(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972885
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ホットワイヤ化学気相堆積プロセスにおけるタンタルフィラメントの寿命を向上させるための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20160804BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/44 A
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-535077(P2013-535077)
(86)(22)【出願日】2011年10月20日
(65)【公表番号】特表2013-546178(P2013-546178A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】US2011057022
(87)【国際公開番号】WO2012054688
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】13/267,309
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/405,670
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】タクール, ビピン
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス クルーズ, ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ケラー, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】グジャー, ヴィカース
(72)【発明者】
【氏名】パティル, ラビンドラ ジャヌ
【審査官】
正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−270578(JP,A)
【文献】
特開2000−269142(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0261348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットワイヤ化学気相堆積(HWCVD)ツールを操作する方法であって、
HWCVDツールのプロセスチャンバ内に配置されたタンタルフィラメントを包み込むのに十分な水素ガス(H2)を、前記プロセスチャンバから残留酸素の除去を促進するように選択された第1の期間、供給して前記タンタルフィラメントを事前調整することと、
前記第1の期間の後に、前記タンタルフィラメントに電流を流して、前記タンタルフィラメントの温度を、続いてCVD堆積プロセスが行われる温度である第1の温度に上昇させることと
を含む方法。
【請求項2】
前記水素ガスを供給することが、水素ガスおよび不活性キャリアガスを供給することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホットワイヤ化学気相堆積(HWCVD)ツールを操作する方法であって、
HWCVDツールのプロセスチャンバ内に配置されたタンタルフィラメントを、前記タンタルフィラメントを包み込むのに十分な水素ガス(H2)含有雰囲気中で、前記プロセスチャンバから残留酸素の除去をするように選択された第1の期間、事前調整することと、
前記タンタルフィラメントを事前調整した後に、前記タンタルフィラメントに電流を流して、前記タンタルフィラメントの温度を、続いてCVD堆積プロセスが行われる温度である第1の温度に上昇させることと、
前記タンタルフィラメントが前記第1の温度となった後に、プロセスチャンバにプロセスガスを供給することと、
前記プロセスガスから分解した種を使用して、基板上に材料を堆積させることと
を含む方法。
【請求項4】
前記水素ガス(H2)含有雰囲気中で前記タンタルフィラメントを事前調整することが、水素ガスおよび不活性キャリアガスを供給することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性キャリアガスが、窒素、アルゴンまたはヘリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセスガスを供給することが、前記水素ガス(H2)含有雰囲気を維持するために供給される水素ガス流を停止することをさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセスガスが、シラン(SiH4)、水素(H2)、ホスフィン(PH3)またはジボラン(B2H6)のうちの1つを含む、請求項3、4または6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板への材料の堆積の完了後、前記タンタルフィラメントへの電流の流れを停止することと、
続いて、水素ガス(H2)含有雰囲気中で前記タンタルフィラメントを事前調整することと、
前記タンタルフィラメントを事前調整した後に、前記タンタルフィラメントに電流を流して、前記タンタルフィラメントの温度を第2の温度に上昇させることと、
前記タンタルフィラメントが第2の温度となった後に、前記プロセスチャンバに第2のプロセスガスを供給することと、
前記第2のプロセスガスから分解した種を使用して、材料の堆積の完了した前記基板を交換したものである第2の基板上に材料を堆積させることと
をさらに含む、請求項3、4、6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記タンタルフィラメントを前記第一の温度に維持しながら、前記チャンバ内の基板を第2の基板と交換することと、
前記第2の基板が設置された後に、前記プロセスチャンバに第2のプロセスガスを供給することと、
前記第2のプロセスガスから分解した種を使用して、前記第2の基板上に材料を堆積させることと
をさらに含む、請求項3、4または6ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の温度が、1500℃から2400℃である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセスチャンバ内の圧力が、1ミリトールに維持される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の期間が、5秒から1800秒の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
実行されると、HWCVDツール内で、請求項1から12に記載の方法のいずれか一項を含む方法が行われるようにする命令が格納されたコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、ホットワイヤ化学気相堆積(HWCVD)プロセスを使用して基板上に材料を堆積させるための方法、より具体的には、そのようなプロセスにおいて使用されるフィラメントの寿命を向上させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HWCVDプロセスにおいては、所望の材料が堆積される基板に近接したプロセスチャンバ内で、一又は複数の前駆体ガスが高温で熱分解される。熱分解反応は、プロセスチャンバ内で、プロセスチャンバ内に支持される1つまたは複数のワイヤまたはフィラメントにより促進され、プロセスチャンバは、例えばフィラメントに電流を通電することにより、所望の温度に加熱され得る。
【0003】
異なるフィラメント材料を使用すると、堆積フィルムの品質に影響することがある。例えば、HWCVD用途においてタンタルフィラメントを使用すると、タングステンフィラメントを使用した場合と比較して、より良好な品質の堆積フィルムを得ることができる。しかし、残念ながら、本発明者らは、タンタルフィラメントが、ある特定の操作状況下において、より酸化されやすくなり得ることを見出した。これは、望ましくないことに、フィラメントを流れる電流の低下およびフィラメント温度の低下、そして最終的にはフィラメントの破損をもたらすことがある。本発明者らは、さらに、タンタルフィラメントの斯かる性能の低下および破損が急速に生じることも見出した。このように、タンタルフィラメントは、長期間使用することができない。
【0004】
したがって、本発明者らは、HWCVDプロセスを使用してフィルムを堆積させるための改善された方法を提供した。
【発明の概要】
【0005】
本明細書においては、ホットワイヤ化学気相堆積(HWCVD)プロセスを使用してフィルムを堆積させるための方法が提供される。いくつかの実施形態において、HWCVDツールを操作する方法は、HWCVDツールのプロセスチャンバ内に配置されたフィラメントに、第1の期間、水素ガス(H
2)を供給することと、第1の期間の後に、フィラメントに電流を流して、フィラメントの温度を第1の温度に上昇させることとを含んでもよい。
【0006】
いくつかの実施形態において、HWCVDツールを操作する方法は、水素ガス(H
2)含有雰囲気中で、HWCVDツールのプロセスチャンバ内に配置されたフィラメントを事前調整することと、フィラメントを事前調整した後に、フィラメントに電流を流して、フィラメントの温度を第1の温度に上昇させることと、フィラメントが第1の温度となった後に、プロセスチャンバにプロセスガスを供給することと、プロセスガスから分解した種を使用して、基板上に材料を堆積させることとを含んでもよい。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、実行されると、HWCVDツール内で、本明細書に開示される実施形態のいずれかを含んでもよい方法が行われるようにする命令が格納されたコンピュータ可読媒体として具現化されてもよい。
【0008】
本発明の他のおよび別の実施形態について、以下に説明する。
【0009】
以上で簡潔に要約され、以下でより詳細に説明される本発明の実施形態は、添付の図面に示される本発明の例示的実施形態を参照することにより理解することができる。しかしながら、本発明は他の同等に効果的な実施形態を許容し得るため、添付の図面は、本発明の典型的実施形態のみを例示するものであり、したがって本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態によるホットワイヤ化学気相堆積(HWCVD)ツールを操作する方法のフローチャートである。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態によるHWCVDツールを操作する方法のフローチャートである。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態によるHWCVDプロセスチャンバの概略側面図である。
【
図4】経時的に様々な雰囲気中で加熱されるタンタルフィラメントの温度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を容易とするために、可能な場合は、複数の図に共通する同一要素を指し示すために、同一の参照番号を使用している。図は縮尺通りに描かれておらず、明確にするために単純化されている場合がある。一実施形態の要素および特徴は、さらなる列挙がなくても、他の実施形態に有利となるように組み込むことができることが意図されている。
【0012】
本発明の実施形態は、ホットワイヤ化学気相堆積(HWCVD)プロセスにおけるタンタルフィラメントの急速な酸化を、有利に排除または低減することができ、それによりフィラメントの寿命を大幅に向上させ、HWCVDプロセスにおけるタンタルフィラメントの長期的使用を促進する、HWCVDプロセス技術を提供する。したがって、本発明の実施形態は、タングステンフィラメントを使用した場合と比較して改善されたフィルム品質、フィラメントの寿命の延長、より長い機器稼働時間、より高い収率、およびより高いスループットという利益のうちの1つまたは複数を提供し得る。
【0013】
本発明者らは、1500〜2000℃の温度範囲および約10mTorrを超える圧力下(例えば、シリコンフィルムの堆積等のある特定の用途における典型的なHWCVD操作条件)で新しいタンタルフィラメントを点灯している間、フィラメントの白熱の減退を伴うフィラメント温度の急速な経時的低下が起きることを見出した。本発明者らは、温度の低下は、タンタルフィラメントの酸化に起因するものと考えている。しかしながら、本発明者らは、水素(H
2)ガスの存在下(例えば水素雰囲気中)で新しいタンタルフィラメントを点灯すると、フィラメント酸化の速度(フィラメント温度により測定される)が遅くなることを発見した。本発明者らは、以下でより詳細に説明するように、この技術の実施形態を組み込んだ、HWCVDツールを操作する方法を開発した。
【0014】
図1は、本発明のいくつかの実施形態によるHWCVDツールを操作する方法100のフローチャートを示す。概して、方法は102から開始し、102においては、HWCVDツールのプロセスチャンバ内に配置された1つのフィラメント(または複数のフィラメント)に、第1の期間、水素(H
2)ガスが供給される。水素(H
2)ガスは、単独で供給されてもよく、または、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性キャリアガスと共に供給されてもよい。水素(H
2)ガスの流量は、HWCVDチャンバ内のフィラメントを包み込む、または覆うのに十分であってもよい。したがって、具体的な流量は、チャンバのサイズならびにフィラメントの表面積(例えばフィラメントの長さおよび数)に依存して変動する。例えば、いくつかの実施形態において、水素(H
2)ガスは、約10sccmから約500sccmの流量で供給されてもよい。キャリアガスと共に供給される場合、キャリアガス中の水素(H
2)ガスの濃度は、約5体積パーセントから約80体積パーセントであってもよい。いくつかの実施形態において、第1の期間は、リアクタからの残留酸素の除去を促進するように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の期間は、チャンバ内のガスとフィラメントとの間の酸化等の不要な反応を防止するために、水素がフィラメントを完全に覆う、または包み込むのを可能にするように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の期間は、約5秒から約1800秒の範囲であってもよい。
【0015】
次に、104において、第1の期間後に、フィラメントに電流を流して、フィラメントの温度を第1の温度に上昇させることができる。電流は、電源からフィラメントに供給されてもよい。供給される電流の量は、フィラメントの温度を第1の温度に上昇させるように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の温度は、続いて堆積プロセスが行われる温度であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の温度は、堆積プロセスが行われる温度を超える温度または下回る温度であってもよい。いくつかの実施形態において、温度は、約1500℃から約2400℃の間であってもよい(ただし他の温度が使用されてもよい)。第2の期間は、フィラメントが第1の温度に達するのを可能にするように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、第2の期間は、フィラメントの周囲に水素ラジカルの覆いが形成されるのを促進するように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、第2の期間は、約5秒から約1800秒の範囲であってもよい。
【0016】
第2の期間の完了後、概して、方法100は終了する。いくつかの実施形態において、方法100またはその一部は、堆積プロセスの前の事前調整ステップとして使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、上述のようにフィラメントを調整した後に、フィラメントに電流を供給し続けて第1の温度を維持してもよく、チャンバにプロセスガスを供給して基板上に材料を堆積させてもよい。基板を連続的に処理する場合、最初に調整プロセスが行われてもよく、いくつかの実施形態においてはプロセスガスを継続的に流しながら、多くの基板をチャンバに送り、連続した基板上に材料を継続して堆積させてもよい。いくつかの実施形態において、最後の基板が処理された後に、プロセスガスを止めてもよく、また電流が止められてもよい。
【0017】
例えば、
図2は、本発明のいくつかの実施形態によるHWCVDツールを操作する方法200のフローチャートを示す。方法200は、概して、202から開始し、202においては、HWCVDツール内に配置された1つのフィラメントまたは複数のフィラメントが事前調整され得る。フィラメントは、水素ガス(H
2)含有雰囲気中で事前調整されてもよい。いくつかの実施形態において、フィラメントは、上述した方法100の実施形態に従い事前調整されてもよい。いくつかの実施形態において、フィラメントは、102に関して上述した方法100の実施形態に従い事前調整されてもよい。
【0018】
次に、204において、フィラメントを事前調整した後に、フィラメントに電流を流して、フィラメントの温度を第1の温度に上昇させることができる。いくつかの実施形態において、水素含有ガスを供給し続けながら、フィラメントに電流を供給して、フィラメントの温度を第1の温度に上昇させてもよい。いくつかの実施形態において、電流は、104に関して上述した方法100の実施形態に従い、フィラメントに流されてもよい。
【0019】
次に、206において、フィラメントが第1の温度となった後に、HWCVDツールにプロセスガスを供給することができる。いくつかの実施形態において、水素含有ガス流は、プロセスガスをHWCVDツールに供給する際に停止させてもよい。プロセスガスは、堆積プロセスにおいて使用される任意の好適なプロセスガスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、プロセスガスは、分解したプロセスガスからの種が下に設置されている基板上に堆積され得るような、加熱されたフィラメントに暴露されると熱分解し得るガスを含んでもよい。例えば、微結晶シリコンまたはアモルファスシリコン等のシリコン含有フィルムを堆積させる場合、プロセスガスは、シラン(SiH
4)、水素(H
2)、ホスフィン(PH
3)、ジボラン(B
2H
6)等のうちの一又は複数を含んでもよい。
【0020】
次に、208において、プロセスガスから分解した種を使用して、基板上に材料を堆積させることができる。上述のように、基板上に堆積された材料は、概して、プロセスガスからの種を含む。いくつかの実施形態において、基板上に堆積された材料は、シリコンを含んでもよいが、他の材料も企図される。208における材料の堆積の完了後、概して、方法200は終了し、基板は、所望によりさらに処理されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、方法200は、同じ基板上またはHWCVDツールに設置された第2の基板上に材料を堆積させるために、所望により反復されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、208において基板上に材料が堆積された後、フィラメントを第1の温度に維持しながら、チャンバ内の基板が第2の基板と交換されてもよい。第2の基板が設置された後に、プロセスチャンバに第2のプロセスガスが供給されてもよい。第2のプロセスガスは、第1のプロセスガスと同じであってもよく(例えば、同じ材料が堆積される場合)、または、第2のプロセスガスは、第1のプロセスガスとは異なっていてもよい(例えば、第2の基板上に異なる材料が堆積される場合)。次いで、第2のプロセスガスから分解した種を使用して、第2の基板上に材料を堆積させてもよい。
【0022】
その代わりに、または組合せて、基板への材料の堆積の完了後、フィラメントへの電流の流れを停止させてもよい。例えば、基板への材料の堆積の完了後、ツールは、例えば、ロットの終了、シフトの終了、1日の終了、週の始め、メンテナンス期間、またはツールをオフにすべき他の任意の時間に達した後に、停止させてもよい。ツールが再び始動される場合、続いてフィラメントが水素ガス(H2)含有雰囲気中で事前調整されてもよい。フィラメントを事前調整した後に、フィラメントに電流を流して、フィラメントの温度を第2の温度に上昇させてもよい。フィラメントが第2の温度となった後に、プロセスチャンバに第2のプロセスガスが供給されてもよい。上述のように、第2のプロセスガスは、第1のプロセスガスと同じでもまたは異なっていてもよい。第2のプロセスガスから分解した種を使用して、第2の基板上に材料を堆積させてもよい。
【0023】
図4は定電力試験をまとめたグラフ400を示し、この試験においては、新しいタンタルフィラメントがHWCVDチャンバ内に設置され、いかなる水素(H
2)ガスもなしに約1700℃の温度まで点灯(例えば加熱)された。フィラメント温度は急速に減少し、フィラメントは約38分で破損した。新しいタンタルフィラメントを設置し、水素(H
2)により約30sccmで約5分間、チャンバをフラッシングした。チャンバのフラッシング後、フィラメントを点灯した。この実験中、フィラメント温度は徐々に減少した。しかしながら、60分後でもフィラメントは破損しなかった。フィラメント温度は、約30分で約1700℃の初期温度から約1660℃まで降下した。約60分後、フィラメント温度は約1639℃に低下した。再び同じフィラメントをさらにより高い水素(H
2)ガス流(約60sccm)中で加熱した。より高い水素(H
2)流では、フィラメント温度は、60分にわたり、初期の約1624℃から約1609℃まで、より緩やかに降下した。この場合も、フィラメントは破損しなかった。120sccmの水素(H
2)ガス流で30分間もう一度試験を行ったが、フィラメントは破損せず、温度降下は、試験の経過中わずか約4℃であった。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に従って使用するのに好適なHWCVDプロセスチャンバ300の概略側面図である。プロセスチャンバ300は、概して、内部処理空間304を有するチャンバ本体302を備える。複数のフィラメントまたはワイヤ310が、チャンバ本体302内(例えば、内部処理空間304内)に配置される。複数のワイヤ310はまた、内部処理空間304を前後に横断するように配設される単一のワイヤであってもよい。複数のワイヤ310は、HWCVD源を備える。ワイヤ310は、典型的には、タングステンで作製されるが、タンタルまたはイリジウムもまた使用され得る。各ワイヤ310は、高温に加熱された際にワイヤの張りを維持するために、およびワイヤに電気接点を提供するために、支持体構造(図示せず)により適所にクランプされる。電流を供給してワイヤ310を加熱するために、電源312がワイヤ310に連結される。基板330は、HWCVD源(例えばワイヤ310)の下、例えば基板支持体328上に配置されてもよい。基板支持体328は、静的堆積の場合、固定されていてもよく、または、動的堆積の場合、基板330がHWCVD源の下を通過するに伴って(矢印305により示されるように)移動してもよい。
【0025】
チャンバ本体302は、さらに、一又は複数のプロセスガスを供給するための1つまたは複数のガス注入口(1つのガス注入口332が示されている)と、プロセスチャンバ300内の好適な動作圧力を維持するための、ならびに余分なプロセスガスおよび/またはプロセス副生成物を取り除くための真空ポンプへの1つまたは複数の排出口(2つの排出口334が示されている)とを含む。ガス注入口332は、ガスを均一に分配するためのシャワーヘッド333(図示)もしくは他の好適なガス分配要素内に、または、所望によりワイヤ310上に流通してもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、チャンバ本体302の内部表面上の不要な堆積を最小限化するために、1つまたは複数のシールド320が配置されてもよい。その代わりに、または組合せて、洗浄をより容易とするために、1つまたは複数のチャンバライナ322を使用することができる。シールドおよびライナの使用は、温室効果ガスNF
3等の望ましくない洗浄ガスの使用を回避または低減することができる。シールド320およびチャンバライナ322は、概して、チャンバ内を流れるプロセスガスに起因する堆積材料の望ましくない集積からチャンバ本体の内部表面を保護する。シールド320およびチャンバライナ322は、取外し可能、交換可能および/または洗浄可能であってもよい。シールド320およびチャンバライナ322は、これに限定されるものではないが、ワイヤ310の周囲およびコーティング区画の全ての壁上等の、チャンバ本体のコーティングされ得るあらゆる領域を覆うように構成されてもよい。典型的には、シールド320およびチャンバライナ322は、アルミニウム(Al)から製造されてもよく、(堆積材料の剥離を防止するために)堆積材料の接着を向上させるように粗面化された表面を有してもよい。シールド320およびチャンバライナ322は、HWCVD源の周囲等のプロセスチャンバの所望の領域に、好適な様式で設けられてもよい。いくつかの実施形態において、源、シールドおよびライナは、堆積チャンバの上部を開くことにより、メンテナンスおよび洗浄のために取り外されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、堆積チャンバの蓋または天井は、蓋を支持し堆積チャンバの本体に蓋を固定するための表面を提供するフランジ338に沿って、堆積チャンバの本体に連結されてもよい。
【0027】
コントローラ306をプロセスチャンバ300の様々な構成要素に連結して、それらの動作を制御してもよい。コントローラは、プロセスチャンバ300に連結されることが概略的に示されているが、本明細書に開示される方法に従ってHWCVD堆積プロセスを制御するために、コントローラにより制御され得る任意の構成要素、例えば、電源312、注入口322に連結されたガス供給源(図示せず)、排出口334に結合された真空ポンプおよび/または絞り弁(図示せず)、基板支持体328等に動作可能に接続されてもよい。コントローラ306は、概して、中央処理装置(CPU)308、メモリ313、およびCPU308の支援回路311を備える。コントローラ306は、HWCVDプロセスチャンバ300を、直接制御してもよく、または、特定の支援システム構成要素に付随させた他のコンピュータもしくはコントローラ(図示せず)を介して制御してもよい。コントローラ306は、様々なチャンバおよびサブプロセッサを制御するために工業環境において使用することができる、任意の形態の汎用コンピュータプロセッサの1つであってもよい。CPU308のメモリまたはコンピュータ可読媒体313は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、フラッシュ、または任意の他の形態のローカルもしくは遠隔のデジタルストレージ等の、容易に入手可能なメモリのうちの一又は複数であってもよい。支援回路311は、従来の様式でプロセッサを支援するためにCPU308に連結されている。これらの回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路およびサブシステム等を含む。本明細書に記載の本発明の方法は、コントローラを、本明細書に記載の様式でプロセスチャンバ300の動作を制御する特定用途のコントローラに転換するために実行または呼び出され得るソフトウェアルーチン314として、メモリ313に格納されてもよい。ソフトウェアルーチンはまた、CPU308により制御されるハードウェアから遠隔に位置する第2のCPU(図示せず)により、格納および/または実行されてもよい。
【0028】
以上に述べたように、本明細書において、HWCVDプロセスにおけるタンタルフィラメントの寿命を延長するための方法が提供された。本明細書に開示される本発明の方法の実施形態は、タングステンフィラメントを使用した場合と比較して改善されたフィルム品質、フィラメントの寿命の延長、より長い機器稼働時間、より高い収率、およびより高いスループットという利益のうちの1つまたは複数を提供し得る。
【0029】
上述の事項は、本発明の実施形態に関するが、本発明の基本的範囲から逸脱せずに、本発明の他のおよび別の実施形態が考案され得る。