特許第5972234号(P5972234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972234有機薄膜トランジスタ、有機半導体薄膜および有機半導体材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972234
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】有機薄膜トランジスタ、有機半導体薄膜および有機半導体材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/30 20060101AFI20160804BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20160804BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20160804BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20160804BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160804BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 310J
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 618A
   C07D487/04 137
【請求項の数】25
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-161829(P2013-161829)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-32716(P2015-32716A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】平井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】高久 浩二
(72)【発明者】
【氏名】米久田 康智
(72)【発明者】
【氏名】益居 健介
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/078407(WO,A1)
【文献】 特表2015−502937(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024388(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/024139(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/016511(WO,A1)
【文献】 特開2011−046687(JP,A)
【文献】 特開2011−057672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/40
H01L 21/336
H01L 29/786
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を半導体活性層に含むことを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)において、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。
23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは下記一般式(W)で表される置換基である。)
−S−L−T 一般式(W)
(一般式(W)においてSは−(CRS2)n−を表す(RSはそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、nは0〜17の整数を表す)。Lは下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基または下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す。Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化2】
(一般式(L−1)〜(L−15)において、波線部分はSとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rnは水素原子またはメチル基を表す。Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
一般式(2)
【化3】
(一般式(2)において、R23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは前記一般式(W)で表される基である。)
【請求項3】
前記一般式(1)において、S、LおよびTに含まれる炭素数の合計が5〜18であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基、または前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、Tが置換または無置換のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−6)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記一般式(1)において、Tが直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項9】
前記一般式(1)において、Tが分枝アルキル基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項10】
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【化4】
(一般式(1)において、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。
23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは下記一般式(W)で表される置換基である。)
−S−L−T 一般式(W)
(一般式(W)においてSは−(CRS2)n−を表す(RSはそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、nは0〜17の整数を表す)。Lは下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基または下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す。Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化5】
(一般式(L−1)〜(L−15)において、波線部分はSとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rnは水素原子またはメチル基を表す。Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
【請求項11】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項10に記載の化合物。
一般式(2)
【化6】
(一般式(2)において、R23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは前記一般式(W)で表される基である。)
【請求項12】
前記一般式(1)において、S、LおよびTに含まれる炭素数の合計が5〜18であることを特徴とする請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基、または前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、Tが置換または無置換のアルキル基であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−6)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
前記一般式(1)において、Tが直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記一般式(1)において、Tが分枝アルキル基であることを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料。
【請求項20】
請求項10〜18のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ用材料。
【請求項21】
請求項10〜18のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液。
【請求項22】
請求項10〜18のいずれか一項に記載の化合物とポリマーバインダーを含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液。
【請求項23】
請求項10〜18のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
【請求項24】
請求項10〜18のいずれか一項に記載の化合物とポリマーバインダーを含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
【請求項25】
溶液塗布法により作製されたことを特徴とする請求項23または24に記載の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタ、有機半導体薄膜および有機半導体材料などに関する。詳しくは、本発明は、クリセノジピロール構造を有する化合物、該化合物を含有する有機薄膜トランジスタ、該化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料、該化合物を含有する有機薄膜トランジスタ用材料、該化合物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液、該化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を用いたデバイスは、従来のシリコンなどの無機半導体材料を用いたデバイスと比較して、様々な優位性が見込まれているため、高い関心を集めている。有機半導体材料を用いたデバイスの例としては、有機半導体材料を光電変換材料として用いた有機薄膜太陽電池や固体撮像素子などの光電変換素子や、非発光性の有機トランジスタが挙げられる。有機半導体材料を用いたデバイスは、無機半導体材料を用いたデバイスと比べて低温、低コストで大面積の素子を作製できる可能性がある。さらに分子構造を変化させることで容易に材料特性を変化させることが可能であるため材料のバリエーションが豊富であり、無機半導体材料ではなし得なかったような機能や素子を実現することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、クリセンの両末端にベンゼン環またはヘテロ環(チオフェン環、フラン環、ピロール環)を縮合した化合物が記載されており、特にクリセンの両末端に、窒素原子上に炭素数1〜30の置換基を有するピロール環を有する構造の一般式が記載されている。特許文献1には、この化合物を有機薄膜トランジスタに用いることで移動度が高く、駆動速度が高速で、オン/オフ比が大きい有機薄膜トランジスタが得られることが記載されている。ただし、特許文献1にはクリセンの両末端にピロール環を導入した化合物の具体例としてピロール環の窒素原子上にメチル基を有する化合物のみが列挙されており、特許文献1の実施例ではジベンゾクリセン、ジチエノクリセンについてのみ検討されており、溶解度はクロロホルムに対して0.5質量%程度であった。
一方、特許文献2には、3〜7個の芳香族環の縮合環の両末端または片末端環上にピロール環を有する化合物が記載されており、特にクリセンの両末端に、窒素原子上に炭素数1〜40のアルキル基を有するピロール環を有する構造の一般式が記載されている。特許文献2には、この化合物を有機薄膜トランジスタに用いることで電荷輸送度が高く、閾値電圧が低く、オン/オフ比が大きい有機薄膜トランジスタが得られたと記載されている。ただし、特許文献2の実施例ではクリセンの片方のみの末端に、窒素原子上に炭素数5の分枝アルキル基を有するピロール環を有する化合物についてのみ有機薄膜トランジスタ特性が検討されており、電界効果移動度は0.003cm2/Vs程度と低く、駆動電圧も金電極のボトムゲート・トップコンタクト素子で閾値電圧−40V程度とまだ高い値であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2010/024388号公報
【特許文献2】国際公開WO2013/078407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況のもと、本発明者らが特許文献1または2の実施例に記載の化合物を用いた有機薄膜トランジスタについて検討したところ、これらの文献の実施例に記載の化合物の多くは、キャリア移動度が低く、駆動電圧が高く、また、有機溶媒への溶解性も低いものであった。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために検討を進めた。本発明が解決しようとする課題は、有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときにキャリア移動度が高く、かつ、駆動電圧が低くなり、有機溶媒への高い溶解性を有する化合物および該化合物を用いた有機薄膜トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、特許文献1または2の一般式で示された構造の中でも、これらの文献に開示されていなかったクリセノジピロール構造のピロール環の2−位に特定の置換基を導入し、かつ無置換のNHを有する構造とすることで、有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときにキャリア移動度が高く、かつ、駆動電圧が低くなり、有機溶媒への高い溶解性を有する化合物が得られることを見出し、本発明に至った。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物を半導体活性層に含むことを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)において、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。
23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは下記一般式(W)で表される置換基である。)
−S−L−T 一般式(W)
(一般式(W)においてSは−(CRS2)n−を表す(RSはそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、nは0〜17の整数を表す)。Lは下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基または下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す。Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化2】
(一般式(L−1)〜(L−15)において、波線部分はSとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rnは水素原子またはメチル基を表す。Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
[2] [1]に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)
【化3】
(一般式(2)において、R23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは前記一般式(W)で表される基である。)
[3] [1]または[2]に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)において、S、LおよびTに含まれる炭素数の合計が5〜18であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基、または前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、Tが置換または無置換のアルキル基であることが好ましい。
[7] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−6)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)において、Tが直鎖アルキル基であることが好ましい。
[9] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)において、Tが分枝アルキル基であることが好ましい。
[10] 下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【化4】
(一般式(1)において、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。
23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは下記一般式(W)で表される置換基である。)
−S−L−T 一般式(W)
(一般式(W)においてSは−(CRS2)n−を表す(RSはそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、nは0〜17の整数を表す)。Lは下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基または下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す。Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化5】
(一般式(L−1)〜(L−15)において、波線部分はSとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rnは水素原子またはメチル基を表す。Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
[11] [10]に記載の化合物は、前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)
【化6】
(一般式(2)において、R23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは前記一般式(W)で表される基である。)
[12] [10]または[11]に記載の化合物は、前記一般式(1)において、S、LおよびTに含まれる炭素数の合計が5〜18であることが好ましい。
[13] [10]〜[12]のいずれか1項に記載の化合物は、前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基、または前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基であることが好ましい。
[14] [10]〜[13]のいずれか一項に記載の化合物は、前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることが好ましい。
[15] [10]〜[14]のいずれか一項に記載の化合物は、前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、Tが置換または無置換のアルキル基であることが好ましい。
[16] [10]〜[14]のいずれか一項に記載の化合物は、前記一般式(1)において、Lが前記一般式(L−6)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることが好ましい。
[17] [10]〜[16]のいずれか一項に記載の化合物は、前記一般式(1)において、Tが直鎖アルキル基であることが好ましい。
[18] [10]〜[16]のいずれか一項に記載の化合物は、前記一般式(1)において、Tが分枝アルキル基であることが好ましい。
[19] [10]〜[18]のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料。
[20] [10]〜[18]のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ用材料。
[21] [10]〜[18]のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液。
[22] [10]〜[18]のいずれか一項に記載の化合物とポリマーバインダーを含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液。
[23] [10]〜[18]のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
[24] [10]〜[18]のいずれか一項に記載の化合物とポリマーバインダーを含有することを特徴とする非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
[25] 溶液塗布法により作製されたことを特徴とする[23]または[24]に記載の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときにキャリア移動度が高く、かつ、駆動電圧が低くなり、有機溶媒への高い溶解性を有する化合物および該化合物を用いた有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の有機薄膜トランジスタの一例の構造の断面を示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施例でFET特性測定用基板として製造した有機薄膜トランジスタの構造の断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、各一般式の説明において特に区別されずに用いられている場合における水素原子は同位体(重水素原子等)も含んでいることを表す。さらに、置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0012】
[有機薄膜トランジスタ]
本発明の有機薄膜トランジスタは、下記一般式(1)で表される化合物を半導体活性層に含むことを特徴とする。
一般式(1)
【化7】
(一般式(1)において、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。
23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは下記一般式(W)で表される置換基である。)
−S−L−T 一般式(W)
(一般式(W)においてSは−(CRS2)n−を表す(RSはそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、nは0〜17の整数を表す)。Lは下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基または下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す。Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化8】
(一般式(L−1)〜(L−15)において、波線部分はSとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rnは水素原子またはメチル基を表す。Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
【0013】
このような構造の一般式(1)で表される化合物は有機溶媒への高い溶解性を有し、一般式(1)で表される化合物を半導体活性層に含むことにより、本発明の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が高く、駆動電圧が低い。
ここで、特許文献1では、ジベンゾクリセンおよびクリセノジチオフェンに主眼を置いており、本発明と同骨格のクリセノジピロール化合物は例示化合物中に記載されているのみで、実施例には記載がない。また、記載のある例示化合物はピロール環の窒素原子上にメチル基を有し、かつ、ピロール環の2−位にアルキル基を導入した化合物のみであり、これら一連の化合物においては置換基の立体障害が大きいために分子間距離が広がり、十分なHOMO軌道の重なりが得られない。特許文献1にはこれらを有機トランジスタに使用した実施例はなく、もし使用したとしてもキャリア移動度と溶解性の両立は困難である。さらに、実施例に記載のあるジベンゾクリセン、クリセノジチオフェンは電極の仕事関数に比べてHOMOが深く、Au電極を用いたトップコンタクト素子であるにもかかわらす駆動電圧が50V以上と高い。
特許文献2の実施例記載の化合物は前記一般式(1)に含まれない非対称体の骨格であり、電界効果移動度も低い。
これに対し、前記一般式(1)で表される化合物は、無置換のNH構造を有し、かつ2−位に所定の基が導入されていることにより、高いキャリア移動度、低駆動電圧および一般的な有機溶剤に対する溶解性を鼎立するものである。そして、この化合物では、特に、従来の活性水素を有する有機半導体材料と異なり、無置換のNH構造を有することがキャリア移動度を高める上で有利に働く。ここで、無置換のNH構造などの活性水素を有する有機半導体材料は、一般に化学的に弱く、酸化されて導体になりやすい等の理由から、トランジスタへの使用は難しいとされている。例えば、Synthetic Metals 82, 167−173(1996)では、p−トルエンスルホン酸をポリピロールにドープしたフィルムよりも、p−トルエンスルホン酸をポリ(N−メチルピロール)やポリ(N−エチルピロール)にドープしたフィルムの方が、移動度が高くなり、閾値電圧が低くなることが示されている。一方、一般式(1)で表される化合物は、ピロール環の無置換のNH構造が結晶構造を安定化するように作用し、この従来知られていなかったメカニズムによって高いキャリア移動度を得ることができる。
【0014】
なお、有機EL素子材料として有用なものが、ただちに有機薄膜トランジスタ用半導体材料として有用であると言うことはできない。これは、有機EL素子と有機薄膜トランジスタでは、有機化合物に求められる特性が異なるためである。有機EL素子では通常薄膜の膜厚方向(通常数nm〜数100nm)に電荷を輸送する必要があるのに対し、有機薄膜トランジスタでは薄膜面方向の電極間(通常数μm〜数100μm)の長距離を電荷(キャリア)輸送する必要がある。このため、求められるキャリア移動度が格段に高い。そのため、有機薄膜トランジスタ用半導体材料としては、分子の配列秩序が高い、結晶性が高い有機化合物が求められている。また、高いキャリア移動度発現のため、π共役平面は基板に対して直立していることが好ましい。一方、有機EL素子では、発光効率を高めるため、発光効率が高く、面内での発光が均一な素子が求められている。通常、結晶性の高い有機化合物は、面内の電界強度不均一、発光不均一、発光クエンチ等、発光欠陥を生じさせる原因となるため、有機EL素子用材料は結晶性を低くし、アモルファス性の高い材料が望まれる。このため、有機EL素子材料を構成する有機化合物を有機半導体材料にそのまま転用しても、ただちに良好なトランジスタ特性を得ることができる訳ではない。
以下、本発明の化合物や本発明の有機薄膜トランジスタなどの好ましい態様を説明する。
【0015】
<一般式(1)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。本発明の化合物は、本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、後述の半導体活性層に含まれる。すなわち、本発明の化合物は、有機薄膜トランジスタ用材料として用いることができる。
一般式(1)
【化9】
(一般式(1)において、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。
23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは下記一般式(W)で表される置換基である。)
−S−L−T 一般式(W)
(一般式(W)においてSは−(CRS2)n−を表す(RSはそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、nは0〜17の整数を表す)。Lは下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基または下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す。Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化10】
(一般式(L−1)〜(L−15)において、波線部分はSとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rnは水素原子またはメチル基を表す。Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
【0016】
一般式(1)において、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。
1〜R10がとり得るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子を挙げることができ、フッ素原子が好ましい。
1〜R10はそれぞれ独立に水素原子を表すことがキャリア移動度を高め、かつ、駆動電圧を低下させる観点から好ましい。
【0017】
一般式(1)において、R23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも1つは前記一般式(W)で表される基を表す。
一般式(1)のR23およびR24がそれぞれ独立にとりうる置換基として、ハロゲン原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の炭素数1〜40のアルキル基、ただし、2,6−ジメチルオクチル基、2−デシルテトラデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−エチルオクチル基、2−デシルテトラデシル基、2−ブチルデシル基、1−オクチルノニル基、2−エチルオクチル基、2−オクチルテトラデシル基、2−エチルヘキシル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等を含む)、アルケニル基(1−ペンテニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等を含む)、アルキニル基(1−ペンチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ−i−プロピルシリルエチニル基、2−p−プロピルフェニルエチニル基等を含む)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−ペンチルフェニル基、3,4−ジペンチルフェニル基、p−ヘプトキシフェニル基、3,4−ジヘプトキシフェニル基の炭素数6〜20のアリール基等を含む)、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。2−ヘキシルフラニル基等を含む)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を含む)、アルコキシ基(ブトキシ基等を含む)、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基含む)、アルコキシおよびアリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルおよびアリールチオ基(メチルチオ基、オクチルチオ基等を含む)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基(ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基等)、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
また、これら置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。また、前記一般式(1)で表される化合物が繰り返し構造を有する高分子化合物である場合は、R23およびR24が重合性基由来の基を有していてもよい。
【0018】
前記一般式(1)で表される化合物中において、R23およびR24の両方が前記一般式(W)で表される基であることが、キャリア移動度を高め、駆動電圧を低下させ、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
【0019】
一般式(1)において、R23およびR24が少なくとも1つ有する前記一般式(W)で表される基について説明する。
−S−L−T 一般式(W)
(一般式(W)においてSは−(CRS2)n−を表す(RSはそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、nは0〜17の整数を表す)。Lは下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基または下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す。Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化11】
(一般式(L−1)〜(L−15)において、波線部分はSとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rnは水素原子またはメチル基を表す。Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
【0020】
一般式(W)においてSは−(CRS2n−を表す。
Sはそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、RSがとり得るハロゲン原子の範囲および好ましい範囲は、R1〜R10がとり得るハロゲン原子の範囲および好ましい範囲と同様である。RSは水素原子であることが好ましい。
一般式(W)においてnは0〜17の整数を表し、0〜3であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。なお、nが0の場合はSは単結合を表す。
【0021】
一般式(W)において、Lは下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基または下記一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。)
【化12】
【0022】
一般式(L−1)〜(L−15)において、波線部分はSとの結合位置を示し、*は一般式(L−1)〜(L−15)で表される2価の連結基およびTのいずれかとの結合位置を示す。一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rnは水素原子またはメチル基を表す。Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。一般式(L−1)および(L−2)中のR’はそれぞれLに隣接するTと結合して縮合環を形成してもよい。
【0023】
前記Lが一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が結合した連結基を形成する場合、一般式(L−1)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基の結合数は2〜4であることが好ましく、2または3であることがより好ましい。
【0024】
一般式(L−1)、(L−2)および(L−10)〜(L−14)中の置換基R’としては、上記の一般式(1)のR23およびR24が採りうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも一般式(L−14)中の置換基R’はアルキル基であることが好ましく、(L−14)中のR’がアルキル基である場合は、該アルキル基の炭素数は1〜9であることが好ましく、4〜9であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、5〜9であることがさらに好ましい。(L−14)中のR’がアルキル基である場合は、該アルキル基は直鎖アルキル基であることが、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
nは水素原子またはメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基アルキニル基を表し、アルキル基であることが好ましい。Rsiがとり得るアルキル基としては特に制限はないが、Rsiがとり得るアルキル基の好ましい範囲はTがシリル基である場合に該シリル基がとり得るアルキル基の好ましい範囲と同様である。Rsiがとり得るアルケニル基としては特に制限はないが、置換または無置換のアルケニル基が好ましく、分枝アルケニル基であることがより好ましく、該アルケニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。Rsiがとり得るアルキニル基としては特に制限はないが、置換または無置換のアルキニル基が好ましく、分枝アルキニル基であることがより好ましく、該アルキニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。
一般式(L−10)におけるmは4を表し、一般式(L−11)〜(L−13)におけるmは2を表す。
【0025】
Lは前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基、または前記一般式(L−1)〜(L−6)および(L−10)〜(L−15)のいずれかで表される2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることが好ましく、一般式(L−1)および(L−6)のいずれかで表される2価の連結基またはこれらの2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることがより好ましい。
化学的安定性、キャリア輸送性の観点から一般式(L−1)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることが特に好ましく、一般式(L−1)で表される2価の連結基であることがより特に好ましく、Lが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、Tが置換または無置換のアルキル基であることがさらにより特に好ましい。
一方、局所ダイポールを緩和し、分子内水素結合により構造を安定化させ、キャリア移動度を高める観点からは、Lが一般式(L−6)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることが特に好ましく、一般式(L−6)で表される2価の連結基であることがより特に好ましい。なお、Lが一般式(L−6)で表される2価の連結基を含む2価の連結基である場合、L中に一般式(L−1)で表される2価の連結基をさらに含まない場合は、S中のnが1以上であることが好ましく、1〜3であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0026】
前記一般式(W)において、Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のシリル基を表す。ただし、Tが置換または無置換のシリル基を表すのは、Tに隣接するLが下記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限る。
前記一般式(W)において、Tに隣接するLが前記一般式(L−1)で表される2価の連結基である場合は、Tは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基であることが好ましく、置換または無置換のアルキル基であることがより好ましい。
前記一般式(W)において、Tに隣接するLが前記一般式(L−2)および(L−4)〜(L−15)で表される2価の連結基である場合は、Tは置換または無置換のアルキル基であることがより好ましい。
前記一般式(W)において、Tに隣接するLが前記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合は、Tは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシリル基であることが好ましい。
【0027】
Tが置換または無置換のアルキル基の場合、炭素数は4〜18であることが好ましく、4〜15であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、7〜15であることが特に好ましく、7〜13であることがより特に好ましい。Tが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
Tがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
一方、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、Tが分枝アルキル基であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物は、前記−S−L−Tにアルキル基が含まれる場合、Tが表すアルキル基が上記範囲の下限値以上であるとキャリア移動度が高くなる。また、LがTに隣接する一般式(L−1)を含む場合や−S−中のnが1以上である場合は、一般式(L−1)で表されるアルキレン基、−S−中に含まれるアルキレン基およびTで表されるアルキル基が結合して形成されるアルキル基の炭素数が上記範囲の下限値以上であるとキャリア移動度が高くなる。
Tが置換基を有するアルキル基である場合の該置換基としては、ハロゲン原子などを挙げることができ、フッ素原子が好ましい。なお、Tがフッ素原子を有するアルキル基である場合は該アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。ただし、Tは無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0028】
前記Tがオキシエチレン基の繰り返し数が1以上のオリゴエチレンオキシ基の場合、Tが表す「オキシエチレン基」とは本明細書中、−(OCH2CH2vOYで表される基のことを言う(オキシエチレン単位の繰り返し数vは1以上の整数を表し、末端のYは水素原子または置換基を表す)。なお、オリゴオキシエチレン基の末端のYが水素原子である場合はヒドロキシ基となる。オキシエチレン単位の繰り返し数vは2〜4であることが好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。オリゴオキシエチレン基の末端のヒドロキシ基は封止されていること、すなわちYが置換基を表すことが好ましい。この場合、ヒドロキシ基は、炭素数が1〜3のアルキル基で封止されること、すなわちYが炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、Yがメチル基やエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0029】
前記Tが、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基の場合、シロキサン単位の繰り返し数は2〜4であることが好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。また、Si原子には、水素原子やアルキル基が結合することが好ましい。Si原子にアルキル基が結合する場合、アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基が結合することが好ましい。Si原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基または水素原子が結合してもよい。また、オリゴシロキサン基を構成するシロキサン単位はすべて同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一であることが好ましい。
【0030】
Tに隣接するLが前記一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合に限り、Tが置換または無置換のシリル基をとり得る。Tが置換または無置換のシリル基である場合はその中でも、Tが置換シリル基であることが好ましい。シリル基の置換基としては特に制限はないが、置換または無置換のアルキル基が好ましく、分枝アルキル基であることがより好ましい。Tがトリアルキルシリル基の場合、Si原子に結合するアルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基やイソプロピル基が結合することが好ましい。Si原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基が結合してもよい。Tがアルキル基上にさらに置換基を有するトリアルキルシリル基である場合の該置換基としては、特に制限はない。
【0031】
一般式(W)において、S、LおよびTに含まれる炭素数の合計は5以上であることが有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときにキャリア移動度が高くなり、駆動電圧が低くなり、膜質が良好となり、有機溶媒に対する溶解性が高くなるために好ましい。
一方、一般式(W)において、S、LおよびTに含まれる炭素数の合計は30以下であることが有機溶媒に対する溶解性が高くなる観点から好ましく、18以下であることが有機薄膜トランジスタの半導体活性層に用いたときにキャリア移動度が高くなり、駆動電圧が低くなり、有機溶媒に対する溶解性が高くなる観点からより好ましい。
S、LおよびTに含まれる炭素数の合計は5〜14であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、8〜14であることが特に好ましく、8〜12であることがより特に好ましい。
【0032】
前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)
【化13】
【0033】
一般式(2)において、R23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R23およびR24のうち少なくとも1つは前記一般式(W)で表される基である。
一般式(2)におけるR23およびR24の好ましい範囲は、一般式(1)におけるR23およびR24の好ましい範囲と同様である。
【0034】
以下に上記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明で用いることができる一般式(1)で表される化合物は、これらの具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0035】
【化14】
【0036】
【化15】
【0037】
【化16】
【0038】
【化17】
【0039】
【化18】
【0040】
【化19】
【0041】
【化20】
【0042】
【化21】
【0043】
【化22】
【0044】
【化23】
【0045】
上記一般式(1)で表される化合物は、繰り返し構造をとっても良く、低分子でも高分子でも良い。前記一般式(1)で表される化合物が低分子化合物の場合は、分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、850以下であることが特に好ましい。分子量を上記上限値以下とすることにより、溶媒への溶解性を高めることができるため好ましい。
一方で、薄膜の膜質安定性の観点からは、分子量は400以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。
また、前記一般式(1)で表される化合物が繰り返し構造を有する高分子化合物の場合は、重量平均分子量が3万以上であることが好ましく、5万以上であることがより好ましく、10万以上であることがさらに好ましい。前記一般式(1)で表される化合物が繰り返し構造を有する高分子化合物である場合に、重量平均分子量を上記下限値以上とすることにより、分子間相互作用を高めることができ、高い移動度が得られるため好ましい。
繰り返し構造を有する高分子化合物としては、一般式(1)で表される化合物が少なくとも1つ以上のアリーレン基、ヘテロアリーレン基(チオフェン、ビチオフェン)を表して繰り返し構造を示すπ共役ポリマーや、一般式(1)で表される化合物が高分子主鎖に側鎖を介して結合したペンダント型ポリマーがあげられ、高分子主鎖としては、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリシロキサンなどが好ましく、側鎖としては、アルキレン基、ポリエチレンオキシド基などが好ましい。
【0046】
前記一般式(1)で表される化合物は、WO2010/024388号公報、WO2013/078407号公報、Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 2488などを参考にして合成することができる。
本発明の化合物の合成において、いかなる反応条件を用いてもよい。反応溶媒としては、いかなる溶媒を用いてもよい。また、環形成反応促進のために、酸または塩基を用いることが好ましく、特に塩基を用いることが好ましい。最適な反応条件は、目的とするクリセノジピロール誘導体の構造により異なるが、上記の文献に記載された具体的な反応条件を参考に設定することができる。
【0047】
各種置換基を有する合成中間体は公知の反応を組み合わせて合成することができる。また、各置換基はいずれの中間体の段階で導入してもよい。中間体の合成後は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製する事が好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0048】
<有機薄膜トランジスタの構造>
本発明の有機薄膜トランジスタは、前記一般式(1)で表される化合物を含む半導体活性層を有する。
本発明の有機薄膜トランジスタは、さらに前記半導体活性層以外にその他の層を含んでいてもよい。
本発明の有機薄膜トランジスタは、有機電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)として用いられることが好ましく、ゲート−チャンネル間が絶縁されている絶縁ゲート型FETとして用いられることがより好ましい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの好ましい構造の態様について、図面を用いて詳しく説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0049】
(積層構造)
有機電界効果トランジスタの積層構造としては特に制限はなく、公知の様々な構造のものとすることができる。
本発明の有機薄膜トランジスタの構造の一例としては、最下層の基板の上面に、電極、絶縁体層、半導体活性層(有機半導体層)、2つの電極を順に配置した構造(ボトムゲート・トップコンタクト型)を挙げることができる。この構造では、最下層の基板の上面の電極は基板の一部に設けられ、絶縁体層は、電極以外の部分で基板と接するように配置される。また、半導体活性層の上面に設けられる2つの電極は、互いに隔離して配置される。
ボトムゲート・トップコンタクト型素子の構成を図1に示す。図1は、本発明の有機薄膜トランジスタの一例の構造の断面を示す概略図である。図1の有機薄膜トランジスタは、最下層に基板11を配置し、その上面の一部に電極12を設け、さらに該電極12を覆い、かつ電極12以外の部分で基板11と接するように絶縁体層13を設けている。さらに絶縁体層13の上面に半導体活性層14を設け、その上面の一部に2つの電極15aと15bとを隔離して配置している。
図1に示した有機薄膜トランジスタは、電極12がゲートであり、電極15aと電極15bはそれぞれドレインまたはソースである。また、図1に示した有機薄膜トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
【0050】
本発明の有機薄膜トランジスタの構造の一例としては、ボトムゲート・ボトムコンタクト型素子を挙げることができる。
ボトムゲート・ボトムコンタクト型素子の構成を図2に示す。図2は本発明の実施例でFET特性測定用基板として製造した有機薄膜トランジスタの構造の断面を示す概略図である。図2の有機薄膜トランジスタは、最下層に基板31を配置し、その上面の一部に電極32を設け、さらに該電極32を覆い、かつ電極32以外の部分で基板31と接するように絶縁体層33を設けている。さらに絶縁体層33の上面に半導体活性層35を設け、電極34aと34bが半導体活性層35の下部にある。
図2に示した有機薄膜トランジスタは、電極32がゲートであり、電極34aと電極34bはそれぞれドレインまたはソースである。また、図2に示した有機薄膜トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
【0051】
本発明の有機薄膜トランジスタの構造としては、その他、絶縁体、ゲート電極が半導体活性層の上部にあるトップゲート・トップコンタクト型素子や、トップゲート・ボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。
【0052】
(厚さ)
本発明の有機薄膜トランジスタは、より薄いトランジスタとする必要がある場合には、例えばトランジスタ全体の厚さを0.1〜0.5μmとすることが好ましい。
【0053】
(封止)
有機薄膜トランジスタ素子を大気や水分から遮断し、有機薄膜トランジスタ素子の保存性を高めるために、有機薄膜トランジスタ素子全体を金属の封止缶やガラス、窒化ケイ素などの無機材料、パリレンなどの高分子材料や、低分子材料などで封止してもよい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの各層の好ましい態様について説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0054】
<基板>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、基板を含むことが好ましい。
前記基板の材料としては特に制限はなく、公知の材料を用いることができ、例えば、ポリエチレンナフトエート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリイミドフィルム、およびこれらポリマーフィルムを極薄ガラスに貼り合わせたもの、セラミック、シリコン、石英、ガラス、などを挙げることができ、シリコンが好ましい。
【0055】
<電極>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、電極を含むことが好ましい。
前記電極の構成材料としては、例えば、Cr、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、In、NiあるいはNdなどの金属材料やこれらの合金材料、あるいはカーボン材料、導電性高分子などの既知の導電性材料であれば特に制限することなく使用できる。
【0056】
(厚さ)
電極の厚さは特に制限はないが、10〜50nmとすることが好ましい。
ゲート幅(またはチャンネル幅)Wとゲート長(またはチャンネル長)Lに特に制限はないが、これらの比W/Lが10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
【0057】
<絶縁層>
(材料)
絶縁層を構成する材料は必要な絶縁効果が得られれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、PTFE、CYTOP等のフッ素ポリマー系絶縁材料、ポリエステル絶縁材料、ポリカーボネート絶縁材料、アクリルポリマー系絶縁材料、エポキシ樹脂系絶縁材料、ポリイミド絶縁材料、ポリビニルフェノール樹脂系絶縁材料、ポリパラキシリレン樹脂系絶縁材料などが挙げられる。
絶縁層の上面は表面処理がなされていてもよく、例えば、二酸化ケイ素表面をヘキサメチルジシラザン(HMDS)やオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の塗布により表面処理した絶縁層を好ましく用いることができる。
【0058】
(厚さ)
絶縁層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、20〜200nmとすることがより好ましく、50〜200nmとすることが特に好ましい。
【0059】
<半導体活性層>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、前記半導体活性層が前記一般式(1)で表される化合物、すなわち本発明の化合物を含むことを特徴とする。
前記半導体活性層は、本発明の化合物からなる層であってもよく、本発明の化合物に加えて後述のポリマーバインダーがさらに含まれた層であってもよい。また、成膜時の残留溶媒が含まれていてもよい。
前記半導体活性層中における前記ポリマーバインダーの含有量は、特に制限はないが、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
【0060】
(厚さ)
半導体活性層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、10〜200nmとすることがより好ましく、10〜100nmとすることが特に好ましい。
【0061】
[非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料]
本発明は、前記一般式(1)で表される化合物、すなわち本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料にも関する。
【0062】
(非発光性有機半導体デバイス)
なお、本明細書において、「非発光性有機半導体デバイス」とは、発光することを目的としないデバイスを意味する。非発光性有機半導体デバイスは、薄膜の層構造を有するエレクトロニクス要素を用いた非発光性有機半導体デバイスとすることが好ましい。非発光性有機半導体デバイスには、有機薄膜トランジスタ、有機光電変換素子(光センサ用途の固体撮像素子、エネルギー変換用途の太陽電池等)、ガスセンサ、有機整流素子、有機インバータ、情報記録素子などが包含される。有機光電変換素子は光センサ用途(固体撮像素子)、エネルギー変換用途(太陽電池)のいずれにも用いることができる。好ましくは、有機光電変換素子、有機薄膜トランジスタであり、さらに好ましくは有機薄膜トランジスタである。すなわち、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料は、上述のとおり有機薄膜トランジスタ用材料であることが好ましい。
【0063】
(有機半導体材料)
本明細書において、「有機半導体材料」とは、半導体の特性を示す有機材料のことである。無機材料からなる半導体と同様に、正孔をキャリアとして伝導するp型(ホール輸送性)有機半導体と、電子をキャリアとして伝導するn型(電子輸送性)有機半導体がある。
本発明の化合物はp型有機半導体材料、n型の有機半導体材料のどちらとして用いてもよいが、p型として用いることがより好ましい。有機半導体中のキャリアの流れやすさはキャリア移動度μで表される。キャリア移動度μは高い方がよく、1×10-3cm2/Vs以上であることが好ましく、5×10-3cm2/Vs以上であることがより好ましく、1×10-2cm2/Vs以上であることが特に好ましく、1×10-1cm2/Vs以上であることがより特に好ましく、1cm2/Vs以上であることがよりさらに特に好ましい。キャリア移動度μは電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
【0064】
[非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜]
(材料)
本発明は、上記一般式(1)で表される化合物、すなわち本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜にも関する。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、前記一般式(1)で表される化合物、すなわち本発明の化合物を含有し、ポリマーバインダーを含有しない態様も好ましい。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、前記一般式(1)で表される化合物、すなわち本発明の化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。
【0065】
前記ポリマーバインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレンなどの導電性ポリマー、半導体ポリマーを挙げることができる。
前記ポリマーバインダーは、単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
また、有機半導体材料と前記ポリマーバインダーとは均一に混合していてもよく、一部または全部が相分離していてもよいが、電荷移動度の観点では、膜中で膜厚方向に有機半導体とバインダーが相分離した構造が、バインダーが有機半導体の電荷移動を妨げず最も好ましい。
薄膜の機械的強度を考慮するとガラス転移温度の高いポリマーバインダーが好ましく、電荷移動度を考慮すると極性基を含まない構造のポリマーバインダーや光伝導性ポリマー、導電性ポリマーが好ましい。
ポリマーバインダーの使用量は、特に制限はないが、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜中、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
【0066】
さらに、本発明では、化合物が上述した構造をとることにより、膜質の良い有機薄膜を得ることができる。具体的には、本発明で得られる化合物は、結晶性が良いため、十分な膜厚を得ることができ、得られた本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は良質なものとなる。
【0067】
(成膜方法)
本発明の化合物を基板上に成膜する方法はいかなる方法でもよい。
成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃から200℃の間であることが好ましく、15℃〜100℃の間であることがより好ましく、20℃〜95℃の間であることが特に好ましい。
本発明の化合物を基板上に成膜するとき、真空プロセスあるいは溶液プロセスにより成膜することが可能であり、いずれも好ましい。
【0068】
真空プロセスによる成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法あるいはプラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法が挙げられ、真空蒸着法を用いることが特に好ましい。
【0069】
溶液プロセスによる成膜とは、ここでは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を用いて成膜する方法をさす。具体的には、キャスト法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法などの塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの各種印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法などの通常の方法を用いることができ、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法を用いることが特に好ましい。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、溶液塗布法により作製されたことが好ましい。また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜がポリマーバインダーを含有する場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により形成されることが好ましい。
以下、溶液プロセスによる成膜に用いることができる、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液について説明する。
【0070】
[非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液]
本発明は、前記一般式(1)で表される化合物、すなわち本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液にも関する。
溶液プロセスを用いて基板上に成膜する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン、1−メチルー2−イミダゾリジノン等のアミド・イミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒)および/または水に溶解、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。溶媒は単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明の無置換のNH構造を有する化合物の溶媒としては、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド・イミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ニトリル系溶媒等の極性溶媒、あるいは、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒またはエーテル系溶媒が好ましく、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒またはエーテル系溶媒がより好ましく、炭化水素系溶媒が特に好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジクロロベンゼンまたはアニソールがより特に好ましく、トルエン、キシレン、テトラリン、アニソールがさらにより特に好ましい。その塗布液中の一般式(1)で表される化合物の濃度は、好ましくは、0.1〜80質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.5〜10重量%とすることにより、任意の厚さの膜を形成できる。
【0071】
溶液プロセスで成膜するためには、上記で挙げた溶媒などに材料が溶解することが必要であるが、単に溶解するだけでは不十分である。通常、真空プロセスで成膜する材料でも、溶媒にある程度溶解させることができる。しかし、溶液プロセスでは、材料を溶媒に溶解させて塗布した後で、溶媒が蒸発して薄膜が形成する過程があり、溶液プロセス成膜に適さない材料は結晶性が高いものが多いため、この過程で不適切に結晶化(凝集)してしまい良好な薄膜を形成させることが困難である。一般式(1)で表される化合物は、このような結晶化(凝集)が起こりにくい点でも優れている。
【0072】
本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液は、前記一般式(1)で表される化合物、すなわち本発明の化合物を含み、ポリマーバインダーを含有しない態様も好ましい。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液は、前記一般式(1)で表される化合物、すなわち本発明の化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。この場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを前述の適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。ポリマーバインダーとしては、上述したものから選択することができる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0074】
[実施例1〜5および比較例1〜3]
<合成例1> 化合物4の合成
以下のスキームに示した具体的合成手順にしたがって、一般式(1)で表される化合物である、化合物4を合成した。
【化24】
【0075】
(2,8−ジアミノクリセンM1の合成)
2,8−ジアミノクリセンM1はTetrahedron Letters 2004, 45, 4737−4739に記載の方法で合成を行った。
(中間体M2の合成)
ジアミノクリセンM1(2.3g)をクロロホルム(90ml)に溶解、攪拌しているところに室温で臭素(0.96ml)を5分かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間攪拌を続けた。亜硫酸水素ナトリウム水溶液25mlを反応液に滴下してクエンチした後、2N炭酸カリウムで水層のpHを9にした。吸引ろ過により析出をろ取し、100℃で乾燥をおこなうことにより中間体M2(3.5g、収率93%)を得た。
(中間体M3の合成)
中間体M2(3.5g)を脱水ビリジン30mlに溶解させ、氷浴で0℃に冷却しているところにトシルクロライド(4.9g)を10分かけて分割添加した。添加後に氷浴を外し、室温で5時間攪拌を行った。反応液を水に注いで、析出物をろ取し、メタノール中で超音波洗浄することにより中間体M3(6.1g、収率100%)を得た。Tsはトシル基(パラトルエンスルホニル基)を表す。
(中間体M4の合成)
中間体M3(6.1g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(1.0g)、ヨウ化銅(0.54g)、1−デシン(6.1ml)、ジイソプロピルアミン(12ml)、脱水DMF30mlを混合、脱気したのち、外温110℃で4時間攪拌を行った。反応終了をTLCにて確認後、反応液をセライトろ過し、ろ液に酢酸エチルと5%希塩酸を加えて抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムにより乾燥、ろ過し、酢酸エチルを減圧留去した。残渣をメタノールにて超音波洗浄することにより中間体M4(4.6g、収率65%)を得た。
(化合物4の合成)
中間体M4(4.6g)にテトラブチルアンモニウムフルオライド(1M THF溶液)を40ml加え3時間還流、攪拌した。反応液を室温まで冷却した後に、酢酸エチルと5%希塩酸を加えて抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムにより乾燥、ろ過し、有機層を減圧留去した。残渣を分取GPC(展開溶媒THF)にて精製することにより、化合物4(0.83g、収率18%)を得た。
なお、得られた化合物の同定は元素分析、NMR及びMSスペクトルにより行った。
【0076】
他の実施例に用いた一般式(1)で表される化合物も、化合物4と同様にして合成した。
【0077】
比較素子の半導体活性層(有機半導体層)に用いた比較化合物1を、化合物4を水素化ナトリウムとヨウ化メチルを用いてメチル化することにより合成した。比較化合物2および3についても用いる材料を変更した以外は同様の方法にしたがって合成した。
比較化合物1〜3の構造を以下に示す。
【化25】
【0078】
<素子作製・評価>
素子作製に用いた材料は全て昇華精製を行い、高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−100Z)により純度(254nmの吸収強度面積比)が99.5%以上であることを確認した。
【0079】
<化合物単独で半導体活性層(有機半導体層)を形成>
本発明の各化合物または比較化合物(各1mg)とトルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱したものを、非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液とした。この塗布溶液を窒素雰囲気下、90℃に加熱したFET特性測定用基板上にキャストすることで、非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜を形成し、FET特性測定用の実施例2の有機薄膜トランジスタ素子を得た。FET特性測定用基板としては、ソースおよびドレイン電極としてくし型に配置されたクロム/金(ゲート幅W=100mm、ゲート長L=100μm)、絶縁膜としてSiO2(膜厚200nm)を備えたボトムゲート・ボトムコンタクト構造のシリコン基板(図2に構造の概略図を示した)を用いた。
【0080】
[評価]
(a)キャリア移動度、(b)閾値電圧
各実施例および比較例の有機薄膜トランジスタ素子のFET特性は、セミオートプローバー(ベクターセミコン製、AX−2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent製、4156C)を用いて常圧・窒素雰囲気下で、キャリア移動度、閾値電圧の観点で評価した。
各有機薄膜トランジスタ素子(FET素子)のソース電極−ドレイン電極間に−80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を20V〜−100Vの範囲で変化させ、閾値電圧を求めた。また、ドレイン電流Idを表わす式Id=(w/2L)μCi(Vg−Vth2(式中、Lはゲート長、Wはゲート幅、Ciは絶縁層の単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、Vthは閾値電圧)を用いてキャリア移動度μを算出した。
得られた結果を下記表1に示す。
なお、閾値電圧の絶対値が小さいほど、素子の駆動電圧が低くなり、好ましい。
【0081】
(c)溶解性
本発明の化合物または比較化合物(各2質量%、各1質量%または各0.1質量%)とトルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱後、室温にて30分放置し、析出無しとなる濃度を求め、トルエンに対する溶解性を以下の4段階で評価した。実用上、AA、AまたはB評価であることが必要であり、AAまたはA評価であることが好ましく、AA評価であることがより好ましい。
AA:2質量%で析出無し。
A:1質量%で析出無し、かつ、2質量%で析出あり。
B:0.1質量%で析出無し、かつ、1質量%で析出あり。
C:0.1質量%で析出あり。
【0082】
(d)膜質(ドメインサイズ)
実施例2の有機薄膜トランジスタ素子の半導体活性層について、偏光顕微鏡を用いてドメインサイズを1mm四方の範囲で測定し、平均ドメインサイズを計算した。得られた結果を以下の3段階で評価した。実用上、C評価であっても問題はないが、AまたはB評価であることが好ましく、A評価であることがより好ましい。
A:平均ドメインサイズが30マイクロメートル超える。
B:平均ドメインサイズが5マイクロメートルを超え、かつ、30マイクロメートル以下である。
C:平均ドメインサイズが5マイクロメートル以下である。
【0083】
(e)耐熱性
以下の条件で実施例2の有機薄膜トランジスタ素子を加熱したときに、移動度が低下するかについて検討した。得られた結果を以下の3段階で評価した。実用上、C評価であっても問題はないが、AまたはB評価であることが好ましく、A評価であることがより好ましい。
A:150℃、10分加熱で変化なし。
B:100℃、10分加熱で変化なしだが、150℃、10分加熱で低下あり。
C:100℃、10分加熱で低下あり。
【0084】
【表1】
【0085】
上記表1より、本発明の化合物は有機溶媒への溶解性が良好であり、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が高く、駆動電圧が低いことがわかった。そのため、本発明の化合物は非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。なお、前記一般式(1)のR23およびR24に相当する位置の置換基の炭素数の合計が好ましい範囲の上限値から外れる化合物14−2を用いた有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が少し低く、駆動電圧が少し高い値であったが、実用上問題ないものであった。
一方、前記一般式(1)の窒素原子にアルキル基が導入された比較化合物1〜3を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が低く、駆動電圧が高いものであった。さらに比較化合物2は有機溶媒への溶解性も低かった。
なお、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は半導体活性層の膜質が良好であり、素子耐熱性も良好であった。
【符号の説明】
【0086】
11 基板
12 電極
13 絶縁体層
14 半導体活性層(有機物層、有機半導体層)
15a、15b 電極
31 基板
32 電極
33 絶縁体層
34a、34b 電極
35 半導体活性層(有機物層、有機半導体層)
図1
図2