特許第5971996号(P5971996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5971996-歪補償システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971996
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】歪補償システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20160804BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20160804BHJP
   H04B 10/58 20130101ALI20160804BHJP
【FI】
   H04B9/00 251
   H04B1/04 R
   H04B9/00 580
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-66302(P2012-66302)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-198121(P2013-198121A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】上村 和孝
(72)【発明者】
【氏名】藤島 勇人
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−275782(JP,A)
【文献】 特開平07−336300(JP,A)
【文献】 特開平7−58693(JP,A)
【文献】 特開2001−244895(JP,A)
【文献】 特開平11−275009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送用高周波信号を入力して電気/光変換し変換時光信号を出力する電気/光変換器と、前記変換時光信号を入力して伝送する光ファイバと、前記光ファイバで伝送された伝送後光信号を入力して光/電気変換し出力側高周波信号を出力する光/電気変換器と、を備える光リンクで発生する歪を補償するための歪補償システムであって、
前記光リンクは、前記伝送用高周波信号を増幅するLD駆動用増幅器を有し、
前記電気/光変換器は、電気信号を光信号に変換するレーザダイオードを内蔵し、前記LD駆動用増幅器で増幅された前記伝送用高周波信号で前記レーザダイオードを駆動させて電気/光変換しており、
前記光リンクで発生する歪は、前記LD駆動用増幅器、前記電気/光変換器、前記光ファイバおよび前記光/電気変換器に起因しており、
該歪補償システムは、前記LD駆動用増幅器、前記電気/光変換器、前記光ファイバおよび前記光/電気変換器に起因する歪をすべてあわせ持った前記光リンクの歪特性を補償するためのシステムであり、
前記変換時光信号を前記光ファイバから分岐して入力し、これを処理してフィードバック用高周波信号を出力するフィードバックブロックと、
外部から入力側高周波信号を入力するとともに前記フィードバックブロックから前記フィードバック用高周波信号を入力し、該フィードバック用高周波信号に生じている歪量を補償するための歪補償成分を算出し、前記入力側高周波信号に前記歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を算出し、該伝送用高周波信号を前記光リンクに出力する歪補償ブロックと、を備える
ことを特徴とする歪補償システム。
【請求項2】
前記フィードバックブロックは、前記変換時光信号が前記光ファイバを伝送するときに発生するのと略同等の歪を前記分岐して入力した光信号に発生させた後に光/電気変換して前記フィードバック用高周波信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の歪補償システム。
【請求項3】
前記フィードバックブロックは、
前記光ファイバと同等の特性を有して略等しい長さのフィードバック用光ファイバと、
前記フィードバック用光ファイバに前記分岐して入力した光信号を伝送させた後の光信号を入力して光/電気変換し、前記フィードバック用高周波信号を出力するフィードバック用光/電気変換器と、を有し、
前記歪補償ブロックは、
前記入力側高周波信号を分岐して入力し、前記フィードバック用高周波信号との差分を算出しこれを逆特性にして前記歪補償成分を出力する歪補償部と、
前記入力側高周波信号を分岐して入力し、前記歪補償部の処理時間だけ前記入力側高周波信号を遅延させて出力する遅延器と、
前記遅延器から入力した前記入力側高周波信号に前記歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を出力する加算器と、を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の歪補償システム。
【請求項4】
伝送用高周波信号を入力して電気/光変換し変換時光信号を出力する電気/光変換器と、前記変換時光信号を入力して伝送する光ファイバと、前記光ファイバで伝送された伝送後光信号を入力して光/電気変換し出力側高周波信号を出力する光/電気変換器と、を備える光リンクで発生する歪を補償するための歪補償システムであって、
前記変換時光信号を前記光ファイバから分岐して入力し、これを処理してフィードバック用高周波信号を出力するフィードバックブロックと、
外部から入力側高周波信号を入力するとともに前記フィードバックブロックから前記フィードバック用高周波信号を入力し、該フィードバック用高周波信号に生じている歪量を補償するための歪補償成分を算出し、前記入力側高周波信号に前記歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を算出し、該伝送用高周波信号を前記光リンクに出力する歪補償ブロックと、を備え、
前記フィードバックブロックは、
前記変換時光信号が前記光ファイバを伝送するときに発生するのと略同等の歪を前記分岐して入力した光信号に発生させた後に光/電気変換して前記フィードバック用高周波信号を出力する第1のフィードバックブロックと、
前記分岐して入力した光信号を直接光/電気変換して前記フィードバック用高周波信号を出力する第2のフィードバックブロックと、を有し、
前記歪補償ブロックは、
前記入力側高周波信号を入力するとともに前記第1のフィードバックブロックから前記フィードバック用高周波信号を入力し、該フィードバック用高周波信号に生じている歪量を補償するための歪補償成分を第1の歪補償成分として算出し、前記第1の歪補償成分を前記入力側高周波信号に加算して歪加算信号を出力する第1の歪補償ブロックと、
前記第1の歪補償ブロックから前記歪加算信号を入力するとともに前記第2のフィードバックブロックから前記フィードバック用高周波信号を入力し、該フィードバック用高周波信号に生じている歪量を補償するための歪補償成分を第2の歪補償成分として算出し、前記歪加算信号に前記第2の歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を出力する第2の歪補償ブロックと、を備え、
前記第1の歪補償ブロックは、
前記光リンクの前記電気/光変換器で歪が発生しないように調整された高周波信号を前記入力側高周波信号として入力したときは、前記第1の歪補償成分を算出して保存し、前記入力側高周波信号を外部から入力したときは、前記保存された第1の歪補償成分を用いて前記歪加算信号を算出する
ことを特徴とする歪補償システム。
【請求項5】
前記第1のフィードバックブロックは、
前記光ファイバと同等の特性を有して略等しい長さのフィードバック用光ファイバと、前記フィードバック用光ファイバに前記分岐して入力した光信号を伝送させた後の光信号を入力して光/電気変換し、前記フィードバック用高周波信号を出力するフィードバック用光/電気変換器と、を有し、
前記第2のフィードバックブロックは、
前記分岐して入力した光信号を光/電気変換し前記フィードバック用高周波信号を出力する別のフィードバック用光/電気変換器を有し、
前記第1の歪補償ブロックは、
前記入力側高周波信号を分岐して入力し、前記第1のフィードバックブロックから入力した前記フィードバック用高周波信号との差分を算出しこれを逆特性にした前記第1の歪補償成分を保存する、または保存された前記第1の歪補償成分を読み出して出力する第1の歪補償部と、
前記入力側高周波信号を分岐して入力し、前記第1の歪補償部の処理時間だけ前記入力側高周波信号を遅延させて出力する第1の遅延器と、
前記第1の遅延器から入力した前記入力側高周波信号に前記第1の歪補償成分を加算して前記歪加算信号を出力する第1の加算器と、を有し、
前記第2の歪補償ブロックは、
前記歪加算信号を分岐して入力し、前記第2のフィードバックブロックから入力した前記フィードバック用高周波信号との差分を算出しこれを逆特性にして前記第2の歪補償成分を出力する第2の歪補償部と、
前記歪加算信号を分岐して入力し、前記第2の歪補償部の処理時間だけ前記歪加算信号を遅延させて出力する第2の遅延器と、
前記第2の遅延器から入力した前記歪加算信号に前記第2の歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を出力する第1の加算器と、を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の歪補償システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を無線信号(変調された搬送波)で強度変調させて光ファイバで伝送するRadio Over Fiber技術において、電気/光変換器と光/電気変換器と光ファイバとで構成される光リンク内で発生する光信号の歪を補償する歪補償システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用基地局装置の整備が進められており、そのカバーエリアを拡大するとともに、ビル内、道路トンネル内、鉄道トンネル内へのサービスの展開も図られつつある。このような携帯用基地局装置の整備では、変調された無線信号をそのまま光信号に乗せて光ファイバ中を伝送させるRadio Over Fiber技術が採用されている。
【0003】
RF(高周波)信号を処理する高周波回路等では、従来より、信号に発生する歪を簡易なフィードバック系を用いて補償することが行われている。フィードバック系による歪補償では、発生した歪を検出し、これを補償するように制御されることから、歪を高精度に補償することが可能である。最近ではRF領域で歪を補償する回路(IC)も出現している。これに対し、電気信号を光信号に変換して光ファイバ中を伝送させる光伝送システム等の分野では、光信号の歪を、フィードバック系を用いて補償する技術は、A/D変換器及びD/A変換器を用いてベースバンド領域で歪補償を行う回路を用いるものが知られていた(非特許文献1)。
【0004】
電気/光変換して得られる光信号を伝送させる光伝送システム等では、例えば、光信号を生成するレーザダイオード(LD)や光信号を伝送させる光ファイバ等の光部品、あるいはLDの駆動用電力を増幅する電力増幅器、等のそれぞれが持つ歪特性によって光信号に歪が発生する。このような光信号に発生する歪を補償する技術として、光部品や電力増幅器等の歪特性とは逆の特性を持つ回路等を用いるものが知られている。
【0005】
一例として、電気/光変換器に内蔵されるLDの歪を補償するために、LDの歪特性と逆特性の歪を有する信号を発生させる回路を構成し、該回路であらかじめ信号に逆特性の歪を付加(プリディストーション)してLDに入力することで、LDで発生する歪を低減させる技術が知られている(たとえば、特許文献1)。また、電気/光変換器から出力された光信号をカプラーで分岐して光/電気変換器に入力し、再生された電気信号をベースバンド信号に変換し、このベースバンド信号をフィードバック信号としてLDの入力信号に対しプリディストーションを行う試みも行われている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−29221号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Nadarajah et al., "Adaptive digital predistortion of laser diode nonlinearity for wireless applications", Electrical and Computer Engineering, 2003. IEEE CCECE 2003, Vo.1, pp.159-162 (May 2003).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されているLDの歪を改善する補償回路は、出力信号をフィードバックする構成ではないため、環境変化などによる光部品等の特性の変化に追従させるのが難しいといった問題がある。また、非特許文献1に記載された技術では、フィードバック系の構成を用いてプリディストーションを行っているが、ベースバンド領域でプリディストーションを行う構成のため、D/A変換器、A/D変換器、IQ変復調器などが必要となり、複雑で大規模な構成になってしまうといった問題がある。
【0009】
さらに、光信号を伝送する光ファイバでも、光ファイバが有する歪特性により光信号に波長分散歪が発生するが、このような光ファイバで発生する歪に対しては、それを補償することはこれまでなされていなかった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で光信号をフィードバックして光リンク内で発生する歪を補償することができる歪補償システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の歪補償システムの第1の態様は、伝送用高周波信号を入力して電気/光変換し変換時光信号を出力する電気/光変換器と、前記変換時光信号を入力して伝送する光ファイバと、前記光ファイバで伝送された伝送後光信号を入力して光/電気変換し出力側高周波信号を出力する光/電気変換器と、を備える光リンクで発生する歪を補償するための歪補償システムであって、前記光リンクは、前記伝送用高周波信号を増幅するLD駆動用増幅器を有し、前記電気/光変換器は、電気信号を光信号に変換するレーザダイオードを内蔵し、前記LD駆動用増幅器で増幅された前記伝送用高周波信号で前記レーザダイオードを駆動させて電気/光変換しており、前記光リンクで発生する歪は、前記LD駆動用増幅器、前記電気/光変換器、前記光ファイバおよび前記光/電気変換器に起因しており、該歪補償システムは、前記LD駆動用増幅器、前記電気/光変換器、前記光ファイバおよび前記光/電気変換器に起因する歪をすべてあわせ持った前記光リンクの歪特性を補償するためのシステムであり、前記変換時光信号を前記光ファイバから分岐して入力し、これを処理してフィードバック用高周波信号を出力するフィードバックブロックと、外部から入力側高周波信号を入力するとともに前記フィードバックブロックから前記フィードバック用高周波信号を入力し、該フィードバック用高周波信号に生じている歪量を補償するための歪補償成分を算出し、前記入力側高周波信号に前記歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を算出し、該伝送用高周波信号を前記光リンクに出力する歪補償ブロックと、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の歪補償システムの他の態様は、前記フィードバックブロックは、前記変換時光信号が前記光ファイバを伝送するときに発生するのと略同等の歪を前記分岐して入力した光信号に発生させた後に光/電気変換して前記フィードバック用高周波信号を出力することを特徴とする。
【0013】
本発明の歪補償システムの他の態様は、前記フィードバックブロックは、前記光ファイバと同等の特性を有して略等しい長さのフィードバック用光ファイバと、前記フィードバック用光ファイバに前記分岐して入力した光信号を伝送させた後の光信号を入力して光/電気変換し、前記フィードバック用高周波信号を出力するフィードバック用光/電気変換器と、を有し、前記歪補償ブロックは、前記入力側高周波信号を分岐して入力し、前記フィードバック用高周波信号との差分を算出しこれを逆特性にして前記歪補償成分を出力する歪補償部と、前記入力側高周波信号を分岐して入力し、前記歪補償部の処理時間だけ前記入力側高周波信号を遅延させて出力する遅延器と、前記遅延器から入力した前記入力側高周波信号に前記歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を出力する加算器と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の歪補償システムの他の態様は、伝送用高周波信号を入力して電気/光変換し変換時光信号を出力する電気/光変換器と、前記変換時光信号を入力して伝送する光ファイバと、前記光ファイバで伝送された伝送後光信号を入力して光/電気変換し出力側高周波信号を出力する光/電気変換器と、を備える光リンクで発生する歪を補償するための歪補償システムであって、前記変換時光信号を前記光ファイバから分岐して入力し、これを処理してフィードバック用高周波信号を出力するフィードバックブロックと、外部から入力側高周波信号を入力するとともに前記フィードバックブロックから前記フィードバック用高周波信号を入力し、該フィードバック用高周波信号に生じている歪量を補償するための歪補償成分を算出し、前記入力側高周波信号に前記歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を算出し、該伝送用高周波信号を前記光リンクに出力する歪補償ブロックと、を備え、前記フィードバックブロックは、前記変換時光信号が前記光ファイバを伝送するときに発生するのと略同等の歪を前記分岐して入力した光信号に発生させた後に光/電気変換して前記フィードバック用高周波信号を出力する第1のフィードバックブロックと、前記分岐して入力した光信号を直接光/電気変換して前記フィードバック用高周波信号を出力する第2のフィードバックブロックと、を有し、前記歪補償ブロックは、前記入力側高周波信号を入力するとともに前記第1のフィードバックブロックから前記フィードバック用高周波信号を入力し、該フィードバック用高周波信号に生じている歪量を補償するための歪補償成分を第1の歪補償成分として算出し、前記第1の歪補償成分を前記入力側高周波信号に加算して歪加算信号を出力する第1の歪補償ブロックと、前記第1の歪補償ブロックから前記歪加算信号を入力するとともに前記第2のフィードバックブロックから前記フィードバック用高周波信号を入力し、該フィードバック用高周波信号に生じている歪量を補償するための歪補償成分を第2の歪補償成分として算出し、前記歪加算信号に前記第2の歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を出力する第2の歪補償ブロックと、を備え、前記第1の歪補償ブロックは、前記光リンクの前記電気/光変換器で歪が発生しないように調整された高周波信号を前記入力側高周波信号として入力したときは、前記第1の歪補償成分を算出して保存し、前記入力側高周波信号を外部から入力したときは、前記保存された第1の歪補償成分を用いて前記歪加算信号を算出することを特徴とする。


【0015】
本発明の歪補償システムの他の態様は、前記第1のフィードバックブロックは、前記光ファイバと同等の特性を有して略等しい長さのフィードバック用光ファイバと、前記フィードバック用光ファイバに前記分岐して入力した光信号を伝送させた後の光信号を入力して光/電気変換し、前記フィードバック用高周波信号を出力するフィードバック用光/電気変換器と、を有し、前記第2のフィードバックブロックは、前記分岐して入力した光信号を光/電気変換し前記フィードバック用高周波信号を出力する別のフィードバック用光/電気変換器を有し、前記第1の歪補償ブロックは、前記入力側高周波信号を分岐して入力し、前記第1のフィードバックブロックから入力した前記フィードバック用高周波信号との差分を算出しこれを逆特性にした前記第1の歪補償成分を保存する、または保存された前記第1の歪補償成分を読み出して出力する第1の歪補償部と、前記入力側高周波信号を分岐して入力し、前記第1の歪補償部の処理時間だけ前記入力側高周波信号を遅延させて出力する第1の遅延器と、前記第1の遅延器から入力した前記入力側高周波信号に前記第1の歪補償成分を加算して前記歪加算信号を出力する第1の加算器と、を有し、前記第2の歪補償ブロックは、前記歪加算信号を分岐して入力し、前記第2のフィードバックブロックから入力した前記フィードバック用高周波信号との差分を算出しこれを逆特性にして前記第2の歪補償成分を出力する第2の歪補償部と、前記歪加算信号を分岐して入力し、前記第2の歪補償部の処理時間だけ前記歪加算信号を遅延させて出力する第2の遅延器と、前記第2の遅延器から入力した前記歪加算信号に前記第2の歪補償成分を加算して前記伝送用高周波信号を出力する第1の加算器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成で光信号をフィードバックして光リンク内で発生する歪を補償することができる歪補償システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る歪補償システムの構成を示すブロック図である。
図2】トレーニング期間における本発明の第2の実施形態に係る歪補償システムの構成を示すブロック図である。
図3】リアルタイムの歪補償期間における本発明の第2の実施形態に係る歪補償システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施の形態における歪補償システムについて、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0019】
本発明の歪補償システムは、A/D変換器及びD/A変換器を用いてベースバンド領域で歪補償するのではなく、RF(高周波)領域で電気信号に対する歪補償を行う簡易な構成のフィードバック系回路を用い、光リンクに設けられているLDや光ファイバ等の光部品あるいはLD駆動用増幅器等により発生する信号歪を補償するものである。本発明によれば、従来より用いられているフィードバック系回路を光リンクの歪補償に適用することで、低コストで安定した歪補償が行える歪補償システムを提供することができる。
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る歪補償システムを、図1を用いて以下に説明する。図1は、光リンク10に接続された本実施形態の歪補償システム100の構成を示すブロック図である。光リンク10は、入力端11側に設けられた電気/光変換器12と、出力端15側に設けられた光/電気変換器14との間を、光ファイバ13で接続した構成を有している。光リンク10は、入力端11に入力されたRF信号を電気/光変換器12で光信号に変換し、この光信号を光ファイバ13で遠方に伝送するものである。光ファイバ13で伝送された光信号は、光/電気変換器14で再びRF信号に変換されて出力端15から外部に出力される。
【0021】
入力端11に入力されるRF信号(入力側高周波信号)は、例えば携帯電話や無線LAN、地上デジタルテレビ放送等の無線信号(変調された搬送波)を受信して得られるRF信号である。光リンク10は、受信したRF信号を高周波のまま光信号に変換して光ファイバ13で遠方に伝送させるものである。
【0022】
電気/光変換器12は、電気信号を光信号に変換するLDを内蔵しており、該LDを入力端11に入力されるRF信号で駆動させる構成となっている。図1に示す光リンク10の構成では、入力端11に入力されたRF信号を増幅するLD駆動用増幅器16が設けられており、RF信号をLD駆動用増幅器16で増幅したのち電気/光変換器12に内蔵されるLDを駆動させる構成としている。
【0023】
入力端11にRF信号が入力されると、該RF信号がLD駆動用増幅器16で増幅されて電気/光変換器12に内蔵されるLDを駆動する。これにより、電気/光変換器12からはRF信号で強度変調された光信号(変換時光信号)が出力される。電気/光変換器12から出力される光信号は、光ファイバ13に入力されて光/電気変換器14に伝送される。光/電気変換器14は、光ファイバ13から入力した光信号(伝送後光信号)を再びRF信号(出力側高周波信号)に戻し、これを出力端15から外部に出力する。出力端15から出力されるRF信号は、例えば携帯電話や無線LAN、地上デジタルテレビ放送等の無線信号として、再び空中に放射される。
【0024】
本実施形態の歪補償システム100は、光リンク10の入力端11側に設けられており、バンドパスフィルタ(BPF)101と、歪補償ブロック110と、フィードバックブロック120と、を備えている。BPF101は、入力端11に入力されたRF信号を、必要な帯域に制限して歪補償ブロック110に出力する。以下では、BPF101から歪補償ブロック110に出力されるRF信号をS1で示す。
【0025】
歪補償ブロック110は、歪補償部111、遅延器112、及び加算器113を備えており、BPF101から入力したRF信号S1に所定の歪補償成分を加算して光リンク10に出力する構成となっている。歪補償部111には、従来よりあり、BB領域ではなくRF領域で歪補償を行うRF回路(IC)を適用することができる。
【0026】
フィードバックブロック120は、光リンク10の歪特性をフィードバックするために設けられており、光ファイバ13の電気/光変換器12との接続側に設けられたカプラー121、光ファイバ(フィードバック用光ファイバ)122、光/電気変換器(フィードバック用光/電気変換器)123、及びBPF124を備えている。フィードバックブロック120で得られる光リンク10の歪特性を歪補償ブロック110にフィードバックし、歪補償ブロック110でこれを補償するように制御する。
【0027】
光リンク10を構成するLD駆動用増幅器16及び電気/光変換器12(内蔵されるLD)は、それぞれ非線形性を有しているため、入力したRF信号に歪が発生してしまう。また、光ファイバ13の光波長分散により、光ファイバ13を伝送する間に光信号に波形歪が生じる。さらに、光/電気変換器14も非線形性を有しているため、光信号を再びRF信号に戻すときにも歪が生じてしまう。光リンク10は、これらの歪をすべてあわせ持っており、これが光リンク10の歪特性となる。
【0028】
本実施形態の歪補償システム100は、上記の光リンク10の歪特性を補償するように構成されている。BPF101から歪補償ブロック110に入力されたRF信号S1は、2つに分岐されてそれぞれ遅延器112と歪補償部111に入力される。遅延器112を通過したRF信号(S2とする)は、加算器113に入力される。一方、歪補償部111に入力されたRF信号S1は、歪補償部111で歪補償成分(S3とする)を生成するのに用いられる。歪補償部111で生成された歪補償成分S3は加算器113に出力され、ここで遅延器112から出力されるRF信号S2に加算される。加算器113でRF信号S2に歪補償成分S3が加算されたRF信号(S4とする)は、歪補償成分S3だけプリディストーションされたRF信号であり、これが光リンク10に入力される。
【0029】
光リンク10に入力されたRF信号(伝送用高周波信号)S4は、LD駆動用増幅器16で増幅されたのち電気/光変換器12を駆動して光信号(S5とする)を出力させる。光信号S5は、RF信号S4で強度変調された光信号である。電気/光変換器12から出力される光信号S5は、カプラー121で2つに分岐され、光信号S5の一方が光ファイバ13を経由して光/電気変換器14に伝送される。また、光信号S5の他方は、フィードバックブロック120に入力される。
【0030】
フィードバックブロック120に入力された光信号S5は、光ファイバ122に入力されて光/電気変換器123に伝送される。光/電気変換器123に入力された光信号S5は、ここでRF信号に変換されて出力される。光/電気変換器123から出力されたRF信号は、BPF124で必要な帯域に制限されて歪補償ブロック110に入力される。BPF124から歪補償ブロック110に入力されるRF信号(フィードバック用高周波信号)をS6とする。
【0031】
フィードバックブロック120の光ファイバ122は、光リンク10の光ファイバ13と略等しい特性を有して略等しい長さに形成されている。また、光/電気変換器123も、光/電気変換器14とほぼ同等の非線形性を有している。このように、フィードバックブロック120の光ファイバ122及び光/電気変換器123は、それぞれ光リンク10の光ファイバ13及び光/電気変換器14とほぼ同等の特性を有するように形成されていることから、光/電気変換器123から出力されるRF信号は、光/電気変換器14から出力されるRF信号とほぼ同等の歪を有している。
【0032】
なお、光/電気変換器14及び123は、入力する光信号の強度が異なるとその歪量が変化してしまうおそれがある。その場合には、光/電気変換器14から出力されるRF信号の歪量と光/電気変換器123から出力されるRF信号の歪量とが異なることになるが、このような入力する光信号強度の差による歪量の変化は小さく、電気/光変換器12のLDによる歪量の方が支配的になるので大きな性能劣化とはならない。
【0033】
光/電気変換器123からBPF124を経由して補償ブロック110に入力されたRF信号S6は、歪補償部111に入力されて歪補償成分S3の生成に用いられる。歪補償部111は、フィードバックブロック120から入力したRF信号S6と、BPF101から入力したRF信号S1との差分を算出する。この差分は、RF信号S1が光リンク10を伝送する間に発生する歪量に相当するものである。歪補償部111は、算出された差分(歪量)を打ち消すための逆特性の信号を求め、これを歪補償成分S3として加算器113に出力する。
【0034】
加算器113は、BPF101から2つに分岐された一方のRF信号S1と、分岐された他方のRF信号S1を歪補償部111で処理して出力される歪補償成分S3と、を入力して加算している。ここで、一方のRF信号S1を、遅延器112を通過させずに加算器113に直接入力すると、歪補償部111が他方のRF信号S1を入力して歪補償成分S3を算出するのに要した処理時間だけ、一方のRF信号S1が早く加算器113に入力されることになる。そこで、一方のRF信号S1に対する歪補償成分S3の遅延時間を解消するために、一方のRF信号S1に対し遅延器112を通過させるようにしている。一方のRF信号S1は、遅延器112を通過する間に上記の遅延時間と同等の遅延時間が与えられて加算器113に入力される。加算器113からは、光リンク10で発生する歪量を補償するようにプリディストーションされたRF信号S4が光リンク10に入力される。
【0035】
上記のように、歪補償ブロック110から出力されるRF信号S4には、光リンク10の歪特性と逆の歪量(歪補償成分S3)が加算されていることから、RF信号S4が光リンク10を伝送する間に、プリディストーションされた歪量が解消していく。そして、出力端15では、歪補償ブロック110でプリディストーションされた歪量と光リンク10を通過する間に発生する歪量とが相殺され、歪のないRF信号が得られる。フィードバックブロック120を経由して歪補償ブロック110に出力されるRF信号S6も、出力端15から出力されるRF信号と同様に、歪のないRF信号となっている。
【0036】
本実施形態の歪補償システム100は、光リンク10から出力端15に出力されるRF信号とほぼ同等のRF信号S6を、フィードバックブロック120から歪補償ブロック110に出力するように構成されている。これにより、歪補償ブロック110の歪補償部111は、RF信号S6をフィードバックして光リンク10で生じる歪を補償するように歪補償成分S3を決定することができる。また、光リンク10の歪特性が変化したときにも、RF信号S6をフィードバックして歪特性の変動分を補償するように歪補償成分S3を決定することができる。
【0037】
本実施形態の歪補償ブロック110では、A/D変換器及びD/A変換器を用いてベースバンド領域で歪補償を行う回路は用いず、RF領域で歪補償の処理を行うRF用の回路を用いている。このようなRF用の回路として、例えばRF増幅器に用いられる歪補償回路(IC)を適用することができる。これにより、歪補償ブロック110の構成を簡素化することができる。また、光リンク10で用いられている光ファイバ13と同じ長さの光ファイバ122をフィードバックブロック120に配置することで、特に長距離の光ファイバで発生する波長分散による三次相互変調歪を同時に補償することができる。
【0038】
本実施形態の歪補償システム100は、フィードバック系としてフィードバックブロック120を備えていることから、環境の変化などがあった場合にも追従して歪補償を行うことができる。また、RF領域で歪補償する回路を用いていることから、ベースバンド領域で歪補償する回路に比べて簡単な構成とすることができる。さらに、フィードバックブロック120を、光リンク10に配置されている光ファイバ13と同じファイバ長の光ファイバ122を配置して光/電気変換器123に入力する構成としていることから、光ファイバ13で発生する波長分散による歪も補償することができる。
【0039】
(第2実施形態)
第1実施形態では、光リンク10内に配置された光ファイバ13の光波長分散による波形歪をリアルタイムでフィードバックするために、光ファイバ122を備えたフィードバックブロック120を設け、これを常に接続して歪補償するように構成していた。
【0040】
これに対し、第2実施形態の歪補償システム200では、光リンク内の光ファイバの光波長分散によるRF信号の歪量を事前に取得し、これを補償する歪補償成分を事前に決定している。そして、リアルタイムで歪補償を行うときは、事前に決定された歪補償成分を固定値として用い、固定値の歪補償成分で光ファイバによる歪量を補償している。本実施形態では、光リンク内の光ファイバの光波長分散によるRF信号の歪量を事前に取得するために、トレーニング期間を設けている。
【0041】
本実施形態の歪補償システム200は、トレーニング期間とリアルタイムの歪補償期間とで、その構成が異なっている。トレーニング期間における本実施形態の歪補償システム200の構成を図2に示し、リアルタイムの歪補償期間における本実施形態の歪補償システム200の構成を図3に示す。以下では、図2に示す歪補償システム200を200aとし、図3に示す歪補償システム200を200bとする。
【0042】
なお、本実施形態の歪補償システム200が適用される光リンクは、図2、3に示すように、第1実施形態の歪補償システム100が適用された光リンク10と異なる構成としている。図2、3に示す光リンク20では、光リンク10の入力側に設けられていたLD駆動用増幅器16を設けていない。光リンク20では、入力端21から入力したRF信号で電気/光変換器22に内蔵されたLDを直接駆動させる構成としている。但し、本実施形態の歪補償システム200が適用される光リンクは、これに限定されるものではなく、光リンク10に適用することも可能である。
【0043】
トレーニング期間における本実施形態の歪補償システム200aは、歪補償ブロックとフィードバックブロックをそれぞれ2つ備えている。すなわち、歪補償ブロックとして、第1の歪補償ブロック210と第2の歪補償ブロック230を備え、フィードバックブロックとして、第1のフィードバックブロック220と第2のフィードバックブロック240を備えている。そして、第1のフィードバックブロック220が第1の歪補償ブロック210に接続され、第2のフィードバックブロック240が第2の歪補償ブロック230に接続されている。
【0044】
本実施形態の歪補償システム200aは、入力端21から順次、バンドパスフィルタ(BPF)201、第1の歪補償ブロック210、及び第2の歪補償ブロック230を備えている。また、光リンク20に配設された光ファイバ23と第1の歪補償ブロック210及び第2の歪補償ブロック230との間に、それぞれ第1のフィードバックブロック220及び第2のフィードバックブロック240を備えている。第1のフィードバックブロック220は、所定の光信号線225で光ファイバ23に接続され、第2のフィードバックブロック240は、カプラー221を介して光ファイバ23に接続されている。
【0045】
第1の歪補償ブロック210は、第1実施形態の歪補償ブロック110と同様に、歪補償部211、遅延器212、及び加算器213を有している。また、歪補償部211は、第1のフィードバックブロック220からの信号を入力する構成となっている。同様に、第2の歪補償ブロック230も、歪補償部231、遅延器232、及び加算器233を有しており、歪補償部231が第2のフィードバックブロック240からの信号を入力する構成となっている。
【0046】
第1のフィードバックブロック220は、第1実施形態のフィードバックブロック120と同様に、光ファイバ222と光/電気変換器223とBPF224とを有している。これに対し、第2のフィードバックブロック240は、光/電気変換器243とBPF244とを有しているが、光ファイバを有していない。光ファイバ222は、光リンク20の光ファイバ23とほぼ同等の特性を有して略等しい長さに形成されている。また、光/電気変換器223、243はともに、光リンク20に設けられている光/電気変換器24とほぼ同等の非線形性を有している。
【0047】
トレーニング期間では、第1の歪補償ブロック210及び第1のフィードバックブロック220を用いて光リンク20の光ファイバ23による歪量を検出し、これを補償するための歪補償成分(以下では、第1の歪補償成分という)を取得する。ここで、光ファイバ23による歪量のみを検出するために、入力端21に入力するRF信号として、光リンク20の電気/光変換器22、カプラー221、及び光/電気変換器223、224で歪が生じないような信号を用いる。例えば、電気/光変換器22に内蔵されるLDは、入力される電流に対し出力される光の強度がリニアに変化する線形特性を有する電流範囲が決まっており、その範囲内の強度のRF信号を入力端21に入力する。
【0048】
上記のRF信号が入力端21に入力されると、BPF201で所望の帯域に制限されたのち第1の歪補償ブロック210に入力される。第1の歪補償ブロック210では、第1実施形態の歪補償ブロック110と同様に、入力したRF信号に歪補償成分(第1の歪補償成分)を加算して出力する。第1の歪補償ブロック210から出力されるRF信号は、つぎに第2の歪補償ブロック230に入力される。しかし、トレーニング期間の第2の歪補償ブロック230は、入力したRF信号を加工することなくそのまま出力する。第2の歪補償ブロック230から出力されるRF信号は、光リンク20に入力される。光リンク20に入力されたRF信号は、電気/光変換器22を駆動させて光信号を出力させ、出力された光信号が光ファイバ23を伝送する。
【0049】
第1のフィードバックブロック220は、光信号線225を介して光ファイバ23に伝送される光信号を入力する。光信号線225を介して入力された光信号は、第1のフィードバックブロック220の光ファイバ222及び光/電気変換器223を経由することで、光リンク20から出力されるRF信号と同等の歪量が発生したRF信号となり、BPF224に出力される。光リンク20に入力されるRF信号は、電気/光変換器22、カプラー221、及び光/電気変換器223、224で歪が生じないような信号であることから、上記のRF信号に生じた歪量は、光ファイバ222を伝送するときに光信号に発生した歪量のみである。BPF224に出力されたRF信号は、ここで所望の帯域に制限されて第1の歪補償ブロック210に出力される。
【0050】
第1の歪補償ブロック210では、第1のフィードバックブロック220から入力されたRF信号が歪補償部211に入力され、ここで歪補償成分が算出される。ここで算出される歪補償成分が第1の歪補償成分であり、光リンク20の光ファイバ23で発生する歪量を補償するための歪補償成分となる。第1の歪補償成分は、リアルタイムの歪補償期間では、入力端21に入力されるRF信号によらず固定値として歪補償システム200bで用いられる。
【0051】
リアルタイムの歪補償期間に用いられる本実施形態の歪補償システム200bは、第1のフィードバックブロック220が切り離された構成となっている。そして、第1の歪補償ブロック210では、光リンク20からのフィードバック信号を用いず、歪補償部211がトレーニング期間に算出された第1の歪補償成分を加算器213に出力する。歪補償部211は、トレーニング期間におけるような歪補償成分を算出する処理を行わないことから、遅延器212は、入力したRF信号を遅延させることなく加算器213に出力してもよい。
【0052】
第1の歪補償ブロック210から第2の歪補償ブロック230に第1の歪補償成分が加算されたRF信号(歪加算信号)が入力されると、第2の歪補償ブロック230では、入力されたRF信号が遅延器232と歪補償部231に入力される。また、歪補償部231には、第2のフィードバックブロック240から出力されるRF信号も入力される。歪補償部231は、第1の歪補償ブロック210から入力したRF信号と第2のフィードバックブロック240から入力したRF信号とから第2の歪補償成分を算出する。この第2の歪補償成分は、光ファイバ23で発生する波長分散による歪を除く歪量、すなわち、電気/光変換器22と光/電気変換器24による歪量を補償するものである。この歪量は、リアルタイムで補償させる構成としている。
【0053】
なお、第1実施形態の光/電気変換器14及び123と同様に、光/電気変換器24及び243でも、入力する光信号の強度が異なるとその歪量が変化してしまうおそれがあるが、第1実施形態と同様に、その歪量の変化は小さく、電気/光変換器22のLDによる歪量が支配的になるので大きな性能劣化にはならない。また、トレーニング期間において光ファイバ222による歪量を検出するとき、光/電気変換器223でも歪が生じてしまうことがある。その場合には、第1の歪補償成分に光/電気変換器223による歪を補償する成分が含まれてしまうことになる。その結果、リアルタイムの歪補償期間における歪補償制御では、光/電気変換器223に対する歪補償成分を余計に補償してしまうことになる。その場合でも、フィードバック制御しているから、余分な歪補償成分が含まれていても問題ない。
【0054】
上記説明のように、本実施形態の歪補償システム200では、リアルタイムで歪補償を行うときには、フィードバックブロック240に光リンク20の光ファイバ23と同様の光ファイバ222を配置する必要がない。これにより、リアルタイムの歪補償では歪補償システム200の構成をさらに簡素化することができる。
【0055】
また、トレーニング期間に取得される第1の歪補償成分は、1つに限定されず、事前に様々な長さの光ファイバで取得しておき、リアルタイムの歪補償では、実際に使用される光ファイバ23に対応する第1の歪補償成分を選択して用いるようにすることができる。すなわち、トレーニング期間に取得された複数の第1の歪補償成分の中から実際に使用される光ファイバ23に対応する第1の歪補償成分を選択し、これを第1の歪補償ブロック210の歪補償部211にダウンロードして用いるようにすることができる。
【0056】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る歪補償システムの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における歪補償システムの細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
10、20 光リンク
11、21 入力端
12、22 電気/光変換器
13、23、122、222 光ファイバ
14、24、123、223、243 光/電気変換器
15、25 出力端
16 LD駆動用増幅器
100、200 歪補償システム
101、201 BPF
110、210、230 歪補償ブロック
111,211、231 歪補償部
112、212、232 遅延器
113、213、233 加算器
120、220、240 フィードバックブロック
121、221 カプラー
124、224、244 BPF
225 光信号線
図1
図2
図3