【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0034】
下記に示す実施例及び比較例において、各種の測定や評価が必要となるが、その条件を以下に示す。
(粒度分布の測定)
粒度分布の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、Microtrac MT3000)を用いて行った。
(比表面積の測定)
比表面積(BET)の測定は、自動表面積計ベータソープ(日機装株式会社製、MODEL-4200)で行なった。
【0035】
(実施例1)
純度4Nの液体金属ガリウムを、
図1に示すような電解槽に入れ、電解液には硝酸アンモニウム水溶液を使用して電解を行った。このときの電解液の温度を30°C、pHを6、電解液の濃度を1.0mol/L、とした。
この他の条件として、アノードへの通電用材料としてDSEを、カソードにTiを使用し、電流密度10A/dm
2とした。
【0036】
これにより、溶液中に晶出したGa(OH)
3を得た。この晶出した粒子のSEM画像を
図2に示す。この
図2に示すように、微細に分散した粒子が得られた。次に、このGa(OH)
3を吸引濾過して固液分離し、その後、約120°Cで乾燥し、GaO(OH)を得た。次に、この乾燥粉を約1000°C、4時間で焙焼し、酸化ガリウム粉末を製造した。
【0037】
その結果、酸化ガリウム粉末中の塩素及びナトリウムの含有量は、検出限界以下、すなわち、10wtppm未満であった。また、BET比表面積は12.58m
2/gと高く、粒度分布から求めた平均粒径は0.83μmと本発明の範囲内であった。焙焼粉の結晶はβ相(β型)であった。
【0038】
また、得られた酸化ガリウム粉末を製造原料として、IGZO焼結体ターゲットの(111)組成を製造し、密度を測定したところ、アルキメデス密度6.25g/cm
3と高密度であった。これは、得られた酸化ガリウムは粉砕性がよく、焼結作業において混合及び粉砕が容易となることによる効果と考えられる。以上の結果を、表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例2)
純度4Nの液体金属ガリウムを、実施例1と同様に、
図1に示すような電解槽に入れ、電解液には硝酸アンモニウム水溶液を使用して電解を行った。このときの電解液の温度を40°C、pHを4、電解液の濃度を1.0mol/L、とした。
この他の条件として、アノードへの通電用材料としてDSEを、カソードにTiを使用し、電流密度10A/dm
2とした。
【0041】
これにより、溶液中に晶出したGa(OH)
3を得た。実施例1と同様に、微細に分散した粒子が得られた。次に、このGa(OH)
3を吸引濾過して固液分離し、その後、約120°Cで乾燥し、GaO(OH)を得た。次に、この乾燥粉を約1000°C、4時間で焙焼し、酸化ガリウム粉末を製造した。
【0042】
その結果、酸化ガリウム粉末中の塩素及びナトリウムの含有量は、検出限界以下、すなわち、10wtppm未満であった。また、BET比表面積は10.72m
2/gと高く、粒度分布から求めた平均粒径は0.86μmと本発明の範囲内であった。焙焼粉の結晶はβ相(β型)であった。
【0043】
また、得られた酸化ガリウム粉末を製造原料として、IGZO焼結体ターゲットの(111)組成を製造し、密度を測定したところ、アルキメデス密度6.25g/cm
3と高密度であった。これは、得られた酸化ガリウムは粉砕性がよく、焼結作業において混合及び粉砕が容易となることによる効果と考えられる。以上の結果を、同様に表1に示す。
【0044】
(実施例3)
純度4Nの液体金属ガリウムを、実施例1と同様に、
図1に示すような電解槽に入れ、電解液には硝酸アンモニウム水溶液を使用して電解を行った。このときの電解液の温度を40°C、pHを7、電解液の濃度を1.0mol/L、とした。
この他の条件として、アノードへの通電用材料としてDSEを、カソードにTiを使用し、電流密度10A/dm
2とした。
【0045】
これにより、溶液中に晶出したGa(OH)
3を得た。実施例1と同様に、微細に分散した粒子が得られた。次に、このGa(OH)
3を吸引濾過して固液分離し、その後、約120°Cで乾燥し、GaO(OH)を得た。次に、この乾燥粉を約1000°C、4時間で焙焼し、酸化ガリウム粉末を製造した。
【0046】
その結果、酸化ガリウム粉末中の塩素及びナトリウムの含有量は、検出限界以下、すなわち、10wtppm未満であった。また、BET比表面積は8.73m
2/gと高く、粒度分布から求めた平均粒径は1.06μmと本発明の範囲内であった。焙焼粉の結晶はβ相(β型)であった。
【0047】
また、得られた酸化ガリウム粉末を製造原料として、IGZO焼結体ターゲットの(111)組成を製造し、密度を測定したところ、アルキメデス密度6.26g/cm
3と高密度であった。これは、得られた酸化ガリウムは粉砕性がよく、焼結作業において混合及び粉砕が容易となることによる効果と考えられる。以上の結果を、同様に表1に示す。
【0048】
(実施例4)
純度4Nの液体金属ガリウムを、実施例1と同様に、
図1に示すような電解槽に入れ、電解液には硝酸アンモニウム水溶液を使用して電解を行った。このときの電解液の温度を40°C、pHを6、電解液の濃度を0.5mol/L、とした。
この他の条件として、アノードへの通電用材料としてDSEを、カソードにTiを使用し、電流密度10A/dm
2とした。
【0049】
これにより、溶液中に晶出したGa(OH)
3を得た。実施例1と同様に、微細に分散した粒子が得られた。次に、このGa(OH)
3を吸引濾過して固液分離し、その後、約120°Cで乾燥し、GaO(OH)を得た。次に、この乾燥粉を約1000°C、4時間で焙焼し、酸化ガリウム粉末を製造した。
【0050】
その結果、酸化ガリウム粉末中の塩素及びナトリウムの含有量は、検出限界以下、すなわち、10wtppm未満であった。また、BET比表面積は10.46m
2/gと高く、粒度分布から求めた平均粒径は0.91μmと本発明の範囲内であった。焙焼粉の結晶はβ相(β型)であった。
【0051】
また、得られた酸化ガリウム粉末を製造原料として、IGZO焼結体ターゲットの(111)組成を製造し、密度を測定したところ、アルキメデス密度6.27g/cm
3と高密度であった。これは、得られた酸化ガリウムは粉砕性がよく、焼結作業において混合及び粉砕が容易となることによる効果と考えられる。以上の結果を、同様に表1に示す。
【0052】
(実施例5)
純度4Nの液体金属ガリウムを、実施例1と同様に、
図1に示すような電解槽に入れ、電解液には硝酸アンモニウム水溶液を使用して電解を行った。このときの電解液の温度を50°C、pHを6、電解液の濃度を2.0mol/L、とした。
この他の条件として、アノードへの通電用材料としてDSEを、カソードにTiを使用し、電流密度10A/dm
2とした。
【0053】
これにより、溶液中に晶出したGa(OH)
3を得た。実施例1と同様に、微細に分散した粒子が得られた。次に、このGa(OH)
3を吸引濾過して固液分離し、その後、約120°Cで乾燥し、GaO(OH)を得た。次に、この乾燥粉を約1000°C、4時間で焙焼し、酸化ガリウム粉末を製造した。
【0054】
その結果、酸化ガリウム粉末中の塩素及びナトリウムの含有量は、検出限界以下、すなわち、10wtppm未満であった。また、BET比表面積は7.85m
2/gと高く、粒度分布から求めた平均粒径は1.41μmと本発明の範囲内であった。焙焼粉の結晶はβ相(β型)であった。
【0055】
また、得られた酸化ガリウム粉末を製造原料として、IGZO焼結体ターゲットの(111)組成を製造し、密度を測定したところ、アルキメデス密度6.25g/cm
3と高密度であった。これは、得られた酸化ガリウムは粉砕性がよく、焼結作業において混合及び粉砕が容易となることによる効果と考えられる。以上の結果を、同様に表1に示す。
【0056】
(実施例6)
純度4Nの液体金属ガリウムを、実施例1と同様に、
図1に示すような電解槽に入れ、電解液には硝酸アンモニウム水溶液を使用して電解を行った。このときの電解液の温度を40°C、pHを5、電解液の濃度を1.0mol/L、とした。
この他の条件として、アノードへの通電用材料としてDSEを、カソードにTiを使用し、電流密度10A/dm
2とした。
【0057】
これにより、溶液中に晶出したGa(OH)
3を得た。実施例1と同様に、微細に分散した粒子が得られた。次に、このGa(OH)
3を吸引濾過して固液分離し、その後、約120°Cで乾燥し、GaO(OH)を得た。次に、この乾燥粉を約500°C、4時間で焙焼し、酸化ガリウム粉末を製造した。
【0058】
その結果、酸化ガリウム粉末中の塩素及びナトリウムの含有量は、検出限界以下、すなわち、10wtppm未満であった。また、BET比表面積は19.83m
2/gと高く、粒度分布から求めた平均粒径は0.55μmと本発明の範囲内であった。焙焼粉の結晶はα相(α型)であった。
【0059】
また、得られた酸化ガリウム粉末を製造原料として、IGZO焼結体ターゲットの(111)組成を製造し、密度を測定したところ、アルキメデス密度6.26g/cm
3と高密度であった。これは、得られた酸化ガリウムは粉砕性がよく、焼結作業において混合及び粉砕が容易となることによる効果と考えられる。以上の結果を、同様に表1に示す。
【0060】
(比較例1)
純度4Nの液体金属ガリウムを、実施例1と同様に、
図1に示すような電解槽に入れ、電解液には硝酸アンモニウム水溶液を使用して電解を行った。このときの電解液の温度を30°C、pHを6、電解液の濃度を4.0mol/L、とした。この電解液の濃度は、本願の条件を外れるものである。
この他の条件として、アノードへの通電用材料としてDSEを、カソードにTiを使用し、電流密度10A/dm
2とした。
【0061】
これにより、溶液中に晶出したGa(OH)
3を得た。この晶出した粒子のSEM画像を
図3に示す。この
図3に示すように、凝集した粒子が得られた。次に、このGa(OH)
3を吸引濾過して固液分離し、その後、約120°Cで乾燥し、GaO(OH)を得た。次に、この乾燥粉を約1000°C、4時間で焙焼し、酸化ガリウム粉末を製造した。
【0062】
その結果、酸化ガリウム粉末中の塩素及びナトリウムの含有量は、検出限界以下、すなわち、10wtppm未満であった。また、BET比表面積は1.02m
2/gと低くなり、粒度分布から求めた平均粒径は32.92μmと、本発明の範囲から大きく逸脱していた。
【0063】
得られた酸化ガリウム粉末を製造原料として、IGZO焼結体ターゲットの(111)組成を製造し、密度を測定したところ、アルキメデス密度6.05g/cm
3と密度が低下した。これは、得られた酸化ガリウムは粉砕性が悪く、焼結作業において混合及び粉砕が充分でなくなった効果と考えられる。以上の結果を、同様に表1に示す。
【0064】
(比較例2)
純度4Nの液体金属ガリウムを、実施例1と同様に、
図1に示すような電解槽に入れ、電解液には硝酸アンモニウム水溶液を使用して電解を行った。このときの電解液の温度を30°C、pHを9、電解液の濃度を2.0mol/L、とした。この場合のpHは、本願の条件を外れるものである。
この他の条件として、アノードへの通電用材料としてDSEを、カソードにTiを使用し、電流密度10A/dm
2とした。
【0065】
これにより、溶液中に晶出したGa(OH)
3を得た。この晶出した粒子は、比較例1と同様に凝集した粒子が得られた。次に、このGa(OH)
3を吸引濾過して固液分離し、その後、約120°Cで乾燥し、GaO(OH)を得た。次に、この乾燥粉を約1000°C、4時間で焙焼し、酸化ガリウム粉末を製造した。
【0066】
その結果、酸化ガリウム粉末中の塩素及びナトリウムの含有量は、検出限界以下、すなわち、10wtppm未満であった。また、BET比表面積は3.77m
2/gとなり、粒度分布から求めた平均粒径は10.39μmと、本発明から逸脱していた。
【0067】
得られた酸化ガリウム粉末を製造原料として、IGZO焼結体ターゲットの(111)組成を製造し、密度を測定したところ、アルキメデス密度6.13g/cm
3と密度が低下した。これは、得られた酸化ガリウムは粉砕性が悪く、焼結作業において混合及び粉砕が充分でなくなった効果と考えられる。以上の結果を、同様に表1に示す。