(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(W)において、Lが一般式(L−1)、(L−4)または(L−8)のいずれかで表される2価の連結基またはこれらの2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることを特徴とする請求項8に記載の有機薄膜トランジスタ。
前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、nが10以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
前記一般式(W)において、Lが一般式(L−1)、(L−4)または(L−8)のいずれかで表される2価の連結基またはこれらの2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることを特徴とする請求項18に記載の化合物。
請求項11〜20のいずれか1項に記載の化合物または請求項21もしくは22に記載の組成物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料。
請求項11〜20のいずれか1項に記載の化合物または請求項21もしくは22に記載の組成物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載の高分子化合物はπ平面の広がりが小さく、十分なHOMO軌道の重なりが得られず、キャリア移動度が0.02cm
2/Vsと低いために十分なトランジスタ特性が得られないことがわかった。
また、特許文献1には、π平面性が高い低分子化合物が記載されているが、特許文献1には半導体や有機トランジスタ用途の記載はなかったところ、本発明者らが特許文献1に記載されている化合物を使用したものの、有機溶媒への溶解度が低いために有機薄膜トランジスタ用途に使用することが困難であることがわかった。
【0008】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために検討を進めた。本発明が解決しようとする課題は、有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときにキャリア移動度が高く、有機溶媒への高い溶解性を有する化合物および該化合物を用いた有機薄膜トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、2つのシクロヘキサジエノン縮環構造のカルボニル基に隣接する位置にそれぞれヘテロアリーレン基またはアリーレン基を連結基として導入した繰り返し単位構造により、シクロヘキサジエノン縮環構造のカルボニル基と隣接したヘテロアリーレン基またはアリーレン基の環上の原子との間に分子内水素結合を形成し、平面性が増加するため十分なHOMO軌道の重なりが得られ、キャリア移動度が高くなることを見出した。また、一般的には平面性が高く、キャリア移動度の高い化合物は、低溶解性であることが知られているが、予期せぬことに、この化合物は溶媒に対して高い溶解性を示すことから、高いキャリア移動度と高い溶解性を両立できることを見出し、本発明に至った。
なお、Chem. Mater., 2009, 21, 5499.に記載の高分子化合物は、上記のような水素結合構造は取り得ない構造であった。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
[1] 下記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物を半導体活性層に含むことを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
一般式(1−1)
【化1】
(一般式(1−1)において、R
11〜R
14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
1は2価の連結基を表す。mは0〜6の整数を表し、mが2以上のとき、2つ以上のV
1は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
一般式(1−2)
【化2】
(一般式(1−2)において、Cyはベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、R
15〜R
18はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
2は2価の連結基を表す。pは0〜6の整数を表し、pが2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
[2] [1]に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物が下記一般式(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)または(2−5)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物であることが好ましい。
一般式(2−1)
【化3】
一般式(2−2)
【化4】
一般式(2−3)
【化5】
一般式(2−4)
【化6】
一般式(2−5)
【化7】
(一般式(2−1)〜(2−5)中、R
15〜R
18およびR
21〜R
42はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
2は2価の連結基を表す。pは0〜6の整数を表し、pが2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
[3] [1]または[2]に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、V
1およびV
2がそれぞれ独立に下記一般式(V−1)〜(V−17)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
【化8】
(一般式(V−1)〜(V−17)中、*はmまたはpが1のときはAr
1〜Ar
4のいずれかとの結合位置を示し、mまたはpが2以上のときはAr
1〜Ar
4および一般式(V−1)〜(V−17)で表される2価の連結基のいずれかとの結合位置を示す。一般式(V−1)、(V−2)、(V−5)、(V−6)、(V−9)〜(V−11)、(V−13)〜(V−15)および(V−17)中のRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、互いに隣り合うRは結合して環を形成しても良い。一般式(V−4)、(V−7)、(V−8)および(V−12)中のZはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、互いに隣り合うZは結合して環を形成しても良い。一般式(V−16)中のYはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、CN基またはF原子を表し、互いに隣り合うYは結合して環を形成しても良い。)
[4] [3]に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、V
1およびV
2がそれぞれ独立に前記一般式(V−1)〜(V−8)および(V−11)〜(V−15)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、Ar
1〜Ar
4がそれぞれ独立に下記一般式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される2価の連結基であることが好ましい。
【化9】
(一般式(4−1)〜(4−3)において、XはS原子、O原子またはSe原子を表し、Cy
2は1〜4個の環が縮環した構造を表し、R
5〜R
9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。qは0〜6の整数を表し、qが2以上のとき、2以上のR
6はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。波線は、シクロヘキサジエノン縮環部位との結合位置を表し、#はV
1またはV
2との結合位置を表す。)
[6] [5]に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、Ar
1〜Ar
4がそれぞれ独立に前記一般式(4−1)または(4−2)で表される2価の連結基であることが好ましい。
[7] [5]または[6]に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(4−2)で表される2価の連結基が、下記一般式(5−1)〜(5−8)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
【化10】
(一般式(5−1)〜(5−8)中、R
6は水素原子または置換基を表し、2個以上のR
6は同一であっても、異なっていても良い。波線は、シクロヘキサジエノン縮環部位との結合位置を表し、#はV
1またはV
2との結合位置を表す。)
[8] [1]〜[7]のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1−1)においてR
11〜R
14の少なくとも1つ、
前記一般式(1−2)においてR
15〜R
18の少なくとも1つ、
前記一般式(2−1)においてR
15〜R
18、R
21およびR
22の少なくとも1つ、
前記一般式(2−2)においてR
15〜R
18およびR
23〜R
26の少なくとも1つ、
前記一般式(2−3)においてR
15〜R
18およびR
27〜R
32の少なくとも1つ、
前記一般式(2−4)においてR
15〜R
18およびR
33〜R
36の少なくとも1つ、ならびに、
前記一般式(2−5)においてR
15〜R
18およびR
37〜R
42の少なくとも1つ
が下記一般式(W)で表される基であることが好ましい。
−L−R 一般式(W)
(一般式(W)において、Lは下記一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表す。Rは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基または、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。また、Rが置換または無置換のシリル基を表すのは、Rに隣接するLが下記一般式(L−1)〜(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化11】
(一般式(L−1)〜(L−12)において、波線部分はシクロヘキサジエノン骨格との結合位置を示す。*は一般式(L−1)〜(L−12)で表される2価の連結基およびRのいずれかとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)および(L−12)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)、(L−10)、(L−11)および(L−12)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
[9] [8]に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(W)において、Lが一般式(L−1)、(L−4)または(L−8)のいずれかで表される2価の連結基またはこれらの2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることが好ましい。
[10] [1]〜[9]のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、nが10以上であることが好ましい。
[11] 下記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物。
一般式(1−1)
【化12】
(一般式(1−1)において、R
11〜R
14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
1は2価の連結基を表す。mは0〜6の整数を表し、mが2以上のとき、2つ以上のV
1は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
一般式(1−2)
【化13】
(一般式(1−2)において、Cyはベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、R
15〜R
18はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
2は2価の連結基を表す。pは0〜6の整数を表し、pが2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
[12] [11]に記載の化合物は、前記一般式(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物が下記一般式(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)または(2−5)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物であることが好ましい。
一般式(2−1)
【化14】
一般式(2−2)
【化15】
一般式(2−3)
【化16】
一般式(2−4)
【化17】
一般式(2−5)
【化18】
(一般式(2−1)〜(2−5)中、R
15〜R
18およびR
21〜R
42はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
2は2価の連結基を表す。pは0〜6の整数を表し、2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
[13] [11]または[12]に記載の化合物は、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、V
1およびV
2がそれぞれ独立に下記一般式(V−1)〜(V−17)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
【化19】
(一般式(V−1)〜(V−17)中、*はmまたはpが1のときはAr
1〜Ar
4のいずれかとの結合位置を示し、mまたはpが2以上のときはAr
1〜Ar
4および一般式(V−1)〜(V−17)で表される2価の連結基のいずれかとの結合位置を示す。一般式(V−1)、(V−2)、(V−5)、(V−6)、(V−9)〜(V−11)、(V−13)〜(V−15)および(V−17)中のRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、互いに隣り合うRは結合して環を形成しても良い。一般式(V−4)、(V−7)、(V−8)および(V−12)中のZはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、互いに隣り合うZは結合して環を形成しても良い。一般式(V−16)中のYはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、CN基またはF原子を表し、互いに隣り合うYは結合して環を形成しても良い。)
[14] [13]に記載の化合物は、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、V
1およびV
2がそれぞれ独立に前記一般式(V−1)〜(V−8)および(V−11)〜(V−15)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
[15] [11]〜[14]のいずれか1項に記載の化合物は、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、Ar
1〜Ar
4がそれぞれ独立に下記一般式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される2価の連結基であることが好ましい。
【化20】
(一般式(4−1)〜(4−3)において、XはS原子、O原子またはSe原子を表し、Cy
2は1〜4個の環が縮環した構造を表し、R
5〜R
9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。qは0〜6の整数を表し、qが2以上のとき、2以上のR
6はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。波線は、シクロヘキサジエノン縮環部位との結合位置を表し、#はV
1またはV
2との結合位置を表す。)
[16] [15]に記載の化合物は、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、Ar
1〜Ar
4がそれぞれ独立に前記一般式(4−1)または(4−2)で表される2価の連結基であることが好ましい。
[17] [15]または[16]に記載の化合物は、前記一般式(4−2)で表される2価の連結基が、下記一般式(5−1)〜(5−8)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
【化21】
(一般式(5−1)〜(5−8)中、R
6は水素原子または置換基を表し、2個以上のR
6は同一であっても、異なっていても良い。波線は、シクロヘキサジエノン縮環部位との結合位置を表し、#はV
1またはV
2との結合位置を表す。)
[18] [11]〜[17]のいずれか1項に記載の化合物は、前記一般式(1−1)においてR
11〜R
14の少なくとも1つ、
前記一般式(1−2)においてR
15〜R
18の少なくとも1つ、
前記一般式(2−1)においてR
15〜R
18、R
21およびR
22の少なくとも1つ、
前記一般式(2−2)においてR
15〜R
18およびR
23〜R
26の少なくとも1つ、
前記一般式(2−3)においてR
15〜R
18およびR
27〜R
32の少なくとも1つ、
前記一般式(2−4)においてR
15〜R
18およびR
33〜R
36の少なくとも1つ、ならびに、
前記一般式(2−5)においてR
15〜R
18およびR
37〜R
42の少なくとも1つ
が下記一般式(W)で表される基であることが好ましい。
−L−R 一般式(W)
(一般式(W)において、Lは下記一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表す。Rは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基または、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。また、Rが置換または無置換のシリル基を表すのは、Rに隣接するLが下記一般式(L−1)〜(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化22】
(一般式(L−1)〜(L−12)において、波線部分はシクロヘキサジエノン骨格との結合位置を示す。*は一般式(L−1)〜(L−12)で表される2価の連結基およびRのいずれかとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)および(L−12)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)、(L−10)、(L−11)および(L−12)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
[19] [18]に記載の化合物は、前記一般式(W)において、Lが一般式(L−1)、(L−4)または(L−8)のいずれかで表される2価の連結基またはこれらの2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることが好ましい。
[20] [11]〜[19]のいずれか1項に記載の化合物は、前記一般式(1−1)、(1−2)および(2−1)〜(2−5)において、nが10以上であることが好ましい。
[21] [11]〜[20]のいずれか1項に記載の化合物と有機溶媒を含有することを特徴とする組成物。
[22] [21]に記載の組成物は、前記有機溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒またはケトン系溶媒であることが好ましい。
[23] [11]〜[20]のいずれか1項に記載の化合物または[21]もしくは[22]に記載の組成物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料。
[24] [11]〜[20]のいずれか1項に記載の化合物または[21]もしくは[22]に記載の組成物を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ用材料。
[25] [11]〜[20]のいずれか1項に記載の化合物または[21]もしくは[22]に記載の組成物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液。
[26] [11]〜[20]のいずれか1項に記載の化合物または[21]もしくは[22]に記載の組成物と、
ポリマーバインダーとを含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液。
[27] [11]〜[20]のいずれか1項に記載の化合物または[21]もしくは[22]に記載の組成物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
[28] [11]〜[20]のいずれか1項に記載の化合物または[21]もしくは[22]に記載の組成物と、
ポリマーバインダーとを含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
[29] [27]または[28]に記載の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、溶液塗布法により作製されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときにキャリア移動度が高く、有機溶媒への高い溶解性を有する化合物および該化合物を用いた有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、各一般式の説明において特に区別されずに用いられている場合における水素原子は同位体(重水素原子等)も含んでいることを表す。さらに、置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
本明細書中、一般式(X)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、一般式(X)で表される化合物と同義である(Xは任意の数字または文字)。
【0014】
[有機薄膜トランジスタ]
本発明の有機薄膜トランジスタは、下記一般式(1−1)または(1−2)で表される化合物を半導体活性層に含むことを特徴とする。
一般式(1−1)
【化23】
(一般式(1−1)において、R
11〜R
14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
1は2価の連結基を表す。mは0〜6の整数を表し、mが2以上のとき、2つ以上のV
1は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
一般式(1−2)
【化24】
(一般式(1−2)において、Cyはベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、R
15〜R
18はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
2は2価の連結基を表す。pは0〜6の整数を表し、pが2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
【0015】
一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときにキャリア移動度が高く、有機溶媒への高い溶解性を有するため、該化合物を半導体活性層に含むことにより、本発明の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が高い。
一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、縮環したシクロヘキサジエノン骨格がカルボニル基を有することで十分なHOMO軌道の重なりが得られる。これにより、キャリア移動度が高い有機薄膜トランジスタを得ることができる。また、予期せぬことに、有機溶剤に対する溶解性が高いという効果も得られる。このような効果が得られるメカニズムとしては、一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、母骨格となる縮環したシクロヘキサジエノン骨格の二重結合酸素と、縮環したシクロヘキサジエノン骨格の両側の隣接するアリーレン基またはヘテロアリーレン基の水素原子との間の水素結合を有することにより、膜中では水素結合が維持されて平面性が高くなるためにポリマー分子間距離が短くなってキャリア移動度を高めることができ、溶液中では水素結合が解離して自由回転して有機溶媒への溶解性を高めることができる。
【0016】
なお、芳香族複素環を含む多環縮合化合物が有機EL素子材料として有用であることは従来から知られている。しかし、有機EL素子材料として有用なものが、ただちに有機薄膜トランジスタ用半導体材料として有用であると言うことはできない。これは、有機EL素子と有機薄膜トランジスタでは、有機化合物に求められる特性が異なるためである。有機EL素子では通常薄膜の膜厚方向(通常数nm〜数100nm)に電荷を輸送する必要があるのに対し、有機薄膜トランジスタでは薄膜面方向の電極間(通常数μm〜数100μm)の長距離を電荷(キャリア)輸送する必要がある。このため、求められるキャリア移動度が格段に高い。そのため、有機薄膜トランジスタ用半導体材料としては、分子の配列秩序が高い、結晶性が高い有機化合物が求められている。また、高いキャリア移動度発現のため、π共役平面は基板に対して直立していることが好ましい。一方、有機EL素子では、発光効率を高めるため、発光効率が高く、面内での発光が均一な素子が求められている。通常、結晶性の高い有機化合物は、面内の電界強度不均一、発光不均一、発光クエンチ等、発光欠陥を生じさせる原因となるため、有機EL素子用材料は結晶性を低くし、アモルファス性の高い材料が望まれる。このため、有機EL素子材料を構成する有機化合物を有機半導体材料にそのまま転用しても、ただちに良好なトランジスタ特性を得ることができる訳ではない。
【0017】
さらに、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物を用いた本発明の有機薄膜トランジスタは、繰り返し駆動後の閾値電圧変化も小さいことが好ましい。繰り返し駆動後の閾値電圧変化を小さくするためには、有機半導体材料のHOMOが浅すぎずかつ深すぎないこと、有機半導体材料の化学的安定性(特に耐空気酸化性、酸化還元安定性)、薄膜状態の熱安定性、空気や水分が入りこみにくい高い膜密度、電荷がたまりにくい欠陥の少ない膜質、等が必要である。また、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物のような繰り返し単位を有するオリゴマーや高分子化合物は、成膜時の有機溶媒への溶解性が高いほど、有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときの繰り返し駆動後の閾値電圧変化を小さくできる。前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物はこれらを満足するため、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さいと考えられる。すなわち、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さい有機薄膜トランジスタは、半導体活性層が高い化学的安定性や膜密度等を有し、長期間に渡ってトランジスタとして有効に機能し得る。
以下、本発明の化合物や本発明の有機薄膜トランジスタなどの好ましい態様を説明する。
【0018】
<一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなることを特徴とする。本発明の化合物は、本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、後述の半導体活性層に含まれる。すなわち、本発明の化合物は、有機薄膜トランジスタ用材料として用いることができる。
以下、一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物について説明する。
【0019】
<<一般式(1−1)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物>>
一般式(1−1)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、下記一般式で表される。
一般式(1−1)
【化25】
(一般式(1−1)において、R
11〜R
14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
1は2価の連結基を表す。mは0〜6の整数を表し、mが2以上のとき、2つ以上のV
1は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
【0020】
一般式(1−1)において、R
11〜R
14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R
11〜R
14がそれぞれ独立にとりうる置換基として、ハロゲン原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の炭素数1〜40のアルキル基(好ましくは炭素数3〜40のアルキル基、より好ましくは炭素数10〜30のアルキル基)、2,6−ジメチルオクチル基、2−デシルテトラデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−エチルオクチル基、2−デシルテトラデシル基、2−ブチルデシル基、1−オクチルノニル基、2−エチルオクチル基、2−オクチルテトラデシル基、等を含む)、アルケニル基(1−ペンテニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等を含む)、アルキニル基(1−ペンチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ−i−プロピルシリルエチニル基、2−p−プロピルフェニルエチニル基等を含む)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−ペンチルフェニル基、3,4−ジペンチルフェニル基、p−ヘプトキシフェニル基、3,4−ジヘプトキシフェニル基の炭素数6〜20のアリール基等を含む)、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。2−ヘキシルフラニル基等を含む)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を含む)、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基含む)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、ノニロキシ基、デシロキシ基、2−ヘキシルデシロキシ基、ウンデシロキシ基、ドデシロキシ基、トリデシロキシ基、テトラデシロキシ基、ペンタデシロキシ基等の炭素数1〜40のアルコキシ基(好ましくは炭素数3〜40のアルコキシ基、より好ましくは炭素数10〜30のアルコキシ基))、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルおよびアリールチオ基(メチルチオ基、オクチルチオ基等を含む)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基(ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基)、ヒドラジノ基、後述の一般式(W)で表される基、その他の公知の置換基が挙げられる。
また、これら置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。
また、これら置換基は、重合性基由来の基を有していてもよい。
【0021】
R
11およびR
13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基および後述の一般式(W)で表される基のいずれかであることが好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基および炭素数1〜11のアルコキシ基のいずれかであることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基および炭素数1〜3のアルコキシ基のいずれかであることがR
11およびR
13の嵩高さを抑制して、シクロヘキサジエノン骨格と両側の隣接するアリーレン基またはヘテロアリーレン基(Ar
1〜Ar
4)とを平面に保ち、分子内水素結合を形成しやすくすることができる観点から特に好ましく、水素原子、メチル基およびエトキシ基のいずれかであることがより特に好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
R
12およびR
14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、複素環基、アルキルチオ基、アミノ基、後述の一般式(W)で表される基のいずれかであることが好ましく、水素原子、炭素数3〜40のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数3〜40のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数1〜12のアルキル基で置換されたアミノ基、および後述の一般式(W)で表される基のいずれかであることがより好ましく、後述の一般式(W)で表される基であることが特に好ましい。また、R
12およびR
14は直鎖状の置換基にさらに置換基を有する分枝状の置換基であることが好ましい。
R
12およびR
14が採りうるアルキル基としては、炭素数が3〜40のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が10〜30のアルキル基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からさらに好ましく、炭素数が15〜30のアルキル基であることが特に好ましい。また、R
12およびR
14が採りうるアルキル基としては、直鎖または分枝のアルキル基であることが好ましく、分枝のアルキル基であることが分子内水素結合性を低下させずに、キャリア移動度と溶解性を高める観点からより好ましい。
R
12およびR
14が採りうるアルコキシ基としては、炭素数が3〜40のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数が10〜30のアルコキシ基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からさらに好ましく、炭素数が15〜30のアルコキシ基であることが特に好ましい。また、R
12およびR
14が採りうるアルコキシ基としては、直鎖または分枝のアルコキシ基であることが好ましく、分枝のアルコキシ基であることが分子内水素結合性を低下させずに、キャリア移動度と溶解性を高める観点からより好ましい。
【0022】
R
11〜R
14の少なくとも1つが下記一般式(W)で表される基であることが好ましい。
−L−R 一般式(W)
(一般式(W)において、Lは下記一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表す。Rは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基または、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。また、Rが置換または無置換のシリル基を表すのは、Rに隣接するLが下記一般式(L−1)〜(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化26】
(一般式(L−1)〜(L−12)において、波線部分はシクロヘキサジエノン骨格との結合位置を示す。*は一般式(L−1)〜(L−12)で表される2価の連結基およびRのいずれかとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)および(L−12)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)、(L−10)、(L−11)および(L−12)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0023】
一般式(W)において、Lは一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表す。前記Lが、一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基が結合した連結基を形成する場合、一般式(L−1)〜(L−12)のいずれかで表される2価の連結基の結合数は2〜4であることが好ましく、2または3であることがより好ましい。
【0024】
一般式(L−1)、(L−2)、(L−10)、(L−11)および(L−12)中の置換基R’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R’が採りうる置換基としては、炭素数5〜15のアルキル基(好ましくは炭素数6〜15のアルキル基)、炭素数5〜15のアルコキシ基(好ましくは炭素数6〜15のアルコキシ基)が挙げられる。
一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)および(L−12)におけるmは2を表す。
【0025】
Lは前記一般式(L−1)、(L−4)、または(L−8)のいずれかで表される2価の連結基またはこれらの2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることが好ましく、一般式(L−1)、または(L−4)のいずれかで表される2価の連結基またはこれらの2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることがより好ましく、一般式(L−1)で表される2価の連結基またはこの2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることが特に好ましい。
【0026】
前記一般式(W)において、Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Rが置換または無置換のシリル基を表すのは、Rに隣接するLが前記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限り、水素原子を表すのは、Rに隣接するLが前記一般式(L−1)〜(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。
【0027】
Rが採りうる置換または無置換のアルキル基としては、Lが前記一般式(L−1)で表される場合、炭素数が3以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数が3〜40のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が10〜30のアルキル基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からさらに好ましく、炭素数が15〜30のアルキル基であることが特に好ましい。また、Rが採りうる置換または無置換のアルキル基としては、Lが前記一般式(L−1)で表される場合、直鎖または分枝のアルキル基であることが好ましく、分枝のアルキル基であることが分子内水素結合性を低下させずに、キャリア移動度と溶解性を高める観点からより好ましい。
Lが前記一般式(L−2)〜(L−3)で表される場合はRが採りうるアルキル基としては、炭素数が2以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数が3〜18のアルキル基であることが好ましく、炭素数が3〜12のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数が4〜10のアルキル基であることが特に好ましい。
Lが前記一般式(L−4)〜(L−12)で表される場合はRが採りうるアルキル基としては、炭素数が4以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数が4〜18のアルキル基であることが好ましく、炭素数が4〜12のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数が4〜10のアルキル基であることが特に好ましい。
【0028】
前記一般式(W)における、前記−L−Rにアルキル基が含まれる場合、Rが表すアルキル基が上記範囲の下限値以上であるとキャリア移動度が高くなる。また、LがRに隣接する一般式(L−1)を含む場合は、一般式(L−1)で表されるアルキレン基およびRで表されるアルキル基が結合して形成されるアルキル基の炭素数が上記範囲の下限値以上であるとキャリア移動度が高くなる。
Rが置換基を有するアルキル基である場合の該置換基としては、ハロゲン原子などを挙げることができ、フッ素原子が好ましい。なお、Rがフッ素原子を有するアルキル基である場合は該アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。
【0029】
前記Rがオキシエチレン基の繰り返し数vが2以上のオリゴエチレンオキシ基の場合、Rが表す「オキシエチレン基」とは本明細書中、−(CH
2CH
2)
vOYで表される基のことを言う(オキシエチレン単位の繰り返し数vは2以上の整数を表し、末端のYは水素原子または置換基を表す)。なお、オリゴオキシエチレン基の末端のYが水素原子である場合はヒドロキシ基となる。オキシエチレン単位の繰り返し数vは2〜4であることが好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。オリゴオキシエチレン基の末端のヒドロキシ基は封止されていること、すなわちYが置換基を表すことが好ましい。この場合、ヒドロキシ基は、炭素数が1〜3のアルキル基で封止されること、すなわちYが炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、Yがメチル基やエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0030】
前記Rが、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基の場合、シロキサン単位の繰り返し数は2〜4であることが好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。また、Si原子には、水素原子やアルキル基が結合することが好ましい。Si原子にアルキル基が結合する場合、アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基が結合することが好ましい。Si原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基または水素原子が結合してもよい。また、オリゴシロキサン基を構成するシロキサン単位はすべて同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一であることが好ましい。Rが置換または無置換のシリル基の場合、Rが採りうるシリル基としては、炭素数3〜15のトリアルキルシリル基が好ましい。
【0031】
一般式(W)で表される基としては、例えば、2,6−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−デシルテトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−エチルオクチル基、2−デシルテトラデシル基、2−ブチルデシル基、2−オクチルノニル基、2−オクチルドデシル基、2−オクチルテトラデシル基、2−エチルヘキシル基、2−ブチルノニル基、2−ヘキシルデシロキシ基、ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、2−デシルテトラデシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、2−ヘキシルドデシルオキシ基、2−エチルオクチルオキシ基、2−デシルテトラデシルオキシ基、2−ブチルデシルオキシ基、2−オクチルドデシルオキシ基、2−オクチルテトラデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、などが挙げられる。
【0032】
Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。Ar
1はR
11と互いに結合して縮合環を形成しないことが分子内水素結合性を高めてキャリア移動度を高める観点から好ましく、Ar
2はR
13と互いに結合して縮合環を形成しないことが分子内水素結合性を高めてキャリア移動度を高める観点から好ましい。Ar
1およびAr
2が採りうるヘテロアリーレン基またはアリーレン基としては、特に限定されないが、例えば炭素原子数4〜30のヘテロアリーレン基または炭素原子数6〜30のアリーレン基を挙げることができる。Ar
1およびAr
2が採りうるヘテロアリーレン基またはアリーレン基としては、下記一般式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される2価の連結基であることが好ましく、下記一般式(4−1)または(4−2)で表される2価の連結基であることがより好ましい。また、Ar
1およびAr
2は同一のヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表すことが好ましい。
【化27】
(一般式(4−1)〜(4−3)において、XはS原子、O原子またはSe原子を表し、Cy
2は1〜4個の環が縮環した構造を表し、R
5〜R
9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。qは0〜6の整数を表し、qが2以上のとき、2以上のR
6はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。波線部分は、シクロヘキサジエノン縮環部位との結合位を表し、#はV
1またはV
2との結合位を表す。)
【0033】
一般式(4−1)〜(4−3)において、XはS原子、O原子またはSe原子を表し、S原子、Se原子が好ましく、S原子がより好ましい。
【0034】
一般式(4−1)〜(4−3)において、R
5〜R
9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R
5〜R
9が採りうる置換基としては、特に制限はなく、R
11〜R
14が採りうる置換基と同じ置換基を挙げることができる。R
5〜R
9が採りうる置換基としては、これらの中でもアルキル基、アルコキシ基が好ましい。
R
5〜R
9が採りうるアルキル基としては、炭素数が3〜40のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が10〜30のアルキル基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からさらに好ましく、炭素数が15〜30のアルキル基であることが特に好ましい。また、R
5〜R
9が採りうるアルキル基としては、直鎖または分枝のアルキル基であることが好ましく、分枝のアルキル基であることが分子内水素結合性を低下させずに、キャリア移動度と溶解性を高める観点からより好ましい。
R
5〜R
9が採りうるアルコキシ基としては、炭素数が3〜40のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数が10〜30のアルコキシ基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からさらに好ましく、炭素数が15〜30のアルコキシ基であることが特に好ましい。また、R
5〜R
9が採りうるアルコキシ基としては、直鎖または分枝のアルコキシ基であることが好ましく、分枝のアルコキシ基であることが分子内水素結合性を低下させずに、キャリア移動度と溶解性を高める観点からより好ましい。
また、これら置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。
また、これら置換基は、重合性基由来の基を有していてもよい。
【0035】
一般式(4−2)において、qは0〜6の整数を表し、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0〜1の整数がさらに好ましい。
【0036】
一般式(4−2)において、Cy
2は1〜4個の環が縮環した構造を表し、1〜4個の芳香族環またはヘテロ芳香族環が縮環した構造であることが好ましく、1〜4個の炭素数6〜10の芳香族環または炭素数4〜6のヘテロ芳香族環が縮環した構造であることがより好ましく、1〜4個の炭素数ベンゼン環またはチオフェン環が縮環した構造であることが特に好ましい。
一般式(4−2)で表される2価の連結基は、下記一般式(5−1)〜(5−8)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましく、一般式(5−1)で表される2価の連結基であることがより好ましい。
【化28】
(一般式(5−1)〜(5−8)中、R
6はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、2個以上のR
6は同一であっても、異なっていても良い。波線は、シクロヘキサジエノン縮環部位との結合位を表し、#はV
1またはV
2との結合位を表す。)
【0037】
一般式(5−1)〜(5−8)において、R
6はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、2個以上のR
6は同一であっても、異なっていても良い。R
6が採りうる置換基としては、上記の一般式(4−1)〜(4−3)のR
5〜R
9が採りうる前記置換基として例示したものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
【0038】
一般式(1−1)において、V
1は2価の連結基を表す。V
1はAr
1またはAr
2と互いに結合して縮合環を形成しないことが溶解性を高める観点から好ましい。V
1が採りうる2価の連結基としては特に制限はないが、下記一般式(V−1)〜(V−17)のいずれかで表されることが好ましい。
【化29】
(一般式(V−1)〜(V−17)中、*はmまたはpが1のときはAr
1〜Ar
4のいずれかとの結合位置を示し、mまたはpが2以上のときはAr
1〜Ar
4および一般式(V−1)〜(V−17)で表される2価の連結基のいずれかとの結合位置を示す。一般式(V−1)、(V−2)、(V−5)、(V−6)、(V−9)〜(V−11)、(V−13)〜(V−15)および(V−17)中のRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、互いに隣り合うRは結合して環を形成しても良い。一般式(V−4)、(V−7)、(V−8)および(V−12)中のZはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、互いに隣り合うZは結合して環を形成しても良い。一般式(V−16)中のYはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、CN基またはF原子を表し、互いに隣り合うYは結合して環を形成しても良い。)
【0039】
一般式(V−1)、(V−2)、(V−5)、(V−6)、(V−9)〜(V−11)、(V−13)〜(V−15)および(V−17)中のRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、互いに隣り合うRは結合して環を形成しても良い。Rが採りうるアルキル基としては、上記の一般式(4−1)〜(4−3)のR
5〜R
9が採りうるアルキル基を挙げることができ、Rが採りうるアルキル基の好ましい範囲もR
5〜R
9が採りうるアルキル基の好ましい範囲と同様である。
【0040】
一般式(V−4)、(V−7)、(V−8)および(V−12)中のZはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、互いに隣り合うZは結合して環を形成しても良い。Zが採りうるアルキル基またはアルコキシ基としては、上記の一般式(4−1)〜(4−3)のR
5〜R
9が採りうるアルキル基およびアルコキシ基を挙げることができ、Zが採りうるアルキル基およびアルコキシ基の好ましい範囲もR
5〜R
9が採りうるアルキル基およびアルコキシ基の好ましい範囲と同様である。
【0041】
一般式(V−16)中のYはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、CN基またはF原子を表し、互いに隣り合うYは結合して環を形成しても良く、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。Yが採りうるアルキル基またはアルコキシ基としては、上記の一般式(4−1)〜(4−3)のR
5〜R
9が採りうる前記置換基として例示したアルキル基、アルコキシ基を挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
【0042】
一般式(V−1)〜(V−17)で表される2価の連結基の中でも、一般式(V−1)〜(V−15)で表される2価の連結基が好ましく、一般式(V−1)〜(V−8)および(V−11)〜(V−15)で表される2価の連結基がより好ましく、一般式(V−1)〜(V−3)、(V−7)で表される2価の連結基が特に好ましい。
【0043】
一般式(1−1)において、mは0〜6の整数を表し、mが2以上のとき、2つ以上のV
1は同一であっても、異なっていても良い。mは0〜5の整数が好ましく、0〜3がより好ましい。
一般式(1−1)において、nは2以上の整数を表し、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、30以上が特に好ましい。nが大きい程π共役ポリマー鎖間の相互作用を強めることができ、キャリア移動度を高めることができる。nの上限については特に制限はないが2000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。
【0044】
<<一般式(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物>>
一般式(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、下記一般式で表される。
一般式(1−2)
【化30】
(一般式(1−2)において、Cyはベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、R
15〜R
18はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
2は2価の連結基を表す。pは0〜6の整数を表し、pが2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
【0045】
一般式(1−2)において、R
15〜R
18はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R
15およびR
17が採りうる置換基としては、一般式(1−1)のR
11およびR
13が採りうる置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。R
16およびR
18が採りうる置換基としては、一般式(1−1)のR
12およびR
14が採りうる置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(1−2)において、Ar
3、Ar
4はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。Ar
3はR
15と互いに結合して縮合環を形成しないことが分子内水素結合性を高めてキャリア移動度を高める観点から好ましく、Ar
4はR
17と互いに結合して縮合環を形成しないことが分子内水素結合性を高めてキャリア移動度を高める観点から好ましい。Ar
3およびAr
4が採りうるヘテロアリーレン基またはアリーレン基としては、一般式(1−1)中のAr
1およびAr
2が採りうるヘテロアリーレン基またはアリーレン基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(1−2)において、V
2は2価の連結基を表す。V
2はAr
3またはAr
4と縮合環を形成しないことが溶解性を高める観点から好ましい。V
2が採りうる2価の連結基としては、一般式(1−1)中のV
1が採りうる2価の連結基と同様であり、好ましい範囲も同様である。ただし、一般式(V−1)〜(V−17)中の*はmまたはpが1のときはAr
3〜Ar
4のいずれかとの結合位置を示し、mまたはpが2以上のときはAr
3〜Ar
4および一般式(V−1)〜(V−17)で表される2価の連結基のいずれかとの結合位置を示す。
一般式(1−2)において、pは0〜6の整数を表し、pが2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。pは一般式(1−1)中のmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(1−2)において、nは2以上の整数を表し、一般式(1−1)中のnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0046】
一般式(1−2)において、Cyはベンゼン環、ナフタレン環、またはアントラセン環を表す。Cyが表すベンゼン環、ナフタレン環、またはアントラセン環は置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限は無く、一般式(1−1)のR
12およびR
14が採りうる置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。但し、ヒドロキシル基(−OH基)が置換していないことが、化合物の長期安定性を高める観点から好ましい。
Cyが表すベンゼン環、ナフタレン環およびアントラセン環がシクロヘキサジエノン環と縮環する部位は特に制限はない。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環が、前記一般式(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物が回転対称な骨格の化合物となるように縮環していることが好ましく、下記一般式(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)または(2−5)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物となるように縮環していることがより好ましい。
一般式(2−1)
【化31】
一般式(2−2)
【化32】
一般式(2−3)
【化33】
一般式(2−4)
【化34】
一般式(2−5)
【化35】
(一般式(2−1)〜(2−5)中、R
15〜R
18およびR
21〜R
42はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立にヘテロアリーレン基またはアリーレン基を表す。V
2は2価の連結基を表す。pは0〜6の整数を表し、2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。nは2以上を表す。)
【0047】
一般式(2−1)〜(2−5)において、R
15〜R
18およびR
21〜R
42はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
一般式(2−1)〜(2−5)のR
15〜R
18が採りうる置換基としては、一般式(1−2)のR
15〜R
18が採りうる置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(2−1)〜(2−5)のR
21〜R
42が採りうる置換基としては、一般式(1−1)のR
12およびR
14が採りうる置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(2−1)においてR
15〜R
18、R
21およびR
22の少なくとも1つが一般式(W)で表される基であることが好ましく、R
16、R
18、R
21およびR
22の少なくとも2つが前記一般式(W)で表される基であることがより好ましく、R
21とR
22がともに前記一般式(W)で表される基であることが特に好ましい。
前記一般式(2−2)においてR
15〜R
18およびR
23〜R
26の少なくとも1つが一般式(W)で表される基であることが好ましく、R
16、R
18、R
23、R
24、R
25およびR
26の少なくとも2つが前記一般式(W)で表される基であることがより好ましく、R
23、R
24、R
25およびR
26がすべて前記一般式(W)で表される基であることが特に好ましい。
前記一般式(2−3)においてR
15〜R
18およびR
27〜R
32の少なくとも1つが一般式(W)で表される基であることが好ましく、R
16、R
18およびR
27〜R
32の少なくとも2つが前記一般式(W)で表される基であることがより好ましく、R
28とR
31がともに前記一般式(W)で表される基であることが特に好ましい。
前記一般式(2−4)においてR
15〜R
18およびR
33〜R
36の少なくとも1つが一般式(W)で表される基であることが好ましく、R
15〜R
18のうち0〜2つと、R
33〜R
36のうち2〜4つが一般式(W)で表される基であることがより好ましく、R
15〜R
18のうち2つと、R
33〜R
36のうち2つが一般式(W)で表される基であることが特に好ましい。
前記一般式(2−5)においてR
15〜R
18およびR
37〜R
42の少なくとも1つが一般式(W)で表される基であることが好ましく、R
15〜R
18のうち0〜2つと、R
37〜R
42のうち2〜6つが一般式(W)で表される基であることがより好ましく、R
15〜R
18のうち2つと、R
37〜R
42のうち2つが一般式(W)で表される基であることが特に好ましい。
一般式(2−1)〜(2−5)において、Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立に複素芳香環または芳香環を表す。Ar
3およびAr
4が採りうるヘテロアリーレン基またはアリーレン基としては、一般式(1−2)中のAr
3およびAr
4が採りうるヘテロアリーレン基またはアリーレン基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(2−1)〜(2−5)においてV
2は2価の連結基を表す。V
2が採りうる2価の連結基としては、一般式(1−2)中のV
2が採りうる2価の連結基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(2−1)〜(2−5)においてpは0〜6の整数を表し、pが2以上のとき、2つ以上のV
2は同一であっても、異なっていても良い。一般式(2−1)〜(2−5)中のpは一般式(1−2)中のpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(2−1)〜(2−5)においてnは2以上の整数を表し、一般式(1−2)中のnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0048】
一般式(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物としては、一般式(2−1)〜(2−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物であることがπ平面の広がりの大きさと高溶解性のバランスを保つ観点から好ましく、一般式(2−1)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物であることがより好ましい。
【0049】
以下に上記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物の具体例を以下に下記一般式(MV)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物として示すが、本発明で用いることができる一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、これらの具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0050】
【化36】
(一般式(MV)中、M
1は下記表中の2価の連結基M
1を表し、Vxは下記表中の2価の連結基Vxを表し、nは2以上の整数を表す。)
【0054】
上記表中、M1は下記一般式(1−1M)、(2−1M)、(2−2M)、(2−3M)、(2−4M)または(2−5M)で表される連結基を表し、Vxは後述の連結基V1〜V50を表す。
【0056】
一般式(1−1M)中、Ar
1、Ar
2、R
11〜R
14はそれぞれ以下の基を表す。
【表4】
【0063】
一般式(2−1M)中、Ar
3、Ar
4、R
15〜R
18、R
21およびR
22はそれぞれ以下の基を表す。
【表10】
【0070】
一般式(2−2M)中、Ar
3、Ar
4、R
15〜R
18、R
23〜R
26はそれぞれ以下の基を表す。
【表16】
【0073】
一般式(2−3M)中、Ar
3、Ar
4、R
15〜R
18、R
27〜R
32はそれぞれ以下の基を表す。
【表18】
【0075】
一般式(2−4M)
【化41】
一般式(2−4M)中、Ar
3、Ar
4、R
15〜R
18、R
33〜R
36はそれぞれ以下の基を表す。
【表20】
【0078】
一般式(2−5M)中、Ar
3、Ar
4、R
15〜R
18、R
37〜R
42はそれぞれ以下の基を表す。
【表22】
【0083】
上記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、繰り返し構造を2以上有する化合物であり、繰り返し単位数nが2〜9のオリゴマーでも、繰り返し単位数nが10以上である高分子でも良い。
前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物が繰り返し単位数が2〜9のオリゴマーの場合は、分子量が1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。
前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物が高分子化合物の場合は、重量平均分子量が10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、50000以上であることが特に好ましい。上限については特に制限はないが、2000000以下であることが好ましく、1000000以下であることがより好ましい。分子量を上記上限値以下とすることにより、分子間相互作用を高めキャリア伝達が有利となるだけでではなく、溶解性も保持されるため好ましい。
本発明における重量平均分子量は、ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いたゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される値とする。本発明における重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とした値である。
【0084】
前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、例えば、Chemical Reviews,2011年,111巻,1493頁などに記載のカップリング反応を用いて合成することができる。
本発明の化合物の合成において、いかなる反応条件を用いてもよい。反応溶媒としては、いかなる溶媒を用いてもよい。また、環形成反応促進のために、酸または塩基を用いることが好ましく、特に塩基を用いることが好ましい。最適な反応条件は、目的とするシクロヘキサジエノン誘導体の構造により異なるが、上記の文献に記載された具体的な反応条件を参考に設定することができる。
【0085】
各種置換基を有する合成中間体は公知の反応を組み合わせて合成することができる。また、各置換基はいずれの中間体の段階で導入してもよい。中間体の合成後は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行う事が好ましい。
【0086】
<有機薄膜トランジスタの構造>
本発明の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物を含む半導体活性層を有する。
本発明の有機薄膜トランジスタは、さらに前記半導体活性層以外にその他の層を含んでいてもよい。
本発明の有機薄膜トランジスタは、有機電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)として用いられることが好ましく、ゲート−チャンネル間が絶縁されている絶縁ゲート型FETとして用いられることがより好ましい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの好ましい構造の態様について、図面を用いて詳しく説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0087】
(積層構造)
有機電界効果トランジスタの積層構造としては特に制限はなく、公知の様々な構造のものとすることができる。
本発明の有機薄膜トランジスタの構造の一例としては、最下層の基板の上面に、電極、絶縁体層、半導体活性層(有機半導体層)、2つの電極を順に配置した構造(ボトムゲート・トップコンタクト型)を挙げることができる。この構造では、最下層の基板の上面の電極は基板の一部に設けられ、絶縁体層は、電極以外の部分で基板と接するように配置される。また、半導体活性層の上面に設けられる2つの電極は、互いに隔離して配置される。
ボトムゲート・トップコンタクト型素子の構成を
図1に示す。
図1は、本発明の有機薄膜トランジスタの一例の構造の断面を示す概略図である。
図1の有機薄膜トランジスタは、最下層に基板11を配置し、その上面の一部に電極12を設け、さらに該電極12を覆い、かつ電極12以外の部分で基板11と接するように絶縁体層13を設けている。さらに絶縁体層13の上面に半導体活性層14を設け、その上面の一部に2つの電極15aと15bとを隔離して配置している。
図1に示した有機薄膜トランジスタは、電極12がゲートであり、電極15aと電極15bはそれぞれドレインまたはソースである。また、
図1に示した有機薄膜トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
【0088】
本発明の有機薄膜トランジスタの構造の一例としては、ボトムゲート・ボトムコンタクト型素子を挙げることができる。
ボトムゲート・ボトムコンタクト型素子の構成を
図2に示す。
図2は本発明の実施例でFET特性測定用基板として製造した有機薄膜トランジスタの構造の断面を示す概略図である。
図2の有機薄膜トランジスタは、最下層に基板31を配置し、その上面の一部に電極32を設け、さらに該電極32を覆い、かつ電極32以外の部分で基板31と接するように絶縁体層33を設けている。さらに絶縁体層33の上面に半導体活性層35を設け、電極34aと34bが半導体活性層35の下部にある。
図2に示した有機薄膜トランジスタは、電極32がゲートであり、電極34aと電極34bはそれぞれドレインまたはソースである。また、
図2に示した有機薄膜トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
【0089】
本発明の有機薄膜トランジスタの構造としては、その他、絶縁体、ゲート電極が半導体活性層の上部にあるトップゲート・トップコンタクト型素子や、トップゲート・ボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。
【0090】
(厚さ)
本発明の有機薄膜トランジスタは、より薄いトランジスタとする必要がある場合には、例えばトランジスタ全体の厚さを0.1〜0.5μmとすることが好ましい。
【0091】
(封止)
有機薄膜トランジスタ素子を大気や水分から遮断し、有機薄膜トランジスタ素子の保存性を高めるために、有機薄膜トランジスタ素子全体を金属の封止缶やガラス、窒化ケイ素などの無機材料、パリレンなどの高分子材料や、低分子材料などで封止してもよい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの各層の好ましい態様について説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0092】
<基板>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、基板を含むことが好ましい。
前記基板の材料としては特に制限はなく、公知の材料を用いることができ、例えば、ポリエチレンナフトエート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリイミドフィルム、およびこれらポリマーフィルムを極薄ガラスに貼り合わせたもの、セラミック、シリコン、石英、ガラス、などを挙げることができ、シリコンが好ましい。
【0093】
<電極>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、電極を含むことが好ましい。
前記電極の構成材料としては、例えば、Cr、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、In、NiあるいはNdなどの金属材料やこれらの合金材料、あるいはカーボン材料、導電性高分子などの既知の導電性材料であれば特に制限することなく使用できる。
【0094】
(厚さ)
電極の厚さは特に制限はないが、10〜50nmとすることが好ましい。
ゲート幅(またはチャンネル幅)Wとゲート長(またはチャンネル長)Lに特に制限はないが、これらの比W/Lが10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
【0095】
<絶縁層>
(材料)
絶縁層を構成する材料は必要な絶縁効果が得られれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、PTFE、CYTOP等のフッ素ポリマー系絶縁材料、ポリエステル絶縁材料、ポリカーボネート絶縁材料、アクリルポリマー系絶縁材料、エポキシ樹脂系絶縁材料、ポリイミド絶縁材料、ポリビニルフェノール樹脂系絶縁材料、ポリパラキシリレン樹脂系絶縁材料などが挙げられる。
絶縁層の上面は表面処理がなされていてもよく、例えば、二酸化ケイ素表面をヘキサメチルジシラザン(HMDS)やオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の塗布により表面処理した絶縁層を好ましく用いることができる。
【0096】
(厚さ)
絶縁層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、20〜200nmとすることがより好ましく、50〜200nmとすることが特に好ましい。
【0097】
<半導体活性層>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、前記半導体活性層が前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物、すなわち本発明の化合物を含むことを特徴とする。
前記半導体活性層は、本発明の化合物からなる層であってもよく、本発明の化合物に加えて後述のポリマーバインダーがさらに含まれた層であってもよい。また、成膜時の残留溶媒が含まれていてもよい。
前記半導体活性層中における前記ポリマーバインダーの含有量は、特に制限はないが、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
【0098】
(厚さ)
半導体活性層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、10〜200nmとすることがより好ましく、10〜100nmとすることが特に好ましい。
【0099】
[非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料]
本発明は、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物、すなわち本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料にも関する。
【0100】
(非発光性有機半導体デバイス)
なお、本明細書において、「非発光性有機半導体デバイス」とは、発光することを目的としないデバイスを意味する。非発光性有機半導体デバイスは、薄膜の層構造を有するエレクトロニクス要素を用いた非発光性有機半導体デバイスとすることが好ましい。非発光性有機半導体デバイスには、有機薄膜トランジスタ、有機光電変換素子(光センサ用途の固体撮像素子、エネルギー変換用途の太陽電池等)、ガスセンサ、有機整流素子、有機インバータ、情報記録素子などが包含される。有機光電変換素子は光センサ用途(固体撮像素子)、エネルギー変換用途(太陽電池)のいずれにも用いることができる。好ましくは、有機光電変換素子、有機薄膜トランジスタであり、さらに好ましくは有機薄膜トランジスタである。すなわち、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料は、上述のとおり有機薄膜トランジスタ用材料であることが好ましい。
【0101】
(有機半導体材料)
本明細書において、「有機半導体材料」とは、半導体の特性を示す有機材料のことである。無機材料からなる半導体と同様に、正孔をキャリアとして伝導するp型(ホール輸送性)有機半導体と、電子をキャリアとして伝導するn型(電子輸送性)有機半導体がある。
本発明の化合物はp型有機半導体材料、n型の有機半導体材料のどちらとして用いてもよいが、p型として用いることがより好ましい。有機半導体中のキャリアの流れやすさはキャリア移動度μで表される。キャリア移動度μは高い方がよく、1×10
-3cm
2/Vs以上であることが好ましく、5×10
-3cm
2/Vs以上であることがより好ましく、1×10
-2cm
2/Vs以上であることが特に好ましく、1×10
-1cm
2/Vs以上であることがより特に好ましく、1cm
2/Vs以上であることがよりさらに特に好ましい。キャリア移動度μは電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
【0102】
[非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜]
(材料)
本発明は、上記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物、すなわち本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜にも関する。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物、すなわち本発明の化合物を含有し、ポリマーバインダーを含有しない態様も好ましい。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物、すなわち本発明の化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。
【0103】
前記ポリマーバインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレンなどの導電性ポリマー、半導体ポリマーを挙げることができる。
前記ポリマーバインダーは、単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
また、有機半導体材料と前記ポリマーバインダーとは均一に混合していてもよく、一部または全部が相分離していてもよいが、電荷移動度の観点では、膜中で膜厚方向に有機半導体とバインダーが相分離した構造が、バインダーが有機半導体の電荷移動を妨げず最も好ましい。
薄膜の機械的強度を考慮するとガラス転移温度の高いポリマーバインダーが好ましく、電荷移動度を考慮すると極性基を含まない構造のポリマーバインダーや光伝導性ポリマー、導電性ポリマーが好ましい。
ポリマーバインダーの使用量は、特に制限はないが、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜中、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
【0104】
さらに、本発明では、化合物が上述した構造をとることにより、膜質の良い有機薄膜を得ることができる。具体的には、本発明で得られる化合物は、結晶性が良いため、十分な膜厚を得ることができ、得られた本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は良質なものとなる。
【0105】
(成膜方法)
本発明の化合物を基板上に成膜する方法はいかなる方法でもよい。
成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃から200℃の間であることが好ましく、15℃〜100℃の間であることがより好ましく、20℃〜95℃の間であることが特に好ましい。
本発明の化合物を基板上に成膜するとき、真空プロセスあるいは溶液プロセスにより成膜することが可能であり、いずれも好ましい。
【0106】
真空プロセスによる成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法あるいはプラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法が挙げられ、真空蒸着法を用いることが特に好ましい。
【0107】
溶液プロセスによる成膜とは、ここでは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を用いて成膜する方法をさす。具体的には、一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物と有機溶媒を含む本発明の組成物を用いて塗布する。具体的には、キャスト法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法などの塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの各種印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法などの通常の方法を用いることができ、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法を用いることが特に好ましい。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、溶液塗布法により作製されたことが好ましい。また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜がポリマーバインダーを含有する場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により形成されることが好ましい。
以下、溶液プロセスによる成膜に用いることができる、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液について説明する。
【0108】
[組成物、非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液]
本発明は、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物、すなわち本発明の化合物を含有する組成物、非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液にも関する。
溶液プロセスを用いて基板上に成膜する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン、1−メチルー2−イミダゾリジノン等のアミド・イミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒)および/または水に溶解、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。溶媒は単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒またはケトン系溶媒が好ましく、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒またはケトン系溶媒がより好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン
、アニソール、イソホロン、ジイソプロピルベンゼン、s−ブチルベンゼンがより好ましく、トルエン、キシレン、テトラリン、ジイソプロピルベンゼン、s−ブチルベンゼンが特に好ましい。その塗布液中の一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物の濃度は、好ましくは、0.1〜80質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%とすることにより、任意の厚さの膜を形成できる。
これらの中でも、有機溶剤としては、沸点が150℃以上の芳香族系の溶剤であって、活性水素を含まない溶剤が、一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物との溶解性およびキャリア移動度を高める観点から好ましい。このような溶剤としては、例えば、テトラリン、ジクロロベンゼン、アニソール、イソホロン、ジイソプロピルベンゼン、s−ブチルベンゼンなどが挙げられる。本発明に用いられる有機溶剤としては、ジクロロベンゼン、テトラリン、ジイソプロピルベンゼン、s−ブチルベンゼンが好ましく、テトラリン、ジイソプロピルベンゼン、s−ブチルベンゼンがより好ましい。
【0109】
溶液プロセスで成膜するためには、上記で挙げた溶媒などに材料が溶解することが必要であるが、単に溶解するだけでは不十分である。通常、真空プロセスで成膜する材料でも、溶媒にある程度溶解させることができる。しかし、溶液プロセスでは、材料を溶媒に溶解させて塗布した後で、溶媒が蒸発して薄膜が形成する過程があり、溶液プロセス成膜に適さない材料は結晶性が高いものが多いため、この過程で不適切に結晶化(凝集)してしまい良好な薄膜を形成させることが困難である。一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物は、このような結晶化(凝集)が起こりにくい点でも優れている。
【0110】
本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液は、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物、すなわち本発明の化合物を含み、ポリマーバインダーを含有しない態様も好ましい。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液は、前記一般式(1−1)または(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物、すなわち本発明の化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。この場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを前述の適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。ポリマーバインダーとしては、上述したものから選択することができる。
【実施例】
【0111】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0112】
[実施例1]
<合成例1> 化合物3の合成
以下のスキームに示した具体的合成手順にしたがって、一般式(1−1)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物である、化合物3を合成する。中間体5は、Journal of the American Chemical Society,2013年,135巻,4656頁に記載の手法を参考に合成した。
【化43】
【0113】
なお、得られた化合物の同定は元素分析、NMRスペクトルにより行った。
【0114】
他の実施例に用いた一般式(1−1)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物も、化合物3と同様にして合成する。
【0115】
[実施例2]
<合成例2:化合物111の合成>
以下のスキームに示した具体的合成手順にしたがって、一般式(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物である、化合物111を合成する。下記スキーム中、中間体1は、特許文献EP1916279A2号に記載の手法を参考に合成した。中間体9は、実施例1における中間体5とほぼ同様の手法で合成した。
【化44】
【0116】
なお、得られた化合物の同定は元素分析、NMRスペクトルにより行った。
また、各化合物の分子量を本明細書中に記載の方法で測定したところ、各化合物の重量平均分子量は50000〜200000の範囲であることがわかった。すなわち、一般式(1−1)または(1−2)で表される各化合物の繰り返し単位数nは、50〜200の範囲であることがわかった。
【0117】
他の実施例に用いた一般式(1−2)で表されるn個の繰り返し単位からなる化合物も、化合物111と同様にして合成する。
【0118】
比較素子の半導体活性層(有機半導体層)に用いた比較化合物1および2を、各文献に記載の方法にしたがって合成した。比較化合物1および2の構造を以下に示す。
比較化合物1:Chem. Mater., 2009, 21, 5499.に記載の化合物PBDN
【化45】
【化46】
【0119】
<素子作製・評価>
[実施例3]
<非発光性有機半導体デバイス用塗布液の作製>
本発明の化合物または比較化合物(各10mg)とトルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱した組成物を、実施例2の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液とした。完溶しなかったものについては、0.2μmのフィルターを用いて濾過をおこなった。
【0120】
<化合物単独で半導体活性層(有機半導体層)を形成>
非発光性有機半導体デバイス用塗布液を窒素雰囲気下、スピンコートすることで、非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜を形成し、FET特性測定用の実施例3の有機薄膜トランジスタ素子を得た。FET特性測定用基板としては、ソースおよびドレイン電極としてくし型に配置されたクロム/金(ゲート幅W=100mm、ゲート長L=100μm)、絶縁膜としてSiO
2(膜厚200nm)を備えたボトムゲート・ボトムコンタクト構造のシリコン基板(
図2に構造の概略図を示した)を用いた。
実施例3の有機薄膜トランジスタ素子のFET特性は、セミオートプローバー(ベクターセミコン製、AX−2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent製、4156C)を用いて常圧・窒素雰囲気下で、キャリア移動度、繰り返し駆動後の閾値電圧変化および成膜性の観点で評価した。
また、実施例3の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液を溶解性の観点で評価した。
得られた結果を下記表27に示す。
【0121】
(a)溶解性評価
本発明の化合物または比較化合物(各10mg)とトルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱後、室温にて30分放置し、析出した固体の量により、溶解度を以下の3段階で評価した。
A:析出無し
B:析出量が30%未満
C:析出量が30%以上
【0122】
(b)キャリア移動度
各有機薄膜トランジスタ素子(FET素子)のソース電極−ドレイン電極間に−50Vの電圧を印加し、ゲート電圧を20V〜−100Vの範囲で変化させ、ドレイン電流I
dを表わす式I
d=(w/2L)μC
i(V
g−V
th)
2(式中、Lはゲート長、Wはゲート幅、C
iは絶縁層の単位面積当たりの容量、V
gはゲート電圧、V
thは閾値電圧)を用いてキャリア移動度μを算出した。なお、キャリア移動度が1×10
-5cm
2/Vsを下回るものに関しては特性が低過ぎるため、後の(c)繰り返し駆動後の閾値電圧変化の評価は行わない。
【0123】
(c)繰り返し駆動後の閾値電圧変化
各有機薄膜トランジスタ素子(FET素子)のソース電極−ドレイン電極間に−80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を+20V〜−100Vの範囲で100回繰り返して(a)と同様の測定を行い、繰り返し駆動前の閾値電圧V前と繰り返し駆動後の閾値電圧V後の差(|V後−V前|)を以下の3段階で評価した。この値は小さいほど素子の繰り返し駆動安定性が高く、好ましい。
A:|V後−V前|≦5V
B:5V<|V後−V前|≦10V
C:|V後−V前|>10V
【0124】
(d)成膜性評価
得られた各有機薄膜トランジスタ素子について、肉眼による観察および光学顕微鏡観察を行った。前記方法で10個素子を作製し、ソース電極とドレイン電極上の膜ハジキの割合を評価した。
その結果を以下の3段階で評価した。
A:10%未。
B:10%以上30%未満。
C:30%以上。
【0125】
(e)素子バラツキ
作製した30素子の移動度を測定し、変動係数を算出した。その結果を以下の3段階で評価した。
A:30%未満
B:30%以上50%未満
C:50%以上
【0126】
【表27】
【0127】
上記表27より、本発明の化合物は有機溶媒への溶解性が良好であり、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が高いことがわかった。そのため、本発明の化合物は非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物1を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いものであった。また、比較化合物2を用いた非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料は有機溶媒への溶解性が低いものであった。
なお、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、比較化合物1および2を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が大きいものであった。また、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、いずれも膜の平滑性・均一性が非常に高く、成膜性が良好であることが分かった。
【0128】
[実施例4]
<半導体活性層(有機半導体層)形成>
ゲート絶縁膜としてSiO
2(膜厚370nm)を備えたシリコンウエハーを用い、オクチルトリクロロシランで表面処理をおこなった。
本発明の化合物または比較化合物(各1mg)とトルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱したものを、非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液とした。この塗布溶液を窒素雰囲気下、90℃に加熱したオクチルシラン表面処理シリコンウエハー上にキャストすることで、非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜を形成した。
更にこの薄膜表面にマスクを用いて金を蒸着することで、ソースおよびドレイン電極を作製し、ゲート幅W=5mm、ゲート長L=80μmのボトムゲート・トップコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ素子を得た(
図1に構造の概略図を示した)。
実施例4の有機薄膜トランジスタ素子のFET特性は、セミオートプローバー(ベクターセミコン製、AX−2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent製、4156C)を用いて常圧・窒素雰囲気下で、キャリア移動度、繰り返し駆動後の閾値電圧変化および成膜性の観点で評価した。
また、実施例4の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液を溶解性の観点で評価した。
得られた結果を下記表28に示す。
【0129】
【表28】
【0130】
上記表28より、本発明の化合物は有機溶媒への溶解性が良好であり、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が高いことがわかった。そのため、本発明の化合物は非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物1を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いものであった。また、比較化合物2を用いた非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料は有機溶媒への溶解性が低いものであった。
なお、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、比較化合物1および2を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が大きいものであった。また、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、いずれも膜の平滑性・均一性が非常に高く、成膜性が良好であることが分かった。
【0131】
[実施例5]
<化合物をバインダーとともに用いて半導体活性層(有機半導体層)を形成>
本発明の化合物または比較化合物(各1mg)、PαMS(ポリ(α−メチルスチレン、Mw=300,000)、Aldrich製)1mg、トルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱したものを塗布溶液として用いる以外は実施例3と同様にしてFET特性測定用の有機薄膜トランジスタ素子を作製し、実施例3と同様の評価を行った。
得られた結果を下記表29に示す。
【0132】
【表29】
【0133】
上記表29より、本発明の化合物は有機溶媒への溶解性が良好であり、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が高いことがわかった。そのため、本発明の化合物は非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物1を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いものであった。また、比較化合物2を用いた非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料は有機溶媒への溶解性が低いものであった。
なお、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、比較化合物1および2を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が大きいものであった。また、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、いずれも膜の平滑性・均一性が非常に高く、成膜性が良好であることが分かった。
【0134】
以上より、比較素子ではバインダーPαMSと比較化合物の複合系で半導体活性層を形成した場合にキャリア移動度が非常に低くなるのに対し、本発明の有機薄膜トランジスタ素子では本発明の化合物をバインダーPαMSとともに用いて半導体活性層を形成した場合も良好なキャリア移動度を示すことがわかった。