(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972153
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
H01L21/60 301K
H01L21/60 301L
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-254909(P2012-254909)
(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公開番号】特開2014-103286(P2014-103286A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】河野 正俊
【審査官】
堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−041330(JP,A)
【文献】
実開平05−063046(JP,U)
【文献】
特開2002−151542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートブロック上の被ボンディング物にワイヤボンディングを施すワイヤボンディング装置において、
上記ヒートブロックを装置本体に対し着脱自在にすると共に、
このヒートブロックと略同一の形状及び大きさの本体を有し、その本体の上面に歪みゲージ部を取り付けた荷重測定部を設け、
上記装置本体のヒートブロックの取外し位置に、上記歪みゲージを有する荷重測定部を着脱自在に配置可能とし、
この荷重測定部からの出力に基づいて被ボンディング物に掛かる荷重を較正することを特徴とするワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤボンディング装置、特に半導体素子の電極とリードフレーム、パッケージ等の電極とを金属ワイヤにより電気的に接続する装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤボンディング装置(ワイヤボンダー)を用い、半導体素子とリードフレーム等の電極同士を接続することが行われており、このワイヤボンダーは、金属ワイヤを供給するキャピラリがアーム等で保持され、このアームの駆動によりキャピラリを上下動させることにより、半導体素子の電極とリードフレーム等の基板の電極とをワイヤにて接続する。
【0003】
このようなワイヤボンダーにおいては、ワイヤボンディング時にワイヤの(金属)ボールが半導体素子等に接触する際の速度が製品の品質と生産性を決定する大きな要因となるため、キャピラリの下降速度をアーム等の駆動部で調整し、ボールが電極に掛ける荷重が精密に管理される。
【0004】
しかし、このワイヤボンダーでは、アーム等の駆動部の駆動状態が構成部品の劣化等で変動することもあり、これによって、電極への金属ワイヤの接合状態にばらつきが生じたり、電極部にクラックが生じたりするという不都合がある。そのため、従来の下記特許文献1では、キャピラリが移動して当接できる位置にボンディングチェック用ステージを配置すると共に、このボンディングチェック用ステージの裏面に歪みセンサを配置し、このボンディングチェック用ステージにボンディングを行ったときの衝撃荷重を上記歪みセンサにて検知し、ワイヤボンダーの状態をチェックし、較正することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−263481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように、新たにボンディングチェック用ステージを配置し、このボンディングチェック用ステージの裏面に設けた歪みセンサで衝撃荷重を検知する構成では、その構造及び機構が複雑になるという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造及び機構を複雑にすることなく、簡単に被ボンディング物に掛かる荷重を検出し、較正することができるワイヤボンディング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ヒートブロック上の被ボンディング物にワイヤボンディングを施すワイヤボンディング装置において、上記ヒートブロックを装置本体に対し着脱自在にすると共に、この
ヒートブロックと略同一の形状及び大きさの本体を有し、その本体の上面に歪みゲージ部を取り付けた荷重測定部を設け、上記装置本体のヒートブロックの取外し位置に、
上記歪みゲージを有する荷重測定部を着脱自在に配置可能とし、この荷重測定部からの出力に基づいて被ボンディング物に掛かる荷重を較正することを特徴とする
。
【0009】
上記の構成によれば、荷重測定部として
、ヒートブロックと略同一の形状、大きさの本体の上面に、歪みゲージ部を有するものを設け、この荷重測定部を、ヒートブロックを取り外したその位置に取り付け、その後、キャピラリにより歪みゲージ部に対しボンディング動作をすることで、被ボンディング物(半導体素子及び基板)に掛かる荷重が測定される。この測定データは、制御部へ送られ、これによって荷重の較正(キャリブレーション)が実行される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のワイヤボンディング装置によれば、構造及び機構を複雑にすることなく、簡単に被ボンディング物に掛かる荷重を検出し、キャリブレーションを良好に行うことができるという効果がある。即ち、キャピラリの接着時の荷重を定量的に管理することができ、品質と生産性のバランスがとれた適切な条件を設定でき、高品質で低価格な製品の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係るワイヤボンディング装置の較正時の構成を示す側面図である。
【
図2】実施例のワイヤボンディング装置の較正時における荷重測定部の取付けの様子を示し、図(A)は荷重測定部の側面図、図(B)はヒートブロックの側面図、図(C)はワイヤボンディング装置本体の側面図である。
【
図3】実施例のワイヤボンディング装置のワイヤボンディング時の構成を示す側面図である。
【
図4】実施例での検出荷重と適正荷重を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図3には、本発明の実施例に係るワイヤボンディング装置の構成が示されており、ワイヤボンディング時では、
図2,
図3に示されるように、装置本体(又は支持体)10の所定の凹部位置に、被ボンディング物を加熱するためのヒータ11を有するヒートブロック12が着脱自在に取り付けられている。このヒートブロック12は、コネクタ(プラグ及びレセプタクル等)13a,13bを介して電源(及び制御部)に接続される。
【0013】
また、このヒートブロック12の上側に、被ボンディング物である半導体素子15及び基板(リードフレーム等)16が保持部材17で保持・固定される。更に、金属ワイヤを供給するキャピラリ18がアーム19に支持され、このアーム19の駆動で動作するキャピラリ18によって半導体素子15と基板16のワイヤボンディングが行われる。
【0014】
一方、
図1,
図2に示されるように、実施例では、上記ヒートブロック12と略同一の形状及び大きさの荷重測定部20が装置本体10に対し着脱自在に設けられ、この荷重測定部20の本体上面に、歪みゲージ部(例えばロードセル)21が取り付けられる。即ち、この荷重測定部20は、ヒートブロック12が配置された凹部位置に嵌合配置される。即ち、ヒートブロック12と同一位置に位置決め配置される。そして、上記歪みゲージ部21の検出信号は、コネクタ13c(荷重測定部側),13aを介して制御部へ出力される。
【0015】
実施例は以上の構成からなり、較正時には、
図2に示されるように、図(B)のヒートブロック12を図(C)の装置本体10から取り外し、その取外し位置(ヒートブロック配置と同一の位置)に、図(A)の荷重測定部20を、コネクタ13c,13aの接続を介して取り付ける。この後、
図1のように、キャピラリ18をアーム19で下降させ、歪みゲージ部21へ当接させれば、ワイヤボンディング時の衝撃荷重が測定・検出されることになり、この検出値が制御部へ供給されることで、実際のワイヤボンディング時の荷重が適正な値に設定される。
【0016】
図4には、検出荷重と適正荷重の一例が示されており、実施例では、
図4のHbように検出される衝撃荷重を、品質が維持できるレベルまで下げるため、ボンディング速度を調整することになる。
【0017】
また、上記較正時に使用される上記キャピラリ18としては、金属ワイヤの通し穴がないものを使用することが好ましい。これは、キャピラリ18の破損を防止するためである。
【0018】
上記実施例では、ヒートブロック12及び荷重測定部20の着脱時にコネクタ13a〜13cを用いて電源部及び制御部への接続を同時に行なっているが、このコネクタ13a〜13cを設けず、ヒートブロック12及び荷重測定部20の着脱とは別に、他の構成の電源線及び制御線を用いて双方の接続を行うようにしてもよい。
【0019】
また、装置本体10の嵌合凹部にヒートブロック12及び荷重測定部20を載置することで、これらを着脱自在にしたが、支持体に吊り下げたり、引っ掛けたりするような取付け・配置でもよく、この取付け・配置では、各種の固定手段を用いて、ヒートブロック12及び荷重測定部20を装置本体10にしっかりと固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
10…装置本体、 11…ヒータ、
12…ヒートブロック、
13a〜13c…コネクタ、
15…半導体素子、 16…基板、
18…キャピラリ、 19…アーム、
20…荷重測定部、 21…歪みゲージ部。