ポリアミック酸のRに含まれた水酸化基と求電子剤との反応結果により、シラン化合物におけるSiがポリアミック酸に対してZ連結基を介して結合するようになり、その後、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の処理によりシリカ粒子が形成され得る。
【0104】
一方、本発明によれば、前記化学式1の繰り返し単位を含むポリアミック酸高分子複合体に対する硬化工程を通じて、ディスプレイ基板を製造する方法を提供する。
【0105】
詳しくは、前記化学式1の繰り返し単位を含むポリアミック酸高分子複合体を含む組成物を支持体に塗布した後、硬化してポリイミドフィルムを形成する段階、また、前記ポリイミドフィルムを支持体から分離する段階を含むディスプレイ基板の製造方法を提供する。
【0106】
前記ポリアミック酸高分子複合体を含む組成物は、ポリアミック酸高分子複合体と共に有機溶媒を含み、このとき、有機溶媒は、先に説明したとおりであり得る。
【0107】
前記組成物に含まれるポリアミック酸高分子複合体の含有量は特に限定されないが、その後の塗布工程等を考慮して5,000〜50,000cPの粘度を有するようにする含有量で含まれ得る。
【0108】
そして、前記支持体としては、ガラス、金属基板、プラスチック基板など特に制限なく使用でき、この中でもポリアミック酸高分子複合体に対する硬化工程中に熱及び化学的安定性に優れ、別途の離型剤の処理がなくても、硬化後に形成されたポリイミドフィルムに対して損傷なく容易に分離できるガラス基板を使用することが好ましい。
【0109】
そして、前記塗布工程は、通常の塗布方法によって実施でき、具体的には、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、エアーナイフ法、グラビア法、リバースロール法、キスロール法、ドクターブレード法、スプレー法、浸漬法またはブラシ法等が利用できる。
【0110】
また、前記塗布工程時に前記ポリアミック酸高分子複合体を含む組成物の塗布量は、最終的に製造されるフィルムがディスプレイ基板用に適する厚みを有するようにする厚み範囲で支持体上に塗布することができ、具体的には、10〜30μmの厚みになるようにする量で塗布できる。
【0111】
さらに、前記硬化工程は、80〜400℃の温度における加熱処理で行われ、且つ前記温度範囲内にて多様な温度における多段階の加熱処理で行われもする。
【0112】
上記のような硬化工程によって、ポリアミック酸高分子複合体でイミド化反応が起こることになり、ポリイミド高分子複合体が生成される。
【0113】
かかるポリイミド高分子複合体は、下記化学式6の繰り返し単位と、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されているか物理的に結合されたシリカ系粒子を含む構造を有する。
[化学式6]
【化6】
【0114】
前記化学式6において、R〜R、m及びnは、先に定義したとおりである。
【0115】
本発明では、前記の製造方法によって製造されたディスプレイ基板が適用され得る。
【0116】
詳しくは、前記ディスプレイ基板は、前記化学式6の繰り返し単位と、エーテル結合、アミド結合、及びエステル結合からなる群より選択される結合を介して、前記繰り返し単位のRに化学的に結合されているか物理的に結合されたシリカ系粒子を含むポリイミド高分子複合体を含む。
【0117】
このように、前記ディスプレイ基板は、シリカ系粒子がポリイミド高分子に化学的にまたは物理的に結合されたポリイミド高分子複合体を含むことで、高透明性を有しつつもガラス水準の熱膨張性を有し、フレキシブルディスプレイに適用が可能である。具体的には、前記ディスプレイ基板は、ヘイズなく10〜30μmの基板の厚み範囲における550nmの波長の光に対する光透過度が80%以上であり、100〜300℃の温度範囲で20ppm/K以下の熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)を有し、350℃以上のガラス転移温度(Tg)を示すものであり得る。
【0118】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態で具現でき、ここで説明する実施例に限定されない。
【0119】
[実施例1]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.128mol)と、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BisApAf、0.007mol)を無水DMAc334gに溶かし、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA、0.136mol)を添加して45℃で2時間撹拌した後、40℃で24時間撹拌した。ジアミンのモル(mol)比率は、TFMB:BisApAf=95:5に調節し、反応は無水条件下で進めた。
【0120】
結果として製造されたBPDA−TFMB−BisApAf溶液を50℃に加熱し、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(ICTEOS)1.683gを添加して2時間撹拌した。ICTEOSは、BisApAfの水酸化基と同じ当量を滴下した。
【0121】
結果として得られたポリアミック酸高分子含有溶液を60℃に加熱した後、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)13.045gと0.1N HCl 8.432gを入れて4時間撹拌し、ポリアミック酸高分子複合体を含む溶液を製造した。その際、ICTEOS及びTEOSから生成されるSiO2の総含有量は、全固形分の5重量%に調節した。
【0122】
[実施例2]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.048mol)と、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BisApAf、0.003mol)を無水DMAc97gに溶かし、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA、0.051mol)を添加して45℃で2時間撹拌した後、40℃で24時間撹拌した。ジアミンのモル(mol)比率は、TFMB:BisApAf=95:5に調節し、反応は無水条件下で進めた。
【0123】
その後の実験方法は、実施例1の方法と同様に行った。
【0124】
[実施例3]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.037mol)と、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BisApAf、0.002mol)を無水DMAc102gに溶かし、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA、0.027mol)と4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフタル酸二無水物(6FDA、0.012mol)とを添加して45℃で2時間撹拌した後、40℃で24時間撹拌した。ジアミンのモル(mol)比率は、TFMB:BisApAf=95:5に調節し、反応は無水条件下で進めた。
【0125】
その後の実験方法は、実施例1の方法と同様に行った。
【0126】
[実施例4]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.064mol)をDMAc100gに溶かし、4,4−オキシジフタル酸二無水物(ODPA、0.064mol)を添加しDMAc73gに入れて50℃で3時間撹拌した後、室温で24時間撹拌した。
【0127】
その結果得られたポリアミック酸溶液に、DMAcに20wt%分散されたシリカナノ粒子(SiO、20nm)をポリアミック酸固形分対比20wt%添加し4時間撹拌して、ポリアミック酸高分子複合体を含む溶液を製造した。
【0128】
[実施例5]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.064mol)をDMAc100gに溶かし、4,4−オキシジフタル酸二無水物(ODPA、0.064mol)を添加しDMAc73gに入れて50℃で3時間撹拌した後、室温で24時間撹拌した。
【0129】
その結果得られたポリアミック酸溶液に、DMAcに20wt%分散されたシリカナノ粒子(SiO、20nm)をポリアミック酸固形分対比30wt%添加し4時間撹拌して、ポリアミック酸高分子複合体を含む溶液を製造した。
【0130】
[比較例1]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.286mol)を無水DMAc706gに溶かし、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)0.289molを添加して45℃で2時間撹拌した後、40℃で24時間撹拌してポリアミック酸を含む溶液を製造した。前記反応は無水条件下で進めた。
【0131】
[比較例2]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.128mol)と、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BisApAf、0.007mol)を無水DMAc334gに溶かし、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA、0.136mol)を入れ45℃で2時間撹拌した後、40℃で24時間撹拌して、ポリアミック酸を含む溶液を製造した。その際、ジアミンのモル(mol)比率は、TFMB:BisApAf=95:5の比率を有するように調節し、前記反応は無水条件下で進めた。
【0132】
[比較例3]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.035mol)と、3,3−ジヒドロキシベンジジン(DHB、0.002mol)を無水DMAc97gに溶かし、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA、0.037mol)を入れ45℃で2時間撹拌した後、40℃で24時間撹拌して、ポリアミック酸を含む溶液を製造した。その際、ジアミンのモル(mol)比率は、TFMB:DHB=95:5の比率を有するように調節し、前記反応は無水条件下で進めた。
【0133】
[比較例4]
2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB、0.064mol)をDMAc100gに溶かし、4,4'−オキシジフタル酸二無水物(ODPA、0.064mol)を添加しDMAc73gに入れて50℃で3時間撹拌した後、室温で24時間撹拌した。
【0134】
[比較例5]
4,4−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(MEMCHA、0.092mol)を無水DMAc100gに溶かし、4,4'−オキシジフタル酸二無水物(ODPA、0.092mol)を添加して50℃で2時間撹拌した後、室温で24時間撹拌してポリアミック酸を含む溶液を製造した。前記反応は、無水条件下で進めた。
【0135】
[比較例6]
4,4−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(MEMCHA、0.092mol)を無水DMAc100gに溶かし、4,4'−オキシジフタル酸二無水物(ODPA、0.092mol)を添加して50℃で2時間撹拌した後、室温で24時間撹拌してポリアミック酸を含む溶液を製造した。前記反応は、無水条件下で進めた。
【0136】
その結果得られたポリアミック酸溶液に、DMAcに20wt%分散されたシリカナノ粒子(SiO、20nm)をポリアミック酸固形分対比5wt%添加し4時間撹拌して、ポリアミック酸高分子複合体を含む溶液を製造した。
【0137】
[比較例7]
4,4'−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(MEMCHA、0.092mol)を無水DMAc100gに溶かし、4,4'−オキシジフタル酸二無水物(ODPA、0.092mol)を添加して50℃で2時間撹拌した後、室温で24時間撹拌してポリアミック酸を含む溶液を製造した。前記反応は、無水条件下で進めた。
【0138】
その結果得られたポリアミック酸溶液に、DMAcに20wt%分散されたシリカナノ粒子(SiO、20nm)をポリアミック酸固形分対比15wt%添加し4時間撹拌して、ポリアミック酸高分子複合体を含む溶液を製造した。
【0139】
以上、実施例1〜5及び比較例1〜7で製造されたポリアミック酸溶液の製造に用いられた成分は次のとおりである。
【表1】
TFMB:2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル
BisApAf:2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
DHB:3,3−ジヒドロキシベンジジン
MEMCHA:4,4'−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)
BPDA:3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4'−オキシジフタル酸二無水物
【0140】
[製造例1]
実施例1〜3で製造されたポリアミック酸高分子複合体を含む溶液、そして、比較例1〜4によって製造されたポリアミック酸を含む溶液をそれぞれ10,000cPの粘度を有するように固形分の重量%を調節した後、製造された溶液はそれぞれ20μmの厚みでガラス基板にそれぞれスピンコートした。前記実施例1〜3及び比較例1〜4の溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ2℃/minの速度で加熱し、80℃で15分、150℃で30分、220℃で30分、350℃で1時間を維持して硬化工程を行った。硬化工程完了の後、ガラス基板を水に入れてガラス基板上に形成されたフィルムをはがしてオーブンで100℃にて乾燥した。
【0141】
[製造例2]
実施例4及び5で製造されたポリアミック酸高分子複合体を含む溶液、そして、比較例5〜7によって製造されたポリアミック酸を含む溶液をそれぞれ10,000cPの粘度を有するように固形分の重量%を調節した後、製造された溶液はそれぞれ20μmの厚みでガラス基板にそれぞれスピンコートした。前記実施例4〜5及び比較例5〜7の溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ2℃/minの速度で加熱し、80℃で15分、150℃で30分、220℃で30分、350℃で1時間を維持して硬化工程を行った。硬化工程完了の後、ガラス基板を水に入れてガラス基板上に形成されたフィルムをはがしてオーブンで100℃にて乾燥した。
【0142】
[実験例1]
前記製造例によって製造されたポリイミドフィルムの400、450及び550nmにおける透過度を測定した。透過度は、UV分光計(G1103A、Agilent社製)を用いて300〜800nmの範囲で測定した。
【表2】
【0143】
前記表1の結果によれば、実施例1〜5の複合体溶液を用いて製造されたフィルムに対する透過度は、比較例のフィルムと同等水準で、透過度が減少しないことがわかる。反面、比較例3の場合、水酸化基を有するジアミンにCF基が存在しないため、同じ製造法で製造された実施例1〜3に比べて透過度が劣り、比較例6及び7の溶液はシリカが凝集して製膜が不可能であった。
【0144】
[実験例2]
前記製造例によって製造されたポリイミドフィルムをそれぞれ15×5mmの大きさに切り取った後、5分間150℃で加熱し、30℃に冷まして10℃/minの速度で加熱し、0.05Nの力を加えて熱膨張性を測定した。熱膨張性は、TMA(SDTA840、TA Instrument社製)を用いて100〜300℃の範囲で測定した。測定結果は下記表3に示した。
【表3】
【0145】
前記のように、本発明によるポリアミック酸高分子複合体を用いて製造したポリイミドフィルムは、高透明性を有しつつも20ppm以下の熱膨張性を有することがわかった。
【0146】
以上で本発明の内容の特定部分を詳しく記述したが、当業界の通常の知識を有する者において、かかる具体的記述は単に好ましい実施様態であるだけで、これにより本発明の範囲が制限されるのではないという点は明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。