(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、このような電気自動車の充電用コネクタには、充電中において、通電している状態の給電コネクタと受電コネクタを抜き取ることを防止する、ロック機構が設けられている。このロック機構がないと、通電している状態で、給電コネクタを受電コネクタから抜き取ることができるため、好ましくない。
【0007】
図15は、従来の給電コネクタ100を示す概略図である。
図15(a)に示すように、給電コネクタ100は、把持部材103、ケース109、コネクタ本体111等から構成される。コネクタ本体111は、把持部材103の先端に設けられる。把持部材103およびコネクタ本体111は、ケース109に対して摺動可能である。作業者は取手105を手に持った状態でコネクタ本体111を、図示を省略した受電コネクタに押し付けることで、コネクタ接続作業を行う。
【0008】
ケース109には凹部119が形成される。また、把持部材103には、ピン113によって、ロックレバー107が回動可能に固定される。ロックレバー107の一方の端部は、把持部材103の後方から露出し、作業者が操作することができる。また、ロックレバー107の他方の端部には、ロックピン107aが形成される。通常の状態では、ロックピン107aは、凹部119には陥入せず、ロックレバー107の後端は、下方に押し下げられた状態となる。
【0009】
この状態から、
図15(b)に示すように、コネクタ本体111を受電コネクタに押し込むと(図中矢印X方向)、ケース109に対して把持部材103が移動する。したがって、コネクタ本体111がケース109の前方から突出し、受電側のコネクタと接続される。なお、この際、ケース109は、図示を省略したロック機構によって受電側のコネクタに固定される。
【0010】
この際、ケース109の相対的な移動によって、ロックピン107aが凹部119の位置に移動する。このため、ロックレバー107がピン113を基点に回転し(図中矢印Y方向)、ロックピン107aが凹部119に嵌まりこむ。
【0011】
この状態で、把持部材103に固定された電磁ソレノイド115を作動させる(図中矢印Z方向)。これにより、ロックレバー107の突起が電磁ソレノイド115のプランジャと接触し、ロックレバー107の回動が規制される。したがって、ロックピン107aが凹部119に押しつけられた状態で保持される。この状態において、前述したロック機構(図示省略)によって、ケースが受電コネクタ側に固定されるため、コネクタ本体111が、ケース109に対して固定され、コネクタ本体111が受電コネクタから抜けることがない。
【0012】
しかしながら、特に寒冷地等において、電磁ソレノイド115が凍結する場合や故障により、電磁ソレノイド115が動作しなくなる場合がある。例えば、通電中に電磁ソレノイド115に異常が生じると、充電を完了したのにもかかわらず、給電コネクタ100を受電側のコネクタから抜き取ることができなくなる。したがって、ロックレバー107によるロック状態を解除するため、給電コネクタ100をばらして、内部の電磁ソレノイド115や、ロックレバー107等を外す必要がある。しかし、このような作業は、作業工数を要する。
【0013】
また、給電コネクタ100の内部を分解してロックを解除するためには、作業スペースが必要となる。例えば、通常、電気自動車側の受電コネクタには、開閉蓋が設けられる。しかし、給電コネクタ100内部の構造によっては、開閉蓋によって作業スペースが確保できない場合がある。したがって、ロックレバー107を解除することが困難な場合がある。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、異常時にはロック機構を容易に解除することが可能な給電コネクタ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の目的を達成するために第1の発明は、 自動車用の給電コネクタであって、コネクタ本体と、
前記コネクタ本体を収容するケースと、前記ケースに取り付けられる把持部材と、前記把持部材に対して前記ケースの移動を制限するロックレバーと、前記ロックレバー
を貫通するピンで前記ロックレバーに連結されたリンク部材と、前記把持部材に固定された電磁ソレノイドと、を具備し、前記リンク部材には、前記電磁ソレノイドのプランジャが接続され、
前記ロックレバーが解除された状態において、前記ケースに対して、前記コネクタ本体および前記把持部材が、略同一軸方向に摺動可能であり、前記ケースに対して前記把持部材を摺動させて、前記ロックレバーを前記ケースにロックした状態で前記電磁ソレノイドを作動させることで、前記リンク部材によって前記ロックレバーが前記ケースにロックされた状態で保持され、前記把持部材にはカバーが設けられ、前記カバーをあけることで、前記ロックレバーを貫通する
前記ピンを抜き取ることが可能であることを特徴とする給電コネクタである。
【0016】
前記ロックレバーを貫通する前記ピンは、前記把持部材の両側のいずれの方向からも抜き取ることが可能であることが望ましい。前記ピンの両側には、前記ピンの抜け止め板が設けられることが望ましい。前記抜け止め板は、前記カバーの内面に一体で形成されてもよい。前記把持部材には固定部材によってカバーが固定され、前記把持部材の後方から、前記固定部材による前記カバーの固定解除と、前記カバーの取り外しが可能であってもよい。
【0017】
第1の発明によれば、ロックレバーと電磁ソレノイドとを連結するリンク部材に設けられるピンを、給電コネクタの両側から抜き取ることが可能である。したがって、受電コネクタ側の開閉蓋がいずれの側にあっても、作業スペースのある側からピンを抜くことができる。したがって、電磁ソレノイドの異常時においても、確実にピンを抜いて、ロックを解除することができる。このため、給電コネクタを受電コネクタから抜き取ることができる。また、把持部材にはカバーが設けられるため、ピンの抜き取り作業性にも優れる。
【0018】
また、本発明において、ピンを両側から抜き取ることを可能にするため、ピンには、頭部(フランジ部)などの抜け止め機構を形成することができない。これに対し、抜け止め板をピンの両側に配置することで、使用中に誤ってピンが抜け落ちることを防止することができる。
【0019】
この場合において、抜け止め板がカバーに一体で形成されれば、カバーをあけた際に、抜け止め板がカバーとともに撤去されるため、容易にピンを抜き取ることが可能である。
【0020】
第2の発明は、コネクタ本体と、前記コネクタ本体を収容するケースと、前記ケースに取り付けられる把持部材と、前記把持部材に対して前記ケースの移動を制限するロックレバーと前記ロックレバーに連結されたリンク部材と、前記把持部材
を貫通するピンで前記ロックレバーに固定された電磁ソレノイドと、を具備する自動車用の給電コネクタにおけるロック解除方法であって、前記リンク部材には、前記電磁ソレノイドのプランジャが接続され、前記ロックレバーが解除された状態において、前記ケースに対して、前記コネクタ本体および前記把持部材が、略同一軸方向に摺動可能であり、前記ケースに対して前記把持部材を摺動させて、前記ロックレバーを前記ケースにロックした状態で前記電磁ソレノイドを作動させることで、前記リンク部材によって前記ロックレバーが前記ケースにロックされた状態に対し、前記把持部材に設けられたカバーをあけ、前記リンク部材を貫通する
前記ピンを、抜き取ることを特徴とする給電コネクタのロック解除方法である。
【0021】
第2の発明によれば、ロックレバーと電磁ソレノイドとを連結するリンク部材に設けられるピンを、給電コネクタの両側から抜き取ることが可能である。したがって、受電コネクタ側の開閉蓋がいずれの側にあっても、容易にピンを抜くことができる。したがって、電磁ソレノイドの異常時において、確実にピンを抜いて、ロックを解除することができる。このため、給電コネクタを受電コネクタから抜き取ることができる。また、把持部材にはカバーが設けられるため、ピンの抜き取り作業性にも優れる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、異常時にはロック機構を容易に解除することが可能な給電コネクタ等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、給電コネクタ1を示す概略図であり、
図1(a)は側面図、
図1(b)は側面断面図である。なお、本発明では、
図1に示す状態を通常状態と称する。また、以下の図においては、ケーブル等の図示を省略する。給電コネクタ1は、主に把持部材3、ケース9、コネクタ本体11を備える。
【0025】
図1(a)、
図1(b)に示すように、把持部材3は、一方の端部(後方)に取手5を有する。取手5は、作業者が給電コネクタ1を扱う際に手に持つ部分である。ここで、取手5は、コネクタ本体11の中心軸の延長線上に少なくとも取手5の一部が配置されるように形成される。このため、把持部材3を押し込んだ際に、コネクタ本体11を接続対象に対してまっすぐに力をかけることができる。このため、給電コネクタ1は取り扱い性に優れる。
【0026】
把持部材3の内部は各種構造が収容可能である。把持部材3の他方の端部(前方)にはケース9が設けられる。把持部材3の前端部近傍は筒状であり、ケース9の一部(後部)は、把持部材3の内部に収容される。把持部材3は、ケース9に対して前後に摺動可能である。
【0027】
ケース9は筒状部材であり、ケース9の前端部には、コネクタ本体11が収容される。コネクタ本体11は、ケース9に対して前後に摺動可能である。なお、ケース9に対する、把持部材3、コネクタ本体11のそれぞれの摺動部には、図示を省略したガイド機構や、摺動範囲を規制するストッパを設けてもよい。
【0028】
ケース9の内部には、アーム13が設けられる。アーム13は、一方の端部近傍がピン23aによってケース9に回動可能に取り付けられる。アーム13の他方の端部近傍は、把持部材3と接合された連結バー16と連結部15aで連結される。連結部15aでは、アーム13に形成された長穴と連結バー16に形成されたピン等によって、回動可能に両者を連結する。
【0029】
アーム13の略中央部(ピン23aと連結部15aとの間)は、コネクタ本体11と連結部15bで連結される。連結部15bは連結部15aと同様の構成である。すなわち、アーム13が回転することで、アーム13の回動に伴い、コネクタ本体11および把持部材3がケース9に対して直線上に移動可能である。
【0030】
ケース9の内部には、ロック部材17が設けられる。ロック部材17はピン23bによってケース9に回動可能に取り付けられる。ロック部材17の前方側の端部には、ロックピン17aが上方に向けて形成される。ロックピン17aは、ケース9に形成された孔の位置に配置される。
【0031】
ロック部材17の後方側の端部には、下方に向けて嵌合部17bが設けられる。嵌合部17bは嵌合部21と嵌合可能な凸形状である。嵌合部21は、把持部材3側に固定される。通常状態では、嵌合部17b、21は、互いに嵌合せず、嵌合部17bの突起が嵌合部21の突起上に乗った状態となる。また、この状態では、嵌合部17bが嵌合部21によって上方に押し上げられているため、ピン23bを介して、ロックピン17aがケース9(ケース9に設けられた孔)から突出せず、ケース9内に保持される。
【0032】
把持部材3内部には、操作部であるロックレバー7が設けられる。ロックレバー7はピン23cによって把持部材3に回動可能に取り付けられる。ロックレバー7の後方側の端部は把持部材3より外部に突出し、外部から作業者がロックレバー7を操作することができる。ロックレバー7の前方には、ロックピン7aが下方に向けて設けられる。ロックピン7aは、ケース9の一部と接触して、通常は押し上げられた状態となる。ケース9は、通常状態でロックピン7aと接触する部位の前方側に、ロックピン7aが嵌ることが可能な凹部19が設けられる。
【0033】
また、ロックレバー7の後端側近傍には、ばね8aが設けられる。ばね8aは、ロックレバー7の後端近傍を上方に押圧する。すなわち、ロックピン7aは、ピン23cを支点として下方に押し付けられる。
【0034】
ロックレバー7には、リンク部材10a、10bを介して電磁ソレノイド22が接続される。
図2は、ロックレバー7近傍の拡大図であり、
図3は
図2のA部におけるB−B線断面図である。ロックレバー7のピン23cよりも後方側には、ピン23dによって回動可能にリンク部材10aの一方の端部が接続される。
【0035】
図3に示すように、ピン23dは、棒状部材であって、両側の端部が拡径されることなく、全体が略同一径で形成される。したがって、ロックレバー7とリンク部材10aを貫通するピン23dには、抜け止め機構がそれ自体に形成されない。したがって、ロックレバー7の両側には、ピン23dが抜けることを防止する抜け止め板25がねじ27で固定される。
【0036】
なお、ロックレバー7の、ピン23dの貫通部の周囲には、凹部29、31が形成される。ピン23dの長さは、抜け止め板25の間隔(図ではロックレバー7の幅)よりもわずかに短い。また、リンク部材10aの厚みも考慮して、抜け止め板25を外した際に、いずれの方向にもピン23dの端部の所定長さが露出するように、ピン23dの長さおよび凹部29、31の深さが設定される。
【0037】
図2に示すように、リンク部材10aの他方の端部は、連結部15cにより回動可能にリンク部材10bの一方の端部と接続される。さらに、リンク部材10bの他方の端部は、把持部材3にピン23eによって回動可能に接続される。なお、通常状態においては、リンク部材10a、10bは、連結部15cで前方側に屈曲するように互いに角度を持って配置される。
【0038】
連結部15c近傍には、電磁ソレノイド22が把持部材3に固定される。電磁ソレノイド22は内部をプランジャ22aが貫通し、電磁ソレノイド22を作動することで、プランジャ22aを動作させることができる。プランジャ22aの端部は連結部15cに接続される。プランジャ22aは、通常時において、リンク部材10a、10bの屈曲部側(前方)から後方に向けて接続される。
【0039】
電磁ソレノイド22には、ばね8bが設けられる。ばね8bは、プランジャ22aが引き戻される方向にプランジャ22aに力を付与する。したがって、通常時には、プランジャ22aは、ばね8bによって前方(図中左側)に引き戻され、これによって、連結部15cも前方に引っ張られる。リンク部材10a、10bは、連結部15cが前方に引っ張られることで、互いの角度が小さくなる方向に力を受ける。この際、ピン23eが把持部材3に固定されているため、ピン23dは下方に引っ張られた状態となる。
【0040】
また、
図1に示すように、把持部材3のロックレバー7が配置される部位には、着脱可能なカバー3aが設けられる。カバー3aは、把持部材3の本体に対して、後方(図中右側)からボルト等で固定されている。
図4は、カバー3aをあけた状態を示す側面図である。カバー3aをあけることで、ロックレバー7とリンク部材10aとの連結部近傍が外部に露出する。具体的には、抜け止め板25を露出させることができる。
【0041】
次に、給電コネクタ1を動作させた状態を説明する。
図5は把持部材3を移動させた状態の給電コネクタ1を示す図で、
図5(a)は側面図、
図5(b)は側面断面図である。
図5(b)に示すように、把持部材3をケース9に対して前方に移動させると(図中矢印C方向)、把持部材3(連結バー16)と接合された連結部15aが前方に押し込まれる。アーム13は、連結部15aが前方に移動するため、ピン23aを回転軸として回動する(図中矢印D方向)。アーム13が回動することで、アーム13に連結部15bで連結されたコネクタ本体11は把持部材3と同一方向に移動する(図中矢印E方向)。
【0042】
なお、アーム13に対する連結位置が把持部材3とコネクタ本体11とで異なるため、ケース9に対する把持部材3の移動距離とコネクタ本体11の移動距離とは異なる。具体的には、ピン23aからの連結部15a、15bそれぞれの距離の比が2:1であれば、把持部材3のケース9に対する移動距離を2とすると、コネクタ本体11が1の距離だけ移動する。すなわち、アーム13等の機構が減速機構として機能する。減速機構を設けることで、小さな力でコネクタの挿抜作業を行うことができる。
【0043】
また、把持部材3がケース9に対して前方に移動することで、嵌合部17bと嵌合部21とが互いに噛み合い嵌合する。このため、ロック部材17がピン23bを回転軸として回転する。すなわち、嵌合部17b側が下方に押し下げられることで、ロック部材17が回動し、他方の端部のロックピン17aが上方に押し上げられる。このため、ロックピン17aが孔によってケース9の外方に突出する(図中矢印G方向)。なお、ロック部材17は、常に
図5に示す状態(嵌合部17bが押し下げられる状態)に戻ろうとするようにばね等を形成してもよい。
【0044】
また、把持部材3がケース9に対して前方に移動することで、ロックレバー7のロックピン7aが凹部19方向に移動する。この際、ロックレバー7の後端近傍は、ばね8aによって上方に押し上げられている(図中矢印F方向)。このため、ロックレバー7がピン23cを回転軸として回動する。したがって、ロックピン7aは凹部19に嵌り込む。
【0045】
なお、ケース9の凹部19近傍には、ロックピン7aの位置を検知する検知手段を設けても良い。このようにすることで、ロックピン7aが確実に凹部19に嵌り込んだことを検知することができる。
【0046】
ロックレバー7が動作すると、リンク部材10a、10bを介して電磁ソレノイド22に力が伝達される。
図6は、ロックレバー7近傍の拡大図である。前述の通り、ロックレバー7には、ピン23dによってリンク部材10aが接続される。したがって、ロックレバー7が上方に移動することで、リンク部材10aが上方に引き上げられる(図中矢印J方向)。
【0047】
この際、リンク部材10bの下端は、ピン23eによって把持部材3に固定されている。このため、ロックレバー7の移動に伴い、リンク部材10a、10bは、互いの角度が広がる方向に動作する。すなわち、連結部15cが後方に移動する。
【0048】
この際、連結部15cに接続されたプランジャ22aが、ばね8bの引き戻し力に対抗して、後方側(電磁ソレノイド22の本体から突出する方向)に移動する(図中矢印K方向)。したがって、プランジャ22aが電磁ソレノイド22の本体に対して凍結等によって移動ができないような場合には、連結部15cが移動することができない。したがって、このような場合には、ロックレバー7がピン23cの周囲に回動することができず、ロックピン7aが凹部19に嵌り込んだ、
図5の状態にすることができない。このため、プランジャ22aが可動な状態であるかどうかを作業者が把握することができる。
【0049】
プランジャ22aが可動状態であれば、ロックレバー7が動作することで、ロックピン7aが凹部19に嵌り込む。したがって、把持部材3は、ケース9に対する移動がロックされる。すなわち、ロックレバー7は把持部材3(およびコネクタ本体11)がケース9に対して移動することをロックするロック手段としての機能を奏する。また、ロックレバー7を操作する(ロックレバー7の外部の端部を押し下げる)ことで、当該ロックを解除する解除機構として機能する。したがって、コネクタの接続状態を確実に保持し、また、容易に解除することができる。
【0050】
なお、把持部材3(またはコネクタ本体11)とケース9との摺動部には、平行リンクを用いてもよい。平行リンクを用いることで、把持部材3(またはコネクタ本体11)とケース9との摺動時にガタつきが生じにくく、移動範囲も規制可能である。
【0051】
次に、給電コネクタ1の使用方法について説明する。
図7〜
図10は、給電コネクタ1を受電コネクタ33と接続する工程を示す図である。まず、
図7に示すように、通常状態の給電コネクタ1を、接続対象となる受電コネクタ33に対向させる。具体的には、ケース9の先端を受電コネクタ側に挿入する。なお、受電コネクタ33内部にはコネクタ本体37が収容されている。この状態では、コネクタ本体11、37の互いの雄雌端子がまだ接続状態とはならないようにわずかにギャップを有した配置となる。
【0052】
ケース9を受電コネクタ33側に配置した状態で、ロックピン17aに対応する位置には受電コネクタ33側の内面には係止部である凹部35が形成される。ロックピン17aと凹部35の位置や、前述した雄雌端子の位置を合わせるために、ケース9の外面に、受電コネクタ33側との位置決めを行うガイド等を形成してもよい。
【0053】
次に、
図8に示すように、給電コネクタ1の把持部材3を受電コネクタ33側に押し込む(図中矢印C方向)と、ケース9の段差が受電コネクタ33の周縁部(凹部35の前方の壁部)に当たるため、それ以上押し込むことができない。したがって、連結バー16が、前方に移動する(図中矢印C方向)。
【0054】
このため、
図9に示すように、把持部材3をケース9に対して前方に移動させることができる。この際、把持部材3の移動に伴い、コネクタ本体11がケース9に対して前方に移動する(図中矢印E方向)。したがって、コネクタ本体11がケース9前方より突出し、受電コネクタ側のコネクタ本体37と接続される。
【0055】
ここで、ケース9に対する把持部材3とコネクタ本体11の移動距離の比が2:1の場合、コネクタ本体11とコネクタ本体37とが接続される接続代に対して2倍の移動距離で把持部材3を押し込むことで、コネクタ本体11をコネクタ同士が接続可能な距離だけ移動させることができる。すなわち、コネクタ同士の接続に要する力(すなわち接続抵抗)の半分の力で把持部材3を押し込めば、コネクタ同士を接続させることができる。なお、減速機構の減速比は、接続抵抗や作業性を考慮して適宜設定される。
【0056】
また、
図9に示す状態では、前述の通り、ロックピン17aが凹部35に嵌り込む。このため、受電コネクタ33と給電コネクタ1とが接続された状態でロックされる。また、この状態では、ロックレバー7の端部のロックピン7aが凹部19に嵌り込む。このため、把持部材3がケース9に対して移動することがロックされる。したがって、図示を省略したケーブル等が引っ張られたとしても、給電コネクタ1が容易に受電コネクタ33から外れることがない。
【0057】
ロックピン7aが凹部19に嵌り込むと、接続されたコネクタに通電を行うことができるようになる。
【0058】
コネクタの通電を開始すると、
図10に示すように電磁ソレノイド22が作動する。電磁ソレノイド22は、通電中は、常にプランジャ22aを連結部15c方向にばね8bに対抗して押し付ける(図中矢印L方向)。プランジャ22aの動作によって、リンク部材10a、10bは、互いに開く方向に動作する。したがって、リンク部材10aの上端部(ピン23d)が上方に押し上げられる(図中矢印M方向)。したがって、通電中にロックレバー7を解除操作することができなくなる。このため、作業者は、通電中に、ロックレバー7のロックを解除することができず、通電中にコネクタの接続が引き抜かれることがない。
【0059】
なお、給電コネクタ1を外す場合には、通電を停止することで、電磁ソレノイド22の作動を停止する。電磁ソレノイド22が停止すると、ばね8bによって、プランジャ22aが前方に引き戻される。この状態で、ロックレバー7の端部を押し下げることでロックピン7aを押し上げることができる。ロックピン7aが凹部19から外れた後、把持部材3を引き戻すことで、嵌合部17bが嵌合部21上に移動し、これによりロックピン17aによるロックが解除される。このため、容易に給電コネクタ1を取り外すことができる。
【0060】
ここで、通電中に電磁ソレノイド22に異常が生じる場合がある。例えば、凍結や故障によって、電磁ソレノイド22が動作しなくなる場合がある。前述のように、給電コネクタ1を使用する前に、電磁ソレノイド22に異常をきたす場合には、そもそもロックレバー7が動作しない。一方、一度通電を開始した後に、電磁ソレノイド22に異常をきたすと、ロックレバー7がロック状態で動作しなくなるため、ロックを解除することができなくなる。したがって、通電を終了しても、給電コネクタ1を受電コネクタ33から抜き取ることができなくなる。この場合には、機械的に、ロックを解除する必要がある。
【0061】
図11(a)は、給電コネクタ1を車体34の受電コネクタ33に接続した状態を示す平面図である。車体34に形成される受電コネクタ33は、通常、蓋38によって保護される。蓋38をあけることで、内部の受電コネクタ33を露出させて、給電コネクタ1を接続することができる。図に示す例では、給電コネクタ1を接続した状態において、給電コネクタ1の図中左側に開かれた蓋38が配置する。
【0062】
この状態において、ロックレバー7が動作しなくなった場合には、まず、カバー3aを取り外す。このようにすることで、ロックレバー7とリンク部材10aとの連結部近傍を露出させることができる。
図11(b)は、
図3に対応する図である。
【0063】
図11(b)に示すように、図中左側には、蓋38が位置するため、作業スペースがない。したがって、この場合には、右側から抜け止め板25をはずし、ピン23dの端部近傍を露出させる。この状態で、ピン23dを抜き取ることで、ロックレバー7とリンク部材10aとの連結を外すことができる。したがって、ロックレバー7は、電磁ソレノイド22とは無関係に動作させることができる。すなわち、ロックを解除して、給電コネクタ1を受電コネクタ33から抜き取ることができる。なお、ロックレバー7には凹部29が形成されるため、ピン23dを容易に抜き取ることができる。
【0064】
また、
図12(a)に示すように、車体34によっては、蓋38が給電コネクタ1の図中右側に位置する場合がある。この場合には、
図12(b)に示すように、左側から抜け止め板25をはずし、ピン23dの端部近傍を露出させればよい。この状態で、ピン23dを抜き取ることで、ロックレバー7とリンク部材10aとの連結を外すことができる。なお、ロックレバー7には凹部31が形成されるため、ピン23dを容易に抜き取ることができる。
【0065】
なお、本発明では、給電コネクタ1の上方に作業スペースがない状態でも、電磁ソレノイド22の異常に対応することができる。
図13は、カバー3aを取り外す状態を示す図である。
図13(a)に示すように、給電コネクタ1の上方に車両側カバー39などが位置するような場合でも、固定部材であるボルト4は、給電コネクタ1の後方から把持部材3に締め込まれるため、給電コネクタ1(把持部材3)の後方からボルト4を抜き取ることができる。したがって、ボルト4や工具が、車両側カバー39と干渉することがない。
【0066】
ここで、給電コネクタ1(把持部材3)の後方とは、給電コネクタ1の接続方向(図中左側)とは略逆側であって、給電コネクタ1の上部(または下部や両側方)に障害物が近接している場合でも、ボルト等を抜き取る作業を行うことが可能な方向(図中右方向)である。
【0067】
次に、
図13(b)に示すように、カバー3aを取り外す。カバー3aも、給電コネクタ1(把持部材3)の後方から取り外すことができる。したがって、カバー3aが車両側カバー39と干渉することがない。なお、カバー3aを固定する固定部材としては、ボルト4でなくても良く、給電コネクタ1(把持部材3)の後方からカバー3aの固定を解除することが可能であれば、他の固定部材を適用することもできる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の給電コネクタ1によれば、大きな力を要せず、容易に受電コネクタ33と接続することができる。特に、給電コネクタ1は、作業者が行う把持部材3の押し込み動作が、コネクタ本体11の接続方向と一致するため、感覚的に作業者が接続作業を容易に把握することができる。
【0069】
また、把持部材3の一部にカバー3aを設け、カバー3aをあけることでロックレバー7とリンク部材10aの連結部を露出させることができる。したがって、電磁ソレノイド22に異常があった場合にも、ピン23dを容易に取り外し、ロックレバー7によるロックを、緊急的に解除させることができる。
【0070】
この際、給電コネクタ1の上方に車両側カバー39が近接しているような場合でも、カバー3aを取り外す作業や工具が、車両側カバー39などと干渉することがない。
【0071】
また、ピン23dは、端部に頭部やフランジ部等を有さない棒状であるため、いずれの側からも抜き取ることが可能である。したがって、車両の蓋38の配置によらず、ピン23dを容易に抜き取ることができる。また、ピン23dの両側に抜け止め板25を配置することで、使用中にピン23dが抜け落ちることがない。
【0072】
なお、本実施の形態において、抜け止め板25は、ロックレバー7に対してねじ27によって固定したが、本発明はこれに限られない。ピン23dが両側から抜き取ることができ、かつ、使用中には抜け落ちないようにできれば、抜け止め板25に変えて、他の構造を用いても良い。
【0073】
図14(a)は、ロックレバー7とリンク部材10aとの連結部近傍の正面側から見た断面図である。
図14(a)に示すように、カバー3aの内面(下面)に、リブ状に抜け止め板25aを形成しても良い。この場合には、カバー3aと抜け止め板25aとを一体で形成することができる。このようにすることで、
図14(b)に示すように、カバー3aを取り外すと、抜け止め板25aも同時に撤去されるため、抜け止め板25aを取り外す作業が不要となる。このようにしても、ピン23dを両側のいずれにも抜き取ることが可能である。
【0074】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
例えば、前述した実施形態においては、ロックレバー7によるロックを解除するために、ロックレバー7とリンク部材10aとの連結部のピン23dを抜き取る例について説明したが、ロックレバー7自体のロックを解除可能であれば、異常時に抜き取ることが可能なピンは、他のピンであってもよい。