(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
2006年に発表された電磁界共鳴を利用してワイヤレス電力伝送(非接触電力伝送)を行う技術に端を発して、その技術開発が盛んに行われるようになっている。近年では、非接触で大電力送電を行うことを目的に、磁界方式を用いた三相交流による電力伝送に関する技術開発も行われている。
【0003】
磁界方式を用いた三相交流による電力伝送の一例として、特許文献1には移動中の移動体に対して給電が可能な非接触給電装置の技術が開示されている。ここでは、地上に固定された一次側コイルから、これに対向するように配置された移動体側の二次側コイルに電力伝送を行う構成としている。一次側コイル及び二次側コイルはともに、3突極形磁性体の磁極に三相巻線を施したもので、三相の磁極を移動体の移動軌跡に対して垂直の方向に配置している。
【0004】
一次側コイルは、3個の磁極を1組として複数組を移動軌跡に沿って所定のピッチで地上に設置している。一方、移動体に設置された二次コイルは、3個の磁極をそれぞれの相の高さが一次側コイルの対応する相の高さと等しくなるように配置している。一次側磁極と二次側磁極との間に数mmから十数mmの空隙を保つようにして、3つの磁極のそれぞれの間でエネルギー伝達を行えるようにしている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態における非接触電力伝送用装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。本発明の非接触電力伝送用装置は、多相交流方式で電力伝送を行うように構成されており、説明容易のために以下では三相交流方式で電力伝送する場合を例に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る非接触電力伝送用装置を、
図1、2を用いて説明する。
図1は、本実施形態の非接触電力伝送用装置100の構成を示すブロック図である。また
図2は、本実施形態の非接触電力伝送用装置100で用いられる電極の構成を示す平面図である。本実施形態の非接触電力伝送用装置100は、電力を送出する側の送電部101と、送電部101から非接触で受電する受電部102とを備えている。
【0022】
本実施形態の非接触電力伝送用装置100が例えば移動体への電力供給に用いられる場合には、送電部101が地上に設置され、受電部102が移動体に設置される。送電部101には電源部110、送電側共振用コイル部120、及び送電側電界結合部130aが設けられ、受電部102には受電側電界結合部130b、受電側共振用コイル部140、及び受電回路部150が設けられている。
【0023】
電源部110は、所定周波数の三相交流電源を供給するものであり、電流又は電圧の位相を120°ずつずらした3系統の単相交流111、112、113を組み合わせたものとなる。単相交流111、112、113のそれぞれの一方の端子(出力端子)は負荷側に接続され、それぞれの他方の端子は中性点114に接続されている。
【0024】
送電部101において、送電側共振用コイル部120は3つのコイル121、122、123を備えており、コイル121、122、123は電源部110の3系統の単相交流111、112、113の各出力端子にそれぞれ接続されている。また、送電側電界結合部130aは、コイル121、122、123のそれぞれに接続された送電用三相電極131a、132a、133aを備えている。
【0025】
同様に受電部102において、受電側電界結合部130bは、送電側電界結合部130aの送電用三相電極131a、132a、133aのそれぞれに対応させて受電用三相電極131b、132b、133bを備えている。また、受電側共振用コイル部140は、受電用三相電極131a、132a、133aのそれぞれに接続された3つのコイル141、142、143を備えている。さらに、受電回路部150は、受電した三相交流電源を負荷に供給可能な電源に変換するものであり、例えば整流回路151を備えて三相交流を直流に変換し、これをバッテリに供給して充電させるように構成することができる。
【0026】
送電部101に備えられた送電側電界結合部130aと受電部102に備えられた受電側電界結合部130bのそれぞれの電極面が平板状に形成されており、送電側電界結合部130aと受電側電界結合部130bとが、例えば所定のエアギャップを設けて非接触に対向するとき、送電側電界結合部130aの送電用三相電極131a、132a、133aと受電側電界結合部130bの受電用三相電極131b、132b、133bのそれぞれがコンデンサ131、132、133を形成する。送電側電界結合部130aと受電側電界結合部130bとを合わせて、以下では電界結合部130とする。
【0027】
本実施形態の非接触電力伝送用装置100では、電界結合部130において送電用電極131aと受電用電極131b、送電用電極132aと受電用電極132b、及び送電用電極133aと受電用電極133b、がそれぞれ対向してコンデンサ131、132、133を形成するとき、送電部101ではコンデンサ131、132、133とコイル121、122、123のそれぞれで共振回路が形成される。同様に、受電部102でもコンデンサ131、132、133とコイル141、142、143のそれぞれで共振回路が形成される。これにより、コンデンサ131、132、133を介して送電部101から受電部102に電界方式で非接触に電力伝送が行われる。
【0028】
本実施形態の非接触電力伝送用装置100は、電源部110から出力される三相交流電源がコンデンサ131、132、133を介して非接触で受電部102側に伝送される構成に加えて、三相交流電源の中性相も非接触で受電部102に電気的に接続されるように構成されている。すなわち、送電側電界結合部130aと受電側電界結合部130bのそれぞれの平板電極にさらに中性相電極134aと134bを設けており、送電側電界結合部130aと受電側電界結合部130bとが、例えば所定のエアギャップを設けて対向するとき、中性相電極134aと134bとの間でもコンデンサ134が形成されるようにしている。
【0029】
送電側電界結合部130aに設けられた中性相電極134aは電源部110の中性点114に接続され、受電側電界結合部130bに設けられた中性相電極134bは受電回路部150に接続されている。このように形成された中性相用線路は、電源と負荷とが平衡状態にあるときには電流が流れない。
【0030】
これに対し、受電側の負荷が変動したり、送電側電界結合部130aと受電側電界結合部130bとの間の距離の変動等があると、電力伝送が不平衡状態になることがある。本実施形態では、そのような場合には中性相用線路に電流が流れることで、安定した電力伝送を維持して伝送効率の低下を抑制することが可能となる。すなわち、三相交流の電力伝送が不平衡状態になって中性相用線路の電極134aと電極134bとの間に電位差が生じると、コンデンサ134を介して中性相用線路に電流が流れ、これにより安定した電力伝送が維持される。中性相用線路の送電部101側あるいは受電部102側のいずれか一方のみを接地(GND)しておくのがよく、とくに送電部101側で接地するのがよい。中性点の接地により、(i)1線地絡時に健全相の電圧の上昇を抑制し、線路や機器の安
全を確保する、(ii)保護継電器の動作を迅速に、かつ確実にして、事故範囲の波及拡大防止や設備損傷の局限化を実現する、等の効果を得ることができる。
【0031】
送電用三相電極131a〜133aと中性相電極134aを備える送電側電界結合部130a、及び受電用三相電極131b〜133bと中性相電極134bを備える受電側電界結合部130bの構成を、
図2を用いて説明する。同図(a)に示す構成は、中性相電極134a及び134bの外周に送電用三相電極131a〜133a及び受電用三相電極131b〜133bをそれぞれ配置している。送電用三相電極131a〜133a及び受電用三相電極131b〜133bは、それぞれ中性相電極134a及び134bを中心に、それぞれ120°ずつ回転させた位置に配置されている。三相電極の相対的な位置関係は、下記の別の実施形態でも同じである。
【0032】
一方、
図2(b)、(c)に示す構成では、送受電用三相電極の外周に中性相電極を配置している。同図(b)に示す構成では、同図(a)と同様に中性相電極134a−1及び134b−1の外周にそれぞれ送電用三相電極131a〜133a及び受電用三相電極131b〜133bを配置し、さらに送電用三相電極131a〜133a及び受電用三相電極131b〜133bの外周にそれぞれ中性相電極134a−2及び134b−2を配置している。中性相電極134a−1及び134a−2はいずれも電源部110の中性点114に接続されており、中性相電極134b−1及び134b−2はいずれも受電回路部150に接続されている。
【0033】
また
図2(c)に示す構成では、送電用三相電極131a〜133a及び受電用三相電極131b〜133bの中心に中性相電極を有さず、それぞれの外周にのみ中性相電極134a及び134bを配置している。上記説明のように、中性相電極134a及び134bは、送電用三相電極131a〜133a及び受電用三相電極131b〜133bの中心と外周のいずれか一方またはその両方に設けることができ、中性相電極134aと134bとが対向するように配置する。これにより、送電側電界結合部130aと受電側電界結合部130bとが、例えば所定のエアギャップを設けて非接触に対向するように配置されたとき、4線式三相交流による非接触電力伝送が可能となり、安定した電力伝送を行うことができる。
【0034】
なお、
図1に示す非接触電力伝送用装置100の構成では、中性相用線路にコンデンサ134のみが配置されているが、三相の電力伝送用線路と同様に、送電側共振用コイル部120及び受電側共振用コイル部140のそれぞれにコイルを配置して中性相用線路に接続してもよい。これにより、中性相用線路でも送電側と受電側で共振回路が形成され、不平衡状態のときは電界方式による非接触伝送が行われて中性相用線路に電流が流れる。
【0035】
上記のように、本実施形態では電界方式による非接触電力伝送を行うように構成されているが、これとの比較のために、磁界方式による三相交流非接触電力伝送の結線図の一例を
図3に示す。磁界方式の場合には、送電用三相コイル91a〜93aと受電用三相コイル91b〜93bとの間で磁界方式により非接触電力伝送されるが、中性相はコイルだけで非接触で電気的に接続させることができない。そのため、コイルを用いて中性相用線路を形成することができず、不平衡状態のときに電流が流れるようにすることができない。中性相用線路を形成して不平衡状態のときに電流が流れるようにするには、本実施形態と同様のコンデンサを配置する必要がある。
【0036】
本実施形態の非接触電力伝送用装置100は、コンデンサ134を介して中性相用線路を非接触で電気的に接続することにより4線式三相交流の非接触電力伝送を実現しており、以下のように動作する。電源部110から受電部102の受電回路部150に接続された負荷に安定して電力伝送が行われる平衡状態では、中性相用線路を流れる電流は零になる。これに対し、送電側電界結合部130aと受電側電界結合部130bとの間の距離が変化したり負荷の変動等により不平衡状態になったときには、中性相用線路に電流が流れる。このように、不平衡状態のときに中性相用線路に電流が流れるようにすることで、安定した電力伝送を維持することができ、電力伝送の効率低下を抑制することが可能となる。
【0037】
本実施形態の非接触電力伝送用装置100では、三相で電力伝送を行う構成としていることから、大電力の伝送が可能となる。単層の電力伝送では、有線の場合でもたとえば100V・15A程度までしか電力伝送できないが、三相の電力伝送では2kW以上の電力伝送が可能となり、大電力の伝送に好適である。また、三相の電力伝送で例えば単相の3倍の電力伝送を行う構成とするとき、装置の体積を単相の装置の3倍よりも小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る非接触電力伝送用装置を、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態の非接触電力伝送用装置で用いられる平板電極の構成を示す平面図である。本実施形態の非接触電力伝送用装置の送電側電界結合部230a及び受電側電界結合部230bに設けられる平板電極は、送電用三相電極231a〜233a及び受電用三相電極231b〜233bを、それぞれ2組以上備えている。そして、各相の電極を配置する角度(配置角)が少しずつずらされている。
【0039】
図4に示す送電側電界結合部230a及び受電側電界結合部230bでは、送電用三相電極231a〜233a及び受電用三相電極231b〜233bがそれぞれ3組配置されており、中心から外周側に向かって各符号にー1、−2、−3を付している。3組目の送電用三相電極231a−3、232a−3、233a−3及び3組目の受電用三相電極231b−3、232b−3、233b−3のさらに外周側に、中性相電極234a及び234bが配置されている。中性相電極234a及び234bの配置は、これに限定されず、例えば
図2(a)に示す第1実施形態のように、中心部に配置してもよい。
【0040】
本実施形態では、同相の送電用電極231a−1、231a−2、231a−3を、それぞれの配置角が相互に異なるようにずらして配置している。それに伴って、他の相の電極も同じ角度だけずらして配置されている。同様に、3組の受電用三相電極231b〜233bも、上記の送電用電極と対向して配置されるように、各組の配置角を変えて配置されている。
【0041】
本実施形態の非接触電力伝送用装置では、上記のように複数組の送電用三相電極及び受電用三相電極を、配置角をずらして配置している。これにより、送電側電界結合部230aと受電側電界結合部230bとを、例えば所定のエアギャップを設けて非接触に対向させたとき、対向面と平行な方向に位置ずれが生じた場合でも、複数組の電極のいずれかで効率よく電力伝送を行うことが可能となり、伝送特性の変動を低減させることができる。
【0042】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る非接触電力伝送用装置を、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態の非接触電力伝送用装置で用いられる平板電極の構成を示す平面図である。本実施形態の非接触電力伝送用装置の送電側電界結合部330a及び受電側電界結合部330bに設けられる平板電極は、送電用三相電極331a、332a、333aと中性相電極334a、及び受電用三相電極331b、332b、333bと中性相電極334bを、それぞれ2組以上備えている。
【0043】
図5(a)、(b)とも、送電用三相電極331a−1、332a−1、333a−1とその外周に配置された中性相電極334a−1、及び受電用三相電極331b−1、332b−1、333b−1とその外周に配置された中性相電極334b−1が1組目として中心部に設けられている。そして、2組目として中性相電極334a−1及び334b−1の外周に、送電用三相電極331a−2、332a−2、333a−2とその外周に配置された中性相電極334a−2、及び受電用三相電極331b−2、332b−2、333b−2とその外周に配置された中性相電極334b−2が設けられている。
【0044】
図5(a)では、1組目の送電用三相電極331a−1、332a−1、333a−1及び受電用三相電極331b−1、332b−1、333b−1と、2組目の送電用三相電極331a−2、332a−2、333a−2及び受電用三相電極331b−2、332b−2、333b−2とが、各相の配置角が同じとなるように配置されている。これに対し
図5(b)では、各相の配置角が異なるように配置されている。
【0045】
本実施形態の非接触電力伝送用装置では、上記の2組以上の電極を非接触で電気的に接続して形成される2組以上の非接触電力伝送用線路のそれぞれに、周波数の異なる三相交流電源を伝送させることが可能となっている。1組目の送電用三相電極331a−1、332a−1、333a−1と中性相電極334a−1、及び受電用三相電極331b−1、332b−1、333b−1と中性相電極334b−1を非接触で電気的に接続して形成される非接触電力伝送用線路に、周波数f1の三相交流電力を伝送させるとする。
【0046】
このとき、2組目の送電用三相電極331a−2、332a−2、333a−2と中性相電極334a−2、及び受電用三相電極331b−2、332b−2、333b−2と中性相電極334b−2を非接触で電気的に接続して形成される非接触電力伝送用線路には、周波数f1と異なる別の周波数f2の三相交流電力を伝送させることが可能となる。1組目の送電用三相電極331a−1、332a−1、333a−1及び受電用三相電極331b−1、332b−1、333b−1と、2組目の送電用三相電極331a−2、332a−2、333a−2及び受電用三相電極331b−2、332b−2、333b−2との間には、中性相電極334a−1及び中性相電極334b−1が配置されていることから、異なる周波数の三相交流電力を相互に干渉することなく伝送することが可能となっている。1組目の三相電極と2組目の三相電極の配置角の違いについては、異なる周波数の三相交流電力を伝送するうえで特に影響しない。
【0047】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る非接触電力伝送用装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における非接触電力伝送用装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。